説明

埋め込みロール装置

埋め込み装置(60)は、支持フレーム(12)に対して回転可能に固定される第1の一体形成長尺シャフト(62)であって、前記第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第1のディスク(64)を有する第1の一体形成長尺シャフト(62)と、支持フレーム(12)に対して回転可能に固定される第2の一体形成長尺シャフト(66)であって、前記第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第2のディスク(68)を有する第2の一体形成長尺シャフト(66)とを含み、第1のシャフトは、水平に位置合わせされるように且つディスクが互いに噛み合うように第2のシャフトに対して配置され、側方から見て第1および第2の複数のディスクの外周が互いに重なり合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本埋め込みロール装置は、一般に、硬化可能なスラリー中に繊維を埋め込むための装置に関し、具体的には、セメントボードまたはセメント質構造用パネル(“SCP”)製造ラインに沿って硬化可能なセメントスラリー中に繊維を埋め込むようになっている装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住居構造及び/又は商業構造の内壁および外壁を形成するために建設業ではセメント質パネルが使用されてきた。そのようなパネルの利点としては、標準的な石膏系の壁ボードと比べて耐湿性が高いことが挙げられる。しかしながら、そのような従来のパネルの欠点は、そのようなパネルが構造用ポリウッドまたは配向性ストランドボード(OSB)よりも強くない場合にはこれらに匹敵し得る程度まで十分な構造的強度を有していないという点である。
【0003】
一般に、セメント質パネルは、補強材料または安定材料から成る層間に少なくとも1つの硬化セメント層または石膏複合体層を含む。ある場合には、補強材料または安定材料がファイバガラスメッシュまたはその等価物である。メッシュは、通常、硬化可能スラリーの層上または該層間にシート態様でロールから加えられる。従来のセメント質パネルで使用される製造技術の例は、その内容が参照することにより本願に組み入れられる米国特許第4,420,295号明細書、米国特許第4,504,335号明細書、および、米国特許第6,176,920号明細書において与えられる。また、他の石膏−セメント組成体が米国特許第5,685,903号明細書、米国特許第5,858,083号明細書、および、米国特許第5,958,131号明細書に全体的に開示されている。
【0004】
セメント質パネルを製造するための従来のプロセスの1つの欠点は、マットまたはウェブの状態で加えられる繊維がスラリー中に適切に且つ均一に分配されず、したがって、各ボード層の厚さに応じて、繊維−マトリクス相互作用に起因して生じる補強特性がボードの厚さにわたって変わるという点である。繊維網状体を通じたスラリーの不十分な浸透が起こると、繊維とマトリクスとの間の結合が弱くなり、それにより、パネル強度が低下する。また、スラリーおよび繊維の別個の層状化が起こる幾つかのケースでは、繊維の不適切な結合および不十分な分配がパネル強度進展の悪化を引き起こす。
【0005】
センメント質パネルを製造するための従来のプロセスの他の欠点は、結果として得られる製品が、非常に高価であり、したがって、屋外/構造用ポリウッドまたは配向性ストランドボード(OSB)との競合力がないという点である。
従来のセメント質パネルの比較的高いコストの1つの根源は、特に結果として得られるボードの外観を悪化させ且つ製造設備の効率に支障をきたす粒子または塊の状態を成すスラリーの早期の硬化によってもたらされる製造ラインダウンタイムに起因する。製造設備における早期に硬化されるスラリーの著しい集積は、製造ラインの停止を必要とし、したがって、最終的なボードコストを増大させる。
【0006】
構造用補強材を有するセメント質構造用パネル(SCP)を形成するために切り刻まれたファイバガラス繊維がスラリーと混合されるMULTI−LAYER PROCESS AND APPARATUS FOR PRODUCING HIGH STRENGTH FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS(米国特許出願公開第2005−0064164号明細書)と題される同一出願人による米国特許出願第10/666,294号明細書に開示されるような場合には、繊維をスラリーと完全に混合させる必要性が生じる。そのような均一混合は、結果として得られるパネルまたはボードの所望の構造的強度を得るために重要である。
【0007】
