説明

埋設用中空地下構造物

【課題】線路下等に埋設して地下通路を形成するための中空地下構造物であって、地中うに浸透する雨水等の水分を中空地下構造物の上床版から外部に排出可能にして噴泥状態となるのを防止すると共に冬季における凍結、凍上による線路の持ち上がりをなくする。
【解決手段】中空地下構造物の上床版1aの上面を幅方向の中央部から両側端に向かって下方に傾斜する傾斜面8、8に形成していると共に上床版1aの四方端縁部に枠状周壁部9を突設してこの枠状周壁部9で囲まれた上床版1a上に断熱層5Aと透水層10を積層し、断熱層5Aによって中空地下構造物の通路内の冷気が上床版1aの上方の土砂に伝達するのを防止すると共に、地中に含まれる水分を透水層10内に浸透させ、傾斜面上を伝って枠状周壁部9に設けている排水孔11から外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道線路下や道路下の地盤中にこれらの鉄道線路や道路を横断する方向に埋設することによって、地下通路等として使用される中空地下構造物の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、このような中空地下構造物としては、鉄筋コンクリート製の上下床版と両側壁版とからなる断面矩形状の函体に形成され、その内部を前後端が開口している通路に形成してなる構造のものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような中空地下構造物において、その上床版の上面に土被りの厚みを厚くするための土砂を載置してなる構造のものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
そして、このような中空地下構造物を例えば線路下の地中に、該線路に対して交差する方向に埋設して該中空地下構造物により地下通路等を築造するには、図11に示すように線路20を挟んだ両側に立坑21、22を掘削したのち、上面に平帯板状の縁切板24を配設してなる多数本の鋼製角パイプを両立坑21、22間の地中における計画地下構造物の上床版位置に並列状態で圧入、埋設してパイプルーフ25を形成し、次いで、このパイプルーフ25の後端面に、前端側に掘削刃28を装着している中空地下構造物31の上床版31a の前端面を当接させると共に上記各縁切板24の後端を一方の立坑21側に固定したのち、地下構造物31の後端をジャッキ27により押し進めるか、或いは適宜な牽引手段で牽引することにより、掘削刃28で前方の地盤を掘削しながら縁切板24をガイドして中空地下構造物31を前進させてパイプルーフ25と置換する工法が用いられている。
【0004】
【特許文献1】特公平6−63421号公報(第2〜3頁、第4、5図)。
【特許文献2】特許第3093555号公報(第2〜3頁、第1図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記地下構造物の築造方法によれば、予め地中の浅い位置にパイプルーフ25を埋設しておくことによって地下構造物をできるだけ浅い地中に埋設することができる利点を有するが、土被りの厚みに比してこの地下構造物31の幅が広い場合には、雨天時において該中空地下構造物31の上床版31a 上の土被りの土砂中に浸透した雨水が上床版31a 上から両側の地中に排出され難くて該土砂中に滞留し、この上床版31a の上方で列車や自動車等が通過すると、その繰り返し荷重によって上床版31a 上の土砂が膿んで、所謂、噴泥状態となり、列車や自動車の通行に支障をきたすことがある。このような噴泥は上記文献2の中空地下構造物のように、その上床版の上面に土被りの厚みを厚くするための土砂を載置した場合においても発生する。
【0006】
