説明

基板ユニットの取付け構造

【課題】 基板ユニットの位置決めを簡単にかつ正確に行うことのできる基板ユニットの取付け構造を提供する。
【解決手段】 基板ユニット10は、固定用ねじ穴13と、固定用ねじ穴13を中心として回転させたときに位置決めねじ17を受け入れる位置決めスリット16と、位置決めねじ17に当接して基板ユニット10の位置決めを行う位置決め部18と、を備え、
基台2に固定用ねじ穴13を通して固定ねじ14を仮止めするとともに、位置決めねじ17を仮止めした状態で、基板ユニット10を固定ねじ14を中心として回転させて位置決めねじ17に位置決めスリット16を挿通させ、位置決めねじ17に位置決め部18を当接させて、固定ねじ14および位置決めねじ17を締め付けて基板ユニット10を固定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ユニットの取付け構造に係り、特に、ボールバルブ、バタフライバルブ等の回転バルブなどに搭載され、バルブの弁体を電動により開閉動作させる電動アクチュエータに好適な基板ユニットの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転バルブなどを電動により回転制御する電動アクチュエータが多く用いられており、この電動アクチュエータは、電動モータを回転駆動させて歯車伝達機構を介してバルブの開閉軸を回転動作させることにより、バルブの開閉動作を行うようになっている。
【0003】
そして、このような電動アクチュエータにおいては、各種基板ユニットが取付けられている。この基板ユニットの取付け手段として、従来から、基板ユニットに長円状の2つの案内孔を互いに平行に形成しするとともに、これら各案内孔に固定ねじの頭部が挿通されるねじ孔をそれぞれ形成し、各固定ねじを仮止めした状態で、ねじ孔を固定ねじに挿通して基板ユニットを装着し、案内孔に沿って基板ユニットをスライドさせた後、固定ねじを締め付けることにより、基板ユニットを位置決めして固定するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、従来から、電動アクチュエータにおいては、基板ユニットには、手動操作軸の上下動に応じてON、OFF動作されるインターロックスイッチが搭載されるようになっている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような特許文献2のような電動アクチュエータにおいては、インターロックスイッチを適正に動作させるために、インターロックスイッチが手動操作軸に対して所定の間隔を有するように基板ユニットを配置する必要がある。
【0006】
そのため、従来は、基板ユニットを手動操作軸の方向に引き寄せた状態で、固定するようにしていた。
【特許文献1】特開2005−299906号公報
【特許文献2】特開2004−218735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インターロックスイッチが搭載された基板ユニットを取り付けた場合に、前記特許文献1に記載の発明のように、互いに平行な案内孔により基板ユニットをスライドさせた場合、2つの固定ねじに対して2つの案内孔によりスライドさせる構造であるため、それぞれの固定ねじに対する案内孔の微妙な位置の相違により、基板ユニットの位置決めが不確実になるおそれがあるという問題を有している。
【0008】
そして、基板ユニットの位置決めが確実でないと、インターロックスイッチの動作不良を招き、電動アクチュエータとしての正常な動作を確保することができないという問題を有している。
【0009】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、基板ユニットの位置決めを簡単にかつ正確に行うことのできる基板ユニットの取付け構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、被取付け部材に取付けられ少なくとも2つの電装基板を連接してなる基板ユニットと、前記各電装基板の一方に形成された固定用ねじ穴と、前記電装基板の他方に形成され前記固定用ねじ穴を中心として回転させたときに位置決めねじを受け入れる位置決めスリットと、前記位置決めスリットに形成され前記位置決めねじに当接して前記基板ユニットの位置決めを行う位置決め部と、を備え、
