説明

垂直振れを自動測定する振動刃ミクロトーム

【課題】垂直振れに関するナイフの調整を単純化し迅速化するとともに、ナイフの生じうる振動幅及び振動数の全範囲にわたって、この調整を信頼性のあるものにする。
【解決手段】振動刃ミクロトームにおいて、切片化作業中、ナイフが切断平面に平行でナイフエッジに実質的に平行に振動し、その間切断平面に対して潜在的に存在する切断刃先の傾きにより横断方向変位が発生しうる。この横断方向変位を測定する測定装置は、その中に光通過センサの光を部分的に遮るように切断刃先を配置できる光通過センサを含む。ナイフの動きにより、振動刃ミクロトームはナイフの振動の時間的推移を記述する制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)を発生し、測定装置の電子測定システムはナイフの振動による光通過センサの遮断を変動信号(tpm)として測定し、制御アプリケーション信号により定義された時点での信号値から横断的変位を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動刃ミクロトーム及び振動刃ミクロトームの垂直振れ(垂直方向ランアウト、vertical runout)を測定する装置に関する。より正確には、本発明は、特に薄切(切片化、sectioning)工程の間、切断平面に平行で実質的に(即ちアラインメント精度の範囲内で)ナイフの切断刃先に平行な方向にナイフが振動するように作られた振動刃ミクロトーム、及び切断平面に対して潜在的に存在しうる切断刃先の傾きにより生ずる横方向の振動という意味での切断刃先の横断方向変位を測定するための、適切な測定装置に関する。この測定装置は、切断平面に平行になるように配向され、かつ切断刃先がその光の一部を覆う光通過センサの中に切断刃先を置くことができ、ナイフの振動により発生する、光通過センサから計測される時間的な変動信号を横断方向変位の決定に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
切片切断対象物を一方の水平方向に移動させつつ、切断刃先の向きに沿って切断刃先を他方の水平方向に振動させることによって水平切断平面に沿って切片化するという振動刃ミクロトームは、例えば本出願人によるDE19645107C2及びDE202004007658U1によって良く知られている。この種の振動刃ミクロトームは、例えば脳組織のような液体(緩衝液)中の組織試料や、塑性的(plastic)な安定性が低い及び/又はゲルのような粘稠度を持つ他の材料の切片化に特に用いられる。良く見られる1つの構造は、試料が垂直方向(Z軸)に底部から上部に段階的に供給される。個々の薄切工程の間、ナイフが試料に対して水平方向(X軸)に薄切速度で移動する。この状況で、それは切断刃先に実質的に平行に、即ち他の運動方向(X,Z軸)と直角方向(Y軸)に振動し、その振動周期は典型的には100Hz程度、例えば90から100Hzの範囲である。しかしナイフ及びナイフホルダの公差により、切断刃先は振動方向と厳密に平行には動かないことが必然的である。斜めにクランプされたナイフは、振動によりZ方向に対応した動きを生じる。この横断方向の振動変位(transverse vibratory offset,即ち切断平面に直角でこの場合Z方向に延びる)は、垂直振れ(vertical runout)ともいう。垂直振れにより、切片は波状のパターンを示す。
【0003】
振動刃ミクロトームの電気的制御システムは、論文「改良スライス技術を用いた脳組織スライスにおけるパッチクランプレコーディング」(Pfluegers Arch-Eur. J. Physiol.(2002)443:491-501, J.R.P. Geiger, et.al.)に記載され、著者らはナイフ振動に関する横断方向変位を測定するための測定ヘッド(「振動プローブ」という。)を提案している。この測定ヘッドは、LEDにより放射され、フォトダイオードで検出されるIR光線ビームとともに作動し、光線ビーム路内に置かれた切断刃先が(部分的に)覆う光線ビームの強度又は強度の時間的変化を測定する。かくて切断刃先の振動動きにより生じる垂直振れは出力信号の振動を生じるので、切断刃先のアラインメントを適切に手動で調整することにより、この振動幅を最小化すればよい。調節ねじ(ナイフを傾斜させるための)により、ナイフエッジが振動方向と平行にアライン調節され、ナイフの垂直振れはこうして最小化される。
