説明

基板ユニット、カートリッジ、及びこれらの製造方法

【課題】基板及び基板に実装された電子部品の劣化を抑制する。
【解決手段】基板ユニット140は、基板142、ベース143、及び枠144を含む。基板142には、メモリ141、及び端子170c〜177cが実装されている。基板142は、ベース143及び枠144のいずれにも固定されておらず、ベース143と枠144との間に隙間(遊び)を介して保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した基板を含む基板ユニット、カートリッジ、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジに取り付けられる基板に関する技術として、特許文献1が知られている。
特許文献1によると、基板30は、電子部品(メモリ35及び端子31,32,35a,35b)を実装しており、基板取付部材40に固定された状態で、カートリッジ(液体収容体本体10)に取り付けられる。基板30は、切欠33及び孔34に基板取付部材40の凸部44,46がそれぞれ挿入された状態で、凸部44,46の先端を溶融して熱カシメすることにより、基板取付部材40に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214506号公報(特に、段落0040)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、基板30が基板取付部材40に固定されており、基板30における基板取付部材40との固定部分(熱カシメによる接合部分)に必然的にストレス(接合応力)が生じる。そのため、基板30及びこれに実装された電子部品(メモリ35及び端子31,32,35a,35b)が劣化し得る。例えば、ストレスによって基板30が変形し、メモリ35や端子31,32,35a,35bを基板30に取り付けるための半田が取れる等の問題が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、基板及び基板に実装された電子部品の劣化を抑制することができる、基板ユニット、カートリッジ、及びこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、カートリッジに取り付けられる基板ユニットであって、電子部品を実装した基板と、前記基板と対向する表面を有する第1部材と、前記表面における前記基板と対向する領域以外の領域に接合された第2部材と、を備え、前記基板が、前記第1部材及び前記第2部材に固定されておらず、前記第1部材と前記第2部材との間に前記表面と直交する直交方向及び前記表面に平行な表面方向に隙間を介して保持されていることを特徴とする、基板ユニットが提供される。
【0007】
本発明の第2観点によると、カートリッジに取り付けられる基板ユニットの製造方法であって、電子部品を実装した基板を、第1部材の表面と対向させ、前記表面に載置する基板載置工程と、前記基板載置工程の後、前記表面における前記基板と対向する領域以外の領域に第2部材を接合する接合工程と、を備え、前記接合工程において、前記基板を、前記第1部材と前記第2部材との間に前記表面と直交する直交方向及び前記表面に平行な表面方向に隙間を介して保持することを特徴とする、製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によると、収容空間を画定する筐体と、前記筐体に取り付けられた上記第1観点に係る基板ユニットと、を備え、前記筐体は、前記第1部材の前記表面方向に関する外周部分が収容される溝を有すると共に、第1筐体と、前記第1筐体に組み付けられることで前記第1筐体とによって前記収容空間を画定する第2筐体とを含み、前記第1筐体に、前記溝の一部である第1溝が形成されており、前記第2筐体に、前記溝のうち前記第1溝以外の第2溝が形成されていることを特徴とする、カートリッジが提供される。
【0009】
本発明の第4観点によると、収容空間を画定する筐体と、前記筐体に取り付けられた上記第1観点に係る基板ユニットと、を備え、前記筐体は、前記第1部材の前記表面方向に関する外周部分が収容される溝を有すると共に、第1筐体と、前記第1筐体に組み付けられることで前記第1筐体とによって前記収容空間を画定する第2筐体とを含み、前記第1筐体に、前記溝の一部である第1溝が形成されており、前記第2筐体に、前記溝のうち前記第1溝以外の第2溝が形成されている、カートリッジの製造方法であって、前記第1筐体の前記第1溝に前記第1部材の前記外周部分の一部を収容する第1収容工程と、前記第1収容工程の後、前記第2筐体を前記第1筐体に組み付け、前記第2筐体の前記第2溝に前記第1部材の前記外周部分の前記一部以外の部分を収容する第2収容工程と、を備えたことを特徴とする、製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第5観点によると、記録装置に装着されるカートリッジであって、収容空間を画定する筐体と、電子部品が実装された基板であり且つ前記電子部品と電気的に接続された端子が設けられた表面を有する基板であって、前記端子を露出させるように前記筐体の表面に取り付けられた基板と、前記基板の厚み方向に前記基板の前記表面の一部と対向する対向面を有するカバー部材と、前記厚み方向と直交する第1方向への前記基板の移動を規制する規制壁とを備え、前記カバー部材の前記対向面と前記筐体の前記表面との間の前記厚み方向への距離が、前記基板の厚みよりも大きく、前記規制壁は、前記基板の前記表面の前記一部が前記対向面と対向し、且つ、前記端子が前記対向面と対向せずに露出されるように、前記第1方向への前記基板の移動を規制することを特徴とする、カートリッジが提供される。
【0011】
本発明の第6観点によると、記録装置に装着されるカートリッジの製造方法であって、電子部品が実装された基板であり且つ前記電子部品と電気的に接続された端子が設けられた表面を有する基板を、前記基板の厚み方向と直交する一方向への前記基板の移動が収容空間を画定する筐体の一部である規制壁によって規制されるように、前記筐体の表面上に配置する第1工程と、前記第1工程後に、前記厚み方向に前記基板の前記表面と対向する対向面を有するカバー部材を前記筐体の前記表面に固定する第2工程とを備え、前記第2工程において、前記基板の前記表面の一部が前記対向面と対向し、且つ、前記端子が前記対向面と対向せずに露出されるという条件を満たしつつ、前記カバー部材の前記対向面と前記筐体の前記表面との間の前記厚み方向への距離が、前記基板の厚みよりも大きくなるようにすることを特徴とする、カートリッジの製造方法が提供される。
【0012】
上記第1〜第6観点によると、基板にストレスが生じ難く、基板及び基板に実装された電子部品の劣化を抑制することができる。
【0013】
第1観点に係る基板ユニットにおいて、前記第2部材が溶着、熱カシメ、及びネジの少なくともいずれかにより前記第1部材に接合されてよい。また、第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記接合工程において溶着、熱カシメ、及びネジの少なくともいずれかにより前記第2部材を接合してよい。
【0014】
第1観点に係る基板ユニットにおいて、前記第2部材が超音波溶着により前記第1部材に接合されてよい。また、第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記接合工程において超音波溶着により前記第2部材を接合してよい。この場合、第2部材が熱溶着や熱カシメにより第1部材に接合される場合に比べ、基板ユニット全体のサイズを小型化することができる。具体的には、第2部材が熱溶着や熱カシメにより第1部材に接合される場合、接合時に電子部品に熱が伝わるのを抑制するため、基板の外周領域(基板における電子部品が実装された領域よりも外側の領域)を大きくする必要が生じ得る。また、熱溶着や熱カシメの場合、凸部の先端が溶融して拡径するため、その分の領域を確保する必要がある。ネジの場合も、ネジ頭の分の領域を確保したり、ネジ締結時の応力伝達を考慮して基板の外周領域を大きくしたりする必要がある。これに対し、超音波溶着の場合、電子部品への熱伝達抑制のために基板の外周領域を大きくする必要がなく、また、凸部先端の拡径やネジ頭のための領域を確保する必要もないため、基板ユニット全体のサイズを小型化することができる。
【0015】
第1観点に係る基板ユニットにおいて、前記第1部材が、前記直交方向に突出した凸部を有し、前記基板は、前記凸部が貫通し且つ前記直交方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの孔を有し、前記第2部材が、前記凸部の一部を収容する穴を有してよい。また、第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記基板載置工程において、前記第1部材に形成された前記直交方向に突出した凸部を、前記基板に形成され且つ前記直交方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの孔に貫通させ、前記接合工程において、前記第2部材に形成された穴に前記凸部の一部を収容した状態で、前記第2部材を接合してよい。この場合、基板ユニットの製造時において、第1部材、第2部材、及び基板の位置決め精度の向上と、これら部材の組付作業の簡素化との両方を実現可能である。
【0016】
第1観点に係る基板ユニットにおいて、前記凸部が前記孔を貫通することで、前記基板は前記表面方向に所定範囲内で移動することが許容されており、前記電子部品が、前記基板の前記第1部材に対向した対向面に実装されており、前記第1部材の前記表面の前記電子部品と対向する領域が、この領域を前記電子部品と接触させない穴となっており、前記第1部材に設けられた前記穴は、前記基板が前記表面方向に前記所定範囲内で移動しても、前記電子部品が前記第1部材に設けられた前記穴と対向しているような位置及び寸法に形成されていてもよい。これにより、製造時及び完成後において電子部品が第1部材に接触することがないので、電子部品の脱落又は破損を防止することができる。
【0017】
第1観点に係る基板ユニットにおいて、前記第1部材に設けられた前記穴が、前記第1部材を貫通する孔であってもよい。これにより、電子部品が第1部材に接触するのを確実に防止できる。
【0018】
第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記接合工程において、前記基板を、前記第1部材と前記第2部材との間に前記表面と直交する直交方向及び前記表面に平行な表面方向に隙間を介して保持する。したがって、接合工程において、第1及び第2部材に外力が加わるが、基板には当該外力が作用し難い。また、基板への外力を考慮する必要性が低いため、接合工程において、第1部材と第2部材とを大きな接合強度で強固に固定し、両部材間での基板の保持力を高めることができる。
【0019】
第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記接合工程において、前記基板の前記表面方向に関する外縁の全周に亘って前記隙間を確保してよい。この場合、接合工程における基板への外力付加をより確実に抑制することができる。
【0020】
第2観点に係る基板ユニットの製造方法では、前記接合工程において、前記第2部材の前記表面に接合される面とは反対側の面に、超音波を発振する発振部材を配置し、前記第1部材の前記表面とは反対側の面における、前記第1部材を挟んで前記第2部材と対向し且つ前記基板と対向しない位置に、前記発振部材が発振した超音波を受振する受振部材を配置してよい。この場合、基板への超音波振動の付加をより確実に抑制することができる。
【0021】
第3観点に係るカートリッジは、第1溝が形成された第1筐体と第2溝が形成された第2筐体とを含む筐体41を有する。また、第4観点に係るカートリッジの製造方法は、上記第1及び第2収容工程を含む。これにより、カートリッジに基板ユニットを容易に取り付けることができる。
【0022】
第3観点に係るカートリッジにおいて、前記第1部材が、前記表面方向に突出した突起を有し、前記第1筐体は、前記突起が貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に貫通した前記突起を熱カシメすることにより、前記第1部材が前記第1筐体に固定されてよい。また、第4観点に係るカートリッジの製造方法では、前記第1収容工程において、前記第1部材に形成された前記表面方向に突出した突起を、前記第1筐体に形成された貫通孔に貫通させ、前記第2収容工程の後、前記貫通孔に貫通した前記突起を熱カシメすることにより、前記第1部材を前記第1筐体に固定する固定工程をさらに備えてよい。この場合、基板への外力付加を抑制しつつ、カートリッジに基板ユニットを強固に固定することができる。
【0023】
第3観点に係るカートリッジにおいて、前記電子部品は、前記基板上において2つの配列方向に互いに異なる密度で配列され、前記カートリッジが装着される装置本体の複数の本体側端子とそれぞれ接触する複数のカートリッジ側端子を含み、前記2つの配列方向は、低密配列方向、及び、前記低密配列方向よりも高い密度で前記カートリッジ側端子が配列された高密配列方向を含み、前記筐体が、前記複数のカートリッジ側端子を露出させる凹部と、前記凹部を画定する周壁と、を含み、前記周壁は、前記直交方向に延出した直交部と、前記直交方向に関して前記直交部よりも前記基板から離隔し、前記直交方向から見た前記凹部のサイズが大きくなる方向に前記直交方向に対して傾斜した傾斜部と、を含み、前記直交部は、前記直交方向の長さが互いに異なる複数の部分直交部を有し、前記複数の部分直交部の前記長さのうち、前記高密配列方向に関して前記カートリッジ側端子を挟む位置に配置された部分直交部の前記長さが最も長くてよい。
カートリッジ側端子が2つの配列方向に互いに異なる密度で配列されている場合、カートリッジ側端子が高い密度で配列された配列方向(高密配列方向)の方が自由度が小さくなる(即ち、端子間の位置決めに高い精度が要求される)。そこで上記のように、高密配列方向に対応する部分直交部の長さを最も長くすることで、高密配列方向の位置決めを優先的に行い、カートリッジ側端子と本体側端子との接触の信頼性を向上させることができる。
【0024】
