説明

埋込み可能なデバイス、埋込み物の領域中に局在的な電磁場を発生させるシステム、及びコイル配置

【課題】骨に固定される埋込み可能なデバイスを提供する。
【解決手段】骨に固定される埋込み可能なデバイスであって、少なくとも2つの貫通穴(14)を備える導電性ベース体(10、12)と、少なくとも一対のシャフト形の接触手段(16)とを具備する。埋込まれた状態で、各接触手段は、ベース体の貫通穴を貫通すると共に骨(18)の一部を貫く。各接触手段の表面が、第1及び第2の導電性表面部分(20、22)、並びに導電性表面部分を互いから分離する電気絶縁表面部分(24)を備え、第1の導電性表面部分(20)がベース体に電気的に接触し、一方、第2の導電性表面部分(22)がベース体に対して電気的に絶縁される。各接触手段が各接触手段の内部にコイル配置(26)を含み、それによって各接触手段の導電性表面部分が、電気的に結合され、一対のコイル配置が逆方向に巻かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に固定される埋込み可能なデバイス、埋込み物の領域中に局在的な電磁場を発生させるシステム、及びこの接続で有利に利用できるコイル配置に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑骨折した又は病的に破壊された骨の場合には、本来の機能的形状の修復又は保護は、骨の生理的再生に不可欠な前提条件である。この接続では、必要な理学療法の運動を含む筋肉及び腱の緊張によって引き起こされる張りに耐えるために、損傷を受けていない骨切片又は骨断端をねじ固定することによって欠損をブリッジする金属埋込み物が、60年間以上使用されており、今なおますます使用されている。骨の手術に関するこの処置は、「運動安定骨接合(exercise−stable osteosynthesis)」と呼ばれる。
【0003】
生理学的な軸圧に対しての欠損管状骨の形状保護は、ひねり(ねじれ)に対して骨片を横方向のねじ固定によりその遠位端及び近位端で固定する金属筒を関節と関節の間の長骨の髄腔の中に埋込むことによって実現される。髄内釘の発明者、外科医Gerhard KuntscherにちなんでKuntscher釘とも呼ばれる髄内釘の主要な適用領域は、長骨(脛骨、大腿骨及び上腕骨)の中央1/3の病変部である。
【0004】
関節近傍の病変部、特に多断片の病変部の安定化については、髄内釘は不適当である。これらの場合は、形状の再建は、骨及び骨の断片をそれらの外面に取付けられるCo合金、Cr合金、Mo合金及びチタン合金などの耐食鋼又は合金から成る支持プレートによりねじ固定することによって試みられる。骨固着用埋込み物は、高い電気伝導率を有するチタンニオブオキシナイトライト(titanium niobium oxinitrite)などの生体適合性の被覆物を備えてよい。軸圧力によって張られる髄内釘とは対照的に、長骨の軸に対して横方向に螺着される支持プレートは、主に屈曲によって応力を受ける。したがって、支持プレートの支持の効果は、支持プレートの疲労強度に依存すると共にその疲労強度によって制限される。したがって、支持プレートの骨接合の問題は、以下の通りである。所与の材料関連特性及び形状関連特性については、骨での支持プレート及びそのねじの固定は、支持金属の弾性力が終わりになる前に適時負荷安定の骨の硬化によって骨の治療と埋込み物の破損の間の競争に勝つために要求される。
【0005】
より大きな容積の異物の埋込み物を埋込むことに関係がある、骨の治療の別の厄介な問題は、細菌感染である。細菌感染は、骨の皮膜(骨膜)の中で、及び一般には埋込み物の周囲の薄い軟部組織被覆の中で血管の永久変位と共に発達する。抗生物質に対する特定の病原菌(黄色ブドウ球菌)の耐性の増大と共に、中心的な医薬の問題が発生し、この問題はしばしば、例えば下肢領域の切断によって「解決」できるだけである。統計上の数字によれば、遠位の脛骨及び足の領域における10%に達する切断率が示される。この悲惨な傾向は、マグネトダイン(Magnetodyn)による方法を用いることによって防ぐことができることが、整形及び外傷外科の臨床中に非生物的なシチュエーションの中で30年間以上示されている。最近、特にこの3〜4年は、耐性菌の場合はマグネトダインによる方法の電磁場の適用によって実現される殺菌効果及び抗生作用の活性化が、基礎実験においてin vitroで成功裏に証明され得、それにより慢性的に感染した骨の欠損の場合に臨床中で実証された成果が説明され得る。
【0006】
埋込まれた骨支持プレート及び骨ねじを、二次コイル、いわゆるキャリアの出力に対するそれらの接触を用いる交流電極として利用することは、DT 1 918 299の中で既に説明された。