また、寒冷地において、上記工法により線路下や道路下に上記中空地下構造物を地中を横断するように埋設することにより地下通路を形成した場合、この中空地下構造物の通路内に浸入する冷気と道路面側や線路面側からの冷気とによって該中空地下構造物の上床版上の水分を含んでいる土砂が冷却され、凍結、凍上して中空地下構造物上の道路や線路が持ち上がり、交通の安全性を損なう虞れがある。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、上床版上の土被り部の排水性を良好にして憤泥状態になるのを防止し、また、寒冷地においては上床版上の路床の凍結、凍上を防止することを目的とする推進用中空地下構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、線路下や道路下の地盤中に地下通路等の形成用として埋設される中空地下構造物において、上床版の上面を該上床版上から外部に向かって排水が可能となる方向に傾斜した傾斜面に形成していると共に上床版の上面における四方端縁部に一定高さを有する枠状周壁部を突設し、この枠状周壁部の下端部適所に上記傾斜面の下傾端から外部に通じた排水孔を設けてあり、さらに、上床版の上記傾斜面上に上面が上記枠状周壁部の上端面の高さにまで達するように透水性材料を積載して上面が平坦な透水層を形成していることを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に記載した埋設用中空地下構造物において、請求項に係る発明は、上記上床版の傾斜面上に断熱層を介して透水層を形成し、断熱層の上面を排水口に連通させるように構成していることを特徴とし、請求項に係る発明は、上床版の上面に形成している傾斜面として、上床版の幅方向の中央部から両側端に向かって下方に傾斜した傾斜面であることを特徴とする。
【0010】
線路下又は道路下に、上面に縁切板を載置している複数の角パイプを並列状態で水平に圧入、埋設してパイプルーフを形成したのち、中空地下構造物の前端面における上端部をこのパイプルーフの後端に押し付けて中空地下構造物を推進又は牽引することにより、中空地下構造物をパイプルーフと置換して線路下または道路下に該中空地下構造物による地下通路等を形成するものであるが、この際、上床版の上面に配設している透水層の上面を平坦面に形成しているので、その上面を上記パイプルーフに載置している縁切板の下面に摺接させながら該縁切板に沿って中空地下構造物を円滑に前進させ、所定の位置に埋設することができる。地下構造物の埋設後においては、地中に残置している上記縁切板を撤去することができる。
【0011】
このように、線路下又は道路下に埋設されて地下通路等を形成している中空地下構造物は、その上床版の上面に断熱層や透水層等を設けているので、断熱層を設けている場合には、中空地下構造物側からの冷気が上床版上の地盤に伝達するのを該断熱層によって防止し、凍結、凍上による道路や線路の持ち上がりをなくして安全な交通を可能にする。この場合、断熱層をコンクリート被覆層によって保護しておいてもよく、このように構成しておくと、コンクリートが発泡スチロール等の断熱材よりも強度が大きいので、上述したように、中空地下構造物を線路下又は道路下の地中にパイプルーフと置換しながら埋設する際に、コンクリート被覆層の上面と縁切板の下面との間に摩擦力が発生しても破損することなく、中空地下構造物を円滑に前進、埋設させることができる。
【0012】
また、上床版の上面を外部に排水可能な傾斜面に形成すると共にこの傾斜面上に上面が平坦な透水層を設けている中空地下構造物によれば、該上床版の上方における地盤の土砂中の水分を上床版上の透水層に浸透させ、さらに、この透水層を通じて傾斜面上まで流下させてこの傾斜面上を伝って上床版から外部の地中に排出することができる。従って、上床版上の土砂が噴泥状態になるのを防止し得ると共に、地盤の凍結、凍上も防止することができる。この場合、上床版の傾斜面上に断熱層を層着し、この断熱層上に上記透水層を設けておいてもよく、このように構成すると、路床の凍結、凍上を一層効果的に防止することができる。
【0013】
さらに、上床版の排水用傾斜面上透水層を設けている中空地下構造物にあっては、その上床版の四方端縁部に枠状の周壁部を突設してこの枠状周壁部で囲まれた空間部に上記透水層を設ける共に、枠状周壁部の下端部適所に傾斜面の下傾端から外部に通じる排水孔を設けた構造としておけば、透水層を構成している透水材料が上床版から外部に漏出するのを枠状周壁部によって確実に阻止し、上床版上に常に一定厚みの透水層を設けておくことができると共に透水層に浸透した水分を傾斜面を伝って該傾斜面の下傾端部にまで流下させ、その下傾端部から上記排水孔を通じて外部に円滑に排出することができる。
