説明

基板処理システム

【課題】基板の異常が発生する原因の特定を、迅速に開始させる。
【解決手段】基板Waに塗布液を塗布することで塗布基板を作製する塗布装置4aと、この塗布装置4aが動作することで当該塗布装置4aから出力される出力情報を収集する収集機能部12と、この収集機能部12が収集した出力情報に基づいて塗布装置4aの動作状態を診断するための処理を行う診断用コンピュータ5とを備えている。診断用コンピュータ5が診断するための処理を行う際に用いられる出力情報は、塗布装置4aが基板Waに塗布液を塗布して前記塗布基板を作製している間に、収集機能部12が収集した情報である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理を行う基板処理装置を備えた基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板上にレジスト液(塗布液)が塗布された基板が使用されている。このような基板を製造するシステムは、基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の塗布装置を備えている。
この塗布装置によって塗布液が塗布された基板の品質を管理するためには、塗布処理後に、基板の品質確認を行えばよい。品質確認の結果、例えば塗布液の膜厚異常が判明した場合、その原因を調査し、塗布装置における各種設定を微調整等する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−238144号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような品質確認の結果、基板に異常が生じていることが判明した場合、塗布装置に何らかの不具合が発生していることが予想されるが、従来では、基板の異常が判明されてから、初めてその原因の調査が開始される。すなわち、基板の異常が判明されると、塗布装置における不具合箇所を推定し、再度、基板に塗布処理を行って当該不具合箇所の動作状態に関する情報を収集し、その情報に基づいて原因を特定している。
このように、塗布装置によって基板に塗布液を塗布した後の工程で、基板の異常が発見されると、この発見を起点として原因特定のための情報を収集するため、また、この情報を収集するのに多くの時間を要するため、塗布装置の復旧に時間が多くかかり、基板の生産効率が大きく低減するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、基板の異常が発生する原因の特定を早期に開始することが可能となる基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板に処理を行うことで処理基板を作製する基板処理装置と、前記基板処理装置が動作することで当該基板処理装置から出力される出力情報を収集する収集手段と、前記収集手段が収集した前記出力情報に基づいて前記基板処理装置の動作状態を診断するための処理を行う診断処理手段とを備え、前記診断処理手段が診断するための処理を行う際に用いられる前記出力情報は、前記基板処理装置が前記基板を処理して前記処理基板を作製している間に前記収集手段が収集した情報であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、診断処理手段が診断するための処理を行う際に用いられる出力情報は、従来のような、基板に異常が発生してから基板処理装置を再度動作させて当該基板処理装置から取得した情報ではなく、基板処理装置が基板を処理して処理基板を作製している間に収集手段が収集して取得した情報であるため、基板に異常が発生している場合や、基板処理装置に不具合がある場合に、収集手段に既に収集されている出力情報に基づいて、当該異常や不具合の発生原因の特定を早期に開始することが可能となる。
なお、前記診断処理手段による、基板処理装置の動作状態を診断するための処理としては、例えば、収集された出力情報と閾値とを診断処理手段が比較して、出力情報が閾値を超えていることを診断処理手段が判断した場合に、診断処理手段が警報等の信号を自動的に発生させる処理のように、診断処理手段が行う処理や、収集された出力情報と閾値とを診断処理手段がモニタに表示させる処理のように、作業者に診断を行わせるための処理がある。
