埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置
【課題】コンクリート構造物に埋設されている埋設物の距離及び外径を探査するなどが可能な埋設物探査方法などを提供する。
【解決手段】埋設物探査方法の構成を、ECTセンサ2をコンクリート構造物に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させ、このときにECTセンサ2が埋設物(埋設配管)30を検出して、ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサの検出信号から最大振幅W1と谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求め、これらの最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物(埋設配管)までの距離d1と埋設物(埋設配管)の外径d2とを求める構成とする。
【解決手段】埋設物探査方法の構成を、ECTセンサ2をコンクリート構造物に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させ、このときにECTセンサ2が埋設物(埋設配管)30を検出して、ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサの検出信号から最大振幅W1と谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求め、これらの最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物(埋設配管)までの距離d1と埋設物(埋設配管)の外径d2とを求める構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所やビルの壁や床などの既設のコンクリート構造物に対して、孔開け施工を実施する際には、当該コンクリート構造物に埋設されている配管などの埋設物が損傷するのを防止するため、当該埋設物の位置を確認する必要がある。
【0003】
この埋設物の位置確認は、従来、コンクリート構造物の施工図面上での確認や、レーダ法を用いた探査装置による探査などによって行われていた。また、下記の特許文献1には、コンクリート構造物に開けた予備の孔に金属感知センサを挿入することによって、コンクリート構造物に埋設されている鉄筋を探査するという技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−178365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリート構造物の施工現場での調整などによって、施工図面どおりの位置に配管などの埋設物が埋設されていないことがあり、かかる場合には施工図面による確認だけでは不十分である。また、改造工事などによって、施工図面には記載されていない埋設物がコンクリート構造物に埋設されている可能性もあり、この場合にも施工図面による確認だけでは不十分である。
【0006】
また、レーダ法を用いた探査装置ではコンクリート構造物の表面近くに埋設されている鉄筋などを探査することはできるが、コンクリート構造物の深部に埋設されている配管などを探査することは難しい。
【0007】
このため、コンクリート構造物の深部に埋設されている埋設物も確実に探査することができる手段が望まれていた。これに対し、上記特許文献1に開示された技術ではコンクリート構造物の深部の埋設物も探査することができる。しかし、上記特許文献1には埋設物の距離や外径を検出することや、埋設物が配管か鉄筋かを判別することまでは開示されていない。単に埋設物を検出するだけでなく、埋設物の距離や外径を検出し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握しておくことや、埋設物の種類を把握しておくことは、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用である。
【0008】
従って本発明は上記の事情に鑑み、コンクリート構造物に埋設されている埋設物の距離及び外径を探査することができ、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することもできる埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1発明の埋設物探査方法は、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、
前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、
このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、
これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明の埋設物探査方法は、第1発明の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、
この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする。
【0011】
また、第3発明の埋設物探査方法は、第1発明の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする。
【0012】
また、第4発明の孔開け施工方法は、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする。
【0013】
また、第5発明の孔開け施工方法は、第4発明の孔開け施工方法において、
前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
また、第6発明の孔開け施工方法は、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする。
【0015】
また、第7発明の孔開け施工方法は、第6発明の孔開け施工方法において、
前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする。
【0016】
また、第8発明の埋設物探査装置は、コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、
この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴とする。
【0017】
また、第9発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする。
【0018】
また、第10発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする。
【0019】
また、第11発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴とする。
【0020】
また、第12発明の埋設物探査装置は、第11発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1発明の埋設物探査方法によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0022】
第2発明の埋設物探査方法によれば、第1発明の埋設物探査方法において、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0023】
第3発明の埋設物探査方法によれば、第1発明の埋設物探査方法において、前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物の距離や外径を確実に検出することができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークしか現れず、谷が現れない場合には、ECTセンサの長さよりも外径の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することできるという効果も得られる。
【0024】
第4発明の孔開け施工方法によれば、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴としているため、埋設物の有無だけでなく、埋設物の距離や外径の情報も得て、より適切な孔開け施工を行うことができる。
【0025】
第5発明の孔開け施工方法によれば、第4発明の孔開け施工方法において、前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、埋設物との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0026】
第6発明の孔開け施工方法によれば、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴としているため、ECTセンサの探査可能距離よりも大きな半径を有する孔を、埋設物と干渉することなく、開けることができる。
【0027】
第7発明の孔開け施工方法によれば、第6発明の孔開け施工方法において、前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、無駄な試掘孔を開けることなく効率的に、埋設物との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0028】
第8発明の埋設物探査装置によれば、コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置で求めた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物までの距離と、埋設物の外径とを求めることができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も求めることによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0029】
第9発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物の距離や外径を確実に求めることができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークしか現れず、谷が現れない場合には、ECTセンサの長さよりも外径の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することできるという効果も得られる。
【0030】
第10発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0031】
第11発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置で求めた第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0032】
第12発明の埋設物探査装置によれば、第11発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
はじめに、図1〜図6に基づき、埋設物探査装置の構成及び探査原理について説明する。図1は本発明の実施の形態例に係る埋設物探査装置の構成図、図2及び図3は埋設物探査の様子を示す説明図、図4はECTセンサの構成図、図5は探査原理の説明図、図6は埋設物の検出に用いる信号の説明図である
【0035】
図1に示すように、本実施の形態例に係る埋設物探査装置1は、ECT(Eddy Current Testing)センサ2と、検出信号処理手段としてのECT探査器3とを有してなるものである。ECTセンサ2とECT探査器3は電気ケーブル4を介して電気的に接続されており、この電気ケーブル4を介してECT探査器3からECTセンサ2への給電や、ECTセンサ2からECT探査器3への検出信号の伝送などが行われる。
【0036】
埋設物の探査は、図2及び図3に示すような方法で行われる。まず、既設のコンクリート構造物11に試掘孔12を開ける。試掘孔12は最終的な孔開けを行う前に埋設物を探査するために開けられる予備的な孔であり、ECTセンサ2の外径よりも少し大きい程度の小径の細孔である。試掘孔12を開けた後、この試掘孔12にECTセンサ2を挿入して、矢印Aの如くECTセンサ2を試掘孔12内の一端側から他端側へと移動(走査)させる。そして、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設物の有無だけではなく、埋設物の距離及び外径を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別も行う。埋設物探査の結果、試掘孔12の近くに埋設物が無いことが確認されれば、試掘孔12を中心として試掘孔12よりも径の大きな孔を開ける。この孔は例えばコンクリート構造物11に新設の配管を通すためのものである。なお、埋設物探査方法及び孔開け施工方法の詳細については後述する。
【0037】
埋設物探査の対象となるコンクリート構造物11としては、例えば原子力発電所やビル等の壁や床などがある。図示例では、コンクリート構造物11の比較的浅い部分に鉄筋13が埋設され、深部に配管14が埋設されている。この場合、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の中心から埋設配管14の外周面までの距離d1及び埋設配管14の外径d2を求め、更には配管14が配管か鉄筋かの判別も行うことができる。なお、配管14は鋼製の電線管などである。
【0038】
図4に示すように、ECTセンサ2は交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサである。詳述すると、ECTセンサ2は交流磁界を発生させるための励磁コイル31と、前記交流磁界を検出するための検出コイル32とを、強磁性体で円柱状の芯33の外周面に巻回してなる相互誘導型のものである。芯33の材料には例えばフェライトを用いる。芯33の直径D1は例えば10mmとする。ECTセンサ2の長さL(芯33の長さに等しい)は埋設物の外径に応じた長さとし、例えば50mmや100mmなどにする(詳細後述)。ECTセンサ2の外径D2は例えば14mmとし、この場合の試掘孔12の直径D3は例えば15mmとする。
【0039】
埋設物探査の際にはECTセンサ2を、矢印Aの如く、ECTセンサ2の軸方向(長さ方向)を試掘孔12の軸方向(長さ方向)に合わせた状態で試掘孔12に挿入して、試掘孔12内を移動(走査)させる。励磁コイル31は、電気ケーブル4を介してECT探査器3の交流電源から給電されて交流電流が流れると、交流磁界(交流磁束)を発生させる。検出コイル32は前記交流磁界(交流磁束)を検出し、この検出信号を、電気ケーブル4を介してECT探査器3へ出力する。
【0040】
図5に示すように、励磁コイル31によって発生する交流磁束Bは、この交流磁束BによってECTセンサ2(励磁コイル31)の周辺に形成される磁気回路の磁気的な抵抗Rの変化に影響されて変化する。即ち、図5に例示するように磁気回路中に配管や鉄筋などの埋設物30が存在すると、この埋設物30によって磁気抵抗Rが変化し、この磁気抵抗Rの変化によって交流磁束Bが変化する。そして、この交流磁束Bの変化が、検出コイル32の出力信号(検出信号)の変化として捉えられる。
【0041】
埋設物の探査(検出)には、ECTセンサ2(検出コイル32)の出力信号(検出信号)そのものを用いるのではなく、図6に例示するようにECT探査器3で求めた前記出力信号のX成分及びY成分の信号(電圧出力)を用いる。図6にはある基準を原点とし、任意の時点のECTセンサ2の出力信号の状態を表す点E(r,θ)を示している。そして、ECTセンサ2の出力信号から、下記のような振幅rと位相角θを求め、更にこれらの振幅r及び位相角θから、前記出力信号のX成分:X=rcosθと、Y成分:Y=rsinθを演算し、これらのX成分及びY成分を探査用の電圧出力として使用する。
(1) r:ある基準値からの振幅の変化
(2) θ:ある基準値からの位相の変化
【0042】
次に、図7〜図20に基づき、埋設物の距離と径を求める埋設物探査方法について説明する。図7はECTセンサが発生する交流磁束の密度に応じた磁気抵抗の変化の違いを説明する図、図8は埋設物探査装置の出力例を示す図、図9は探査実験の概要を説明する図、図10〜図12は埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図、図13〜図18はECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。そして、図19は埋設物の外径を求める具体的な方法を説明する図、図20は埋設物の距離を求める具体的な方法を説明する図である。
【0043】
図7に示すように、棒状のECTセンサ2(励磁コイル31)によって発生する交流磁束Bの密度は、ECTセンサ2の長さ方向の中央部に比べて両端部のほうが高い。このため、ECTセンサ2からは配管や鉄筋などの埋設物30までの距離d1は同じでも、埋設物30が前記中央部に位置する場合(図7中のIIの場合)と前記両端部に位置する場合(図7中のI,IIIの場合)とでは、前者比べて後者のほうが、交流磁束BによってECTセンサ2の周辺に形成される磁気回路の磁気抵抗の変化が、大きくなる。従って、ECTセンサ2の検出感度も、前記中央部に比べて前記両端部のほうが高くなる。
【0044】
このため、ECTセンサ2と埋設物30の軸方向の相対位置関係に応じて、ECTセンサ2の出力信号の振幅は、図8に示すように変化する。図8には長さ1000mmの試掘孔12の長さ方向の中央部に埋設物30(例えば図3の配管14参照)が埋設されている場合にECTセンサ2を、前記試掘孔12内の一端側から他端側へ移動(走査)させたときのECT探査器3の出力信号の振幅を表している。図8の横軸はECTセンサ2の移動(走査)距離を表しており、配管14が埋設されている位置(試掘孔12の中央)を0mmとし、試掘孔12の一端と他端の位置をそれぞれ−500mmと500mmにしている。図8の縦軸にはECTセンサ2の出力信号の振幅を表している。
【0045】
図8に示すように、ECTセンサ2の走査距離が−500mmから−200mm位までの間及び200mm位から500mmまでの間はほとんど振幅の変化がない(図8中のIV,Vの状態の場合)。一方、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の一端部に位置しているときには振幅に第1のピークP1が現れ(図8中のIの状態の場合)、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の他端部に位置しているときには振幅に第2のピークP2が現れ(図8中のIIIの状態の場合)、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の中央部に位置しているときにはピークP1,P2間の谷Tが振幅に現れる(図8中のIIの状態の場合)。
【0046】
そして、このような2つのピークP1,P2と、これらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる出力信号の振幅において、最大振幅W1は埋設物30の距離d1と関連が深く、谷Tの表れ方(谷の深さW2:最大振幅W1(第1のピークP1又は第2のピークP2)のピーク値からの深さ)は埋設物30の外径d2と関連が深い。従って、これらの関係を利用して埋設物30の距離d1と外径d2を求めることができる。なお、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の振幅に差がある場合には、これらのうちの何れか大きい方の振幅が、最大振幅W1となる。最大振幅W1と埋設物30の距離d1との関係は明瞭であるが、谷の深さW2と埋設物30の外径d2の関係については、図10〜図12の探査実験結果に基づいて説明を補足する。
