説明

埋設管改築工法

【課題】改築する既設コンクリート管及び地山を安定化させ、効率良く鋼製継輪を備えた既設コンクリート管3改築が可能な埋設管改築工法を提供することを目的とする。
【解決手段】地下に埋設された既設コンクリート管3の始端位置と終端位置に発進立坑1と到達立坑2を掘削する工程と、発進立坑にカッターヘッドを備えた掘進機6を配置する工程と、既設コンクリート管の鋼製継輪5を発進立坑側から順次除去する鋼製継輪除去工程と、鋼製継輪を除去した部分に地山保護材30充填し固化させる鋼製継輪除去跡空隙保護工程山留材充填固化工程と、掘進機を発進させ、鋼製継輪が除去され地山保護材が充填された既設コンクリート管を順次破砕、除去する既設コンクリート管破砕除去工程と、既設コンクリート管破砕除去工程の進展に応じて新設管4を推進埋設する新設管推進埋設工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に改築するための埋設管改築工法に関し、特に連結部に鋼製継輪を有するコンクリート埋設管の改築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−291565号公報には、コンクリート部分を破砕しつつ鉄筋を露出させ、露出した鉄筋をカッターで細断するカッターヘッドを用いてコンクリート及び鉄筋からなる既設埋設管を破砕し、新設管を順次設置する埋設管改築工法が開示されている。
【0003】
また、特開2002−349756号公報には、更新を要する既設埋設管の始端位置に発進坑を、同終端位置に到達坑を掘削し、前記発進坑内に設置した推進装置に既設埋設管の管端外周に接触して推進し、既設埋設管の単位長以上に推進した段階で既設埋設管の内側を把持し既設埋設管を運搬する機構を介し、既設埋設管を単位長毎に破砕せず更新管の内部を通し前記発進坑内に回収すると共に、埋設管を推進装置終端に継足すことにより新旧の埋設管を入れ替える既設埋設管の更新方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291565号公報
【特許文献2】特開2002−349756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2006−291565号公報に開示された埋設管改築工法においては、鉄筋は切断可能であるが、厚み4〜6mmの鋼製継輪を備えた既設コンクリート管の改築では、鋼製継輪を切断することができないという問題を有する。
【0006】
また、特開2002−349756号公報に開示された埋設管改築工法においては、既設コンクリート管を単位長毎に破砕せず更新管の内部を通し前記発進坑内に回収するため、既設コンクリート管を切断する単位長さは発進立坑の直径により左右されるため、効率良く既設コンクリート管の回収が実施できないという問題を有する。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、改築する既設コンクリート管及び地山を安定化させ、効率良く鋼製継輪を備えた既設コンクリート管の改築が可能な埋設管改築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の埋設管改築工法は、前記課題を解決するために、地下に埋設された既設コンクリート管の始端位置と終端位置に発進立坑と到達立坑を掘削する工程と、発進立坑にカッターヘッドを備えた掘進機を配置する工程と、既設コンクリート管の鋼製継輪を発進立坑側から順次除去する鋼製継輪除去工程と、鋼製継輪を除去した空隙部分を地山保護材により保護する鋼製継輪除去跡空隙保護工程と、掘進機を発進させ、鋼製継輪が除去された空隙は地山保護材により地山保護されている部分を含めて既設コンクリート管を順次破砕、除去する既設コンクリート管破砕除去工程と、既設コンクリート管破砕除去工程の進展に応じて新設管を推進埋設する新設管推進埋設工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の埋設管改築工法は、鋼製継輪除去工程で、回転刃の向きが可変で軸方向及び周方向に移動可能な胴切りカッター装置を用い、鋼製継輪の周方向及び軸方向に切断して鋼製継輪を切断除去することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の埋設管改築工法は、鋼製継輪除去工程で、作業員が既設コンクリート管内に入り切断、破砕工具を用いて実施することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の埋設管改築工法は、鋼製継輪除去工程、鋼製継輪除去跡空隙保護工程、既設コンクリート管破砕除去工程及び新設管推進埋設工程を圧気下で実施することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の埋設管改築工法は、既設コンクリート管破砕除去工程で、掘進機の掘進切羽前方の既設コンクリート管内に移動可能な土圧調整板を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