このタイプの硬化可能スラリーを混合させるために使用される任意の装置の設計基準は、製造実行中にボードの製造が中断することなく続かなければならないというものである。設備の洗浄に起因する製造ラインの任意の停止は避けられなければならない。これは、高速硬化剤または硬化促進剤がスラリー中へ導入されるときのように、急速に硬化するスラリーが形成されるときに特に問題である。
【0008】
移動する製造ラインでセメント構造用パネルを形成するときの潜在的な問題は、スラリーの一部が早期に硬化し、それにより、様々なサイズのブロックまたは塊が形成されるという問題である。これらの塊が逃げ出して最終ボード製品中へ組み込まれるようになると、これらの塊が、ボードの均一な外観に支障をきたすとともに、構造的な脆弱性をもたらす。従来の構造用セメントパネル製造ラインでは、早期に硬化されたスラリー粒子が結果として得られるボード中へ混入しないように目詰まりした設備を洗浄するために製造ライン全体が中断されなければならない。
【0009】
切り刻まれた補強繊維をスラリー中へ混入するために使用される装置の他の設計基準は、所要の強度を与えるために繊維が略均一な態様で比較的厚いスラリー中へ混入される必要があるというものである。
したがって、塊または硬化スラリーによって目詰まりしない或いは支障を受けないようにファイバガラスまたは他の構造補強繊維を硬化可能なスラリー中へ完全に混入するための改良された装置の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,420,295号明細書
【特許文献2】米国特許第4,504,335号明細書
【特許文献3】米国特許第6,176,920号明細書
【特許文献4】米国特許第5,685,903号明細書
【特許文献5】米国特許第5,858,083号明細書
【特許文献6】米国特許第5,958,131号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005−0064164号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した必要性は、繊維強化硬化可能スラリーボード製造ライン上に該ラインを横切るように配置される少なくとも一対の長尺シャフトを含む本埋め込み装置によって満たされ或いは突破される。シャフトは、互いに離間された平行な関係を成して配置されることが好ましい。各シャフトは、複数の軸方向に離間されるディスクをシャフトに沿って有している。ボード製造中、シャフトおよびディスクが軸方向に回転する。隣り合う好ましくは平行なシャフトのそれぞれのディスクは、繊維がスラリーの全体にわたって分配されるように既に堆積された繊維をスラリー中に埋め込む“混練”または“マッサージ”作用をスラリー中に形成するために互いに噛み合わされる。また、ディスクの近接する互いに噛み合わされる回転する関係は、ディスク上におけるスラリーの蓄積を防止し、事実上、スラリーの塊の早期の硬化に起因するボードラインダウンタイムをかなり減少させる“自浄”作用を生み出す。
【0012】
より具体的には、支持フレームに対して回転可能に固定される第1の一体形成長尺シャフトであって、第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第1のディスクを有する第1の一体形成長尺シャフトと、支持フレームに対して回転可能に固定される第2の一体形成長尺シャフトであって、第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第2のディスクを有する第2の一体形成長尺シャフトとを含み、第1のシャフトが、水平に位置合わせされるように且つディスクが互いに噛み合うように第2のシャフトに対して配置され、側方から見たときに第1および第2の複数のディスクの外周が互いに重なり合う、埋め込み装置が提供される。
【0013】
他の実施形態では、支持フレームに対して固定され、第1のシャフトと複数の軸方向に離間される第1のディスクとを含む第1のロールと、支持フレームに対して固定され、第2のシャフトと複数の軸方向に離間される第2のディスクとを含む第2のロールとを含み、複数の軸方向に離間される第1のディスクおよび複数の軸方向に離間される第2のディスクがスラリー中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離で互いに噛み合うように第1のロールおよび第2のロールが支持フレーム上に配置される、埋め込み装置が提供される。
【0014】