【0007】
DT 26 11 744 A1によれば、磁気力学的に誘導される、マグネトダインによる方法の電気骨刺激(electro−osteostimulation)の技術は、人工股関節のシャフト及びソケットの中に組み入れられた。
【0008】
髄内釘の中空円筒の中に二次コイル及び電極を含む電気髄内釘(electro−intermedullary nail)は、DE 26 36 818の中に記載された。
【0009】
DE 199 28 449 C1は、ねじシャフトに電気的に接触する骨ねじの軸穴の中に二次コイルを組み込むこと、及びこのシャフトに対して絶縁される先端部に関する。実際には、このシステムは、双極誘導ねじシステム(BISS:bipolar induction screw system)と呼ばれる。単独の埋込み物としての双極誘導ねじは、ねじ長さが75〜110mmに制限された。外科の臨床では、BISSは、例えば大腿骨頭の骨壊死の場合又は大腿骨頸部骨折の場合に磁気的に誘導される電気骨刺激に使用される。
【特許文献1】西独国特許第1918299号明細書
【特許文献2】西独国特許公開第2611744号明細書
【特許文献3】独国特許第2636818号明細書
【特許文献4】独国特許第19928449号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、支持埋込み物を備える骨折した骨の硬化を促進すると共に、骨接合及び内部補綴術における細菌の問題を防ぐ目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的は、独立請求項の特色によって解決される。
【0012】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の中で開示される。
【0013】
本発明は、骨に固定される埋込み可能なデバイスであって、少なくとも2つの貫通穴を備える導電性ベース体と、少なくとも一対のシャフト形の接触手段であり、埋込まれた状態では、各接触手段が、貫通穴を貫通すると共に骨の一部を貫く、少なくとも一対のシャフト形の接触手段とを具備し、各接触手段の表面が、第1及び第2の導電性表面部分、並びに導電性表面部分を互いから分離する電気絶縁表面部分を備え、各接触手段の第1の導電性表面部分が、埋込まれた状態でベース体に電気的に接触し、一方、各接触手段の第2の導電性表面部分が、埋込まれた状態で電気絶縁表面部分によってベース体に対して電気的に絶縁され、各接触手段が各接触手段(16)の内部にコイル配置を含み、それによって各接触手段の導電性表面部分が電気的に結合され、一対の接触手段のコイル配置が逆方向に巻かれる、埋込み可能なデバイスに関する。そのようなデバイスが、所期のやり方で骨に固定されると共に、例えば、磁化力1〜5mTと、周波数1〜20Hzの正弦波特性とを有する外部交流電磁場が印加される場合には、電圧が、シャフト形の接触手段に沿って延在するコイル配置に誘導されるものであり、この目的を達成するためには、磁場は、接触手段のシャフトの延在方向に成分を有する必要がある。各コイル配置の2つの極は、互いに対して電気的に絶縁される接触手段の部分に接続されるので、電界は、配置された伝導性表面部分同士の間で発生する。さらに、表面部分のうちの1つが、導電性のやり方で導電性ベース体に接続されると共に、さらにコイル配置が逆方向に巻かれるので、異なる極性を有する電圧が一対のシャフト形の接触手段に発生し、各接触手段の第1の表面部分は同一の電位上である。したがって、接触手段の第2の表面部分それぞれの間の電圧は、個々の各接触手段に発生する電圧の2倍の量を有する。個々の各接触手段の電圧は、具体的にはコイル配置の誘導性によって制限され、したがって、磁場の方向にコイル配置が延在することも制限されるので、本発明に基づいて、比較的短い設計の接触手段を用いて生理学的観点から特に有効であることが分かっている電圧を発生させることも可能である。
【0014】
さらに、本発明は、一対の接触手段の少なくとも1つが、ねじ頭を用いてベース体に接触する固定ねじであると共に、埋込まれた状態でねじシャフトを用いて骨にねじ込まれるという点で特に有用な態様で展開されてもよい。骨支持プレートの固定に寄与しない又はほとんど寄与しない任意の固定手段又はさらには他のシャフト形の手段が本発明による特色を備えることが原理上可能であるとしても、接触手段の電磁場特性をベース体の固定ねじの中に組み入れることがさらに特に有利である。
【0015】
この接続では、一対の接触手段の両方が、固定ねじであることが特に有用である。
【0016】