前記被取付け部材に前記固定用ねじ穴を通して固定ねじを仮止めするとともに、位置決めねじを仮止めした状態で、前記基板ユニットを固定ねじを中心として回転させて位置決めねじに前記位置決めスリットを挿通させ、前記位置決めねじに前記位置決め部を当接させて、固定ねじおよび位置決めねじを締め付けて前記基板ユニットを固定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記位置決めスリットは、前記固定用ねじ穴を中心とした円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記被取付け部材には、位置決め部材が搭載されるとともに、前記基板ユニットには、位置決め対象物が搭載され、 前記位置決めスリットは、前記位置決めねじに前記位置決め部を当接させた状態で、前記位置決め対象物が前記位置決め部材に対して近接する方向に力が加わることで位置決め可能に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記位置決めスリットの前記位置決め部は、円弧状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、被取付け部材に固定用ねじ穴を通して固定ねじを仮止めするとともに、位置決めねじを仮止めした状態で、基板ユニットを固定ねじを中心として回転させて位置決めねじに位置決めスリットを挿通させ、位置決めねじに位置決め部を当接させて、固定ねじおよび位置決めねじを締め付けて基板ユニットを固定するようにしているので、簡単な作業で、基板ユニットの位置決めを正確に行うことができる。その結果、インターロックスイッチが手動操作軸に対して所定の間隙を有するように位置決めされ、インターロックスイッチの動作不良を防止することができ、電動アクチュエータとしての正常な動作を確保することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、位置決めスリットを固定用ねじ穴を中心とした円弧状に形成しているので、基板ユニットを回転させた場合に、位置決めねじに対して適正に位置決めスリットを挿通させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、位置決めスリットを、位置決めねじに位置決め部を当接させた状態で、位置決め対象物が位置決め部材に対して近接する方向に力が加わることで位置決め可能に形成されているので、位置決め対象物を位置決め部材に対して適正な間隔で位置決めすることが可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、位置決めスリットの位置決め部を円弧状に形成しているので、位置決めねじを当接させることにより、適正に基板ユニットの位置決めを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る基板ユニットの取付け構造の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明に係る基板ユニットの取付け構造を電動アクチュエータに適用した場合の実施形態を示したものであり、図1に示すように、電動アクチュエータ1は、図示しない回転バルブに装着される被取付け部材としての基台2を備えており、基台2の上面には、電動モータ3が搭載されている。また、基台2の下面側には、電動モータ3の回転駆動力を図示しない回転バルブの弁体の回転軸に伝達する図示しない歯車伝達機構が配設されている。
【0020】
基台2には、歯車伝達機構の出力軸の上端部に連結された制御軸4が上方に延在するように配設されており、制御軸4の外周下方には、出力軸および制御軸4の回転動作によりバルブの全開位置および全閉位置に対応する全開検知カム部材5,5および全閉検知カム部材(図示せず)がそれぞれ2つずつ取付けられている。また、基板の上面であって制御棒の近傍には、全開検知カム部材5および全閉検知カム部材によりON・OFF動作されるマイクロスイッチからなる全開位置検出スイッチ7,7および全閉位置検出スイッチ8,8がそれぞれ重ねて配置されている。
【0021】
また、基台2には、前述の歯車伝達機構に連結される手動軸9が配設されており、この手動軸9には、手動操作軸(図示せず)が上下方向に移動自在に配設されるように構成されている。そして、手動操作軸は、この手動操作軸を押し下げた状態で自由に回転可能とされて自動開閉状態とされており、手動操作軸を引き上げた状態で、連結機構を介して歯車伝達機構と連結され、手動操作軸を回転操作することにより、出力軸を手動で回転させることができるように構成されている。
【0022】
また、電動モータ3の近傍には、基板ユニット10が配設されており、基板ユニット10は、ほぼ直交するように平面形状L字状に連接された2つの電装基板11,11を備えている。
【0023】