また、前記収集手段は、収集した情報を診断処理手段へ、情報毎に又は情報をある程度まとめてから転送(送信)する機能を有している他に、収集した情報を記録する機能を有していてもよく、収集した情報を、一時的、又は長期的に記録するものであってもよい。
【0008】
また、前記収集手段は、前記基板処理装置から出力される前記出力情報の一部を収集する第一収集部、及び、前記一部とは別の前記出力情報を収集する第二収集部を有しているのが好ましい。
この場合、例えば、処理能力の問題で第一収集部が収集しきれない出力情報を、第二収集部で収集することができ、また、収集できる出力情報の総量を増やすことが可能となる。このため、例えば基板処理装置として複数の装置が存在することで出力情報が多くなっても、これら多数の出力情報を収集して取得することができ、前記診断手段による診断のレベルを高めることが可能となる。
【0009】
この場合において、出力情報を収集する収集手段が、第一収集部と第二収集部と有していることから、例えば、同じタイミングで、出力情報の一部が第一収集部で収集され、かつ、別の出力情報が第二収集部で収集された場合、前記第一収集部と前記第二収集部とを同期させるための信号を伝達する有線又は無線の通信路を、更に備えていれば、第一収集部及び第二収集部それぞれが収集した出力情報を同期させることができ、診断手段は、両収集部それぞれが収集した出力情報を、時間的に関連付けることができる。
【0010】
また、収集手段として第一収集部及び第二収集部を備えている前記基板処理システムは、前記基板処理装置に前記基板の処理を行わせるための指令情報を送信することにより当該基板処理装置を制御する制御機能部を有している制御ユニットを更に備え、前記制御ユニットが、前記第一収集部として、前記制御機能部が送信した前記指令情報に基づいて制御された前記基板処理装置から出力された前記出力情報を収集する収集機能部を有しているのが好ましい。
この構成によれば、制御ユニットの制御機能部が基板処理装置に指令情報を送信することにより、例えばフィードバック制御を行うとした場合、当該制御ユニットの収集機能部は、このフィードバック制御によるフィードバック信号を、出力情報として収集すればよい。すなわち、基板処理装置の制御信号を、診断処理手段による診断のための処理に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板に異常が発生している場合や、基板処理装置に不具合がある場合に、収集手段に既に収集されている出力情報に基づいて、当該異常や不具合の発生原因の特定を早期に開始することが可能となるため、従来よりも早く基板処理装置を復旧させることが可能となり、基板の生産効率が低減するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基板処理システムの実施の一形態を示している概略構成図である。
【図2】診断用コンピュータの機能を説明する説明図である。
【図3】診断用コンピュータの機能を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔基板処理システムの全体構成について〕
図1は、本発明の基板処理システムの実施の一形態を示している概略構成図である。この基板処理システムは、管理コンピュータ1、管理制御装置2、制御ユニット3、基板処理装置4、及び、診断用コンピュータ5を備えていて、これらはハブ6a,6bが用いられてLANが構築され、各種の情報が通信可能である。さらに、この基板処理システムは、リモート入力ユニットであるデジタル入力ユニット8a及びアナログ入力ユニット8bを有している収集装置7を更に備えていて、この収集装置7も前記LANに含まれており、各種の情報が通信可能である。
【0014】
管理コンピュータ1及び診断用コンピュータ5は、HDDやメモリ等よりなり各種のコンピュータプログラムや各種の情報を記憶する記憶装置と、この記憶装置から各種のコンピュータプログラムを読み出して実行するCPUを含む演算装置とを有している。なお、これら管理コンピュータ1及び診断用コンピュータ5の機能は、後に説明する。
【0015】
本実施形態の基板処理装置4は、基板Waに塗布液を塗布する処理を行い、塗布基板を作製する塗布装置4aと、塗布液を塗布し終えた塗布基板Wbを乾燥させる乾燥装置4bとを有している。
