垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置、及び垂直磁気記録媒体
【課題】短時間にサーボ特性を最適にする垂直磁気記録媒体の初期化方法を提供する。
【解決手段】保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【解決手段】保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置、及び垂直磁気記録媒体に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる垂直磁気記録ディスクに、フォーマット情報等の磁気情報パターンを垂直磁気記録する前に実施される初期化についての垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置及びこの初期化方法で初期化された垂直磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているハードディスクドライブ(以下、HDD)に使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーからドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。
【0003】
磁気ディスクなどの磁気記録媒体は、その磁性層の面内に磁化容易軸を有する面内磁気記録媒体、及び、磁性層の面に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直磁気記録媒体に分類される。
【0004】
従来は、面内磁気記録媒体が用いられていたが、近年は、記録密度の向上(記憶容量の増大)に有利な垂直磁気記録媒体や、垂直磁気記録媒体への垂直磁気記録方法の開発が行われており、市場への導入が進められている。
【0005】
このような垂直磁気記録方式導入の前段階として欠かせない技術に垂直磁気記録媒体(以降、単に磁気記録媒体または媒体と称する場合がある。)の初期化方法が挙げられる。磁気記録媒体の初期化方法には、一般に、直流消磁方法と、交流消磁方法とがある。
【0006】
直流消磁方法とは、磁気記録媒体に、その表面に垂直な方向の直流の磁界を印加して消磁を行う消磁方法である。この直流消磁を行うと、磁気記録媒体内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、媒体表面に対して垂直になり、かつ、S極、N極の向きも一方向に揃うことになる。ここで、S極、N極の向きが一方向に揃った消磁を、これ以降、「一方向消磁」と称する。
【0007】
交流消磁方法とは、磁気記録媒体に、その表面に垂直な方向の交流の磁界を印加して消磁を行う消磁方法である。通常、HDDに記録される最小信号の2倍以上の周波数で交流磁界を印加し、磁化記録することで交流消磁は行われ、交流消磁部分を再生ヘッドで再生した場合、磁気記録媒体内の磁性層の磁気モーメントのS極、N極をほぼ同時に読み取るために、実効的に磁気モーメントの総量が0に近く測定される。
【0008】
また、垂直磁気記録媒体の表面に対して垂直ではなく、平行に磁界を印加する消磁方法が、非特許文献1に開示されている。非特許文献1には、外部磁界印加による全面一括の交流消磁方法とその特性結果が述べられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE Transactions on magnetics, vol. 41(2005) 3127.“Bulk AC-Er assure Technique for Perpendicular Recording Media: Effect of Exchange Coupling”E. N. Abarra, Paramjit Gill, B. R. Acharya, J. Zhou, M. Zheng, G. Choe, and B. Demczyk.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この非特許文献1にみられる平行磁界を印加することによる消磁方法の場合、磁気記録媒体内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、平行磁界の印加中は平行磁界にならって媒体表面に対して平行に向き、平行磁界の印加を止めると、磁気モーメントの再配列が発生し、S極、N極の向きは、ランダムになり、磁気記録媒体内の磁性層に残留する磁化量は0になる。ここで、S極、N極の向きがランダムになっている消磁を、これ以降、「ランダム消磁」と称する。
【0011】
しかしながら、非特許文献1には、消磁方法についての簡単な説明と、その特性結果が、開示されているのみであり、開示された内容のみで実際に製品に適用可能な垂直磁気記録媒体の消磁(初期化)を行うことは不可能であった。
【0012】
本発明者等の鋭意研究により、非特許文献1に記載されたような、垂直磁気記録媒体の表面に平行な磁界を印加することにより消磁を行うには、非特許文献1に記載されていない幾つかの課題を解決する必要があることを見いだした。
【0013】
その課題とは、次の通りである。即ち、磁気記録媒体の表面に平行な磁界(水平磁界と称する。)のみを磁気記録媒体に印加することは、実際には極めて困難であり、必ず磁気記録媒体表面に垂直な磁界(垂直磁界と称する。)成分も含んで印加されるということである。そして、垂直磁界成分を含んで磁界が磁気記録媒体に印加されることにより、その垂直磁界成分の大きさによっては消磁が不可能になるということである。
【0014】
また、水平磁界成分の大きさも消磁に極めて大きな影響を与えると言うことである。
【0015】
更に、本発明者等の鋭意研究により、垂直磁気記録媒体の初期化された磁化状態が、サーボ特性に影響することを見いだした。サーボ特性を最適にする初期磁化方法は、従来は、知られていなかったが、本発明者等により、サーボ特性を最適にする初期化方法を発明した。
【0016】
本発明は、かかる実情に鑑み、短時間に初期化可能であり、サーボ特性を良好にする垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置及び垂直磁気記録媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
【0018】
即ち、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0019】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0020】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、前記磁界印加ステップでは、前記第2の磁界印加手段が、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn2≦1.17かつHah2/Hc2≧1.3になり、かつ、前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0021】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0022】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.2かつHah/Hc≧1.5になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0023】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0024】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、前記磁界印加ステップでは、前記第2の磁界印加手段が、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.2かつHah2/Hc≧1.5になり、かつ、前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0025】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、前記磁界印加手段は、前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haの大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0027】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0028】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.17かつHah2/Hc≧1.3になり、かつ前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、前記直流磁界Ha2の大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0029】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0030】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、前記磁界印加手段は、前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.2かつHah/Hc≧1.5になるように、前記直流磁界Haの大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0031】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0032】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.2かつHah2/Hc≧1.5になり、かつ前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、前記直流磁界Ha2の大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0033】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0034】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であることを主要な特徴にしている。
【0035】
これにより、垂直磁気記録媒体の径方向全体に水平磁界を印加することができ、かつ、垂直磁界の割合を少なくすることができるので、垂直磁気記録媒体のランダム消磁をより速く実施し、かつ、ランダム消磁特性を良好にすることができる。
【0036】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であり、かつ、前記第2の磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であることを主要な特徴にしている。
【0037】
これにより、垂直磁気記録媒体の径方向全体に水平磁界を印加することができ、かつ、垂直磁界の割合を少なくすることができるので、垂直磁気記録媒体のランダム消磁をより速く実施し、かつ、ランダム消磁特性を良好にすることができる。
【0038】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体は、前述の垂直磁気記録媒体の初期化方法で初期化され、その後サーボ信号を書き込まれた垂直磁気記録媒体であって、バースト部のトラック間部分は、本発明によりランダム消磁された磁化状態を維持することを主要な特徴にしている。
【0039】
これにより、サーボ特性が良好な垂直磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図5】媒体103内部に印加される磁界の垂直成分と水平成分とを示した概略図である。
【図6】垂直磁化媒体のM-Hカーブを示した図である。
【図7】媒体1に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図8】媒体2に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図9】媒体3に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図10】媒体1に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図11】媒体2に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図12】媒体3に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図13】トラック間部分に高周波信号を記録した従来のバーストA、B部について説明する説明図である。