さらに、本発明は、固定ねじの電気絶縁表面部分が、ねじ頭をねじシャフトの主要部分に対して電気的に絶縁するという点で特に有利な態様で展開されてもよい。前述のねじシャフトの主要部分は、埋込まれた状態では、骨の内部に配設される部分である。したがって、電界は、骨の断面全体、隣り合うねじシャフト、並びにねじシャフト及びベース体が形成する対電極にわたって発生することが有利である。
【0017】
複数の対のシャフト形の接触手段が設けられ、各隣り合う接触手段が、逆方向に巻かれるコイル配置を有することが特に有利である。接触手段がそのように設けられる、例えば一列で配設される場合は、電界は、前述の接触手段の列の延在全体にわたって使用可能にされ得る。
【0018】
ベース体が、骨接合手段であることが検討されてよい。
【0019】
この接続では、骨接合手段が埋込み可能な骨支持プレートであることが特に有利である。そのような骨支持プレートは、骨の縦軸と概して垂直に延在するねじによって骨に固定される。したがって、ねじは極めて限られた長さを有し、その結果、限られた誘導電圧が生成できるだけである。本発明に基づけば、前述の電圧は、隣り合う相補的なねじ同士の間で2倍にできる。さらに、ねじシャフトと骨支持プレートの間に電圧があり、それによって支持プレートの下の骨領域の圧力壊死が防がれる。
【0020】
ベース体が、内部人工装具であることが検討されてもよい。
この接続では、ベース体が、関節置換術のソケットであることが特に有利である。したがって、具体的には、股関節置換術のソケットの固着は、磁場の誘導を埋込み物に対して適宜の時間間隔で印加することによって骨盤骨の活力及び安定性が保護されるようになされ得る。
【0021】
さらに、本発明は、埋込み物の領域中に局在的な電磁場を発生させるシステムであって、骨に固定される埋込み可能なデバイスであり、少なくとも2つの貫通穴を備える導電性ベース体、及び少なくとも一対のシャフト形の接触手段であり埋込まれた状態で各接触手段がベース体の貫通穴を貫通すると共に骨の一部を貫く接触手段を備え、各接触手段の表面が、第1及び第2の導電性表面部分、並びに導電性表面部分を互いから分離する電気絶縁表面部分を備え、各接触手段の第1の導電性表面部分が、埋込まれた状態でベース体に電気的に接触し、一方、各接触手段の第2の導電性表面部分が、埋込まれた状態で電気絶縁表面部分によってベース体に対して電気的に絶縁され、各接触手段が各接触手段の内部に二次コイル配置を備え、それによって各接触手段の導電性表面部分が電気的に結合され、一対の接触手段の二次コイル配置が逆方向に巻かれる埋込み可能なデバイスを具備し、さらに、接触手段の領域中に電磁場を発生させる一次コイル配置と、一次コイル配置の中に交流電流を発生させる振動発生器とを具備するシステムに関する。支持プレートを用いて傷んだ骨をねじ固定することによる皮質固定は、長骨の軸と実質的に垂直にねじの向きを決定する。必然的に、それは、外部誘導電磁場の向きにやはり従わなければならない。例えば、電気釘又は長い双極のねじの誘導に必要とされる、骨の傷んだ部分を包み、したがって長い体及び骨の軸と平行に誘導電磁場の向きを決定するソレノイドコイルの代わりに、傷んだ骨の両側でヘルムホルツ配置に配置される2つの磁気コイルが、支持プレートねじの誘導に必要とされる。
【0022】
この接続では、一次コイル配置が、8字形によって一点の交差点を有すると共に2つの面を画定するコイル巻線を含み、前述の面が、少なくとも一次コイル配置の適用中に互いに対して方向付けられ、その結果、一次コイル配置中の電流の流れによって発生すると共に面を貫通する磁場が、実質的に単向性であることが特に有用である。したがって、骨の軸と垂直に配置されるねじに対して適当な向きを有する磁場は、単コイルを用いて発生できる。内部に傷んだ体の領域がある、同じ向きの磁場を有する2つの別個の誘導コイルの効果は、このようにして単コイルで実現されてもよい。
【0023】
好都合には、一次コイル配置が、面が埋込み可能なデバイスの両側に配置できるように弾性的に変形可能であることが検討される。巻線は弾性があるので、数字の8又は無限記号のような変形が可能とされる。コイル巻線のこの変形によりコイル中に生まれる「ループ」は、肢の両側に固定されてよい。
【0024】
例えば、交点に向かい合っている一次コイル配置の2つの位置で協働する固定手段が設けられ、その固定手段によって、互いに対する面の向きが確定及び維持できることが検討されてよい。例えば、固定手段は、ベルト、スナップファスナ、Velcro(ベルクロ)型ファスナ、バックルなどによって実現されてよい。
【0025】
特に有利な態様では、一次コイル配置の交点は、ある結合要素によって固定可能であるということが検討されてよい。そのような結合要素は、例えば、Velcro(ベルクロ)型ファスナ又はベルトのバックルなどの弾性のあるベルトによって実現されてよい。