第3観点に係るカートリッジにおいて、前記低密配列方向は、前記カートリッジが前記装置本体に装着される際に重力が作用する方向であってよい。即ち、重力の作用によって位置決め精度が悪化し得る方向に関して、カートリッジ側端子が低密度に配列されてよい。これにより、当該方向に関する自由度が大きくなり、重力の作用による位置決め精度の悪化を抑制することができる。
【0025】
第3観点に係るカートリッジにおいて、前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに形成された前記部分直交部は前記長さが一定であり、前記第1筐体に形成された前記部分直交部と、前記第2筐体に形成された前記部分直交部とは、前記長さが互いに異なってよい。この場合、第1及び第2筐体の各筐体に直交方向の長さが互いに異なる複数の直交部を形成する場合に比べ、構成を簡素化することができる。
【0026】
第5観点に係るカートリッジにおいて、前記基板は、前記厚み方向と直交する第2方向に関する前記筐体の前記表面の両端部のうちの一方の端部よりも他方の端部に近い位置に配置されており、前記カバー部材は、前記端子と前記他方の端部との間において、前記筐体の前記表面内で前記第2方向と直交する方向に関して、前記端子の形成範囲と重複していなくてもよい。これにより、前記第2方向をカートリッジの装着方向として、カートリッジを記録装置へ装着する際に、基板側端子と記録装置側端子との接触をカバー部材が阻害することがなく、両端子の接触を円滑に行うことが可能となる。
【0027】
第5観点に係るカートリッジにおいて、前記筐体の前記表面に凹み領域が設けられ、前記基板が前記筐体の前記凹み領域に嵌め込まれており、前記基板の前記表面と前記筐体の前記表面とが同一平面を形成していてもよい。これにより、記録装置のカートリッジの装着室に無駄なスペースを生じさせることをなくしつつ、多くのインク容量を確保することができる。
【0028】
第5観点に係るカートリッジにおいて、前記規制壁と前記基板との間に間隙が形成されており、前記規制壁は、前記第1方向に前記基板が所定範囲内で移動するのを許容してもよい。これにより、基板及び基板に実装された電子部品の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0029】
第5観点に係るカートリッジにおいて、前記規制壁は、前記筐体の前記表面に設けられた凸部によって構成されており、前記基板の前記表面とは反対側面には、前記厚み方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの穴が設けられ、前記凸部が前記穴と係合することで前記基板の移動が規制されていてもよい。これにより、規制壁を簡易な構成としつつ確実に基板の移動を規制することができる。
【0030】
第5観点に係るカートリッジにおいて、前記電子部品が前記基板の前記表面とは反対側の筐体対向面に実装されており、前記筐体の前記表面の前記電子部品と対向する領域が、この領域を前記電子部品と接触させない深さを有する凹部となっており、前記凹部は、前記第1方向に前記基板が前記所定範囲内で移動しても、前記電子部品が前記凹部と対向しているような位置及び寸法に形成されていてもよい。これにより、製造時及び完成後において電子部品が筐体に接触することがないので、電子部品の脱落又は破損を防止することができる。
【0031】
第6観点に係るカートリッジにおいて、前記第2工程において、前記カバー部材の固定を超音波溶着によって行ってもよい。これにより、カバー部材を容易且つ確実に固定することができる。
【0032】
第6観点に係るカートリッジにおいて、前記第1工程において、前記規制壁と前記基板との間に間隙を形成することによって、前記規制壁は、前記一方向に前記基板が所定範囲内で移動するのを許容してもよい。これにより、基板及び基板に実装された電子部品の劣化をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、基板にストレスが生じ難く、基板及び基板に実装された電子部品の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板ユニット及び液体カートリッジを備えたインクジェット式プリンタを示す斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略図である。
【図3】カートリッジを示す図であり、(a),(b)は互いに異なる方向から見たカートリッジの斜視図、(c)はカートリッジの平面図である。
【図4】カートリッジの内部を示す概略図である。
【図5】カートリッジの筐体の分解斜視図であり、(a)は上筐体、(b)は下筐体を示す。
【図6】基板ユニットとこれに接続された2つの排出管を示す斜視図である。
【図7】(a)〜(c)は、基板ユニット、ベース、及び枠の斜視図である。(d)〜(f)は、基板ユニット、ベース、及び枠の(a)〜(c)とは反対から見た斜視図である。
【図8】(a)は、図7(a)のVIIIA−VIIIA線に沿った、基板ユニット及び筐体の断面図である。(b)は、図7(a)のVIIIB−VIIIB線に沿った、基板ユニット及び筐体の断面図である。
【図9(a)】図8(a),(b)のIX方向から見た図である。
【図9(b)】図8(a)の部分拡大図である。
【図10】カートリッジの装着過程を示す概略図である。
【図11】カートリッジ及びプリンタ本体の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】(a)は、基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。(b)は、カートリッジの製造方法を示すフローチャートである。
【図13】(a)は、基板載置工程を説明するための平面図である。(b)は、接合工程を説明するための、図8(a)に対応する断面図である。(c)は、熱カシメによりベースを下筐体に固定する固定工程を示す、図9(a)に対応する図である。
【図14】本発明の別の実施形態に係る基板ユニットの製造方法において、熱カシメにより枠をベースに接合する接合工程を示す、図8(b)に対応する断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態に係るカートリッジを備えたインクジェット式プリンタの内部構造を模式的に示す概略図である。
【図16】図15に示すカートリッジの斜視図である。
【図17】図15に示すインク供給装置の概略断面図である。
【図18】図15に示すインク供給装置の装着室にカートリッジが装着された状態を示す概略断面図である。
【図19】カートリッジの要部斜視図であって、基板及び枠を取り付ける前の状況を示す図である。
【図20】カートリッジの要部斜視図であって、ベース領域に基板だけが取り付けられた状況を示す図である。
【図21】カートリッジの基板ユニット部分の要部斜視図である。
【図22】(a)は、第2工程を説明するための、部分断面図である。(b)は、第1筐体にフィルム及び第2筐体を接合するときの状況を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
(第1実施形態)
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る基板ユニット及び液体カートリッジを備えたインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0037】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、上から順に、3つの開口10d,10b,10cが形成されている。開口10bは給紙ユニット1b、開口10cはカートリッジ40(図2参照)をそれぞれ筐体1a内部に挿入するためのものである。開口10dには、下端の水平軸を支点として開閉可能な扉1dが嵌め込まれている。扉1dは、筐体1aの主走査方向(筐体1aの正面と直交する方向)に関して、搬送ユニット21(図2参照)と対向配置されている。開口10cにも、下端の水平軸を支点として開閉可能なカバー1cが設けられている。カートリッジ40が筐体1a内部に挿入された状態でカバー1cを閉じることにより、カートリッジ40の筐体1aからの脱落を防止することができる。
【0038】
次いで、図2を参照し、プリンタ1の内部構成について説明する。
【0039】
筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Aには、ブラックインク及び前処理液(以下、これらを「液体」と総称する場合がある。)をそれぞれ吐出する2つのヘッド2、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、及び、プリンタ1各部の動作を制御するコントローラ100が配置されている。空間B,Cにはそれぞれ、給紙ユニット1b及びカートリッジ40が配置される。即ち、空間Cが、プリンタ本体(プリンタ1のカートリッジ40以外の部分)におけるカートリッジ40が装着される部分(装着室)である。プリンタ1の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0040】
コントローラ100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、I/F(Interface)等を有する。ROMは、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等を記憶している。RAMは、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)を一時的に記憶可能である。コントローラ100は、I/Fを介して、カートリッジ40のメモリ141やホール素子71とのデータ送受信、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信等を行う。
【0041】
給紙ユニット1bは、トレイ23及びローラ25を有する。トレイ23は、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能である。トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。ローラ25は、コントローラ100による制御の下、給紙モータ125(図11参照)の駆動により回転し、トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット21に送られる。
【0042】
搬送ユニット21は、2つのローラ6,7、及び、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8を有する。ローラ7は、駆動ローラであって、コントローラ100による制御の下、その軸に接続された搬送モータ127(図11参照)の駆動により回転し、図2中時計回りに回転する。ローラ6は、従動ローラであって、ローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する。搬送ベルト8のループ内には、2つのヘッド2と対向するように、直方体形状のプラテン19が配置されている。搬送ベルト8の上側ループは、搬送ベルト8の外周面8aがヘッド2の下面(液体を吐出する吐出口が多数形成された吐出面)2aと所定距離離隔しつつ下面2aと平行に延在するよう、内周面側からプラテン19により支持されている。搬送ベルト8の外周面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。給紙ユニット1bから搬送ユニット21へと送られてきた用紙Pは、押さえローラ4によって搬送ベルト8の外周面8aに押え付けられた後、粘着力によって外周面8aに保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。
【0043】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向である。主走査方向とは、副走査方向に直交し且つ水平面に平行な方向である。
【0044】
用紙Pがヘッド2の直ぐ下方を通過する際に、コントローラ100による制御の下、ヘッド2が駆動し、ヘッド2の下面2aから用紙Pの上面に向けて液体(ブラックインク、及び、状況に応じて前処理液)が吐出されることで、用紙P上に所望の画像が記録される。そして用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8の外周面8aから剥離され、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口130から排紙部31へと排出される。各送りローラ対28の一方のローラは、コントローラ100による制御の下、送りモータ128(図11参照)の駆動により回転する。
【0045】
前処理液は、例えば、濃度向上作用(用紙Pに吐出されたインクの濃度を向上させる作用)、インクの滲みや裏抜け(用紙Pの表面に着弾したインクが用紙Pの層を貫通して裏面に滲み出す現象)の防止作用、インクの発色性や速乾性を向上させる作用、インク着弾後の用紙Pの皺やカールを抑制する作用等を有する液体である。前処理液としては、例えば、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等を用いてよい。
前処理液を吐出するヘッド2は、ブラックインクを吐出するヘッド2よりも、用紙Pの搬送方向上流側に配置されている。
【0046】
ヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。2つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。各ヘッド2において、上面には、可撓性チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面2aには、多数の吐出口が形成され、内部には、可撓性チューブ及びジョイントを介してカートリッジ40の対応するリザーバ42からそれぞれ供給された液体が吐出口に至るまでの流路が形成されている。
【0047】
カートリッジ40は、ブラックインク及び前処理液をそれぞれ収容する2つのリザーバ42を有する(図4参照)。カートリッジ40のリザーバ42にそれぞれ収容されている液体は、可撓性チューブ及びジョイントを介して、対応するヘッド2に供給される。カートリッジ40は、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能である。したがって、プリンタ1のユーザは、使用済みのカートリッジ40を筐体1aから取り外し、新品のカートリッジ40と交換してこれを筐体1aに装着することができる。