【特許文献1】DE19645107C2
【特許文献2】DE202004007658U1
【非特許文献1】“Patch-clamp recording in brain slices with improved slicer technology”, Pfluegers Arch-Eur. J. Physiol.(2002)443:491-501, J.R.P. Geiger, et.al.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナイフエッジのこのアラインメント調整作業は、特にナイフの枢動(pivoting)は通常Z位置の再調整(リアラインメント)を伴うため時間がかかり、面倒である。一方、迅速な調整作業は、試料の寿命が短く、迅速に処理すべき場合には非常に有利である。
【0005】
従って本発明の目的は、垂直振れに関するナイフのアラインメント調整を単純化し迅速化するとともに、ナイフの生じうる振動幅及び振動数の全範囲にわたって、この調整を信頼性のあるものにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、本発明の第1の視点において、最初に記述した種類の測定装置に付加された、本発明に係る電子測定システムにより達成される。即ち、この電子制御システムは、ナイフ振動の時間的推移を記述する1以上の制御アプリケーション信号を受け、この制御アプリケーション信号により決定される時点(複数)での光通過センサ(light barrier, Lichtschranke,光バリア)から導かれる測定信号値(複数)をもとに切断刃先の横断方向変位(垂直振れ)を決定するように構成される。この制御アプリケーション信号は、好ましくはナイフ又はナイフホルダの動きから導かれる1以上の信号をもとに、振動刃ミクロトームの一部で生成される。
【0007】
本発明の第2の視点において、切断平面に平行かつ、実質的にナイフの切断刃先に平行な方向に振動するよう適合したナイフを含む振動刃ミクロトームが提供される。振動刃ミクロトームは、電子制御システムを有し、この電子制御システムは、ナイフの振動的動きから導かれる振動信号から、ナイフの振動の時間的推移を記述する1以上の制御アプリケーション信号を発生し、そしてさらに切断平面に対する切断刃先の潜在的に存在しうる傾きによる横方向の振動的動きという意味での切断刃先の横断方向変位を測定するために、その制御アプリケーション信号を、振動刃ミクロトームに備えられ、切断刃先をその中に配置できる光通過センサを有する測定装置に伝えるように構成される。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の各視点において、測定時点を定義する定位相信号を用いることにより、横断方向変位(垂直振れ)の測定の精度及び再現性を実質的に向上させることができる。さらに、妨害作用を容易に、或いは完全に除去することができる。これにより、垂直振れに関するナイフのアラインメント調整を単純化し迅速化するとともに、ナイフの生じうる振動幅及び振動数の全範囲にわたって、この調整を信頼性のあるものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
測定操作をさらに容易化する1つの好適な実施形態は、ナイフの振動最大時の位置を規定する1以上の制御アプリケーション信号と、測定信号から対向する(正・負反対側の双方、opposite)振動最大時の切断刃先の横断方向位置に対応する値(複数)を求め、さらにこれらの数値の差から横断方向変位を決定するための電子測定システムを備える。
【0010】
測定装置は、振動刃ミクロトームから取外し可能なユニットとして、測定装置の中に収納される電子測定システムとして好ましく実施可能である。これにより薄切作業中に試料に近づきやすいことに加え、操作が簡単になる。
【0011】
