説明

埋込型照明器具

【課題】板材の厚さに拘らずウィングバネの弾性力によってウィングバネとフランジ部との間に板材を挟持できるようにするとともに、断熱材との間に放熱のための空間を確保する。
【解決手段】本体1を構成する固定部12に対して可動体2を上下に移動自在にし、可動体2の保持部231,241にウィングバネ4A,4Bを固定した。天井20,30の板厚に応じて固定部12における可動体2の固定位置を変える。天井20,30の板厚に拘らず、天井20,30の上面と保持部231,241及び天板部21との上下方向の距離を略一定にする。ウィングバネ4A,4Bから天井20,30の上面に十分な弾性力を作用させることができるとともに、天井20,30と断熱材40との間に放熱のための十分な空間が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井や壁面に形成された孔部に挿入され、天井や壁面等に保持されるダウンライト等の埋込型照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井や壁面等に取り付けられる照明器具として、ダウンライトのように天井や壁面等に形成された孔部に挿入され、天井や壁の内部に埋設される埋込型照明器具がある。埋込型照明器具は、天井の上面に当接する支持金具を備えている。天井の下面における孔部の周縁には、器具のフランジ部が当接する。支持金具とフランジ部とによって天井を挟持することで、埋込型照明器具が天井に保持される。
【0003】
ところが、支持金具を備えた埋込型照明器具では、天井の板厚の変化に対応すべく支持金具を上下方向に移動自在に備える必要があり、支持金具を保持する金属枠を本体とは別体に備えている。このため、埋込型照明器具を天井等に取り付ける際には、金属枠を天井裏に配置した後に、本体を孔部に挿入して金属枠と一体にする必要があり、取付作業が煩雑化する。また、金属枠を必要とするため、デザイン上の制約が大きい。
【0004】
そこで、従来の埋込型照明器具として、支持金具に代えてウィングバネを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。天井等に形成された孔部に埋込型照明器具を挿入すると、孔部を通過したウィングバネが弾性力によって外側に露出して孔部の周縁部に圧接する。この圧接力によって、埋込型照明器具が天井に保持される。
【特許文献1】特開2004−362989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のウィングバネを備えた埋込型照明器具では、天井の板厚によってウィングバネの開放角度が変化する。図1に示すように、板厚の厚い天井110Aに埋込型照明器具100を取り付ける場合、ウィングバネ101から天井110Aに対して下向きに作用する力が板厚の薄い天井110Bに比べて小さくなる。このため、埋込型照明器具100を確実に天井110Aに保持させることができなくなる。
【0006】
また、板厚の厚い天井110Aに埋込型照明器具100を取り付ける場合、埋込型照明器具100の周囲で天井内に敷設される断熱材120と天井110Aとの間の空間が板厚の薄い天井110Bに比べて狭くなり、埋込型照明器具100が発生する熱を十分に放熱することができない。特に、板厚が増すことによって天井の保温性が高まるため、放熱性がさらに低下する。
【0007】
この発明の目的は、天井の板厚の変化に応じてウィングバネとともに天板を本体に対して上下方向に移動させることができるようにし、天井の板厚に拘らずウィングバネから天井に対して下向きの弾性力を作用させることができるとともに、断熱材との間に放熱のための空間を確保することができる埋込型照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の埋込型照明器具は、本体、可動体、固定部材及びウィングバネを備えている。本体は、フランジ部を第1の面に備え、光源を前記第1の面から外部に向けて保持する。可動体は、本体における第1の面に平行な第2の面の外側に位置する天板部を有し、本体に対して所定範囲内で第1及び第2の面に直交する方向に沿って移動自在に支持されている。固定部材は、可動体を前記所定範囲内の複数の位置のそれぞれで前記本体に固定する。ウィングバネは、第1の端部が前記可動体に固定され、第2の端部を前記第1の面側に向けて付勢する弾性力を発生する。板材に形成された孔部に板材の表面から裏面に向けて挿入され、フランジ部とウィングバネとの間に板材を挟持して板材に保持される。
