説明

基板検査装置および基板検査方法

【課題】従来よりも外的要因による膜抜け箇所の検出への影響を抑えることができるとともに、膜抜け箇所の定量的な評価が可能な基板検査装置および基板検査方法を提供する。
【解決手段】基板の透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付けるためのガス吹き付けユニットと、基板の透明導電膜側の表面の表面電位を測定するための表面電位測定ユニットと、を備えた、基板検査装置である。また、基板の透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付けて表面電位を測定する基板検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査装置および基板検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン薄膜太陽電池に用いられている基板としては、透明導電膜が堆積したガラス基板が用いられている。近年、シリコン薄膜太陽電池は大面積化が進み、たとえば幅1.1m×長さ1.4mの大面積の透明導電膜付きガラス基板上にシリコン半導体層を積層して作製されている。
【0003】
ガラス基板上に透明導電膜が局所的に存在していない箇所(以下、「膜抜け箇所」という。)がある場合には、その膜抜け箇所で短絡電流(Isc)が低下して、シリコン薄膜太陽電池の光電変換効率が低下するため、膜抜け箇所は少ない方が望ましい。そのため、シリコン薄膜太陽電池の量産現場においては、シリコン半導体層を積層する前に基板の膜抜け箇所を検出しておくことが強く求められている。
【0004】
たとえば特許文献1および特許文献2には、膜抜け箇所の検査装置として、基板に光を照射し、その透過光または反射光を受光して画像処理することにより検査する検査装置および検査方法が開示されている。また、一般的には、熟練者の目視によって、膜抜け箇所の有無を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−188048号公報
【特許文献2】特開2004−20254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の検査装置および検査方法においては、振動や照明輝度の変化等の外的要因によって微小な膜抜け箇所を検出することができないという問題があった。
【0007】
また、熟練者の目視による方法は官能検査となるため、膜抜け箇所の定量的な評価が困難であるという問題もあった。
【0008】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、従来よりも外的要因による膜抜け箇所の検出への影響を抑えることができるとともに、膜抜け箇所の定量的な評価が可能な基板検査装置および基板検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガラス基板上に透明導電膜が設けられた基板を検査するための基板検査装置であって、基板の透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付けるためのガス吹き付けユニットと、基板の透明導電膜側の表面の表面電位を測定するための表面電位測定ユニットと、を備えた、基板検査装置である。
【0010】
ここで、本発明の基板検査装置において、金属粒子の径は、50nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の基板検査装置において、金属粒子は、長周期型周期表の第11族の元素の少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の基板検査装置において、ガス吹き付けユニットは、基板の透明導電膜側の表面に金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するようにガスを吹き付けることが好ましい。
【0013】
また、本発明の基板検査装置において、ガスは、不活性ガスを含むことが好ましい。
また、本発明の基板検査装置において、ガス吹き付けユニットは、吹き付け圧力が5kg/cm2以上10kg/cm2以下でガスを吹き付けることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、ガラス基板上に透明導電膜が設けられた基板を用意する工程と、基板の透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付ける工程と、基板の透明導電膜側の表面の表面電位を測定する工程と、を含む、基板検査方法である。
【0015】
