説明

垂直循環式駐車装置の改造方法及びその垂直循環式駐車装置

【課題】入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置よりも制限することなく、車両の前進入庫及び前進出庫を可能にする。
【解決手段】垂直循環式駐車装置の改造方法であって、上部に位置するケージ18の下端と、ケージ18の直下部に位置する他のケージ18の上端とが互いに干渉しないよう、チェーンに対してケージ18同士の間隔を改造前の間隔より広げて配置し、ケージ枠20のパレット幅方向両側の柱部24を、車両前後方向を基準とし、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、下スプロケットの下方に車両をパレット22と共に旋回可能とする旋回手段を昇降可能に配設し、車両が前進入庫及び前進出庫し得るよう改造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駐車する垂直循環式駐車装置の改造方法及びその垂直循環式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駐車施設の一形態としていわゆるタワーパーキングと呼ばれる垂直循環式駐車装置が知られている。
【0003】
既設の垂直循環式駐車装置は、図8〜図11に示すように、建屋(図示せず)の上部に設置された上フレーム1に一対の上スプロケット2を回転自在に配設すると共に、建屋の下部に設置された下フレーム3に一対の下スプロケット4を回転自在に配設し、上スプロケット2と下スプロケット4間には、複数のリンク5で構成されたチェーン6が無端状に掛け回されている。
【0004】
チェーン6は、図9に示す如く4個のリンク5ごとにアタッチメント7が設けられており、各アタッチメント7にはケージ8が夫々枢着されている。又、上スプロケット2には図8に示す如く駆動手段のモータ2aが接続されており、モータ2aは上スプロケット2を介してチェーン6を周回させ、ケージ8を上下方向に循環させるようになっている。なお、図8には上下端に位置する二基のケージ8のみ示してあり、他のケージ8は省略してある。
【0005】
ケージ8は、アタッチメント7に取付けられて水平方向へ延びるケージ吊軸9を備え、ケージ吊軸9の両端部にはケージ枠10が枢支され、更に両側のケージ枠10には車載用のパレット11が掛け渡されている。又、ケージ8のケージ枠10は、ケージ吊軸9に取付けられる上辺部12と、上辺部12の両端から下方へ向かって配置される柱部13と、両側の柱部13の下端を接続するように延在し且つパレット11を支持する下辺部14とを備えている。更に、ケージ枠10の柱部13は、図10に示す如くケージ吊軸9の両側で上方から下方側へ向かって鉛直線よりケージ吊軸9の軸線方向(パレット長手方向)内側へ4.5°以上6°以下で傾斜する角度θを備え、下辺部14同士のケージ吊軸9の軸線方向への間隔寸法を、上辺部12同士のケージ吊軸9の軸線方向への間隔寸法よりも狭くしている。このため、上方のケージ8に配されるケージ枠10の下辺部14は、直下のケージ8に配されるケージ枠10の上辺部12よりもケージ吊軸9の軸線方向内側に位置し、上方に吊り下げられるケージ8と、直下に吊り下げられる他のケージ8とは互いに干渉しないようになっている。又、パレット11に積載可能な最長の車両15が入庫した場合には、図11に示す如く車両15の前後端がケージ枠10より外方へ突出するようになっている。
【0006】
このような垂直循環式駐車装置において、車両15を駐車する際には、チェーン6を周回して、下スプロケット4の下部に位置する建屋の出入口(図示せず)に空のケージ8を停止させ、空のケージ8に対して車両15を前進入庫させてパレット11上に積載し、チェーン6の周回により車両15を建屋の上方内部に移動させる。又、車両15を出庫させる際には、チェーン6を周回して、車両を積載したケージ8を出入口に停止させ、車両を後進出庫させる。
【0007】
一方で、後進出庫のように車両15の後進を必要とする垂直循環式駐車装置は、運転の苦手な人にとって利用しづらいものであるため、新たに垂直循環式駐車装置を建設する際には、車両を前進入庫及び前進出庫し得るように車両を旋回させる旋回手段を配置することが考えられている。
【0008】