地下に埋設された既設コンクリート管の始端位置と終端位置に発進立坑と到達立坑を掘削する工程と、発進立坑にカッターヘッドを備えた掘進機を配置する工程と、既設コンクリート管の鋼製継輪を発進立坑側から順次除去する鋼製継輪除去工程と、鋼製継輪を除去した空隙部分に地山保護材により保護する鋼製継輪除去跡空隙保護工程と、掘進機を発進させ、鋼製継輪が除去された空隙は地山保護材により地山保護されている部分を含めて既設コンクリート管を順次破砕、除去する既設コンクリート管破砕除去工程と、既設コンクリート管破砕除去工程の進展に応じて新設管を推進埋設する新設管推進埋設工程と、を有することにより、鋼製継輪を予め除去し、除去跡を地山保護材により地山を保護することにより通常のカッターヘッドを有する掘進機で継輪部分跡も含めて既設コンクリート管を破砕除去することが可能となる。
鋼製継輪除去工程で、回転刃の向きが可変で軸方向及び周方向に移動可能な胴切りカッター装置を用い、鋼製継輪の周方向及び軸方向に切断して鋼製継輪を除去することにより、鋼製継輪の切断除去を効率良く実施することが可能となる。
鋼製継輪除去工程で、作業員が既設コンクリート管内に入り切断、破砕工具を用いて実施することにより、鋼製継輪の除去を状況に応じて臨機応変に実施することが可能となる。
鋼製継輪除去工程、鋼製継輪除去跡空隙保護工程、既設コンクリート管破砕除去工程及び新設管推進埋設工程を圧気下で実施することにより、地山からの漏水等を防止しドライな環境で埋設管改築作業を実施することが可能になる。
既設コンクリート管破砕除去工程で、掘進機による掘進切羽前方の既設コンクリート管内に移動可能な土圧調整板を設置することにより、掘進機による既設コンクリート管破砕除去の際発生する切羽圧力の変動を小さくして、安定した施工が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の埋設管改築工法を図により説明する。図1は、本発明の埋設管改築工法の実施形態を示す概略図である。
【0016】
既設コンクリート管3は鉄筋コンクリート製でその連結部に厚さ4〜6mmの鋼製継輪5が設置されている。改築すべき既設コンクリート管3の始端位置と到達位置に発進立坑1と到達立坑2を掘削する。
【0017】
発進立坑1に掘進機6を設置する。掘進機6は、掘進機本体7の前面に駆動モータ8で回転駆動する面板9が設置され、面板に複数のローラビット10が回転自在に配置される。掘進機6の詳細については後述する。発進立坑1には、掘進機6の既設コンクリート管破砕除去工程の進展に伴い新設管4を敷設するための元押ジャッキ16が設置される。
【0018】
改築工事において、鋼製継輪除去工程で地山が一時期露出し地下水が浸入する恐れがある場合、到達立坑2に圧気ロック13を設置する。その場合、掘進機6後部にエアロックドアを有する圧気胴11を設置し、地上に設置した給気設備14から給気管15を通して圧力空気が供給して改築する既設コンクリート管3内を圧気状態にする。地下水の浸入の問題の無い改築工事においては圧気状態にしなくても良い。
【0019】
掘進機6による既設コンクリート管破砕除去工程の前に、既設コンクリート管3の連結部に設置された掘進機6では切断除去が困難な鋼製継輪5の除去工程を順次実施する。鋼製継輪除去工程は、作業員が既設コンクリート管3内に入り、各種工具を用いて切断除去しても良い。除去された鋼製継輪5は、掘進機6を通して発進立坑1側に搬送しても良いが、設備の少ない到達立坑2側から搬送するのが望ましい。
【0020】
図2、図3及び図4は、鋼製継輪除去工程をより効率良く実施するために胴切りカッター装置17を用いる実施形態を示す。胴切りカッター装置17は軸方向の前後に所定間隔をおいて配置される一対の支柱部材18を備えている。支柱部材18は、図4に示されるように油圧などにより伸縮自在とされる左右の垂直部19と、左右の垂直部19を連結する水平部20を備えている。左右の垂直部の上下端には、既設コンクリート管3の内壁に押圧され支柱部材18を固定するための接地部21が設けられる。左右の垂直部の下端には、胴切りカッター装置17を既設コンクリート管3内で移動可能にするため出没自在な移動輪(図示せず)を設けても良い。