【0048】
次いで、図3〜図9を参照し、カートリッジ40の構成について説明する。
【0049】
カートリッジ40は、図3及び図4に示すように、筐体41、ブラックインクに対応するブラックインクユニット40B、前処理液に対応する前処理液ユニット40P、及び、基板ユニット140を有する。ユニット40B,40Pは、それぞれリザーバ42、排出管43等を含み、リザーバ42のサイズが異なる点を除き、略同じ構成を有する。
【0050】
筐体41は、図3及び図4に示すように、略直方体形状である。筐体41の内部は、図4に示すように、区画され、2つの部屋R1,R2が形成されている。右方の部屋R1に各ユニット40B,40Pのリザーバ42、左方の部屋R2に各ユニット40B,40Pの排出管43が配置されている。
【0051】
リザーバ42は液体を収容する袋であり、ユニット40Bのリザーバ42はブラックインク、ユニット40Pのリザーバ42は前処理液を収容している。リザーバ42の開口部には、排出管43の基端が接続されている。
【0052】
排出管43は、リザーバ42に収容された液体をヘッド2に供給するための流路を画定している。排出管43は、図3(b)及び図4に示すように、先端が筐体41外に突出している。当該先端には、リザーバ42とは反対側の開口を塞ぐように、ゴム等の弾性材料からなる栓が圧縮状態で設けられている(図示略)。当該先端及び栓の外側にはキャップ46が設けられている。キャップ46の中央に設けられた開口を介して栓が露出している。
【0053】
筐体41は、図3及び図4に示すように、略直方体形状であり、外面41a〜41h等を有する。外面41a,41bは、共に装着方向(カートリッジ40が空間Cに装着される際のカートリッジ40の空間Cに対する移動方向)と略平行であり、挿入方向(中空針153が排出管43の内部に挿入される際の中空針153の排出管43に対する移動方向)に関して互いに離隔して対向している。外面41aには、排出管43が設けられている。外面41c,41dは、共に装着方向と略直交し且つ挿入方向と略平行であり、挿入方向に関して外面41a,41bの間にあり、装着方向に関して互いに離隔して対向している。外面41cは装着方向下流側にある先端面であり、外面41dは装着方向上流側にある後端面である。外面41e,41f(図2参照)は、共に、外面41a〜41dのそれぞれと略直交し、挿入方向に関して外面41a,41bの間且つ装着方向に関して外面41c,41dの間に設けられている。外面41e,41fは、互いに略平行であり、鉛直方向に関して互いに離隔して対向している。外面41gは、外面41eと略平行であり、鉛直方向に関して外面41e,41fの間且つ装着方向に関して外面41e,41cの間に設けられている。外面41hは、外面41eと外面41gとを接続すると共に、鉛直方向と略平行である。
【0054】
本実施形態において、装着方向は主走査方向と平行であり、挿入方向は副走査方向と平行である。装着方向及び挿入方向は互いに直交している。
【0055】
筐体41は、さらに、カートリッジ40が空間Cに装着される際に筐体41を筐体1aにロックするための穴48、外面41g,41h等で画定された凹部41r、及び、ユーザが把持可能な把持部49を有する。穴48は、外面41gに形成されており、カートリッジ40が空間Cに装着される際に筐体1aに設けられた嵌合部材148(図10参照)と係合する。把持部49は、外面41e,41dの角部に設けられた、外面41eにおける装着方向上流側の辺に沿って長尺な凹部からなる。
【0056】
外面41cにおける挿入方向上流側の端部近傍部分に、凹部41c1が形成されている。凹部41c1の底面に、基板ユニット140が配置されている。基板ユニット140は、図7に示すように、基板142、ベース143、枠144、及びフレキシブルケーブル145を含む。
【0057】
基板142は、略矩形状の板部材であり(図13(a)参照)、裏面にメモリ141、表面に8つの端子170c〜177cを有する。
【0058】
端子170c〜177cは、凹部41c1を介して外部に露出されている。端子170c〜177cは全て、同じサイズ及び形状を有し、カートリッジ40の外面に露出している。端子170c〜177cの形状は、副走査方向と平行な2つの短辺と鉛直方向と平行な2つの長辺とからなる長方形である。
【0059】
端子170c〜177cは、図9(a)に示すように、基板142上において2つの配列方向に互いに異なる密度で配列されている。本実施形態において、配列方向は、鉛直方向(低密配列方向)、及び、副走査方向(低密配列方向よりも高い密度で端子が配列された、高密配列方向)である。鉛直方向に沿って2つずつ、副走査方向に沿って4つずつ、計8つの端子170c〜177cが設けられている。
【0060】
図11に示すように、センサ信号出力端子(SB)170cはユニット40Bのホール素子71と電気的に接続され、センサ信号出力端子(SP)171cはユニット40Pのホール素子71と電気的に接続され、データ出力端子(DO)172c及びデータ入力端子(DI)173cはメモリ141と電気的に接続され、電力入力端子(V)174cは2つのホール素子71及びメモリ141と電気的に接続され、3つの接地端子(G)175c,176c,177cはメモリ141、ユニット40Pのホール素子71、及びユニット40Bのホール素子71のそれぞれと電気的に接続されている。ホール素子71は、排出管43の上壁に取り付けられており、排出管43の下壁に取り付けられ磁石(図示略)から発生された磁場を電気信号に変換し、電気信号を生成する。ホール素子71は、排出管43の内部に配置されたバルブ(図示略)の位置に応じた大きさの電気信号を生成する。バルブは、排出管43の内部の流路を開く開の位置と、当該流路を閉じる閉の位置とに移動可能である。
【0061】
端子170c,171c,174c,175c,176c,177cと各ホール素子71との電気的接続は、図6に示すように、フレキシブルケーブル145の配線を介して行われている。ユニット40P,40Bの排出管43にはそれぞれ、フレキシブルケーブル145が取り付けられるプレート70xが固定されている。端子172c,173c,174c,175c,176c,177cとメモリ141との電気的接続は、基板142を貫通するスルーホール内に充填された導電性材料を介して行われている。
【0062】
メモリ141は、EEPROM等からなり、各リザーバ42内の液体の残量、センサ出力値(各ホール素子71からの出力値)等に関するデータを予め記憶している。さらに、カートリッジ40が空間Cに装着されているとき、コントローラ100は、メモリ141に記憶されているデータを読み取り可能であると共に、メモリ141に記憶されている各リザーバ42内の液体の残量に関するデータを書き換え可能である。
【0063】
ベース143は、基板142よりも一回り大きなサイズの略矩形状の板部材である。ベース143は、基板142と対向する表面143a、表面143aと直交する方向(以下、「直交方向」と称す。)に突出した2つの凸部143x、表面143aに平行な方向(以下、「表面方向」と称す。)に突出した2つの突起143y、表面143aと直交する方向に貫通した開口143z、及び、表面143aの下部中央に設けられたフック143fを有する。
【0064】
2つの凸部143xは、表面143aの上部において、互いに離隔して配置されている。基板142は、直交方向から見て凸部143xよりも大きなサイズの、2つの孔142xを有する(図13(a)参照)。孔142xは、基板142の両側面に開口している。枠144は、2つの穴144xを有する。2つの凸部143xは、それぞれ、孔142xを貫通し、穴144xに収容されている。対応する凸部143xと孔142xの内周面は、凸部143xが孔142xを貫通した状態で、鉛直方向及び副走査方向(縦及び横方向)に関して、それぞれ所定距離(例えば、0.2mm)離れるように、構成されている。このため、基板142が、鉛直方向及び副走査方向のそれぞれに0.2mmずつ移動可能となる。
【0065】
2つの突起143yは、ベース143の下部において、互いに離隔して配置されている。突起143yは、カートリッジ40の製造方法に係る固定工程Q6(図12(b)参照)において、図13(c)に示すように、下筐体41xの貫通孔41x2に貫通され、熱カシメにより下筐体41xに固定される部分である。突起143yは、固定工程Q6の前は図7のように真直ぐな形状であるが、固定工程Q6の後は熱カシメによって変形した形状(図13(c)に一点鎖線で示すように、先端が拡径した形状)となる。
【0066】
開口143zは、ベース143の下部中央において、基板142のメモリ141と対向する位置に設けられている。図7(d)に示すように、開口143zを介して、メモリ141が基板ユニット140の裏面に露出している。このメモリ141が開口143zから露出した状態で、開口143zの内周面とメモリ141とが、鉛直方向及び副走査方向(縦及び横方向)に関して、それぞれ所定距離(例えば、0.4mmであって対応する凸部143xと孔142xの内周面との離隔距離を超える距離)以上離れるように、開口143zが形成されている。このため、基板142が表面方向に0.2mmずつ移動しても、メモリ141が開口143zと対向し、例えば、超音波溶着時にメモリ141がベース143に接触することがない。この結果、基板ユニット140の製造時及び完成後において、メモリ141の脱落又は破損を防止することができる。また、開口143zがベース143を貫通しているため、メモリ141がベース143に接触するのを確実に防止できる。
【0067】
フック143fは、ベース143における開口143zの下辺を画定する壁から、凸部143xと同じ方向に延出している。基板142は、孔142xを貫通した凸部143xと、フック143fとによって、ベース143に支持されている。
【0068】
枠144は、基板142よりも一回り大きなサイズのコの字状の部材であり、2つの穴144xが形成された主部144aと、主部144aから延出した一対の延出部144bとを含む。枠144は、表面143aにおける基板142と対向する領域以外の領域(基板142の周囲)に、超音波溶着により接合されている。図7(b)に表面143aにおける枠144が接合される領域、図7(f)に枠144における表面143aに接合される領域がそれぞれハッチングで示されている。また、図8(a),(b)に、枠144の溶着部144wが示されている。枠144は、矩形状である表面143aの4辺のうち、下辺を除く3辺に沿って、表面143aに固定されている。
【0069】
基板142は、ベース143及び枠144に対して固定されておらず、ベース143と枠144との間に直交方向及び表面方向に隙間を介して保持されている(図8(a),(b)及び図13(b)参照)。
【0070】
次に、副走査方向及び鉛直方向に関する寸法間の関係について、図9(b)をさらに参照して説明する。図9(b)に示すように、ベース143上に配置された基板142は、副走査方向に長さSxを有している。基板142の上面にある8つの端子170c〜177cは、上述したように、鉛直方向に沿って2つずつ、副走査方向に沿って4つずつ配列されている。端子175c及び176cが、8つの端子170c〜177cの中で基板142の左端142aに最も近い端子である。また、端子174c及び177cが、8つの端子170c〜177cの中で基板142の右端142bに最も近い端子である。端子175c及び176cの左端から基板142の左端142aまでの距離はaxとなっており、端子174c及び177cの右端から基板142の右端142bまでの距離はbxとなっている。
【0071】
枠144の一対の延出部144bは、基板142の副走査方向の両側に配置されている。図9(b)において左方に描かれた延出部144bの直交方向に延びた部分の内側面144b1と、右方に描かれた延出部144bの直交方向に延びた部分の内側面144b3とは、副走査方向に距離Kxだけ離隔している。すなわち、一対の延出部144bは基板142の副走査方向への移動を規制する壁(規制壁)として機能しており、距離Kxは、一対の延出部144bによって規定される基板142の副走査方向への可動範囲を表している。上述したとおり、基板142の副走査方向への移動は凸部143xと孔142xとの係合により0.2mmに制限されている。本実施形態において、距離Kx−Sxは0.2mmとなっている。したがって、基板142の左端142aが内側面144b1に接触すること、及び、基板142の右端142bが内側面144b3に接触することのいずれも生じ得る。
【0072】
枠144の一対の延出部144bは、その直交方向に延びた部分の先端において互いに近づくように直角に折れ曲がっており、それによって、各延出部144bには副走査方向に延びた部分が形成されている。図9(b)において左方に描かれた延出部144bの副走査方向に延びた部分の先端144b2は、内側面144b1から副走査方向に距離cxだけ離れている。この副走査方向に延びた部分の下面(対向面の第1領域)は、基板142の左端142aから連続した基板142の上面(端子表面)の一部に対向している。
【0073】
また、右方に描かれた延出部144bの副走査方向に延びた部分の先端144b4は、内側面144b3から副走査方向に距離dxだけ離れている。この副走査方向に延びた部分の下面(対向面の第2領域)は、基板142の右端142bから連続した基板142の上面(端子表面)の一部に対向している。
【0074】
本実施形態において、上記6つの長さKx、Sx、ax、bx、cx及びdxには、以下の2つの不等式で示す関係が成り立っている。
Kx−Sx<cx<ax (1)
Kx−Sx<dx<bx (2)
【0075】
不等式(1)の前半(Kx−Sx<cx)は、基板142の右端142bが内側面144b3に接触したときにおいても、対向面の第1領域が基板142の端子表面と対向しているという条件を表している。不等式(1)の後半(cx<ax)は、基板142の左端142aが内側面144b1に接触したときにおいても、基板142の左端142aに最も近い端子175c及び176cが、対向面の第1領域と対向せずに露出しているという条件を表している。
【0076】