ここで、垂直循環式駐車装置に旋回手段を備える構成の一例を示すと、旋回手段の一例は、出入口に位置する建屋の床部に、ケージ枠からパレットを上方へ離間させるジャッキアップ装置と、パレットを旋回させるパレット旋回装置とを備えており、出入口から車両がパレットに前進入庫した際には、ジャッキアップ装置によりパレットを所定高さまで上昇させて車両及びパレットがケージ枠の柱部と干渉しないようにし、更に車両及びパレットをパレット旋回装置により180°旋回させ、パレットをジャッキアップ装置により降下させてパレットを元の高さに戻し、車両を出入口から前進出庫させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
又、旋回手段の構成の他例を示すと、旋回手段の他例は、出入口部に位置する建屋の床部に、昇降機能と旋回機能を有するターンテーブルと、ターンテーブルの両側に位置するケージ枠開閉装置とを備えており、出入口から車両がパレットに前進入庫した際には、ケージ枠開閉装置によりケージ枠の下部を把持し、ターンテーブルによりパレットを上昇させると共にケージ枠の下部を外方に移動させて車両及びパレットがケージ枠の柱部と干渉しないようにし、更に車両及びパレットをターンテーブルにより180°旋回させ、パレットをターンテーブルにより降下させると共にケージ枠の下部を元の位置に戻し、車両を出入口から前進出庫させるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭55−23207号公報
【特許文献2】特開昭61−75172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図8〜図11に示す既設の垂直循環式駐車装置に旋回手段を備えるように改造した場合には、ケージ枠10の柱部13が、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ4.5°以上6°以下で傾斜するため、車両15を旋回する際に車両15の前後端がケージ枠10の柱部13に干渉し、入庫する車両15の全長は既設の垂直循環式駐車装置の場合よりも制限されるという問題があった。又、既設の垂直循環式駐車装置は、建屋内にケージを上下方向に大型化し得るような空間的余裕がないため、特許文献1の如く旋回する車両がケージ枠の柱部に干渉しないよう、車両及びパレットを所定の高さまで上昇させる空間をケージ内に備えることができず、既設の垂直循環式駐車装置に適用できないという問題があった。更に、特許文献2の如くケージ枠開閉装置を設置してケージ枠の下辺部を外方へ移動する構成の場合には、下辺部を移動する際にケージ枠の下辺部が既設の垂直循環式駐車装置の建屋内壁やフレームに干渉し、特許文献1と同様に、ケージ枠開閉装置を適用することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、既設の垂直循環式駐車装置であっても、入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置よりも制限することなく、車両の前進入庫及び前進出庫を可能にする垂直循環式駐車装置の改造方法及びその垂直循環式駐車装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上スプロケットと下スプロケット間にチェーンを無端状に掛け回し、前記チェーンに、車載用のパレットが設けられたケージをチェーンの延在方向へ所定の間隔で複数吊り下げ、前記ケージはパレット長手方向両側に位置するケージ枠を備えた垂直循環式駐車装置の改造方法であって、
上部に位置するケージの下端と、該ケージの直下部に位置する他のケージの上端とが互いに干渉しないよう、前記チェーンに対してケージ同士の間隔を改造前の間隔より広げて配置し、
前記ケージ枠のパレット幅方向両側の柱部を、車両前後方向を基準とし、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、
前記下スプロケットの下方に車両をパレットと共に旋回可能とする旋回手段を昇降可能に配設し、
前記車両が前進入庫及び前進出庫し得るよう改造することを特徴とする垂直循環式駐車装置の改造方法、にかかるものである。
【0013】
本発明の垂直循環式駐車装置の改造方法において、チェーンの複数リンクおきに設けてケージを枢着するアタッチメント同士の間隔を改造前より広げて配置することが好ましい。
【0014】
本発明の垂直循環式駐車装置の改造方法において、改造後にはアタッチメント同士の間のリンク数を改造前よりも多くすることが好ましい。
【0015】
本発明は、上スプロケットと下スプロケット間にチェーンを無端状に掛け回し、前記チェーンに、車載用のパレットが設けられたケージをチェーンの延在方向へ所定の間隔で複数吊り下げ、前記ケージはパレット長手方向両側に位置するケージ枠を備えた垂直循環式駐車装置であって、
