説明

型焼きベーカリー食品の製造方法

【課題】食感や風味を変えることなく、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる、型焼ベーカリー食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】焼型の底面に、脂質含量が35質量%以上であるベーカリー食品の破砕物を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼型を使用してベーカリー生地を焼成する、型焼きベーカリー食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食パンやデニッシュ、マドレーヌやフィナンシェなどのベーカリー生地を、パン型、パウンド型、あるいは、カップ状の型展板などの焼型に入れて加熱することで得られる、型焼きベーカリー食品を製造する場合、一般に離型油を塗布して加熱する。
【0003】
これは、離型油を使用しないと、加熱時にベーカリー生地中の穀粉類が糊化し、これが焼型にはりついて焦げつき、型剥し(離型)が困難になってしまうからである。
【0004】
ここで、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分が多く常温で流動性を有するベーカリー生地を使用した場合は、特に油分含量が低いものであると、たとえ離型油を塗布してから加熱した場合であっても、離型性は極めて悪い。これは生地中に含まれる水分が多いため、澱粉の糊化の際に、生地中に含まれる油分や離型油の油分は澱粉ゲル中にとり込まれた形となるため、焼型と生地の界面に油分は流れ出さず、そのために焼成中に焼型と生地の間隙に流れ出すことがなく、離型性が得られないものと思われる。
【0005】
このため、これらの生地を焼成する場合、金属製の焼型よりは紙製の焼型の方が焦げつきにくいことから、カップケーキ型、マフィンケーキ型等の紙製の焼型を使用して焼成し、喫食時に紙を剥すという方法をとるか、金属製の焼型を使用する場合であっては敷紙を敷いて焼成し、放冷後に紙を剥すという方法をとるが、紙はベーカリー生地が染み込みやすく、そのため、焼成品から紙を剥す際に、シューのように中空形状であったり、パネトーネのようにヒキが強いベーカリー食品の場合は、紙を剥す際に簡単に損壊してしまい、商品価値を著しく損なうことになってしまう。
【0006】
そのため、水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる、型焼きベーカリー食品の製造方法が各種検討されてきた。
【0007】
まず、小麦粉を離型油と混合して使用する方法が行なわれたが、この方法では得られるベーカリー食品の表面が粉っぽい食感になってしまう問題があった。
【0008】
次いで、スポンジケーキクラムや、通常のクッキークラムを敷いて焼成する方法が行なわれたが、これらのクラムの油分含量は最高でも25質量%程度であるため、離型性が十分ではないことに加え、得られるベーカリー食品の表面がべたついてしまう問題があった。
【0009】
さらに改良された方法として、蛋白水分散物を生地と焼型の間に介在させて、ベーカリー食品表面に蛋白皮膜を生じさせる方法(例えば特許文献1参照)や、プルラン等の可食性膜状材料で表面を被覆した紙型を使用する方法、(例えば特許文献2参照)や、特定の塩類を添加した生地を使用する方法(例えば特許文献3、4参照)や、パイ生地などのショートペースト生地で包餡して焼成する方法(例えば特許文献5参照)などが行なわれてきた。
【0010】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の方法は、ベーカリー食品表面に硬い食感の層を生じてしまうため、食感が異なるものになってしまうという問題があった。また、特許文献3、4に記載の方法は食味が異なるものになってしまう問題があった。また、特許文献5に記載の方法は、包餡操作を必要とし、大変煩雑であることに加え、やはりベーカリー食品表面に硬い食感の層を生じてしまい、さらに外見もまったく異なるものになってしまう問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開昭63―91034号公報
【特許文献2】特開平1―265844号公報
【特許文献3】特開平4―141040号公報
【特許文献4】特開平4―179432号公報
【特許文献5】特開2000−157150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、食感や風味を変えることなく、水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる、型焼きベーカリー食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来用いられていたケーキクラムやケーキクラムよりも、遥かに多量の油脂を含有するベーカリー製品破砕物を焼型の底部に敷いてから生地を積載して焼成することで、上記問題を解決することが可能であることを知見した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、焼型の底面に、油分含量が35質量%以上である、ベーカリー製品破砕物を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食感や風味を変えることなく、水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を得ることができ、また、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の型焼きベーカリー食品の製造方法について詳述する。