更に他の実施形態では、支持フレームに対して回転可能に固定されるとともに、第1のシャフトと、第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第1のディスクとを含む第1のロールと、支持フレームに対して回転可能に固定されるとともに、第2のシャフトと、第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第2のディスクとを含む第2のロールとを含み、第1のロールが、水平に位置合わせされるように且つ複数の軸方向に離間される第1のディスクおよび複数の軸方向に離間される第2のディスクがスラリー中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離で互いに噛み合うように第2のロールに対して配置され、複数の軸方向に離間される第1のディスクおよび複数の軸方向に離間される第2のディスクの隣り合う互いに噛み合うディスク間のクリアランスが短繊維のサンプル繊維束の直径よりも小さい、埋め込み装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】構造用スラリーボード製造ライン上の本埋め込み装置の第1の実施形態の上から見た斜視図である。
【図2】図1の埋め込み装置の上から見た断片的な平面図である。
【図3】図2の埋め込み装置の側面図である。
【図4】本埋め込み装置によってスラリー中に形成される埋め込みトラック/トラフのパターンの概略図である。
【図5】構造用スラリーボード製造ライン上の本埋め込み装置の代わりの実施形態の上から見た斜視図である。
【図6】図5の埋め込み装置の第1のディスク形態の上から見た断片的な平面図である。
【図7】図5の埋め込み装置の側面図である。
【図8】図5の埋め込み装置の他のディスク形態の上から見た断片的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで図1および図2を参照すると、構造用パネル製造ラインが断片的に示されて全体的に10で表わされている。当分野においても周知のように、製造ライン10は、ゴム状のコンベアベルト、クラフト紙のウェブ、リリースペーパー、及び/又は、硬化前にスラリーを支持するようになっている支持材料から成る他のウェブなどの移動キャリア14を支持する支持フレームまたは成形テーブル12を含む。キャリア14は、当分野においても周知のモータ、プーリ、ベルトまたはチェーン、および、ローラ(いずれも図示せず)の組み合わせにより、支持フレーム12に沿って移動される。また、本発明は、構造用セメントパネルを製造する際に用いるようになっているが、ボードまたはパネル製造のためにばら繊維が硬化可能なスラリーへと混合されるべき任意の状況において用途を見出すことができると考えられる。
【0017】
用途に応じて他のシーケンスが考えられるが、本発明では、均一のスラリーウェブを形成するために移動キャリアウェブ14上にスラリー16の層が堆積される。様々な硬化可能スラリーが考えられるが、本埋め込み装置は、特に、構造用セメントパネルを製造する際に用いるようになっている。したがって、スラリーは、様々な量のポルトランドセメント、石膏、砂利、水、硬化促進剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、及び/又は、当分野において周知の他の原料から形成されるのが好ましい。これらの原料の相対量は、上記原料の一部の排除または他の原料の付加を含めて、用途に適するように変わってもよい。好ましい実施形態では切り刻まれたファイバガラス繊維である所定量の或いは一束の短繊維18が移動するスラリーウェブ16上に落下され或いは撒き散らされる。
【0018】
更なる構造用補強材を供給するために、短繊維18の2つの適用がスラリー16の各層において利用されることが好ましい。また、随意的に、スラリー16を振動させ且つ繊維がスラリー上に堆積されるときに繊維18を更に均一に埋め込むために、振動器(図示せず)が移動キャリア14に近接して動作可能に配置される。
【0019】
全体的に20で示される本埋め込み装置は、繊維18がスラリーウェブ16上に堆積されるポイントの直ぐ“下流側”または直ぐ後ろに位置するように支持フレーム12上に配置される。装置20には、少なくとも2つの長尺シャフト22,24が含まれており、各長尺シャフトは、支持フレーム12の両側に位置されるブラケット28に係合される端部26を有している。2つのシャフト22,24が描かれているが、必要に応じて更なるシャフトが設けられてもよい。シャフト端部26の1つの組には、シャフト22,24をブラケット28内で軸方向に回転させることができるようにする歯付きスプロケットまたはプーリ30(図2に最も良く示されている)或いは他の駆動機構が設けられることが好ましい。シャフト22,24および関連するディスク32,34が同じ方向に回転されることが好ましい。ローラまたはシャフトを製造ラインに沿って駆動させるための電動ベルトドライブ、チェーンドライブ、または、他の典型的なシステムがここでは適していると考えられる。図示のように、シャフト22,24は、支持フレーム12上に略横方向に装着されるとともに、互いに離間した略平行な関係を成している。好ましい実施形態では、シャフト22,24が互いに平行である。