ここで、本発明の基板検査方法は、表面電位が局所的に異なる箇所が透明導電膜の膜抜け箇所であると判断する工程を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の基板検査方法において、金属粒子の径は、50nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の基板検査方法において、金属粒子は、長周期型周期表の第11族の元素の少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の基板検査方法においては、基板の透明導電膜側の表面に金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するようにガスを吹き付けることが好ましい。
【0019】
また、本発明の基板検査方法において、ガスは、不活性ガスを含むことが好ましい。
また、本発明の基板検査方法においては、吹き付け圧力が5kg/cm2以上10kg/cm2以下でガスを吹き付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来よりも外的要因による膜抜け箇所の検出への影響を抑えることができるとともに、膜抜け箇所の定量的な評価が可能な基板検査装置および基板検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態の基板検査装置の構成図である。
【図2】実施例1で用いられた基板の模式的な平面図である。
【図3】実施例1で用いられた透明導電膜の表面の領域A、領域Bおよび領域Cにおける表面の表面電位(V)と、透明導電膜の表面の領域A、領域Bおよび領域Cのそれぞれの基板の幅方向における位置(mm)と、の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0023】
<基板検査装置>
図1に、本発明の基板検査装置の一例である本実施の形態の基板検査装置の構成を示す。本実施の形態の基板検査装置は、ガス吹き付けユニット1001と、表面電位測定ユニット1002と、を備えている。
【0024】
ガス吹き付けユニット1001は、ガラス基板100b上に透明導電膜100aが設けられた基板100の透明導電膜100a側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付けるために設けられている。ガス吹き付けユニット1001は、ガスが充填されたボンベ200と、金属粒子が充填されたチャンバ300と、金属粒子を含むガスを吐出するためのガス吐出器400と、ボンベ200とチャンバ300とを接続する配管900aと、チャンバ300とガス吐出器400とを接続する配管900bと、を備えている。
【0025】
表面電位測定ユニット1002は、基板100の透明導電膜100a側の表面の表面電位を測定するために設けられている。表面電位測定ユニット1002は、プローブ500と、表面電位差計600と、アルミニウム箔などの金属箔700と、金属箔700と電気的に接続する導体800と、プローブ500と表面電位差計600とを電気的に接続する導線1100aと、導体800と表面電位差計600とを電気的に接続する導線1100bと、を備えている。ここで、金属箔700は、導体800を介してアースされている。
【0026】
ボンベ200にはガス吐出器400から吐出するためのガスが充填されている。ボンベ200に充填されるガスは特に限定されないが、不活性ガスが充填されていることが好ましい。不活性ガスは化学的に安定な性質を有し、チャンバ300に充填された金属粒子とは化学反応をしない傾向にある。不活性ガスとしては、たとえば、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群から選択された少なくとも1種を含むガスを用いることができる。
【0027】
チャンバ300にはガス吐出器400から上記のガスとともに吐出するための金属粒子が充填されている。チャンバ300に充填される金属粒子は特に限定されないが、長周期型周期表の第11族の元素(銅、銀および金)の少なくとも1種の粒子であることが好ましく、なかでも金粒子であることがより好ましい。金属粒子として、長周期型周期表の第11族の元素(銅、銀および金)の少なくとも1種の粒子を用いた場合、特に金粒子を用いた場合には、金は常圧の大気中で酸化しない特性を有していることから物性的な変化がなく安定していることにより、大気中のラインで、高温多湿等のいかなる環境下においても用いることができるため、生産技術から見て、非常に好ましい傾向にある。
【0028】
また、金属粒子の径は、50nm以上100nm以下であることが好ましく、50nm以上80nm以下であることがより好ましい。金属粒子の径が50nm以上100nm以下である場合、特に50nm以上80nm以下である場合には、金属粒子がプラズモン共鳴を介した散乱により、たとえば0.5μm〜0.6μmのような短波長領域の光を1.8倍程度増幅させることができ、本実施の形態の基板検査装置で検査された基板を用いて作製されたシリコン薄膜太陽電池の短絡電流Iscが増大する傾向にある。その詳細は、Appl. Phys. Lett. 86, 063106(2005)で議論されている。
【0029】
なお、本明細書において、金属粒子の径とは、金属粒子の直径を意味しており、ゾル−ゲル法による粒子作製時において、光子相関分光方法、すなわちブラウン運動をする粒子にレーザ光を照射して散乱された光の強度の変動を解析することによって測定することができる。