不等式(2)の前半(Kx−Sx<dx)は、基板142の左端142aが内側面144b1に接触したときにおいても、対向面の第2領域が基板142の端子表面と対向しているという条件を表している。不等式(2)の後半(dx<bx)は、基板142の右端142bが内側面144b3に接触したときにおいても、基板142の右端142aに最も近い端子174c及び177cが、対向面の第2領域と対向せずに露出しているという条件を表している。
【0077】
以上の説明は副走査方向に関する寸法間の関係についてであったが、これと同様の関係が鉛直方向に関する寸法間でも成り立っている。このとき、基板142の鉛直方向への長さをSyと表すものとする。また、枠144の主部144aの直交方向に延びた部分の内側面と、フック143fの直交方向に延びた部分の内側面との離隔距離をKyと表すものとする。すなわち、主部144a及びフック143fは基板142の鉛直方向への移動を規制する壁(規制壁)として機能している。上述したように、基板142の鉛直方向への移動は凸部143xと孔142xとの係合により0.2mmに制限されている。しかしながら、本実施形態において、距離Ky−Syが0.2mmとなっているので、基板142の上端が枠144の主部144aの直交方向に延びた部分の内側面に接触すること、及び、基板142の下端がフック143fの直交方向に延びた部分の内側面に接触することのいずれも生じ得る。
【0078】
4つの端子175c,170c,171c,174cが、8つの端子170c〜177cの中で基板142の鉛直方向の一方の端部(図9(a)における上端)に最も近い端子である。また、4つの端子176c,173c,172c,177cが、8つの端子170c〜177cの中で基板142の鉛直方向の他方の端部(図9(a)における下端)に最も近い端子である。4つの端子175c,170c,171c,174cの上端から、基板142の上端までの距離をay、4つの端子176c,173c,172c,177cの下端から基板142の下端までの距離をbyと表すものとする。
【0079】
枠144の主部144a及びフック143fは、その直交方向に延びた部分の先端において互いに近づくように直角に折れ曲がっており、それによって、主部144a及びフック143fには鉛直方向に延びた部分が形成されている。主部144aの鉛直方向に延びた部分の先端は、その直交方向に延びた部分の内側面から鉛直方向に距離cyだけ離れている。この鉛直方向に延びた部分の下面(対向面の第3領域)は、基板142の上端から連続した基板142の上面(端子表面)の一部に対向している。
【0080】
また、フック143fの鉛直方向に延びた部分の先端は、その直交方向に延びた部分の内側面から鉛直方向に距離dyだけ離れている。この鉛直方向に延びた部分の下面(対向面の第4領域)は、基板142の下端から連続した基板142の上面(端子表面)の一部に対向している。
【0081】
本実施形態において、上記6つの長さKy、Sy、ay、by、cy及びdyには、以下の2つの不等式で示す関係が成り立っている。これらが成り立つことで、上述した副走査方向の場合と同様に、基板142が鉛直方向に可能な範囲で移動したとしても、鉛直方向の両端において基板142が対向面と対向していること、及び、8つの端子170c〜177cが対向面と対向せずに露出することが担保される。
Ky−Sy<cy<ay (3)
Ky−Sy<dy<by (4)
【0082】
ここで、基板ユニット140の筐体41に対する取り付け形態、及び、筐体41における基板ユニット140が取り付けられる部分の構成について説明する。
【0083】
筐体41は、図5に示すように、上筐体41y及び下筐体41xを含み、これら筐体41x,41yが互いに組み付けられることで、リザーバ42の収容空間を画定している。上筐体41yに形成された溝41y1と下筐体41xに形成された溝41x1とに、ベース143の外周部分(ベース143における枠144が接合された部分よりも外側の部分)が収容されている。ベース143の外周部分における上辺は溝41y1、ベース143の外周部分における上辺以外の3辺は溝41x1に収容されている。即ち、図9(a)に示すように、ベース143の上辺は上筐体41y、ベース143の下辺及び両側辺は下筐体41xにそれぞれ支持されている。
【0084】
筐体41は、図8(a),(b)に示すように、凹部41c1を画定する周壁41c2を有する。周壁41c2は、直交方向(主走査方向と平行な方向)に延出した3つの部分直交部41c3xと1つの部分直交部41c3yとからなる四角筒形の直交部、及び、直交方向に対して傾斜した3つの部分傾斜部41c4xと1つの部分傾斜部41c4yとからなる四角錐台形の傾斜部を含む。3つの部分直交部41c3x及び3つの部分傾斜部41c4xは下筐体41xに形成されており、部分直交部41c3y及び部分傾斜部41c4yは上筐体41yに形成されている。部分傾斜部41c4x,41c4yは、直交方向に関して部分直交部41c3x,41c3yよりも基板142から離隔し、直交方向から見た凹部41c1のサイズが大きくなる方向に傾斜している。
【0085】
図8(a),(b)に示すように、3つの部分直交部41c3xの直交方向の長さLxは、部分直交部41c3yの直交方向の長さLyよりも長い。また、3つの部分直交部41c3xの直交方向の長さLxと部分傾斜部41c4xの直交方向の長さDxとの和は、部分直交部41c3yの直交方向の長さLyと部分傾斜部41c4yの直交方向の長さDyとの和に等しい(即ち、(Lx+Dx)=(Ly+Dy)である)。
【0086】
次いで、図2及び図10を参照し、プリンタ本体におけるカートリッジ40の装着室(空間C)の構成について説明する。
【0087】
空間Cは、筐体1aの壁面によって画定されている。当該壁面は、壁面1aa,1ab,1ac,1af等を有する。
【0088】
壁面1aa,1abは、共に装着方向と略平行であり、挿入方向に関して互いに離隔して対向している。壁面1aaには、ユニット40B,40Pにそれぞれ対応する2つの中空針153、及び、これら中空針153を支持する支持体154が設けられている。支持体154は、移動機構155(図11参照)の駆動によって、筐体1aに対して挿入方向及び挿入方向と逆の方向に移動可能である。中空針153は、支持体154の当該移動によって、排出管43の内部に挿入されていない非挿入位置と排出管43の内部に挿入された挿入位置とを選択的に取り得る。2つの中空針153は、チューブ及びジョイントを介して、ブラックインクを吐出するヘッド2及び前処理液を吐出するヘッド2のそれぞれと連通している。壁面1acは、装着方向と略直交し、装着室の装着方向下流端部に設けられた面であり、挿入方向に関して壁面1aa,1abの間にある。壁面1afは、壁面1aa,1ab,1acのそれぞれと略直交し、空間Cの底面を構成する。壁面1afにおける装着方向上流側端部近傍には、把持部49を把持するユーザの指が挿入可能な凹部1afx(図2参照)が設けられている。
【0089】
基板182は、基板142と略同じサイズであり、カートリッジ40が空間Cに装着される際に基板142と対向する位置に配置されている。基板182の表面には、8つの端子170c〜177cにそれぞれ対応する8つの端子170p〜177p(図11参照)が設けられている。図11に示すように、センサ信号受信端子(SB)170p、センサ信号受信端子(SP)171p、データ受信端子(DO)172p、及びデータ送信端子(DI)173pはコントローラ100と電気的に接続され、電力出力端子(V)174pは電源158と電気的に接続され、3つの接地端子(G)175p,176p,177pは接地されている。電源158は筐体1a内に設けられている。
【0090】
次いで、図10及び図11等を参照し、カートリッジ40の空間Cへの装着からカートリッジ40とヘッド2との連通形成までの過程について説明する。図11では、電力供給線を太線で示し、信号線を細線で示している。
【0091】
カートリッジ40を空間Cに装着するとき、プリンタ1のユーザは、先ず、カバー1c(図1参照)を開ける。その後、ユーザは、例えば片手で把持部49(図3参照)を把持し、当該片手の親指以外の4本の指を凹部1afx(図2参照)に挿入する。そしてこの状態で、カートリッジ40を装着方向に移動させ、空間Cに挿入する(図10(a)参照)。このときカートリッジ40は、図10(b)に示す位置まで挿入される。
【0092】
カートリッジ40が図10(b)に示す位置に至るまでの過程において、基板182が凹部41c1内に挿入されて基板142と接触し、端子170c〜177cと端子170p〜177pとが接触する。このとき、先ず、図8に示す部分傾斜部41c4x,41c4yによって凹部41c1内に基板182がガイドされ、その後、3つの部分直交部41c3x及び1つの部分直交部41c3yによって基板182が基板142に対して位置決めされる。この際、副走査方向(後述する高密配列方向)に端子170c〜177cを挟む位置にある2つの部分直交部41c3xは、部分直交部41c3yよりも直交方向の長さが長い(Lx>Ly)ため、鉛直方向(後述する低密配列方向)に端子170c〜177cを挟む位置にある部分直交部41c3xと部分直交部41c3yとの両方が基板182と接触するよりも先に基板と接触し得る。したがって、鉛直方向及び副走査方向の各方向に関する位置決めにおいて、副走査方向(高密配列方向)に関する位置決めの方が先に行われる。
【0093】
このようにして、端子170c〜177cが端子170p〜177pとそれぞれ接触し、端子170c〜177cと端子170p〜177pとの間の電気的接続が実現される。これにより、電源158から端子174p,174cを介してホール素子71及びメモリ141に電力が供給される。さらに、コントローラ100は、端子170c,170pを介したユニット40Bのホール素子71からの信号の受信、端子171c,171pを介したユニット40Pのホール素子71からの信号の受信、端子172c,172pを介したメモリ141からのデータ読み取り、及び、端子173c,173pを介したメモリ141へのデータ書き込みや書き換えを行えるようになる。
【0094】
カートリッジ40が図10(b)に示す位置に至ると同時に、筐体1aに設けられた嵌合部材148の凸部(図示略)が穴48に嵌合し、筐体41が移動不能に固定(ロック)される。カートリッジ40が図10(b)に示す位置に至った後、ユーザがカバー1c(図1参照)を閉じると、装着検出スイッチ159(図11参照)がON信号を出力する。コントローラ100は、当該ON信号の受信により、カートリッジ40の装着が完了したと判断する。
【0095】
装着検出スイッチ159は、筐体1aにおける開口10c(図1参照)を画定する壁面に設けられた、凸部を有する。凸部は、カバー1cが開いているとき突出状態にあり、カバー1cが閉じられる際にカバー1cに押されて壁面内に後退する。装着検出スイッチ159は、凸部が突出状態にあるときにOFF信号、凸部が壁面内に後退した状態にあるときにON信号を出力する。
【0096】
コントローラ100は、カートリッジ40の装着が完了したと判断すると、メモリ141からデータ(各リザーバ42内の液体の残量、センサ出力値等に関するデータ)を読み取り、さらに移動機構155(図11参照)を制御し、図10(c)に示すように支持体154をこれに支持された2つの中空針153と共に挿入方向に移動させる。中空針153の移動が開始されると、各ユニット40B,40Pにおいて、先ず、中空針153が排出管43の先端に設けられた栓を主走査方向に貫通し、さらに、中空針153が排出管43の内部に配置されたバルブの弁体を押しながら移動することで、バルブが閉の位置から開の位置に移動し、排出管43を介したリザーバ42とヘッド2との連通が形成される。
【0097】
コントローラ100は、メモリ141から読み取った出力値と、各ユニット40B,40Pのホール素子71から受信した信号とに基づいて、各ユニット40B,40Pにおいて、排出管43内のバルブが開の位置に配置されたか否かを判断する。
【0098】
各ユニット40B,40Pのバルブが開の位置に配置されていると判断した場合、コントローラ100は、外部装置からの記録指令の受信の有無を判断する。記録指令を受信した場合、コントローラ100は、ブラックインク及び前処理液の各液体について、使用量が残量未満であるか否かを判断する。液体の使用量は、当該記録指令に係る記録時に吐出されるべき液体の量のことであり、記録指令に含まれる画像データに基づいて算出される。液体の残量としては、メモリ141から読み取ったデータが使用される。使用量が残量以上の場合、コントローラ100は、プリンタ1のディスプレイやスピーカ等の出力手段160(図11参照)によりエラー報知を行い、プリンタ1の各部の動作を停止させる。使用量が残量未満の場合、コントローラ100は、画像データに基づく画像が用紙Pに記録されるよう、給紙モータ125、搬送モータ127、送りモータ128、ヘッド2等の駆動を制御する。
【0099】
次いで、図12(a)及び図13(a),(b)を参照し、基板ユニット140の製造方法について説明する。
【0100】
先ず、基板142、ベース143、枠144、及びフレキシブルケーブル145を準備する(P1)。P1の後、基板142にフレキシブルケーブル145を接続する(P2)。このとき、フレキシブルケーブル145の各配線と、基板142の端子170c,171c,174c,175c,176c,177cとを電気的に接続する。
【0101】
P2の後、基板142をベース143の表面143aと対向させ、表面143aに載置する(P3:基板載置工程)。このとき、図13(a)に示すように、凸部143xを孔142xに貫通させる。P3の後、穴144xに凸部143xを収容しつつ、枠144をベース143上に載置し、ベース143の表面143aにおける図13(a)にハッチングで示す領域に枠144を接合する(P4:接合工程)。
【0102】
P4では、ベース143と枠144との間において、直交方向及び表面方向に、隙間を介して基板142を保持する(図13(b)参照)。本実施形態では、基板142の外縁の全周に亘って隙間を確保する。
【0103】