塗布装置4aは、塗布液を溜めているタンク(図示せず)と、塗布液を吐出する口金21と、口金21と基板Waとを相対的に移動させるアクチュエータ22とを備えている。口金21は、基板Waに対して移動しながら塗布液を吐出することで、基板Waの所定領域に塗布液を塗布し、塗布基板とすることができる。また、塗布装置4aは複数のセンサを有している。センサとしては、口金21から吐出される塗布液の吐出圧力を検出する圧力センサ23がある。
【0016】
乾燥装置4bは、塗布液を塗布した塗布基板Wbを乾燥させる処理を行い、乾燥済み基板を作製する。乾燥装置4bは、ベース部31と、このベース部31を覆う蓋部32とを有し、両者の間に塗布基板Wbを収容するチャンバーを構成することができる。蓋部32はアクチュエータ33によって昇降移動可能であり、降下した状態でチャンバーを密閉し低圧(真空)にすることができ、また、上昇した状態で塗布基板Wb及び乾燥済み基板の出し入れを行うことができる。また、乾燥装置4bは、複数のセンサを有している。センサとしては、チャンバー内の圧力を検出する圧力センサ34がある。
【0017】
管理制御装置2及び制御ユニット3は、例えば、プログラマブルロジックコントローラからなる。管理制御装置2は、塗布装置4a及び乾燥装置4bの総括的な動作制御を行うことができ、さらに、基板Wa及び塗布基板Wbそれぞれに与えられた識別番号や、基板Wa及び塗布基板Wbを処理する仕様を管理する機能を有している。
制御ユニット3は、自信に記憶されているコンピュータプログラムによって実行される機能部として、制御機能部11を有していて、この制御機能部11は、塗布装置4aを制御する機能を有している。すなわち、制御ユニット3の制御機能部11は、基板Waに塗布液を塗布する仕様等に基づいて指令情報S1を生成可能であり、また、生成した指令情報S1を塗布装置4aに送信可能であり、送信した指令情報S1により塗布装置4aを動作させて基板Wに塗布液を塗布する処理を行わせる制御を行う。なお、後にも説明するが、制御機能部11は、塗布装置4aから出力された出力情報に基づいて前記指令情報S1を生成することができ、この制御はフィードバック制御となる。
【0018】
また、この基板処理システムは、塗布装置4a及び乾燥装置4bが動作することで当該塗布装置4a及び乾燥装置4bそれぞれから出力される出力情報を収集する収集手段として、第一収集部と、この第一収集部とは別の装置として設けられている第二収集部とを有している。
前記第一収集部は、制御ユニット3が備えている。すなわち、制御ユニット3は、前記制御機能部11の他に、第一収集部として収集機能部12を有している。収集機能部12は、HDDやCF等の各種メモリと、この収集機能部12に記憶させているコンピュータプログラムによって実行される機能部とを有し、塗布装置4aから出力された出力情報を計測及び保存する計器(データロガー)として機能することができる。収集機能部12は、制御機能部11が塗布装置4aに送信した指令情報S1に基づいて塗布装置4aが動作したことで、塗布装置4aから出力された出力情報S11を収集する。収集機能部12は、例えば、基板1枚分の出力情報を溜めた後、出力することができる。
そして、前記第二収集部は、この制御ユニット3と別の装置として追加的に設けられた前記収集装置7である。収集装置7は、HDDやCF等の各種メモリと、この収集装置7に記憶させているコンピュータプログラムによって実行される機能部とを有し、塗布装置4a及び乾燥装置4bから出力された出力情報を計測及び保存する計器(データロガー)からなる。収集装置7は、例えば、その出力情報を所定の小さなデータ単位(量)で溜めては出力する、あるいは、基板1枚分又は複数枚分の出力情報をある程度まとめてから、出力することができる。
そして、後に説明する診断用コンピュータ5は、収集機能部12及び収集装置7から出力された情報から、1枚分の基板に関する情報として認識することができる。
【0019】
このように、塗布装置4a及び乾燥装置4bの出力情報を収集する収集手段として、二つの収集部(収集機能部12と収集装置7)がLAN内に存在しているが、特に、これら収集機能部12と収集装置7とを同期させるために、収集機能部12から収集装置7へと同期信号を送信する通信線(有線の通信路)L1が、制御ユニット3と収集装置7(収集装置7が有しているデジタル入力ユニット8a)との間に設けられている。収集機能部12と収集装置7とは別装置であるが、この通信線L1によれば、収集機能部12及び収集装置7それぞれに収集された出力情報を同期させることができるので、診断用コンピュータ5がこれら出力情報を取得して所定の処理を行う際に、収集機能部12が収集した出力情報と収集装置7が収集した出力情報とを時間的に関連付けることができる。なお、同期信号を送信する通信路は、無線の通信路であってもよい。