【図14】媒体に記録するバーストパターンであってトラック間部分がランダム消磁状態であるものについて説明する説明図である。
【図15】サーボフォロイング性能評価結果を示す図である。
【図16】フーリエ変換したスペクトルを表す図である。
【図17】メジャーループを説明するための説明図である。
【図18】メジャーループを説明するための説明図である。
【図19】メジャーループを説明するための説明図である。
【図20】ランダム消磁状態の判定方法を示す図である。
【図21】一方向消磁の判定方法を示す図である。
【図22】一方向消磁を行った装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0042】
<垂直磁気記録媒体の初期化装置の構成>
本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化装置(以下、単に初期化装置と称する場合がある。)の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の初期化装置の概略図である。図2は、本発明の第2の実施形態の初期化装置の概略図である。図3は、本発明の第3の実施形態の初期化装置の概略図である。図4は、本発明の第4の実施形態の初期化装置の概略図である。
【0043】
本発明の第1の実施形態の初期化装置について説明する。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の初期化装置100は、2つの電磁石110,120と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの電磁石110,120は、初期化する対象の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0044】
電磁石110は、略C字形状のコア112と、コア112に巻かれたコイル114と、コイル114に電流を供給するための電流供給手段118と、を主に含んで構成される。コア112の両先端部同士、即ち電磁石110のN極とS極との間隔は、媒体130の径以上の大きさになるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界116にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0045】
電磁石120も同様に、略C字形状のコア122と、コア122に巻かれたコイル124と、コイル124に電流を供給するための電流供給手段128と、を主に含んで構成される。コア122の両先端部同士の間隔は、媒体130の径以上の大きさになるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界126にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0046】
また、電磁石110と電磁石120とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、電磁石110と電磁石120とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130の表面に垂直な磁界(以下、単に垂直磁界と称する場合がある。)が、媒体130に印加されることを防ぐことができ、媒体130の表面に平行な磁界(以下、単に平行磁界と称する場合がある。)を媒体130に印加することが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態においては、2つの電磁石を用いているが、1つの電磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの電磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0048】
また、1つの電磁石のみを用いる場合には、その電磁石のN極とS極との間に媒体130が設置されても良く、または、その電磁石のN極とS極との間の位置から前記N極と前記S極とを結ぶ直線に垂直な方向に前記電磁石から離れた位置に130媒体が設置されても良い。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態の初期化装置について説明する。第1の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0050】
図2に示すように、本発明の第2の実施形態の初期化装置200は、第1の実施形態において電磁石の代わりに2つの永久磁石210,220を用いたものである。即ち、初期化装置200は、2つの永久磁石210,220と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの永久磁石210,220は、初期化する対象である媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0051】
永久磁石210の両先端部のS極とN極との間隔、及び永久磁石220のS極とN極との間隔は、媒体130の径以上になるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界216、226にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0052】
また、永久磁石210と永久磁石220とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、永久磁石210と永久磁石220とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130に垂直磁界が、印加されることを防ぐことができ、媒体130に平行磁界を印加することが可能になる。
【0053】
ここで、二つの永久磁石の代わりに、一つを永久磁石、もう一つを電磁石を使用して上記構成にすることもできる。
【0054】
なお、本実施形態においては、2つの永久磁石を用いているが、1つの永久磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの永久磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0055】
また、1つの永久磁石のみを用いる場合には、その永久磁石のN極とS極との間に媒体130が設置されても良く、または、その永久磁石のN極とS極との間の位置から前記N極と前記S極とを結ぶ直線に垂直な方向に前記永久磁石から離れた位置に媒体130が設置されても良い。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態の初期化装置について説明する。第3の実施形態の初期化装置は、ほとんど第1の実施形態の初期化装置と同じなので、第1の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0057】
図3に示すように、本発明の第3の実施形態の初期化装置300は、第1の実施形態と比較すると、コア312の両先端部同士の間隔及びコア322の両先端部同士の間隔が、媒体130の径より小さくなるように構成されたものであり、それ以外は第1の実施形態と同じである。
【0058】
即ち、本発明の第3の実施形態の初期化装置300は、2つの電磁石310,320と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの電磁石310,320は、初期化する対象の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0059】
電磁石310は、略C字形状のコア312と、コア312に巻かれたコイル314と、コイル314に電流を供給するための電流供給手段318と、を主に含んで構成される。コア112の両先端部同士の間隔は、媒体130の径より小さくなるように構成されている。
【0060】
これにより、装置の巨大化を防ぐことができる。しかしながら、媒体130に印加する磁界の成分のうち、水平磁界の割合を多くするという点では、第1の実施形態の方が望ましい。
【0061】
また、電磁石310と電磁石320とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、電磁石310と電磁石320とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、第1の実施形態と同様に、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うという効果を得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第4の実施形態の初期化装置について説明する。第4の実施形態の初期化装置は、第2の実施形態の初期化装置とほとんど同じなので、第2の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0063】
図4に示すように、本発明の第4の実施形態の初期化装置400は、第2の実施形態において永久磁石410の両先端部のS極とN極との間隔が、媒体130の径より小さくなるように構成されたものであり、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0064】
即ち、初期化装置400は、2つの永久磁石410,420と、初期化する対象の媒体130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの永久磁石410,420は、初期化する対象である円盤状の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0065】
永久磁石410の両先端部のS極とN極との間隔、及び永久磁石420の両先端部のS極とN極との間隔は、媒体130の径よりも小さくなるように構成されている。これにより、装置の巨大化を防ぐことができる。
【0066】
また、永久磁石410と永久磁石420とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、永久磁石410と永久磁石420とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130に垂直磁界が、印加されることを防ぐことができ、媒体130に平行磁界を印加することが可能になる。
【0067】
なお、本実施形態においては、2つの永久磁石を用いているが、1つの永久磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの永久磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0068】
<垂直磁気記録媒体の初期化装置の作動>
次に、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化装置の作動について、図面を参照して説明する。
【0069】
図1を参照して、電流供給手段118、128が、コイル114、124に直流電流を供給することにより、電磁石110、120は、磁界を発生させる。発生した磁界は、電磁石110と電磁石120との間に設置された媒体130内に印加される。媒体130は、図示しない回転手段によって回転されながら磁界を印加されても良い。この時、電磁石110で発生した磁界と、電磁石120で発生した磁界は、媒体130の表面に平行な向きの磁界であり、かつ、媒体130内で同じ向きの磁界である。
【0070】
ここで、媒体130の表面に平行な向きの磁界を媒体130内に印加するためには、電磁石110、120に供給する電流を図示しない制御手段により制御し、または、電磁石110、120と媒体130との位置関係を図示しない調整手段により調整することにより行うことができる。
【0071】
また、これら制御手段による電流制御、調整手段による位置調整は、図示しない磁気センサにより印加磁界の水平方向磁界成分、垂直方向磁界成分の大きさをモニタしながら各磁界成分が所定の磁界強度になるように制御、調整することができる。
【0072】