【0026】
交点の位置、したがって面の寸法が、可変であることが特に有利である。このやり方で選択可能なコイルループの面積比を用いて、磁束及び考慮される面の商として定義される誘導磁束密度は、調整可能である。誘導束密度の比は、関連する各面の面積比の逆数の値である。2つのループの面積比は、結合要素の可変配置により交点を可変に固定することを可能にすることによって治療上の要求に従って選択されてよい。例えば、高い誘導磁束密度は、小さい表面積を有するコイルループを体のターゲット領域の近くに配置することによって体のターゲット領域中で実現でき、一方、ヘルムホルツコイルの効果を与える大きい面積を有する他のコイルの面に対しては、他のコイル面が小さい面に対して概して平行である配置が、取り入れられることになる。
【0027】
さらに、本発明は、具体的には埋込み物の領域に局在的な電磁場を発生させる、本発明によるシステムの中で利用するためのコイル配置であり、8字形によって交点を含むと共に2つの面を画定するコイル巻線を備え、この面が互いに対して方向付けられ、その結果、コイル配置中の電流の流れによって発生すると共にこれらの面を貫通する磁場が、実質的に単向性であるコイル配置に関する。このようにして、本発明によるシステムの利点及び特色は、コイル配置の枠組み内でやはり実現される。また、これは、以下に説明する本発明によるコイル配置の特に好ましい実施形態に適用する。
【0028】
さらに、コイル配置が、これらの面が埋込み可能なデバイスの両側に配置できるように弾性的に変形可能であるという点で有用な態様で展開される。
【0029】
さらに、交点に対置するコイル配置の2つの位置で協働する固定手段が設けられ、それによって、互いに対する面の向きが、確定及び維持できることが検討される。
【0030】
さらに、コイル配置は、コイル配置の交点が結合要素によって固定可能であるように特に有利な態様で展開されてよい。
【0031】
さらに、交点の位置、したがって面の寸法が、可変であることが特に有利である。
【0032】
したがって、本発明は、支持プレートねじ骨接合の生体力学的現象の分野における新知見及び慢性感染症に対するそれらの因果関係を考慮に入れる。例えば、本発明は、電気釘により十分な安定性が提供されない長管骨の複数の関節近傍部分の安定化に役立つ。ねじ、二次コイル及び電極のジオメトリは、最新式によるデバイスと比べて根本的に変更されて、支持プレートに関連する骨の大きな断片的な区域内で治療上有効な電界及び電流の分布を発生させるのに適したものになっている。同じことが、骨盤骨での股関節置換術のソケットの領域中の刺激電界の寸法及び分布に当てはまる。本発明による双極誘導ねじは、例えば長さが30〜50mm、好ましくは40mmであり、例えば断面が4〜6mmである。短い双極ねじの絶縁距離は、長い双極ねじ(例えば、DE 199 28 449 C1参照)とは対照的に、ねじの頭とねじのシャフトの間で定められる。二次コイルのFeコアの周囲の巻線は、2つのねじそれぞれの二次誘導性の巻線方向が、対向するすなわち相補的であるように調整されるように配置される。支持プレートを骨にねじ固定している間は、双極ねじの頭は、互いに電気的に接続され、それによって誘導コイルと対向するすなわち相補的な各巻線は、直列に接続される。例えば、磁場強度が1〜5mTであり、正弦波励振周波数が1〜20Hzである印加可能な電磁場では、相補的なねじ2本のシャフト間の誘導電圧は、この配置によって2倍にされる。シャフトとねじ頭を含む支持プレートとの間にはそれぞれ、双極ねじの中に誘導される単一の電圧だけが発生する。
【0033】
本発明による双極ねじ少なくとも2つ以上を用いて金属支持プレート又は股関節置換術のソケットをねじ固定することにより骨接合及び関節の内部補綴術において実現可能な利点は、具体的には、以下の通りである。
− 長さが75mm〜110mmである双極ねじの単独を適用する場合に最適であることが分かっている骨中で500mV〜700mVの同一電圧の誘導が、支持プレートを骨に固定すると本発明による相補的な二次誘導性を有する、長さ30mm〜50mm、すなわちより短い双極ねじ少なくとも2つの適用によって実現される。
− 複数の相補的な双極ねじの交互配置により、大きな欠損を安定化すると共に治療するための支持プレートの全長にわたって誘導電界が延在することが可能になる。
− 電界分布は、骨の断面全体にわたってもたらされる。
− 約250mV〜350mVの電圧の誘導が、個々の双極ねじのシャフトと骨支持プレートの間で生じる。このようにして支持プレートの下の骨の領域の圧力壊死が、防がれ得る。
− 股関節置換術のソケットを固着すると、特に、ソケットの双極ねじ固定についての磁場誘導を適宜の時間間隔で反復することによって骨盤骨の活力及び安定性を保護することが可能である。