また、制御ユニット3から収集装置7へと複数のデジタル信号が送信されるが、この中に同期信号が含まれている。すなわち、制御ユニット3から収集装置7へと送信されるデジタル信号を、同期信号として使用することができる。なお、同期の処理は、診断用コンピュータ5によって行われる。
【0020】
〔診断用コンピュータ5の機能について〕
診断用コンピュータ5の機能を説明するために、塗布装置4a及び乾燥装置4bの動作及びその動作によって出力される出力情報についても説明する。
制御ユニット3の制御機能部11が指令情報S1を生成し、生成した指令情報S1が塗布装置4aの前記アクチュエータ22に送信されると、アクチュエータ22は当該指令情報S1に含まれる動作量や動作速度に関する情報に応じて動作し、基板Waに塗布液が塗布される。この際、前記動作を行ったアクチュエータ22からは、実行した動作量や実行した動作速度に関する情報として、出力情報S11が出力され、この出力情報S11を制御ユニット3の収集機能部12が収集して取得する。
なお、アクチュエータ22は、例えばボールねじ及びサーボモータを有する構成であり、サーボモータが前記指令情報S1に応じて回転することで、ボールねじが所定量及び所定速度で動作し、前記口金21を所定距離及び所定速度で移動させることができる。この場合、出力情報S11には、アクチュエータ22が動作している間の動作情報が含まれていて、動作情報には、例えば、ボールねじの回転量、回転速度さらにはトルクについての情報がある。
【0021】
また、制御ユニット3の制御機能部11は、アクチュエータ22の例えば動作量や動作速度に基づいて、アクチュエータ22をフィードバック制御している。すなわち、制御機能部11は、アクチュエータ22から出力された動作結果についての情報(フィードバック信号)に基づいて指令情報S1を生成し、当該指令情報S1をアクチュエータ22に発信し、この処理を繰り返し実行している。このため、制御ユニット3の収集機能部12は、このフィードバック制御におけるフィードバック信号を、前記出力情報S11として収集して取得すればよい。
したがって、制御ユニット3が有している制御機能部11が送信した指令情報S1に基づいてアクチュエータ22が動作することで、当該アクチュエータ22から出力される出力情報S11は、当該制御ユニット3と別の装置として設置されている前記収集装置7ではなくて、当該制御ユニット3が有している収集機能部12が収集して取得するのが好ましい。これにより、制御ユニット3がアクチュエータ22に関する情報を一元的に管理することができる。
また、この収集機能部12は、出力情報S11を、当該出力情報S11が出力された時刻の情報と対応付けて取得(記録)することができる。そして、収集機能部12が収集した出力情報S11は、ハブ6a,6bを経て、診断用コンピュータ5に入力される。
なお、制御機能部11によってフィードバック制御が行われる対象は、アクチュエータ22のみならず、塗布装置4aが有し塗布液を口金21へ送り出すポンプ(図示せず)もある。ポンプの動作量に関しても、同様の制御がされる。このポンプから出力される出力情報も収集機能部12が収集する。
【0022】
これに対して、前記収集装置7が収集して取得する出力情報としては、制御ユニット3の制御機能部11からの指令情報S1に基づいて動作する塗布装置4a及び乾燥装置4bから出力される情報(出力情報S12)であり、例えば、塗布装置4aが有する塗布液ポンプ等のモータトルク信号であり、このような信号はアナログ入力ユニット8bを経由して収集装置7が収集する。
また、収集装置7が収集して取得する出力情報としては、乾燥装置4bの前記アクチュエータ33及びセンサ34から出力される出力情報S13である。具体的には、アクチュエータ33は、例えばボールねじ及びサーボモータを有する構成であり、サーボモータが回転することで、ボールねじが所定量及び所定速度で動作し、前記蓋部32を所定距離及び所定速度で昇降させることができる。このため、前記出力情報S13としては、アクチュエータ33が動作している間の動作情報が含まれていて、動作情報には、例えば、ボールねじの回転量、回転速度さらにはトルクについての情報がある。そして、センサ34から出力される出力情報S12としては、圧力センサ34によって出力される、チャンバー内の圧力である。