測定装置は、特に取外し可能なユニットとして実施した場合、好ましくは測定した横断方向変位量を示す信号を発生し、その信号を例えば振動刃ミクロトームに関連したディスプレイに表示するために振動刃ミクロトームに送ることができる。
【0012】
光通過センサは、(この場合は単に想定される)切断平面に平行方向に配向されるとさらに有用である。
【0013】
妨害作用をあらかじめ取り除くため、電子測定システムは、横断方向変位を決定する前に光通過センサの光線ビーム強度を調節するよう、即ち切断刃先が光通過センサから完全に外れている位置にあるときに光通過センサの検出要素の変調範囲の90%を超える、例えば95%の使用率が達成されるように、追加的に構成されるとさらに有利である。
【0014】
振動刃ミクロトームの有利な改良は、上述の測定装置に必要な変更を加えた改良に対応する。
【0015】
本発明をさらなる利点とともに、添付図面に示された非制限的に例示する実施形態を参照して、以下に詳述する。
【0016】
以下に示す典型的な実施形態は、垂直振れ測定装置が測定ヘッドの形式で試料ホルダのかわりに備えられた振動刃ミクロトームに関する。検出要素は、垂直振れ(変位)に依存(比例)して、出力信号が生ずるよう設定される。検出要素の線形(リニア)変調領域の決定は、各測定の開始時に下部にある測定ヘッド部で行われ、放射要素(光源装置)の光通過センサ(即ち光ビーム内を物体が通過ないしビーム内に物体が侵入したことを検出するセンサ)の強度は、(遮断されていない)検出要素がその線形変調領域の上限値に近いところで作動するようにセットされる。測定そのものは、線形変調領域の中間で、典型的にはナイフにより50%遮断されるところで行われる。この操作による結果は、各測定操作は個々に較正されるので、大部分が長期的(温度、外部からの光、部材のずれ)妨害作用(即ちドリフト)に無関係である。
【0017】
測定ヘッドは全体として、手動による等化が必要な調整要素を必要としない。本発明によれば、測定操作のためにミクロトームの電子システムから測定装置に、ナイフの振動作用を記述する(表わす)、即ち振動するナイフの左右方向の最大振幅位置の時点での正確な位置(複数)を定義(規定)する信号が全時間にわたって供給される。この制御アプリケーション信号の基礎は、振動的な動きをするフィードバックされたナイフの位置信号のゼロ交差点を測定することにより得られる、ナイフの振動周期のデジタル測定からなる。これにより、時間測定の分解能は非常に広い範囲で振動の振幅及び周波数に依存しないことを保証する。制御アプリケーション信号は、ゼロ交差点の前後各4分の1周期の信号パルスを含む。振幅の実際の値のサンプリングも同様に、これらの信号パルスを用いて達成される。これにより、ナイフの傾きの決定は常にナイフの振動に同期して行われることを確実にする。測定時点は非常に正確であるので、測定結果は小さな変動範囲で安定しており、非常に正確に決定でき、振幅の0.1%又はそれ以下の分解能が達成される。
【実施例】
【0018】
構造
図1は、外観配置及び機械的特徴はガイガー(J.R.P. Geiger)らによる振動刃ミクロトームに基づく振動刃ミクロトーム1を示すものであるが、その電子制御システムは本発明に従って改良されたものであり、以下に図3を参照して説明する。振動刃ミクロトーム1は、それ自体は公知のように、図2に示すように薄切りする材料(図示していないが試料及び試料キャリヤ)の上の伸張アームの形で配置される振動ヘッド2とホルダ4を含む。ホルダ4には、垂直振れを測定、補償するため、試料ホルダのかわりに垂直振れ測定ヘッド3がクランプレバー4aにより操作可能なクランプ機構により取り付けられている。
【0019】
振動ヘッド2は、ナイフ6をしっかりとクランプするナイフホルダ5を含む。図示の典型的な実施形態においては、切断平面は水平に広がっており、選択的に順次処理する場合、切片断面は垂直に順次上昇していく。このため、振動ヘッド2及びホルダ4(測定ヘッド3とともに)は相互に対して垂直(Z軸)に動くことができ、ホルダはこのために例えばステッピングモータ(図示せず)を振動刃ミクロトーム1の下部領域に含む。振動ヘッド2に設けられた永久磁石+コイル+スプリングの組合せ(図示せず、これに関して参考;J.R.P. Geigerらの論文)により、水平横方向(Y軸)に発生する振動は、ナイフ6とともにナイフホルダ5に伝えられる。振動ヘッド2は、DCモータ(図示せず)により(装置の)水平長軸方向(X軸)に移動する。さらに、DCモータを試料キャリヤ(図示せず)に同様に設置し、薄切工程の間振動ヘッドはX軸方向に動かず(送られず)に、試料をX軸方向に制御された均一な動きをさせることができる。