上部に位置するケージの下端と、該ケージの直下部に位置する他のケージの上端とが互いに干渉しないよう、前記チェーンにケージを配置し、
前記ケージ枠のパレット幅方向両側の柱部を、車両前後方向を基準とし、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、
前記下スプロケットの下方に車両をパレットと共に旋回可能とする旋回手段を昇降可能に配設し、
前記車両が前進入庫及び前進出庫し得るよう構成したことを特徴とする垂直循環式駐車装置、にかかるものである。
【0016】
このように、チェーンに対してケージ同士の間隔を広げて配置するので、上部に位置するケージの下端と、該ケージの直下に位置する他のケージの上端とが互いに干渉しないようにすると共に、ケージ枠の柱部を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、更に旋回手段を備えるので、入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、ケージ枠の柱部に対して車両を旋回可能にし、車両の前進入庫及び前進出庫を行うことができる。又、既設の垂直循環式駐車装置であっても改良により車両が前進入庫及び前進出庫し得るようにし、車両の後進が苦手な利用者にとっても容易に利用することができる。
【0017】
又、チェーンの複数リンクおきに設けてケージを枢着するアタッチメント同士の間隔を改造前より広げて配置すると、ケージ枠の柱部の角度を設定した際に、柱部の下端が、直下に位置する他のケージと接触しないよう容易に配置し得るので、ケージを循環させると同時に、入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、柱部に対して車両を旋回可能し、車両の前進入庫及び前進出庫を適切に行うことができる。
【0018】
更に、改造後にはアタッチメント同士の間のリンク数を改造前よりも多くすると、ケージ枠の柱部の角度を設定した際に、柱部の下端が、直下に位置する他のケージと接触しないよう一層容易に配置し得るので、ケージを循環させると同時に、入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、柱部に対して車両を旋回可能し、車両の前進入庫及び前進出庫を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の垂直循環式駐車装置の改造方法及びその垂直循環式駐車装置によれば、既設の垂直循環式駐車装置であっても、チェーンの延在方向に対してケージ同士の間隔を広げて配置する共に、ケージ枠の柱部を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、更に旋回手段を備えることにより、入庫する車両の全長を既設の垂直循環式駐車装置よりも制限することなく、車両を旋回して車両の前進入庫及び前進出庫を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図7は本発明を実施する形態例であって、図中、図8〜図11と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図8〜図11に示す従来のものと同様である。
【0022】
本発明を実施する形態例は、既設の垂直循環式駐車装置においてチェーン6、ケージ8を変更すると共に、旋回手段を新たに設けるものである。
【0023】
本発明の実施の形態例におけるチェーン17は、チェーン自体を交換した場合に、既設の垂直循環式駐車装置に設置されたチェーン6と略同じ長さ及び同じ個数のリンク5で形成されると共に、5個又は6個のリンク(図1では5個)ごとにアタッチメント7が設けられており、アタッチメント7同士の間隔は、既設の垂直循環式駐車装置のチェーン6に比べて広げて配置されている。又、各アタッチメント7にはケージ18が夫々枢着されており、上方に位置するケージ18の下端と、直下に位置する他のケージ18の上端とは、アタッチメント7の間にあるリンク個数を増やしたことにより、互いに干渉しないように上下方向で距離Lの間隔を有している。ここで、チェーン17は、アタッチメント7を備えたリンク5のみを交換しても良い。
【0024】
