説明

埋設筐

【課題】 振動や衝撃による上部本体の高さ変動を防止することができ、施工や嵩上げに際して、地中に埋設した状態でも上部本体の上下位置を容易に調節することができる埋設筐を提供する。
【解決手段】 雌ねじ部を有する外部本体11と、鉄蓋受け枠部および雄ねじ部を有する内部本体15とを備える。内部本体の開口を通して移動可能な押圧部材35と、押圧部材の傾斜面に沿って移動可能であり、雌ねじ孔を有する作動部材38と、雌ねじ孔にねじ係合するとともに上下方向の移動を禁止されて回転可能な雄ねじ部材42と、を有する。雄ねじ部材を回転させて作動部材を移動させることにより、押圧部材を半径方向外方へ移動させて外部本体に押付けることにより内部本体を回り止め状態で保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道やガスの制御弁などの地下設備の保護および保守点検のために地中に設置される埋設筐に関する。
【背景技術】
【0002】
地下には水道、ガス、電気等を供給するための布設管が埋設されている。これらの布設管には制水弁などの制御弁やコネクターやブレーカー等が適宜接続されており、これらの地下設備を地上から操作したり、保守点検したり、さらにはこれらを保護するとともに設置場所を明示する必要がある。この目的のために、中空構造の埋設筐が地中に設置されている。また、マンホールの場合にも同様の埋設筐が設定されている。
【0003】
埋設筐の上端開口部には鉄蓋を開閉可能に嵌合支持するための受け枠部が設けられている。この受け枠部は、埋設筐体と一体に設けられる場合や、別の部材で形成される場合がある。鉄蓋は、その上面が路面と略同一面となるようにして受け枠部の開口部に嵌合状態(閉じ状態)で支持される。この鉄蓋は、受け枠部に対して、兆番や連結棒やチェーン等を介して開閉可能に取り付けられている。
【0004】
埋設筐として、地下に埋め込まれて内部に地下設備の収納空間を形成する外部本体と、上端部に鉄蓋を支持するための受け枠部を有する内部本体とを備え、上部本体を下部本体に対してねじ係合することにより高さ調節可能に接続する構成のものが使用されている。かかる埋設筐は、上部本体を回転させるだけで上端高さ(鉄蓋受け枠部の高さ)を調節できることから、施工時における高さ調節および使用により沈下したときの嵩上げに便利である。このような埋設筐は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなねじ係合された上部本体と下部本体からなる従来の埋設筐では、施工時または使用状態で上部本体の高さ調節(嵩上げ、嵩下げ)を行う際に上部本体を回転させる必要があることから、土圧による回転抵抗が大きく調節作業が困難である。また、回転抵抗を減少させるためには上部本体の周囲を堀り返さねばならず、いずれにしても作業が煩雑であった。
【0006】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、振動や衝撃による上部本体の高さ変動を防止することができ、施工や嵩上げに際して、地中に埋設した状態でも上部本体の上下位置を容易に調節することができる埋設筐を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地面と略同一高さの上端部に鉄蓋が装着される埋設筐において、内周面に雌ねじ部が形成された筒状の外部本体と、外周面に形成されて前記雌ねじ部とねじ係合可能な雄ねじ部を有するとともに上端部に鉄蓋受け枠部を有する筒状の内部本体と、前記鉄蓋受け枠部に支持される鉄蓋と、を備え、前記内部本体に形成された開口を通して半径方向に移動可能に該内部本体に装着された押圧部材と、前記押圧部材に形成された半径方向の傾斜面に沿って摺動することで半径方向斜め方向に移動可能に装着されるとともに、上下方向に貫通する雌ねじ孔を有する作動部材と、前記作動部材の雌ねじ孔にねじ係合するとともに前記内部本体に上下方向の移動を禁止された状態で回転可能に支持された雄ねじ部材と、を有し、前記雄ねじ部材を回転させて前記作動部材を上下方向に移動させることにより、前記傾斜面を介して前記押圧部材を半径方向に移動させる構成とし、前記雄ねじ部材を回転させて前記押圧部材を半径方向外方へ移動させ、該押圧部材を前記外部本体に押付けることにより、前記内部本体を該外部本体に対して回り止め状態で保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動や衝撃による上部本体の高さ変動を防止することができ、施工や嵩上げに際して、地中に埋設した状態でも上部本体の上下位置を容易に調節することができる埋設筐が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る埋設筐の中央部縦断面図である。
【図2】一実施形態に係る埋設筐を鉄蓋を省いて示す平面図である。
【図3】図1中の外部本体の中央部縦断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図1中の内部本体の中央部縦断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】押圧機構の押圧状態の縦断面図である。
【図8】図7中の線8−8から見た押圧機構の正面図である。
【図9】押圧機構の押圧解除状態の縦断面図である。