媒体130の表面に平行な磁界が媒体130内に印加されることにより、媒体130内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、面内方向にならい、印加磁界を取り除いた後には、各々の磁気モーメントが媒体130表面に対して垂直方向に戻る。その際、各々の磁気モーメントは、一方向に揃わず、媒体130表面に対しては垂直であるが、磁気モーメントの向きはランダムになる。即ち媒体130は、ランダム消磁される。
【0073】
ここで、図3に示す第3の実施形態の初期化装置は、上述した図1で示される第1の実施形態の初期化装置と、同じ作動であるので、説明は省略する。また、図2、図4に示す第2の実施形態及び第4の実施形態の初期化装置は、電磁石の代わりに永久磁石を使用しただけで、作動そのものは同じであるので、やはり説明は省略する。
【0074】
<垂直磁界、水平磁界印加評価>
次に、媒体130に印加される、初期化のための磁界の垂直成分及び水平成分とSN比との関係について説明する。本発明者等は、鋭意研究の結果、媒体103の表面に平行な磁界(水平磁界)のみを媒体103内部に印加使用としても、印加する磁界の成分の内、水平磁界の割合を100%にすることは困難であり、実際には、いくらか媒体表面に垂直な磁界(垂直磁界)も含まれることを見いだした。
【0075】
ここで、図5を用いて説明する。図5は、媒体103内部に印加される磁界の垂直成分と水平成分とを示した概略図である。図5に示すように、媒体103の内部に初期化のための(消磁用の)直流磁界Haを印加しても、ほとんどの場合、磁界Haは、媒体103の平面に対していくらかの角度αを有して印加される。このため、Haは、水平方向の磁界成分Hahと、垂直方向の磁界成分Hazとを有することになる。
【0076】
この垂直方向の磁界成分Haz、及び水平方向の磁界成分Hahと、SN比との関係について以下のように評価を行った。
【0077】
(1)媒体の作製
媒体として、外形65mm(2.5インチ型)のガラス円板表面に真空成膜装置を使用してCoCrPtの膜を成膜し、薄膜のガラスハードディスクを作製した。この際、成膜装置の真空度、成膜装置に導入するアルゴンガスの圧力、ガラス円板の加熱温度、CoCrPt膜の膜厚を調整することにより、保磁力Hc及び核発生磁界Hnが異なる幾つかのガラスハードディスク(媒体)を作製し、媒体1〜媒体3とした。
【0078】
作成した媒体1〜3の保磁力Hc、核発生磁界Hnについて以下の表1に示す。なお、媒体1〜3は、それぞれ複数作製した。なお、媒体1〜3は、後述するサーボフォロイング性能評価にも使用される。
【0079】
【表1】
また、上記真空成膜装置の成膜条件の一例を下記に示す。
・成膜装置の真空度 1.33×10−5Pa(10−7Torr)
・成膜装置にアルゴンガス導入後の真空度 0.4Pa(3×10−3Torr)
・ガラス板加熱温度 200℃
・CoCrPtの膜厚 25nm
・磁束密度 5.7T(4500Gauss)
・保磁力Hc 199kA/m
ここで、核発生磁界Hnについて図6を参照して説明する。図6は、垂直磁化媒体のM-Hカーブを示した図である。垂直磁化媒体についてVSM等でM-Hカーブの測定をすると、図6に示すようなヒステリシスカーブを示す。ここで、VSMとは、試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer)のことであり、均一磁場中においた試料を一定の周波数・振幅で振動させ、試料近辺に配置した検出コイルに誘起される起電力をロックインアンプにより検出することで試料の磁化量を測定する装置のことである。また、M-Hカーブとは、横軸にVSM測定における印加磁場H、縦軸に磁場印加時に試料に誘起された磁化量Mをとったときの磁化量Mの印加磁場H依存の曲線のことである。
【0080】
この図に示すように、-Mrの磁化量を有する媒体に、徐々に+方向に磁界を印加すると、媒体の磁化量が変化し始める点が存在し、その点の磁界強度を核発生磁界または核生成磁場Hnと呼ぶ。核生成磁界Hnは、印加磁界の方向に媒体の磁化の向きがならい始める磁界強度のことである。
【0081】
(2)評価用信号の記録及び磁化状態評価
評価用信号として、L/S比が1であるパターンの信号をSTW(サーボトラックライタ:Servo Track Writer)を用いて媒体1〜3に記録した。ここで、L/S比とは、Line(+信号)と、Space(−信号)の比のことを言う。
【0082】
次に、ヘッドギャップ0.03μm、トラック幅0.055μmであるTMR(Tunneling Magneto Resistance)再生ヘッドを使用し、電磁変換特性測定装置(協同電子製:型番LS-90)を用いて媒体1〜3の磁化状態の評価を行った。
【0083】
その後、電磁変換特性測定装置で読み込んだ信号を、スペクトルアナライザを用いて周波数分解し、1次信号のピーク強度Sと、外挿したノイズNとからSN比を求めた。求めた評価用信号のSN比は、12dBであった。
【0084】
(3)水平磁界印加評価
媒体1〜3のそれぞれに、媒体の表面に平行な方向の直流磁界を印加し、印加後のSN比の測定を行った。SN比の測定は、上記(2)と同様に行った。水平磁界の印加は、図1に示される装置を使用し、印加磁界の強度を変化させて行い、変化させた強度の磁界印加ごとに媒体のSN比測定を行った。ここで、水平磁界を印加前の媒体1〜3の評価用信号のSN比は、上記(2)で求めたように12dBである。
【0085】
評価結果を図7〜図9に示す。図7は、媒体1に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。図8は、媒体2に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。図9は、媒体3に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【0086】
図7〜図9の横軸は、印加した水平磁界強度Hahと、媒体の保磁力Hcとの比を示し、縦軸は、水平磁界印加後の媒体のSN比を示す。図7〜図9に示されるように、Hc、Hnが異なるどの媒体1〜3においても、Hah/Hcが、1.3以上になる水平磁界を媒体に印加することによって、評価用信号は、SN比が2dB以下まで低減し、媒体が、確実に消磁されたことが分かった。
【0087】
また、Hah/Hcが、1.5以上になるように水平磁界を媒体に印加することによって、評価用信号は、SN比が1dB以下まで低減し、媒体が、より確実に消磁されたことが分かった。この評価結果より、媒体に印加する直流の水平方向磁界強度は、Hah/Hcが、1.3以上になる強度が好ましく、1.5以上になる強度がより好ましいといえる。
【0088】
ここで、Hah/Hcは、媒体の保磁力Hcに対する印加磁場の比率を表し、このHc比を用いることにより、印加磁場の水平磁界強度Hahがどの程度の値になったときにランダム消磁を行えるようになるかを簡便に知ることができる。
【0089】
なお、この評価により消磁された媒体1〜3は、N極、S極の向きが媒体表面に対して垂直方向にランダムにばらついたランダム消磁されたものであることを確認した。この確認は、VSM測定を行うことにより、該媒体のM-Hカーブがマイナーループをたどる経路を有することで確認した。また、メジャーループとの比較で、ランダム消磁の磁化状態が磁化量0であることも確認した。一方向消磁の場合は、本測定でのM-Hカーブは、メジャーループに重なることになる。
【0090】
ここで、更に図面を参照して詳細に説明する。図17〜図19は、メジャーループを説明するための説明図である。図20は、ランダム消磁状態の判定方法を示す図である。図21は、一方向消磁の判定方法を示す図である。
【0091】
図17〜図19を参照して、メジャーループとは、一方の飽和磁化が生じるまでの磁界強度の磁界を印加した後(状態(1))(図17参照)、続いて逆方向への飽和磁化になるまで逆方向の磁界強度の磁界を印加し(状態(2))(図18参照)、再び最初の飽和磁化方向へ飽和磁化するまでの磁界強度の磁界を印加する(状態(3)=状態(1))(図19参照)ことで得られる、(1)〜(2)〜(3)での磁化状態変化の曲線を言う。
【0092】
即ち、図17を参照して、初期状態が磁化0(ランダム消磁状態)状態の時、磁界印加に伴い、発生する磁界は図17の太線のような経路をたどって状態1に行き着く。この時、経路はメジャーループから外れるので、マイナーループと呼ばれる。
【0093】
次に、図18を参照して、状態1の磁化状態にマイナス方向に印加磁界をかけるとメジャーループに沿って磁化は状態2になる。図19を参照して、状態2の磁化状態にプラス方向に印加磁界をかけるとメジャーループに沿って、磁化は状態3(=状態1)になる。このような、状態1〜状態3の磁化変化の曲線を合わせて、M−Hカーブ(メジャーループ)と呼ぶ。
【0094】
次にランダム消磁状態の判定方法について説明する。図20を参照して、媒体が、ランダム消磁状態であれば、初期の磁化状態は磁化が0なので、VSM測定の際、磁化変化の経路はマイナーループをたどることになる。また、メジャーループとの比較で、初期の磁化量がどの位置にあったかも検出できる。
【0095】
このように、マイナーループをたどること、初期の磁化量が0であること、を確認することにより、媒体が、ランダム消磁状態であったことを確認できる。
【0096】
次に、一方向消磁の判定方法について説明する。図21を参照して、媒体が、一方向消磁されている場合、VSM測定の際、図21に示すように磁化変化の経路は、メジャーループをたどることになる。このように、メジャーループをたどることを確認することによって、媒体が、一方向消磁されていることを判定できる。
【0097】
(4)垂直磁界印加評価
媒体1〜3のそれぞれに、媒体の表面に垂直な方向の直流磁界を印加し、印加後のSN比の測定を行った。SN比の測定は、上記(2)と同様に行った。ここで、直流磁界の印加による一方向消磁について図面を参照して説明する。図22は、一方向消磁を行った装置の概略図である。図22に示すように、直流磁界の印加は、二対の永久磁石からなる対向磁石を用いて行った。二対の永久磁石のうち、一方の磁石のN極に対して、もう一方の磁石のS極を合い向かいに設置することで直流磁界を発生させた。その二対の永久磁石の間の直流磁界中に媒体を通すことで媒体に直流磁界を印加した。印加磁界強度は二対の磁石の間隔を変えることで調整した。このようにして、印加磁界の強度を変化させることにより、変化させた強度の磁界印加ごとに媒体のSN比測定を行った。ここで、水平磁界を印加前の媒体1〜3の評価用信号のSN比は、上記(2)で求めたように12dBである。
【0098】
評価結果を図10〜図12に示す。図10は、媒体1に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。図11は、媒体2に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。図12は、媒体3に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【0099】
図10〜図12の横軸は、印加した垂直磁界強度Hazと、媒体の核発生磁界Hnとの比を示し、縦軸は、垂直磁界印加後の媒体のSN比を示す。図10〜図12に示されるように、直流の強い垂直磁界を媒体に印加すると、即ちHaz/Hnの値が大きい垂直磁界を媒体に印加すると、SN比が小さくなり、媒体1〜3は消磁される。
【0100】
ここで、直流の垂直磁界を媒体に印加すると、N極、S極の向きが媒体表面に対して垂直であって、かつ、一方向に揃った一方向消磁されることになる。つまり、ここで成されている消磁は、一方向消磁である。
【0101】
本発明においては、ランダム消磁を行うことを目的にしている。発明者等の鋭意研究により、媒体に印加する直流磁界に、媒体表面に対して垂直な磁界成分が含まれていると、水平磁界は、媒体をランダム消磁しようとし、垂直磁界は、媒体を一方向消磁しようとするので、消磁が不安定になり、結局、媒体に印加する磁界成分のうち、水平磁界と垂直磁界との割合によって、ランダム消磁と一方向消磁が合わさった消磁状態になり、結局ランダム消磁ではなくなってしまうことが判明した。
【0102】
図10〜図12に示されるように、Hc、Hnが異なるどの媒体1〜3においても、Haz/Hnが、1.2以下の場合は、垂直磁界印加前の評価信号のSN比である12dBから1dB以内の変動になっている。垂直磁界印加によるSN比の減少が1dB以下ならば、実質、媒体に付与される一方向磁化成分は十分に少ないので、同時に水平磁界を印加することによるランダム消磁には影響を与えない。よって、Haz/Hnの値が1.2以下になるように垂直磁界成分の強度を調整することが好ましい。
【0103】
