説明

型成形装置、型成形装置の制御方法

【課題】成形型の加熱に用いられるエネルギー効率を確実に向上させることが可能な型成形技術を提供する。
【解決手段】成形素材40が実装された成形型50の加熱および加圧によって型成形を行う型成形装置M1において、第1ヒータブロック25と第1冷却ブロック22(第1断熱ブロック23)の間、および第2ヒータブロック27と第2冷却ブロック29(第2断熱ブロック28)の間に、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bを配置して、第1ヒータブロック25(第2ヒータブロック27)から第1冷却ブロック22(第2冷却ブロック29)の側に捨てられる熱エネルギーを電力として回収し、二次電池60に蓄積して再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型成形技術に関し、たとえば、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を加熱プレスして成形する型成形技術等に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガラスレンズ等の光学素子の製造に際しては、生産性の良さから加熱プレスによる型成形が多く用いられている。光学素子の加熱、プレス成形では成形型に光学素子材料を配置し、成形型をブロック状の加熱手段である加熱ブロック等により加熱プレスする手法が一般的に用いられている。
【0003】
高精度な光学素子の成形では、成形型を高温で長時間加熱して成形する必要があるため、光学素子を成形するために大量の電力を必要としていた。
また、この加熱ブロックにおける成形型と接触しない表面からの伝熱を抑制し、電力消費を低減させる手段として、たとえば、特許文献1には以下のような光学素子の製造装置が開示されている。
【0004】
すなわち、成形型を挟持して加熱する上下一対の加熱ブロックの各々において、成形型に対する当接面と反対側の背面に、当該加熱ブロックの内部に設けられたヒータを取り囲むように空洞の断熱部を形成し、加熱ブロックの背面側からの伝熱を抑制して、加熱ブロックから成形型に対する伝熱効率を高めようとする技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、加熱ブロックから断熱ブロックへの無駄な伝熱や放熱を低減させる優れた技術であるが、断熱ブロックを支持するベースやプレス軸への放熱を完全になくすことができないため、加熱ブロックの熱エネルギーが成形型以外への伝熱や放熱によって浪費されており、やはりエネルギーロスは発生していた。
【特許文献1】特開2007−112639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、成形型の加熱に用いられるエネルギー効率を確実に向上させることが可能な型成形技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、成形型を挟持する第1および第2ヒータブロックと、
前記第1および第2ヒータブロックの少なくとも一方に配置され、
前記第1ヒータブロックおよび第2ヒータブロックの少なくとも一方から発生する熱を電力に変換する熱発電モジュールと、
を含む型成形装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点は、成形型を加熱するヒータブロックから発生する熱を熱発電モジュールによって電力に変換して回収する型成形装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形型の加熱に用いられるエネルギー効率を確実に向上させることが可能な型成形技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態の一態様では、たとえば、成形型を上下から挟み込み温度と圧力を加えて光学素子を成形する光学素子成形装置において、金型を加熱し、プレス圧を加えるためのヒータブロックと装置のベースに熱が放散されることを抑制するための断熱ブロックとの間に、PN接合されたP型熱電材料エレメントとN型熱電材料エレメントが複数個直列に接続されてなる熱発電モジュールを配置する構成とする。
【0011】
ヒータにより与えられた熱は、成形型の温度を上昇させるとともに熱発電モジュールのヒータ側の接合面を加熱する。また、熱発電モジュールの断熱ブロック側の接合面は装置全体を一定温度に保つための冷却水路により冷却されているため、熱発電モジュールの両側で温度差が生じる。熱発電モジュールの両端面に温度差が発生することで、発電を行うことが可能となり、熱エネルギーのロスを電気として回収し、蓄積して再利用することが可能となる。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である型成形装置の構成の一例を示す断面図であり、図2は、本実施の形態の型成形装置を構成する熱発電モジュールの構造の一例を示す断面図である。
【0013】
本実施の形態の型成形装置M1では、一例として光学素子の製造装置に適用して場合を例にとって説明する。
本実施の形態の型成形装置M1は、加圧軸21、第1冷却ブロック22、第1断熱ブロック23、第1ヒータ24、第1ヒータブロック25、第2ヒータ26、第2ヒータブロック27、第2断熱ブロック28、第2冷却ブロック29、熱発電モジュール30A、熱発電モジュール30Bを備えている。
【0014】
本実施の形態の型成形装置M1では、光学素子の成形材料等(例えばガラス)の成形素材40が内包された成形型50を、上下に対向して配置された第1ヒータブロック25および第2ヒータブロック27で挟持し、各々の内部に設けられた第1ヒータ24および第2ヒータ26により加熱し、図示しないプレス機構等を介して成形型50を挟圧して光学素子の成形が行われる。
【0015】