【0020】
図示の典型的な実施形態ではない他の実施形態において、前記の3つの方向X、Y、Zは、必要なら異なる方向に向けることができる。すぐに明らかとなるように、ここで用いる「水平長軸方向」、「水平横方向」及び「垂直方向」とは、現実の方向であるX軸(送り方向)、Y軸(振動方向)及びZ軸(切断平面に直角に横切る方向、即ち横断方向)に、必要な変更を加えたものと理解される。
【0021】
図1に戻って、ナイフホルダ5は振動ヘッド2の先端部に取り付けられており、ナイフ6は下端部に保持されナイフの切断刃先がナイフホルダから飛び出ている。公知のやり方で、ナイフ6は所望の薄切結果を得るために切断平面に向けて(より正確にはX軸に向けて)傾けて配向されている。切断刃先は、理想的には厳密にY軸に平行即ちX及びZ軸に直角に、延在している。調節ねじ7により、ナイフホルダ5はガイド軸8の周りを枢動(回動)可能である。例えば調節ねじを1回転させると、ナイフを5.3mrad傾けることに相当する(切断刃先が1mm水平横方向に移動すると垂直振れが5.3μm変化することに等しい)。
【0022】
図2を参照すると、測定ヘッド3は、(赤外線)IRLEDを放射要素とし、IRフォトダイオードを検出器として構成する光通過センサをX軸方向に含んでいる。光通過センサの光軸9は図2では一点鎖線で示されている。光通過センサの横方向の広がり(LEDとフォトダイオードに加え測定ヘッドにある開口の横方向の広がりで規定される)は1mmオーダーの大きさであり、1回の振動振幅での垂直振れ(vertical offset)よりも実質的に大きい。ナイフはIR光線ビームの約50%がカバーされるように配置される。フォトダイオードは切断刃先の下を妨げられないで伝わるIR光線ビームの量即ち、切断刃先(ナイフ)により覆われる(遮断される)光通過センサの量を測定する。垂直振れを補償する目的は、振動(Y軸に沿った周期的振動)が開始されたときにカバーする量の変動を1周期あたりできるだけ小さくし、理想的には一定になるように、切断刃先の軌道(path)を調整することである。
【0023】
広がりに関しての光線ビーム9の制限、特に切断刃先のZ方向の位置をより直接に解像(検出)することを可能にする別のアプローチとなりうるZ方向の制限は考慮されなかった。それに関連して光の強度(従って感度)が大きく減少するからである。
【0024】
既に述べたように、図1及び2は垂直振れを補償する測定ヘッドを取付けた振動刃ミクロトーム1を示す。ナイフホルダ5が調節された後、測定ヘッドは取外され、薄切りする試料を持った試料キャリヤに交換される。
【0025】
図3に示す制御パネル10は、例えば振動刃ミクロトームと接続ケーブルを介して接続される分離制御コンソールとした実施形態である。制御パネル10により、振幅、Z位置及びX方向の送り量(試料ホルダのみ)等の数値がセットでき、垂直振れの測定結果が必要に応じ他の数値とともにディスプレイ11に表示できる。制御パネルのこのようなコンポーネントのいくつかの機能は本発明にとって不可欠であり、以下の議論により明らかになるであろう。ここで議論されない制御コンポーネントは本発明に重要でない役割のものか、或いは今後の展開ないし拡張のために留保しておくものである。
【0026】
電子制御システム
図4は振動刃ミクロトームの制御システムのブロックダイアグラムである。主制御システムC−1のコンポーネントは振動刃ミクロトーム1の本体内に内蔵されている。さらに制御及び駆動コンポーネントが振動ヘッド2(図4のボックスC−2)と測定ヘッド3(電子測定システムC−3)本体そして制御パネル10(ディスプレイシステムC−IO)に含まれている。
【0027】