P4では、予め、図13(b)に示すように、枠144の表面(ベース143に接合される裏面とは反対側の面)に発振部材501を配置し、ベース143の裏面(表面143aとは反対側の面)における接合領域(図13(a)にハッチングで示す領域)と対向する部分に受振部材502を配置する。そしてこの状態で発振部材501から超音波を発振させると、超音波は、枠144及びベース143を通り、受振部材502によって受振される。このとき、超音波が枠144及びベース143の接合領域に伝わり、枠144におけるベース143と接触する部分が溶融する。これにより、枠144がベース143に接合され、枠144に溶着部144wが形成される。このように、本実施形態では、超音波溶着により枠144を接合する。
【0104】
以上の工程により、基板ユニット140が完成する。
【0105】
次いで、図12(b)及び図13(c)を参照し、カートリッジ40の製造方法について説明する。
【0106】
先ず、上記のようにして製造された基板ユニット140、筐体41、及びユニット40B,40Pを準備する(Q1)。Q1の後、図5(b)に示すように、下筐体41xの溝41x1にベース143の外周部分の一部(下辺及び両側辺)を収容する(Q2:第1収容工程)。これにより、基板ユニット140を下筐体41xに取り付ける。Q2では、図13(c)に示すように、ベース143の突起143yを下筐体41xに形成された貫通孔41x2に貫通させる。
【0107】
Q2の後、下筐体41x内にユニット40B,40Pを配置する(Q3)。Q3の後、図6に示すように、フレキシブルケーブル145を各排出管43のプレート70xに固定する(Q4)。このとき、フレキシブルケーブル145の各配線と、各ホール素子71とを電気的に接続する。
【0108】
Q4の後、上筐体41yを下筐体41xに組み付け、図5(a)に示すように、上筐体41yの溝41y1にベース143の外周部分の上記一部以外の部分(上辺)を収容する(Q5:第2収容工程)。Q5の後、貫通孔41x2に貫通した突起143yを熱カシメすることにより、ベース143を下筐体41に固定する(Q6)。
【0109】
Q6では、予め、図13(c)に示すように、上筐体41yの上方における基板ユニット140と対向する位置に支持部材503を配置し、下筐体41xの下方における基板ユニット140と対向する位置に加熱加圧部材504を配置する。このとき、支持部材503の2つの凸部503yを、上筐体41yに形成された2つの孔41y2(図3(a),(c)も参照)にそれぞれ挿入し、ベース143の上壁に当接させる。また、加熱加圧部材504の2つの凹部504yをそれぞれ2つの突起143yの先端と対向させる。そしてこの状態で加熱加圧部材504を用いてベース143に対して加熱及び加圧を行うことで、突起143yの先端が塑性変形し、図13(c)に一点鎖線で示すように、凹部504yの形状に沿った形状となる。これにより、突起143yの先端の拡径部分が下筐体41xの下面に係合し、突起143yが貫通孔41x2に貫通した状態で、ベース143が下筐体41xに対して固定される。
【0110】
以上の工程により、カートリッジ40が完成する。
【0111】
以上に述べたように、本実施形態に係る基板ユニット140によると、基板142が、ベース143及び枠144のいずれにも固定されておらず、ベース143と枠144との間に隙間(遊び)を介して保持されている(図8(a),(b)及び図13(b)参照)。そのため、基板142にストレスが生じ難く、基板142及び基板142に実装された電子部品(メモリ141や端子170c〜177c)の劣化を抑制することができる。
【0112】
本実施形態に係る基板ユニット140によると、基板ユニット140の製造時のみならず、基板ユニット140の運搬時や基板ユニット140のカートリッジ40への取付作業時においても、基板142にストレスが生じ難い。例えば、基板ユニット140の運搬時や基板ユニット140のカートリッジ40への取付作業時に、基板ユニット140に外力が作用しても、上記隙間が存在するため、直接基板142に手で触れる等しない限り、基板142には外力が作用し難い。
【0113】
さらに、本実施形態に係る基板ユニット140によると、隙間内の空気による電子部品の冷却効果を期待することもできる。
【0114】
本実施形態に係る基板ユニット140によると、枠144が超音波溶着によりベース143に接合されている。また、本実施形態に係る基板ユニット140の製造方法によると、接合工程P4において超音波溶着により枠144をベース143に接合する。この場合、枠144が熱溶着や熱カシメによりベース143に接合される場合に比べ、基板ユニット140全体のサイズを小型化することができる。具体的には、枠144が熱溶着や熱カシメによりベース143に接合される場合、接合時に電子部品(メモリ141や端子170c〜177c)に熱が伝わるのを抑制するため、基板142の外周領域(基板142における電子部品が実装された領域よりも外側の領域)を大きくする必要が生じ得る。また、熱溶着や熱カシメの場合、凸部の先端が拡径するため、その分の領域を確保する必要がある。ネジの場合も、ネジ頭の分の領域を確保したり、ネジ締結時の応力伝達を考慮して基板142の外周領域を大きくしたりする必要がある。これに対し、超音波溶着の場合、電子部品への熱伝達抑制のために基板142の外周領域を大きくする必要がなく、また、凸部先端の拡径やネジ頭のための領域を確保する必要もないため、基板ユニット140全体のサイズを小型化することができる。
【0115】
本実施形態に係る基板ユニット140によると、ベース143の凸部143xが、基板142の孔142xに貫通し、さらに枠144の穴144xに収容されている。また、本実地形態の基板ユニット140の製造方法によると、基板載置工程P3において、ベース143の凸部143xを基板142の孔142xに貫通させ、接合工程P4において、枠144の穴144xに凸部143xを収容した状態で、枠144をベース143に接合する。これにより、基板ユニット140の製造時において、ベース143、枠144、及び基板142の位置決め精度の向上と、これら部材の組付作業の簡素化との両方を実現可能である。
【0116】
本実施形態に係る基板ユニット140の製造方法によると、接合工程P4において、基板142を、ベース143と枠144との間に直交方向及び表面方向に隙間を介して保持する。したがって、接合工程P4において、枠144及びベース143に外力(本実施形態では、超音波振動)が加わるが、基板142には当該外力が作用し難い。また、基板142への外力を考慮する必要性が低いため、接合工程P4において、枠144とベース143とを大きな接合強度で強固に固定し、両部材間での基板142の保持力を高めることができる。
【0117】
しかも、本実施形態に係る基板ユニット140の製造方法では、接合工程P4において、基板142の表面方向に関する外縁の全周に亘って隙間を確保する。これにより、接合工程P4における基板142への外力付加をより確実に抑制することができる。
【0118】
本実施形態に係る基板ユニット140の製造方法では、接合工程P4において、図13(b)に示すように、ベース143を挟んで枠144と対向し且つ基板142と対向しない位置に受振部材502を配置する。これにより、基板142への超音波振動の付加をより確実に抑制することができる。
【0119】
本実施形態に係るカートリッジ40は、溝41x1が形成された下筐体41xと溝41y1が形成された上筐体41yとを含む筐体41を有する。また、本実施形態に係るカートリッジ40の製造方法によると、下筐体41xの溝41x1にベース143の外周部分の一部を収容し(図5(b)参照)、その後、上筐体41yを下筐体41xに組み付け、上筐体41yの溝41y1にベース143の外周部分の上記一部以外の部分を収容する(図5(a)参照)。これにより、カートリッジ40に基板ユニット140を容易に取り付けることができる。
【0120】
本実施形態に係るカートリッジ40は、貫通孔41x2に貫通した突起143yを熱カシメすることにより、ベース143が下筐体41xに固定されている。また、本実施形態に係るカートリッジ40の製造方法によると、第1収容工程Q2において、ベース143の突起143yを、下筐体41xに形成された貫通孔41x2に貫通させる。そして、第2収容工程Q5の後、貫通孔41x2に貫通した突起143yを熱カシメすることにより、ベース143を下筐体41xに固定する(Q6)。この場合、Q6において、加圧に係る外力が主にベース143に作用するため、基板142への外力付加を抑制しつつ、カートリッジ40に基板ユニット140を強固に固定することができる。
【0121】
さらに、本実施形態に係るカートリッジ40によると、図8(a),(b)に示すように、副走査方向(高密配列方向)に関して端子170c〜177cを挟む位置に配置された2つの部分直交部41c3xの長さLxが直交部に設けられた複数の部分直交部の中で最も長い。端子170c〜177cが2つの配列方向に互いに異なる密度で配列されている場合、高密配列方向(本実施形態では副走査方向)の方が自由度が小さくなる(即ち、端子170c〜177c間の位置決めに高い精度が要求される)。そこで、高密配列方向に対応する2つの部分直交部41c3xの長さLxを複数の部分直交部の中で最も長くすることで、高密配列方向の位置決めを優先的に行い、端子170c〜177c,170p〜177p間の接触の信頼性を向上させることができる。
【0122】
本実施形態において、低密配列方向は、カートリッジ40が筐体1aに装着される際に重力が作用する方向(鉛直方向)である。即ち、本実施形態では、重力の作用によって位置決め精度が悪化し得る方向に関して、端子170c〜177cが低密度に配列されている。これにより、当該方向に関する自由度が大きくなり、重力の作用による位置決め精度の悪化を抑制することができる。
【0123】
本実施形態では、筐体41xに部分直交部41c3xが3つ設けられており、筐体41yに部分直交部41c3yが1つ設けられている。さらに、3つの部分直交部41c3xは,部分直交部41c3yよりも直交方向の長さが長い。本実施形態ではこのような構成を採用することによって、各筐体41x、41yに直交方向の長さが互いに異なる複数の部分直交部を形成する場合に比べ、構成を簡素化することができる。
別の実施形態として、ベース143が一方の筐体(例えば、下筐体41x)に一体的に形成されていてもよい。この場合、基板142が、一方の筐体(下筐体41x)のみによって支持される。
【0124】
続いて、本発明の別の実施形態に係る基板ユニット140の製造方法について説明する。
【0125】
別の実施形態では、接合工程P4において、超音波溶着ではなく、熱カシメにより、枠144をベース143に接合する。このとき、予め、図14(a)に示すように、ベース143の裏面に支持部材601を配置し、2つの凸部143xと対向する位置に加熱加圧部材602を配置する。このとき、加熱加圧部材602の2つの凹部602xをそれぞれ2つの凸部143xの先端と対向させる。そしてこの状態で加熱加圧部材602を用いてベース143に対して加熱及び加圧を行うことで、凸部143xの先端が塑性変形し、図14(b)に示すように、凹部602xの形状に沿った形状となる。これにより、凸部143xの先端の拡径部分が枠144の表面に係合し、枠144がベース143に対して固定される。
【0126】
さらに別の実施形態では、接合工程P4において、ネジにより、枠144をベース143に接合する。例えば、図14(a)のように基板142、ベース143、及び枠144が配置された状態で、凸部143xの先端に形成された溝からなる雄ネジに、雌ネジを螺号させて締め付ける。
【0127】
これら別の実施形態によっても、上述した実施形態と同じ構成により、同様の効果を得ることができる。
【0128】
(第2実施形態)
次に、本発明の別の実施形態に係る液体カートリッジを含むインクジェット式プリンタ701の全体構成について説明する。上述の実施形態と同様な構成については、同符号で示し、説明を省略する。
【0129】
プリンタ701は、図15に示すように、給紙トレイ715から搬送されてきた用紙に対して、インクジェットヘッド702からインク滴を吐出することにより、用紙に画像を記録する。プリンタ701は、インク供給装置710を含んでいる。インク供給装置710には、カートリッジ740を装着するための装着室711が設けられている。装着室711には、その一面が外部に開放された開口712が設けられている。カートリッジ740は、開口712を介して図15中右方向(挿入方向)に沿って装着室711に挿入され、装着室711に装着される。カートリッジ740を装着室711から取り出す際は、挿入方向とは逆方向にカートリッジ740を移動させて取り出す。カートリッジ740の筐体741内にはインク貯留室742(図16参照)が形成されている。インク貯留室742にはブラックインクが充填されている。
【0130】
カートリッジ740が装着室711に装着された状態において、カートリッジ740とインクジェットヘッド702とがインクチューブ703で接続されている。インクジェットヘッド702内には、サブタンク(不図示)が設けられている。サブタンクは、カートリッジ740からインクチューブ703を介して供給されたインクを一時的に貯留する。
【0131】
プリンタ701には、コントローラ800が設けられている。このコントローラ800は、上述の実施形態のコントローラ100と同様の制御を行う。つまり、コントローラ800は、給紙ローラ716、搬送ローラ対718、排出ローラ対720を制御して、用紙を給紙トレイ715から搬送路717を通過させて排紙トレイ721へ排出させる。給紙トレイ715から給紙ローラ716によって搬送路717へ送り出された用紙は、搬送ローラ対718によってプラテン719上へ搬送される。インクジェットヘッド702のプラテン719と対向する下面には、複数の吐出口(不図示)が形成されている。インクジェットヘッド702は、コントローラ800の制御により、プラテン719上を通過する用紙に対して、インク滴を吐出口から選択的に吐出する。これにより、画像が用紙に記録される。プラテン719を通過した用紙は、排出ローラ対720によって、搬送路717の最下流位置に設けられた排紙トレイ721に排出される。
【0132】
インク供給装置710は、カートリッジ740を有し、カートリッジ740内のインクをインクジェットヘッド702に供給する。図15においては、装着室711にカートリッジ740が装着された状態が示されている。
【0133】
カートリッジ740は、図16に示された状態が起立状態であり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、装着室711に対して挿入方向に沿って挿入される。つまり、カートリッジ740は、起立状態で装着室711に装着される。起立状態における高さ方向は、鉛直方向に相当する。