【0017】
まず、本発明の型焼きベーカリー食品の製造方法で使用する、ベーカリー製品破砕物について述べる。
【0018】
本発明で使用するベーカリー製品破砕物は、穀粉類を主体とする生地を焼成、蒸す、フライ等の加熱処理を経て得られるベーカリー製品を、破砕して得られる破砕物であって、油脂含量が35質量%、好ましくは40質量%以上のものである。通常のケーキクラムやクッキークラムは油脂含量が35質量%未満であるため、これらを使用すると、良好な離型性が得られない。
【0019】
上記油脂含量が35質量%であるベーカリー製品破砕物の基となるベーカリー食品としては、そのベーキング後の油分含量が35%以上のものであればよく、例えば、タルト、ラングドシャ、フィナンシェ、マドレーヌ、パフパイなどの焼菓子類、揚げせんべい、ドーナツなどの油菓類、ポテトチップ、コーンスナック等のスナック類、ブリオッシュ、デニッシュなどのパン類のうち、油分含量が35%以上であるベーカリー製品の中の1種又は2種以上から選択することができる。
【0020】
本発明では、上記ベーカリー製品破砕物の大きさは焼型に投入可能な大きさであればよいが、塊状の場合はその平均粒径が好ましくは、0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmであり、薄板状の場合は、その厚さが好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.03〜1mmである。該範囲外であると、離型性が悪化するおそれがある。
【0021】
本発明では、上記ベーカリー製品破砕物が、糖類を多く含有するものであると、保水性が高いため焼成中に水分が蒸散しにくく、また焦げが生じやすいため、型にはりついて、離型性が悪化してしまうおそれがある。よって、本発明で使用するベーカリー製品破砕物は、糖類含量が0〜20質量であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量%である。なお、本発明における上記糖類とは重合度4以下の糖類をさすものとする。
【0022】
また、本発明では、上記のベーカリー製品破砕物として、油分含量が特に高く、また、少量で高い離型性が得られることから、穀粉類を主体とする生地とロールイン油脂を使用した積層状生地を焼成して得られる、パフパイ、デニッシュ、クロワッサンなどの層状ベーカリー製品の破砕物を使用することが好ましい。中でも、4糖以下の糖類含量が特にすくないため、離型性が高いことから、パフパイの破砕物(パイクラム)を使用することが特に好ましい。
【0023】
次に、本発明で使用するベーカリー生地について述べる。
【0024】
本発明の製造方法で使用されるベーカリー生地は、穀粉類に、水や、必要に応じて、卵、油脂、粉乳、食塩、糖類、呈味剤、イースト菌、膨張剤等を加えて練り上げたものであり、通常のベーカリー食品を得るために使用されるベーカリー生地であれば、いずれの生地も使用可能である。
【0025】
上記ベーカリー生地としては、具体的には、パン生地、ケーキドーナツ生地、イーストドーナツ生地、クッキー生地、練パイ生地、折りパイ生地、ショートブレッド生地、シュー生地、練パイ方式のデニッシュ生地、折パイ方式のデニッシュ生地、クロワッサン生地、タルト生地等が挙げられる。
【0026】
本発明の製造方法では、上記ベーカリー生地の中でも、油分含量10〜30質量%、好ましくは20〜30質量%、且つ、水分含量20〜70質量%、好ましくは45〜70質量%の生地であると、上記ベーカリー製品破砕物との結着性が良好である点で好ましい。
なお、上記油分含量10〜30質量%、且つ、水分含量20〜70質量%の生地の具体例としては、例えば、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、マフィン生地、パネトーネ生地、ポップオーバー生地、シュー生地、マカロン生地などが挙げられるが、特に、上記ベーカリー製品破砕物との結着性が高い点において、ポップオーバー生地、シュー生地がより好ましく、シュー生地が最も好ましい。
【0027】
なお、上記ベーカリー生地は冷凍生地として使用することが好ましい。冷凍生地とすることで、常温で流動性の高い生地であっても固形の状態で扱うことができるため、あらかじめ焼型1個分ごとの重量に分割して冷凍しておくことで、生地の投入の作業が各段に楽になる上、必要分だけ解凍して使用することができ、計画生産が可能となるメリットも併せ持つ。
【0028】