振動ヘッド制御システムC−2は、振動ヘッド2即ちナイフホルダ5の振幅偏差を測定する。駆動は、アルミニウム台座ブロックと対になった固定空芯コイルL1及び永久磁石(図示せず、これに関して参考;J.R.P. Geigerらの文献)を用いて電子機械的に行われる。台座ブロックは横に設置した2枚の板ばねとともにばね−質量系を形成し、その共鳴(共振)周波数はばね定数と駆動ヘッドの質量で決まる。振動波形は正確にサイン波であり、(別途指示しない限り)導かれる信号も同様にサイン波となる。空芯コイルL1の駆動電流jl1は、主制御システムC−1から供給される。系の偏差はIR光測定部LS1により測定され、そのIRフォトダイオードは振動に応じて変化する電流(AC)を供給し、重畳されたDC成分を持つ。この測定電流js1は信号増幅器OP1で増幅され、電圧に変換され、DC電圧成分は分離して出力される。このAC電圧信号は、差動ライン出力ドライバOP2で再度増幅され、非反転及び反転電圧信号vs1,vs2として出力され、主制御システムC−1に送られる。信号は例えば振動ヘッド偏差1mmあたり1Vの電圧を持つ。測定された振動ヘッドの動き信号は、伝送路に沿って発生する干渉を補償するために、2つの相互反転信号の形で送られる。
【0028】
主制御システムC−1では、2つの信号vs1,vs2が(2つの信号の差分を計算することにより)差動増幅器OP3により、例えばAC電圧信号の形式で振動ヘッドの振動のための制御信号tp2に変換される。サンプル&ホールドスイッチSHは、制御信号tp2の振幅をDC電圧信号の形式で(例えば振動振幅1mmあたり1V,信号範囲0から3000mV)確認する。この信号は実際の数値v1として振幅制御回路OP4に送られ、設定値v0と比較され、実質的にPIコントローラとして作動し、振動ヘッドのコイルL1を作動振動周波数で駆動させる駆動信号jl1を発生する。
【0029】
制御信号tp2からは、ゼロ交差検出器OP5により矩形波信号trg1が生成され。そしてこの信号からは最大−最小検出器MC4により2つの制御信号pklo,pkhiが生成される。信号pklo,pkhiは、制御信号tp2の最小及び最大信号のその各時点における針状パルスである。信号pklo,pkhiのうちの1つは、上記のサンプル&ホールドスイッチSHにトリガー信号として送られる。信号pklo,pkhiはいずれも測定ヘッドの電子測定システムC−3に送られ、後者のため振動終端点を時間的に正確に規定するための制御アプリケーション信号(同期信号)としての役割を果たす。
【0030】
電子測定システムC−3は、例えば測定ヘッド3の底部に配置され、主制御システムC−1とディスプレイシステムC−IOと連絡するマイクロコントローラMC3により制御される。そしてその目的のため、公知のRS485によるシリアルバスSBUSを備えたシリアルモジュールSM3を含む。測定操作中、電子測定システムC−3は、例えばシリアルバスSBUSと信号pklo,pkhiの信号導線の他に、電子測定システムへの電圧供給(15V)を含むケーブル導線(図1、2には図示せず)を介して主制御システムC−1と接続されている。
【0031】
測定ヘッドの光通過センサ装置は、図4において参照符号LS2で象徴的に示されている。放射ダイオードは、制御信号tpa2を介してマイクロコントローラMC3により決められた強度で電流を供給する電流源OP6で電力供給される。検出ダイオードは検出電流を出力し、信号増幅器OP7により電圧信号tpa3に変換される。さらに、追加の増幅器OP8を、増倍器の形式で振幅スケール制御器(amplitude scaler)として備え、電圧信号tpa3の大きさを任意のスケールで(例えば1mVを1μmのナイフ移動に対応させ、又は1mVを調節ねじ7の1回転に対応させる)割り当てることができる。スケールファクタtpa1はマイクロコントローラMC3により増幅器OP8に供給される。こうして得られた(任意のスケールの)電圧信号は、測定信号tpmとしてマイクロコントローラMC3に送られる。
【0032】
マイクロコントローラMC3は、制御アプリケーション信号pklo,pkhiにより規定された各時点における測定信号tpmの大きさを決定する。こうして得られるその瞬時値は、この場合振動信号tpmの正又は負のピーク値に対応するが、デジタル形式で一時記憶(バッファ)され、シリアルバスSBUSを介してディスプレイシステムC−IOに送られる。そこでその数値はマイクロコントローラMC2で受信され、制御パネル10のディスプレイ11に表示される。