【0134】
カートリッジ740は、内部にインク貯留室742が形成された筐体741を有する。筐体741は、第1筐体741aと、第2筐体741bとからなる。第1筐体741aは、直方体形状を有しており、水平面内において挿入方向と直交する幅方向に関して、第2筐体741bの幅よりも大きい。第1筐体741a内には、インク貯留室742となる凹部が形成されている。凹部は、幅方向の一方(図16中左方)に向かって開口している。第2筐体741bは、矩形平面形状を有する平板状部材であって、第1筐体741aの凹部の開口を塞ぐ大きさを有する。第2筐体741bが、凹部の開口を塞ぐように第1筐体741aに接合されることで、筐体741内にインク貯留室742が画定されている。第1筐体741aの凹部の開口は、可撓性を有するフィルム749(図22(b)参照)によって封止されている。
【0135】
カートリッジ740は、装着室711へ装着されるときに前方となる筐体741の面が先端面743、後方となる筐体741の面が後端面744である。また、幅方向の面が筐体741の側面745,746であり、上側の面が筐体741の上面747、下側の面が筐体741の底面748である。
【0136】
筐体741の先端面743には、インク供給部750が設けられている。インク供給部750は、鉛直方向に関して、先端面743の中央よりも下側に配置されている。インク供給部750は、円筒形状の外形をなしており、先端面743から挿入方向に沿って突出している。インク供給部750の突出端には、インク供給口751が形成されている。
【0137】
インク供給部750には、図18に示すように、インク流路752が形成されている。インク流路752は、インク供給部750内において、挿入方向に平行に延在し、インク供給口751とインク貯留室742とを連通させる。インク流路752には、開閉弁753と、開閉弁753をインク供給口751に向かって付勢するバネ754とが設けられている。インク供給口751は、開閉弁753及びバネ754によって開閉可能に構成されている。カートリッジ740が装着室711に装着されると、装着室711に設けられた中空針761が、インク供給口751に挿入されて開閉弁753を開く。これにより、インク貯留室742のインクがインク流路752を介して中空針761へ流入する。
【0138】
なお、インク供給口751は、必ずしも開閉弁753などによって開閉可能な構成に限定されない。例えば、インク供給口751が、フィルムやゴム栓などで閉塞されており、カートリッジ740が装着室711に装着されることで、中空針761がフィルムなどの栓を突き破ることによりインク供給口751が開かれる構成であってもよい。
【0139】
筐体741の上面747には、基板ユニット770が設けられている。この基板ユニット770は、筐体741と一体的に形成されたつまり筐体741の一部であるベース領域771と、基板772と、カバー部材である枠773とを含む。基板ユニット770は、上面747すなわち基板772の厚み方向と直交する直交平面において、挿入方向の下流側端部に近い位置に配置されている。
【0140】
ベース領域771は、図19に示すように、筐体741の上面747の凹み領域747aの底面部分である。このベース領域771は、上述のベース143の表面143a形状とほぼ同じ形状を有している。つまり、ベース領域771の表面771aが、表面143aに相当する。それ以外の両者の相違点は、ベース領域771の表面771aには、開口143zに代えて、凹部781が形成されていることである。凹部781は、図22に示すように、基板772の表面772aとは反対側の裏面772bに配置されたメモリ141と対向する位置に設けられている。凹部781は、基板772が表面771a上に載置されたときに、メモリ141が底面に接触しない深さを有している。また、凹部781は、メモリ141が凹部781に位置している状態で、凹部781の内周面とメモリ141とが、上面747の面内方向(挿入方向に平行な方向及び幅方向)に関して、それぞれ所定距離(例えば、0.4mmであって対応する凸部143xと孔142xの内周面との離隔距離を超える距離)以上離れるように開口している。このため、上述の実施形態と同様に基板772が上面747の面内方向に0.2mm(凸部143xと孔142xの内周面との離隔距離)ずつ移動しても、メモリ141が凹部781と対向し、例えば、超音波溶着時にメモリ141がベース領域771に接触することがない。この結果、カートリッジ740の製造時及び完成後において、メモリ141の脱落又は破損を防止することができる。
【0141】
凹み領域747aは、凹み領域747a内に基板772が嵌め込まれてベース領域771上に基板772が載置されたときに、基板772の表面772aが上面747と同一平面を形成するような深さを有している。これにより、基板ユニット770のカートリッジ740の上面747からの出っ張りが少なくなる。このため、装着室711に無駄なスペースが生じにくくなる。加えて、凹み領域747aが深くなりすぎないため、インク貯留室742の容積を確保することが可能になって、カートリッジ740は多くのインクを貯留することができる。また、ベース領域771には、上面747の面内方向(基板772の厚み方向と直交する方向)への基板772の移動を規制する、上述の実施形態と同様な2つの凸部143xが形成されている。本実施形態においても、上述した実施形態と同様に、2つの凸部143xは、上面747の面内方向への基板772の移動を規制する規制壁として機能する。
【0142】
基板772は、図20に示すように、端子の形成数が上述の基板142と異なるが、これ以外は基板142とほぼ同様な構成である。基板772の表面772aには6つの端子170c、172c〜175c、177cが形成され、裏面772bにはメモリ141が実装されている。また、基板772は、表面772aの6つの端子170c、172c〜175c、177cが露出されるように、ベース領域771の表面771aに取り付けられている。6つの端子170c、172c〜175c、177cは、表面772aにおいて、幅方向に沿って一列に並んで配置されている。基板772は、表面772aが上を向くように配置されている。つまり、基板772は、その裏面772bがベース領域771の表面771aと対向するように、ベース領域771上に載置されている。
【0143】
インク供給部750の外周面には、上述のホール素子71が設けられている。ホール素子71は、上述の実施形態と同様に、開閉弁753の位置に応じた大きさの電気信号を生成する。この電気信号に基づいて、コントローラ800が、上述のコントローラ100と同様に、開閉弁753が開の位置に配置されたか否かを判定する。なお、端子170c,174c,175c,177cとホール素子71との電気的接続は、上述と同様にフレキシブルケーブルの配線を介して行われている。端子172c,173c,174c,175c,177cとメモリ141との電気的接続は、基板772を貫通するスルーホール内に充填された導電性材料を介して行われている。
【0144】
基板772には、上述の実施形態と同様の2つの孔142xが形成されている。これら孔142xとベース領域771の凸部143xとの関係は、上述の実施形態と同様である。このため、規制壁である2つの凸部143xによって、基板772の表面772aの一部(周縁部)が、後述の対向面773bと対向し、且つ、6つの端子170c、172c〜175c、177cが対向面773bと対向せずに露出されるように、上面747の面内方向への基板772の移動が規制されている。
【0145】
変形例として、孔142xに代えて、基板772の裏面772bに、貫通しない穴つまり凹部を設けてもよい。この場合、凸部143xは、その先端が基板772の表面772aよりも表面771aに近い位置となるように、表面771aから突出してよい。これにおいても、孔142xと同じ効果を得ることができる。
【0146】
カバー部材である枠773は、図21に示すように、上述の実施形態で説明した枠144とほぼ同じ構成である。枠773は、表面771aにおける基板772と対向する領域以外の領域(基板772の周囲)に、超音波溶着により接合されている。図19にベース領域771の表面771aにおける枠773が接合される領域が、ハッチングで示されている。また、図22(a)に、枠773の溶着部773wが示されている。枠773は、上述した実施形態と同様に、基板772の6つの端子170c、172c〜175c、177cと対向せず、基板772の周縁部と対向するように配置されている。枠773は、基板772と対向する対向面773bを有している。上述した実施形態と同様に、対向面773bと表面771aとの間の基板772の厚み方向への距離は、基板772の厚みより大きい。枠773は、矩形状である表面771aの4辺のうち、挿入方向の下流辺を除く3辺に沿って、表面771aに固定されている。つまり、枠773は、端子170c、172c〜175c、177cと上面747の挿入方向の下流端との間において、幅方向に関して、端子170c、172c〜175c、177cの形成範囲と重複していない。これにより、カートリッジ740を装着室711に装着する際に、端子170c、172c〜175c、177cと端子170p、172p〜175p、177pとの接触を枠773が阻害することがない。このため、両端子の接触を円滑に行うことが可能となる。
【0147】
基板772は、上述の実施形態と同様に、ベース領域771及び枠773に対して固定されておらず、ベース領域771と枠773との間に鉛直方向及び上面747の面内方向に隙間を介して保持されている(図22(a)参照)。
【0148】
第1実施形態において図9(b)を参照して説明した副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)は、本実施形態においても成り立っている。ただし、本実施形態においては、第1実施形態のフック143fに相当する部材が設けられていないため、鉛直方向については、一方の不等式(Ky−Sy<cy<ay)だけが成り立っている。この場合、距離Kyの一端を規定し図9(b)における内側面144b3に相当する面は、筐体741の上面747の凹み領域747aの挿入方向下流端に設けられた内壁面である。
【0149】
装着室711は、図17に示すように、ケース790の内面によって画定されている。ケース790は、プリンタ701の正面(図15中左方)を向いた開口712を有する箱形状である。ケース790の内面であって、挿入方向下流端の終面791には、接続部760が設けられている。接続部760は、終面791の中央よりも下方であって、インク供給部750と挿入方向に対向する位置に配置されている。
【0150】
接続部760は、中空針761と、連通部762とを有している。中空針761は、挿入方向と平行に延在しケース790の終面791を貫通して配置されている。連通部762は、ケース790の終面791と表裏をなす外側面に固定されており、インクチューブ703と中空針761とを連通させる。
【0151】
装着室711にカートリッジ740が挿入されていくと、中空針761がインク供給口751に挿入される。そして、カートリッジ740が、インク供給部750の突出端が終面791に当接する位置まで挿入されて、装着室711に装着されると、中空針761が開閉弁753をバネ754の付勢に抗して開位置へ移動させる。これにより、インク貯留室742のインクが、インク流路752を介して中空針760内へ流入する。こうして、インクチューブ703を通じてインクジェットヘッド702へインクが流れる。
【0152】
ケース790の内面であって、天井面792には、溝793と、バネ状の端子170p、172p〜175p、177pとが設けられている。溝793は、カートリッジ740が装着室711に装着された状態において、開口712から挿入方向に沿って基板ユニット770の下流端と対向する位置よりも僅かに下流位置まで延在している。溝793の幅は、幅方向に関して、枠773よりも若干大きい。また、溝793の幅方向の中心と、枠773の幅方向の中心とが一致している。また、溝793は、装着室711に装着されたカートリッジ740の基板ユニット770と接触しない程度の深さを有している。これにより、装着室711にカートリッジ740が挿入されたときに、枠773とケース790とが接触しない。
【0153】
装着室711にカートリッジ740が装着された状態において、端子170p、172p〜175p、177pは、溝793の挿入方向下流端近傍に配置されている。より詳細には、端子170p、172p〜175p、177pは、幅方向に沿って一列に配置されており、図18に示すように、基板ユニット770の端子170c、172c〜175c、177cとそれぞれ対向する位置に配置されている。これにより、装着室711にカートリッジ740が装着されると、これら端子同士が接触し、上述の実施形態と同様に電気的に接続される。
【0154】
次いで、本実施形態におけるカートリッジ740の製造方法について、説明する。先ず、ベース領域771が形成された第1筐体741a、基板772、枠773、フィルム749、第2筐体741bを準備する(準備工程)。準備工程の後、基板772にフレキシブルケーブル(不図示)を接続する。このとき、フレキシブルケーブルの各配線と、基板772の端子170c,174c,175c,177cとを電気的に接続する(第1接続工程)。
【0155】
第1接続工程の後、基板772をベース領域771の表面771aと対向させ、表面771aに載置する(載置工程:第1工程)。このとき、上述した実施形態と同様、基板772を、上面747の面内方向への基板772の移動が2つの凸部143xによって規制されるように、表面771aに配置する。つまり、凸部143xを孔142xに貫通させる。載置工程の後、基板772の厚み方向に基板772の表面772aと対向する対向面773bを有する枠773を、穴144xに凸部143xを収容しつつ、ベース領域771上に載置し、ベース領域771の表面771aにおける図19にハッチングで示す領域に枠773を接合する(接合工程:第2工程)。
【0156】
接合工程では、ベース領域771と枠773との間において、鉛直方向及び上面747の面内方向に、隙間を介して基板772を保持する(図22(a)参照)。本実施形態では、基板772の外縁の全周に亘って隙間を確保する。つまり、接合工程では、上述した実施形態と同様、基板772の表面772aの一部が対向面773bと対向し、且つ、6つの端子170c、172c〜175c、177cが対向面773bと対向せずに露出されるという条件を満たしつつ、枠773の対向面773bとベース領域771の表面771aとの間の鉛直方向への距離が、基板772の厚みよりも大きくなるようにする。
