説明

基板検査装置

【課題】ターゲット基板の残留電圧や残留電荷があるレベル以下になるまでターゲット基板を取り出せないようにして、基板部品の破損や、試験者等の感電等の問題をなくした基板検査装置を提供する。
【解決手段】レバー4を回動させてピンボードをターゲット基板ごと上昇させ、プローブピンをテストポイントに当接させて通電し、ターゲット基板の動作試験を行う。試験終了後、ターゲット基板が有する電解コンデンサの蓄積電荷が減るまでソレノイドロック18のピン19で回転ブロック14の下降回転、すなわちレバー4の回転を機械的に阻止する。ある程度時間が経過すると電解コンデンサの蓄積電荷量が少なくなるので、ソレノイドロック18をオフとし、ピン19を没入状態に戻し、レバー4を上向きに回転させればピンボードが下降して待機位置に戻り、天板を開けてターゲット基板を取り去れるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器や家電製品等に用いられる基板の機能検査や動作確認を行うために用いる基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や家電製品等に使用される基板を製品に組み込む前に機能検査や動作確認を行う場合、一般には、検査対象となる被検査基板の各種テストポイントに通電検査用のプローブピンを押し当て、プローブピンから通電して検査する方法が用いられる。
【0003】
このような基板検査装置は、側面に昇降レバーが付いた装置本体を有し、装置本体の上面に天板を備え、天板の下方には、所定の配列パターンに従って複数のプローブピンを設けたピンボードを配置しており、昇降レバーの操作によりピンボードが待機位置と検査位置の間で上下に昇降するようになっている。下方の待機位置にあるピンボードを検査位置まで上昇させると、プローブピンの先端が天板で保持した検査対象の基板のテストポイントに当接する。そこで、装置本体が備える電源や外部電源から通電すると、各プローブピンに対して通電がなされ、基板の通電検査が行われる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−72527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのような構造の基板検査装置では、検査対象としたターゲット基板の検査中あるいは検査終了後、すぐに試験者がターゲット基板を取り出そうとすると、ターゲット基板が有する電解コンデンサに蓄積された電荷が放出されることにより、ターゲット基板が備える部品が破損したり、試験者、操作者が感電したりすることがあった。
【0006】
そこで従来は、LED等の発光手段や、ブザーなどの音声出力手段を用い、光や音でターゲット基板を取り出せるタイミングを試験者に通知することが行われていた。しかしながら、たとえそのような通知を行っても、ターゲット基板を取り出すこと自体はできるので、試験者、操作者の不注意により上述の問題が引き起されることがあるという問題があった。なお従来でも、たとえば、ターゲット基板を取り出すのに下記の一連の動作により行う、すなわち、
(1)レバーを上方へ回動させ
(2)回転ブロックが下降回転し、
(3)ピンボードが下降して待機位置へ至り、
(4)ロックピンも下降し、
(5)天板を上方へ回動させ、
(6)ターゲット基板を取り出す
のであれば問題は無いが、この手順を外すと上述のような問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上にかんがみ、機構的にターゲット基板を取り出せないようにすることでこのような従来の問題を解決できる基板検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板検査装置のうち請求項1に係るものは、装置本体下部に位置し、プローブピンを備え、検査対象とするターゲット基板をセットした状態で上下動させ得る昇降機構を備えるピンボードと、前記装置本体外部から操作可能で前記ピンボードを上下動させるためのレバーやハンドル等の操作体と、前記装置本体上部に位置し、上下方向に回動開閉可能で下方回動時に前記ピンボード上の前記ターゲット基板を押さえて前記プローブピンを前記基板に接触させる天板とからなり、前記プローブピンを介して通電して前記基板の動作試験行う基板検査装置において、
前記ターゲット基板の残留電圧及び/又は残留電荷を検出する検出手段と、
前記ターゲット基板の残留電圧及び/又は残留電荷が所定値以下になるまで前記操作体の作動を機械的に阻止する阻止手段とを有することを特徴とする。
【0009】
同請求項2に係るものは、請求項1の基板検査装置において、前記阻止手段は、前記検出手段からの信号に応じてピンが突出するソレノイドであり、突出した前記ピンにより前記操作体又は前記昇降機構の動作を阻止することを特徴とする。
【0010】