一方の電装基板11の一面側には、コネクタ19,19などの電装部品が搭載された配線基板20が取付けられており、他方の電装基板11の一面側には、手動操作軸の上下動作によりON、OFF動作されるマイクロスイッチからなるインターロックスイッチ21が取付けられている。
【0024】
一方の電装基板11の下端縁には、支持フランジ12が形成されており、この支持フランジ12のほぼ中央部分には、固定用ねじ穴13が穿設されている。そして、この固定用ねじ穴13を通して基台2に固定ねじ14を螺入させることにより、支持フランジ12を固定できるようになっている。
【0025】
また、他方の電装基板11の下端縁には、支持フランジ12に対してほぼ直交して配置される位置決めフランジ15が形成されており、この位置決めフランジ15には、位置決めスリット16が形成されている。そして、位置決めスリット16を通して基台2に位置決めねじ17を螺入させることにより、位置決めフランジ15を固定できるようになっている。
【0026】
なお、固定ねじ14および位置決めねじ17は、説明の便宜上ねじ頭部を省略して図示している。
【0027】
位置決めスリット16は、本実施形態においては、支持フランジ12の固定用ねじ穴13を中心とした円弧状に形成されており、位置決めスリット16の最奥部は、位置決めねじ17に当接して基板ユニット10の位置決めを行う位置決め部18とされている。本実施形態においては、基板ユニット10を位置決めすることにより、基板ユニット10に搭載された位置決め対象物としてのインターロックスイッチ21の動作部(スイッチ部)を位置決め部材としての手動軸9に対して所定の間隔に位置決めするようになっている。そのため、位置決めスリット16は、基板ユニット10を固定ねじ14を中心として回転させて位置決めスリット16の位置決め部18を位置決めねじ17に当接させた状態で、インターロックスイッチ21の動作部が手動軸9に対して近接する方向に力が加わることで位置決めできるように形成されている。すなわち、図2および図8に示すように、基板ユニット10を固定ねじ14を中心として回転させて位置決めスリット16の位置決め部18を位置決めねじ17に当接させると、基板ユニット10の回転方向における接線方向に力Fが加わるが、その分力により、インターロックスイッチ21の動作部が手動軸9に対して近接する方向の力f1が働くようになっている。この場合、力Fは、位置決め部18が固定ねじ14を中心として回転する際に、位置決め部18における接線方向に働くが、固定ねじ14と位置決め部18とを結ぶ線と接線とのなす角度が90°のときに力Fと力f1が一致することとなり、力f1が最も大きくなるものである。しかしながら、力f1は、力Fの分力として存在してさえいれば、インターロックスイッチ21の動作部が手動軸9に対して近接する方向への力として働いて位置決めが可能であるため、固定ねじ14と位置決め部18とを結ぶ線と接線とのなす角度が0°または180°となる位置以外ならば、いずれの位置に位置決め部18を形成するようにしてもよい。
【0028】
なお、位置決め部18は、本実施形態においては、図2に示すように、円弧状に形成されているが、位置決めねじ17に当接して位置決めが可能であれば、例えば、図3に示すように、多角形状に形成してもよいし、四角形状などいずれの形状に形成してもよい。また、位置決めスリット16は、本実施形態においては、支持フランジ12の固定用ねじ穴13を中心とした円弧状に形成するようにしているが、固定用ねじ穴13を中心として基板ユニット10を回転させたときに位置決めねじ17を受け入れることが可能であれば、直線状に形成するようにしてもよいし、図4に示すように、位置決めねじ17を受け入れるように切欠き状に形成するようにしてもよい。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、本実施形態においては、組み立てを行う場合は、図5および図7に示すように、基台2の上面に、所定の電装部品が搭載された基板ユニット10を設置し、固定ねじ14を基台2に支持フランジ12の固定用ねじ穴13を介して緩く仮止めするとともに、位置決めねじ17は、基台2に位置決めフランジ15を介することなく緩く仮止めする。
【0030】
この状態で、基板ユニット10を固定ねじ14を中心として回転させ、位置決めスリット16を位置決めねじ17に挿通させる。そして、図6および図8に示すように、位置決めスリット16の位置決め部18が位置決めねじ17に当接するまで基板ユニット10を回転させ、位置決め部18が位置決めねじ17に当接した状態で、位置決めねじ17および固定ねじ14をそれぞれ締め付けて基板ユニット10を基台2に対して固定する。このとき、図2に示すように、位置決めスリット16の位置決め部18を位置決めねじ17に当接させた状態で、基板ユニット10の回転方向に加わる力Fの分力により、インターロックスイッチの動作部が手動軸に対して近接する方向の力f1が働き、インターロックスイッチ21の動作部を手動軸9に対して適正な間隔で位置決めすることが可能となる。
