説明

基板の処理装置

【課題】プリント配線板等の基板の製造に用いる処理装置の状態を容易に把握することができ、適切なタイミングで設備メンテナンスを行うことにより生産設備の稼働率の低下を防ぐことができる。
【解決手段】基板を所定の速度で搬送する手段と、スプレーノズルを複数個取り付けたスプレー管と、処理液を前記スプレー管に供給するポンプとを備え、前記ポンプと前記スプレー管との流路の任意の位置と、スプレー管の終点の位置に圧力計を備えた基板の処理装置を用いることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器等に使用される基板の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器等に数多く使用されているプリント配線板は電子機器の小型化や多機能化に伴い、配線の高密度化とともに高い信頼性が要求されるようになってきている。
【0003】
したがって以下に、従来のプリント配線板等の導体パターン形成に用いられる現像装置やエッチング装置、あるいは写真現像型のソルダレジストに用いられる現像装置等の製造装置においても、配線の高密度化に対応しうる装置構成が求められてきた。
【0004】
以下に、従来の基板の処理装置、特にプリント配線板のエッチング装置について説明する。
【0005】
図2は従来のプリント配線板の製造装置としてのエッチング装置の概略を示すものである。図2において、21はスプレーノズル、22はスプレー管、23は圧力計、24はポンプ、25はフィルター、26は送りローラー、27はバルブ、28はエッチングブース、29は基板である。
【0006】
以上のように構成されたエッチング装置におけるプリント配線板のエッチング方法について、以下に説明する。
【0007】
まず、所定の大きさに切断された銅張積層板(図示せず)にスクリーン印刷法や写真法などによりエッチングレジストを形成した基板29をエッチングブース28内に基板の進行方向に対して平行またはある角度に配管された上面側および下面側のスプレー管22の間に送りローラー26上で所定の速度で搬送し、上下面に塩化第2銅などの処理液としてのエッチング液をスプレーノズル21から吹き付けてエッチングレジスト非形成部分の露出した銅を溶解し、導体パターンを得る。
【0008】
その後、エッチングレジストの剥離や水洗・乾燥などの工程を経て銅張積層板より導体パターンを形成している。
【0009】
なお、従来のプリント配線板の製造装置としての現像装置の構成の概要も上記のエッチング装置と同様である。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−264793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に説明したように一般のエッチング装置は、エッチングブース内のエッチング液等の処理液中の異物を除去するために、ポンプ24とスプレー管22との間にフィルター25を備えている。そのフィルター25内に異物が充満し、一定限度を越えると圧力計の表示は下降する。
【0013】
一方、スプレーノズル21に異物が詰まった場合、圧力計23の圧力は上昇するが、エッチング液の流量は減少する。
【0014】
圧力のみで管理している場合は、圧力計23の表示を下げるためバルブ27を閉める方向に調整することとなるが、このとき益々基板上に吹き付けられる流量は減少してしまう、という相反する条件を設定してしまう可能性が生じる。
【0015】
さらに、スプレーノズル21に異物が詰まったうえに、フィルター25内にも異物が充満している状態が同時に発生した場合は、スプレーノズル21に異物が詰まることによる圧力の上昇傾向と、フィルター25内に異物が充満することによる圧力の下降傾向が均衡状態となって相殺され、圧力計23の表示は当初の正確な設定と同じ値を示す可能性がある。この場合、実際にはスプレーノズル21の詰まりによる流量の減少と、フィルター25の詰まりによる流量の減少により、基板上に吹き付けられるエッチング液の流量は著しく減少し、極端な場合は、銅の厚みを充分にエッチングするためのエッチング液の流量に達せず、銅残りの現象を生じてしまう可能性もある。
【0016】
上記のような状況を防ぐため、従来は、フィルター25の定期的な点検と交換を行い、スプレーノズル21の清掃を行ってきた。
【0017】
しかしながら、一般にプリント配線板のエッチング液は40〜50℃の高温の状態で使用しかつ人体に有害な物質であり、スプレーノズル21の取り外し取り付け作業は極めて困難かつ危険を伴うものである。