【0009】
ウィングバネは、可動体と一体的に本体に対して本体の第1及び第2の面に直交する方向に沿って移動する。板材の厚さに応じて本体に対して可動体を移動させると、ウィングバネも可動体と一体的に移動し、板材の厚さに拘らずウィングバネの変形状態は略一定になり、第2の端部が板材の裏面に略一定の当接力で当接する。また、板材の厚さに拘らず板材の裏面から天板部までの距離が略一定にされる。
【0010】
なお、本体は、第2の面が開放し、第1及び第2の面に直交する第3の面を備えたものであってもよい。第2の面と天板との間を介して本体内に空気が流通し、本体内部の放熱が促進される。
【0011】
また、可動体は、天板部に連続して第3の面に接触する支持部を備えたものであってもよい。本体の熱が可動体に伝導し、本体の放熱が促進される。
【0012】
所定範囲内の可動体の位置と板材の板厚との関係を表記した表示部材をさらに備えてもよい。天板及びウィングバネを、板材の厚さに応じた位置に容易に固定できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれは、板材の厚さに応じて本体に対してウィングバネを可動体と一体的に移動させることができ、ウィングバネの変形状態、及び板材の裏面から天板部までの距離が、板材の厚さに拘らず略一定にできる。板材の厚さが変化しても、ウィングバネの第2の端部を板材の裏面に常に略一定の当接力で当接させることができ、板材に確実に保持させることができる。また、板材の裏面を断熱材で覆う場合に、板材の厚さが変化しても、板材の裏面と断熱材との間に常に略一定の空間が形成され、十分な放熱効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図2(A)及び(B)は、この発明の実施形態に係る埋込型照明器具の正面断面図及び側面図である。図3(A)及び(B)は、同埋込型照明器具を構成する可動体及び固定部の外観図である。埋込型照明器具10は、本体1、可動体2、ウィングバネ4A,4Bを備え、天井等に取り付けられる。埋込型照明器具10は、天井に取り付ける場合、天井に形成された孔部に、表面(室内)側から裏面(天井裏)側に向けて挿入する。埋込型照明器具10は、孔部を通過したウィングバネ4A,4Bと、本体1の下端部に形成されているフランジ部と、の間に天井を挟持することで、天井に保持される。
【0015】
本体1は、下方の反射部11と上方の固定部12とからなる。反射部11は、開放した下面(この発明の第1の面である。)の周囲にフランジ部111を形成した円筒形状を呈しており、内部に光源であるLED5及びレンズ3を保持している。LED5は下面から外部に向けて固定されている。
【0016】
固定部12は、一例として図3(B)に示すように、金属平板をプレス加工によって上面が開放した筐体形状に形成したものであり、反射部11の上面に固定される。固定部12は、側面121,122から背面123の前方に、背面123に平行に延出したガイド板124,125を備えている。固定部12の上面(この発明の第2の面である。)は開放している。ガイド板124,125は、この発明の固定部材であり、同じく第3の面でもある。ガイド板124及びガイド板125のそれぞれには、指標孔126A〜126D及び127A〜127D、並びに長孔128及び129が形成されている。
【0017】
指標孔126A〜126D及び指標孔127A〜127Dは、埋込型照明器具10が取り付けられる天井の板厚に対応して形成されている。指標孔126A,127Aは、20〜25mmの板厚に対応している。指標孔126B,127Bは、15〜20mmの板厚に対応している。指標孔126C,127Cは、10〜15mmの板厚に対応している。指標孔126D,127Dは、5〜10mmの板厚に対応している。
【0018】
可動体2は、一例として図3(A)に示すように、金属平板をプレス加工によって上面(この発明の天板部である。)21、背面22及び左右の側面23,24を有する筐体形状を呈している。側面23,24の上端と天板部21との間には間隔が設けられている。側面23及び側面24のそれぞれの内側面の間隔は、固定部12の側面121及び側面122のそれぞれの外側面の間隔に略等しくされている。
【0019】
側面23及び側面24のそれぞれには、内側から外側に向かう切り起こし加工によって保持部231,241が形成されている。保持部231,241は、下方から挿入されたウィングバネ4A,4Bの第1の端部を保持する。
【0020】