− 実際の用途に依存しない、感染リスクの劇的な減少が、骨接合及び関節の内部補綴術における短期的及び長期的な埋込み物全ての場合に得られる。
【0034】
本発明によるコイル配置では、加えて、2つの対向するコイル配置のループの磁場が、ヘルムホルツによる2つの別個のコイルの配置の場合のように2つのループのうちの一方の電流の向きが空間的に反対になるので単向性であることが達成される。その上、弾性的に変形可能であるそのようなコイルは、長骨の軸に対する二次コイルの向きにほとんど依存しない埋込まれた二次コイルの誘導を可能にする。骨又は軟部組織の各病変部の位置に対してコイル配置の幾何学的形状を調整する間の簡単な取扱いが可能にされる。例えば、ループの面は、磁場の強度に対してループの大きさを変えることによっても足、膝、下肢、大腿、骨盤、脊柱、手、前腕、上腕、顎又は頭蓋領域などの治療される領域に対して調整できる。本発明によるコイル配置の別の特色は、交点の近くで磁束密度が増加することであり、その結果、体の小さい部分に対して比較的強い磁場の集中が可能にされる。このやり方で、膿瘍又は感染などの極めて局在的な病気を効果的に治療できる。
【0035】
次に、添付図面を参照して具体的な好ましい実施形態を引用する例によって本発明を説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図面に関する以下の説明では、同一の数字は、同一又は類似の構成部分を示す。
【0037】
図1は、骨折した骨及び骨ねじによって固定される骨支持プレートの斜視図を示す。骨18は、骨折部位における骨支持プレート10によって安定化される。骨支持プレート10は、固定ねじを用いて骨18に固定され、少なくともいくつかの前述の固定ねじ、例えばシャフト形の接触手段である一対のねじ16a、16bは、ねじの中に配設されると共に逆方向に巻かれるコイル配置を備え、そのような一対のねじは、相補的な双極のねじペアとも呼ばれる。原理上、使用される全てのねじが、相補的な双極のねじペアの概念に含まれ得る。これは、前述のねじのうちのいくつかに対してだけ、又は前述のねじのうちの2つに対してだけ実現されることも可能である。ねじ以外の他の手段を相補的な接触手段の概念の中に組み込むことも可能である。
【0038】
図2は、本実施形態による埋込み可能なデバイスの断面図を示す。ベース体10、例えば骨支持プレートが、目に見える。前述のベース体10は、各骨ねじ16a、16bが貫通する2つの貫通穴14a、14bを有する。各骨ねじ16a、16bの頭28は、骨支持プレート10に接触し、一方、骨ねじ16a、16bのねじシャフト30は、骨の中に配設されると共に、電気絶縁表面部分24を介してねじ頭28に対して、したがって骨支持プレート10に対しても絶縁される。このようにして2つの表面部分20、22が存在し、2つの表面部分20、22は、互いに対して絶縁されると共に、骨支持プレート10に一体化した状態で電界を発生させる対電極を形成する。各骨ねじ16a、16bの内部にはコイル配置26a、26bが設けられ、これらのコイル配置26a、26bは、フェライト磁心上へ巻かれることが好ましい。コイル配置26a、26bの極は、互いに対して絶縁される骨ねじ16a、16bの部分に接触し、その結果、コイル巻線を通り抜ける磁場が存在する場合は、互いに対して絶縁される骨ねじ16a、16bの部分が、異なる電位に導かれる。ねじ頭28は共に、骨支持プレート10と接触しているので、ねじ頭28は共に、同じ電位である。さらに、コイル配置26a、26bが逆方向に巻かれるので、ねじシャフト30の電位は、ねじ頭の電位に対して逆である。同一の量の電圧が、骨ねじ16a、16b両方に誘導される場合は、各ねじシャフト30の電位間の差は、各ねじ16a、16bに誘導される個々の電圧の2倍である。
【0039】
図3は、磁場が外部から印加されている埋込まれた状態の本実施形態による埋込み可能なデバイス、すなわち、骨支持プレートの断面図を示す。骨支持プレート10は、3つの骨ねじ16c、16d、16eによって骨18に固定される。骨ねじ16c、16d、16eは、同一又は類似の構造であり、したがって、以下の説明は、骨ねじのうちの1つの骨ねじ16cに関連して典型として与えられる。骨ねじ16cは、骨支持プレート10の貫通穴14を貫通する。隣り合う骨ねじは、逆方向にそれぞれ巻かれるコイル配置を含むものであり、その他には、図2に関連して説明した骨ねじと同等に設計される。その配置の外側で、2つの磁気コイル32、34が配設されており、2つの磁気コイル32、34は、破線によって表される磁力線54が、骨ねじ16cの縦方向の延在に実質的に平行であるように一対のヘルムホルツコイルのように巻かれる。