【0020】
各シャフト22,24には、複数の軸方向に離間された主ディスクすなわち比較的大きなディスク32が設けられている。この場合、隣り合うディスクは互いに軸方向に離間されている。間隔は、それぞれが主ディスク32の隣り合う対同士の間に位置される第2の複数の比較的小さな直径のスペーサディスク34(図2)によって維持される。図3に見られるように、少なくとも主ディスク32、好ましくは主ディスクおよびスペーサディスク32,34の両方が共同回転のためにそれぞれのシャフト22,24にキー止めされることが好ましい。歯付きスプロケット30も共同回転のためにシャフト22,24にキー止めされ或いは固定されることが好ましい。好ましい実施形態では、それぞれのシャフト端部26に隣接して位置されるキー付きカラー36(図3に最も良く示されている)が位置決めキーまたは位置決めネジ38などによってシャフトに固定され、このキー付きカラー36は、ディスク32,34を横方向に移動しないようにシャフト22,24上に保持する。
【0021】
図1〜3からも分かるように、それぞれのシャフト22,24のディスク32,34は、シャフト22の主ディスク32がシャフト24のディスク32間に位置されるように互いに噛み合わされている。また、図示のように、互いに噛み合うようになると、主ディスク32の周縁40は、互いに重なり合って、対向するシャフトの対向するスペーサディスク34の周縁42に近接するが回転関係をなすように配置される(図3に最も良く示されている)。シャフト22,24および関連するディスク32,34は同じ方向‘R’に回転されることが好ましい(図3)。
【0022】
ディスク32,34の相対的な寸法は用途に適するように変動してもよいが、好ましい実施形態において、主ディスク32は、1/4”(0.64cm)厚であり、5/16”(0.79cm)の間隔で隔てられている。したがって、シャフト22,24の隣り合うディスク32が互いに噛み合うときには、近接するが相対回転できる許容度が形成される(図2に最も良く示されている)。この近接許容度は、硬化可能なスラリー16の粒子がディスク32,34間に捕らえられて早期に硬化されるようになることを困難にする。また、シャフト22,24および関連するディスク32,34はSCPパネル製造中に絶えず動いているため、ディスク間に捕らえられる任意のスラリーは、直ちに放出され、埋め込み動作を損なう態様で硬化する機会が全く無い。また、ディスク32,34の外周が平坦にされ或いはディスクの面に対して垂直であることが好ましいが、テーパ状の或いは角度を成した周縁40,42を設けることもでき且つそのような周縁も依然として満足な繊維埋め込みを達成すると考えられる。
【0023】
本埋め込み装置20の自浄特性は、シャフト22,24およびディスク32,34の形成のために使用される材料によって更に高められる。好ましい実施形態において、これらの構成部品は、比較的滑らかな表面を得るために研磨されたステンレススチールから形成される。また、ステンレススチールがその耐久性および耐食性のため好ましいが、プレキシガラス材料または他の人工プラスチック材料を含む他の耐久性のある耐食性の焦げ付かない材料が考えられる。
【0024】
また、移動ウェブ14に対するシャフト22,24の高さは、スラリー16中への繊維18の埋め込みを促進するために調整可能であることが好ましい。ディスク32は、スラリー中への繊維18の埋め込みを促進するため、キャリアウェブ14と接触しないがスラリー16中へと十分に延びることが好ましい。キャリアウェブ14の上側のシャフト22,24の特定の高さは、用途に適するように変動してもよく、特に、主ディスク32の直径、スラリーの粘度、スラリー層16の厚さ、および、繊維18の埋め込みの所望の度合いによって影響される。
【0025】
ここで図4を参照すると、スラリー16中に繊維18を埋め込むためにスラリー16中に第1のトラフパターン44(実線)を形成するために、第1のシャフト22上の複数の主ディスク32がフレーム12に対して配置されている。トラフパターン44は、ディスク32によって形成される一連の谷46と、スラリー16が各ディスクの側面に対して押圧される際にディスク間に位置される丘48とを含む。繊維18は直前に既にスラリー16の上面50に堆積されているため、第1のトラフパターン44の形成によって特定の割合の繊維がスラリー中へ混合されるようになる。シャフト22,24が回転して関連するディスク32,34を回転させているときに、キャリアウェブまたはベルト14も第1のシャフト22から第2のシャフト24へと移動方向‘T’(図2)に動いていることは言うまでもない。このようにして、繊維18の埋め込みを促進させる攪拌する動的な動きも形成される。
【0026】