【0030】
金属粒子の製造方法は、特に限定されず、たとえば、粉砕法、またはコロイド粒子を用いたゾル−ゲル法などを用いることができる。なかでも、金属粒子の製造方法としては、ゾル−ゲル法を用いることが好ましい。この場合には、微小な径の金属粒子を得ることができる傾向にある。
【0031】
ガス吐出器400は、基板100の透明導電膜100a側の表面に、金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するように金属粒子を含むガス401を吹き付けることが好ましい。ガス吐出器400が、基板100の透明導電膜100a側の表面に、金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するように金属粒子を含むガス401を吹き付けた場合には、本実施の形態の基板検査装置で検査された基板を用いて作製されたシリコン薄膜太陽電池の短絡電流Iscが増大するとともに、曲線因子(F.F)が増大する傾向にある。すなわち、基板100の透明導電膜100a側の表面に存在する金属粒子の密度が1×107個/cm2未満である場合には、金属粒子が少なすぎて、金属粒子の存在によるシリコン薄膜太陽電池の短絡電流Iscの増大効果が得られない傾向にある。また、基板100の透明導電膜100a側の表面に存在する金属粒子の密度が1×109個/cm2を超える場合には、直列抵抗成分および漏れ電流に起因する並列抵抗成分の増加により曲線因子が低下する傾向にある。
【0032】
ガス吐出器400は、吹き付け圧力が5kg/cm2以上10kg/cm2以下で金属粒子を含むガス401を吹き付けることが好ましい。5kg/cm2以上10kg/cm2以下の吹き付け圧力で金属粒子を含むガス401を吹き付けた場合には、表面電位測定ユニット1002による基板100の透明導電膜100a側の表面の表面電位の測定に影響を与えることなく、基板100の透明導電膜100a側の表面に存在する微粒子を除去することができる傾向にある。
【0033】
すなわち、吹き付け圧力が5kg/cm2未満である場合には、基板100の透明導電膜100aの表面粗さおよび/または湿気による表面張力によって付着している微粒子を除去することができない傾向にある。たとえば、基板100の透明導電膜100aの表面上に500μm程度の径を有する微粒子を10個設置したところ、吹き付け圧力が5kg/cm2未満である場合には当該微粒子をほとんど除去できないことが100倍の倍率の光学顕微鏡による観察で確認された。その一方、吹き付け圧力を5kg/cm2以上とした場合には当該微粒子をすべて除去することが確認できた。また、吹き付け圧力が10kg/cm2を超える場合には当該微粒子を除去することはできるが、透明導電膜100aの表面での摩擦に起因して発生する静電気が観測された。このような静電気は、表面電位測定ユニット1002による表面電位の測定に影響を与えるおそれがある。
【0034】
また、たとえば基板100を矢印1200の方向に移動させることによって、ガス吹き付けユニット1001で金属粒子を含むガス401を基板100の透明導電膜100a側の表面に吹き付けた後に、表面電位測定ユニット1002で基板100の透明導電膜100a側の表面の表面電位を測定することができる。
【0035】
そのため、基板100の透明導電膜100a側の表面に金属粒子を含むガス401を吹き付けた後に、基板100の透明導電膜100a側の表面の表面電位を測定することができるように基板100を移動させることができる基板移動ユニットをさらに備えていることが好ましい。
【0036】
<基板検査方法>
以下、本発明の基板検査方法の一例として、図1に示す本実施の形態の基板検査装置を用いた本実施の形態の基板検査方法について説明する。
【0037】
まず、ガラス基板100b上に透明導電膜100aが設けられた基板100を用意する工程を行なう。
【0038】
ここで、ガラス基板100bとしては、SiO2からなるガラス基板を用いることができる。また、透明導電膜100aとしては、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化錫からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。透明導電膜100aは、ガラス基板100b上に、たとえば、スパッタリング法またはCVD法などの方法で堆積することができる。また、基板100としては、ガラス基板100b上に透明導電膜100aが予め設けられた市販の基板を用いることもできる。
【0039】
また、透明導電膜100aは、パターンニングされていてもよい。透明導電膜100aのパターンニングは、たとえば、レーザスクライブ法などで透明導電膜100aにストライプ状の溝などを形成することによって行なうことができる。
【0040】