コイル32、34によって発生する交流電磁場は、各骨ねじ16c、16d、16eに電圧を発生させ、そのとき存在する電位は、ねじ頭28の共通の接触により骨支持プレート10によって規定される。治癒過程を促進する電界56、58であり、実線によって示される電界56、58は、各骨ねじ16c、16d、16eのねじシャフト30の間で形成され、加えて各骨ねじ16c、16d、16eのシャフト30とそれらによって固定される骨支持プレート10の間で形成される。個々のねじ16c、16d、16eのねじシャフト30間の電界の向きの線56は、ねじシャフト30と骨支持プレート10の間の電界の向きの線よりも短い距離を有する。これは、各構成部分が典型的な距離である場合、及び典型的な構成部分の設計の場合には、ねじの電位同士の間の差によって発生する電界は、ねじシャフト30と骨支持プレート10の間のより小さい電位差によって発生する電界よりも大きいことを示す。実際には、関連する異なる電位によって発生する電界は、一様な形を有し、その結果、例えば、ねじシャフト30によって発生する電界の歪みは、骨支持プレート10の電位によって引き起こされるものであり、この部分では交差として示される電界の向きの線56、58は、この部分での複雑な界分布の存在をただ表す。さらに、電界に対するねじシャフト30と骨支持プレート10の間の電位差の寄与は、このことは簡素化のために電界の向きの線の密度の例示の中に反映されていないのであるが、骨支持プレート10までの距離が増大すると共に減少することに留意されたい。
【0040】
図4は、本実施形態による埋込み可能なデバイス、すなわち、股関節の人工装具のソケットの斜視図を示す。股関節置換術のソケット12は、複数の貫通穴、骨ねじ16f、16gを含み、骨ねじ16f、16gの設計は、図2による骨ねじと本質的に同等であり、それにより貫通穴14f、14gに貫通される。したがって、図1及び図3を参照して及び骨接合に関連して説明した本実施形態の利点は、内部人工装具に関連してやはり実現できる。
【0041】
図5は、弾性のあるコイル配置を示す。図6は、それが適用されていない状態での本実施形態による弾性のあるコイル配置を示す。図7は、一次コイル配置としてそれが適用されている間の本実施形態によるコイル配置の斜視図を示す。図8は、本実施形態によるコイル配置によって発生する磁場の空間的な向きを説明する概略図を示す。コイル配置36の弾性を用いてそれによりコイル配置36が8字形を呈する場合は、2つの面40、42及び交点38が画定される。交点38は、結合要素60によって固定されるものであり、面40と面42の間の比が可変であるように移動できることが好ましい。例えば、Velcro(ベルクロ)型ファスナ又はベルトのバックルなどの弾性のあるストラップが、結合要素60の役割を果たすことができる。それらは、Velcro(ベルクロ)型ファスナの構成部分を形成すると共に、このやり方でさまざまな位置で互いに対して直接付着できるようにコイル配置の面を備え付けることも実行可能である。調整を容易にするために、表示又は目盛りが変動範囲内で与えられてよく、表示又は目盛りは、交点38のある固定が実行されることになる場合に出願人による位置確認のために使用されてよい。交流電流が、そのようなコイル配置36を通って流れる場合は、誘導される各磁場は、ベクトル記号44、46によって示されるように逆方向を有する。しかし、コイル配置36の弾性によって、コイル配置36は、別の形を呈するようにされることもできる。これは、骨折した骨を有する脚が示されてもいる図7に関連して示される。ここで、面40、42は、互いに対して向き合って配置され、コイルの各面部分の中に発生する磁場は、同じ方向を有する。これは、コイル配置に結合される交流発電機62が示されてもいる図8の中で、すなわち両面40、42を貫通する一様な磁場ベクトル44、46によって今一度示される。
【0042】
上記説明、図面及び特許請求の範囲の中に開示された本実施形態の特色は、個々に及び任意の組合せで本実施形態を実現するために重要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】骨折した骨及び骨ねじによって固定される骨支持プレートの斜視図である。
【図2】本実施形態による埋込み可能なデバイスの断面図である。
【図3】磁場が外部から印加されている埋込まれた状態の本実施形態による埋込み可能なデバイス、すなわち、骨支持プレートの断面図である。
【図4】本実施形態による埋込み可能なデバイス、すなわち、股関節の人工装具のソケットの斜視図である。
【図5】弾性のあるコイル配置の図である。