スラリー16は、第1のシャフト22のディスク32の近傍から出た直後に、続けて第2のトラフパターン52を形成する第2のシャフト24のディスク32(仮想線で示される)と直面する。それぞれのシャフト22,24のディスク32の横方向にオフセットされた位置に起因して、任意の選択されたポイントでは、丘54が谷46に取って代わり且つ谷56が丘48に取って代わるという点で、第2のトラフパターン52がパターン44に対して正反対である。トラフパターン44,52が正弦波にほぼ似ているという点で、トラフパターン44,52が互いに対して位相がずれていると言うこともできる。この横方向にオフセットされたトラフパターン52は、スラリー16を更に攪拌して、繊維18の埋め込みを促進させる。すなわち、シャフト22,24の互いに噛み合うディスク32の回転によってスラリーマッサージ作用またはスラリー混練作用が生み出される。
【0027】
埋め込み装置20の開発中において、ある場合には、個々の繊維束が装置の回転ディスク間に詰まるようになり、それにより、これらの繊維束が他の繊維と一緒に回転されるにつれて拡径し、その結果、装置がロックされ或いは停止される可能性があることが分かった。結果として、一般に、SCPパネル製造ライン全体を停止させて、埋め込み装置20を分解し、詰まった繊維をディスクから除去しなければならず、そのため、最終的なボードコストが高くなり、製造ラインの効率が低下する。したがって、代わりの埋め込みロール装置60が提供されて図5に示される。装置60で使用され且つ図1〜4の装置20と共有される構成部品が同一の参照符号を用いて示されており、また、これらの構成部品についての先の説明がここで適用できると考えられる。同様に、適用できるSCPパネル製造ラインが同時係属の共有の米国特許第7,182,589号明細書に記載されている。
【0028】
埋め込み装置20と同様に、埋め込み装置60が支持フレーム12上に回転可能に配置されており、その直ぐ“下流側”で繊維18がスラリーウェブ16上に堆積される。前述したプロセス用途で述べたように、SCPパネルを形成するために使用される各スラリー層毎に埋め込み装置60を設けることが考えられる。装置60は、支持フレーム12に固定される一体形成された第1の長尺シャフト62を含むととともに、該第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間された第1のディスク64を有し、また、装置60は、支持フレームに固定される一体形成された第2の長尺シャフト66を含むとともに、該第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間された第2のディスク68を有する。
【0029】
埋め込み装置20は、多数のディスクを各シャフト上に設け且つ繊維18をスラリー16中に更に均一に埋め込むために、1/2インチ(1.27cm)未満の厚さを有するディスクを含む。しかしながら、埋め込み装置60の開発の過程で、ディスク64,68の厚さを増大させてディスクの数をほぼ半分に減らすことにより、均一の埋め込みを依然として行ないつつ、ディスク間の摩擦が半分に減少されることが分かった。ディスク64,68の厚さは約1/2〜1インチ(1.27〜2.54cm)であることが好ましいが、この範囲は、用途に適するように変えることができる。隣り合うディスク64,68同士の間の摩擦を減少させると、ディスクの詰まり及びシャフト62,66の回転速度の減少が防止されると考えられる。
【0030】
埋め込み装置20と同様に、各シャフト62,66は、支持フレーム12の両側に位置されるブラケット28と係合される端部69を有する。シャフト62,66およびそれらの関連するディスク64,68は同じ方向に回転されることが好ましい。電動チェーンドライブ(図示せず)は、滑りに対するそれらの抵抗に起因して、シャフト62,66を回転させるのに好ましいが、当分野において公知のように、シャフトを駆動させるための他のシステムが適している場合があることは言うまでもない。
【0031】
図5に示されるように、シャフト62,66は、支持フレーム12上にほぼ横方向に装着されるとともに、互いに略平行となるようにフレーム上で方向付けられており、移動キャリア14から垂直に変位され且つ移動キャリア14と平行な面を規定する。
【0032】
図2に示されるように、埋め込み装置20の大きいディスク32は、スペーサディスク34の外周縁42にほぼ至るまで互いにほぼ噛み合っている。しかしながら、ある場合には、繊維が互いに噛み合うディスク間で捕らえられるようになり、それにより、シャフトの回転が妨げられて、製造ラインの停止が必要になる可能性があることが分かった。
【0033】