【0033】
主制御システムC−1に戻り、マイクロコントローラMC1は、シリアルバスSBUSを介してシリアルモジュールSM1によって制御パネル10及び測定ヘッド3のマイクロコントローラMC2及びMC3と接続している。マイクロコントローラMC1は、例えば記憶レジスタVA,MX,MZにそれぞれ、振動振幅(設定信号v0としてコントローラOP4に伝達)、切片化フィード(送り)速度、及び切片厚さの値を保持する。これらの数値を用いて、モータ、特にX方向用DCモータM1及びZ位置決め用ステッピングモータM2が、それぞれに関するモータコントローラDMC,SMCにより制御される。(ナイフ刃)送り(前進)速度及びZ位置設定パラメータは、例えばコントロールつまみP1,P2を用いて制御パネル上で手動で設定される。制御パネル上のボタン(図3)の操作は、公知の仕方で制御パネルのマイクロコントローラMC2により検知され、シリアルバスSBUS(シリアルモジュールSM2)を介して主制御システムのマイクロコントローラMC1に報告される。
【0034】
垂直振れ測定
垂直振れの調整手順は例えば以下のようである。
【0035】
測定ヘッド3とミクロトームとの間の電気的結合は、例えば接続ケーブルをつなぐ(及びもし適用可能であれば制御パネル10に対応コマンドを入力する)ことにより行われる。準備完了は、制御パネル10のディスプレイ11に例えば「VCHECK」を表示することにより示される。
【0036】
ユーザは制御パネルのDOWNボタンを作動する。主制御システムが測定ヘッドのZ位置を最も低い位置に配置し、振動ヘッドがナイフを最も後ろの位置に配置する。ナイフ6の装着(及びナイフ傾斜のおおよその手動調整後)、クランプねじ12を締める。測定ヘッド3をホルダ4に装着し、クランプレバー4aで固定する。
【0037】
装着完了後、ユーザはRUNボタンを作動する。主制御システムが振動ヘッドを、ナイフ6が測定ヘッドの光通過センサ9の上方に位置するように前方に動かす。光通過センサはまだ完全に光通過状態にある(遮られていない)。そのうち、測定ヘッドのマイクロコントローラC−3が、制御信号tpa2を介して、変調能力の95%に相当する出力値に出力信号tpmが調整されるように光線ビーム強度をセットする。垂直振れ調整の初期に強度調節セットすることにより、外部からの光、温度変動等の生じうる妨害の影響が補償される。
【0038】
そして測定ヘッドがZ方向に沿って上方に動かされ、ナイフが光通過センサを一部遮る位置まで移動する。これはナイフが遮ることにより、tpm信号が初期値の所定値、例えば50%にまで例えば±1%誤差で低下することにより検知される。測定装置はこうしてZ位置と光量が線形関係にあり、そして最大の感度を与える動作位置にセットされる。
【0039】
もしも光を遮断できない場合、何か失敗しているので測定ヘッドは最も低いZ位置に戻される。
【0040】
光通過センサ内への位置決めが完了すると、制御パネルでセットされた振幅で振動が開始される。X方向への速度はゼロである。電子測定システムC−3が図4を参照して説明したように垂直振れを決定し、制御パネル上に表示するために測定結果をマイクロコントローラMC2に送る。例えば、「+3.4」と表示されれば、垂直振れは調節ねじを時計回りに3.4回転(負の場合は反時計回り)回せば修正されることを意味する。表示される数値は、他に例えばμm/mm(X方向変位についての関数としてのZ垂直振れ量)として表示されうる。
【0041】
ユーザは、表示を例えばSTOP又はPAUSEのような特別なボタンを作動することにより確認する。測定がいったん完了後、まだ停止していない場合、振動ヘッドの振動は停止する。そしてユーザはナイフ傾斜を調整できる。このため、ユーザはクランプねじ12を緩め、調節ねじ7を表示された数値だけ回転し、再度クランプねじ12を締める。
【0042】
この調整作業は、意図的に手動で行われることに注意すべきである。ナイフ傾斜の調整のために例えば、位置決めモータ又はピエゾ要素を備えればより単純化されるであろうが、経験的に、電気的或いは電子的な複雑さが増すことはさておき、この種の位置決め要素は振動ヘッドを不必要に重くし、振動ヘッドの振動挙動に望ましくない変化を生じさせることが判明している。
【0043】