このように、制御ユニット3が有する制御機能部11の制御に依存する出力情報は、当該制御ユニット3が有する収集機能部12によって収集され、制御ユニット3の制御に直接依存しない出力情報は、別装置である収集装置7によって収集される。なお、各出力情報は、所定のサンプリング時間毎に収集されている。サンプリング時間としては、例えば1ミリ秒や20ミリ秒である。
【0023】
前記出力情報S12,S13は、その情報の種類に応じて、デジタル入力ユニット8a及びアナログ入力ユニット8bを経て、収集装置7によって収集される。また、収集装置7は、出力情報S12,S13を、当該出力情報S12,S13それぞれが出力された時刻の情報と対応付けて収集して取得することができる。そして、収集装置7が収集した出力情報S12,S13は、ハブ6bを経て、診断用コンピュータ5に入力(転送)される。
【0024】
また、前記出力情報S11,S12,S13が診断用コンピュータ5に入力されると共に、管理コンピュータ1や管理制御装置2から診断用コンピュータ5には、処理する基板Wa及び塗布基板Wbの識別番号、及び、基板Wa及び塗布基板Wbを処理する仕様についての情報が送信される。すなわち、基板の識別番号は、塗布装置4a及び乾燥装置4bによる基板処理動作終了毎に、管理コンピュータ1が、管理制御装置2から基板の識別番号に関する情報を読み取り、当該基板処理の仕様(レシピ)に関する情報と共に、管理コンピュータ1から診断用コンピュータ5へ送られる。
また、管理制御装置2は、制御ユニット3から塗布装置4aの指令情報S1に基づく動作に関する情報、及び、乾燥装置4bからその動作に関する情報を取得することができ、これら情報は、デジタル入力ユニット8aを経て収集装置7に送られる。収集装置7はこの情報を収集し、診断用コンピュータ5に与えることで、診断用コンピュータ5は塗布装置4a及び乾燥装置4bの動作状態を把握することができる。
【0025】
そして、診断用コンピュータ5は、収集機能部12及び収集装置7によって収集された出力情報S11,S12,S13に基づいて、塗布装置4a及び乾燥装置4bの動作状態を診断するための処理を行う。すなわち、診断用コンピュータ5は、収集機能部12及び収集装置7から、出力情報S11,S12,S13を収集する。
このように、診断用コンピュータ5が診断するための処理(以下、診断処理という)を行う際に用いられる出力情報S11,S12,S13は、塗布装置4aが基板Waを処理して塗布基板を作製している間に、及び、乾燥装置4bが塗布基板Wbを処理して乾燥済み基板を作製している間に、収集機能部12及び収集装置7によって収集された情報である。
さらに、診断用コンピュータ5は、収集した出力情報S11,S12,S13を、当該出力情報S11,S12,S13の取得の対象となった基板Wa及び塗布基板Wbの識別番号とを対応付けて、診断用コンピュータ5の記憶装置に記憶する。診断用コンピュータ5は、これら情報をデータベース化して記憶する。そして、このデータベース化された情報に基づいて、診断用コンピュータ5は診断処理を実行する。
【0026】
診断用コンピュータ5が、乾燥装置4bが有しているアクチュエータ33の動作の診断処理を行う場合を説明する。収集装置7は、アナログ入力ユニット8bを経て、アクチュエータ33から所定のサンプリング時間毎に出力された出力情報S13として、動作速度(サーボモータの回転速度)と、動作トルクの情報を収集していて、各情報には、前記のとおり各情報が出力された時刻についての情報が対応付けられている。このため、図2(a)に示しているように、診断用コンピュータ5は、取得したこの出力情報S13に基づいて、横軸を時間軸とし、縦軸をアクチュエータ33の動作速度及びトルクとするグラフを作成する処理を行う。さらに、視覚化するために、診断用コンピュータ5が有するモニタ5a(図1参照)に表示する処理を行う。モニタ5aに表示させたグラフを図2(a)に示している。破線が動作速度を示し、実線がトルクを示している。なお、図2(b)は、同じ仕様で基板Waを同様に処理しているが、別の日(後日)に取得された出力情報に基づくグラフである。
【0027】
図2(a)では、時間の経過と共に動作速度は増加し、一定値となった後、減少している。トルクは、段階的に増加する。さらに、動作速度及びトルクが一定値を示している時間帯では、その変動は僅かである。しかし、図2(b)では、トルクが段階的に増加してはいるが、各段階で、その変動が非常に大きく振れている。