また、基板100としては、透明導電膜100aの表面が洗浄されたものを用意してもよい。一般的に、シリコン薄膜太陽電池の製造工程においては、透明導電膜100a上にシリコン半導体層を積層する前に透明導電膜100aの表面の洗浄が行なわれる。透明導電膜100aの表面の洗浄は、たとえば、純水、超純水、またはエタノールを用いた超音波洗浄により行なうことができる。これにより、透明導電膜100aの表面の微粒子や油分を除去することができるとともに、透明導電膜100aにパターンニングが行なわれた場合には透明導電膜100aの切り屑を除去することができる。
【0041】
次に、基板100の透明導電膜100a側の表面に金属粒子を含むガス401を吹き付ける工程を行なう。
【0042】
ここで、金属粒子を含むガス401は、ボンベ200に充填されたガスが配管900aを通ってチャンバ300に流れ込み、チャンバ300に充填された金属粒子を含んだ状態で配管900bを通ってガス吐出器400に流れ込み、ガス吐出器400から基板100の透明導電膜100a側の表面に吹き付けられる。
【0043】
金属粒子を含むガス401に用いられるのに好適なガスおよび金属粒子の条件、ならびに金属粒子を含むガス401の好適な吹き付け条件は上記と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0044】
次に、基板100の透明導電膜100a側の表面の表面電位を測定する工程を行なう。ここで、表面電位は、たとえば、アースされた金属箔700をガラス基板100bに接触させた状態で、プローブ500を透明導電膜100aの表面に接触させることなく、透明導電膜100aの表面上方を移動させることなどの方法により行なうことができる。これにより、基板100のガラス基板100b側の表面に対する基板100の透明導電膜100a側の表面の電位差(表面電位)を表面電位差計600によって測定することができる。なお、表面電位の検出装置は、測定のための電極と、被測定物との間の静電容量を検出するものであって、その検出理論は公知であり、市販もされている。
【0045】
金属箔700をガラス基板100bに接触させるとともにプローブ500に電圧を印加した状態で、プローブ500を透明導電膜100aの表面に接触させながら移動させる。そして、表面電位差計600によって測定された表面電位が局所的に異なる箇所が透明導電膜100aの膜抜け箇所となる。これは、本発明者が鋭意検討した結果、透明導電膜100aの膜抜け箇所は、他の箇所と比べて表面電位が局所的に異なることを見い出したことによるものである。その理由は、以下のような理由であると推測される。
【0046】
すなわち、透明導電膜100aと、膜抜けによってガラス基板100bの表面が露出した箇所と、では帯電のしやすさが異なる。透明導電膜100aは帯電し難い性質を有し、電離電圧が小さいSiO2(ガラス基板100b)は正に帯電しやすい性質を有している。さらに、金属粒子は、電離電圧が大きいために負に帯電しやすい性質を有している。
【0047】
負に帯電した金属粒子が基板100に到達すると、透明導電膜100aの膜抜けによって露出したSiO2領域では、負に帯電した金属粒子と正に帯電したSiO2とがクーロン力により引き合うことによって、金属粒子が膜抜け箇所のSiO2領域に吸着される。このとき、静電誘導によって金属粒子からSiO2領域に電子は移動するが、SiO2領域では正電荷が圧倒的に多いため、SiO2領域は正に帯電した状態を維持する。
【0048】
その一方、金属粒子はSiO2領域への電子の移動により正に帯電するため、クーロン力によって、正に帯電した状態を維持しているSiO2領域から離れる。
【0049】
また、透明導電膜100aの表面上に金属粒子が到達した場合には、透明導電膜100aは当該金属粒子によって、見かけ上、負に帯電しているようになる。そのため、透明導電膜100aと、膜抜け箇所において露出しているSiO2領域と、は、異なる極性で帯電していると考えられるため、膜抜け箇所はその他の透明導電膜100aの設置箇所と局所的に表面電位が異なることになり、これが表面電位の差異として検出されることになる。
【0050】
なお、上記の各工程の前後にはそれぞれ他の工程が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0051】
本実施の形態の基板検査装置および基板検査方法によれば、透明導電膜100aの表面電位の差異に基づいて膜抜け箇所を検出することができるため、従来よりも振動や照明輝度の変化等の外的要因を排除して微小な膜抜け箇所も検出することができる。
【0052】
また、本実施の形態の基板検査装置および基板検査方法によれば、熟練者の目視などによる官能検査を必要としないため、膜抜け箇所の定量的な評価が可能となる。
【0053】
以上により、本実施の形態の基板検査装置および基板検査方法によれば、従来よりも外的要因による膜抜け箇所の検出への影響を抑えることができるとともに、膜抜け箇所の定量的な評価が可能となる。
【実施例1】
【0054】
実施例1においては、図1に示す構成の基板検査装置を用いて透明導電膜の膜抜けの検査を行なった。
【0055】
まず、厚さ4mmのガラス(SiO2)基板100b上に、厚さ1μmの酸化錫と厚さ0.010μmの酸化亜鉛とを積層することによって透明導電膜100aが形成された基板100を用意した。