また、常温で流動性の高い生地であっても固形の状態で扱うことができるため、軽く冷凍生地に水を噴霧したり、軽度に解凍した冷凍生地の底面にベーカリー製品破砕物を付着させてから焼型に入れる方法をとることもでき、さらには、その底面のみならず、側面についてもベーカリー製品破砕物をはりつけることができるため、離型性のさらなる向上を図ることもできる。
【0029】
本発明は、上記ベーカリー製品破砕物を、焼型の底面に敷き、その上に、上記ベーカリー生地を入れ、焼成するものである。
【0030】
ここで、焼型の底面に上記ベーカリー製品破砕物を敷く方法としては、焼型中に散布する方法や、ベーカリー生地の少なくとも底面にあらかじめ付着させてから焼型に入れる方法、あるいは、その両方を併用する方法などを適宜選択することができる。また、ベーカリー製品破砕物と離型油の混合物を焼型の底面に塗布してもよい。なお、焼型の側面については、離型油を塗布してもいなくてもよく、また、離型油等を使用して上記ベーカリー製品破砕物を付着させておいてもよい。
【0031】
なお、焼型の底面に敷く、上記ベーカリー製品破砕物の量は、焼型底面1cmあたり、好ましくは0.01g〜0.2g、より好ましくは0.02g〜0.1gである。0.01g未満であると、ベーカリー生地が焼型に結着してしまい剥れなくなってしまったり、型抜き(紙剥し)の際に損壊してしまうおそれがある。また、0.2gを超えると、得られる型焼きベーカリー食品のクラスト部分が油性感の高いものになってしまったり、剰余のベーカリー製品破砕物が剥れ落ちて商品価値を損ねるおそれがある。
【0032】
なお、ここで使用する焼型としては、金属製のものであっても、紙製のものであっても、また、プラスティック製やゴム製、シリコン製、陶器製、木製など、焼菓子に使用される焼型であれば問題なく使用可能であり、金属製のものの例としては、六取り展板や八取り展板にわん型、カステラカップ型、ホール型、フォーマル型、小判型、マフィン型、フラワー型、カップケーキ型、玉子型などの複数の窪みを設けたいわゆる型展板や、単体のカップケーキ型、プリン型、パウンド型、デコ型、あるいはアルミカップなどが挙げられ、紙製のものとしては、マフィン型やカップケーキ型などが挙げられるが、より安定した形状の焼菓子が得られることから、円柱状の焼型であることが好ましい。すなわち、型展板であれば、直径20〜80mm、深さ20〜100mm程度のマフィン型、カステラカップ型などであり、紙型であれば、直径20〜80mm、深さ20〜100mm程度のマフィン型を使用することが好ましい。
【0033】
また、その材質としては、焦げが生じにくく、また、焼型側面へのベーカリー生地の結着を特に考慮する必要がない点で紙製のものであることが好ましい。すなわち、直径20〜80mm、深さ20〜100mm程度の紙製のマフィン型を使用することが最も好ましい。
【0034】
なお、好ましい焼型の容積は、使用するベーカリー生地の3倍以上10倍以下、好ましくは5倍以上8倍以下であることが好ましい。3倍未満であると、焼成時に生地が飛び出し、茸状になってしまい、均質な外観の型焼きベーカリー食品が得られないことがある。容積が10倍を超えると型焼きベーカリー食品の側面の焼痩せが発生するおそれがある。
【0035】
また、焼型に蓋をするなどの方法で焼型内の蒸気圧を高めた状態で焼成することも可能である。
【0036】
焼成温度は、通常のべーカリー食品同様、好ましくは160℃〜250℃、より好ましくは170℃〜220℃である。160℃未満であると火どおりが悪く、焼成時間が延びてしまうことに加え、側面の焼痩せが発生するおそれがある。また250℃を超えると焦げを生じ、食味が悪く、またボリュームも劣ったものとなってしまうおそれがある。
【0037】
焼成後、型展板や金属性焼型など繰り返し使用する焼型を使用した場合は、焼成後ただちに反転させる等の方法で焼成品を型抜きし、放冷後、必要に応じ、包装する。
なお、焼型に敷紙を敷いて焼成した場合は、型抜き後、適当な時間おいて紙を剥してもよいし、喫食時にはがしてもよい。
また、マフィン・パネトーネ等、紙製の焼型を使用した場合は、焼成後ただちに型抜きしてもよいが、一般的にはそのまま放冷後、必要に応じ、包装する。
【0038】
以上のようにして得られた型焼きベーカリー食品は、すくなくとも底面にベーカリー製品破砕物が結着した特異な外観を呈するものであるが、もちろんこれらは簡単に除去することも可能であり、その場合、焼型を使用したベーカリー食品であるにもかかわらず底面の焦げがすくないという特徴を有する。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の詳細を実施例によって例示する。本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1〕
バター100質量部、上白糖60質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速7分クリーミングし、ここに、全卵(正味)12質量部、食塩1質量部を添加、低速1分、中速1分ミキシングし、ここに薄力粉100質量部、アーモンド粉15質量部と添加し、低速1分、中速1分ミキシングし、ガレット生地を得た。このガレット生地を直径30mm、厚さ5mmに成型し、200℃の固定窯で13分焼成した。室温1時間放冷後、手でくだき、ベーカリー製品破砕物Aを得た。このベーカリー製品破砕物Aの油分含量は36質量%、糖類含量は23質量%であった。