【0031】
このように基板ユニット10を固定した状態で、基板ユニット10に搭載されたインターロックスイッチ21が手動操作軸に対して所定の間隙を有するように位置決めされる。
【0032】
その後、コネクタ19に所定のコネクタ22を接続するなど所定の配線を行う。このように基板ユニット10を固定した後に配線を行うことにより、下方に配置されたコネクタ19,22により固定ねじ14の上方を覆うことになり、固定ねじ14の取り外しが困難となり、不用意に固定ねじ14を操作してしまうことを防止することができる。
【0033】
したがって、本実施形態においては、固定ねじ14および位置決めねじ17を緩く仮止めした状態で、基板ユニット10を回転させ、位置決めスリット16の位置決め部18が位置決めねじ17に当接した状態で、位置決めねじ17および固定ねじ14をそれぞれ締め付けて基板ユニット10を基台2に対して固定するようにしているので、簡単な作業で、基板ユニット10の位置決めを正確に行うことができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る基板ユニットの取付構造を電動アクチュエータに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態における位置決め部の力の加わり状態を示す説明図である。
【図3】本実施形態における位置決め部の変形例を示す一部の拡大図である。
【図4】本実施形態における位置決めスリットの変形例を示す一部の拡大図である。
【図5】本実施形態における基板ユニットの取付手順を示す位置決めスリットへの挿通前の斜視図である。
【図6】本実施形態における基板ユニットの取付手順を示す位置決めスリットへの挿通後の斜視図である。
【図7】本実施形態における基板ユニットの取付手順を示す位置決めスリットへの挿通前の平面図である。
【図8】本実施形態における基板ユニットの取付手順を示す位置決めスリットへの挿通後の平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電動アクチュエータ
2 基台
10 基板ユニット
11 電装基板
12 支持フランジ
13 固定用ねじ穴
14 固定ねじ
15 位置決めフランジ
16 位置決めスリット
17 位置決めねじ
18 位置決め部
19 コネクタ
20 配線基板
21 インターロックスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付け部材に取付けられ少なくとも2つの電装基板を連接してなる基板ユニットと、
前記各電装基板の一方に形成された固定用ねじ穴と、
前記電装基板の他方に形成され前記固定用ねじ穴を中心として回転させたときに位置決めねじを受け入れる位置決めスリットと、
前記位置決めスリットに形成され前記位置決めねじに当接して前記基板ユニットの位置決めを行う位置決め部と、を備え、
前記被取付け部材に前記固定用ねじ穴を通して固定ねじを仮止めするとともに、位置決めねじを仮止めした状態で、前記基板ユニットを固定ねじを中心として回転させて位置決めねじに前記位置決めスリットを挿通させ、前記位置決めねじに前記位置決め部を当接させて、固定ねじおよび位置決めねじを締め付けて前記基板ユニットを固定するように構成されていることを特徴とする基板ユニットの取付け構造。
【請求項2】
前記位置決めスリットは、前記固定用ねじ穴を中心とした円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板ユニットの取付け構造。
【請求項3】
前記被取付け部材には、位置決め部材が搭載されるとともに、前記基板ユニットには、位置決め対象物が搭載され、
前記位置決めスリットは、前記位置決めねじに前記位置決め部を当接させた状態で、前記位置決め対象物が前記位置決め部材に対して近接する方向に力が加わることで位置決め可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板ユニットの取付け構造。
【請求項4】
前記位置決めスリットの前記位置決め部は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板ユニットの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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