【0014】
なお、上床版の上面に形成している傾斜面は、中空地下構造物の幅方向、長さ方向のいずれの方向に傾斜させておいてもよく、また、断面方向に両傾斜であっても片傾斜であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように請求項1に係る発明によれば、中空地下構造物の上床版の上面を該上床版上から外部に向かって排水が可能となる方向に傾斜した傾斜面に形成し、この傾斜面上に透水性材料を積載して上面が平坦な透水層を形成しているので、上床版の上方の土砂中の水分を透水層に浸透させて土中水を中空地下構造物の上床版外に排除することができ、従って、上床版上の土砂が噴泥状態になるのを防止し得ると共に、地盤の凍結、凍上も防止することができるものであり、また、上床版上に達した水分を上床版の傾斜上面を伝わせて該上床版から外部に確実に排出することができる。
【0016】
さらに、上床版の上面における四方端縁部に上端面が透水層の平坦な上面に達する高さを有する枠状周壁部を突設し、この枠状周壁部の下端部適所に傾斜面の下傾端から外部に通じた排水孔を設けているので、枠状周壁部によって透水層を構成している透水材料が上床版から外部に漏出するのを確実に阻止することができ、上床版上に常に一定厚みの透水層を設けておくことができると共に透水層に浸透した水分を上記傾斜面を伝って該傾斜面の下傾端部にまで流下させ、その下傾端部から上記排水孔を通じて外部に円滑に排出することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、上床版の傾斜面上に断熱層を介して透水層を形成しているので、透水層による上記線路下や道路下の地中の水分の排出とあいまって、地盤の凍結、凍上を一層効果的に防止することができる。
【0018】
なお、上床版の上面形成している傾斜面としては、請求項に記載したように上床版の幅方向の中央部から両側端に向かって下方に傾斜した傾斜面としておくことによって、傾斜面上に達した水分をより速く上床版から外部に排出することができ、排水効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面について説明すると、図1と図2は、線路下又は道路下(以下、線路下として説明する)に地下通路用、水路、下水路として埋設する中空地下構造物の実施の形態1を示すもので、中空地下構造物本体1は鉄筋コンクリート製であって、前後方向に長い平面長方形状の上下床版1a、1bとこれらの上下床版1a、1bの両側端にその上下端をそれぞれ一体に連設してなる両側壁版1c、1dとで断面矩形状の函体に形成されてあり、その内部を前後端が全面的開口した通路2に形成している。まず、実施の形態1について説明する。
【0020】
〔実施の形態
、図に示すように、鉄筋コンクリート製の中空地下構造物本体1の上床版1aの上面は、全長に亘ってその幅方向の中央部から上床版1aの両側端に向かって下方に傾斜した傾斜面8、8に形成されてあり、さらに、上床版1aの上面における四方縁辺端部に一定高さを有する枠状周壁部9を突設している。そして、この枠状周壁部9によって囲まれた上床版1a上に、上面が該枠状周壁部9の上端面の高さにまで達するように透水性材料を積載して透水層10を形成してあり、この透水層10の上面を、枠状周壁部9の上端面に面一状に連続した平坦面10a に形成している。
【0021】
さらに、枠状周壁部9の両側壁部9c、9dにおいて、上記上床版1aの両側傾斜面8、8の下傾端部が達している下端部に、上床版1aの長さ方向に適宜間隔毎に複数個の排水孔11を設けている。なお、上記透水性材料としては、ポーラスなコンクリート又はバラス、或いはバラスをモルタル等でポーラスに結合した材料、砂材、礫材、その他の多孔性材料を使用することができる。このような透水材材料は接着剤或いはジベル筋等によって上床版1a上に固定するようにしもよい。