ケージ18は、アタッチメント7に取付けられて車両前後方向へ延びるケージ吊軸19と、ケージ吊軸19の車両前後方向両端部に枢支されるケージ枠20と、両側のケージ枠20に掛け渡すように配置される下方枠フレーム21とを備えており、下方枠フレーム21には車載用のパレット22が載置されている。
【0025】
ケージ18のケージ枠20は、ケージ吊軸19に取付けられてパレット幅方向(車両幅方向)へ延在する上辺部23と、上辺部23のパレット幅方向両側から下方へ向かって配置される柱部24と、両側の柱部24の下端を接続するようパレット幅方向へ延在する下辺部25とを備えている。ここで、ケージ枠20のケージ吊軸19に対する柱部24上端の枢着位置は、図10に示す既設の垂直循環式駐車装置のケージ吊軸9に対する柱部13上端の枢着位置と略同一位置であり、柱部24は、図2に示す如く枢着位置(上方)から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、枢着位置(上方)から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置されている(図2では角度θで示す)。又、柱部24は、既設の垂直循環式駐車装置のケージ8に配置されたケージ枠10の柱部13と略同じ高さに構成されている。従って、本図示例においては、パレット長手方向の両側に位置する柱部24下端及び下辺部25の間隔寸法が、図10に示す既設の垂直循環式駐車装置のものより大きく形成されており、パレット22に積載可能な車両15が入庫した場合には、車両15の前後端がケージ枠20より外方へ突出することがないようになっている。
【0026】
ケージ18の下方枠フレーム21は、両側のケージ枠20の下辺部25からパレット長手方向内側へ向かって夫々所定幅の平面を形成する縁部フレーム26と、両側の縁部フレーム26のパレット幅方向両側からパレット長手方向へ延在する側方フレーム27とを備えており、縁部フレーム26と側方フレーム27の接続位置(4箇所)には、上方へ突出して斜面を形成するガイドブラケット28が設けられている。
【0027】
車載用のパレット22は、車両前後方向及び車両幅方向でケージ18より外方へ突出しない大きさの平面22aを備え、パレット22の長手方向へ延在する側面22bには、車両幅方向外方へ突出するガイド部材29が備られている。ガイド部材29は、パレット22を下方枠フレーム21に載置する際に、ガイドブラケット28の斜面に摺接してパレット22を所定の位置へガイドするようになっている。
【0028】
一方、建屋の床部には、下スプロケット4(図8参照)の下方に位置するよう、パレット22を旋回させる旋回手段が備えられている。旋回手段は、既設の建物内に配置してパレット22に積載した車両15をパレット22と共に旋回し得るものならば特に制限されるものでないが、一例を示すと、図3〜図5に示す如く旋回手段30は、建物の床部を掘り下げて構成された底面31に走行可能なベースフレーム32を配置し、ベースフレーム32には、立設する複数のボールネジ33を介して昇降フレーム34が配置されており、昇降フレーム34は、下面に回転自在に配置されてボールネジ33に嵌装される従動スプロケット35と、上面に回転自在に配置されてボールネジ33に螺合し且つ従動スプロケット35と一体的に回転するナット部36と、従動スプロケット35に無端状に掛け回されたチェーン37を周回させるモータ38とを備え、モータ38を駆動した際には、チェーン37を周回させて従動スプロケット35及びナット部36を回転させ、ボールネジ33に対して昇降フレーム34が昇降するようになっている。又、昇降フレーム34には、脚部39を介して配置された台座部40が配置されており、台座部40は、パレット22の下方に位置して回転自在に配置される支持フレーム41と、支持フレーム41の下面に位置して支持フレーム41の回転中心と同心状に配置される旋回ギア42と、旋回ギア42と噛み合う駆動ギア43と、駆動ギア43を回転させる旋回モータ44とを備え、旋回モータ44を駆動した際には、駆動ギア43を介して旋回ギア42を回転させ、台座部40に対して支持フレーム41が旋回するようになっている。
【0029】
以下、本発明の実施の形態例の作用を説明する。
【0030】
車両15を駐車する際には、既設の垂直循環式駐車装置と同様に、チェーン17を周回して、下スプロケット4の下部に位置する建屋の出入口(図示せず)に空のケージ18を停止させ、空のケージ18に対して車両15を前進入庫させてパレット22上に積載し、チェーン17の周回により車両15を建屋の上方内部に移動させる。
【0031】