【0056】
次に、図2の模式的平面図に示すように、基板100を幅100mm×長さ100mmに切り出し、透明導電膜100aの一部を除去してガラス基板100bの表面を露出させて人工的に膜抜け箇所101,102,103を形成した。
【0057】
なお、基板100の表面領域を長さ方向に3つの領域A、領域Bおよび領域Cに分けたときに、領域A、領域Bおよび領域Cにそれぞれ膜抜け箇所101,102,103が配置されるように膜抜け箇所101,102,103を形成した。
【0058】
また、膜抜け箇所101は直径1mmの円形状の孔とし、膜抜け箇所102は直径500μmの円形状の孔とし、膜抜け箇所103は直径300μmの円形状の孔とした。
【0059】
その後、第2高調波YAGレーザ光を用いたレーザスクライブ法により、透明導電膜100aにスクライブ幅60μmの溝(図示せず)を形成し、透明導電膜100aを純水で超音波洗浄した。
【0060】
次に、図1に示すボンベ200に窒素ガスを充填するとともに、チャンバ300に100nm径の金粒子(レーザースクライブ法により形成された溝の幅<金粒子の径)を充填した。
【0061】
そして、ガス吐出器400から上記のようにして作製した図2に示す基板100の透明導電膜100aの表面に金属粒子を含むガス401として金粒子を含む窒素ガスを吹き付けた。ここで、金粒子を含む窒素ガスの吹き付け圧力は7kg/cm2とされ、1秒間の吹き付けで基板100の透明導電膜100aの表面に7×107個/cm2〜2×108個/cm2の金粒子が存在するように金粒子を含む窒素ガスの吹き付けを行なった。
【0062】
そして、図示しない基板移動ユニットによって基板100を矢印1200の方向に移動させて、金粒子を含む窒素ガスが吹き付けられた透明導電膜100aの表面電位を測定した。
【0063】
基板100の透明導電膜100aの表面から上方10mmの位置にプローブ500を保持し、基板100のガラス基板100bの表面にアルミニウム箔である金属箔700を接触させることによってアースを取りながら、透明導電膜100aの表面の領域A、領域Bおよび領域Cのそれぞれの上方でプローブ500を基板100の幅方向に10mm/秒の速度で移動させた。
【0064】
これにより、表面電位差計600で透明導電膜100aの表面の表面電位の測定を行なった。その結果を図3に示す。なお、図3の縦軸は表面電位差計600で測定された透明導電膜100aの表面の領域A、領域Bおよび領域Cにおける表面の表面電位(V)を示し、横軸は透明導電膜100aの表面の領域A、領域Bおよび領域Cのそれぞれの基板100の幅方向における位置(mm)を示している。
【0065】
図3に示すように、透明導電膜100aの表面の領域A、領域Bおよび領域Cのいずれにおいても、透明導電膜100aが存在する領域では表面電位差計600において−960Vの表面電位が観測されたが、膜抜け箇所101,102,103では表面電位差計600において+320Vの表面電位が観測された。
【0066】
以上により、実施例1においては、透明導電膜100aの表面電位の差異に基づいて膜抜け箇所を検出できることが確認できたため、従来よりも外的要因による膜抜け箇所の検出への影響を抑えることができるとともに、膜抜け箇所の定量的な評価が可能となることが実証された。
【実施例2】
【0067】
まず、幅1.1×長さ1.4mのガラス基板の表面上に均一に透明導電膜を堆積させた基板を用意し、その基板の透明導電膜にレーザ光を照射してレーザスクライブ法によりスクライブ幅60μmの溝を有するように透明導電膜をパターンニングした。
【0068】
次に、レーザスクライブ法による残渣をエアブローによって除去し、パターンニングされた透明導電膜の表面上にCVD(化学気相成長)装置にてシリコン半導体層を堆積した。
【0069】
ここで、シリコン半導体層は、p型シリコン層、0.35μmの厚さを有するアモルファスシリコンからなるi型半導体層およびn型シリコン半導体層を順次積層することによって形成し、pin構造とした。
【0070】
その後、シリコン半導体層の表面上にマグネトロンスパッタ装置にてAlドープZnO透明導電膜およびAg電極を順次形成することによって比較例のシリコン薄膜太陽電池を作製した。
【0071】
ここで、通常のシリコン薄膜太陽電池モジュールの製造方法においては、透明導電膜を形成する前に直列のセル接続をするためのコンタクトラインを形成する工程と、透明導電膜およびAg電極を形成した後、直列接続方向に隣接するセル間を分離するための分離溝を形成する工程と、を行なうことにより、直列に形成する所望のセルの段数を形成し、目的とする発電電圧のモジュールを実現する。
【0072】
一方、上記の洗浄工程までを経た基板に、図1に示すボンベ200に窒素を充填するとともに、チャンバ300に100nm程度の径を有する金粒子(レーザースクライブ法により形成された溝の幅<金粒子の径)を充填した。
【0073】
そして、ガス吐出器400から基板の透明導電膜の表面に金属粒子を含むガス401として金粒子を含む窒素ガスを吹き付けた。ここで、金粒子を含む窒素ガスの吹き付け圧力は7kg/cm2とされ、1秒間の吹き付けで基板の透明導電膜の表面に7×107個/cm2〜2×108個/cm2の金粒子が存在するように金粒子を含む窒素ガスの吹き付けを行なった。