【0047】
この探査実験は、図9に示すように外径d2の異なる複数種類の埋設物30を被験体として選定し、これらの埋設物30に対して、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1を保った状態で矢印Aの如くECTセンサ2を移動(走査)させることによって行った。距離d1は何れの外径d2の埋設物30に対しても、50mm(一定)とした。なお、埋設物30はコンクリートに埋設せず、大気中に設置して実験を行った。これは埋設物30をコンクリートに埋設して場合と大気中に設置した場合とでECTセンサ2の出力信号の振幅に特に差がないことが、事前の実験で確認できたためである。
【0048】
図10〜図12の縦軸は探査実験で得られたECTセンサ2の出力信号の振幅である。なお、図10〜図12では横軸を走査時間(ECTセンサ2を一定速度で走査させた場合の経過時間)としているが、これは横軸を走査距離とした図8と実質的には同様のものである。
【0049】
図10には外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示し、図11には外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行った場合のECTセンサ2の出力信号の振幅を示し、図12には外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行った場合のECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。
【0050】
これらの探査実験結果から明らかなように埋設物30の外径d2が小さくなると出力信号の振幅に谷Tがはっきりと現れるようになり、埋設物30の外径d2が大きくなると出力信号の振幅に谷Tが現れにくくなる。
【0051】
定量的には、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が、埋設物30の外径d2が小さくなると、大きくなり、埋設物30の外径d2が大きくなると、小さくなる。即ち、図10に比べて、図11では埋設物30の外径d2が小さくなることにより、最大振幅W1が小さくなって、谷Tがはっきり現れ、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が大きくなっている。逆に、図10に比べて、図12では埋設物30の外径d2が小さくなることにより、最大振幅W1が大きくなって、谷Tが現れにくくなり、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が小さくなっている。
【0052】
なお、前述の如く(図7参照)、谷Tの現れ方はECTセンサ2によって発生する交流磁束Bの分布、即ち場所による交流磁束Bの密度差によって変化するが、この交流磁束Bの密度差はECTセンサ2の寸法などに応じて変化する。特に、ECTセンサ2の長さLが変わった場合には、感度の高いECTセンサ2の両端部と感度の低いECTセンサ2の中央部との交流磁束Bの密度差が著しく変化するため、谷の深さW2の現れ方に与える影響が大きい。
【0053】
図13〜図18にはECTセンサ2の長さLと埋設物30の外径d2とを変えて、前述と同様の探査実験(図9参照)を行った結果を示す。但し、埋設物30の距離d1は30mm(一定)とした。図13〜図18の縦軸は探査実験で得られたECTセンサ2の出力信号の振幅である。なお、図13〜図18では横軸を走査時間(ECTセンサ2を一定速度で走査させた場合の経過時間)としているが、これは横軸を走査距離とした図8と実質的には同様のものである。
【0054】
図13には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図14には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図15には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図16には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。また、図17には長さLが100mmのECTセンサ2で、外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図18には長さLが100mmのECTセンサ2で、外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。
【0055】
図13〜図15及び図17,図18に示すようにECTセンサ2の長さLが、埋設物30の外径d2と同等(多少短い場合も含む)、もしくは埋設物30の外径d2よりもやや大きい場合には、ECTセンサ2の出力信号の振幅に2つのピークP1,P2と谷Tが現れる。一方、図16に示すようにECTセンサ2の長さLが、埋設物30の外径d2よりも短過ぎる場合には、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tは現れない。
【0056】
従って、これらの探査実験結果から、コンクリート構造物11の施工図面などによって、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30をECTセンサ2が検出したときに当該ECTセンサ2の出力信号の振幅に確実に2つのピークP1,P2と谷Tが現れるようにするためには、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30の外径d2と同等、もしくはこの外径d2よりもやや大きめにすればよい。例えば、探査実験ではECTセンサ2の長さLと埋設物30の外径d2の比(長さ/外径)が100/113.4=0.88の場合までECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れることが確認できているため、ECTセンサ2の長さLは0.8D(Dは埋設物の直径)以上とすればよい。換言すれば、ECTセンサ2の長さは、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30を、ECTセンサ2がその探査可能距離(例えば100mm)内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる長さに選定すればよい。
【0057】
なお、この場合、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物30が埋設されていると判断することも可能である。
【0058】
次に、図19及び図20に基づき、埋設物30の外径d2と距離d1を求める具体的な埋設物探査方法について説明する。
【0059】
図19及び図20において横軸は最大振幅W1、縦軸は谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)である。図19と図20には同じ探査実験の結果(データ)を示している。この探査実験も前述の探査実験と同様方法で行った。即ち、外径d2の異なる複数種類の埋設物30を被験体として選定し、これらの埋設物30に対して、埋設物30の距離d1を保った状態でECTセンサ2を移動(走査)させることによって行った。但し、ここでは埋設物30の距離d1についても、種々の長さに変更して探査実験を行った。また、この探査実験に用いたECTセンサ2は、長さLが100mm(フェライト芯33の長さに等しい)、外径D2が14mm(フェライト芯33の外径D1は10mm)のものである。そして、この探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号の振幅から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)を求めた。
【0060】
具体的には図19及び図20において、黒丸(●)は外径d2が24.5mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白丸(○)は外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:C51)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。黒四角(■)は外径d2が75.2mmの埋設物30(電線管:JIS規格G70)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白四角(□)は外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白三角(△)は外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。
【0061】
更に図19には、これらの黒丸(●)、白丸(○)、黒四角(■)、白四角(□)、白三角(△)の各データ(即ち各外径d2ごとの探査実験データ)に対し、回帰曲線などで近似した近似曲線K1〜K5を表示している。また、図20には、各距離d1ごとのデータに対し、回帰曲線などで近似した近似曲線K6〜K11を表示している。なお、図示例では見易さを考慮して近似曲線K1〜K5とK6〜K11を図19と図20に分けて表しているが、勿論、これらの近似曲線K1〜K11を1つの図に表してもよい。
【0062】
かかる探査実験の後、実際にECTセンサ2を用いて前述の方法で埋設物探査を行う(図2,図3参照)。ECT探査器3では、このときの埋設物探査でECTセンサ2がコンクリート構造物11に埋設されている埋設物30を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2と、これらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求める(図8参照)。
【0063】
そして、この埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め前述の探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1と、埋設物30の外径d2とを求める。
【0064】
例えば、埋設物探査の結果、最大振幅W1として0.1(V)、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)として0.1が求められた場合、この最大振幅W1が0.1(V)で谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が0.1の点Fを、図19及び図20に示すような探査実験データが表示されている紙面上(或いは図1に示すECT探査器3の表示部3aのような表示画面上)にプロットする。
【0065】
そして、図19では点Fが、外径d2が50.8mmの埋設物30の探査実験データ(近似曲線K2)と、外径d2が75.2mmの埋設物30の探査実験データ(近似曲線K3)の間にあるため、検出した埋設物30の外径d2は50.8mmと75.2mmの間であると推定する。勿論、点Fが例えば近似曲線K3上にあれば、検出された埋設物30の外径d2は75.2mmであると推定する。なお、図19の点Fの位置から、埋設物30の外径d2が50.8mmと75.2mmとの間にあると推定した場合、更に点Fから近似曲線K2までの距離と点Fから近似曲線K3までの距離とで比例配分することによって、埋設物30の外径d2の値をより具体的に推定することもできる。
【0066】
図20では点Fが、距離d1を40mmとしたときの各埋設物30の探査実験データ(近似曲線K7)と、距離d1を50mmとしたときの各埋設物30の探査実験データ(近似曲線K8)との間にあるため、検出した埋設物30の距離d1は40mmと50mmの間であると推定する。勿論、点Fが例えば近似曲線K7上にあれば、検出された埋設物30の距離d1は40mmであると推定する。なお、図20の点Fの位置から、埋設物30の距離d1が40mmと50mmとの間にあると推定した場合、更に点Fから近似曲線K7までの距離と点Fから近似曲線K8までの距離とで比例配分することによって、埋設物30の距離d1の値をより具体的に推定することもできる。
【0067】
なお、上記のような外径d2や距離d1の具体的な推定は近似曲線の数が多いほど(近似曲線の間隔が狭いほど)正確にはなるが、近似曲線の数は所望の推定精度によって適宜選定すればよい。
【0068】
また、埋設物30の外径d2及び距離d1は、作業員が図19や図20のように表示された探査実験データと埋設物探査データから読み取るだけでなく、近似式に基づいて計算で求めることもできる。即ち、ECT探査器3などのコンピュータ(検出信号処理手段)において、探査実験データの近似式(近似曲線K1〜K11を表す式)と、埋設物探査データ(最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータ)とに基づいて計算により、埋設物探査装置30の外径d2及び距離d1を求めることも可能である。近似式の例を示すと、例えば外径d2が75.2mmの場合の探査実験データ(近似曲線K3)の近似式は、y=0.09x2+0.78x−1.31(但し、x=log最大振幅、y=log谷の深さの最大振幅に対する比)となり、距離d1が50mmの場合の探査実験データ(近似曲線K8)の近似式は、x=−0.08y2−0.70y−3.69(但し、x=log最大振幅、y=log谷の深さの最大振幅に対する比)となる。
【0069】
次に、図21〜図24に基づき、埋設物が配管か鉄筋かを判別する方法について説明する。図21は探査実験をしたときのECTセンサの出力信号をr,θで表される点の軌跡として表示した場合の一例を示す図、図22は埋設物の外径と最大振幅との関係を示す図、図23は埋設物の外径と谷の深さの最大振幅に対する比との関係を示す図、図24は埋設物の外径と最大振幅時の位相角との関係を示す図である。
【0070】
前述の最大振幅W1や谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1))以外にも、ECTセンサ2の出力信号波形から簡単に読み取れる情報として、位相角θ(図6参照)がある。前述の探査実験において得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点(図6の点E参照)の軌跡として表示すると、例えば図21のようになる。
【0071】
図21の横軸はECTセンサ2の出力信号のX成分(rcosθ)、縦軸はECTセンサ2の出力信号のY成分(rsinθ)である。図21において、実線は外径d2が24.5mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。一点鎖線は外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。2点鎖線は外径d2が75.2mmの埋設物30(電線管:JIS規格G70)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。3点鎖線は外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。点線は外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。
【0072】
図21においてW3は前述の最大振幅W1に相当し、W4は前述の谷の深さW2に相当する(図21ではC51の配管についてだけ例示しているが、他の配管及び鉄筋についても同様である)。そして、図21に示すθ1〜θ5は各配管及び鉄筋に関する最大振幅時の位相角θである。即ち、θ1はG104の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ2はG70の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ3はC51の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ4はC25の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。そして、θ5はD35の鉄筋に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。
【0073】
ここで鉄筋(D35)の場合の最大振幅時の位相角θ5のみが、配管(C25,C51,G70,G104)の場合の最大振幅時の位相角θ1〜θ4に比べて、特異であるように見える。従って、予め前述の探査実験で外径d2の異なる複数の配管(C25,C51,G70,G104)のそれぞれについて最大振幅時の位相角θ1〜θ4のデータを求めておけば、このデータに基づいて、埋設物探査で検出した埋設物30が配管か鉄筋かを判別することができる。
【0074】
このことを図22〜図24に基づいて更に詳述する。図22では横軸を埋設物の外径とし縦軸を最大振幅として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅W1とに関するデータを黒丸(●)でプロットし、且つ、鉄筋(D35)についても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅W1とに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図22には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K21を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))も、この近似曲線K21にほぼ乗っている。従って、この結果から、最大振幅W1のデータに基づいて埋設物が配管か鉄筋かを判別することは難しいことがわかる。
【0075】
図23では横軸を埋設物の外径とし縦軸を谷の深さの最大振幅に対する比として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とに関するデータを黒丸(●)でプロットし、鉄筋(D35)につても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図23には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K22を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))も、この近似曲線K22にほぼ乗っている。従って、この結果から、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータに基づいて埋設物が配管と鉄筋かを判別することは難しいことがわかる。
【0076】
一方、図24には横軸を埋設物の外径とし縦軸を最大振幅時の位相角として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅時の位相角θとに関するデータを黒丸(●)でプロットし、鉄筋(D35)につても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅時の位相角θとに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図24には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K23を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))は、この近似曲線K23から大きく外れている。従って、この結果から、最大振幅時の位相角θのデータに基づいて埋設物が配管と鉄筋かを、容易に判別することができることがわかる。