通常、較正は最初の1巡で十分である。しかし測定操作を繰り返して数値を確認し、もし適切ならナイフ傾斜を再度調整することが好ましい。このため、ユーザはRUNボタンを作動し、上記の操作を最初から繰り返して実行する。原則として、垂直振れがゼロになるまで操作は必要なだけ繰り返すことができる。
【0044】
関連するZ位置は各調整サイクルごとにセットするので、各調整毎におけるナイフのZ位置の変化も同時に補償される。
【0045】
調整が完了すると、ユーザは確認のためDOWNボタンを作動する。測定ヘッドは最低部のZ位置に戻り、ナイフは元の位置に戻る。ここで(上述の新たな測定がスタートする)RUNボタン以外は受け付けない。システムは、測定ヘッドを取外し、ミクロトームとの電気的接続を解除するのを待つのみである。試料ホルダが所定の位置に装着、接続され、そしてすぐに薄切(スライシングないしセクショニング)操作が、制御パネル10を介して入力される変数、特に振動振幅及び(UP及びDOWNボタンによる)Z位置をもとに、いつもの方法に従って開始できる。
【0046】
スケールファクタの較正
スケールファクタtpa1の較正は、測定ヘッド3が例えばAUTO/MANボタンを作動することにより接続された時に、制御パネルから対応コマンドを入力したあとに完了する。振動ヘッドは、ナイフ6が測定ヘッドの光通過センサ9の上方に位置する場所に配置される。測定ヘッドマイクロコントローラMC3は、上述のごとく光線ビーム強度を調節できる。測定ヘッドは、Z方向に持ち上げられ、ナイフが光通過センサを一部覆い、垂直振れを測定する上記位置まで移動する。信号tpmの数値はマイクロコントローラMC3に一時記憶される。ユーザはそこで例えばディスプレイを介した指示出力により、調節ねじ7の設定を正確に1回転時計回りに変えるように要求される。ユーザが所定の回転を実行し、例えばRUNボタンでそれを示すと、新たな垂直振れの測定が行われる。信号tpmの2つの数値の差から、マイクロコントローラMC3は現在の制御信号tpa1の数値を修正するファクタを決定し、対応する修正を行い、そしてマイクロコントローラに備えたメモリEEPROM(図示せず)に保存し、信号tpa1の新たな数値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】垂直振れ測定ヘッドを装着した振動刃ミクロトームの一実施例の鳥瞰図である。
【図2】図1の振動刃ミクロトームの切断平面に垂直な断面で見た、測定ヘッド及び振動ヘッドの一実施例の断面図である。
【図3】振動刃ミクロトームの制御パネルの一実施例である。
【図4】振動刃ミクロトームと測定ヘッドの制御システムの一実施例を示すブロックダイアグラムである。
【符号の説明】
【0048】
1 振動刃ミクロトーム
2 振動ヘッド
3 測定ヘッド(測定装置)
4 ホルダ
4a クランプレバー
5 ナイフホルダ
6 ナイフ
7 調節ねじ
8 ガイド軸
9 光線ビーム(光通過センサの光軸)
10 制御パネル
11 ディスプレイ
12 クランプねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断平面に平行かつ実質的にナイフ(6)の切断刃先に平行に振動するように適合したナイフ(6)を含む振動刃ミクロトーム(1)のための測定装置(3)であって、
該測定装置(3)は、該切断刃先をその中に配置できるとともに、横方向の振動的動きの間、該切断平面に対する該切断刃先の潜在的に存在しうる傾きに伴う該切断刃先の横断方向変位(transverse offset)を測定するための光通過センサ(9)を含み、
該光通過センサは該切断平面及び該光通過センサの光を一部遮る該切断刃先に平行に配向されること、
該光通過センサから導かれる測定信号(tpm)の全時間にわたる変動は該ナイフの振動により発生し、該変動は横断方向変位の決定に用いられること、