車両15を出庫させる際には、チェーン17を周回して、出庫させる車両15が積載されているケージ18を建屋の出入口に停止させ、車両15をパレット22と共に旋回手段30により180°旋回させ、車両15を出入口から前進出庫させる。この時、旋回手段30は、車両15が出庫する際に、モータ38等により昇降フレーム34を上昇させて支持フレーム41によりパレット22を支持すると共に、パレット22をケージ18の下方枠フレーム21から僅かに持ち上げてガイド部材29とガイドブラケット28との係合を解除し、駆動ギア43及び旋回ギア42等により車両15をパレット22ごと180°旋回させ、更に、昇降フレーム34を降下させてパレット22を下方枠フレーム21に載置し、パレット22を元の高さに戻して車両15を出入口から前進出庫させるようにしている。
【0032】
又、車両15がパレット22と共に旋回する際には、図6に示す如く車両15が柱部24に干渉することがなく、更に、旋回可能な車両15の最大全長は、ケージ枠20の柱部24を鉛直線に対して角度θの範囲内に配置することにより、既設の垂直循環式駐車装置よりも抑制されることがない。
【0033】
ここで、柱部24の傾斜可能な角度範囲を具体的な配置の試験結果により示すと、図7のグラフに示す如く、ケージ枠20の柱部24の角度を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度(図7では88°)にした場合には、柱部24と車両15との隙間が旋回可能な最小の隙間約30mmとなり、車両15が柱部24に干渉することなく車両15を旋回させることが明らかである。又、ケージ枠20の柱部24の角度を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度(図7では91°)にした場合には、建物のフレームや他の装置等の構成部材(図示せず)と柱部24の隙間がケージ18の循環可能な最小の隙間約30mmとなり、柱部24が構成部材に干渉することなくケージ18を循環させることが明らかである。更に、柱部24の角度を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度より大きくした場合には、車両15と柱部24が干渉して車両15の旋回の障害になり、柱部24の角度を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度より大きくした場合には、建物のフレームや他の装置等の構成部材と柱部24とが干渉してケージ18の循環の障害になるという問題がある。更に又、ケージ枠20の柱部24の角度を、上方から下方側へ向かって鉛直線と同じ角度(図7では90°)にした場合には、柱部24と車両15の旋回時の隙間が約95mmとなって車両15を最適に旋回させることができると共に、構成部材と柱部24の隙間が約45mmとなってケージ18を最適に循環させることができる。なお、図7に示す、柱部24の傾斜可能な範囲を求める際の車両全長は、既設の垂直循環式駐車装置で駐車し得る最大の車両全長を基準にしている。
【0034】
このように、チェーン17に対してケージ18同士の間隔を広げて配置するので、上部に位置するケージ18の下端と、該ケージ18の直下に位置する他のケージ18の上端とが互いに干渉しないようにすると共に、ケージ枠20の柱部24を、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、更に旋回手段30を備えるので、入庫する車両15の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、ケージ枠20の柱部24に対して車両15を旋回可能にし、車両15の前進入庫及び前進出庫を行うことができる。又、既設の垂直循環式駐車装置であっても改良により車両15が前進入庫及び前進出庫し得るようにし、車両15の後進が苦手な利用者にとっても容易に利用することができる。
【0035】
又、本発明の実施の形態例において、チェーン17の複数リンクおきに設けてケージ18を枢着するアタッチメント7同士の間隔を改造前より広げて配置すると、ケージ枠20の柱部24の角度を設定した際に、柱部24の下端が、直下に位置する他のケージ18と接触しないよう容易に配置し得るので、ケージ18を循環させると同時に、入庫する車両15の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、柱部24に対して車両15を旋回可能し、車両15の前進入庫及び前進出庫を適切に行うことができる。
【0036】