【0077】
そこで、予め前述の探査実験で、ECTセンサ2の出力信号から、前述の最大振幅W1や谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータを求めるだけでなく、各配管(C25,C51,G70,G104)に関する最大振幅時の位相角θのデータ(近似曲線K23)も求めておく。
【0078】
かかる探査実験の後、実際にECTセンサ2を用いて前述の方法で埋設物探査を行う(図2,図3参照)。ECT探査器3では、このときの埋設物探査でECTセンサ2がコンクリート構造物11に埋設されている埋設物30を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このときのECTセンサ2の検出信号から、前述の最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータを求め、更に最大振幅時の位相角θも求める。
【0079】
続いて、前述のとおり、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1と、埋設物30の外径d2とを求める。
【0080】
そして、このときに求めた埋設物30の外径d2と、最大振幅時の位相角θとに関するデータを、図24に例示するような配管の探査実験データ(近似曲線K23)が表示されている紙面上(或いは図1に示すECT探査器3の表示部3aのような表示画面上)にプロットし、このプロットした点が、前記配管の探査実験データ(近似曲線K23)に乗っているか(即ち近似曲線23上又は近似曲線23に近いか)、前記配管の探査実験データ(近似曲線23)から大きく外れているかを判断するにより、埋設物探査で検出した埋設物30が配管か鉄筋かを判別する。
【0081】
なお、埋設物探査で得られた埋設物30の外径d2と最大振幅時の位相角θに関するデータが、近似曲線K23に乗っているか否か(即ち埋設物30が配管か鉄筋か)は作業員が、これらの探査データを見て適宜判断すればよいが、例えば近似曲線K23からの任意の距離を設定距離として予め決めておき、埋設物探査で得られた埋設物30の外径d2と最大振幅時の位相角θと関係のデータをプロットした点から近似曲線K23までの最短距離(例えばプロット点が図24のθ5のプロット点であったとすれば、このθ5のプロット点から近似曲線K23までの最短距離)が、前記設定距離以下のときには近似曲線K23に乗っていると判断(即ち埋設物30は配管であると判断)し、前記設定距離よりも大きいときには近似曲線K23から大きく外れていると判断(即ち埋設物30は鉄筋であると判断)するようにしてもよい。
【0082】
また、埋設物30が配管か鉄筋かは、作業員が図24のように表示された探査実験データや埋設物探査データから読み取るだけでなく、近似式に基づいて計算で求めることもできる。即ち、ECT探査器3などのコンピュータ(検出信号処理手段)において、探査実験データの近似式(近似曲線K23を表す式)と、埋設物探査データ(外径d2及び最大振幅時の位相角θのデータ)とに基づいて計算により(例えば前述のような設定距離と最短距離との比較により)、埋設物30が配管か鉄筋かを判別することも可能である。
【0083】
次に、図25〜図31に基づき、上記の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法について説明する。図25は本発明の実施の形態例に係る孔開け施工方法のフローチャート、図26は鉄筋探査の方法を示す説明図、図27は半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合の説明図、図28は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合の説明図、図29は半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図、図30は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図、図31は埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を施工する方法を示す説明図、図32は埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を施工する方法を示す説明図である。
【0084】
孔開け施工は図25のフローチャートに示すステップS1〜ステップS8の手順で実施する。まず、ステップS1で図27,図28に仮想線で示すような孔61(例えばコンクリート構造物11に新設の配管などを通すための貫通孔)をコンクリート構造物11の開けるための孔開け位置を選定する。この孔開け位置の選定に関しては、ステップS2に示すようにコンクリート構造物11を施工したときの施工図面上で埋設配管の有無を調査し、施工図面上で明らかに埋設配管が認められない位置を孔開け位置として選定する。このときステップS3では、孔開け位置近傍(例えば孔開け位置から孔61の直径(1D)分の距離範囲)に埋設配管が無いか否かを判定する。ステップS3の判定結果がNoの場合、即ち施工図面上で孔開け位置近傍に埋設配管が認められた場合には、孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S3の手順を繰り返す。
【0085】
ステップS3の判定結果がYesになれば、即ち施工図面上で孔開け位置近傍に埋設配管が認められなければ次のステップS4へ進む。ステップS4では図27,図28に示すような試掘孔12をコンクリート構造物11に開けるためにコンクリート構造物11の表面に試掘孔位置のマーキングを行なう。この試掘孔位置のマーキングは選定した孔開け位置の中心などに行なう(図27,図28参照:詳細後述)。
【0086】
次に、試掘孔12をコンクリート構造物11に開ける際には、この試掘孔12(試掘孔用の孔開け工具)と鉄筋13との干渉を回避する必要があるため、ステップS5で鉄筋探査を行なう。この鉄筋探査は図26に示すような探査装置41によって実施する。探査装置41はレーダ法を用いて鉄筋探査を行なうものであり、把手41aと車輪41bを有している。作業員は把手41aを持ち、探査装置41を押してコンクリート構造物11の表面上を走行させることより、試掘孔位置のマーキング周辺の鉄筋13の探査を実施して、コンクリート構造物11の表面に探査した鉄筋位置をマーキングする。このときに試掘孔12と鉄筋13との干渉が確認された場合には当該干渉を回避することができる位置に試掘孔位置を変更して再度マーキングを行う。
【0087】
そして、ステップS6で試掘孔12の穿孔と、埋設物探査装置1(ECTセンサ2、ECT探査器3)による埋設物(配管)探査とを行う。孔61の孔開け位置に関しては、上記の如く予め施工図面で埋設配管の有無を確認するものの、コンクリート構造物11を施工した際に施工現場で配管位置(埋設位置)の調整が行われたもの等、施工図面上の配管位置と実際の配管位置がずれている場合がある。更には、例えばコンクリート構造物11を施工した後に当該施工会社とは異なる施工会社がコンクリート構造物11に埋設した配管等、コンクリート構造物11の施工図面には記載されていない配管等の埋設物が存在する可能性もある。従って、埋設物との干渉を確実に回避するためには、試掘孔12を開けて実際に埋設物探査を実施する必要がある。
【0088】
ECTセンサ2の探査可能距離(即ち埋設物を検出したときにECTセンサ2の出力信号の振幅に前述の2つのピークP1,P2と谷Tが確実に現れる距離)には限度があるため、試掘孔の穿孔要領は、最終的に開ける孔61の半径が前記探査可能距離以下か、前記探査可能距離よりも大きいかによって異なる(図27,図28参照)。なお、いずれも場合も、本実施の形態例ではECTセンサ2の探査可能距離は100mm、外径D2は14mmとする。試掘孔の直径は15mmとし、この試掘孔の穿孔はΦ15mmの孔開け工具によって行うものとする。
【0089】
まず、図27,図29,図31に基づき、ECTセンサ2の探査可能距離以下の半径の孔61を開ける場合について詳述する。
【0090】
この場合、図27に示すように、孔61の孔開けの中心位置に1つだけ試掘孔位置のマーキングをして(前述のステップS4)、このマーキング位置で鉄筋13と干渉しないことが確認できれば(前述のステップS5)、このマーキング位置に試掘孔12を開ける。そして、この試掘孔12に対し、前述の埋設物探査方法によって埋設物探査を行う。即ち、ECTセンサ2を試掘孔12に挿入して、試掘孔12の一端側から他端側へと試掘孔12内を移動(走査)させる(図2,図3参照)。
【0091】
この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、即ちステップS7の判定結果がYesの場合には、次のステップS8で試掘孔12を中心として、試掘孔12の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開ける(コアボーリング)。具体的には、コンクリート構造物11の表面に試掘孔12を中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後(図31参照)、コアボールマシンで前記マーキングに沿って試掘孔12を中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。
【0092】
一方、例えば図29のように2点鎖線で示す実際の埋設配管14の埋設位置が、実線で示す施工図面上の埋設位置から、矢印Bの如く試掘孔12寄りにずれているために前記埋設物探査の結果、埋設配管14が検出された場合、即ちステップS7の判定結果がNoの場合には孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S7の手順を繰り返す。
【0093】
具体的には、ECTセンサ2が埋設配管14を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れるため(図8参照)、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設配管14の検出だけではなく、埋設配管14の距離d1及び外径d2の求め(図19,図20参照)、更には埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かの判別も行う(図21,図24)。
【0094】
そして、図29に矢印Cで示すように、孔61の孔開け位置を当初予定していたT1からT2へ変更する。即ち、試掘孔12から試掘孔12Aへ試掘孔の孔開け位置を変更して、再度、この試掘孔12Aに対して前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。この埋設物探査の結果、埋設物が検出されなければ、図31に示すようにコンクリート構造物11の表面に試掘孔12Aを中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後、コアボールマシンで前記マーキングに沿って試掘孔12Aを中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。孔61は貫通孔又は所要の深さの孔である。
【0095】
なお、埋埋設配管14が検出されたときに予定の孔開け位置T1に対して、どの方向に孔開け位置T2を変更するかは、施工図面上で埋設配管14が予定の孔開け位置T1にしてどの方向に位置しているかを確認することによって、変更後の孔開け位置T2が予定の孔開け位置T1よりも埋設配管14から遠ざかるように(即ち図29の例では矢印C方向に変更するように)、予め決めておく。
【0096】
また、図示例では、孔開け位置T1から孔開け位置T2への変更距離が孔61の半径分(ECTセンサ2の探査可能距離分)になっているが、これに限るものではなく、前記変更距離は、孔61の半径と埋設物探査で求めた埋設配管14の距離d1との差よりも大きければよい。
【0097】
次に、図28,図30,図32に基づき、ECTセンサ2の探査可能距離よりも大きな半径の孔61を開ける場合について詳述する。なお、ここでは200〜400mmの直径の孔61を開ける場合について説明する。
【0098】
この場合、図28に示すように、孔61の孔開け位置の中心と、その周辺の前後左右の4箇所とにそれぞれ、1つの中心試掘孔位置のマーキングと、4つの周辺試掘孔位置のマーキングとを行い(前述のステップS4)、これらのマーキング位置で鉄筋13と干渉しないことが確認できれば(前述のステップS5)、中心試掘孔のマーキング位置に中心試掘孔12−1を開け、周辺試掘孔のマーキング位置に周辺試掘孔12−2,12−3,12−4,12−5を開ける。これら4つの周辺試掘孔12−2〜12−5は、中心試掘孔12−1周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1からECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数(n)倍(図示例では1倍)離れている。
【0099】
そして、これらの中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2,12−3,12−4,12−5に対して前述のとおり、埋設物探査を行う。即ち、各試掘孔12−1〜12−5に挿入して、各試掘孔12−1〜12−5の一端側から他端側へと各試掘孔12−1〜12−5内を移動(走査)させる(図2,図3参照)。なお、孔開けは中心試掘孔12−1、周辺試掘孔12−2、周辺試掘孔12−3、周辺試掘孔12−4、周辺試掘孔12−5の順に行い、各試掘孔12−1〜12−5を開けるごとに、順次、ECTセンサ2を挿入して埋設物探査を行う。
【0100】
これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、即ちステップS7の判定結果がYesの場合には、次のステップS8で中心試掘孔12−1を中心として、中心試掘孔12−1の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開ける(コアボーリング)。具体的には、コンクリート構造物11の表面に中心試掘孔12−1を中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後(図32参照)、コアボールマシンで前記マーキングに沿って中心試掘孔12−1を中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。
【0101】
一方、例えば図30のように2点鎖線で示す実際の埋設配管14の埋設位置が、実線で示す施工図面上の埋設位置から、矢印Bの如く中心試掘孔12−1寄りにずれているために前記埋設物探査の結果、埋設配管14が検出された場合、即ちステップS7の判定結果がNoの場合には孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S7の手順を繰り返す。
【0102】
具体的には、まず、中心試掘孔12−1を開け、この中心試掘孔12−1に対して前述の埋設物探査方法どおり、ECTセンサ2で埋設物探査を行う。その結果、埋設物が検出されなければ、次に周辺試掘孔12−2を開け、この周辺試掘孔12−2に対して前述の埋設物探査方法どおり、ECTセンサ2で埋設物探査を行う。このとき、ECTセンサ2が埋設配管14を検出したとすると、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れるため(図8参照)、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設配管14の検出だけではなく、埋設配管14の距離d1及び外径d2の求め(図19,図20参照)、更には埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かの判別も行う(図21,図24)。
【0103】
そして、この場合には周辺試掘孔12−2以後の周辺試掘孔12−3,12−4,12−5の孔開けは行わず、図30に矢印Cで示すように、孔61の孔開け位置を当初予定していたT3からT4へ変更する。即ち、中心試掘孔12−1から中心試掘孔12−1Aへ中心試掘孔の孔開け位置を変更し、この中心試掘孔12−1Aに対して前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。この埋設物探査の結果、埋設物が検出されなければ、周辺試掘孔の孔開け位置も、周辺試掘孔12−2〜12−5から、中心試掘孔12−1A周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1AからECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数倍(図示例では1倍)離れた周辺試掘孔12−2A〜12−5Aへ変更し、これらの周辺試掘孔12−2A〜12−5Aに対しても前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。
【0104】
これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されなければ、図32に示すようにコンクリート構造物11の表面に中心試掘孔12−1Aを中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後、コアボールマシンで前記マーキングに沿って中心試掘孔12−1Aを中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。孔61は貫通孔又は所要の深さの孔である。
【0105】
なお、埋設配管14が検出されたときに予定の孔開け位置T3に対して、どの方向に孔開け位置T4を変更するかは、施工図面上で埋設配管14が予定の孔開け位置T3にしてどの方向に位置しているかを確認することによって、変更後の孔開け位置T4が予定の孔開け位置T3よりも埋設配管14から遠ざかるように(即ち図30の例では矢印C方向に変更するように)、予め決めておく。
【0106】
また、図示例では、孔開け位置T3から孔開け位置T4への変更距離が孔61の半径分(ECTセンサ2の探査可能距離分)になっているが、これに限るものではなく、前記変更距離は、孔61の半径と周辺試掘孔12−2に対する埋設物探査で求めた埋設配管14の距離d1との差よりも大きければよい。
【0107】
また、最終的の開ける孔61の直径が400mmよりも大きい場合には、図28に示す周辺試掘孔12−2〜12−5の外側にも周辺試掘孔を開ければよい。最終的に開ける孔61の直径に応じて、周辺試掘孔の数を増やせばよい。即ち、中心試掘孔周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔らECTセンサの探査可能距離の整数倍離れた位置に周辺試掘孔を開ける場合、例えば孔61の直径が200〜400mmであれば前述の如く探査可能距離の1倍離れた位置に周辺試掘孔を開け、孔61の直径が400〜600mmであれば探査可能距離の1倍離れた位置と2倍離れた位置に周辺試掘孔を開ける。
【0108】
また、図32に示すように、最終的の開ける孔61には、周辺試掘孔12−2〜12−5のそれぞれに対して埋設物探査を行ったときの探査可能距離範囲(図32中に点線で示す円の範囲)から外れている部分もあるが、ECTセンサ2の探査可能距離は余裕を持って設定されており、この探査可能距離から多少外れた位置にある埋設物もECTセンサ2によって検出可能であるため、この探査可能距離範囲から外れた部分での埋設物との干渉も防止することができる。勿論、周辺試掘孔の数を増やせば(例えば中心試掘孔周辺の8方へ設ければ)、埋設物探査の精度はより向上する。