該測定装置(3)は、該ナイフの振動の時間的推移を記述する1以上の制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)を受け、そして該制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)により決定される時点(複数)における該光通過センサから導かれる該測定信号(tpm)の値(複数)をもとに該切断刃先の該横断方向変位を決定するように構成される、電子測定システム(C−3)をさらに含むことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記1以上の制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)は前記ナイフ(6)の振動最大時の位置を規定し、前記電子測定システム(C−3)は前記測定信号(tpm)から対向する(正負の)振動最大時(複数)の切断刃先の横断方向位置に対応する値(複数)を求め、さらにこれらの値の差から前記横断方向変位を決定することを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定装置(3)は、前記振動刃ミクロトーム(1)から取外し可能なユニットとして構成され、及び前記電子測定システム(C−3)は前記測定装置の中に収納されることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定装置(3)は、測定された前記横断方向変位の大きさを記述する信号を生成し、該信号を前記振動刃ミクロトーム(1)に送るように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記電子測定システムは、前記横断方向変位を決定する前に前記光通過センサの光線ビーム強度を調節するよう、即ち前記切断刃先が前記光通過センサから完全に外れている位置にあるときに前記光通過センサの検出要素の変調範囲の90%を超える、例えば95%の使用率が達成されるように追加的に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記光通過センサ(9)は、前記切断平面に平行方向に配向されていることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
切断平面に平行かつ、実質的にナイフ(6)の切断刃先に平行な方向に振動するよう適合したナイフ(6)を含む振動刃ミクロトーム(1)であって、
電子制御システム(C−1)をさらに含み、該電子制御システム(C−1)は、
該ナイフ(6)の振動的動きから導かれる振動信号(tp2)から、ナイフ(6)の振動の時間的推移を記述する1以上の制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)を発生し、そして該切断平面に対する該切断刃先の潜在的に存在しうる傾きによる横方向の振動的動きという意味での該切断刃先の横断方向変位を測定するために、該電子制御システムは、該制御アプリケーション信号を、該振動刃ミクロトーム(1)に備えられ、該切断刃先をその中に配置できる光通過センサ(9)を有する測定装置(3)に伝えるようにさらに構成される、振動刃ミクロトーム。
【請求項8】
前記電子制御システムは、前記測定装置(3)から前記横断方向変位の大きさを記述する信号を受け、該信号を前記振動刃ミクロトームに結合されるディスプレイ(11)に表示するように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の振動刃ミクロトーム。
【請求項9】
前記1以上の制御アプリケーション信号(pklo,pkhi)は、前記ナイフ(6)の最大振動時の位置を規定することを特徴とする、請求項7に記載の振動刃ミクロトーム。
【請求項10】
前記測定装置(3)は、前記振動刃ミクロトーム(1)から取外し可能なユニットとして備えられ、前記電子制御システム(C−1)と電子的に連絡可能なように別の電子測定システム(C−3)を有することを特徴とする、請求項7に記載の振動刃ミクロトーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58316(P2008−58316A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224532(P2007−224532)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】