したがって、埋め込み装置60では、図6〜7に示されるように、複数の軸方向に離間された第1のディスク64と、複数の軸方向に離間された第2のディスク68とが、それらのそれぞれの外周縁70の領域でのみ、あるいは、スラリー16中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離“D”だけ、互いに噛み合うことが好ましい。更に好ましくは、複数の軸方向に離間された第1のディスク64および複数の軸方向に離間された第2のディスク68は、約1/2インチ(1.27cm)の重なり合いを形成するように互いに噛み合うが、用途に応じて他の距離が適する場合がある。この配置は、スラリー16中への繊維18の均一な埋め込みを依然として行ないつつ、ディスク64,68の詰まりを防止すると考えられる。
【0034】
隣り合うディスク間の目詰まりを更に防止するため、複数の軸方向に離間された第1のディスク64および複数の軸方向に離間された第2のディスク68の隣り合う互いに噛み合ったディスク間のクリアランス“C”(図6)は、短繊維18のサンプル繊維の直径よりも小さいことが好ましい。クリアランス“C”は約0.01〜0.018インチ(0.03〜0.05cm)であることが好ましいが、この範囲は用途に適するように変えてもよい。この配置は、埋め込み装置60を分解して詰まった繊維を除去するために製造ライン10全体の停止を必要とする可能性がある回転中の隣り合うディスク間での繊維18の詰まりを防止すると考えられる。また、この構造は、SCPパネル製造中のシャフト62,66の一定の動きに起因して、通常は互いに噛み合うディスク64,68間に捕らえられ得る任意の繊維/スラリーを排出することによって依然として自浄作用を与えると考えられる。
【0035】
図6に最も良く示されるように、埋め込み装置60の1つの実施形態は、隣り合うディスク64,68間に形成され且つ第1および第2のシャフト62,66上に一体形成された溝72を更に含む。シャフト62,66上に溝72およびディスク64,68を一体形成することにより、隣り合う互いに噛み合うディスク間のクリアランスが連続動作後において一定のままであり、より均一で効率的な埋め込みを行なうと考えられる。シャフト62,66およびディスク64,68が一体に形成されているため、溝72もシャフトの外周縁74である。溝72は約1.4〜1.8インチ(3.56〜4.57cm)の深さであることが好ましいが、用途に適するために他の範囲が適切な場合があることは言うまでも無い。
【0036】
溝72によって分離される複数の離間されたディスク64,68を形成するためにシャフト62,66を一体形成する際に、溝72を中実の円柱シャフトへ機械加工することにより各シャフトが製造されるのが好ましいことは言うまでもない。このように、ディスク64,68は、溝72からシャフトの軸へ向けて径方向内側に延びるため、溝と別個のものではない。それにもかかわらず、このようにして製造されるシャフトは、それらの外周が埋め込み装置20のディスク32のように作用する複数の離間された円形の平坦な形状をもたらすため、これらの平坦な形状も装置60に関してディスクと称される。また、ディスク64,68と一体形成されるシャフトを製造するための他の製造技術も考えられ、そのような製造技術としては、個々の構成部品を溶接すること或いは一体的に締結すること、または、化学接着剤を使用することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
図8に60aで全体的に示される埋め込み装置60の他の実施形態において、第1のシャフ76は、複数の軸方向に離間される第1のディスク64間に位置される複数の比較的小径の第1のディスク78を含んでおり、また、第2のシャフ80は、複数の軸方向に離間される第2のディスク68間に位置される複数の比較的小径の第2のディスク82を含んでいる。ディスク78,82は、個別に形成されており、シャフト62,66上のディスク64,68間にそれぞれ交互に配置される。各シャフト62,66は、支持フレーム12の両側に位置されるブラケット28と係合する端部84を有する。シャフト端部84の1つの組には、シャフトの回転を可能にするために歯付きスプロケットまたはプーリ30が設けられることが好ましい。図3に関連して前述したように、主ディスク64,68および更に小さいディスク78,82はいずれも、共同回転のためにそれぞれのシャフト76,80にキー止めされることが好ましい。歯付きスプロケット30も共同回転のためにそれぞれのシャフト76,80にキー止めされることが好ましい。
【0038】
溝72と同様に、比較的小径のディスク76,78は、隣り合うディスク64,68同士がディスク外周縁70の領域でのみ互いに噛み合うように寸法付けられる。ディスク64,68の厚さの増大に起因して、小径ディスク76,78およびディスク64,68の配置が、装置60の連続動作中に隣り合う互いに噛み合うディスク間の一定のクリアランス“C”を維持すると考えられる。
【0039】