【0109】
以上のことから、本実施の形態例の埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置によれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0110】
即ち、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサ2を用いて、コンクリート構造物11に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、ECTセンサ2を、コンクリート構造物11に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させ、このときにECTセンサ2が埋設物(埋設配管14)を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求め、これらの最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物(埋設配管14)までの距離d1と、埋設物(埋設配管14)の外径d2とを求めることを特徴としているため、単に埋設物(埋設配管14)の有無を探査するだけでなく、埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0111】
また、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の出力信号から、最大振幅時の位相角θを求め、この最大振幅時の位相角θ及び埋設物(埋設配管14)の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かを判別することによって、埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0112】
また、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物(埋設配管14)を探査可能距離範囲内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P1間の谷Tとが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2を確実に検出することができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することができるという効果も得られる。
【0113】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、コンクリート構造物11に試掘孔12を開け、この試掘孔12に対して前述の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、試掘孔12を中心として、試掘孔12の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開けることを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)の有無だけでなく、埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2の情報も得て、より適切な孔開け施工を行うことができる。
【0114】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前記埋設物探査の結果、埋設物(埋設配管14)が検出された場合には、試掘孔12の孔開け位置を変えて前述の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0115】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、コンクリート構造物11に中心試掘孔12−1と、中心試掘孔12−1周辺の少なくとも前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1からECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数倍(n倍:図示例では1倍)離れている複数の周辺試掘孔12−2〜12−5とを開け、これらの中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5に対して前述の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、中心試掘孔12−1を中心として、前記探査可能距離のn+1倍(図示例では2倍)以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開けることを特徴としているため、ECTセンサ2の探査可能距離よりも大きな半径を有する孔61を、埋設物(埋設配管14)と干渉することなく、開けることができる。
【0116】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5を開けるごとに順次行い、中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5の何れかの試掘孔(例えば周辺試掘孔12−2)に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔(例えば周辺試掘孔12−2)以後の試掘孔(例えば周辺試掘孔12−3〜12−5)の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて前述の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、無駄な試掘孔を開けることなく効率的に、埋設物(埋設配管14)との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0117】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサ2と、このECTセンサ2の検出信号を処理するECT探査器3とを有し、このECT探査器3では、ECTセンサ2をコンクリート構造物11に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させたときにECTセンサ2が埋設物を検知して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置1で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求めることができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2も求めることによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0118】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物(埋設配管14)を探査可能距離範囲内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2を確実に求めることができる。更には、この場合、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することができるという効果も得られる。
【0119】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器3では、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0120】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器2では、ECTセンサ2の出力信号から、最大振幅時の位相角θも求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置1で求めた最大振幅時の位相角θ及び埋設物の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0121】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器3では、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求め、且つ、最大振幅時の位相角θ及び埋設物の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0122】
なお、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサとして、上記実施の形態例では励磁コイル31と検出コイル32を芯33の外周に巻回してなる相互誘導型のECTセンサ2を用いたが、これに限定するものではなく、交流磁界を発生するための励磁機能と、前記交流磁界の検出する機能とを兼ね備えた1つのコイルを芯の外周に巻回したなる自己誘導型のECTセンサを用いてもよい。
また、本発明は、鋼製の電線管などの強磁性体の埋設物の探査に限定するものではなく、その導電体の埋設物(例えば銅管やアルミニウム管などの非磁性体の金属配管など)の探査にも適用することができる。
また、上記の埋設物探査方法では最大振幅W1を用いて埋設物までの距離や埋設物の外径を求めているが、必ずしもこれに限定するものではなく、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の何れを用いてもよい。即ち、ECTセンサの検出信号から求めた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅及び谷の深さ(第1のピークP1のピーク値からの谷の深さ又は第2のピークP2のピーク値からの谷の深さ)の第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅及び谷の深さの第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅に対する比のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物までの距離と、埋設物の外径とを求めるようにしてもよい。
また、上記の埋設物探査方法では最大振幅W1を用いて埋設物が配管か鉄筋かを判別しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の何れを用いてもよい。即ち、ECTセンサの検出信号から求めた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅時の位相角及び埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置に関するものであり、原子力発電所やビルの壁や床などのコンクリート構造物に孔開け施工などを行うために前記コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態例に係る埋設物探査装置の構成図である。
【図2】埋設物探査の様子を示す説明図である。
【図3】埋設物探査の様子を示す説明図である。
【図4】ECTセンサの構成図である。
【図5】探査原理の説明図である。
【図6】埋設物の検出に用いる信号の説明図である。
【図7】ECTセンサが発生する交流磁束の密度に応じた磁気抵抗の変化の違いを説明する図である。
【図8】埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図9】探査実験の概要を説明する図である。
【図10】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図11】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図12】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図13】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図14】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図15】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図16】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図17】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図18】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図19】埋設物の外径を求める具体的な方法を説明する図である。
【図20】埋設物の距離を求める具体的な方法を説明する図である。
【図21】探査実験をしたときのECTセンサの出力信号をr,θで表される点の軌跡として表示した場合の一例を示す図である。
【図22】埋設物の外径と最大振幅との関係を示す図である。
【図23】埋設物の外径と谷の深さの最大振幅に対する比との関係を示す図である。
【図24】埋設物の外径と最大振幅時の位相角との関係を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態例に係る孔開け施工方法のフローチャートである。
【図26】鉄筋探査の方法を示す説明図である。
【図27】半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合の説明図である。
【図28】半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合の説明図である。
【図29】半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図である。
【図30】は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図である。
【図31】埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を施工する方法を示す説明図である。
【図32】埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を施工する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0125】
1 埋設物探査装置
2 ECTセンサ
3 ECT探査器
3a 表示部
4 電気ケーブル
11 コンクリート構造物
12,12A 試掘孔
12−1,12−1A 中心試掘孔
12−2〜12−5,12−2A〜12−5A 周辺試掘孔
13 鉄筋
14 埋設配管
30 埋設物
31 励磁コイル
32 検出コイル
33 芯
41 レーダ法を用いた探査装置
41a 把手
41b 車輪
61 最終的に開ける孔
【技術分野】
【0001】
本発明は埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所やビルの壁や床などの既設のコンクリート構造物に対して、孔開け施工を実施する際には、当該コンクリート構造物に埋設されている配管などの埋設物が損傷するのを防止するため、当該埋設物の位置を確認する必要がある。
【0003】
この埋設物の位置確認は、従来、コンクリート構造物の施工図面上での確認や、レーダ法を用いた探査装置による探査などによって行われていた。また、下記の特許文献1には、コンクリート構造物に開けた予備の孔に金属感知センサを挿入することによって、コンクリート構造物に埋設されている鉄筋を探査するという技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−178365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリート構造物の施工現場での調整などによって、施工図面どおりの位置に配管などの埋設物が埋設されていないことがあり、かかる場合には施工図面による確認だけでは不十分である。また、改造工事などによって、施工図面には記載されていない埋設物がコンクリート構造物に埋設されている可能性もあり、この場合にも施工図面による確認だけでは不十分である。
【0006】
また、レーダ法を用いた探査装置ではコンクリート構造物の表面近くに埋設されている鉄筋などを探査することはできるが、コンクリート構造物の深部に埋設されている配管などを探査することは難しい。
【0007】
このため、コンクリート構造物の深部に埋設されている埋設物も確実に探査することができる手段が望まれていた。これに対し、上記特許文献1に開示された技術ではコンクリート構造物の深部の埋設物も探査することができる。しかし、上記特許文献1には埋設物の距離や外径を検出することや、埋設物が配管か鉄筋かを判別することまでは開示されていない。単に埋設物を検出するだけでなく、埋設物の距離や外径を検出し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握しておくことや、埋設物の種類を把握しておくことは、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用である。
【0008】
従って本発明は上記の事情に鑑み、コンクリート構造物に埋設されている埋設物の距離及び外径を探査することができ、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することもできる埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1発明の埋設物探査方法は、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、
前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、
このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、
これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明の埋設物探査方法は、第1発明の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、
この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする。
【0011】
また、第3発明の埋設物探査方法は、第1発明の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする。
【0012】
また、第4発明の孔開け施工方法は、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする。
【0013】
また、第5発明の孔開け施工方法は、第4発明の孔開け施工方法において、
前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
また、第6発明の孔開け施工方法は、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする。
【0015】
また、第7発明の孔開け施工方法は、第6発明の孔開け施工方法において、
前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする。
【0016】
また、第8発明の埋設物探査装置は、コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、
この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴とする。
【0017】
また、第9発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする。
【0018】
また、第10発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする。
【0019】
また、第11発明の埋設物探査装置は、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴とする。
【0020】
また、第12発明の埋設物探査装置は、第11発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1発明の埋設物探査方法によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0022】
第2発明の埋設物探査方法によれば、第1発明の埋設物探査方法において、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0023】
第3発明の埋設物探査方法によれば、第1発明の埋設物探査方法において、前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物の距離や外径を確実に検出することができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークしか現れず、谷が現れない場合には、ECTセンサの長さよりも外径の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することできるという効果も得られる。
【0024】
第4発明の孔開け施工方法によれば、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴としているため、埋設物の有無だけでなく、埋設物の距離や外径の情報も得て、より適切な孔開け施工を行うことができる。
【0025】
第5発明の孔開け施工方法によれば、第4発明の孔開け施工方法において、前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、埋設物との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0026】
第6発明の孔開け施工方法によれば、第1発明の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴としているため、ECTセンサの探査可能距離よりも大きな半径を有する孔を、埋設物と干渉することなく、開けることができる。
【0027】
第7発明の孔開け施工方法によれば、第6発明の孔開け施工方法において、前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、無駄な試掘孔を開けることなく効率的に、埋設物との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0028】
第8発明の埋設物探査装置によれば、コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置で求めた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物までの距離と、埋設物の外径とを求めることができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も求めることによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0029】
第9発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物の距離や外径を確実に求めることができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークしか現れず、谷が現れない場合には、ECTセンサの長さよりも外径の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することできるという効果も得られる。
【0030】
第10発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0031】
第11発明の埋設物探査装置によれば、第8発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置で求めた第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0032】
第12発明の埋設物探査装置によれば、第11発明の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離や外径を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
はじめに、図1〜図6に基づき、埋設物探査装置の構成及び探査原理について説明する。図1は本発明の実施の形態例に係る埋設物探査装置の構成図、図2及び図3は埋設物探査の様子を示す説明図、図4はECTセンサの構成図、図5は探査原理の説明図、図6は埋設物の検出に用いる信号の説明図である
【0035】
図1に示すように、本実施の形態例に係る埋設物探査装置1は、ECT(Eddy Current Testing)センサ2と、検出信号処理手段としてのECT探査器3とを有してなるものである。ECTセンサ2とECT探査器3は電気ケーブル4を介して電気的に接続されており、この電気ケーブル4を介してECT探査器3からECTセンサ2への給電や、ECTセンサ2からECT探査器3への検出信号の伝送などが行われる。
【0036】
埋設物の探査は、図2及び図3に示すような方法で行われる。まず、既設のコンクリート構造物11に試掘孔12を開ける。試掘孔12は最終的な孔開けを行う前に埋設物を探査するために開けられる予備的な孔であり、ECTセンサ2の外径よりも少し大きい程度の小径の細孔である。試掘孔12を開けた後、この試掘孔12にECTセンサ2を挿入して、矢印Aの如くECTセンサ2を試掘孔12内の一端側から他端側へと移動(走査)させる。そして、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設物の有無だけではなく、埋設物の距離及び外径を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別も行う。埋設物探査の結果、試掘孔12の近くに埋設物が無いことが確認されれば、試掘孔12を中心として試掘孔12よりも径の大きな孔を開ける。この孔は例えばコンクリート構造物11に新設の配管を通すためのものである。なお、埋設物探査方法及び孔開け施工方法の詳細については後述する。
【0037】
埋設物探査の対象となるコンクリート構造物11としては、例えば原子力発電所やビル等の壁や床などがある。図示例では、コンクリート構造物11の比較的浅い部分に鉄筋13が埋設され、深部に配管14が埋設されている。この場合、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の中心から埋設配管14の外周面までの距離d1及び埋設配管14の外径d2を求め、更には配管14が配管か鉄筋かの判別も行うことができる。なお、配管14は鋼製の電線管などである。
【0038】
図4に示すように、ECTセンサ2は交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサである。詳述すると、ECTセンサ2は交流磁界を発生させるための励磁コイル31と、前記交流磁界を検出するための検出コイル32とを、強磁性体で円柱状の芯33の外周面に巻回してなる相互誘導型のものである。芯33の材料には例えばフェライトを用いる。芯33の直径D1は例えば10mmとする。ECTセンサ2の長さL(芯33の長さに等しい)は埋設物の外径に応じた長さとし、例えば50mmや100mmなどにする(詳細後述)。ECTセンサ2の外径D2は例えば14mmとし、この場合の試掘孔12の直径D3は例えば15mmとする。
【0039】
埋設物探査の際にはECTセンサ2を、矢印Aの如く、ECTセンサ2の軸方向(長さ方向)を試掘孔12の軸方向(長さ方向)に合わせた状態で試掘孔12に挿入して、試掘孔12内を移動(走査)させる。励磁コイル31は、電気ケーブル4を介してECT探査器3の交流電源から給電されて交流電流が流れると、交流磁界(交流磁束)を発生させる。検出コイル32は前記交流磁界(交流磁束)を検出し、この検出信号を、電気ケーブル4を介してECT探査器3へ出力する。
【0040】
図5に示すように、励磁コイル31によって発生する交流磁束Bは、この交流磁束BによってECTセンサ2(励磁コイル31)の周辺に形成される磁気回路の磁気的な抵抗Rの変化に影響されて変化する。即ち、図5に例示するように磁気回路中に配管や鉄筋などの埋設物30が存在すると、この埋設物30によって磁気抵抗Rが変化し、この磁気抵抗Rの変化によって交流磁束Bが変化する。そして、この交流磁束Bの変化が、検出コイル32の出力信号(検出信号)の変化として捉えられる。
【0041】
埋設物の探査(検出)には、ECTセンサ2(検出コイル32)の出力信号(検出信号)そのものを用いるのではなく、図6に例示するようにECT探査器3で求めた前記出力信号のX成分及びY成分の信号(電圧出力)を用いる。図6にはある基準を原点とし、任意の時点のECTセンサ2の出力信号の状態を表す点E(r,θ)を示している。そして、ECTセンサ2の出力信号から、下記のような振幅rと位相角θを求め、更にこれらの振幅r及び位相角θから、前記出力信号のX成分:X=rcosθと、Y成分:Y=rsinθを演算し、これらのX成分及びY成分を探査用の電圧出力として使用する。
(1) r:ある基準値からの振幅の変化
(2) θ:ある基準値からの位相の変化
【0042】
次に、図7〜図20に基づき、埋設物の距離と径を求める埋設物探査方法について説明する。図7はECTセンサが発生する交流磁束の密度に応じた磁気抵抗の変化の違いを説明する図、図8は埋設物探査装置の出力例を示す図、図9は探査実験の概要を説明する図、図10〜図12は埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図、図13〜図18はECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。そして、図19は埋設物の外径を求める具体的な方法を説明する図、図20は埋設物の距離を求める具体的な方法を説明する図である。
【0043】
図7に示すように、棒状のECTセンサ2(励磁コイル31)によって発生する交流磁束Bの密度は、ECTセンサ2の長さ方向の中央部に比べて両端部のほうが高い。このため、ECTセンサ2からは配管や鉄筋などの埋設物30までの距離d1は同じでも、埋設物30が前記中央部に位置する場合(図7中のIIの場合)と前記両端部に位置する場合(図7中のI,IIIの場合)とでは、前者比べて後者のほうが、交流磁束BによってECTセンサ2の周辺に形成される磁気回路の磁気抵抗の変化が、大きくなる。従って、ECTセンサ2の検出感度も、前記中央部に比べて前記両端部のほうが高くなる。
【0044】
このため、ECTセンサ2と埋設物30の軸方向の相対位置関係に応じて、ECTセンサ2の出力信号の振幅は、図8に示すように変化する。図8には長さ1000mmの試掘孔12の長さ方向の中央部に埋設物30(例えば図3の配管14参照)が埋設されている場合にECTセンサ2を、前記試掘孔12内の一端側から他端側へ移動(走査)させたときのECT探査器3の出力信号の振幅を表している。図8の横軸はECTセンサ2の移動(走査)距離を表しており、配管14が埋設されている位置(試掘孔12の中央)を0mmとし、試掘孔12の一端と他端の位置をそれぞれ−500mmと500mmにしている。図8の縦軸にはECTセンサ2の出力信号の振幅を表している。
【0045】
図8に示すように、ECTセンサ2の走査距離が−500mmから−200mm位までの間及び200mm位から500mmまでの間はほとんど振幅の変化がない(図8中のIV,Vの状態の場合)。一方、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の一端部に位置しているときには振幅に第1のピークP1が現れ(図8中のIの状態の場合)、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の他端部に位置しているときには振幅に第2のピークP2が現れ(図8中のIIIの状態の場合)、埋設物30がECTセンサ2の長さ方向の中央部に位置しているときにはピークP1,P2間の谷Tが振幅に現れる(図8中のIIの状態の場合)。
【0046】
そして、このような2つのピークP1,P2と、これらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる出力信号の振幅において、最大振幅W1は埋設物30の距離d1と関連が深く、谷Tの表れ方(谷の深さW2:最大振幅W1(第1のピークP1又は第2のピークP2)のピーク値からの深さ)は埋設物30の外径d2と関連が深い。従って、これらの関係を利用して埋設物30の距離d1と外径d2を求めることができる。なお、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の振幅に差がある場合には、これらのうちの何れか大きい方の振幅が、最大振幅W1となる。最大振幅W1と埋設物30の距離d1との関係は明瞭であるが、谷の深さW2と埋設物30の外径d2の関係については、図10〜図12の探査実験結果に基づいて説明を補足する。
【0047】
この探査実験は、図9に示すように外径d2の異なる複数種類の埋設物30を被験体として選定し、これらの埋設物30に対して、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1を保った状態で矢印Aの如くECTセンサ2を移動(走査)させることによって行った。距離d1は何れの外径d2の埋設物30に対しても、50mm(一定)とした。なお、埋設物30はコンクリートに埋設せず、大気中に設置して実験を行った。これは埋設物30をコンクリートに埋設して場合と大気中に設置した場合とでECTセンサ2の出力信号の振幅に特に差がないことが、事前の実験で確認できたためである。
【0048】
図10〜図12の縦軸は探査実験で得られたECTセンサ2の出力信号の振幅である。なお、図10〜図12では横軸を走査時間(ECTセンサ2を一定速度で走査させた場合の経過時間)としているが、これは横軸を走査距離とした図8と実質的には同様のものである。
【0049】
図10には外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示し、図11には外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行った場合のECTセンサ2の出力信号の振幅を示し、図12には外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行った場合のECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。
【0050】
これらの探査実験結果から明らかなように埋設物30の外径d2が小さくなると出力信号の振幅に谷Tがはっきりと現れるようになり、埋設物30の外径d2が大きくなると出力信号の振幅に谷Tが現れにくくなる。
【0051】
定量的には、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が、埋設物30の外径d2が小さくなると、大きくなり、埋設物30の外径d2が大きくなると、小さくなる。即ち、図10に比べて、図11では埋設物30の外径d2が小さくなることにより、最大振幅W1が小さくなって、谷Tがはっきり現れ、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が大きくなっている。逆に、図10に比べて、図12では埋設物30の外径d2が小さくなることにより、最大振幅W1が大きくなって、谷Tが現れにくくなり、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が小さくなっている。
【0052】
なお、前述の如く(図7参照)、谷Tの現れ方はECTセンサ2によって発生する交流磁束Bの分布、即ち場所による交流磁束Bの密度差によって変化するが、この交流磁束Bの密度差はECTセンサ2の寸法などに応じて変化する。特に、ECTセンサ2の長さLが変わった場合には、感度の高いECTセンサ2の両端部と感度の低いECTセンサ2の中央部との交流磁束Bの密度差が著しく変化するため、谷の深さW2の現れ方に与える影響が大きい。
【0053】
図13〜図18にはECTセンサ2の長さLと埋設物30の外径d2とを変えて、前述と同様の探査実験(図9参照)を行った結果を示す。但し、埋設物30の距離d1は30mm(一定)とした。図13〜図18の縦軸は探査実験で得られたECTセンサ2の出力信号の振幅である。なお、図13〜図18では横軸を走査時間(ECTセンサ2を一定速度で走査させた場合の経過時間)としているが、これは横軸を走査距離とした図8と実質的には同様のものである。
【0054】
図13には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図14には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図15には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図16には長さLが50mmのECTセンサ2で、外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。また、図17には長さLが100mmのECTセンサ2で、外径d2が25.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。図18には長さLが100mmのECTセンサ2で、外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対して探査実験を行ったときのECTセンサ2の出力信号の振幅を示している。
【0055】
図13〜図15及び図17,図18に示すようにECTセンサ2の長さLが、埋設物30の外径d2と同等(多少短い場合も含む)、もしくは埋設物30の外径d2よりもやや大きい場合には、ECTセンサ2の出力信号の振幅に2つのピークP1,P2と谷Tが現れる。一方、図16に示すようにECTセンサ2の長さLが、埋設物30の外径d2よりも短過ぎる場合には、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tは現れない。
【0056】
従って、これらの探査実験結果から、コンクリート構造物11の施工図面などによって、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30をECTセンサ2が検出したときに当該ECTセンサ2の出力信号の振幅に確実に2つのピークP1,P2と谷Tが現れるようにするためには、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30の外径d2と同等、もしくはこの外径d2よりもやや大きめにすればよい。例えば、探査実験ではECTセンサ2の長さLと埋設物30の外径d2の比(長さ/外径)が100/113.4=0.88の場合までECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れることが確認できているため、ECTセンサ2の長さLは0.8D(Dは埋設物の直径)以上とすればよい。換言すれば、ECTセンサ2の長さは、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物30を、ECTセンサ2がその探査可能距離(例えば100mm)内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる長さに選定すればよい。