【0021】
前後の支柱部材18の水平部20間を軸方向に伸縮可能な水平連結部材22で連結する。水平連結部材22にカッター保持部材23が周方向駆動手段24により周方向に回動自在に設置される。カッター保持部材23には周方向に伸縮自在にカッター25が設置される。カッター保持部材23には、カッターの向きを変えるため回動自在にされる。また、カッター保持部材23には、カッター25を回転駆動するカッター駆動手段を備えている。
【0022】
胴切りカッター装置17による鋼製継輪5の除去工程は、先ず、支柱部材18をカッター25が鋼製継輪5の位置に来るよう移動する。次に支柱部材18の垂直部19を伸ばし上下の接地部21を既設コンクリート管3の内壁に押圧し胴切りカッター装置17を固定する。次に、カッター保持部材23を回動させ、カッターの向きが図3の位置になるようにする。カッター25を周方向に押し付けながら回転駆動すると共に、周方向駆動手段24により周方向に移動させ、鋼製継輪5の軸方向の両端部を既設コンクリート管3と一緒に切断する。
【0023】
鋼製継輪5の両端部切断が終了すると、カッター保持部材23を回動させ、カッターの向きが図2の位置になるようにする。カッター25を周方向に押し付けながら回転駆動すると共に、水平連結部材22の伸縮手段を駆動してカッター25を軸方向に移動させ、鋼製継輪5を軸方向に切断する。鋼製継輪5の軸方向の切断は、両端部が切断された鋼製継輪5が除去しやすい幅となるように設定する。1か所の鋼製継輪除去工程が終了すると、胴切りカッター装置17を、次の鋼製継輪5の除去位置に移動する。
【0024】
胴切りカッター装置17による鋼製継輪除去工程が終了すると、鋼製継輪5が除去された空所に地山保護材30を充填し固化させる工程を実施する。鋼製継輪除去跡空隙保護工程を図5により説明する。
【0025】
鋼製継輪5が除去された空所の既設コンクリート管3の内壁に型枠27を型枠支持部材28を介して設置する。型枠27が設置された鋼製継輪5が除去された空隙に地山保護材供給管29から地山保護材30を供給し充填し固化させる。地山保護材30としては速硬性のセメントミルク等を用いる。充填された地山保護材30が固化後、型枠27を撤去する。
鋼製継輪除去跡空隙保護工程で、地山保護材としてセメントミルクなどを用いる替りに前もって用意した山留ピースなどを用いることもよい。
【0026】
鋼製継輪除去工程と鋼製継輪除去跡空隙保護工程は、続く既設コンクリート管破砕除去工程で掘進機6による既設コンクリート管3の破砕に先行して実施される。地山保護材30の固化の時間を考慮し、鋼製継輪除去工程と鋼製継輪除去跡空隙保護工程を掘進機6の掘進切羽から既設コンクリート管3の2又は3本の前方の連結部で先行実施するのが望ましい。また、掘進機6による既設コンクリート管破砕除去工程に先立ち、改築する既設コンクリート管3の全ての鋼製継輪5に対して鋼製継輪除去工程と鋼製継輪除去跡空隙保護工程を実施しても良い。
【0027】
次に、既設コンクリート管破砕除去工程に用いる掘進機6の一実施形態を図6、図7により説明する。
【0028】
掘進機6は円筒形の掘進機本体7の前端に中央開口31を有するリング状の面板9を備えている。掘進機本体7の外周には先端部が掘進機本体の前端より前に延びる山留円筒部材32が設置される。山留円筒部32の先端にスリットカッター33を設置する。リング状の面板9には複数のローラビット10が回転自在に配置されカッターヘッドを構成する。リング状の面板9は、掘進機本体7内に設置した駆動モータ8により回転駆動する。ローラビット10は既設コンクリート管3及び地山に押圧されながらリング状の面板9の回転に伴い自転し、既設コンクリート管、地山及び地山保護材30を掘削する。鋼製継輪5が除去され、その空隙に地山保護材30が充填固化されているので、掘進切羽を安定化させて効率よく既設コンクリート管破砕除去工程を実施することが可能となる。
【0029】
掘進機6による既設コンクリート管破砕除去工程で、掘進機6の掘進切羽前方の既設コンクリート管3内に土圧調整板35を移動自在に設置する。土圧調整板35は、掘進機6による既設コンクリート管3の破砕作業に伴う切羽の偏圧や局部圧に対応し既設コンクリート管3内を前後動することにより切羽を安定させる機能を有する。
【0030】
リング状の面板9に形成された中央開口31は、ローラビット10で切断、破砕された既設コンクリート管及び地山等の掘削物を掘進機本体7内に取り込むためと、作業員が鋼製継輪除去工程及び鋼製継輪除去跡空隙保護工程において、既設コンクリート管3内に出入する際の出入り口として機能することもできる。