このように、本埋め込み装置は、移動するスラリー層中へ切り刻まれたファイバガラス繊維を組み入れる或いは埋め込むための機構を備える。本装置の重要な特徴は、スラリーが装置内に詰まる或いは装置内に捕捉されるようになる機会を最小限に抑える態様でスラリーに対して混練作用、マッサージ作用、または、攪拌作用を与えるためにそれぞれのシャフトのディスクが互いに噛み合わされて互いに重なり合うという点である。
【0040】
特定の埋め込みロール装置について図示して説明してきたが、当業者であれば分かるように、この特定の埋め込みロール装置に対しては、その更に広い態様で以下の請求項に示される本発明から逸脱することなく変更および改良がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーが移動キャリア(14)上で支持フレーム(12)に対して運ばれ且つ短繊維(18)がスラリー上に堆積される構造用パネル製造ラインで用いる埋め込み装置(60)において、
支持フレーム(12)に対して回転可能に固定される第1の一体形成された長尺シャフト(62)であって、前記第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第1のディスク(64)を有する第1の一体形成された長尺シャフト(62)と、
支持フレーム(12)に対して回転可能に固定される第2の一体形成された長尺シャフト(66)であって、前記第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第2のディスク(68)を有する第2の一体形成された長尺シャフト(66)と、
を備え、
前記第1のシャフトは、水平に位置合わせされるように且つ前記ディスクが互いに噛み合うように前記第2のシャフトに対して配置され、側方から見て前記第1および第2の複数のディスクの外周が互いに重なり合うことを特徴とする埋め込み装置(60)。
【請求項2】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)は、それらのそれぞれの外周縁(70)の領域でのみ互いに噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)は、スラリー中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離で互いに噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)は、ほぼ1.27cmの重なり合いを形成するように互いに噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)の隣り合う互いに噛み合うディスク間のクリアランス(C)は、短繊維(18)のサンプル繊維の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1および第2のシャフト(62,66)上の隣り合うディスク間に形成され且つ前記シャフトの外周縁(74)である溝(72)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記溝(72)が約3.56〜4.57cmの深さであることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記シャフト(62,66)は、製造ラインに沿うスラリーの移動方向に対して略垂直となるように、また、互いに略平行となり且つ前記移動キャリア(14)から垂直に変位される移動キャリア(14)と平行な面を規定するように、前記フレーム上で方向付けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
複数の前記第1のディスク(64)は、スラリー中に繊維(18)を埋め込むためにスラリー中に第1のトラフパターンを形成するためにフレーム(12)に対して配置され、複数の前記第2のディスク(68)は、スラリー中に第2のトラフパターンを形成するようにフレームに対して配置され、前記第2のパターンが前記第1のパターンから横方向にオフセットされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記シャフト(62,66)が同じ方向に回転するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
スラリーが移動キャリア(14)上で支持フレーム(12)に対して運ばれ且つ短繊維(18)がスラリー上に堆積される構造用パネル製造ラインで用いる埋め込み装置(60,60a)であって、
支持フレーム(12)に対して固定され、第1のシャフト(62,76)と複数の軸方向に離間される第1のディスク(64)とを含む第1のロールと、
支持フレーム(12)に対して固定され、第2のシャフト(66,80)と複数の軸方向に離間される第2のディスク(68)とを含む第2のロールと、
を備え、