【0057】
なお、この場合、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物30が埋設されていると判断することも可能である。
【0058】
次に、図19及び図20に基づき、埋設物30の外径d2と距離d1を求める具体的な埋設物探査方法について説明する。
【0059】
図19及び図20において横軸は最大振幅W1、縦軸は谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)である。図19と図20には同じ探査実験の結果(データ)を示している。この探査実験も前述の探査実験と同様方法で行った。即ち、外径d2の異なる複数種類の埋設物30を被験体として選定し、これらの埋設物30に対して、埋設物30の距離d1を保った状態でECTセンサ2を移動(走査)させることによって行った。但し、ここでは埋設物30の距離d1についても、種々の長さに変更して探査実験を行った。また、この探査実験に用いたECTセンサ2は、長さLが100mm(フェライト芯33の長さに等しい)、外径D2が14mm(フェライト芯33の外径D1は10mm)のものである。そして、この探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号の振幅から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)を求めた。
【0060】
具体的には図19及び図20において、黒丸(●)は外径d2が24.5mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白丸(○)は外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:C51)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。黒四角(■)は外径d2が75.2mmの埋設物30(電線管:JIS規格G70)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白四角(□)は外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。白三角(△)は外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対する探査実験によって得られた最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)の関係を表すデータをプロットしたものである。
【0061】
更に図19には、これらの黒丸(●)、白丸(○)、黒四角(■)、白四角(□)、白三角(△)の各データ(即ち各外径d2ごとの探査実験データ)に対し、回帰曲線などで近似した近似曲線K1〜K5を表示している。また、図20には、各距離d1ごとのデータに対し、回帰曲線などで近似した近似曲線K6〜K11を表示している。なお、図示例では見易さを考慮して近似曲線K1〜K5とK6〜K11を図19と図20に分けて表しているが、勿論、これらの近似曲線K1〜K11を1つの図に表してもよい。
【0062】
かかる探査実験の後、実際にECTセンサ2を用いて前述の方法で埋設物探査を行う(図2,図3参照)。ECT探査器3では、このときの埋設物探査でECTセンサ2がコンクリート構造物11に埋設されている埋設物30を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2と、これらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求める(図8参照)。
【0063】
そして、この埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め前述の探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1と、埋設物30の外径d2とを求める。
【0064】
例えば、埋設物探査の結果、最大振幅W1として0.1(V)、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)として0.1が求められた場合、この最大振幅W1が0.1(V)で谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)が0.1の点Fを、図19及び図20に示すような探査実験データが表示されている紙面上(或いは図1に示すECT探査器3の表示部3aのような表示画面上)にプロットする。
【0065】
そして、図19では点Fが、外径d2が50.8mmの埋設物30の探査実験データ(近似曲線K2)と、外径d2が75.2mmの埋設物30の探査実験データ(近似曲線K3)の間にあるため、検出した埋設物30の外径d2は50.8mmと75.2mmの間であると推定する。勿論、点Fが例えば近似曲線K3上にあれば、検出された埋設物30の外径d2は75.2mmであると推定する。なお、図19の点Fの位置から、埋設物30の外径d2が50.8mmと75.2mmとの間にあると推定した場合、更に点Fから近似曲線K2までの距離と点Fから近似曲線K3までの距離とで比例配分することによって、埋設物30の外径d2の値をより具体的に推定することもできる。
【0066】
図20では点Fが、距離d1を40mmとしたときの各埋設物30の探査実験データ(近似曲線K7)と、距離d1を50mmとしたときの各埋設物30の探査実験データ(近似曲線K8)との間にあるため、検出した埋設物30の距離d1は40mmと50mmの間であると推定する。勿論、点Fが例えば近似曲線K7上にあれば、検出された埋設物30の距離d1は40mmであると推定する。なお、図20の点Fの位置から、埋設物30の距離d1が40mmと50mmとの間にあると推定した場合、更に点Fから近似曲線K7までの距離と点Fから近似曲線K8までの距離とで比例配分することによって、埋設物30の距離d1の値をより具体的に推定することもできる。
【0067】
なお、上記のような外径d2や距離d1の具体的な推定は近似曲線の数が多いほど(近似曲線の間隔が狭いほど)正確にはなるが、近似曲線の数は所望の推定精度によって適宜選定すればよい。
【0068】
また、埋設物30の外径d2及び距離d1は、作業員が図19や図20のように表示された探査実験データと埋設物探査データから読み取るだけでなく、近似式に基づいて計算で求めることもできる。即ち、ECT探査器3などのコンピュータ(検出信号処理手段)において、探査実験データの近似式(近似曲線K1〜K11を表す式)と、埋設物探査データ(最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータ)とに基づいて計算により、埋設物探査装置30の外径d2及び距離d1を求めることも可能である。近似式の例を示すと、例えば外径d2が75.2mmの場合の探査実験データ(近似曲線K3)の近似式は、y=0.09x2+0.78x−1.31(但し、x=log最大振幅、y=log谷の深さの最大振幅に対する比)となり、距離d1が50mmの場合の探査実験データ(近似曲線K8)の近似式は、x=−0.08y2−0.70y−3.69(但し、x=log最大振幅、y=log谷の深さの最大振幅に対する比)となる。
【0069】
次に、図21〜図24に基づき、埋設物が配管か鉄筋かを判別する方法について説明する。図21は探査実験をしたときのECTセンサの出力信号をr,θで表される点の軌跡として表示した場合の一例を示す図、図22は埋設物の外径と最大振幅との関係を示す図、図23は埋設物の外径と谷の深さの最大振幅に対する比との関係を示す図、図24は埋設物の外径と最大振幅時の位相角との関係を示す図である。
【0070】
前述の最大振幅W1や谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1))以外にも、ECTセンサ2の出力信号波形から簡単に読み取れる情報として、位相角θ(図6参照)がある。前述の探査実験において得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点(図6の点E参照)の軌跡として表示すると、例えば図21のようになる。
【0071】
図21の横軸はECTセンサ2の出力信号のX成分(rcosθ)、縦軸はECTセンサ2の出力信号のY成分(rsinθ)である。図21において、実線は外径d2が24.5mmの埋設物30(電線管:JIS規格C25)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。一点鎖線は外径d2が50.8mmの埋設物30(電線管:JIS規格C51)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。2点鎖線は外径d2が75.2mmの埋設物30(電線管:JIS規格G70)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。3点鎖線は外径d2が113.4mmの埋設物30(電線管:JIS規格G104)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。点線は外径d2が34.9mmの埋設物30(鉄筋:JIS規格D35)に対する前述の探査実験によって得られたECTセンサ2の出力信号を、r,θで表される点の軌跡として表示したものである。
【0072】
図21においてW3は前述の最大振幅W1に相当し、W4は前述の谷の深さW2に相当する(図21ではC51の配管についてだけ例示しているが、他の配管及び鉄筋についても同様である)。そして、図21に示すθ1〜θ5は各配管及び鉄筋に関する最大振幅時の位相角θである。即ち、θ1はG104の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ2はG70の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ3はC51の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。θ4はC25の配管に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。そして、θ5はD35の鉄筋に対して探査実験を行ったときにECTセンサ2の出力信号の振幅が、最大振幅W1となったときの位相角θである。
【0073】
ここで鉄筋(D35)の場合の最大振幅時の位相角θ5のみが、配管(C25,C51,G70,G104)の場合の最大振幅時の位相角θ1〜θ4に比べて、特異であるように見える。従って、予め前述の探査実験で外径d2の異なる複数の配管(C25,C51,G70,G104)のそれぞれについて最大振幅時の位相角θ1〜θ4のデータを求めておけば、このデータに基づいて、埋設物探査で検出した埋設物30が配管か鉄筋かを判別することができる。
【0074】
このことを図22〜図24に基づいて更に詳述する。図22では横軸を埋設物の外径とし縦軸を最大振幅として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅W1とに関するデータを黒丸(●)でプロットし、且つ、鉄筋(D35)についても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅W1とに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図22には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K21を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))も、この近似曲線K21にほぼ乗っている。従って、この結果から、最大振幅W1のデータに基づいて埋設物が配管か鉄筋かを判別することは難しいことがわかる。
【0075】
図23では横軸を埋設物の外径とし縦軸を谷の深さの最大振幅に対する比として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とに関するデータを黒丸(●)でプロットし、鉄筋(D35)につても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図23には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K22を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))も、この近似曲線K22にほぼ乗っている。従って、この結果から、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータに基づいて埋設物が配管と鉄筋かを判別することは難しいことがわかる。
【0076】
一方、図24には横軸を埋設物の外径とし縦軸を最大振幅時の位相角として、配管(C25,C51,G70,G104)について既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅時の位相角θとに関するデータを黒丸(●)でプロットし、鉄筋(D35)につても既知の外径d2と、前述の探査実験で得られた最大振幅時の位相角θとに関するデータを白丸(○)でプロットしている。そして、この図24には配管(C25,C51,G70,G104)のデータ(黒丸(●))に対して回帰曲線などで近似した近似曲線K23を表示しているが、鉄筋(D35)のデータ(白丸(○))は、この近似曲線K23から大きく外れている。従って、この結果から、最大振幅時の位相角θのデータに基づいて埋設物が配管と鉄筋かを、容易に判別することができることがわかる。
【0077】
そこで、予め前述の探査実験で、ECTセンサ2の出力信号から、前述の最大振幅W1や谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータを求めるだけでなく、各配管(C25,C51,G70,G104)に関する最大振幅時の位相角θのデータ(近似曲線K23)も求めておく。
【0078】
かかる探査実験の後、実際にECTセンサ2を用いて前述の方法で埋設物探査を行う(図2,図3参照)。ECT探査器3では、このときの埋設物探査でECTセンサ2がコンクリート構造物11に埋設されている埋設物30を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このときのECTセンサ2の検出信号から、前述の最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータを求め、更に最大振幅時の位相角θも求める。
【0079】
続いて、前述のとおり、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物30までの距離d1と、埋設物30の外径d2とを求める。
【0080】
そして、このときに求めた埋設物30の外径d2と、最大振幅時の位相角θとに関するデータを、図24に例示するような配管の探査実験データ(近似曲線K23)が表示されている紙面上(或いは図1に示すECT探査器3の表示部3aのような表示画面上)にプロットし、このプロットした点が、前記配管の探査実験データ(近似曲線K23)に乗っているか(即ち近似曲線23上又は近似曲線23に近いか)、前記配管の探査実験データ(近似曲線23)から大きく外れているかを判断するにより、埋設物探査で検出した埋設物30が配管か鉄筋かを判別する。
【0081】
なお、埋設物探査で得られた埋設物30の外径d2と最大振幅時の位相角θに関するデータが、近似曲線K23に乗っているか否か(即ち埋設物30が配管か鉄筋か)は作業員が、これらの探査データを見て適宜判断すればよいが、例えば近似曲線K23からの任意の距離を設定距離として予め決めておき、埋設物探査で得られた埋設物30の外径d2と最大振幅時の位相角θと関係のデータをプロットした点から近似曲線K23までの最短距離(例えばプロット点が図24のθ5のプロット点であったとすれば、このθ5のプロット点から近似曲線K23までの最短距離)が、前記設定距離以下のときには近似曲線K23に乗っていると判断(即ち埋設物30は配管であると判断)し、前記設定距離よりも大きいときには近似曲線K23から大きく外れていると判断(即ち埋設物30は鉄筋であると判断)するようにしてもよい。
【0082】
また、埋設物30が配管か鉄筋かは、作業員が図24のように表示された探査実験データや埋設物探査データから読み取るだけでなく、近似式に基づいて計算で求めることもできる。即ち、ECT探査器3などのコンピュータ(検出信号処理手段)において、探査実験データの近似式(近似曲線K23を表す式)と、埋設物探査データ(外径d2及び最大振幅時の位相角θのデータ)とに基づいて計算により(例えば前述のような設定距離と最短距離との比較により)、埋設物30が配管か鉄筋かを判別することも可能である。
【0083】
次に、図25〜図31に基づき、上記の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法について説明する。図25は本発明の実施の形態例に係る孔開け施工方法のフローチャート、図26は鉄筋探査の方法を示す説明図、図27は半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合の説明図、図28は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合の説明図、図29は半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図、図30は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図、図31は埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を施工する方法を示す説明図、図32は埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を施工する方法を示す説明図である。
【0084】
孔開け施工は図25のフローチャートに示すステップS1〜ステップS8の手順で実施する。まず、ステップS1で図27,図28に仮想線で示すような孔61(例えばコンクリート構造物11に新設の配管などを通すための貫通孔)をコンクリート構造物11の開けるための孔開け位置を選定する。この孔開け位置の選定に関しては、ステップS2に示すようにコンクリート構造物11を施工したときの施工図面上で埋設配管の有無を調査し、施工図面上で明らかに埋設配管が認められない位置を孔開け位置として選定する。このときステップS3では、孔開け位置近傍(例えば孔開け位置から孔61の直径(1D)分の距離範囲)に埋設配管が無いか否かを判定する。ステップS3の判定結果がNoの場合、即ち施工図面上で孔開け位置近傍に埋設配管が認められた場合には、孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S3の手順を繰り返す。
【0085】
ステップS3の判定結果がYesになれば、即ち施工図面上で孔開け位置近傍に埋設配管が認められなければ次のステップS4へ進む。ステップS4では図27,図28に示すような試掘孔12をコンクリート構造物11に開けるためにコンクリート構造物11の表面に試掘孔位置のマーキングを行なう。この試掘孔位置のマーキングは選定した孔開け位置の中心などに行なう(図27,図28参照:詳細後述)。
【0086】