なお、SN比の減少が1dB以下であることは、最も好ましいが、1dB以下でなければならないわけではない。言い換えると、ランダム消磁にとって垂直磁界印加によるSN比の減少が、3dB以下であることが好ましく、2dB以下であることは更に好ましく、1dB以下であることが最も好ましい。
【0104】
ここで、Haz/Hnは、媒体の核発生磁界Hnに対する印加磁場の比率を表す。このHn比を考えることにより、印加磁場の水平磁界強度Hazがどの程度の場合に、一方向消磁が可能になるかを簡便に知ることができる。これにより、Hnが異なる媒体を扱う際にも同じ指標で考えることができる。
【0105】
<サーボフォロイング性能評価>
次に、サーボフォロイングの性能評価について説明する。STW(サーボトラックライタ)を用いて、上記媒体1〜3にサーボ信号(出力形バースト信号)の書き込みを行い、サーボPES(Position Error Signal)について評価した。
【0106】
STWを用いてサーボ信号が書き込まれたサーボ部は、媒体の最内周でのサーボ基本ビット長が60nm、層セクタ数が240、トラック幅が60nm、であり、かつ、プリアンブル(45bit)/サーボマーク(10bit)/SectorCode(8bit)、CylinderCode(32bit)/Burstパターンで構成した。
【0107】
サーボマーク部は、“0000101011”であり、SectorはBinary、CylinderはGray変換を用いた。Burst部は、一般的な出力型バースト信号(ABCDバースト)(40bit)を用いた。
【0108】
実施例1〜6と比較例1〜3は、媒体1を使用し、実施例7〜12と比較例4〜6は、媒体2を使用し、実施例13〜18と比較例7〜9は、媒体3を使用し、比較例10は、媒体2を使用した。
【0109】
比較例10以外の全ての実施例、比較例は、STWによって媒体にサーボ信号を記録する際、ABCDバーストのトラックとトラックの間であるトラック間部分には信号記録を行わず、トラック間部分が、本発明の初期化方法で初期化されたランダム消磁の状態のままにした。比較例10については、トラック間部分は、従来から行われているように、STWにより基本周波数(基本周波数とは、各トラックで測定されるビット信号のうち、最も波長が短い信号に対応する周波数のことを指す。)の2倍の高周波信号を記憶することにより交流消磁を行い、実効的に無磁化状態を作り出した。
【0110】
ここで、図13、図14を参照して更に説明する。図13は、トラック間部分に高周波信号を記録した従来のバーストA、B部について説明する説明図である。図14は、媒体に記録するバーストパターンであってトラック間部分がランダム消磁状態であるものについて説明する説明図である。
【0111】
図13に示すように、従来は、トラック間部分に、ヘッドの読み取り幅よりも小さい基本周波数の2倍の周波数の信号を記録していた。これにより、ヘッドは、信号をプラスともマイナスとも読めず、実効的に無磁化状態と同じ効果を有していた。本発明においては、図14に示すように、トラック間部分は、ランダム消磁された状態になっている。
【0112】
サーボPESの評価は、評価装置としてアイメス社製(BitFinder)のものを用いて行った。VCMモードにしたヘッドを前記評価装置に装着し、サーボフォロー状態でのPESを測定した。
【0113】
50周分の各セクタのPES測定値から標準偏差(σ)を求め、3σ値がトラックピッチ(TP)の15%未満であれば良(○)、15%以上25%未満であれば可(△)、25%以上であれば不良(×)と判断した。
【0114】
評価結果を図15に示す。図15は、サーボフォロイング性能評価結果を示す図である。図15に示すように、媒体1〜3いずれも、ランダム消磁の条件が、Hah/Hcが1.30以上の時、PES3σ値でズレ量がTPの24%以下になった。このように、比較例10に示す、従来のトラック間部分に高周波信号を記録した例よりも良好な結果を示した。
【0115】
また、ランダム消磁の条件が、Hah/Hcが1.30以上で、かつ、Haz/Hnが1.17以下の時、PES3σ値でズレ量がTPの15%以下になった。このように、比較例10に示す、従来のトラック間部分に高周波信号を記録した例よりも更に良好な結果になった。
【0116】
以上より、サーボ信号記録媒体は、トラック間部分が、Hah/Hcが1.30以上になる条件でランダム消磁された状態であることが好ましく、Hah/Hcが1.30以上で、かつ、Haz/Hnが1.17以下になる条件でランダム消磁された状態であることが更に好ましい。これにより、従来のサーボ信号記録媒体よりもサーボフォロイング性能が良好なサーボ記録媒体を得ることができる。
【0117】
次に、トラック間部分をランダム消磁したサーボ信号記録媒体(以後、ランダム消磁媒体とも称する。)と、従来のトラック間部分に基本信号の2倍の周波数の信号を記録したサーボ信号記録媒体(以後、従来の媒体とも称する。)と、について、フーリエ変換したスペクトルを比較した。
【0118】
図16は、フーリエ変換したスペクトルを表す図である。図16に示されるグラフは、縦軸が振幅であり、横軸が基本周波数の何倍であるかを示す基本周波数に対する比率を示す。点線が、従来の媒体を示し、実線がランダム消磁媒体を示す。
【0119】
この図が示すように、ランダム消磁媒体を示す実線は、従来の媒体を示す実線よりも全体として低い位置にあり、これは、全体として従来の媒体よりもランダム消磁媒体の方が、ノイズが低いことを示している。また、従来の媒体を示す点線は、基本信号の2倍の周波数の信号を記録しているので、横軸が2の位置にピークが立っている。
【0120】
以上より、ランダム消磁媒体の方が、従来の交流消磁媒体よりもノイズが低いので優れていると言える。
【符号の説明】
【0121】
103…媒体、110…電磁石、112…コア、114…コイル、116…磁界、118…電流供給手段、120…電磁石、122…コア、124…コイル、126…磁界、128…電流供給手段、130…媒体、200…初期化装置、210…永久磁石、216…磁界、220…永久磁石、300…初期化装置、310…電磁石、312…コア、314…コイル、318…電流供給手段、320…電磁石、322…コア、400…初期化装置、410…永久磁石、420…永久磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置、及び垂直磁気記録媒体に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる垂直磁気記録ディスクに、フォーマット情報等の磁気情報パターンを垂直磁気記録する前に実施される初期化についての垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置及びこの初期化方法で初期化された垂直磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているハードディスクドライブ(以下、HDD)に使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーからドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。
【0003】
磁気ディスクなどの磁気記録媒体は、その磁性層の面内に磁化容易軸を有する面内磁気記録媒体、及び、磁性層の面に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直磁気記録媒体に分類される。
【0004】
従来は、面内磁気記録媒体が用いられていたが、近年は、記録密度の向上(記憶容量の増大)に有利な垂直磁気記録媒体や、垂直磁気記録媒体への垂直磁気記録方法の開発が行われており、市場への導入が進められている。
【0005】
このような垂直磁気記録方式導入の前段階として欠かせない技術に垂直磁気記録媒体(以降、単に磁気記録媒体または媒体と称する場合がある。)の初期化方法が挙げられる。磁気記録媒体の初期化方法には、一般に、直流消磁方法と、交流消磁方法とがある。
【0006】
直流消磁方法とは、磁気記録媒体に、その表面に垂直な方向の直流の磁界を印加して消磁を行う消磁方法である。この直流消磁を行うと、磁気記録媒体内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、媒体表面に対して垂直になり、かつ、S極、N極の向きも一方向に揃うことになる。ここで、S極、N極の向きが一方向に揃った消磁を、これ以降、「一方向消磁」と称する。
【0007】
交流消磁方法とは、磁気記録媒体に、その表面に垂直な方向の交流の磁界を印加して消磁を行う消磁方法である。通常、HDDに記録される最小信号の2倍以上の周波数で交流磁界を印加し、磁化記録することで交流消磁は行われ、交流消磁部分を再生ヘッドで再生した場合、磁気記録媒体内の磁性層の磁気モーメントのS極、N極をほぼ同時に読み取るために、実効的に磁気モーメントの総量が0に近く測定される。
【0008】
また、垂直磁気記録媒体の表面に対して垂直ではなく、平行に磁界を印加する消磁方法が、非特許文献1に開示されている。非特許文献1には、外部磁界印加による全面一括の交流消磁方法とその特性結果が述べられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE Transactions on magnetics, vol. 41(2005) 3127.“Bulk AC-Er assure Technique for Perpendicular Recording Media: Effect of Exchange Coupling”E. N. Abarra, Paramjit Gill, B. R. Acharya, J. Zhou, M. Zheng, G. Choe, and B. Demczyk.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この非特許文献1にみられる平行磁界を印加することによる消磁方法の場合、磁気記録媒体内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、平行磁界の印加中は平行磁界にならって媒体表面に対して平行に向き、平行磁界の印加を止めると、磁気モーメントの再配列が発生し、S極、N極の向きは、ランダムになり、磁気記録媒体内の磁性層に残留する磁化量は0になる。ここで、S極、N極の向きがランダムになっている消磁を、これ以降、「ランダム消磁」と称する。
【0011】
しかしながら、非特許文献1には、消磁方法についての簡単な説明と、その特性結果が、開示されているのみであり、開示された内容のみで実際に製品に適用可能な垂直磁気記録媒体の消磁(初期化)を行うことは不可能であった。
【0012】
本発明者等の鋭意研究により、非特許文献1に記載されたような、垂直磁気記録媒体の表面に平行な磁界を印加することにより消磁を行うには、非特許文献1に記載されていない幾つかの課題を解決する必要があることを見いだした。
【0013】
その課題とは、次の通りである。即ち、磁気記録媒体の表面に平行な磁界(水平磁界と称する。)のみを磁気記録媒体に印加することは、実際には極めて困難であり、必ず磁気記録媒体表面に垂直な磁界(垂直磁界と称する。)成分も含んで印加されるということである。そして、垂直磁界成分を含んで磁界が磁気記録媒体に印加されることにより、その垂直磁界成分の大きさによっては消磁が不可能になるということである。
【0014】
また、水平磁界成分の大きさも消磁に極めて大きな影響を与えると言うことである。
【0015】
更に、本発明者等の鋭意研究により、垂直磁気記録媒体の初期化された磁化状態が、サーボ特性に影響することを見いだした。サーボ特性を最適にする初期磁化方法は、従来は、知られていなかったが、本発明者等により、サーボ特性を最適にする初期化方法を発明した。
【0016】
本発明は、かかる実情に鑑み、短時間に初期化可能であり、サーボ特性を良好にする垂直磁気記録媒体の初期化方法、初期化装置及び垂直磁気記録媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
【0018】