前記第1のロールおよび前記第2のロールは、複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)がスラリー中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離で互いに噛み合うように支持フレーム上に配置されることを特徴とする埋め込み装置(60,60a)。
【請求項12】
複数の前記第1のディスク(64)および複数の前記第2のディスク(68)がほぼ1.27cmの重なり合いを形成するように互いに噛み合うことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1および第2のロール上の隣り合うディスク間に位置される溝(72)を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)間で前記第1のシャフト(76)に固定される複数の比較的小径の第1のディスク(78)と、複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)間で前記第2のシャフト(80)に固定される複数の比較的小径の第2のディスク(82)とを更に含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項15】
スラリーが移動キャリア(14)上で支持フレーム(12)に対して運ばれ且つ短繊維(18)がスラリー上に堆積される構造用パネル製造ラインで用いる埋め込み装置(60,60a)であって、
支持フレーム(12)に対して回転可能に固定されるとともに、第1のシャフト(62,76)と、前記第1のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第1のディスク(64)とを含む第1のロールと、
支持フレーム(12)に対して回転可能に固定されるとともに、第2のシャフト(66,80)と、前記第2のシャフトに対して軸方向に固定される複数の軸方向に離間される第2のディスク(68)とを含む第2のロールと、
を備え、
前記第1のロールは、水平に位置合わせされるように且つ複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)がスラリー中へのディスクの埋め込みの距離のほぼ2倍の距離で互いに噛み合うように前記第2のロールに対して配置され、
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)の隣り合う互いに噛み合うディスク間のクリアランス(C)は、短繊維(18)のサンプル繊維の直径よりも小さいことを特徴とする埋め込み装置(60,60a)。
【請求項16】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)がそれらのそれぞれのシャフト上に一体形成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)および複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)の隣り合う互いに噛み合うディスク間のクリアランス(C)が、0.03〜0.05cmであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
複数の前記第1のディスク(64)および複数の前記第2のディスク(68)がほぼ1.27cmの重なり合いを形成するように互いに噛み合うことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記第1および第2のロール上の隣り合うディスク間に形成され且つ前記シャフトの外周縁である溝(72)を更に含み、前記溝が約3.56〜4.57cmの深さであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項20】
複数の軸方向に離間される前記第1のディスク(64)間で前記第1のシャフト(76)に固定される複数の比較的小径の第1のディスク(78)と、複数の軸方向に離間される前記第2のディスク(68)間で前記第2のシャフト(80)に固定される複数の比較的小径の第2のディスク(82)とを更に含むことを特徴とする請求項15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−508182(P2010−508182A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535316(P2009−535316)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/023059
【国際公開番号】WO2008/057377
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】