図2(a)の状態がモニタ5aに表示された場合は、アクチュエータ33は正常に動作していると診断される。この診断は、例えば診断用コンピュータ5に、トルクの変動幅についての閾値が設定されていて、診断用コンピュータ5は、出力情報S13によるトルクの変動が、この閾値以内に存在していると判定した場合に、正常であると診断することができる。または、作業者が、図2(a)の表示を確認することで、正常であると診断してもよい。
【0028】
これに対して、図2(b)の状態がモニタ5aに表示された場合は、アクチュエータ33に不具合が生じていると診断される。この診断は、前記と同様に診断用コンピュータ5によって行われ、診断用コンピュータ5は、出力情報S13によるトルクの変動が、この閾値を超えていると判定した場合に、アクチュエータ33に不具合があると診断することができる。または、作業者が、図2(a)の表示を確認することで、異常であると診断してもよい。
【0029】
なお、図2(a)と図2(b)とを比較すると、速度はほぼ同様であるが、トルクが大きく異なっている。したがって、図2(b)の状態がモニタ5aに表示された場合は、速度は正常であり、アクチュエータ33は蓋部32を正規の速度で移動させ、開口させることができるが、アクチュエータ33のトルク波形に乱れが生じていることから、将来的に、蓋部32の開口動作に異常を生じさせる不具合がアクチュエータ33に発生するおそれがあることを、診断用コンピュータ5は、診断することができる。すなわち、診断用コンピュータ5は、乾燥処理に大きな影響を与え塗布基板33Wbに異常を生じさせる程の不具合がアクチュエータ33に発生する前に、予防する診断(予防診断)を行うことも可能である。
【0030】
図2では、乾燥装置4bのアクチュエータ33の診断について説明したが、乾燥装置4bの他の機器、さらには、塗布装置4aの各機器や、他のセンサから出力された出力情報であっても、同様に診断処理することができる。
また、診断用コンピュータ5の機能によって、前記閾値を設定することができる。なお、以下に説明する閾値設定では、特に示さない限り診断用コンピュータ5の処理による。
すなわち、塗布装置4a(乾燥装置4b)から所定時間についての出力情報が制御ユニット3の収集機能部12(収集装置7)によって収集され、この出力情報が、診断用コンピュータ5によって、図3(a)に示しているように取得されたとする。
そこで、この出力情報の最大値αと最小値βとを検索し、さらに、その幅(α−β)を求め、さらに、この幅(α−β)の許容値γを決定する。この許容値γは、任意に入力した値や、診断用コンピュータ5に設定されている値とすることができ、この許容値γを、最大値α側と最小値β側との双方に設定することで、その合計の幅Aの最大と最小との間を、前記閾値として設定する。
【0031】
したがって、新たに出力された出力情報が、仮に図3(b)に示しているように収集機能部12によって収集された場合、この出力情報は、前記閾値(幅A)を超えているので、塗布装置4aに不具合が生じていると診断することができる。
そして、このような不具合が診断されると、診断用コンピュータ5は、診断結果として警報信号を、管理コンピュータ1に、さらには管理制御装置2に送信し、管理制御装置2は塗布装置4aにおける塗布作業を停止させることができる。また、警報信号としては、アラーム音の発生指令の信号や、エラーを表示させる信号が含まれていてもよい。
一方、診断結果が正常である場合は、その診断結果の情報を管理コンピュータ1及び管理制御装置2に送信し、管理制御装置2は、次の乾燥工程を行うべく、診断対象となった塗布基板を、搬送装置(図示せず)によって乾燥装置4bに搬送させる処理を行う。
【0032】
以上の実施形態による基板処理システムによれば、診断用コンピュータ5が診断処理を行う際に用いられる出力情報は、従来のような、基板に不具合が発生してから塗布装置を再度動作させて当該塗布装置から得られた情報ではなく、例えば塗布装置4aが基板Waに塗布液を塗布して塗布基板を作製している間に、収集機能部12や収集装置7によって収集された情報であるため、基板Waに異常が発生している場合や、塗布装置4aに不具合がある場合、収集機能部12や収集装置7に既に収集されている出力情報に基づいて、当該異常や不具合の発生を迅速に検知することができ、しかも、当該出力情報の発信源(例えばアクチュエータ22)が原因であることを早期に判定することができる。この結果、従来よりも早く塗布装置4aを復旧することが可能となり、塗布基板の生産効率が低減するのを防ぐことができる。