【図6】本実施形態が適用されていない状態での本実施形態による弾性のあるコイル配置を示す図である。
【図7】一次コイル配置として本実施形態が適用されている間の本実施形態によるコイル配置の斜視図である。
【図8】本実施形態によるコイル配置によって発生する磁場の空間的な向きを説明する概略図である。
【符号の説明】
【0044】
10…ベース体/骨支持プレート、12…ベース体/内部人工装具/ソケット、14…貫通穴、16…接触手段/固定手段、18…骨、20…表面部分、22…表面部分、24…表面部分/絶縁部、26…コイル配置/二次コイル配置、28…ねじ頭、30…ねじシャフト、32…一次コイル配置/磁気コイル、34…一次コイル配置/磁気コイル、36…一次コイル配置、38…交点、40…面、42…面、44…磁場/磁場ベクトル/ベクトル記号、46…磁場/磁場ベクトル/ベクトル記号、48…固定手段、50…固定手段、52…フェライト磁心、54…磁場、56…電界、58…電界、60…結合要素、62…交流発電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に固定される埋込み可能なデバイスであって、
少なくとも2つの貫通穴(14)を備える導電性ベース体(10、12)と、
少なくとも一対のシャフト形の接触手段(16)であり、埋込まれた状態で各接触手段(16)が前記ベース体(10、12)の貫通穴(14)を貫通すると共に前記骨(18)の一部を貫く、前記少なくとも一対のシャフト形の接触手段(16)と
を具備し、
前記各接触手段(16)の表面が、第1及び第2の導電性表面部分(20、22)、並びに前記導電性表面部分(20、22)を互いから分離する電気絶縁表面部分(24)を備え、
前記各接触手段(16)の第1の導電性表面部分(20)が、埋込まれた状態で前記ベース体(10、12)に電気的に接触し、一方、前記各接触手段(16)の第2の導電性表面部分(22)が、埋込まれた状態で前記電気絶縁表面部分(24)によって前記ベース体(10、12)に対して電気的に絶縁され、
前記各接触手段(16)が前記各接触手段(16)の内部にコイル配置(26)を含み、それによって前記各接触手段の導電性表面部分(20、22)が電気的に結合され、
一対の前記接触手段(16)の前記コイル配置(26)が逆方向に巻かれる、
埋込み可能なデバイス。
【請求項2】
一対の接触手段(16)の少なくとも1つが、ねじ頭(28)を用いて前記ベース体(10)に接触する固定ねじであると共に、埋込まれた状態でねじシャフト(30)を用いて前記骨(18)にねじ込まれることを特徴とする、請求項1に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項3】
一対の接触手段(16)の両方が、固定ねじであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項4】
前記固定ねじ(16)の前記電気絶縁表面部分が、ねじ頭(28)を前記ねじシャフト(30)の主要部分に対して電気的に絶縁することを特徴とする、請求項2又は3に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項5】
複数の対のシャフト形の接触手段(16)が設けられ、各隣り合う接触手段(16)が、逆方向に巻かれるコイル配置(26)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項6】
前記ベース体が、骨接合手段(10)であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項7】
前記骨接合手段が、埋込み可能な骨支持プレート(10)であることを特徴とする、請求項6に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項8】
前記ベース体が、内部人工装具(12)であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項9】
前記ベース体が、関節置換術のソケット(12)であることを特徴とする、請求項8に記載の埋込み可能なデバイス。
【請求項10】
埋込み物の領域中に局在的な電磁場を発生させるシステムであって、
具体的には請求項1〜10のいずれか一項に記載の、骨(18)に固定される埋込み可能なデバイスであり、
‐少なくとも2つの貫通穴(14)を備える導電性ベース体(10、12)、及び
‐少なくとも一対のシャフト形の接触手段(16)であり、埋込まれた状態で各接触手段(16)が前記ベース体(10、12)の貫通穴(14)を貫通すると共に前記骨(18)の一部を貫く、前記少なくとも一対のシャフト形の接触手段(16)を備え、