【0018】
そこでエッチング液を一旦20〜25℃の常温に下げ、作業を行ってきたが、スプレーノズル21の詰まりを生産中に確認することは困難であり、とりあえず全てのスプレーノズル21の取り外し取り付け作業を行っていた。そのため作業効率が悪く設備メンテナンスに長時間を要し、生産設備の稼働率の低下を招いていた。
【0019】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、製造装置の製造コスト高騰を招くことなく簡便かつ普及が容易な基板の処理装置を提供するものであり、これによりプリント配線板等の製造装置としての処理装置の状態を容易に把握することができ、適切なタイミングで設備メンテナンスを行うことにより生産設備の稼働率の低下を防ぐとともに、処理不足による銅残り等品質上の問題を解決し、高密度・高精度のプリント配線板等の基板を歩留りよく生産することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために本発明は、基板を所定の速度で搬送する手段と、スプレーノズルを複数個取り付けたスプレー管と、処理液を前記スプレー管に供給するポンプとを備え、前記ポンプと前記スプレー管との流路の任意の位置と、スプレー管の終点の位置に圧力計を備えた基板の処理装置を用いることである。
【発明の効果】
【0021】
この構成により、プリント配線板等の基板の製造に用いる処理装置の状態を容易に把握することができ、適切なタイミングで設備メンテナンスを行うことにより生産設備の稼働率の低下を防ぐことができる。
【0022】
また、製造装置のコスト上昇を防ぐのみならず、始点と終点を含むスプレー管全域の圧力を把握し管理することにより、スプレー圧力を重要な製造条件とする基板の処理の品質を保つことができ、プリント配線板等の基板の品質上の問題を解決し、高密度・高精度の基板を歩留りよく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における基板の処理装置の概略図
【図2】従来の基板の処理装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態における基板の処理装置としてのエッチング装置について説明する。
【0025】
本発明の実施の形態におけるエッチング装置の構成は、上面および下面からの両面同時にエッチングできるものであり、上面と下面の構成は基本的に同じである。
【0026】
また、スプレーノズル、スプレーノズルを複数個取り付けて配管されたスプレー管、処理液をスプレー管に供給するポンプ、および基板を所定の速度で搬送する手段としての送りローラー、処理ブースとしてのエッチングブース等の構成は、従来と同様である。したがって、本実施の形態においては本発明の特徴のみを図面を用いて以下に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態における基板の処理装置の概略図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態における基板の処理装置の構成は、スプレーノズル1を複数個取り付けて配管された上面用のスプレー管2と、処理液を前記スプレー管2に供給するポンプ4と、ポンプ4とスプレー管2との流路の任意の位置に設けた圧力計3a、3bと、スプレー管の終点の位置に設けた圧力計3cとを備えている。
【0029】
本実施の形態においては、複数のスプレー管2の個々の流路の任意の位置として圧力計3b、3cを設けた。
【0030】
また、上記の圧力計3bは、スプレー管上の処理液の供給始点の位置であり、圧力計3dは、スプレー管上の処理液の供給始点の位置と、スプレー管の終点との間の位置である。
【0031】
上記の圧力計3dは、それぞれのスプレー管上に単独のみで設置することも可能であるが、供給始点とスプレー管の終点との間の複数の位置に、圧力計の取り付け箇所を複数備え、夫々の位置に圧力計3dを備えた構造とすることもできる。これにより配管の長いスプレー管の状態を管理するうえで好都合である。
【0032】
さらに、スプレー管2の終点の位置に備えた圧力計3cは、一定圧力に達した時点で、基板の処理装置の制御装置(図示せず)または警報装置(図示せず)へ信号を送信する手段を備えることが望ましい。
【0033】
また、後述するスプレー管のスプレーノズルの状態のみを確認するために、ポンプ4とスプレー管2との流路の間に設けられたフィルター5に平行してポンプ4とスプレー管2との流路にフィルター5を介さないバイパス6の流路とバルブ7bを設けることが望ましい。