さらに、診断用コンピュータ5は、図2(b)により説明したように、乾燥処理や塗布処理に大きな影響を与える程の不具合が乾燥装置4bや塗布装置4aに発生する前段階で、当該不具合の兆候を発見する前記予防診断を行うこともでき、これにより、基板に異常が発生する前に、乾燥装置4bや塗布装置4a等のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0033】
〔収集機能部12、収集装置7及び診断用コンピュータ5のさらなる機能について〕
収集機能部12及び収集装置7(以下、まとめて収集手段と呼ぶ)は、出力情報を高速(例えば1ミリ秒)で収集可能であり、さらに、そのサンプリング時間を出力信号の種類に応じて異ならせて収集することができる。サンプリング時間を短くすると、収集する出力情報は増加するが、本実施形態では、収集手段を複数台(収集機能部12及び収集装置7)有していることから、処理能力的に問題がない。
【0034】
診断用コンピュータ5は、前記収集手段の出力情報に基づいて、基板Wa(塗布基板Wb)毎の出力情報を、一つの座標軸上にグラフ化して、モニタに表示させることができるが、さらに、一つの座標軸上に、複数の異なる基板Wa(塗布基板Wb)それぞれの出力情報を重ね合わせて表示させることもできる。
すなわち、例えば、図2(a)と図2(b)とのグラフを重ね合わせて表示させたり、図3(a)と図3(b)とのグラフを重ね合わせて表示させたりできる。これにより、出力情報のばらつきや経時変化を視覚により確認することができ、正常時と異常時との判別が容易となる。
収集手段によって収集された出力情報は、所定のサンプリング時間毎に収集されたものであるため離散的であるが、診断用コンピュータ5は時間軸に沿ってこれら出力情報を連続的に表示したグラフとしてモニタに表示させることができ、作業者は、視覚的により出力情報の時間的変化を把握するのが容易となる。
【0035】
さらに、収集手段には、様々な種類の出力情報が収集され、これを診断用コンピュータ5は記憶することができるが、一つ又は二つ以上の基板Wa(塗布基板Wb)に関する複数種類の出力情報を、同じ時間軸で重ねてモニタ5aに表示させることができる。さらに、モニタ5aに同じ時間軸で重ねて表示させる出力情報は、任意に選択された出力情報とすることができる。例えば、多数の種類の出力情報の中から、前記アクチュエータ22の出力情報と、圧力センサ23の出力情報とを選択して、同じ時間軸で重ねて表示させることができる。
また、モニタ5aに同じ時間軸で重ねて表示させる出力情報は、基板Wa(塗布基板Wb)毎以外に、基板Wa(塗布基板Wb)の処理の仕様毎とすることができる。さらに、モニタ5aに表示させた出力情報(グラフ)を、モニタ5a上で移動させたり、拡大縮小させたりすることができ、さらに、この移動や拡大縮小は、選択された出力情報(グラフ)のみについて実行することが可能である。
【0036】
診断用コンピュータ5は、収集手段から得られた出力情報を判定することにより、診断処理を行うことができるが、この際、診断設定を予め行うことができる。この診断設定は、基板の処理の仕様(レシピ)毎、又は、出力信号の種類(信号アイテム)毎に行うことができる。
診断設定は、実際に処理した基板から診断情報を取得して、その後に処理した基板を、先に処理した前記基板の前記診断情報と比較して診断するための設定であり、先ず、ある基板を処理したことで得られた出力信号から作成されたグラフ上において、出力信号の値の変化点(グラフの極大点や極小点)と任意の時刻との一方又は双方の組み合わせにより、診断位置(トリガ)を、時間軸上に複数点設定する。つまり、図2(a)により説明すると、トルクに関する出力信号(実線)に関して、グラフの極大点、極小点から、診断位置(トリガ)として、点ta、tb、tc、td、teが設定される。そして、複数の(隣り合う)診断位置の間で、例えば、点taと点tbとの間で、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値との差、終了値と開始値との差、及び、終了時刻と開始時刻との差、の少なくとも一つを診断対象項目として設定する。このような診断設定を行ってから診断処理が行われる。