すなわち、第1ヒータブロック25の成形型50に対する当接面と反対側の背面には、第1断熱ブロック23および第1冷却ブロック22を介して加圧軸21が接続されている。
【0016】
同様に、成形型50が載置される第2ヒータブロック27の背面側には、第2断熱ブロック28および第2冷却ブロック29が配置されている。
第1断熱ブロック23および第2断熱ブロック28は、第1ヒータブロック25および第2ヒータブロック27の各々の背面側からの図示しない装置構成部材等に熱伝導や熱放射によって失われる熱量を低減するために配置されている。
【0017】
また、第1冷却ブロック22は、当該第1冷却ブロック22に接続される加圧軸21や当該加圧軸21を駆動する図示しないプレス機構等が熱により変形しないように配置されており、第1冷却ブロック22は内部に冷却媒体が常に流れており、常時冷却が行われる構造となっている。
【0018】
同様に、第2断熱ブロック28を介して第2ヒータブロック27を背後から支持する第2冷却ブロック29の内部にも冷却媒体が常に流れており、常時冷却が行われることにより、型成形装置M1の設置床面等を熱から保護する構造となっている。
【0019】
この場合、第1ヒータブロック25の背面側と第1断熱ブロック23との間には熱発電モジュール30Aが配置された構造となっている。
同様に、第2ヒータブロック27の背面側と第2断熱ブロック28の間には熱発電モジュール30Bが配置された構造となっている。
【0020】
熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bの各々は、たとえば、PN接合されたP型熱電材料エレメントとN型熱電材料エレメントが複数個直列に接続されてなる構成となっており、両端面に温度差が生じることで、熱発電モジュール30A(熱発電モジュール30B)が発電する構造となっている。
【0021】
図2は、本実施の形態における熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bの構成を例示した側面図である。この場合、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bは同一の構成である。
【0022】
熱発電モジュール30A(熱発電モジュール30B)は、複数のP型半導体31およびN型半導体32を、複数の熱源側電極33および冷却側電極34を介して交互に直列に接続した構成となっており、その両端の冷却側電極34に、リード線35およびリード線36が接続されている。
【0023】
熱源側電極33および冷却側電極34の各々の外面は、たとえば、セラミックス等の耐熱性の絶縁体からなる絶縁カバー37および絶縁カバー38で覆われている。
そして、熱源側電極33(絶縁カバー37)の側を低温の第1断熱ブロック23に当接させ、冷却側電極34(絶縁カバー38)の側を高温の第1ヒータブロック25の側に当接させることで、リード線35およびリード線36から、第1断熱ブロック23と第1ヒータブロック25の温度差に応じた電力が取り出される。
【0024】
上述の熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bのリード線35およびリード線36は電力を蓄積することが可能な二次電池60に接続され、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bが発電した電力が二次電池60に蓄積される構成となっている。
【0025】
また、上述の二次電池60を型成形装置M1の一部、若しくは他の装置の電気機器に接続して、熱発電モジュール30Bが発電した電気を利用する構成としてもよい。
成形型50は、筒状のスリーブ53の内部に、上型51および下型52が対向して配置され、各々の対向端に設けられた成形面51aおよび成形面52aの間に、熱可塑性の成形素材40が実装される構成となっている。
【0026】
そして、成形型50の全体を所望の成形温度に加熱した状態で、上型51および下型52を軸方向に挟圧することで、成形面51aおよび成形面52aを成形素材40に転写する型成形が行われる。
【0027】
以下、本実施の形態の型成形装置M1の作用を説明する。
まず、第1ヒータブロック25および第2ヒータブロック27は、第1ヒータ24および第2ヒータ26によって所定の成形温度に加熱されている。
【0028】
この状態で、成形型50を、第2ヒータブロック27に載置し、加圧軸21により、第1ヒータブロック25を降下させて上型51に当接させ、成形型50の全体を前記成形温度に加熱し、成形型50の内部に実装されている成形素材40を軟化させる。
【0029】
そして、上型51と下型52を挟圧して、加熱軟化状態の成形素材40を成形面51aおよび成形面52aによって成形し、成形面51aおよび成形面52aの形状を成形素材40に転写する。
【0030】
その後、成形型50を徐々に冷却して成形型50の内部の成形済みの成形素材40(光学素子)を硬化させた後、型成形装置M1の外部に成形型50を取り出して分解し、成形素材40から成形された光学素子を取り出す。
【0031】
ここで、本実施の形態の場合、成形型50に内包された成形素材40を第1ヒータブロック25の内部の第1ヒータ24で加熱する際、第1ヒータ24から放出された熱エネルギーは、前記第1ヒータブロック25を加熱し、前記第1ヒータブロック25が成形型50を加熱するが、この際に第1ヒータブロック25と隣接する第1断熱ブロック23および熱発電モジュール30Aの一端面(熱源側電極33の絶縁カバー37の側)も同時に加熱される。
【0032】
また、前記第1断熱ブロック23の他端面は第1冷却ブロック22と隣接しており、常に冷却されている。したがって、第1断熱ブロック23に囲まれて存在している熱発電モジュール30Aは一端面(熱源側電極33の絶縁カバー37の側)が第1ヒータ24と第1ヒータブロック25により加熱され、他端面(冷却側電極34の絶縁カバー38)が第1冷却ブロック22と第1断熱ブロック23により冷却されている状態になり、熱源側電極33と冷却側電極34の間に温度差が生じる。