【0034】
以上のように構成された基板の処理装置について、実施事例を以下に説明する。
【0035】
(1)まず、フィルター5とスプレーノズル1を共に新品に交換したとき、あるいはフィルター5を新品に交換し、スプレーノズル1の穴詰まりの除去、清掃を終了したときにおけるスプレー管2の圧力を確認する。具体的には処理液をスプレー管2に供給するポンプ4を作動させたときにおける、供給始点とスプレー管の圧力計3bと終点の圧力計3cの表示を確認する。
【0036】
この段階においては、フィルター5およびスプレーノズル1には異物等の詰まりはないため、以下の通りとなる。
【0037】
「始点の圧力計3bの表示圧力」>「終点の圧力計3cの表示圧力」
特に、「始点の圧力計3bの表示圧力」−「終点の圧力計3cの表示圧力」=P0
の値を確認しておく。
【0038】
(2)次に、極端に異物が詰まった状態のスプレーノズル、あるいは使用するスプレーノズルの穴径の80%程度の穴径のスプレーノズルを一旦用意し、スプレー管2に取り付ける。このときの、「始点の圧力計3bの表示圧力」−「終点の圧力計3cの表示圧力」=P1
の値を確認する。
【0039】
通常、スプレーノズルに異物が詰まった状態のとき、「始点の圧力計3bの表示圧力」と「終点の圧力計3cの表示圧力」との差は縮まり、P0>P1の関係となる。
【0040】
すなわち、フィルター5が新品であることを前提とすると、「終点の圧力計3cの表示圧力」は、初期(スプレーノズルの清掃直後)の値より高くなる。
【0041】
(3)フィルター5が新品であることを前提とする場合の簡易的な方法として、バイパス6を設けて、スプレー管2の圧力を確認する方法がある。
【0042】
この場合、フィルター5の詰まり具合に関係なくスプレー管2の状態を確認することができる。
【0043】
特に、フィルター5とスプレーノズル1が共に詰まっている場合は、スプレーノズル1に異物が詰まることによる圧力の上昇傾向と、フィルター5内に異物が充満することによる圧力の下降傾向が均衡状態となって相殺され、圧力計の表示は当初の正確な設定と同じ値を示す可能性がある。
【0044】
このような場合においても、バルブ7cを閉じバルブ7bを全開して処理液をバイパス6を経由させることによりフィルター5の影響を排除し、スプレー管2の状態のみを確認することができる。
【0045】
(4)実際のプリント配線板等の基板の生産現場における確認にあたっては、一定の生産期間あるいは基板の一定処理数毎に確認することが望ましい。
【0046】
スプレー管2の状態の確認にあたっては、上記のバイパス6を経由した場合における始点側の圧力計3bと終点側の圧力計3cの値を確認し、
「始点の圧力計3bの表示圧力」−「終点の圧力計3cの表示圧力」=P2
の値を確認する。
【0047】
既述した新品の場合のP0と、極端な場合として80%詰まった場合のP1と生産現場におけるP2との比較において、通常は、P0>P2>P1となる。
【0048】
P2の限界範囲においては、製品の歩留まりや生産性を考慮し設定する必要がある。
【0049】
本実施の形態においては、P0とP1の中点を管理限界値とし、その値に達した時点でスプレーノズル1の交換または清掃を行うこととする。
【0050】
(5)また、フィルター5の管理においても、一定の生産期間あるいは基板の一定処理数毎に確認することが望ましい。日々の管理においては圧力計3a(最もポンプ側に近い)の値を目安とし、バルブ7aを全開した状態で交換時(新品時)から3〜5%圧力がダウンした場合に交換時期とする。
【0051】
なお、フィルター5の交換直後においては、バルブ7aの開閉の具合により、圧力計3aの値を所定の範囲内に調整する。フィルター5の交換直後は異物等の詰まりがないのでバルブ7aは若干閉じる方向で調節し、基板の処理数が増加し圧力計3aの値が低下した場合は、バルブ7aを開ける方向で調節する。
【0052】
以上のことから、プリント配線板等の製造装置として基板の処理装置の状態を容易に把握することができ、適切なタイミングで設備メンテナンスを行うことにより生産設備の稼働率の低下を防ぐことができ、処理装置の状態を安定して保つことができるため、基板への処理不足による銅残り等の品質上の問題を解決し、高密度・高精度のプリント配線板を歩留りよく生産することができる。
【0053】