【0031】
掘進機本体7内に取り込まれた掘削物は、掘削物搬送手段34を介して発進立坑1から坑外に搬送される。掘進機本体7の後部には、圧気胴11、セミシールド胴12を連結する。圧気胴11及びセミシールド胴12の連結の前後は逆であっても良い。圧気胴11は、改築作業中既設コンクリート管3内を圧気状態にするためのものであり前後に少なくとも2枚のエアロックドア(図示せず)を備えている。セミシールド胴21にはセミシールドジャッキ(図示せず)を備えており、掘進機本体7を掘進切羽側に押圧すると共に、掘進機本体7の掘進方向を制御する機能を有している。しかし、圧気胴11及びセミシールド胴12は必要に応じて設置するものであり、地山からの地下水の浸入の恐れが無い場合や、掘進機本体7の掘進切羽への押圧を元押しジャッキ16のみで施工できる場合は省略することが可能である。
【0032】
既設コンクリート管破砕除去工程の進展に伴い、新設管推進埋設工程を実施する。新設管推進埋設工程は、発進立坑1に設置した元押しジャッキ16により実施する。
【0033】
以上のように本発明の埋設管改築工法によれば、鋼製継輪を予め除去し、除去跡に鋼製継輪除去跡空隙保護工程で地山保護材を充填固化することで既設コンクリート管及び地山を安定化させ、通常のカッターヘッドを有する掘進機で既設コンクリート管を破砕除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1: 発進立坑、2:到達立坑、3:既設埋設管、4:新設管、5:鋼製継輪、6:掘進機、7:掘進機本体、8:駆動モータ、9:面板、10:ローラビット、11:圧気胴、12:セミシールド胴、13:圧気ロック、14:給気設備、15:給気管、16:元押しジャッキ、17:胴切りカッター装置、18:支柱部材、19:垂直部、20:水平部、21:接地部、22:水平連結部材、23:カッター保持部材、24:周方向駆動手段、25:カッター、26:カッター駆動手段、27:型枠、28:型枠支持部材、29:山留材供給管、30:地山保護材、31:中央開口、32:山留円筒部、33:スリットカッター、34:掘削物搬送手段、35:土圧調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設された既設コンクリート管の始端位置と終端位置に発進立坑と到達立坑を掘削する工程と、
発進立坑にカッターヘッドを備えた掘進機を配置する工程と、
既設コンクリート管の鋼製継輪を発進立坑側から順次除去する鋼製継輪除去工程と、
鋼製継輪を除去した部分に地山保護材を充填し固化させる鋼製継輪除去跡空隙保護工程山留材充填固化工程と、
掘進機を発進させ、鋼製継輪が除去され地山保護材が充填された既設コンクリート管を順次破砕、除去する既設コンクリート管破砕除去工程と、
既設コンクリート管破砕除去工程の進展に応じて新設管を推進埋設する新設管推進埋設工程と、
を有することを特徴とする埋設管改築工法。
【請求項2】
鋼製継輪除去工程で、回転刃の向きが可変で軸方向及び周方向に移動可能な胴切りカッター装置を用い、鋼製継輪の周方向及び軸方向に切断して鋼製継輪を切断除去することを特徴とする請求項1に記載の埋設管改築工法。
【請求項3】
鋼製継輪除去工程で、作業員が既設コンクリート管内に入り切断、破砕工具を用いて実施することを特徴とする請求項1に記載の埋設管改築工法。
【請求項4】
鋼製継輪除去工程、鋼製継輪除去跡空隙保護工程、既設コンクリート管破砕除去工程及び新設管推進埋設工程を圧気下で実施することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の埋設管改築工法。
【請求項5】
既設コンクリート管破砕除去工程で、掘進機の掘進切羽前方の既設コンクリート管内に移動可能な土圧調整板を設置することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の埋設管改築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251330(P2012−251330A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123317(P2011−123317)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(598042574)株式会社推研 (10)
【Fターム(参考)】