【0022】
また、上記枠状周壁部9における前後壁部9a、9b間上に、長さが中空地下構造物本体1の長さに略等しく且つ適宜幅を有する複数枚の薄鋼板等の金属板よりなる帯板材12を僅かな隙間13を介して順次並設してその前後端部を枠状周壁部9における前後壁部9a、9bに皿螺子等の適宜な固着具によって固定し、上記透水層10を被覆している。
【0023】
このように構成している中空地下構造物A1を線路下に、該線路20を横断する方向に埋設して地下通路2を形成した場合、上床版1aの上方の線路下の地盤30中に含まれる雨水等の水分は、隣接する帯板材12、12間の隙間13を通じて透水層10内に浸透し、上床版1aの両側傾斜面8、8上に達したのち、これらの傾斜面8、8を伝って枠状周壁部9の両側壁部9c、9dに流下し、この壁部9c、9dに設けている排水孔11を通じて外部の地盤中に排出される。従って、上床版1a上の土砂が噴泥状態になるのを防止して安全な交通を維持し得ると共に、地盤30の凍結、凍上を防止することができる。
【0024】
また、この中空地下構造物A1を線路下にパイプルーフ25と置換しながら埋設する場合、上床版1a上に積載している透水性材料が枠状周壁部9によって外部に漏出するのを確実に防止されると共に埋設後においてもその積載状態を保持し得るものであり、さらに、枠状周壁部9の前後壁部9a、9bの上端面間に架設、固定している上記帯板材12の上面と上記パイプルーフ25上に敷設している縁切板24の下面との摩擦力が小さいので、また、上記帯板材12は前後壁部9a、9bに亘って連続してバラス等の粒状物を被覆しているので、中空地下構造物A1を縁切板24の下面に沿って所定の位置まで円滑に推進、埋設することができる。
【0025】
〔実施の形態
、図は本発明の実施の形態を示すもので、上記実施の形態で示した中空地下構造物A1においては、上床版1aの傾斜面8、8上に直接、透水層10を設けているが、この実施の形態においては、上床版1aの傾斜面8、8上に一定厚みの断熱層5Aを設け、この断熱層5A上に透水層10を設けた構造としているものである。
【0026】
即ち、鉄筋コンクリート製の中空地下構造物本体1の上床版1aの上面は、全長に亘ってその幅方向の中央部から上床版1aの両側端に向かって下方に傾斜した傾斜面8、8に形成されてあり、さらに、上床版1aの上面における四方縁辺端部に一定高さを有する枠状周壁部9を突設し、この枠状周壁部9の両側壁部9c、9dの複数個所に排水孔11を設けている。そして、この枠状周壁部9によって囲まれた上床版1a上に断熱材からなる一定厚みの傾斜断熱層5Aを全面に亘って敷設してこの断熱層5Aの両側端部上面を上記排水孔11に連通させるように構成していると共に、この断熱層5A上に、上面が上記枠状周壁部9の上端面の高さにまで達するように上記実施の形態で示した透水性材料を積載して透水層10を形成し、この透水層10の上面を、枠状周壁部9の上端面に面一状に連続した平坦面10a に形成してなるものである。
【0027】
上記断熱層5Aとしては、発泡コンクリート、パーライトコンクリート、シンダーコンクリートなどを上床版1a上に打設して形成する断熱材、又は、発泡スチロール、発泡ポリスチレンなどの合成樹脂製断熱材からなり、予め、一定厚みを有する板状に成形してなる断熱材を上床版1aの上面全面に敷設し、接着剤によって上床版1aの上面に固定しているか、或いは、ジベル筋等の連結金具を上床版1aに打ち込むことによって固定している。
【0028】
なお、図示していないが、上記枠状周壁部9における前後壁部9a、9b間上に複数枚の帯板材12を隙間13を介して並設、固定して上記透水層10を被覆しておいてもよい。
【0029】
このように構成したので、この実施の形態における中空地下構造物A2によれば、この中空地下構造物A2を線路下に、該線路20を横断する方向に埋設して地下通路2を形成した場合、上床版1aの上方の線路下の地盤中に含まれる雨水等の水分を透水層10内に浸透させて断熱層5A上に到達させたのち、この断熱層5Aの傾斜面を伝って枠状周壁部9の両側壁部9c、9dに流下させ、この壁部9c、9dに設けている排水孔11を通じて外部の地盤中に排出させることができる。従って、上記実施の形態と同様に、上床版1a上の土砂が噴泥状態になるのを防止して安全な交通を維持し得ると共に、地盤30の凍結、凍上を防止することができる。