‐前記各接触手段(16)の表面が、第1及び第2の導電性表面部分(20、22)、並びに前記導電性表面部分(20、22)を互いから分離する電気絶縁表面部分(24)を備え、
‐前記各接触手段(16)の第1の導電性表面部分(20)が、埋込まれた状態で前記ベース体(10、12)に電気的に接触し、一方、前記各接触手段(16)の第2の導電性表面部分(22)が、埋込まれた状態で前記電気絶縁表面部分(24)によって前記ベース体(10、12)に対して電気的に絶縁され、
‐前記各接触手段(16)が前記各接触手段(16)の内部に二次コイル配置(26)を備え、それによって前記各接触手段の導電性表面部分(20、22)が電気的に結合され、
‐一対の前記接触手段(16)の前記二次コイル配置(26)が逆方向に巻かれる、前記埋込み可能なデバイスを具備し、さらに、
前記接触手段(16)の領域中に電磁場を発生させる一次コイル配置(32、34、36)と、
前記一次コイル配置(32、34、36)の中に交流電流を発生させる振動発生器(62)と
を具備するシステム。
【請求項11】
前記一次コイル配置(36)が、8字形によって一点の交差点(38)を有すると共に2つの面(40、42)を画定するコイル巻線を含み、前記面(40、42)が少なくとも前記一次コイル配置(36)の適用中に互いに対して方向付けられ、その結果、前記一次コイル配置(36)中の電流の流れによって発生すると共に前記面を貫通する磁場(44、46)が実質的に単向性であることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記一次コイル配置(36)が、前記面が前記埋込み可能なデバイスの両側に配置できるように弾性的に変形可能であることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記交点(38)に向かい合っている前記一次コイル配置の2つの位置で協働する固定手段(48、50)が設けられ、前記固定手段によって、互いに対する前記面(40、42)の向きが確定及び維持できることを特徴とする、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記一次コイル配置の前記交点(38)が、結合要素(60)によって固定可能であることを特徴とする、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記交点(38)の位置、したがって前記面(40、42)の寸法が、可変であることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
具体的には請求項11〜15のいずれか一項に記載の、埋込み物の前記領域中に局在的な電磁場を発生させるシステムの中で利用するためのコイル配置であり、8字形によって交点(38)を含むと共に2つの面(40、42)を画定するコイル巻線を備え、前記面(40、42)が互いに対して方向付けられ、その結果、前記コイル配置(36)中の電流の流れによって発生すると共に前記面を貫通する磁場(44、46)が、実質的に単向性であるコイル配置。
【請求項17】
前記コイル配置(36)が、前記面(40、42)が埋込み可能なデバイスの両側に配置できるように弾性的に変形可能であることを特徴とする、請求項16に記載のコイル配置。
【請求項18】
前記交点(38)に対置する前記コイル配置の2つの位置で協働する固定手段(48、50)が設けられ、それによって、互いに対する前記面(40、42)の向きが確定及び維持できることを特徴とする、請求項16又は17に記載のコイル配置。
【請求項19】
前記コイル配置の前記交点(38)が、結合要素(60)によって固定可能であることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載のコイル配置。
【請求項20】
前記交点(38)の位置、したがって前記面(40、42)の寸法が、可変であることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一項に記載のコイル配置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−101126(P2009−101126A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−120476(P2008−120476)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
【出願人】(505422590)ノイエ マグネートオーデュン ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】