【0041】
一方、水140質量部、シューマーガリン140質量部をミキサーボウルに投入し軽く混合後、加熱し沸騰させたところに、薄力粉100質量部を加え、木へらで1分練りながら、十分に糊化させた。竪型ミキサーにこのミキサーボウルをセットし、ビーターを使用し、高速2分ミキシングした。さらに全卵(正味)210質量部を3回に分けて投入し、投入毎に中速1分ミキシングし、シュー生地を得た。なお、重炭安1質量部を、3回目の全卵投入の際に、該全卵に溶解して加えた。
【0042】
このシュー生地の油分含量は23質量%、水分含量は56質量%であった。
【0043】
このシュー生地を40gを展板上に絞り、これをいったん−40℃30分で急速凍結し、冷凍シュー生地とし、これを、−20℃で3週間保管した。
【0044】
上記ベーカリー製品破砕物A1.6gを直径50mm、深さ80mmの紙製のマフィンカップ型の底部に敷き、(0.08g/cm)その上にベーカリー生地として上記冷凍シュー生地を40gを入れ、20℃で60分解凍したのち、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面にはやや着色があるものの、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着し、剥れ落ちはなかった。
【0045】
〔実施例2〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳3質量部、水50質量部、小片状マーガリン100質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分ミキシングした練りパイ生地を、リバースシーターを使用して3つ折り4回行ない、81層のパフパイ生地である層状ベーカリー生地を得た。このパフパイ生地を厚さ4mmに圧延し、30×300mmに成型し、200℃の固定窯で25分焼成した。室温1時間放冷後、手でくだき、ベーカリー製品破砕物B(パイクラム)を得た。
【0046】
実施例1で使用したベーカリー製品破砕物Aに代えて、このベーカリー製品破砕物Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面は焦げもまったくなく、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着し、剥れ落ちはなかった。
【0047】
〔実施例3〕
実施例2で使用したベーカリー製品破砕物B1.6gを4.8g(0.24g/cm)に増量した以外は、実施例2と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面は焦げもまったくなく、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着していたが、紙を剥す際にやや剥れ落ちが多かった。
【0048】
〔実施例4〕
焼型底面にベーカリー製品破砕物Bを敷かず、代わりに、実施例2で使用したベーカリー製品破砕物B4.8gを霧吹きをした冷凍シュー生地の全面にはりつけた以外は、実施例2と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面は焦げもまったくなく、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着し、剥れ落ちはなかった。なお、型焼きベーカリー食品の表面には全面に破砕されたベーカリー生地が斑状に結着しており、おもしろい外観であった。
【0049】
〔実施例5〕
シュー生地を冷凍せず、そのまま用いた以外は実施例2と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面は焦げもまったくなく、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着し、剥れ落ちはなかった。
【0050】
〔実施例6〕
紙型に代えて、直径50mm、深さ80mmの金属製型展板を使用した以外は、実施例5と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。型剥れはきわめて良好であったが、その底面は若干焦げがあった。また、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着していたが、若干の剥れ落ちがあった。
【0051】
〔実施例7〕
薄力粉100質量部、上白糖90質量部、液糖10質量部、全卵(正味)90質量部、食塩0.2質量部、キサンタンガム1質量部、バニラ香料0.3質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速1分、高速4分ホイップした後、溶かしバター90質量部を投入して、低速1分混合し、マフィン生地を得た。