【図10】一実施形態に係る埋設筐の押圧機構を操作するときの状態を鉄蓋を省いて示す中央部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。図1は一実施形態に係る埋設筐の中央部縦断面図である。図2は一実施形態に係る埋設筐を鉄蓋を省いて示す平面図である。図3は図1中の外部本体の中央部縦断面図である。図4は図3の平面図である。図5は図1中の内部本体の中央部縦断面図である。図6は図5の平面図である。図7は押圧機構の押圧状態の縦断面図である。図8は図7中の線8−8から見た押圧機構の正面図である。図9は押圧機構の押圧解除状態の縦断面図である。図10は一実施形態に係る埋設筐の押圧機構を操作するときの状態を鉄蓋を省いて示す中央部縦断面図である。
【0011】
水道、ガスあるいは電気などの布設管の途中に設けられる制御弁などの埋設機器(地下設備)の近傍にはコンクリートまたはレンガ等で作られた座台(不図示)が埋め込まれており、この座台上に筒状の外部本体11が支持されている。外部本体11は、地中に埋設されており、必要に応じて座台に対しボルト等で連結固定しても良い。外部本体11は上下方向の軸心を有する上下端開放の筒状の中空部材であり、その内周面には雌ねじ部12が形成されており、下端部には外側へ張り出したフランジ部13が形成されている。外部本体11の内部には、上下端開放の筒状の内部本体15が上下位置調節可能にねじ係合されている。すなわち、内部本体15の外周面の下半部の所定高さ範囲に形成された雄ねじ部16が外部本体11の雌ねじ部12にねじ係合され、治具等により内部本体15を外部本体11に対して回転することにより、内部本体15を上下方向に移動させることができる。
【0012】
内部本体15の上端部には、開口部18を有する鉄蓋受け枠部17が形成されている。図1に示すように、鉄蓋20は開口部18の周縁によって開閉可能に嵌合支持されている。図示の例では、鉄蓋20は両端で係合する棒状の連結部材21からなるヒンジを介して鉄蓋受け枠部17に開閉可能に自在連結されている。かかる棒状の連結部材21で連結することで、鉄蓋20を鉄蓋受け枠部17に連結したまま、開放状態にして作業を行うことができる。また、鉄蓋20の連結部材21と反対側の端部近傍には、揺動可能に支持された錘22が当接することにより自動閉塞される開放可能な治具挿入孔(開口)23が形成されている。治具または工具を開口23の周縁部に係合させて持ち上げることにより、鉄蓋20を開放させることができる。外部本体11の上端部には、内部本体15との間からの土砂流入を防止するための環状のゴム状弾性体からなる封止部材24が圧入嵌合または接着等により取り付けられている。
【0013】
内部本体15の雄ねじ部16が形成された高さ領域の内周面には、内部本体15を外部本体に対して回り止め状態で固定するための押圧機構30が設けられている。この押圧機構30は、図示の例では、内部本体15の内周面の円周方向3等分の位置、すなわち3箇所に設けられている。各押圧機構30は同じ構成をしている。次に、押圧機構30について説明する。なお、ここでは1つの押圧機構30について説明するが、他の押圧機構もそれぞれ同じ構成を有し、同様に作用するものである。
【0014】
内部本体15の内周面には、断面が長方形をした内壁面からなる半径方向のガイド面31を構成する水平方向の貫通空洞32を有するガイド部33が形成されている。貫通空洞32は、内部本体15を貫通して外部本体11の内部へ開口し(開口34)、内部本体15の内面へ連通している。前記貫通空洞32の内部には、半径方向のガイド面31に沿って移動可能な押圧部材35が装着されている。押圧部材35は、半径方向外方へ移動したとき、開口34を通して外部本体11内へ突出し、外部本体11の内面に押付けることが可能に装着されている。
【0015】
押圧部材35には、上下方向に貫通するとともに内部本体15の半径方向に傾斜したガイド面を構成する傾斜面を有する傾斜貫通孔36が形成されている。この傾斜貫通孔36は、断面が長方形であり、半径方向に下方外方へ傾斜している。傾斜貫通孔36には、同じ断面形状(長方形断面)を有するブロック状の作動部材38が摺動自在に嵌合装着されている。作動部材38は、半径方向内外面が傾斜貫通孔36の傾斜面(ガイド面)と同様に半径方向に傾斜しており、上下方向に移動すると同時に半径方向斜め方向に移動するように嵌合装着されている。図示の例では、作動部材38が上方へ移動すると押圧部材35が半径方向外方へ移動し、作動部材38が下方へ移動すると押圧部材35が半径方向内方へ移動するように構成されている。
【0016】
作動部材38には、雌ねじを有し上下方向に貫通する孔(雌ねじ孔と称する)39が形成されている。また、内部本体15の内周面に形成されたガイド部33には上下方向の貫通孔41が形成されている。この貫通孔41は、貫通空洞32が形成された部分を貫通しており、上部貫通孔41aと下部貫通孔41bで形成されている。そこで、作動部材38の雌ねじ孔39のねじにねじ係合するとともに、ガイド部33の上部貫通孔41aおよび下部貫通孔41bに挿通されたボルト状の雄ねじ部材42が取り付けられている。雄ねじ部材42は、その頭部43を上にし、その下部はガイド部33の下面から下方へ突出しており、下方突出部にナット44がねじ係合されている。ナット44は割りピン等の止めピン45により雄ねじ部材42に対して所定決めされている。