また、別の診断設定としては、ある基板を処理したことで得られた出力情報と、別の基板を処理したことで得られた出力情報とのそれぞれに関して、前記と同様に、診断位置(トリガ)を時間軸上に複数点設定した後に、両者共において、同じ診断位置(トリガ)間での例えば上限値及び下限値を、診断対象項目として設定する。つまり、図2(a)と図2(b)とは、異なる基板それぞれから得られた出力情報であり、図2(a)の点taと点tbとの間と、図2(b)の点taと点tbとの間とで出力情報(上限値、下限値等)を比較し、診断処理が行われる。
【0037】
また、出力情報は前記説明した種類以外の情報があり、処理した基板における異常の発生や、機器の不具合の発生に関与することが想定される、基板処理装置4が有している各種センサや各種アクチュエータや、基板処理装置4とは別に設けられた独立した各種センサからの様々な出力信号がある。基板処理装置4とは別に設けられた独立したセンサとしては、例えば、地震計(振動計)、室温計(温度計)等である。そして、これら出力情報を、処理作業中にリアルタイムで収集手段に収集させる。このため出力信号は増加するが、本実施形態の基板処理システムによれば、収集手段を複数台(収集機能部12及び収集装置7)有していることから、これが可能となる。
【0038】
以上のような実施形態により塗布装置を説明したが、本発明の基板処理システムは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、システムは、乾燥装置4bを有していなくてもよい。
また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置を備えたシステムについて説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられる塗布装置を備えたシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
3:制御ユニット、 4:基板処理装置、 4a:塗布装置、 4b:乾燥装置、 5:診断用コンピュータ(診断処理手段)、 7:収集装置(第二収集部)、 11:制御機能部、 12:収集機能部(第一収集部)、 L1:通信線(通信路)、 S1:指令情報、 S11:出力情報、 S12:出力情報、 S13:出力情報、 Wa:基板、 Wb:塗布基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を行うことで処理基板を作製する基板処理装置と、
前記基板処理装置が動作することで当該基板処理装置から出力される出力情報を収集する収集手段と、
前記収集手段が収集した前記出力情報に基づいて前記基板処理装置の動作状態を診断するための処理を行う診断処理手段と、
を備え、
前記診断処理手段が診断するための処理を行う際に用いられる前記出力情報は、前記基板処理装置が前記基板を処理して前記処理基板を作製している間に前記収集手段が収集した情報であることを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記収集手段は、前記基板処理装置から出力される多数の前記出力情報の一部を収集する第一収集部、及び、前記一部とは別の前記出力情報を収集する第二収集部を有している請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記第一収集部と前記第二収集部とを同期させるための信号を伝達する有線又は無線の通信路を、更に備えている請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記基板処理装置に前記基板の処理を行わせるための指令情報を送信することにより当該基板処理装置を制御する制御機能部を有している制御ユニットを、更に備え、
前記制御ユニットが、前記第一収集部として、前記制御機能部が送信した前記指令情報に基づいて制御された前記基板処理装置から出力された前記出力情報を収集する収集機能部を有している請求項2又は3に記載の基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−100926(P2011−100926A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256165(P2009−256165)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】