即ち、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0019】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0020】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、前記磁界印加ステップでは、前記第2の磁界印加手段が、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn2≦1.17かつHah2/Hc2≧1.3になり、かつ、前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0021】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0022】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、を備え、前記磁界印加ステップでは、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.2かつHah/Hc≧1.5になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0023】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0024】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化方法は、前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、前記磁界印加ステップでは、前記第2の磁界印加手段が、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.2かつHah2/Hc≧1.5になり、かつ、前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加することを主要な特徴にしている。
【0025】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、前記磁界印加手段は、前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.17かつHah/Hc≧1.3になるように、前記直流磁界Haの大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0027】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0028】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.17かつHah2/Hc≧1.3になり、かつ前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、前記直流磁界Ha2の大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0029】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0030】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、前記磁界印加手段は、前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、Haz/Hn≦1.2かつHah/Hc≧1.5になるように、前記直流磁界Haの大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0031】
これにより、垂直磁気記録媒体を短時間にランダム消磁可能であり、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も良好にすることができる。
【0032】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、Haz2/Hn≦1.2かつHah2/Hc≧1.5になり、かつ前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、前記直流磁界Ha2の大きさと、前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、が調整されていることを主要な特徴にしている。
【0033】
これにより、垂直磁気記録媒体に対して、より一層消磁特性の良いランダム消磁を行うことができ、垂直磁気記録媒体のサーボ特性も更に良好にすることができる。
【0034】
また、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であることを主要な特徴にしている。
【0035】
これにより、垂直磁気記録媒体の径方向全体に水平磁界を印加することができ、かつ、垂直磁界の割合を少なくすることができるので、垂直磁気記録媒体のランダム消磁をより速く実施し、かつ、ランダム消磁特性を良好にすることができる。
【0036】
更に、本発明の垂直磁気記録媒体の初期化装置は、前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であり、かつ、前記第2の磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であることを主要な特徴にしている。
【0037】
これにより、垂直磁気記録媒体の径方向全体に水平磁界を印加することができ、かつ、垂直磁界の割合を少なくすることができるので、垂直磁気記録媒体のランダム消磁をより速く実施し、かつ、ランダム消磁特性を良好にすることができる。
【0038】
更にまた、本発明の垂直磁気記録媒体は、前述の垂直磁気記録媒体の初期化方法で初期化され、その後サーボ信号を書き込まれた垂直磁気記録媒体であって、バースト部のトラック間部分は、本発明によりランダム消磁された磁化状態を維持することを主要な特徴にしている。
【0039】
これにより、サーボ特性が良好な垂直磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の初期化装置の概略図である。
【図5】媒体103内部に印加される磁界の垂直成分と水平成分とを示した概略図である。
【図6】垂直磁化媒体のM-Hカーブを示した図である。
【図7】媒体1に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図8】媒体2に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図9】媒体3に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図10】媒体1に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図11】媒体2に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図12】媒体3に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【図13】トラック間部分に高周波信号を記録した従来のバーストA、B部について説明する説明図である。
【図14】媒体に記録するバーストパターンであってトラック間部分がランダム消磁状態であるものについて説明する説明図である。
【図15】サーボフォロイング性能評価結果を示す図である。
【図16】フーリエ変換したスペクトルを表す図である。
【図17】メジャーループを説明するための説明図である。
【図18】メジャーループを説明するための説明図である。
【図19】メジャーループを説明するための説明図である。
【図20】ランダム消磁状態の判定方法を示す図である。
【図21】一方向消磁の判定方法を示す図である。
【図22】一方向消磁を行った装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0042】
<垂直磁気記録媒体の初期化装置の構成>
本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化装置(以下、単に初期化装置と称する場合がある。)の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の初期化装置の概略図である。図2は、本発明の第2の実施形態の初期化装置の概略図である。図3は、本発明の第3の実施形態の初期化装置の概略図である。図4は、本発明の第4の実施形態の初期化装置の概略図である。
【0043】
本発明の第1の実施形態の初期化装置について説明する。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の初期化装置100は、2つの電磁石110,120と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの電磁石110,120は、初期化する対象の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0044】
電磁石110は、略C字形状のコア112と、コア112に巻かれたコイル114と、コイル114に電流を供給するための電流供給手段118と、を主に含んで構成される。コア112の両先端部同士、即ち電磁石110のN極とS極との間隔は、媒体130の径以上の大きさになるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界116にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0045】
電磁石120も同様に、略C字形状のコア122と、コア122に巻かれたコイル124と、コイル124に電流を供給するための電流供給手段128と、を主に含んで構成される。コア122の両先端部同士の間隔は、媒体130の径以上の大きさになるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界126にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0046】
また、電磁石110と電磁石120とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、電磁石110と電磁石120とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130の表面に垂直な磁界(以下、単に垂直磁界と称する場合がある。)が、媒体130に印加されることを防ぐことができ、媒体130の表面に平行な磁界(以下、単に平行磁界と称する場合がある。)を媒体130に印加することが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態においては、2つの電磁石を用いているが、1つの電磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの電磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0048】
また、1つの電磁石のみを用いる場合には、その電磁石のN極とS極との間に媒体130が設置されても良く、または、その電磁石のN極とS極との間の位置から前記N極と前記S極とを結ぶ直線に垂直な方向に前記電磁石から離れた位置に130媒体が設置されても良い。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態の初期化装置について説明する。第1の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0050】
図2に示すように、本発明の第2の実施形態の初期化装置200は、第1の実施形態において電磁石の代わりに2つの永久磁石210,220を用いたものである。即ち、初期化装置200は、2つの永久磁石210,220と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの永久磁石210,220は、初期化する対象である媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0051】
永久磁石210の両先端部のS極とN極との間隔、及び永久磁石220のS極とN極との間隔は、媒体130の径以上になるように構成されている。これにより、媒体130に印加する磁界の成分うち、そのほとんどを媒体130の表面に平行な磁界216、226にすることができる。そのため、媒体130の表面に垂直な磁界が、媒体130に印加されることを極力低減することが可能になる。
【0052】
また、永久磁石210と永久磁石220とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、永久磁石210と永久磁石220とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130に垂直磁界が、印加されることを防ぐことができ、媒体130に平行磁界を印加することが可能になる。
【0053】
ここで、二つの永久磁石の代わりに、一つを永久磁石、もう一つを電磁石を使用して上記構成にすることもできる。