【0052】
このマフィン生地の油分含量は22質量%、水分含量は27質量%であった。
【0053】
シュー生地に代えてこのマフィン生地を使用した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなかった。また、その底面は焦げもまったくなく、ベーカリー製品破砕物がきれいに結着していたが、若干の剥れ落ちがあった。
【0054】
〔比較例1〕
ベーカリー製品破砕物Aを使用せず、型の底に、ラード100質量%、レシチン10質量%からなる離型油を20g塗布した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面部分の結着が激しく、孔があき損壊して、カスタードクリームが漏れてしまった。
【0055】
〔比較例2〕
バター70質量部、上白糖40質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速1分、高速7分クリーミングした後、食塩0.2質量部、全卵(正味)18質量部を投入して、中速2分クリーミングした。ついで、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー0.5質量部、ワニラオイル0.3質量部を混合し、低速1分ミキシングし、クッキー生地を得た。このクッキー生地を直径40mm厚さ7mmにワイヤーカット成型し、200℃の固定窯で25分焼成した。室温1時間放冷後、手でくだき、ベーカリー製品破砕物Cを得た。このベーカリー製品破砕物Cの油分含量は30質量%、糖類含量は20質量%であった。
【0056】
ベーカリー製品破砕物Aに代えて、ベーカリー製品破砕物Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面部分の結着と焦げが激しく、孔があき損壊して、カスタードクリームが漏れてしまった。
【0057】
〔比較例3〕
全卵(正味)150質量部、上白糖100質量部、食塩0.2質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてワイヤーを用いて低速3分、中速7分ホイップした後、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー0.5質量部を混合し、低速1分、中速1分混合し、さらに溶かしバター20質量部を投入して低速1分混合し、ケーキ生地の一種であるスポンジケーキ生地を得た。このスポンジケーキ生地を、敷紙を敷き、側紙を巻いた6号型に400g流し込み、200℃の固定窯で30分焼成した。室温1時間放冷後、手でくだき、ベーカリー製品破砕物Dを得た。このベーカリー製品破砕物Dの油分含量は11質量%、糖類含量は32質量%であった。
【0058】
ベーカリー製品破砕物Aに代えて、ベーカリー製品破砕物Dを使用した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面部分の結着と焦げが激しく、孔があき損壊して、カスタードクリームが漏れてしまった。
【0059】
〔比較例4〕
ベーカリー製品破砕物Aを使用せず、実施例2で使用した練りパイ生地を3mmに圧延して、直径50mmにうちぬき、これを型の底に敷いた以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、空洞中にカスタードクリーム100gを充填し、これを冷蔵庫で24時間保管したのち、紙を剥したところ、底面の焦げはないが、生焼けのため底面部分の結着があり、孔があき損壊して、カスタードクリームが漏れてしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼型の底面に、脂質含量が35質量%以上であるベーカリー食品の破砕物を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項2】
上記焼型が紙製であることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項3】
上記ベーカリー食品破砕物の、重合度3以下の糖類含量が20質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項4】
上記ベーカリー食品破砕物が、層状ベーカリー食品の破砕物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項5】
上記ベーカリー生地が、油分含量10〜30質量%、且つ、水分含量20〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項6】
上記ベーカリー生地が、シュー生地であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項7】
上記ベーカリー生地が、冷凍生地であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項8】
上記請求項1〜7のいずれかに記載の型焼きベーカリー食品の製造方法によって得られた型焼きベーカリー食品。