【0157】
接合工程では、予め、図22(a)に示すように、枠773の表面773aに発振部材801を配置し、ベース領域771の裏面(表面771aとは反対側の面)における接合領域(図19にハッチングで示す領域)と対向する部分に受振部材802を配置する。そしてこの状態で発振部材801から超音波を発振させると、超音波は、枠773及びベース領域771を通り、受振部材802によって受振される。このとき、超音波が枠773及びベース領域771の接合領域に伝わり、枠773におけるベース領域771と接触する部分が溶融する。これにより、枠773がベース領域771に接合され、枠773に溶着部773wが形成される。このように、本実施形態では、超音波溶着により枠773を接合する。これにより、枠773を容易且つ確実に筐体741(ベース領域771)に固定することができる。
【0158】
以上の工程により、基板ユニット770が完成する。
【0159】
接合工程の後、基板ユニット770が接合された第1筐体741aの凹部(インク貯留室742)の開口周囲部分(図22(b)中ハッチングでしめす領域)と、フィルムとを接合する(フィルム接合工程)。これにより、凹部の開口が封止される。フィルム接合工程の後、第2筐体741bと第1筐体741aとを接合する(筐体接合工程)。なお、フィルム接合工程,筐体接合工程において、フィルムと第1筐体741a、第1筐体741aと第2筐体741bとの接合は、熱溶着であってもよいし、接着剤で接合してもよい。さらに、フィルムと第1筐体741aとが強固に接合されている場合、第1筐体741aと第2筐体741bとは、ネジで接合してもよい。
【0160】
筐体接合工程の後に、フレキシブルケーブル(不図示)の各配線と、ホール素子71とを電気的に接続する(第2接続工程)。第2接続工程の後に、インク供給口751からインク貯留室742にインクを充填する。
【0161】
以上の工程により、カートリッジ740が完成する。
【0162】
以上に述べたように、本実施形態に係る基板ユニット770を有するカートリッジ740においても、基板772が、ベース領域771及び枠773のいずれにも固定されておらず、ベース領域771と枠773との間に隙間(遊び)を介して保持されている。そのため、基板772にストレスが生じ難く、基板772及び基板772に実装された電子部品(メモリ141や端子170c、172c〜175c、177c)の劣化を抑制することができる。また、本実施形態に係る基板ユニット770においても、カートリッジ740の製造時のみならず、これの運搬時や装着室711への装着作業時においても、基板772にストレスが生じ難い。この結果、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、上述の実施形態と同様な構成については、同じ効果を得ることができる。
【0163】
また、2つの凸部143xと2つの孔142xとによって、基板772の移動が規制されているので、基板772及び基板772に実装された電子部品の劣化をより効果的に抑制することができる。加えて、基板772のベース領域771に対する移動の規制を、凸部143x及び孔142xという簡単な構成で確実に実現することが可能となる。
【0164】
本実施形態に係るカートリッジ740の製造方法によると、接合工程において、基板772を、ベース領域771と枠773との間に鉛直方向及び上面747の面内方向に隙間を介して保持する。したがって、接合工程において、枠773及びベース領域771に外力(本実施形態では、超音波振動)が加わるが、基板772には当該外力が作用し難い。また、基板772への外力を考慮する必要性が低いため、接合工程において、枠773とベース領域771とを大きな接合強度で強固に固定し、両部材間での基板772の保持力を高めることができる。
【0165】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0166】
基板ユニットについて:
・上述した2つの実施形態において、一対の延出部144b、主部144a及びフック143f、並びに、ベース771に設けられた2つの凸部143xが規制壁であるが、規制壁は、これらの中の少なくとも1つであってもよいし、これら以外の部材に設けられてもよい。また、上述した2つの実施形態では、一対の延出部144b間で基板142が副走査方向に移動可能な距離と、主部144a及びフック143f間で基板142が鉛直方向に移動可能な距離とが、それぞれ、2つの凸部143xによって副走査方向及び鉛直方向に基板142が移動可能な距離と同じであるが、これらが異なっていてもよい。その場合、各方向について小さい方の距離を規定する部材が規制壁として機能する。
・第2実施形態に係るカートリッジにおいても、第1実施形態と同様に、副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)と、鉛直方向に関する寸法間の関係(Ky−Sy<cy<ay、及び、Ky−Sy<dy<by)とが共に成り立っていてもよい。その場合、例えば、凹み領域747aの挿入方向下流端に設けられた内壁面に、第1実施形態におけるフック143fと同様に挿入方向に延びた部分(その下面が対向面の第4領域となる)を形成すればよい。
・端子が対向面と対向せずに露出し且つ基板の端子表面の一部が対向面と対向している限りにおいて、第1実施形態において、副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)の一方又は両方だけが成り立っていて、鉛直方向に関する寸法間の関係(Ky−Sy<cy<ay、及び、Ky−Sy<dy<by)の一方又は両方が成り立っていなくてもよい。その場合、鉛直方向については、例えば2つの凸部143xと孔142xとの係合によって基板142の移動が規制されていてよい。さらに、第1実施形態において、鉛直方向に関する寸法間の関係(Ky−Sy<cy<ay、及び、Ky−Sy<dy<by)の一方又は両方だけが成り立っていて、副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)の一方又は両方が成り立っていなくてもよい。その場合も、副走査方向については、例えば2つの凸部143xと孔142xとの係合によって基板142の移動が規制されていてよい。これと同様に、第2実施形態においても、端子が対向面と対向せずに露出し且つ基板の端子表面の一部が対向面と対向している限りにおいて、副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)の一方又は両方だけが成り立っていて、鉛直方向に関する寸法間の関係(Ky−Sy<cy<ay)の一方又は両方が成り立っていなくてもよい。また、第2実施形態において、鉛直方向に関する寸法間の関係(Ky−Sy<cy<ay、及び、Ky−Sy<dy<by)の一方又は両方だけが成り立っていて、副走査方向に関する寸法間の関係(Kx−Sx<cx<ax、及び、Kx−Sx<dx<bx)の一方又は両方が成り立っていなくてもよい。
・上述した2つの実施形態において規制壁である2つの凸部143xと基板142,772との間には間隙が形成されており、規制壁は基板142,772を鉛直方向及び副走査方向のそれぞれに0.2mmずつ移動することを許容しているが、規制壁と基板142,772との間には間隙が形成されておらず、規制壁が鉛直方向及び副走査方向のいずれにも基板142,772の移動を許容しなくてもよい。また、規制壁が基板の面内方向(基板772の厚み方向と直交する方向)つまり表面方向のいずれか一方向だけに基板142,772の移動を許容してもよい。
・第2実施形態において筐体741の上面747に凹み領域747aが設けられて基板772が凹み領域747a内に嵌め込まれているが、筐体741の上面747に凹み領域が設けられていなくてもよい。
・基板に実装される端子の数、形状、配置態様を任意に変更してよい。例えば、端子は、2つの配列方向の各方向に関して一定間隔で(同じ密度で)配置されてもよい。
・基板に実装されるメモリが記憶するデータは、特に限定されない。例えば、メモリは、カートリッジの製造年月日、栓に対する中空針153の挿入回数等を記憶してもよい。
・基板に実装される電子部品は、メモリや端子に限定されず、その他任意の電子部品であってよい。また、基板における電子部品の位置は特に限定されない。
・第1部材と第2部材とを接合する方法は、溶着、熱カシメ、及びネジの各接合方法を組み合わせたものであってもよく、また、溶着、熱カシメ、及びネジ以外の方法(接着剤等による接合方法)であってもよい。
・第1部材、第2部材、及び基板の形状は、任意に変更可能である。例えば、第2部材は、凸部143xを収容する穴として、上述の実施形態では貫通した穴144xを有するが、止まり穴を有してよく、或いは当該穴を有さなくてもよい。
・第1部材、第2部材、及び基板の位置決めに係る構成は、上述の実施形態のような凸部143xと孔142x及び穴144xとの組み合わせに限定されない。また、第1部材、第2部材、及び基板の各部材が位置決めに係る構成を有さなくてもよい。例えば第1部材144の凸部143x、第2部材の穴144x、及び基板142の孔142xを省略してもよい。
【0167】
基板ユニットの製造方法について:
・基板載置工程において、凸部143xを孔142xに貫通させるのではなく、他の方法で基板の位置決めを行ってもよい。
・接合工程において、基板の外縁の全周に亘って隙間を確保することに限定されない。即ち、基板の外縁の一部のみにおいて、直交方向及び表面方向に隙間を確保してもよい。
・接合工程において、溶着、熱カシメ、及びネジの各接合方法を組み合わせて、或いは、溶着、熱カシメ、及びネジ以外の方法(接着剤等による接合方法)で、第2部材を第1部材に接合してもよい。
・発振部材及び受振部材は、第1部材や第2部材のサイズ、形状等に適したサイズ、形状等を有してよい。
・基板と対向する位置に受振部材を配置してもよい。
【0168】
カートリッジについて:
・カートリッジ側端子の配列方向について、低密配列方向は、カートリッジが装置本体に装着される際に重力が作用する方向に限定されず、主走査方向又は副走査方向であってもよい。また、カートリッジ側端子の数、形状、配置態様等を任意に変更してよい。
・低密配列方向に関してカートリッジ側端子を挟む位置に配置された部分直交部の長さは、上述の実施形態のように少なくとも一方の部分直交部の長さ(図8(b)参照:部分直交部41c3yの長さLy)が、高密配列方向に関してカートリッジ側端子を挟む位置に配置された部分直交部の長さ(図8(a)参照:部分直交部41c3xの長さLx)よりも小さければよい。
・複数の部分直交部の長さは、2種類に限定されず、3種類以上あってもよい。
・第1筐体及び/又は第2筐体は、直交方向の長さが互いに異なる複数の部分直交部を有してもよい。
・筐体の周壁は、直交部又は傾斜部のいずれか一方のみから構成されてもよい。また、直交部は、直交方向の長さが一定であってもよい(即ち、直交方向の長さが互いに異なる複数の部分直交部を有さなくてもよい)。
・カートリッジの筐体に対する基板ユニットの固定方法は、熱カシメに限定されず、その他任意の方法(例えば溶着等)であってよい。
・筐体が収容する液体は、ブラックインク及び前処理液に限定されず、例えば、ブラック以外のカラーインク、画質を向上させるために記録後の記録媒体に吐出される後処理液、搬送ベルトを洗浄するための洗浄液等であってもよい。
・筐体に含まれる液体収容部(上述の実施形態のリザーバ42)の数は、2に限定されず、1又は3以上であってもよい。
・筐体は、液体が収容された液体収容部を収容するのではなく、液体を直接収容してもよい。
・本発明に係る液体カートリッジが装着される液体吐出装置は、ブラックインク及び3色のカラー(マゼンタ、シアン、イエロー)インクを吐出するヘッドを含む、カラーインクジェットプリンタであってもよい。また、液体吐出装置は、ライン式及びシリアル式のいずれでもよく、さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等の任意の液体吐出装置であってよい。本発明に係るカートリッジは、インクなどの液体以外に、トナーなどの粉体又は気体を収容するためにも用いることができる。
【0169】
カートリッジの製造方法について:
・熱カシメによる固定工程の代わりに、その他任意の方法(例えば溶着等)による固定工程を行ってもよい。
【0170】
本発明に係る基板の製造方法及びカートリッジの製造方法に係る各工程は、製造装置、及び、作業者のいずれが行ってもよい。
【0171】
その他、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、基板ユニットの各部品、カートリッジの各部品を適宜変更してよく、また、別の部品を追加したり、一部の部品を省略したりしてよい。
【符号の説明】
【0172】
40 液体カートリッジ(カートリッジ)
41 筐体
41c1 凹部
41c2 周壁
41c3x,41c3y 直交部(部分直交部)
41c4x,41c4y 傾斜部
41x 下筐体(第1筐体)
41x1 溝(第1溝)
41x2 貫通孔
41y 上筐体(第2筐体)
41y1 溝(第2溝)
140 基板ユニット
141 メモリ(電子部品)
142 基板
142x 孔(穴)
143 ベース(第1部材)
143x 凸部(規制壁)
143y 突起
144 枠(第2部材)
144x 穴
170c〜177c 端子(カートリッジ側端子,電子部品)
170p〜177p 端子(本体側端子)
501 発振部材
502 受振部材
740 液体カートリッジ(カートリッジ)
741 筐体
747a 凹み領域
771 ベース
772 基板
773 枠(カバー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジに取り付けられる基板ユニットであって、
電子部品を実装した基板と、
前記基板と対向する表面を有する第1部材と、
前記表面における前記基板と対向する領域以外の領域に接合された第2部材と、を備え、
前記基板が、前記第1部材及び前記第2部材に固定されておらず、前記第1部材と前記第2部材との間に前記表面と直交する直交方向及び前記表面に平行な表面方向に隙間を介して保持されていることを特徴とする、基板ユニット。