なお、従来の課題を解決するために、流量計をスプレー管に設けて流量を管理することも考えられるが、プリント配線板等のエッチング工程や現像工程における製造条件において基板上へ処理液を噴射するときの圧力は重要な条件であり、圧力の把握のために圧力計は欠かすことができない処理装置の構成要素である。流量計のみではスプレー管の一地点を通過する処理液の流量を把握することはできるが、スプレー管全域の圧力を把握することはできない。
【0054】
本発明は、流量計を追加して設けることによる製造装置のコスト上昇を防ぐのみならず、始点と終点を含むスプレー管全域の圧力を把握し管理することにより、スプレー圧力を重要な製造条件とする基板の処理の品質を保つことができるという効果を有する。
【0055】
なお、本実施の形態においては、スプレー管2の配管方向は、基板の進行方向に平行またはある角度に配管されている事例を図面に示したが、スプレー管2の配管方向を基板の進行方向に対して垂直としてもよい。
【0056】
また、基板を所定の速度で搬送する手段としての送りローラーは、水平搬送方式として示したが、基板を縦に搬送する縦型の処理装置としてもよい。
【0057】
また、本実施の形態における基板の処理装置としてエッチング装置を事例に説明したが、感光性のドライフィルムの現像装置、あるいは写真現像型ソルダレジストの現像装置、あるいはドライフィルムの膜剥離装置であってもよく、本発明の効果はこれらの処理装置においても得ることができる。
【0058】
さらにプリント配線板に限らず、処理液を基板上に噴射する方法を用いて現像やエッチング等の処理を行うその他の基板の製造においても本発明の処理装置は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の基板の処理装置を用いることにより、プリント配線板等の製造に用いる処理装置の状態を容易に把握することができ、適切なタイミングで設備メンテナンスを行うことにより生産設備の稼働率の低下を防ぐとともに、プリント配線板等の基板の品質上の問題を解決し、高密度・高精度のプリント配線板を歩留りよく生産することができる。これにより、本発明の産業上の利用可能性は大きいといえる。
【符号の説明】
【0060】
1 スプレーノズル
2 スプレー管
3a〜3d 圧力計
4 ポンプ
5 フィルター
6 バイパス
7a〜7c バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を所定の速度で搬送する手段と、スプレーノズルを複数個取り付けたスプレー管と、処理液を前記スプレー管に供給するポンプとを備え、前記ポンプと前記スプレー管との流路の任意の位置と、スプレー管の終点の位置に圧力計を備えた基板の処理装置。
【請求項2】
前記ポンプと前記スプレー管との流路の任意の位置は、スプレー管上の処理液の供給始点の位置であることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理装置。
【請求項3】
前記ポンプと前記スプレー管との流路の任意の位置は、スプレー管上の処理液の供給始点の位置と、前記供給始点とスプレー管の終点との間の位置であることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理装置。
【請求項4】
前記供給始点とスプレー管の終点との間の複数の位置に、圧力計の取り付け箇所を複数備え、夫々の位置に圧力計を備えた請求項3に記載の基板の処理装置。
【請求項5】
スプレー管の終点の位置に備えた圧力計は、一定圧力に達した時点で、基板の処理装置の制御装置または警報装置へ信号を送信する手段を備えた請求項1に記載の基板の処理装置。
【請求項6】
スプレー管は複数配管され、ポンプとスプレー管との流路の任意の位置は、個々のスプレー管の流路の任意の位置であることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理装置。
【請求項7】
前記ポンプと前記スプレー管との流路の間にフィルターを介して連結され、かつ前記ポンプと前記スプレー管との流路は前記フィルターを介さないバイパスの流路とバルブとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−96873(P2011−96873A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249772(P2009−249772)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】