背面22には、2箇所にネジ孔221,222が形成されており、2箇所にマーク223,224が表記されている。但し、図3では一方のネジ孔222は図示されない。2個のネジ孔221,222の間隔は、2つの長孔128,129の間隔に等しくされている。2個のマーク223,224の間隔は、ガイド板124の指標孔126A〜126Dとガイド板125の指標孔127A〜127Dとの間隔に等しくされている。
【0021】
可動体2は、固定部12に上方から嵌合する。固定部12に可動体2を嵌合させると、背面22の前面がガイド板124,125の背面に当接し、側面23,24の内側面が側面121,122の外側面に近接する。この時、ネジ孔221,222のそれぞれが、長孔128,129に対向する。ネジ孔221,222のそれぞれには、長孔128,129を貫通した固定ネジ6が螺合する。ネジ孔221,222に固定ネジ6を締結することにより、固定部12に可動体2が固定される。
【0022】
ガイド板124の前面における指標孔126A〜126Dの側方には、表示部材7が貼付されている。表示部材7には、指標孔126A〜126Dのそれぞれに対向する位置に、指標孔126A〜126Dのそれぞれが対応する天井の板厚が表記されている。
【0023】
指標孔126A〜126D及び指標孔127A〜127Dのうちで埋込型照明器具10を取り付けるべき天井の板厚に対応する指標孔を表示部材7の表記内容を確認して選択する。選択した指標孔を通してマーク223及び224が視認できるように、固定部12に対して可動体2を上下に移動させる。マーク223及び224が天井の板厚に対応した指標孔126A〜126Dの何れか及び指標孔127A〜127Dの何れかを通して視認できる状態で固定ネジ6をネジ孔221,222に締結することにより、可動体2が天井の板厚に適合した高さで固定部12に固定される。
【0024】
ウィングバネ4A,4Bは、一例として板バネであり、第1の端部を保持部231,241に保持されて可動体2に固定されている。したがって、可動体2を固定部12に対して上下方向に移動させると、ウィングバネ4A,4Bは可動体2と一体的に上下方向に移動する。ウィングバネ4A,4Bは、第2の端部を下方に向けて付勢する弾性力を発生する。
【0025】
図4(A)及び(B)は、上記埋込型照明器具の使用状態を示す正面断面図である。図4(A)は5〜10mmの板厚の天井20に埋込型照明器具10を取り付けた場合を示し、図4(B)は20〜25mmの板厚の天井30に埋込型照明器具10を取り付けた場合を示している。
【0026】
図4(A)に示すように、埋込型照明器具10を5〜10mmの板厚の天井20に取り付ける場合には、マーク223,224が指標孔126D,127Dを通して視認できる位置で固定ネジ6をネジ孔221,222に締結する。この状態で、埋込型照明器具10を天井20の孔部20Aに表面(下面)から裏面(上面)に向けて挿入する。
【0027】
埋込型照明器具10の高さに比較して板厚が十分に薄い天井20に埋込型照明器具10を取り付けた場合には、可動体2を固定部12において最も低い位置に固定しても、天井20の裏面(上面)と保持部231,241との高さ方向の距離は十分に大きい。このため、ウィングバネ4A,4Bの第2の端部を、ウィングバネ4A,4Bが発生する弾性力によって天井20の上面に圧接させることができる。ウィングバネ4A,4Bとフランジ部111との間に天井20を確実に挟持することができ、天井20に埋込型照明器具10を確実に取り付けることができる。
【0028】
また、埋込型照明器具10の高さに比較して板厚が十分に薄い天井20に埋込型照明器具10を取り付けた場合には、可動体2を固定部12において最も低い位置に固定しても、天井20の上面と天板21との高さ方向の距離は十分に大きい。このため、天井20の上面を可撓性を有する断熱材40で被覆した場合に、埋込型照明器具10の周囲における天井20の上面と断熱材40の下面との間に十分に大きな空間が形成される。埋込型照明器具10において発生した熱を確実に放熱することができる。
【0029】
図4(B)に示すように、埋込型照明器具10を20〜25mmの板厚の天井30に取り付ける場合には、マーク223,224が指標孔126A,127Aを通して視認できる位置で固定ネジ6をネジ孔221,222に締結する。この状態で、埋込型照明器具10を天井30の孔部30Aに表面(下面)から裏面(上面)に向けて挿入する。
【0030】