次に、試掘孔12をコンクリート構造物11に開ける際には、この試掘孔12(試掘孔用の孔開け工具)と鉄筋13との干渉を回避する必要があるため、ステップS5で鉄筋探査を行なう。この鉄筋探査は図26に示すような探査装置41によって実施する。探査装置41はレーダ法を用いて鉄筋探査を行なうものであり、把手41aと車輪41bを有している。作業員は把手41aを持ち、探査装置41を押してコンクリート構造物11の表面上を走行させることより、試掘孔位置のマーキング周辺の鉄筋13の探査を実施して、コンクリート構造物11の表面に探査した鉄筋位置をマーキングする。このときに試掘孔12と鉄筋13との干渉が確認された場合には当該干渉を回避することができる位置に試掘孔位置を変更して再度マーキングを行う。
【0087】
そして、ステップS6で試掘孔12の穿孔と、埋設物探査装置1(ECTセンサ2、ECT探査器3)による埋設物(配管)探査とを行う。孔61の孔開け位置に関しては、上記の如く予め施工図面で埋設配管の有無を確認するものの、コンクリート構造物11を施工した際に施工現場で配管位置(埋設位置)の調整が行われたもの等、施工図面上の配管位置と実際の配管位置がずれている場合がある。更には、例えばコンクリート構造物11を施工した後に当該施工会社とは異なる施工会社がコンクリート構造物11に埋設した配管等、コンクリート構造物11の施工図面には記載されていない配管等の埋設物が存在する可能性もある。従って、埋設物との干渉を確実に回避するためには、試掘孔12を開けて実際に埋設物探査を実施する必要がある。
【0088】
ECTセンサ2の探査可能距離(即ち埋設物を検出したときにECTセンサ2の出力信号の振幅に前述の2つのピークP1,P2と谷Tが確実に現れる距離)には限度があるため、試掘孔の穿孔要領は、最終的に開ける孔61の半径が前記探査可能距離以下か、前記探査可能距離よりも大きいかによって異なる(図27,図28参照)。なお、いずれも場合も、本実施の形態例ではECTセンサ2の探査可能距離は100mm、外径D2は14mmとする。試掘孔の直径は15mmとし、この試掘孔の穿孔はΦ15mmの孔開け工具によって行うものとする。
【0089】
まず、図27,図29,図31に基づき、ECTセンサ2の探査可能距離以下の半径の孔61を開ける場合について詳述する。
【0090】
この場合、図27に示すように、孔61の孔開けの中心位置に1つだけ試掘孔位置のマーキングをして(前述のステップS4)、このマーキング位置で鉄筋13と干渉しないことが確認できれば(前述のステップS5)、このマーキング位置に試掘孔12を開ける。そして、この試掘孔12に対し、前述の埋設物探査方法によって埋設物探査を行う。即ち、ECTセンサ2を試掘孔12に挿入して、試掘孔12の一端側から他端側へと試掘孔12内を移動(走査)させる(図2,図3参照)。
【0091】
この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、即ちステップS7の判定結果がYesの場合には、次のステップS8で試掘孔12を中心として、試掘孔12の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開ける(コアボーリング)。具体的には、コンクリート構造物11の表面に試掘孔12を中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後(図31参照)、コアボールマシンで前記マーキングに沿って試掘孔12を中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。
【0092】
一方、例えば図29のように2点鎖線で示す実際の埋設配管14の埋設位置が、実線で示す施工図面上の埋設位置から、矢印Bの如く試掘孔12寄りにずれているために前記埋設物探査の結果、埋設配管14が検出された場合、即ちステップS7の判定結果がNoの場合には孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S7の手順を繰り返す。
【0093】
具体的には、ECTセンサ2が埋設配管14を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れるため(図8参照)、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設配管14の検出だけではなく、埋設配管14の距離d1及び外径d2の求め(図19,図20参照)、更には埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かの判別も行う(図21,図24)。
【0094】
そして、図29に矢印Cで示すように、孔61の孔開け位置を当初予定していたT1からT2へ変更する。即ち、試掘孔12から試掘孔12Aへ試掘孔の孔開け位置を変更して、再度、この試掘孔12Aに対して前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。この埋設物探査の結果、埋設物が検出されなければ、図31に示すようにコンクリート構造物11の表面に試掘孔12Aを中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後、コアボールマシンで前記マーキングに沿って試掘孔12Aを中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。孔61は貫通孔又は所要の深さの孔である。
【0095】
なお、埋埋設配管14が検出されたときに予定の孔開け位置T1に対して、どの方向に孔開け位置T2を変更するかは、施工図面上で埋設配管14が予定の孔開け位置T1にしてどの方向に位置しているかを確認することによって、変更後の孔開け位置T2が予定の孔開け位置T1よりも埋設配管14から遠ざかるように(即ち図29の例では矢印C方向に変更するように)、予め決めておく。
【0096】
また、図示例では、孔開け位置T1から孔開け位置T2への変更距離が孔61の半径分(ECTセンサ2の探査可能距離分)になっているが、これに限るものではなく、前記変更距離は、孔61の半径と埋設物探査で求めた埋設配管14の距離d1との差よりも大きければよい。
【0097】
次に、図28,図30,図32に基づき、ECTセンサ2の探査可能距離よりも大きな半径の孔61を開ける場合について詳述する。なお、ここでは200〜400mmの直径の孔61を開ける場合について説明する。
【0098】
この場合、図28に示すように、孔61の孔開け位置の中心と、その周辺の前後左右の4箇所とにそれぞれ、1つの中心試掘孔位置のマーキングと、4つの周辺試掘孔位置のマーキングとを行い(前述のステップS4)、これらのマーキング位置で鉄筋13と干渉しないことが確認できれば(前述のステップS5)、中心試掘孔のマーキング位置に中心試掘孔12−1を開け、周辺試掘孔のマーキング位置に周辺試掘孔12−2,12−3,12−4,12−5を開ける。これら4つの周辺試掘孔12−2〜12−5は、中心試掘孔12−1周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1からECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数(n)倍(図示例では1倍)離れている。
【0099】
そして、これらの中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2,12−3,12−4,12−5に対して前述のとおり、埋設物探査を行う。即ち、各試掘孔12−1〜12−5に挿入して、各試掘孔12−1〜12−5の一端側から他端側へと各試掘孔12−1〜12−5内を移動(走査)させる(図2,図3参照)。なお、孔開けは中心試掘孔12−1、周辺試掘孔12−2、周辺試掘孔12−3、周辺試掘孔12−4、周辺試掘孔12−5の順に行い、各試掘孔12−1〜12−5を開けるごとに、順次、ECTセンサ2を挿入して埋設物探査を行う。
【0100】
これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、即ちステップS7の判定結果がYesの場合には、次のステップS8で中心試掘孔12−1を中心として、中心試掘孔12−1の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開ける(コアボーリング)。具体的には、コンクリート構造物11の表面に中心試掘孔12−1を中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後(図32参照)、コアボールマシンで前記マーキングに沿って中心試掘孔12−1を中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。
【0101】
一方、例えば図30のように2点鎖線で示す実際の埋設配管14の埋設位置が、実線で示す施工図面上の埋設位置から、矢印Bの如く中心試掘孔12−1寄りにずれているために前記埋設物探査の結果、埋設配管14が検出された場合、即ちステップS7の判定結果がNoの場合には孔開け位置を変更して、再度、ステップS1〜S7の手順を繰り返す。
【0102】
具体的には、まず、中心試掘孔12−1を開け、この中心試掘孔12−1に対して前述の埋設物探査方法どおり、ECTセンサ2で埋設物探査を行う。その結果、埋設物が検出されなければ、次に周辺試掘孔12−2を開け、この周辺試掘孔12−2に対して前述の埋設物探査方法どおり、ECTセンサ2で埋設物探査を行う。このとき、ECTセンサ2が埋設配管14を検出したとすると、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れるため(図8参照)、このときのECTセンサ2の検出信号をECT探査器3で処理することにより、埋設配管14の検出だけではなく、埋設配管14の距離d1及び外径d2の求め(図19,図20参照)、更には埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かの判別も行う(図21,図24)。
【0103】
そして、この場合には周辺試掘孔12−2以後の周辺試掘孔12−3,12−4,12−5の孔開けは行わず、図30に矢印Cで示すように、孔61の孔開け位置を当初予定していたT3からT4へ変更する。即ち、中心試掘孔12−1から中心試掘孔12−1Aへ中心試掘孔の孔開け位置を変更し、この中心試掘孔12−1Aに対して前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。この埋設物探査の結果、埋設物が検出されなければ、周辺試掘孔の孔開け位置も、周辺試掘孔12−2〜12−5から、中心試掘孔12−1A周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1AからECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数倍(図示例では1倍)離れた周辺試掘孔12−2A〜12−5Aへ変更し、これらの周辺試掘孔12−2A〜12−5Aに対しても前述の埋設物探査方法どおり、埋設物探査を行う。
【0104】
これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されなければ、図32に示すようにコンクリート構造物11の表面に中心試掘孔12−1Aを中心とし、且つ、孔61の直径を有する円をマーキングした後、コアボールマシンで前記マーキングに沿って中心試掘孔12−1Aを中心とする孔61を、コンクリート構造物11に開ける。孔61は貫通孔又は所要の深さの孔である。
【0105】
なお、埋設配管14が検出されたときに予定の孔開け位置T3に対して、どの方向に孔開け位置T4を変更するかは、施工図面上で埋設配管14が予定の孔開け位置T3にしてどの方向に位置しているかを確認することによって、変更後の孔開け位置T4が予定の孔開け位置T3よりも埋設配管14から遠ざかるように(即ち図30の例では矢印C方向に変更するように)、予め決めておく。
【0106】
また、図示例では、孔開け位置T3から孔開け位置T4への変更距離が孔61の半径分(ECTセンサ2の探査可能距離分)になっているが、これに限るものではなく、前記変更距離は、孔61の半径と周辺試掘孔12−2に対する埋設物探査で求めた埋設配管14の距離d1との差よりも大きければよい。
【0107】
また、最終的の開ける孔61の直径が400mmよりも大きい場合には、図28に示す周辺試掘孔12−2〜12−5の外側にも周辺試掘孔を開ければよい。最終的に開ける孔61の直径に応じて、周辺試掘孔の数を増やせばよい。即ち、中心試掘孔周辺の前後左右の4方向へ中心試掘孔らECTセンサの探査可能距離の整数倍離れた位置に周辺試掘孔を開ける場合、例えば孔61の直径が200〜400mmであれば前述の如く探査可能距離の1倍離れた位置に周辺試掘孔を開け、孔61の直径が400〜600mmであれば探査可能距離の1倍離れた位置と2倍離れた位置に周辺試掘孔を開ける。
【0108】
また、図32に示すように、最終的の開ける孔61には、周辺試掘孔12−2〜12−5のそれぞれに対して埋設物探査を行ったときの探査可能距離範囲(図32中に点線で示す円の範囲)から外れている部分もあるが、ECTセンサ2の探査可能距離は余裕を持って設定されており、この探査可能距離から多少外れた位置にある埋設物もECTセンサ2によって検出可能であるため、この探査可能距離範囲から外れた部分での埋設物との干渉も防止することができる。勿論、周辺試掘孔の数を増やせば(例えば中心試掘孔周辺の8方へ設ければ)、埋設物探査の精度はより向上する。
【0109】
以上のことから、本実施の形態例の埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置によれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0110】
即ち、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサ2を用いて、コンクリート構造物11に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、ECTセンサ2を、コンクリート構造物11に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させ、このときにECTセンサ2が埋設物(埋設配管14)を検出して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求め、これらの最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物(埋設配管14)までの距離d1と、埋設物(埋設配管14)の外径d2とを求めることを特徴としているため、単に埋設物(埋設配管14)の有無を探査するだけでなく、埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0111】
また、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の出力信号から、最大振幅時の位相角θを求め、この最大振幅時の位相角θ及び埋設物(埋設配管14)の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)が配管か鉄筋かを判別することによって、埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0112】
また、本実施の形態例の埋設物探査方法によれば、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物(埋設配管14)を探査可能距離範囲内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P1間の谷Tとが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2を確実に検出することができる。更には、この場合、ECTセンサの出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することができるという効果も得られる。
【0113】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、コンクリート構造物11に試掘孔12を開け、この試掘孔12に対して前述の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、試掘孔12を中心として、試掘孔12の半径よりも大きく且つECTセンサ2の探査可能距離以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開けることを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)の有無だけでなく、埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2の情報も得て、より適切な孔開け施工を行うことができる。
【0114】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前記埋設物探査の結果、埋設物(埋設配管14)が検出された場合には、試掘孔12の孔開け位置を変えて前述の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、埋設物(埋設配管14)との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0115】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、コンクリート構造物11に中心試掘孔12−1と、中心試掘孔12−1周辺の少なくとも前後左右の4方向へ中心試掘孔12−1からECTセンサ2の探査可能距離(図示例では100mm)の整数倍(n倍:図示例では1倍)離れている複数の周辺試掘孔12−2〜12−5とを開け、これらの中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5に対して前述の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、中心試掘孔12−1を中心として、前記探査可能距離のn+1倍(図示例では2倍)以下の半径を有する孔61を、コンクリート構造物11に開けることを特徴としているため、ECTセンサ2の探査可能距離よりも大きな半径を有する孔61を、埋設物(埋設配管14)と干渉することなく、開けることができる。
【0116】
また、本実施の形態例の孔開け施工方法によれば、前述の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5を開けるごとに順次行い、中心試掘孔12−1及び周辺試掘孔12−2〜12−5の何れかの試掘孔(例えば周辺試掘孔12−2)に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔(例えば周辺試掘孔12−2)以後の試掘孔(例えば周辺試掘孔12−3〜12−5)の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて前述の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴としているため、無駄な試掘孔を開けることなく効率的に、埋設物(埋設配管14)との干渉が無い孔開け位置を選定して、孔開け施工を実施することができる。