【0033】
熱発電モジュール30Aは両端で温度差が生じると、P型半導体31およびN型半導体32が電力を発生するため、リード線35およびリード線36を二次電池60に接続することで、型成形装置M1にて、成形素材40から加熱による型成形によって光学素子を製造する過程で、第1冷却ブロック22の冷却側に捨てられていた熱エネルギーを、電力として回収して二次電池60に蓄電して適宜の目的に再利用することが可能となる。
【0034】
下側の第2ヒータブロック27と第2断熱ブロック28の間に設けられた熱発電モジュール30Bにおいても、同様に、第2ヒータブロック27から第2断熱ブロック28を介して第2冷却ブロック29に捨てられていた熱エネルギーを回収して有効に利用することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態の型成形装置M1では、従来と同様の成形型50を用いた型成形によって光学素子等の製造を行う工程中で、従来では大気へ放出され無駄となっていた熱エネルギーを、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bによって電力に変換して確実に回収することで、成形型50の加熱に必要な熱エネルギーの一部の回収および蓄積と再利用を実現することが可能となる。
【0036】
すなわち、型成形装置M1においては、成形型50の加熱に用いられるエネルギー効率を確実に向上させることが可能となる。
図3は、本実施の形態の変形例である型成形装置M2の構成例を示す断面図である。
【0037】
この場合、熱発電モジュール30Aが発電された電力が、型成形装置M2の一部を構成する照明装置70に利用され、熱発電モジュール30Bで発電された電力が外部電気機器80に利用されるようにしたところが、上述の型成形装置M1と異なり、他は同様である。
【0038】
この変形例の型成形装置M2に例示したように、二次電池60に蓄積された電気、および熱発電モジュール30A、熱発電モジュール30Bから発電された電気を、照明装置70や外部電気機器80において直接に利用することで、型成形装置M2の消費電力の削減、及び型成形装置M2のランニングコストの削減を実現することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態である型成形装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である型成形装置を構成する熱発電モジュールの構造の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である変形例である型成形装置の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
21 加圧軸
22 第1冷却ブロック
23 第1断熱ブロック
24 第1ヒータ
25 第1ヒータブロック
26 第2ヒータ
27 第2ヒータブロック
28 第2断熱ブロック
29 第2冷却ブロック
30A 熱発電モジュール
30B 熱発電モジュール
31 P型半導体
32 N型半導体
33 熱源側電極
34 冷却側電極
35 リード線
36 リード線
37 絶縁カバー
38 絶縁カバー
40 成形素材
50 成形型
51 上型
51a 成形面
52 下型
52a 成形面
53 スリーブ
60 二次電池
70 照明装置
80 外部電気機器
M1 型成形装置
M2 型成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を挟持する第1および第2ヒータブロックと、
前記第1および第2ヒータブロックの少なくとも一方に配置され、
前記第1ヒータブロックおよび第2ヒータブロックの少なくとも一方から発生する熱を電力に変換する熱発電モジュールと、
を含むことを特徴とする型成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の型成形装置において、
さらに、前記第1および第2ヒータブロックの各々の背面を支持する第1および第2の断熱ブロックを備え、
前記熱発電モジュールは、前記第1ヒータブロックと前記第1断熱ブロックの間、および前記第2ヒータブロックと前記第2断熱ブロックの間、の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする型成形装置。
【請求項3】
請求項2記載の型成形装置において、
前記第1および第2断熱ブロックの各々は、前記第1および第2ヒータブロックよりも温度の低い第1および第2冷却ブロックの各々に当接されていることを特徴とする型成形装置。
【請求項4】
請求項1記載の型成形装置において、
前記熱発電モジュールは、電力を蓄積する二次電池に接続されていることを特徴とする型成形装置。
【請求項5】
請求項1記載の型成形装置において、
前記熱発電モジュールは、成形装置の一部を構成する電気機器に接続されていることを特徴とする型成形装置。
【請求項6】
請求項1記載の型成形装置において、
前記熱発電モジュールは前記成形装置以外の電気機器に接続されていることを特徴とする型成形装置。
【請求項7】
成形型を加熱するヒータブロックから発生する熱を熱発電モジュールによって電力に変換して回収することを特徴とする型成形装置の制御方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−107879(P2009−107879A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281448(P2007−281448)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】