【0054】
なお、本実施形態においては、2つの永久磁石を用いているが、1つの永久磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの永久磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0055】
また、1つの永久磁石のみを用いる場合には、その永久磁石のN極とS極との間に媒体130が設置されても良く、または、その永久磁石のN極とS極との間の位置から前記N極と前記S極とを結ぶ直線に垂直な方向に前記永久磁石から離れた位置に媒体130が設置されても良い。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態の初期化装置について説明する。第3の実施形態の初期化装置は、ほとんど第1の実施形態の初期化装置と同じなので、第1の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0057】
図3に示すように、本発明の第3の実施形態の初期化装置300は、第1の実施形態と比較すると、コア312の両先端部同士の間隔及びコア322の両先端部同士の間隔が、媒体130の径より小さくなるように構成されたものであり、それ以外は第1の実施形態と同じである。
【0058】
即ち、本発明の第3の実施形態の初期化装置300は、2つの電磁石310,320と、初期化する対象である円盤状の媒体(垂直磁気記録媒体)130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの電磁石310,320は、初期化する対象の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0059】
電磁石310は、略C字形状のコア312と、コア312に巻かれたコイル314と、コイル314に電流を供給するための電流供給手段318と、を主に含んで構成される。コア112の両先端部同士の間隔は、媒体130の径より小さくなるように構成されている。
【0060】
これにより、装置の巨大化を防ぐことができる。しかしながら、媒体130に印加する磁界の成分のうち、水平磁界の割合を多くするという点では、第1の実施形態の方が望ましい。
【0061】
また、電磁石310と電磁石320とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、電磁石310と電磁石320とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、第1の実施形態と同様に、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うという効果を得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第4の実施形態の初期化装置について説明する。第4の実施形態の初期化装置は、第2の実施形態の初期化装置とほとんど同じなので、第2の実施形態と異なる内容について説明し、同じ内容については説明を省略する。
【0063】
図4に示すように、本発明の第4の実施形態の初期化装置400は、第2の実施形態において永久磁石410の両先端部のS極とN極との間隔が、媒体130の径より小さくなるように構成されたものであり、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0064】
即ち、初期化装置400は、2つの永久磁石410,420と、初期化する対象の媒体130を回転させるための回転手段(図示せず)と、を主に備えて構成され、この2つの永久磁石410,420は、初期化する対象である円盤状の媒体130の表面を挟んで対向して配置されている。
【0065】
永久磁石410の両先端部のS極とN極との間隔、及び永久磁石420の両先端部のS極とN極との間隔は、媒体130の径よりも小さくなるように構成されている。これにより、装置の巨大化を防ぐことができる。
【0066】
また、永久磁石410と永久磁石420とは、それぞれの先端部の同極同士が媒体130の表面を挟んで対向するように設置され、永久磁石410と永久磁石420とが発生させる磁界が、媒体130内において同じ方向になるように構成される。これにより、対向する磁石からそれぞれ発生する磁力線同士が反発する効果が発生し、対向する磁石からそれぞれ発生する磁界のうち、垂直成分が打ち消し合うので、媒体130に垂直磁界が、印加されることを防ぐことができ、媒体130に平行磁界を印加することが可能になる。
【0067】
なお、本実施形態においては、2つの永久磁石を用いているが、1つの永久磁石のみを用いても本発明の課題を解決することが可能である。しかしながら、2つの永久磁石を用いて、それらを対向配置した本実施形態の方が、垂直磁界をより低減することができるので好ましい。
【0068】
<垂直磁気記録媒体の初期化装置の作動>
次に、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化装置の作動について、図面を参照して説明する。
【0069】
図1を参照して、電流供給手段118、128が、コイル114、124に直流電流を供給することにより、電磁石110、120は、磁界を発生させる。発生した磁界は、電磁石110と電磁石120との間に設置された媒体130内に印加される。媒体130は、図示しない回転手段によって回転されながら磁界を印加されても良い。この時、電磁石110で発生した磁界と、電磁石120で発生した磁界は、媒体130の表面に平行な向きの磁界であり、かつ、媒体130内で同じ向きの磁界である。
【0070】
ここで、媒体130の表面に平行な向きの磁界を媒体130内に印加するためには、電磁石110、120に供給する電流を図示しない制御手段により制御し、または、電磁石110、120と媒体130との位置関係を図示しない調整手段により調整することにより行うことができる。
【0071】
また、これら制御手段による電流制御、調整手段による位置調整は、図示しない磁気センサにより印加磁界の水平方向磁界成分、垂直方向磁界成分の大きさをモニタしながら各磁界成分が所定の磁界強度になるように制御、調整することができる。
【0072】
媒体130の表面に平行な磁界が媒体130内に印加されることにより、媒体130内の磁性層に含まれる磁気モーメントは、面内方向にならい、印加磁界を取り除いた後には、各々の磁気モーメントが媒体130表面に対して垂直方向に戻る。その際、各々の磁気モーメントは、一方向に揃わず、媒体130表面に対しては垂直であるが、磁気モーメントの向きはランダムになる。即ち媒体130は、ランダム消磁される。
【0073】
ここで、図3に示す第3の実施形態の初期化装置は、上述した図1で示される第1の実施形態の初期化装置と、同じ作動であるので、説明は省略する。また、図2、図4に示す第2の実施形態及び第4の実施形態の初期化装置は、電磁石の代わりに永久磁石を使用しただけで、作動そのものは同じであるので、やはり説明は省略する。
【0074】
<垂直磁界、水平磁界印加評価>
次に、媒体130に印加される、初期化のための磁界の垂直成分及び水平成分とSN比との関係について説明する。本発明者等は、鋭意研究の結果、媒体103の表面に平行な磁界(水平磁界)のみを媒体103内部に印加使用としても、印加する磁界の成分の内、水平磁界の割合を100%にすることは困難であり、実際には、いくらか媒体表面に垂直な磁界(垂直磁界)も含まれることを見いだした。
【0075】
ここで、図5を用いて説明する。図5は、媒体103内部に印加される磁界の垂直成分と水平成分とを示した概略図である。図5に示すように、媒体103の内部に初期化のための(消磁用の)直流磁界Haを印加しても、ほとんどの場合、磁界Haは、媒体103の平面に対していくらかの角度αを有して印加される。このため、Haは、水平方向の磁界成分Hahと、垂直方向の磁界成分Hazとを有することになる。
【0076】
この垂直方向の磁界成分Haz、及び水平方向の磁界成分Hahと、SN比との関係について以下のように評価を行った。
【0077】
(1)媒体の作製
媒体として、外形65mm(2.5インチ型)のガラス円板表面に真空成膜装置を使用してCoCrPtの膜を成膜し、薄膜のガラスハードディスクを作製した。この際、成膜装置の真空度、成膜装置に導入するアルゴンガスの圧力、ガラス円板の加熱温度、CoCrPt膜の膜厚を調整することにより、保磁力Hc及び核発生磁界Hnが異なる幾つかのガラスハードディスク(媒体)を作製し、媒体1〜媒体3とした。
【0078】
作成した媒体1〜3の保磁力Hc、核発生磁界Hnについて以下の表1に示す。なお、媒体1〜3は、それぞれ複数作製した。なお、媒体1〜3は、後述するサーボフォロイング性能評価にも使用される。
【0079】
【表1】
また、上記真空成膜装置の成膜条件の一例を下記に示す。
・成膜装置の真空度 1.33×10−5Pa(10−7Torr)
・成膜装置にアルゴンガス導入後の真空度 0.4Pa(3×10−3Torr)
・ガラス板加熱温度 200℃
・CoCrPtの膜厚 25nm
・磁束密度 5.7T(4500Gauss)
・保磁力Hc 199kA/m
ここで、核発生磁界Hnについて図6を参照して説明する。図6は、垂直磁化媒体のM-Hカーブを示した図である。垂直磁化媒体についてVSM等でM-Hカーブの測定をすると、図6に示すようなヒステリシスカーブを示す。ここで、VSMとは、試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer)のことであり、均一磁場中においた試料を一定の周波数・振幅で振動させ、試料近辺に配置した検出コイルに誘起される起電力をロックインアンプにより検出することで試料の磁化量を測定する装置のことである。また、M-Hカーブとは、横軸にVSM測定における印加磁場H、縦軸に磁場印加時に試料に誘起された磁化量Mをとったときの磁化量Mの印加磁場H依存の曲線のことである。
【0080】
この図に示すように、-Mrの磁化量を有する媒体に、徐々に+方向に磁界を印加すると、媒体の磁化量が変化し始める点が存在し、その点の磁界強度を核発生磁界または核生成磁場Hnと呼ぶ。核生成磁界Hnは、印加磁界の方向に媒体の磁化の向きがならい始める磁界強度のことである。
【0081】
(2)評価用信号の記録及び磁化状態評価
評価用信号として、L/S比が1であるパターンの信号をSTW(サーボトラックライタ:Servo Track Writer)を用いて媒体1〜3に記録した。ここで、L/S比とは、Line(+信号)と、Space(−信号)の比のことを言う。
【0082】
次に、ヘッドギャップ0.03μm、トラック幅0.055μmであるTMR(Tunneling Magneto Resistance)再生ヘッドを使用し、電磁変換特性測定装置(協同電子製:型番LS-90)を用いて媒体1〜3の磁化状態の評価を行った。
【0083】
その後、電磁変換特性測定装置で読み込んだ信号を、スペクトルアナライザを用いて周波数分解し、1次信号のピーク強度Sと、外挿したノイズNとからSN比を求めた。求めた評価用信号のSN比は、12dBであった。
【0084】
(3)水平磁界印加評価
媒体1〜3のそれぞれに、媒体の表面に平行な方向の直流磁界を印加し、印加後のSN比の測定を行った。SN比の測定は、上記(2)と同様に行った。水平磁界の印加は、図1に示される装置を使用し、印加磁界の強度を変化させて行い、変化させた強度の磁界印加ごとに媒体のSN比測定を行った。ここで、水平磁界を印加前の媒体1〜3の評価用信号のSN比は、上記(2)で求めたように12dBである。
【0085】
評価結果を図7〜図9に示す。図7は、媒体1に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。図8は、媒体2に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。図9は、媒体3に水平磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【0086】
図7〜図9の横軸は、印加した水平磁界強度Hahと、媒体の保磁力Hcとの比を示し、縦軸は、水平磁界印加後の媒体のSN比を示す。図7〜図9に示されるように、Hc、Hnが異なるどの媒体1〜3においても、Hah/Hcが、1.3以上になる水平磁界を媒体に印加することによって、評価用信号は、SN比が2dB以下まで低減し、媒体が、確実に消磁されたことが分かった。
【0087】
また、Hah/Hcが、1.5以上になるように水平磁界を媒体に印加することによって、評価用信号は、SN比が1dB以下まで低減し、媒体が、より確実に消磁されたことが分かった。この評価結果より、媒体に印加する直流の水平方向磁界強度は、Hah/Hcが、1.3以上になる強度が好ましく、1.5以上になる強度がより好ましいといえる。