【0117】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサ2と、このECTセンサ2の検出信号を処理するECT探査器3とを有し、このECT探査器3では、ECTセンサ2をコンクリート構造物11に開けた試掘孔12に挿入して試掘孔12内を移動させたときにECTセンサ2が埋設物を検知して、ECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れた場合、このECTセンサ2の検出信号から、最大振幅W1と、谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)とを求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置1で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め探査実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求めることができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2も求めることによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0118】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECTセンサ2の長さLを、コンクリート構造物11に埋設されていると予想される埋設物(埋設配管14)を探査可能距離範囲内で検出したときにECTセンサ2の検出信号の振幅に2つのピークP1,P2とこれらのピークP1,P2間の谷Tとが現れる長さとしたことを特徴としているため、埋設が予想される埋設物(埋設配管14)の距離d1や外径d2を確実に求めることができる。更には、この場合、ECTセンサ2の出力信号の振幅に1つのピークP3しか現れず、谷Tが現れない場合には、ECTセンサ2の長さLよりも外径d2の大きな(即ち予想外)の埋設物が埋設されていると判断することができるという効果も得られる。
【0119】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器3では、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求めることを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2も探査することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのかを把握することができるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に非常に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0120】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器2では、ECTセンサ2の出力信号から、最大振幅時の位相角θも求めることを特徴としているため、この埋設物探査装置1で求めた最大振幅時の位相角θ及び埋設物の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することができる。このため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2を求め、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物11に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0121】
また、本実施の形態例の埋設物探査装置1によれば、ECT探査器3では、埋設物探査で求めた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータと、予め実験で求めておいた最大振幅W1及び谷の深さW2の最大振幅W1に対する比(W2/W1)のデータとに基づいて、ECTセンサ2から埋設物までの距離d1と、埋設物の外径d2とを求め、且つ、最大振幅時の位相角θ及び埋設物の外径d2のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する最大振幅時の位相角θ及び外径d2のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴としているため、単に埋設物の有無を探査するだけでなく、埋設物の距離d1や外径d2を探査し、更には埋設物が配管か鉄筋かを判別することによって、どの程度の大きさものがどの位置に埋設されているのか把握し、更には埋設物の種類を把握しておくこともできるため、コンクリート構造物に対して孔開け施工などの改造工事を行う際に更に有用な埋設物情報を得ることができる。
【0122】
なお、交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサとして、上記実施の形態例では励磁コイル31と検出コイル32を芯33の外周に巻回してなる相互誘導型のECTセンサ2を用いたが、これに限定するものではなく、交流磁界を発生するための励磁機能と、前記交流磁界の検出する機能とを兼ね備えた1つのコイルを芯の外周に巻回したなる自己誘導型のECTセンサを用いてもよい。
また、本発明は、鋼製の電線管などの強磁性体の埋設物の探査に限定するものではなく、その導電体の埋設物(例えば銅管やアルミニウム管などの非磁性体の金属配管など)の探査にも適用することができる。
また、上記の埋設物探査方法では最大振幅W1を用いて埋設物までの距離や埋設物の外径を求めているが、必ずしもこれに限定するものではなく、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の何れを用いてもよい。即ち、ECTセンサの検出信号から求めた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅及び谷の深さ(第1のピークP1のピーク値からの谷の深さ又は第2のピークP2のピーク値からの谷の深さ)の第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅及び谷の深さの第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅に対する比のデータとに基づいて、ECTセンサから埋設物までの距離と、埋設物の外径とを求めるようにしてもよい。
また、上記の埋設物探査方法では最大振幅W1を用いて埋設物が配管か鉄筋かを判別しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、第1のピークP1の振幅と第2のピークP2の何れを用いてもよい。即ち、ECTセンサの検出信号から求めた第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅時の位相角及び埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピークP1又は第2のピークP2の振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、埋設物が配管か鉄筋かを判別するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は埋設物探査方法、これを用いた孔開け施工方法及び埋設物探査装置に関するものであり、原子力発電所やビルの壁や床などのコンクリート構造物に孔開け施工などを行うために前記コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態例に係る埋設物探査装置の構成図である。
【図2】埋設物探査の様子を示す説明図である。
【図3】埋設物探査の様子を示す説明図である。
【図4】ECTセンサの構成図である。
【図5】探査原理の説明図である。
【図6】埋設物の検出に用いる信号の説明図である。
【図7】ECTセンサが発生する交流磁束の密度に応じた磁気抵抗の変化の違いを説明する図である。
【図8】埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図9】探査実験の概要を説明する図である。
【図10】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図11】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図12】埋設物の外径に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図13】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図14】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図15】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図16】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図17】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図18】ECTセンサの長さと埋設物の外径との関係に応じた埋設物探査装置の出力例を示す図である。
【図19】埋設物の外径を求める具体的な方法を説明する図である。
【図20】埋設物の距離を求める具体的な方法を説明する図である。
【図21】探査実験をしたときのECTセンサの出力信号をr,θで表される点の軌跡として表示した場合の一例を示す図である。
【図22】埋設物の外径と最大振幅との関係を示す図である。
【図23】埋設物の外径と谷の深さの最大振幅に対する比との関係を示す図である。
【図24】埋設物の外径と最大振幅時の位相角との関係を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態例に係る孔開け施工方法のフローチャートである。
【図26】鉄筋探査の方法を示す説明図である。
【図27】半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合の説明図である。
【図28】半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合の説明図である。
【図29】半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図である。
【図30】は半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を開ける場合であって埋設物が検出された場合(埋設物との干渉が確認された場合)の説明図である。
【図31】埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離以下の孔を施工する方法を示す説明図である。
【図32】埋設物探査後に半径がECTセンサの探査可能距離よりも大きな孔を施工する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0125】
1 埋設物探査装置
2 ECTセンサ
3 ECT探査器
3a 表示部
4 電気ケーブル
11 コンクリート構造物
12,12A 試掘孔
12−1,12−1A 中心試掘孔
12−2〜12−5,12−2A〜12−5A 周辺試掘孔
13 鉄筋
14 埋設配管
30 埋設物
31 励磁コイル
32 検出コイル
33 芯
41 レーダ法を用いた探査装置
41a 把手
41b 車輪
61 最終的に開ける孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、
前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、
このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、
これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、
この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の孔開け施工方法において、
前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項6】
請求項1に記載の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の孔開け施工方法において、
前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項8】
コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、
この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項10】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項11】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項1】
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサを用いて、コンクリート構造物に埋設させている埋設物を探査する埋設物探査方法であって、
前記ECTセンサを、前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させ、
このときに前記ECTセンサが埋設物を検出して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求め、
これらの第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め探査実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求め、
この第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の埋設物探査方法において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする埋設物探査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に試掘孔を開け、この試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、この埋設物探査の結果、埋設物が検出されない場合、前記試掘孔を中心として、前記試掘孔の半径よりも大きく且つ前記ECTセンサの探査可能距離以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の孔開け施工方法において、
前記埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項6】
請求項1に記載の埋設物探査方法を用いた孔開け施工方法であって、
前記コンクリート構造物に中心試掘孔と、前記中心試掘孔周辺の少なくとも前後左右の4方向へ前記中心試掘孔から前記ECTセンサの探査可能距離の整数倍(n倍)離れている複数の周辺試掘孔とを開け、これらの中心試掘孔及び周辺試掘孔に対して請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査を行い、これらの埋設物探査の結果、何れも埋設物が検出されない場合、前記中心試掘孔を中心として、前記探査可能距離のn+1倍以下の半径を有する孔を、前記コンクリート構造物に開けることを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の孔開け施工方法において、
前記請求項1に記載の埋設物探査方法による埋設物探査は中心試掘孔及び周辺試掘孔を開けるごとに順次行い、中心試掘孔及び周辺試掘孔の何れかの試掘孔に対する埋設物探査の結果、埋設物が検出された場合には、当該試掘孔以後の試掘孔の孔開けはせず、中心試掘孔及び周辺試掘孔の孔開け位置を変えて請求項1に記載の埋設物探査方法による探査を行うという手順を繰り返すことを特徴とする孔開け施工方法。
【請求項8】
コンクリート構造物に埋設されている埋設物を探査する埋設物探査装置であって、
交流磁界を発生して埋設物を探査する棒状のECTセンサと、このECTセンサの検出信号を処理する検出信号処理手段とを有し、
この検出信号処理手段では、前記ECTセンサを前記コンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入して前記試掘孔内を移動させたときに前記ECTセンサが前記埋設物を検知して、前記ECTセンサの検出信号の振幅に第1のピークと第2のピークの2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れた場合、このECTセンサの検出信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅と、前記谷の深さの前記第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比とを求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記ECTセンサの長さを、前記コンクリート構造物に埋設されていると予想される埋設物を探査可能距離範囲内で検出したときに前記ECTセンサの検出信号の振幅に2つのピークとこれらのピーク間の谷とが現れる長さとしたことを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項10】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項11】
請求項8に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、前記ECTセンサの出力信号から、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角を求めることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の埋設物探査装置において、
前記検出信号処理手段では、埋設物探査で求めた前記第1のピーク又は第2のピークの振幅及び前記谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータと、予め実験で求めておいた第1のピーク又は第2のピークの振幅及び谷の深さの第1のピーク又は第2のピークの振幅に対する比のデータとに基づいて、前記ECTセンサから前記埋設物までの距離と、前記埋設物の外径とを求め、且つ、前記第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び前記埋設物の外径のデータと、予め探査実験で求めておいた配管に関する第1のピーク又は第2のピークの振幅時の位相角及び外径のデータとに基づいて、前記埋設物が配管か鉄筋かを判別することを特徴とする埋設物探査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2009−168768(P2009−168768A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10161(P2008−10161)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000235532)非破壊検査株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000235532)非破壊検査株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
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