埋込型照明器具10の高さに比較して板厚が厚い天井30に埋込型照明器具10を取り付ける場合には、可動体2を固定部12において最も高い位置に固定し、天井30の上面と保持部231,241との高さ方向の距離を十分に大きくする。これによって、ウィングバネ4A,4Bの第2の端部を、ウィングバネ4A,4Bが発生する弾性力によって天井30の上面に圧接させることができる。ウィングバネ4A,4Bとフランジ部111との間に天井30を確実に挟持することができ、天井30に埋込型照明器具10を確実に取り付けることができる。
【0031】
また、埋込型照明器具10の高さに比較して板厚が厚い天井30に埋込型照明器具10を取り付ける場合には、可動体2を固定部12において最も高い位置に固定し、天井30の上面と天板部21との高さ方向の距離を十分に大きくする。これによって、天井30の上面を可撓性を有する断熱材40で被覆した場合に、埋込型照明器具10の周囲における天井30の上面と断熱材40の下面との間に十分に大きな空間が形成される。埋込型照明器具10において発生した熱を確実に放熱することができる。
【0032】
表示部材7の表記内容を視認することで、埋込型照明器具10を取り付ける天井の板厚に応じて可動体2を固定部12に対して上下方向に移動させる作業を容易に行うことができる。
【0033】
埋込型照明器具10で主にLED5から発生が熱は、反射部11から固定部12に伝導した後、固定部12の背面を含む垂直面から放熱されるとともに、天板部21と側面121,122との空間から対流により放熱される。また、固定部12に伝導した熱は、ガイド板124,125から可動体2に伝導した後、天板部21、側面23,24から放熱される。
【0034】
なお、上記の実施形態では、2個のウィングバネ4A,4Bを備えたが本体1の周囲に3個以上のウィングバネを備えることもできる。また、上記の実施形態では、5〜25mmの範囲の板厚の天井に適用できるものを例に挙げたが、これに限るものではない。さらに、上記の実施形態では、固定部12に対する可動体2の上下方向の移動位置を4箇所にしたが、これに限るものではなく、所定範囲の任意の位置で固定できるようにしてもよい。また、上記の実施形態では、埋込型照明器具10を天井に取り付ける場合について説明したが、壁面にも同様に取り付けることができる。
【0035】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の埋込型照明器具の使用状態を示すハッチングを省略した半断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、この発明の実施形態に係る埋込型照明器具の正面断面図及び側面図である。
【図3】(A)及び(B)は、同埋込型照明器具を構成する可動体及び固定部の外観図である。
【図4】(A)及び(B)は、同埋込型照明器具の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1−本体
2−可動体
4A,4B−ウィングバネ
5−LED(光源)
7−表示部材
11−反射部
12−固定部
124,125−ガイド板(固定部材)
20,30−天井(板材)
22−背面(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材に形成された孔部に前記板材の表面から裏面に向けて挿入され、フランジ部とウィングバネとの間に前記板材を挟持して前記板材に保持される埋込型照明器具であって、
前記フランジ部を第1の面に備え、光源を前記第1の面から外部に向けて保持する本体と、
前記本体における前記第1の面に平行な第2の面の外側に位置する天板部を有し、前記本体に対して所定範囲内で前記第1及び第2の面に直交する方向に沿って移動自在に支持された可動体と、
前記可動体を前記所定範囲内の複数の位置のそれぞれで前記本体に固定する固定部材と、
前記ウィングバネは、第1の端部が前記可動体に固定され、第2の端部を前記第1の面側に向けて付勢する弾性力を発生する、埋込型照明器具。
【請求項2】
前記本体は、前記第2の面が開放し、前記第1及び第2の面に直交する第3の面を備えた請求項1に記載の埋込型照明器具。
【請求項3】
前記可動体は、前記天板部に連続して前記第3の面に接触する支持部を備えた請求項2に記載の埋込型照明器具。
【請求項4】
前記所定範囲内の前記可動体の位置と前記板材の板厚との関係を表記した表示部材をさらに備えた請求項1乃至3の何れかに記載の埋込型照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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