更に、本発明の実施の形態例において、改造後にはアタッチメント7同士の間のリンク数を改造前よりも多くすると、ケージ枠20の柱部24の角度を設定した際に、柱部24の下端が、直下に位置する他のケージ18と接触しないよう一層容易に配置し得るので、ケージ18を循環させると同時に、入庫する車両15の全長を既設の垂直循環式駐車装置より制限することなく、柱部24に対して車両15を旋回可能し、車両15の前進入庫及び前進出庫を好適に行うことができる。
【0037】
尚、本発明の垂直循環式駐車装置の改造方法及びその垂直循環式駐車装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施する形態例におけるケージの移動軌跡を示す正面図である。
【図2】本発明を実施する形態例におけるケージの配置及び柱部の構成を示す概念図である。
【図3】本発明を実施する形態例における旋回手段の一例を示す概念図である。
【図4】旋回手段によりパレットを上昇させた状態を示す概念図である。
【図5】旋回手段及びパレットを示す平面図である。
【図6】車両が旋回する旋回半径と柱部の位置を示す概念図である。
【図7】柱部の傾斜可能な範囲を示すグラフである。
【図8】従来例の垂直循環式駐車装置を示す概略図である。
【図9】従来例におけるケージの移動軌跡を示す正面図である。
【図10】従来例におけるケージの配置及び柱部の構成を示す概念図である。
【図11】従来例のケージに車両を積載した状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0039】
2 上スプロケット
4 下スプロケット
7 アタッチメント
15 車両
17 チェーン
18 ケージ
20 ケージ枠
22 パレット
24 柱部
30 旋回手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上スプロケットと下スプロケット間にチェーンを無端状に掛け回し、前記チェーンに、車載用のパレットが設けられたケージをチェーンの延在方向へ所定の間隔で複数吊り下げ、前記ケージはパレット長手方向両側に位置するケージ枠を備えた垂直循環式駐車装置の改造方法であって、
上部に位置するケージの下端と、該ケージの直下部に位置する他のケージの上端とが互いに干渉しないよう、前記チェーンに対してケージ同士の間隔を改造前の間隔より広げて配置し、
前記ケージ枠のパレット幅方向両側の柱部を、車両前後方向を基準とし、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、
前記下スプロケットの下方に車両をパレットと共に旋回可能とする旋回手段を昇降可能に配設し、
前記車両が前進入庫及び前進出庫し得るよう改造することを特徴とする垂直循環式駐車装置の改造方法。
【請求項2】
チェーンの複数リンクおきに設けてケージを枢着するアタッチメント同士の間隔を改造前より広げて配置することを特徴とする請求項1に記載の垂直循環式駐車装置の改造方法。
【請求項3】
改造後にはアタッチメント同士の間のリンク数を改造前よりも多くしたことを特徴する請求項2に記載の垂直循環式駐車装置の改造方法。
【請求項4】
上スプロケットと下スプロケット間にチェーンを無端状に掛け回し、前記チェーンに、車載用のパレットが設けられたケージをチェーンの延在方向へ所定の間隔で複数吊り下げ、前記ケージはパレット長手方向両側に位置するケージ枠を備えた垂直循環式駐車装置であって、
上部に位置するケージの下端と、該ケージの直下部に位置する他のケージの上端とが互いに干渉しないよう、前記チェーンにケージを配置し、
前記ケージ枠のパレット幅方向両側の柱部を、車両前後方向を基準とし、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向内側へ2°傾斜する角度から、上方から下方側へ向かって鉛直線よりパレット長手方向外側へ1°傾斜する角度までの間に配置し、
前記下スプロケットの下方に車両をパレットと共に旋回可能とする旋回手段を昇降可能に配設し、
前記車両が前進入庫及び前進出庫し得るよう構成したことを特徴とする垂直循環式駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−249912(P2009−249912A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99064(P2008−99064)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)