【0030】
また、断熱層5Aによって中空地下構造物本体1の地下通路2を流通する冷気が上床版1a上の地盤30に伝達するのを防止され、地盤30の凍結、凍上を防止することができる。
【0031】
なお、以上の実施の形態1、2においては、透水層10に浸透した雨水等の水分を外部に排出するための傾斜面として、上床版1aの幅方向の中央から両側端に向かって斜め下方に傾斜させているが、上床版1aの長さ方向の中央部から前後両端に向かって斜め下方に傾斜させておいてもよく、或いは、上床版1aの一方の端縁から他方の端縁に向かって斜め下方に傾斜させておいたり、上床版1aの前後端縁における一方の端縁から他方の端縁に向かって斜め下方に傾斜させておいてもよく、さらには、上床版1aの幅方向、長さ方向の中央部から四方端縁に向かって斜め下方に傾斜させておいてもよいものであり、要するに、上床版1a上から外部に向かって排水が可能となる方向に傾斜した傾斜面に形成しておけばよく、その傾斜面の下端に連通するように枠状周壁部9に排水孔11を設けておけばよい。
【0032】
また、断熱層を設けている上記の実施の形態においては、断熱層5Aの上面に電熱材を敷設しておき、該電熱材によって上床版1a上の地盤の凍結を防止するように構成しておいてもよい。
【0033】
なお、上記いずれの実施の形態1、2においても、中空地下構造物は公知の埋設方法によって線路下に埋設されるものであるが、その埋設方法を例えば、実施の形態の中空地下構造物A2について簡単に説明する。
【0034】
まず、図に示すように線路20を挟んで該線路20の両側方に築造すべき通路の長さ間隔を存して立坑21、22を掘削したのち、上面に縁切板24を載置してなる多数本の鋼製角パイプ23を一方の立坑21側から他方の立坑22間に貫通させるようにして線路20直下の地中の浅い部分に並列状態で水平に圧入、埋設して上記中空地下構造物A4と略同幅のパイプルーフ25を形成する(図、図参照)。
【0035】
角パイプ23の埋設作業は、例えば、その内部に配設したオーガスクリューによって前方の地盤を掘削しながら行い、さらに、隣接する角パイプ23同士は互いにその対向側面に突設した断面L字状の係合金具等を互いに係合させながら並列状態に埋設される。この際、角パイプ23上に載置している縁切板24の前端を角パイプ23の前端に溶接等によって一体的に固着した状態で埋設し、パイプルーフ25の形成後、その固着部分を切除すると共に縁切板24の後端を一方の立坑21側の適所に固定して縁切板24を不動にする。
【0036】
こうして両立坑21、22間の線路下にパイプルーフ25を形成したのち、一方の立坑21内に中空地下構造物A2を配設し、枠状周壁部9の前側壁部9a及び上床版1aの前面を上記パイプルーフ25の後端面に当接させ、図に示すように立坑21内において坑壁に反力支持板26を介して受止させた油圧ジャッキ27のピストンロッドを伸長させることにより中空地下構造物A2を推進させるようにする。この際、中空地下構造物A2の開口前端に刃口28を装着して該刃口28により前方の地盤を掘削しながら中空地下構造物A2を推進させ、パイプルーフ25を枠状周壁部9の前側壁部9a及び上床版1aで押し進めて中空地下構造物A2の上床版1aと置換させる。なお、図には、パイプルーフ25の後端面と中空地下構造物A2の前端面との間に矩形状の当枠29を介在させている。
【0037】
この当枠29をパイプルーフ25と中空地下構造物A4との間に介在させ、中空地下構造物A2の枠状周壁部9の前側壁部9aの上端面及び上床版1a上に断熱層5Aを介して積載している透水層10の平坦な上面を縁切板24の下面に摺接させた状態にして油圧ジャッキ27のピストンロッドを伸長させることにより中空地下構造物A4を推進させ、刃口28により前方地盤を掘削する一方、刃口28によって掘削されない地盤は中空地下構造物A2の内部の通路2を通じて適宜な掘削具により掘削する。