【0074】
金粒子を含む窒素ガスの吹き付けを行なった透明導電膜の表面上に、上記と同様にしてシリコン半導体層、AlドープZnO透明導電膜およびAg電極をこの順序で形成して実施例のシリコン薄膜太陽電池を作製した。
【0075】
上記のようにして作製した実施例のシリコン薄膜太陽電池および比較例のシリコン薄膜太陽電池のそれぞれに対してスペクトル分布AM1.5、エネルギ密度100mW/cm2の1SUN疑似太陽光を照射し、雰囲気温度とこれらのシリコン薄膜太陽電池の温度とをそれぞれ25℃にして出力特性を測定した。
【0076】
その結果、比較例のシリコン薄膜太陽電池の特性は、開放電圧Vocが0.83V、短絡電流密度Jscが13.9mA/cm2、曲線因子F.Fが0.67、光電変換効率Effが7.7%であった。
【0077】
それに対して、実施例のシリコン薄膜太陽電池の特性は、開放電圧Vocが0.82V、短絡電流密度Jscが15.8mA/cm2、曲線因子F.Fが0.66、光電変換効率Effが8.6%であった。
【0078】
したがって、実施例のシリコン薄膜太陽電池は、比較例のシリコン薄膜太陽電池と比べて、短絡電流密度Jscおよび光電変換効率が高くなる傾向にあった。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、基板検査装置および基板検査方法に利用することができ、特にシリコン薄膜太陽電池用の基板の透明導電膜の膜抜け箇所の検出に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 基板、100a 透明導電膜、100b ガラス基板、101,102,103 膜抜け箇所、200 ボンベ、300 チャンバ、400 ガス吐出器、401 金属粒子を含むガス、500 プローブ、600 表面電位差計、700 金属箔、800 導体、900a,900b 配管、1001 ガス吹き付けユニット、1002 表面電位測定ユニット、1100a,1100b 導線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に透明導電膜が設けられた基板を検査するための基板検査装置であって、
前記基板の前記透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付けるためのガス吹き付けユニットと、
前記基板の前記透明導電膜側の前記表面の表面電位を測定するための表面電位測定ユニットと、を備えた、基板検査装置。
【請求項2】
前記金属粒子の径は、50nm以上100nm以下である、請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記金属粒子は、長周期型周期表の第11族の元素の少なくとも1種の粒子である、請求項1または2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
前記ガス吹き付けユニットは、前記基板の前記透明導電膜側の前記表面に前記金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するように前記ガスを吹き付ける、請求項1から3のいずれかに記載の基板検査装置。
【請求項5】
前記ガスは、不活性ガスを含む、請求項1から4のいずれかに記載の基板検査装置。
【請求項6】
前記ガス吹き付けユニットは、吹き付け圧力が5kg/cm2以上10kg/cm2以下で前記ガスを吹き付ける、請求項1から5のいずれかに記載の基板検査装置。
【請求項7】
ガラス基板上に透明導電膜が設けられた基板を用意する工程と、
前記基板の前記透明導電膜側の表面に金属粒子を含むガスを吹き付ける工程と、
前記基板の前記透明導電膜側の前記表面の表面電位を測定する工程と、を含む、基板検査方法。
【請求項8】
前記表面電位が局所的に異なる箇所が前記透明導電膜の膜抜け箇所であると判断する工程を含む、請求項7に記載の基板検査方法。
【請求項9】
前記金属粒子の径は、50nm以上100nm以下である、請求項7または8に記載の基板検査方法。
【請求項10】
前記金属粒子は、長周期型周期表の第11族の元素の少なくとも1種の粒子である、請求項7から9のいずれかに記載の基板検査方法。
【請求項11】
前記基板の前記透明導電膜側の前記表面に前記金属粒子が1×107個/cm2以上1×109個/cm2以下で存在するように前記ガスを吹き付ける、請求項7から10のいずれかに記載の基板検査方法。
【請求項12】
前記ガスは、不活性ガスを含む、請求項7から11のいずれかに記載の基板検査方法。
【請求項13】
吹き付け圧力が5kg/cm2以上10kg/cm2以下で前記ガスを吹き付ける、請求項7から12のいずれかに記載の基板検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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