【0088】
ここで、Hah/Hcは、媒体の保磁力Hcに対する印加磁場の比率を表し、このHc比を用いることにより、印加磁場の水平磁界強度Hahがどの程度の値になったときにランダム消磁を行えるようになるかを簡便に知ることができる。
【0089】
なお、この評価により消磁された媒体1〜3は、N極、S極の向きが媒体表面に対して垂直方向にランダムにばらついたランダム消磁されたものであることを確認した。この確認は、VSM測定を行うことにより、該媒体のM-Hカーブがマイナーループをたどる経路を有することで確認した。また、メジャーループとの比較で、ランダム消磁の磁化状態が磁化量0であることも確認した。一方向消磁の場合は、本測定でのM-Hカーブは、メジャーループに重なることになる。
【0090】
ここで、更に図面を参照して詳細に説明する。図17〜図19は、メジャーループを説明するための説明図である。図20は、ランダム消磁状態の判定方法を示す図である。図21は、一方向消磁の判定方法を示す図である。
【0091】
図17〜図19を参照して、メジャーループとは、一方の飽和磁化が生じるまでの磁界強度の磁界を印加した後(状態(1))(図17参照)、続いて逆方向への飽和磁化になるまで逆方向の磁界強度の磁界を印加し(状態(2))(図18参照)、再び最初の飽和磁化方向へ飽和磁化するまでの磁界強度の磁界を印加する(状態(3)=状態(1))(図19参照)ことで得られる、(1)〜(2)〜(3)での磁化状態変化の曲線を言う。
【0092】
即ち、図17を参照して、初期状態が磁化0(ランダム消磁状態)状態の時、磁界印加に伴い、発生する磁界は図17の太線のような経路をたどって状態1に行き着く。この時、経路はメジャーループから外れるので、マイナーループと呼ばれる。
【0093】
次に、図18を参照して、状態1の磁化状態にマイナス方向に印加磁界をかけるとメジャーループに沿って磁化は状態2になる。図19を参照して、状態2の磁化状態にプラス方向に印加磁界をかけるとメジャーループに沿って、磁化は状態3(=状態1)になる。このような、状態1〜状態3の磁化変化の曲線を合わせて、M−Hカーブ(メジャーループ)と呼ぶ。
【0094】
次にランダム消磁状態の判定方法について説明する。図20を参照して、媒体が、ランダム消磁状態であれば、初期の磁化状態は磁化が0なので、VSM測定の際、磁化変化の経路はマイナーループをたどることになる。また、メジャーループとの比較で、初期の磁化量がどの位置にあったかも検出できる。
【0095】
このように、マイナーループをたどること、初期の磁化量が0であること、を確認することにより、媒体が、ランダム消磁状態であったことを確認できる。
【0096】
次に、一方向消磁の判定方法について説明する。図21を参照して、媒体が、一方向消磁されている場合、VSM測定の際、図21に示すように磁化変化の経路は、メジャーループをたどることになる。このように、メジャーループをたどることを確認することによって、媒体が、一方向消磁されていることを判定できる。
【0097】
(4)垂直磁界印加評価
媒体1〜3のそれぞれに、媒体の表面に垂直な方向の直流磁界を印加し、印加後のSN比の測定を行った。SN比の測定は、上記(2)と同様に行った。ここで、直流磁界の印加による一方向消磁について図面を参照して説明する。図22は、一方向消磁を行った装置の概略図である。図22に示すように、直流磁界の印加は、二対の永久磁石からなる対向磁石を用いて行った。二対の永久磁石のうち、一方の磁石のN極に対して、もう一方の磁石のS極を合い向かいに設置することで直流磁界を発生させた。その二対の永久磁石の間の直流磁界中に媒体を通すことで媒体に直流磁界を印加した。印加磁界強度は二対の磁石の間隔を変えることで調整した。このようにして、印加磁界の強度を変化させることにより、変化させた強度の磁界印加ごとに媒体のSN比測定を行った。ここで、水平磁界を印加前の媒体1〜3の評価用信号のSN比は、上記(2)で求めたように12dBである。
【0098】
評価結果を図10〜図12に示す。図10は、媒体1に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。図11は、媒体2に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。図12は、媒体3に垂直磁界を印加した後のSN比について示した図である。
【0099】
図10〜図12の横軸は、印加した垂直磁界強度Hazと、媒体の核発生磁界Hnとの比を示し、縦軸は、垂直磁界印加後の媒体のSN比を示す。図10〜図12に示されるように、直流の強い垂直磁界を媒体に印加すると、即ちHaz/Hnの値が大きい垂直磁界を媒体に印加すると、SN比が小さくなり、媒体1〜3は消磁される。
【0100】
ここで、直流の垂直磁界を媒体に印加すると、N極、S極の向きが媒体表面に対して垂直であって、かつ、一方向に揃った一方向消磁されることになる。つまり、ここで成されている消磁は、一方向消磁である。
【0101】
本発明においては、ランダム消磁を行うことを目的にしている。発明者等の鋭意研究により、媒体に印加する直流磁界に、媒体表面に対して垂直な磁界成分が含まれていると、水平磁界は、媒体をランダム消磁しようとし、垂直磁界は、媒体を一方向消磁しようとするので、消磁が不安定になり、結局、媒体に印加する磁界成分のうち、水平磁界と垂直磁界との割合によって、ランダム消磁と一方向消磁が合わさった消磁状態になり、結局ランダム消磁ではなくなってしまうことが判明した。
【0102】
図10〜図12に示されるように、Hc、Hnが異なるどの媒体1〜3においても、Haz/Hnが、1.2以下の場合は、垂直磁界印加前の評価信号のSN比である12dBから1dB以内の変動になっている。垂直磁界印加によるSN比の減少が1dB以下ならば、実質、媒体に付与される一方向磁化成分は十分に少ないので、同時に水平磁界を印加することによるランダム消磁には影響を与えない。よって、Haz/Hnの値が1.2以下になるように垂直磁界成分の強度を調整することが好ましい。
【0103】
なお、SN比の減少が1dB以下であることは、最も好ましいが、1dB以下でなければならないわけではない。言い換えると、ランダム消磁にとって垂直磁界印加によるSN比の減少が、3dB以下であることが好ましく、2dB以下であることは更に好ましく、1dB以下であることが最も好ましい。
【0104】
ここで、Haz/Hnは、媒体の核発生磁界Hnに対する印加磁場の比率を表す。このHn比を考えることにより、印加磁場の水平磁界強度Hazがどの程度の場合に、一方向消磁が可能になるかを簡便に知ることができる。これにより、Hnが異なる媒体を扱う際にも同じ指標で考えることができる。
【0105】
<サーボフォロイング性能評価>
次に、サーボフォロイングの性能評価について説明する。STW(サーボトラックライタ)を用いて、上記媒体1〜3にサーボ信号(出力形バースト信号)の書き込みを行い、サーボPES(Position Error Signal)について評価した。
【0106】
STWを用いてサーボ信号が書き込まれたサーボ部は、媒体の最内周でのサーボ基本ビット長が60nm、層セクタ数が240、トラック幅が60nm、であり、かつ、プリアンブル(45bit)/サーボマーク(10bit)/SectorCode(8bit)、CylinderCode(32bit)/Burstパターンで構成した。
【0107】
サーボマーク部は、“0000101011”であり、SectorはBinary、CylinderはGray変換を用いた。Burst部は、一般的な出力型バースト信号(ABCDバースト)(40bit)を用いた。
【0108】
実施例1〜6と比較例1〜3は、媒体1を使用し、実施例7〜12と比較例4〜6は、媒体2を使用し、実施例13〜18と比較例7〜9は、媒体3を使用し、比較例10は、媒体2を使用した。
【0109】
比較例10以外の全ての実施例、比較例は、STWによって媒体にサーボ信号を記録する際、ABCDバーストのトラックとトラックの間であるトラック間部分には信号記録を行わず、トラック間部分が、本発明の初期化方法で初期化されたランダム消磁の状態のままにした。比較例10については、トラック間部分は、従来から行われているように、STWにより基本周波数(基本周波数とは、各トラックで測定されるビット信号のうち、最も波長が短い信号に対応する周波数のことを指す。)の2倍の高周波信号を記憶することにより交流消磁を行い、実効的に無磁化状態を作り出した。
【0110】
ここで、図13、図14を参照して更に説明する。図13は、トラック間部分に高周波信号を記録した従来のバーストA、B部について説明する説明図である。図14は、媒体に記録するバーストパターンであってトラック間部分がランダム消磁状態であるものについて説明する説明図である。
【0111】
図13に示すように、従来は、トラック間部分に、ヘッドの読み取り幅よりも小さい基本周波数の2倍の周波数の信号を記録していた。これにより、ヘッドは、信号をプラスともマイナスとも読めず、実効的に無磁化状態と同じ効果を有していた。本発明においては、図14に示すように、トラック間部分は、ランダム消磁された状態になっている。
【0112】
サーボPESの評価は、評価装置としてアイメス社製(BitFinder)のものを用いて行った。VCMモードにしたヘッドを前記評価装置に装着し、サーボフォロー状態でのPESを測定した。
【0113】
50周分の各セクタのPES測定値から標準偏差(σ)を求め、3σ値がトラックピッチ(TP)の15%未満であれば良(○)、15%以上25%未満であれば可(△)、25%以上であれば不良(×)と判断した。
【0114】
評価結果を図15に示す。図15は、サーボフォロイング性能評価結果を示す図である。図15に示すように、媒体1〜3いずれも、ランダム消磁の条件が、Hah/Hcが1.30以上の時、PES3σ値でズレ量がTPの24%以下になった。このように、比較例10に示す、従来のトラック間部分に高周波信号を記録した例よりも良好な結果を示した。
【0115】
また、ランダム消磁の条件が、Hah/Hcが1.30以上で、かつ、Haz/Hnが1.17以下の時、PES3σ値でズレ量がTPの15%以下になった。このように、比較例10に示す、従来のトラック間部分に高周波信号を記録した例よりも更に良好な結果になった。
【0116】
以上より、サーボ信号記録媒体は、トラック間部分が、Hah/Hcが1.30以上になる条件でランダム消磁された状態であることが好ましく、Hah/Hcが1.30以上で、かつ、Haz/Hnが1.17以下になる条件でランダム消磁された状態であることが更に好ましい。これにより、従来のサーボ信号記録媒体よりもサーボフォロイング性能が良好なサーボ記録媒体を得ることができる。
【0117】
次に、トラック間部分をランダム消磁したサーボ信号記録媒体(以後、ランダム消磁媒体とも称する。)と、従来のトラック間部分に基本信号の2倍の周波数の信号を記録したサーボ信号記録媒体(以後、従来の媒体とも称する。)と、について、フーリエ変換したスペクトルを比較した。
【0118】
図16は、フーリエ変換したスペクトルを表す図である。図16に示されるグラフは、縦軸が振幅であり、横軸が基本周波数の何倍であるかを示す基本周波数に対する比率を示す。点線が、従来の媒体を示し、実線がランダム消磁媒体を示す。
【0119】
この図が示すように、ランダム消磁媒体を示す実線は、従来の媒体を示す実線よりも全体として低い位置にあり、これは、全体として従来の媒体よりもランダム消磁媒体の方が、ノイズが低いことを示している。また、従来の媒体を示す点線は、基本信号の2倍の周波数の信号を記録しているので、横軸が2の位置にピークが立っている。
【0120】
以上より、ランダム消磁媒体の方が、従来の交流消磁媒体よりもノイズが低いので優れていると言える。
【符号の説明】
【0121】
103…媒体、110…電磁石、112…コア、114…コイル、116…磁界、118…電流供給手段、120…電磁石、122…コア、124…コイル、126…磁界、128…電流供給手段、130…媒体、200…初期化装置、210…永久磁石、216…磁界、220…永久磁石、300…初期化装置、310…電磁石、312…コア、314…コイル、318…電流供給手段、320…電磁石、322…コア、400…初期化装置、410…永久磁石、420…永久磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、
電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、
を備え、
前記磁界印加ステップでは、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.17 かつ Hah/Hc≧1.3
になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項2】
前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、
前記磁界印加ステップでは、
前記第2の磁界印加手段が、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn2≦1.17 かつ Hah2/Hc2≧1.3
になり、かつ、
前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加する、
請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項3】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、
電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、
を備え、
前記磁界印加ステップでは、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.2 かつ Hah/Hc≧1.5
になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項4】
前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、
前記磁界印加ステップでは、
前記第2の磁界印加手段が、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.2 かつ Hah2/Hc≧1.5
になり、かつ、
前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加する、
請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項5】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、
前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、
前記磁界印加手段は、
前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.17 かつ Hah/Hc≧1.3
になるように、
前記直流磁界Haの大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項6】
前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、
前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.17 かつ Hah2/Hc≧1.3
になり、かつ
前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、
前記直流磁界Ha2の大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている請求項5に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項7】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、
前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、
前記磁界印加手段は、
前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.2 かつ Hah/Hc≧1.5
になるように、
前記直流磁界Haの大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項8】
前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、
前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.2 かつ Hah2/Hc≧1.5
になり、かつ
前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、
前記直流磁界Ha2の大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている請求項7に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項9】
前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上である、請求項5または7に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項10】
前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であり、かつ、前記第2の磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上である、請求項6または8に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法で初期化され、その後サーボ信号を書き込まれた垂直磁気記録媒体であって、
バースト部のトラック間部分は、初期化されたランダム消磁状態が維持されている垂直磁気記録媒体。
【請求項1】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、
電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、
を備え、
前記磁界印加ステップでは、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.17 かつ Hah/Hc≧1.3
になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項2】
前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、
前記磁界印加ステップでは、
前記第2の磁界印加手段が、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn2≦1.17 かつ Hah2/Hc2≧1.3
になり、かつ、
前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加する、
請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項3】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
前記垂直磁気記録媒体を所定の位置に配置する配置ステップと、
電磁石または永久磁石を有する磁界印加手段が、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加する磁界印加ステップと、
を備え、
前記磁界印加ステップでは、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.2 かつ Hah/Hc≧1.5
になるように、前記直流磁界Haを前記垂直磁気記録媒体に印加する垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項4】
前記配置ステップでは、前記垂直磁気記録媒体を、その2つの面のうち片方の面が前記磁界印加手段に対向し、もう一方の面が、電磁石または永久磁石を有する、前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段に対向するように配置し、
前記磁界印加ステップでは、
前記第2の磁界印加手段が、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.2 かつ Hah2/Hc≧1.5
になり、かつ、
前記垂直磁気記録媒体内で、前記Hah2が、前記Hahの向きと同じ向きになるように、前記Ha2を前記垂直磁気記録媒体に印加する、
請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法。
【請求項5】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、
前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、
前記磁界印加手段は、
前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.17 かつ Hah/Hc≧1.3
になるように、
前記直流磁界Haの大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項6】
前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、
前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.17 かつ Hah2/Hc≧1.3
になり、かつ
前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、
前記直流磁界Ha2の大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている請求項5に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項7】
保磁力がHcであり、かつ核発生磁界がHnの垂直磁気記録媒体を初期化するための垂直磁気記録媒体の初期化装置であって、
前記垂直磁気記録媒体に直流磁界Haを印加するための磁界印加手段を備え、
前記磁界印加手段は、
前記垂直記録媒体の一方の面に対向して配置され、
前記直流磁界Haの成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHazとしたとき、
Haz/Hn≦1.2 かつ Hah/Hc≧1.5
になるように、
前記直流磁界Haの大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項8】
前記垂直記録媒体に直流磁界Ha2を印加するための第2の磁界印加手段を更に備え、
前記第2の磁界印加手段は、前記垂直磁気記録媒体の面のうち前記磁界印加手段が配置されていない側の面に対向して配置され、
前記直流磁界Ha2の成分のうち、前記垂直磁気記録媒体の表面に平行な成分である水平方向磁界成分をHah2、垂直な成分である垂直方向磁界成分をHaz2としたとき、
Haz2/Hn≦1.2 かつ Hah2/Hc≧1.5
になり、かつ
前記垂直磁気記録媒体内で前記Ha2と前記Haとが同じ向きになるように、
前記直流磁界Ha2の大きさと、
前記垂直磁気記録媒体に対する前記第2の磁界印加手段の相対位置と、
が調整されている請求項7に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項9】
前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上である、請求項5または7に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項10】
前記磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上であり、かつ、前記第2の磁界印加手段のS極とN極との間隔が、前記垂直磁気記録媒体の径以上である、請求項6または8に記載の垂直磁気記録媒体の初期化装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法で初期化され、その後サーボ信号を書き込まれた垂直磁気記録媒体であって、
バースト部のトラック間部分は、初期化されたランダム消磁状態が維持されている垂直磁気記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−155796(P2012−155796A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14477(P2011−14477)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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