【0017】
また、雄ねじ部材42の頭部43とガイド部33の上面との間にワッシャ(座金)46aが装着され、ナット44とガイド部33の下面との間にワッシャ46bが装着されている。そして、ナット44は、ガイド部33を締め付けない位置に位置決め装着されており、組付け状態で雄ねじ部材42を工具等で回転させると該雄ねじ部材は自由に回転する。一方、雄ねじ部材42は作動部材38とねじ係合しており、従って、雄ねじ部材42を回転させることにより作動部材38を上下方向に移動させることができる。すなわち、雄ねじ部材42は、作動部材38の雌ねじ孔39にねじ係合されるとともに、内部本体15に上下方向の移動を禁止された状態で回転可能に支持されている。従って、雄ねじ部材42を一方へ回転させることにより作動部材38を下方へ移動させ、これにより、押圧部材35を貫通空洞32のガイド面31に沿って半径方向内方へ(内部本体15の中心に向けて)移動させることができる。また、雄ねじ部材42を他方へ回転させることにより作動部材38を上方へ移動させ、これにより、押圧部材35を貫通空洞32のガイド面31に沿って半径方向外方へ移動させ、開口34を通して外部本体11の内面に衝当させて押付けることができる。
【0018】
雄ねじ部材42を一方へ回転させ、押圧部材35を半径方向外方へ移動させて外部本体11に押付けることにより、内部本体15を外部本体11に対して回り止め状態で保持することができる。つまり、内部本体15を回り止め状態で押圧固定することができる。また、雄ねじ部材42を反対方向へ回転させ、押圧部材35を半径方向内方へ移動させることにより、内部本体15の外部本体11に対する回り止め状態を解除することができる。前述のように内部本体15には、以上説明した押圧機構30が円周方向複数箇所(図示の例では3箇所)に設けられる。図10に示すように、鉄蓋20を開放し、地上から専用工具(工具または治具でも可)50によって、各押圧機構30ごとに順次雄ねじ部材42を回転させることにより、内部本体15の外部本体11に対する回り止め状態を解除したり押圧固定していく。これにより、振動や衝撃による内部本体の高さ変動を防止するとともに、施工および嵩上げに際して、地中に埋設した状態でも上部本体の上下位置を容易に調節することができる。
【0019】
以上説明した実施形態によれば、雄ねじ部材42を回転させて作動部材38を上下方向に変位させることにより、傾斜面(傾斜貫通孔36)を介して押圧部材35を半径方向に移動させるように構成されている。そして、雄ねじ部材42を回転させて押圧部材35を半径方向外方へ移動させ、押圧部材35を外部本体11に押付けることにより、内部本体15を外部本体11に対して回り止め状態で保持するように構成されている。さらに、雄ねじ部材42を反対方向に回転させて押圧部材35を半径方向内方へ移動させることにより、内部本体15の外部本体11に対する回り止め状態を解除するように構成されている。かかる構成によれば、前述のように、振動や衝撃による上部本体の高さ変動を防止することができ、施工や嵩上げに際して、地中に埋設した状態でも上部本体の上下位置を容易に調節することができる埋設筐が提供される。
【符号の説明】
【0020】
11 外部本体
12 雌ねじ部
15 内部本体
16 雄ねじ部
17 鉄蓋受け枠部
20 鉄蓋
30 押圧機構
33 ガイド部
34 開口
35 押圧部材
36 傾斜貫通孔
38 作動部材
42 雄ねじ部材
44 ナット
45 止めピン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開昭60−043537号公報
【特許文献2】特開平10−292409号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と略同一高さの上端部に鉄蓋が装着される埋設筐において、
内周面に雌ねじ部が形成された筒状の外部本体と、外周面に形成されて前記雌ねじ部とねじ係合可能な雄ねじ部を有するとともに上端部に鉄蓋受け枠部を有する筒状の内部本体と、前記鉄蓋受け枠部に支持される鉄蓋と、を備え、
前記内部本体に形成された開口を通して半径方向に移動可能に該内部本体に装着された押圧部材と、
前記押圧部材に形成された半径方向の傾斜面に沿って摺動することで半径方向斜め方向に移動可能に装着されるとともに、上下方向に貫通する雌ねじ孔を有する作動部材と、
前記作動部材の雌ねじ孔にねじ係合するとともに前記内部本体に上下方向の移動を禁止された状態で回転可能に支持された雄ねじ部材と、
を有し、
前記雄ねじ部材を回転させて前記作動部材を上下方向に移動させることにより、前記傾斜面を介して前記押圧部材を半径方向に移動させる構成とし、
前記雄ねじ部材を回転させて前記押圧部材を半径方向外方へ移動させ、該押圧部材を前記外部本体に押付けることにより、前記内部本体を該外部本体に対して回り止め状態で保持することを特徴とする埋設筐。
【請求項2】
前記雄ねじ部材を反対方向に回転させて前記押圧部材を半径方向内方へ移動させることにより、前記内部本体の前記外部本体に対する回り止め状態を解除することを特徴とする請求項1に記載の埋設筐。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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