【請求項2】
前記第2部材が溶着、熱カシメ、及びネジの少なくともいずれかにより前記第1部材に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の基板ユニット。
【請求項3】
前記第2部材が超音波溶着により前記第1部材に接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の基板ユニット。
【請求項4】
前記第1部材が、前記直交方向に突出した凸部を有し、
前記基板は、前記凸部が貫通し且つ前記直交方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの孔を有し、
前記第2部材が、前記凸部の一部を収容する穴を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板ユニット。
【請求項5】
前記凸部が前記孔を貫通することで、前記基板は前記表面方向に所定範囲内で移動することが許容されており、
前記電子部品が、前記基板の前記第1部材に対向した対向面に実装されており、
前記第1部材の前記表面の前記電子部品と対向する領域が、この領域を前記電子部品と接触させない穴となっており、
前記第1部材に設けられた前記穴は、前記基板が前記表面方向に前記所定範囲内で移動しても、前記電子部品が前記第1部材に設けられた前記穴と対向しているような位置及び寸法に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基板ユニット。
【請求項6】
前記第1部材に設けられた前記穴が、前記第1部材を貫通する孔であることを特徴とする請求項5に記載の基板ユニット。
【請求項7】
カートリッジに取り付けられる基板ユニットの製造方法であって、
電子部品を実装した基板を、第1部材の表面と対向させ、前記表面に載置する基板載置工程と、
前記基板載置工程の後、前記表面における前記基板と対向する領域以外の領域に第2部材を接合する接合工程と、を備え、
前記接合工程において、前記基板を、前記第1部材と前記第2部材との間に前記表面と直交する直交方向及び前記表面に平行な表面方向に隙間を介して保持することを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
前記接合工程において、前記基板の前記表面方向に関する外縁の全周に亘って前記隙間を確保することを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記接合工程において溶着、熱カシメ、及びネジの少なくともいずれかにより前記第2部材を接合することを特徴とする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記接合工程において超音波溶着により前記第2部材を接合することを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接合工程において、前記第2部材の前記表面に接合される面とは反対側の面に、超音波を発振する発振部材を配置し、前記第1部材の前記表面とは反対側の面における、前記第1部材を挟んで前記第2部材と対向し且つ前記基板と対向しない位置に、前記発振部材が発振した超音波を受振する受振部材を配置することを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記基板載置工程において、前記第1部材に形成された前記直交方向に突出した凸部を、前記基板に形成され且つ前記直交方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの孔に貫通させ、
前記接合工程において、前記第2部材に形成された穴に前記凸部の一部を収容した状態で、前記第2部材を接合することを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
収容空間を画定する筐体と、
前記筐体に取り付けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板ユニットと、を備え、
前記筐体は、前記第1部材の前記表面方向に関する外周部分が収容される溝を有すると共に、第1筐体と、前記第1筐体に組み付けられることで前記第1筐体とによって前記収容空間を画定する第2筐体とを含み、
前記第1筐体に、前記溝の一部である第1溝が形成されており、
前記第2筐体に、前記溝のうち前記第1溝以外の第2溝が形成されていることを特徴とする、カートリッジ。
【請求項14】
前記第1部材が、前記表面方向に突出した突起を有し、
前記第1筐体は、前記突起が貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔に貫通した前記突起を熱カシメすることにより、前記第1部材が前記第1筐体に固定されていることを特徴とする、請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記電子部品は、前記基板上において2つの配列方向に互いに異なる密度で配列され、前記カートリッジが装着される装置本体の複数の本体側端子とそれぞれ接触する複数のカートリッジ側端子を含み、
前記2つの配列方向は、低密配列方向、及び、前記低密配列方向よりも高い密度で前記カートリッジ側端子が配列された高密配列方向を含み、
前記筐体が、前記複数のカートリッジ側端子を露出させる凹部と、前記凹部を画定する周壁と、を含み、
前記周壁は、前記直交方向に延出した直交部と、前記直交方向に関して前記直交部よりも前記基板から離隔し、前記直交方向から見た前記凹部のサイズが大きくなる方向に前記直交方向に対して傾斜した傾斜部と、を含み、
前記直交部は、前記直交方向の長さが互いに異なる複数の部分直交部を有し、
前記複数の部分直交部の前記長さのうち、前記高密配列方向に関して前記カートリッジ側端子を挟む位置に配置された部分直交部の前記長さが最も長いことを特徴とする、請求項13又は14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記低密配列方向は、前記カートリッジが前記装置本体に装着される際に重力が作用する方向であることを特徴とする、請求項15に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに形成された前記部分直交部は前記長さが一定であり、
前記第1筐体に形成された前記部分直交部と、前記第2筐体に形成された前記部分直交部とは、前記長さが互いに異なることを特徴とする、請求項15又は16に記載のカートリッジ。
【請求項18】
収容空間を画定する筐体と、前記筐体に取り付けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板ユニットと、を備え、前記筐体は、前記第1部材の前記表面方向に関する外周部分が収容される溝を有すると共に、第1筐体と、前記第1筐体に組み付けられることで前記第1筐体とによって前記収容空間を画定する第2筐体とを含み、前記第1筐体に、前記溝の一部である第1溝が形成されており、前記第2筐体に、前記溝のうち前記第1溝以外の第2溝が形成されている、カートリッジの製造方法であって、
前記第1筐体の前記第1溝に前記第1部材の前記外周部分の一部を収容する第1収容工程と、
前記第1収容工程の後、前記第2筐体を前記第1筐体に組み付け、前記第2筐体の前記第2溝に前記第1部材の前記外周部分の前記一部以外の部分を収容する第2収容工程と、
を備えたことを特徴とする、製造方法。
【請求項19】
前記第1収容工程において、前記第1部材に形成された前記表面方向に突出した突起を、前記第1筐体に形成された貫通孔に貫通させ、
前記第2収容工程の後、前記貫通孔に貫通した前記突起を熱カシメすることにより、前記第1部材を前記第1筐体に固定する固定工程をさらに備えたことを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
記録装置に装着されるカートリッジであって、
収容空間を画定する筐体と、
電子部品が実装された基板であり且つ前記電子部品と電気的に接続された端子が設けられた表面を有する基板であって、前記端子を露出させるように前記筐体の表面に取り付けられた基板と、
前記基板の厚み方向に前記基板の前記表面の一部と対向する対向面を有するカバー部材と、
前記厚み方向と直交する第1方向への前記基板の移動を規制する規制壁とを備えており、
前記カバー部材の前記対向面と前記筐体の前記表面との間の前記厚み方向への距離が、前記基板の厚みよりも大きく、
前記規制壁は、前記基板の前記表面の前記一部が前記対向面と対向し、且つ、前記端子が前記対向面と対向せずに露出されるように、前記第1方向への前記基板の移動を規制することを特徴とするカートリッジ。
【請求項21】
前記基板は、前記厚み方向と直交する第2方向に関する前記筐体の前記表面の両端部のうちの一方の端部よりも他方の端部に近い位置に配置されており、
前記カバー部材は、前記端子と前記他方の端部との間において、前記筐体の前記表面内で前記第2方向と直交する方向に関して、前記端子の形成範囲と重複していないことを特徴とする請求項20に記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記筐体の前記表面に凹み領域が設けられ、前記基板が前記筐体の前記凹み領域に嵌め込まれており、前記基板の前記表面と前記筐体の前記表面とが同一平面を形成していることを特徴とする請求項20又は21に記載のカートリッジ。
【請求項23】
前記規制壁と前記基板との間に間隙が形成されており、前記規制壁は、前記第1方向に前記基板が所定範囲内で移動するのを許容することを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項24】
前記規制壁は、前記筐体の前記表面に設けられた凸部によって構成されており、前記基板の前記表面とは反対側面には、前記厚み方向から見て前記凸部よりも大きなサイズの穴が設けられ、
前記凸部が前記穴と係合することで前記基板の移動が規制されていることを特徴とする請求項23に記載のカートリッジ。
【請求項25】
前記電子部品が前記基板の前記表面とは反対側の筐体対向面に実装されており、
前記筐体の前記表面の前記電子部品と対向する領域が、この領域を前記電子部品と接触させない深さを有する凹部となっており、
前記凹部は、前記第1方向に前記基板が前記所定範囲内で移動しても、前記電子部品が前記凹部と対向しているような位置及び寸法に形成されていることを特徴とする請求項23又は24に記載のカートリッジ。
【請求項26】
記録装置に装着されるカートリッジの製造方法であって、
電子部品が実装された基板であり且つ前記電子部品と電気的に接続された端子が設けられた表面を有する基板を、前記基板の厚み方向と直交する一方向への前記基板の移動が収容空間を画定する筐体の一部である規制壁によって規制されるように、前記筐体の表面上に配置する第1工程と、
前記第1工程後に、前記厚み方向に前記基板の前記表面と対向する対向面を有するカバー部材を前記筐体の前記表面に固定する第2工程とを備えており、
前記第2工程において、前記基板の前記表面の一部が前記対向面と対向し、且つ、前記端子が前記対向面と対向せずに露出されるという条件を満たしつつ、前記カバー部材の前記対向面と前記筐体の前記表面との間の前記厚み方向への距離が、前記基板の厚みよりも大きくなるようにすることを特徴とするカートリッジの製造方法。
【請求項27】
前記第2工程において、前記カバー部材の固定を超音波溶着によって行うことを特徴とする請求項26に記載のカートリッジの製造方法。
【請求項28】
前記第1工程において、前記規制壁と前記基板との間に間隙を形成することによって、前記規制壁は、前記一方向に前記基板が所定範囲内で移動するのを許容することを特徴とする請求項26又は27に記載のカートリッジの製造方法。
【請求項29】
記録装置に装着されるカートリッジであって、
収容空間を画定する筐体と、
電子部品が実装された基板であり且つ前記電子部品と電気的に接続された一又は複数の端子が設けられた端子表面を有する基板であって、前記端子を露出させるように前記筐体の表面に取り付けられた基板と、
前記基板の厚み方向に前記基板の前記端子表面の一部と対向する対向面を有するカバー部材と、
前記厚み方向と直交する第1方向への前記基板の移動を規制する壁とを備えており、
前記カバー部材の前記対向面と前記筐体の前記表面との間の前記厚み方向への距離が、前記基板の厚みよりも大きく、
前記壁によって規定される前記基板の前記第1方向への可動範囲Kx、前記基板の前記第1方向への長さSx、前記一又は複数の端子の中で前記第1方向に関して前記基板の一方の端部に最も近い前記端子から当該一方の端部までの距離ax、前記一又は複数の端子の中で前記第1方向に関して前記基板の他方の端部に最も近い前記端子から当該他方の端部までの距離bx、前記基板の前記一方の端部から連続した前記端子表面の一部と対向する前記対向面の第1領域の前記第1方向への長さcx、及び、前記基板の前記他方の端部から連続した前記端子表面の一部と対向する前記対向面の第2領域の前記第1方向への長さdxとして、下記の2つの不等式が成り立つ、カートリッジ。
Kx−Sx<cx<ax
Kx−Sx<dx<bx
【請求項30】
前記壁は、前記厚み方向と直交する前記第1方向及び第2方向への前記基板の移動を規制し、
前記壁によって規定される前記基板の前記第2方向への可動範囲Ky、前記基板の前記第2方向への長さSy、前記一又は複数の端子の中で前記第2方向に関して前記基板の一方の端部に最も近い前記端子から当該一方の端部までの距離ay、前記一又は複数の端子の中で前記第2方向に関して前記基板の他方の端部に最も近い前記端子から当該他方の端部までの距離by、前記基板の前記一方の端部から連続した前記端子表面の一部と対向する前記対向面の第3領域の前記第2方向への長さcy、及び、前記基板の前記他方の端部から連続した前記端子表面の一部と対向する前記対向面の第4領域の前記第2方向への長さdyとして、下記の2つの不等式が成り立つ、請求項29に記載のカートリッジ。
Ky−Sy<cy<ay
Ky−Sy<dy<by

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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