【0038】
中空地下構造物A2が一定長、地中に推進、埋入すると、反力支持板26を継ぎ足す等して油圧ジャッキ27の位置を前方に移動させ、再び、上記同様にして該油圧ジャッキ27を作動させることにより中空地下構造物A2を一定長、推進させる。なお、油圧ジャッキ27の押圧力で中空地下構造物A2を推進させる方法に替えて、他方の立坑22側からの牽引によって推進させてもよく、また、両方を併用してもよい。
【0039】
こうして、中空地下構造物A2を両立坑21、22間に亘って埋設すると、線路20を敷設した地盤30の下面に縁切板24を介して上床版1a上の透水層10が配設された状態となる。この縁切板24は、中空地下構造物A2の埋設後に抜き取り等により撤去してもよいが、図10に示すように透水層10上を被覆しておき、隣接する縁切板24間の隙間から雨水等の水分を透水層10に浸透させるように構成しておいてもよい。
【0040】
また、中空地下構造物A2の埋設後に、中空地下構造物A2の枠状周壁部9の両側壁部9c、9dの外側面に沿って排水溝32、32を形成して、上床版1a上の両側排水傾斜面8、8から排出される排水を上床版1aの両側方の地盤中に排出することなくこの排水水32、32に取り込み、通路2の開口端の道路側に排出するように構成しておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1を示す一部切欠簡略斜視図。
【図2】線路下に埋設した状態の上半部の縦断面図。
【図3】本発明の実施の形態2を示す一部切欠簡略斜視図。
【図4】線路下に埋設した状態の上半部の縦断面図。
【図5】線路の両側に立坑を設けた状態の縦断側面図。
【図6】パイプルーフを埋設した状態の縦断側面図。
【図7】その縦断正面図。
【図8】中空地下構造物を埋設中の簡略縦断側面図。
【図9】中空地下構造物を埋設した状態の縦断側面図。
【図10】排水溝を設けた中空地下構造物の縦断正面図。
【図11】従来例を示す簡略縦断側面図。
【符号の説明】
【0042】
A1、A2 中空地下構造物
1 中空地下構造物本体
1a 上床版
2 通路
5A 断熱層
8 傾斜面
9 枠状周壁部
10 透水層
11 排水孔
20 線路
30 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路下や道路下の地盤中に地下通路等の形成用として埋設される中空地下構造物において、上床版の上面を該上床版上から外部に向かって排水が可能となる方向に傾斜した傾斜面に形成していると共に上床版の上面における四方端縁部に一定高さを有する枠状周壁部を突設し、この枠状周壁部の下端部適所に上記傾斜面の下傾端から外部に通じた排水孔を設けてあり、さらに、上床版の上記傾斜面上に上面が上記枠状周壁部の上端面の高さにまで達するように透水性材料を積載して上面が平坦な透水層を形成していることを特徴とする埋設用中空地下構造物。
【請求項2】
上床版の傾斜面上に断熱層を介して透水層を形成し、断熱層の上面を排水口に連通させるように構成していることを特徴とする請求項に記載の埋設用中空地下構造物。
【請求項3】
上床版の上面に形成している傾斜面は、上床版の幅方向の中央部から両側端に向かって下方に傾斜した傾斜面であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の埋設用中空地下構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−247396(P2007−247396A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132352(P2007−132352)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【分割の表示】特願2002−352192(P2002−352192)の分割
【原出願日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】