同請求項3に係るものは、請求項2の基板検査装置において、前記操作体を前記装置本体へ取り付ける支軸を前記装置本体内に挿通させ、該支軸の両端近傍を前記装置本体側で軸支し、該軸支部分の近傍に前記ピンボードを上下動させるための機構を構成する回転ブロックを備え、該回転ブロックがレバー状体を備え、前記ソレノイドのピンが該レバー状体の側縁に当接して前記操作体又は前記昇降機構の動作を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ターゲット基板の残留電圧及び/又は残留電荷を検出し、該残留電圧及び/又は残留電荷があるレベル以下の値になるまではターゲット基板を取り出せない機構を備えるものとしたので、前述のような操作によるターゲット基板の部品破損や、試験者、操作者の感電等の問題をなくせるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に関して、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例に係る基板検査装置の外観を示す斜視図で、天板を閉じた状態の図(A)と天板を開けた状態の図(B)である。図中1が装置本体、2が天板、3がピンボードである。ピンボード3は、通常は装置本体1の下部に位置し、プローブピンを備え、検査対象とする基板(ターゲット基板)10をセットした状態で操作体(図示の例ではレバー4)を上下動させることでそれに伴って上下動させ得るようになっている。天板2は、装置本体1の上部に上下方向で回動可能に軸支してあり、樹脂製等のピン2bでピンボード3上のターゲット基板10を押さえ、そのことでプローブピンをターゲット基板10に接触させ得るようになっている。なお、ピンとプローブピンによる基板検査の構造については周知であるので図示及び詳細な説明は省略する。
【0014】
図2は、図1の装置の天板2の開閉機構部分の拡大側面断面図であり、図2(A)は天板2が開いていてピンボード3とともに図示しないプローブピンが下降しており、また天板2のストッパ5の係止部5aが装置本体1の上面に設けた係止機構6(図示の例では丸棒材)から離脱しており、天板2は自由に上昇させてピンボード3上を開放できる状態になっている。ピンボード3はともに昇降動するロックピン7を備えており、図2(A)の状態では若干装置本体1の上面に突出するだけで、天板2の係止とは無関係の状態となっている。
【0015】
図2(B)は、天板2を降ろし、ピンボード3を上昇させ、それに伴って、図示を省略したプローブピンを上昇させ(この上昇機構は周知であるので図示、説明は省略する)、ピンボード3とプローブピンとでターゲット基板10をはさみ、プローブピンを介してターゲット基板10に通電し、ターゲット基板10の動作試験を行えるようになっている状態を示す。
【0016】
なお図3(A)は、天板2が開いており、ピンボード3が下降している状態を示す斜視図である。また図3(B)は、天板2は開いたままであるが、レバー4の操作によりピンボード3が上昇している状態を示す斜視図である。また図4は、操作体であるレバー4の作動を機械的に阻止する阻止手段を示す正面図(A)と側面図(B)、図5は、ターゲット基板10の残留電圧検出・比較手段の電気的な回路構成を示す図である。
【0017】
まず阻止手段を説明する。図示は省略するが、操作体であるレバー4の支軸11は装置本体をなす検査装置の筐体12内に通して貫通させ、その両端近傍を筐体12で回転可能に軸受13で支持してある。軸受13を配した部分の近傍には、ピンボード3を上下動させるための機構を構成する側面形状がレバー状を有する回転ブロック14を備えている。回転ブロック14は、支軸11に下端を通して固定し、上端に設けた凹部15に、ピンボード3を上下動させるためのコロ16を入れ、凹部15の両側面に設けた穴17にコロ16の軸16aを通し、レバー4と反対側に位置する回転ブロック14の筐体12の内側にソレノイドロック18を配して構成してある。もちろん、レバー4側に位置する回転ブロック14の筐体12の内側にソレノイドロック18を配して構成してもよい。
【0018】
ソレノイドロック18は、出入するピン19を備えており、図5に示す回路によりその動作を制御されるようになっている。すなわち、残留電圧検出・比較回路20の一側をターゲット基板10の導通可能部分に接続あるいは接触させて電気的に接続させ、他側を電源を介して接地し、残留電圧検出・比較回路20の出力を、ソレノイドロック18の接地線の途中に配したトランジスタTrのベースに接続させてある。なお、ソレノイドロック18にはDC電源から電源供給を行うように接続する。なお、ターゲット基板10の残留電圧検出に代えて、残留電荷を検出するようにしてもよいし、両者とも検出するように構成してもよく、図示の例の構成には限定されない。
【0019】
ここで、図3(A)に示すように、天板2を開きかつレバー4の操作でピンボード3を下降させて待機位置に位置させておく。このとき、ピンボード3上にはターゲット基板10が搭載されていない状態なので、残留電圧検出・比較回路20からの出力もなく、トランジスタTrはオフとなっており、ソレノイドロック18は非作動でピン19は若干突き出ているだけである(図6(A)の状態)。
【0020】
この状態でピンボード3上にターゲット基板10を搭載し、取手2aを用いて天板2を降ろし、レバー4を下方へ回動させることによってピンボード3をターゲット基板10ごと上昇させて検査位置に位置させるとともに、図示を省略したプローブピンを上昇させ、ピンボード3とプローブピンとでターゲット基板10をはさみ、プローブピンの先端を検査対象であるターゲット基板10のテストポイントに当接させ、プローブピンを介してターゲット基板10に通電し、ターゲット基板10の動作試験を行う。この動作試験の初期には、ターゲット基板10の電解コンデンサには電荷が蓄積されていないか、蓄積量が少ないかのいずれかの状態であり、しかも天板2を下ろしてターゲット基板10には触れられない状態なので、トランジスタTrは相変わらずオフとなっており、ソレノイドロック18は非作動でピン19は大きくは突出していない図6(A)の状態にある。
【0021】
そして動作試験開始から時間が経過するにつれ、通電によってターゲット基板10の電解コンデンサには電荷が蓄積されていき、ある時点で電解コンデンサの電荷蓄積量が所定の値を超え、残留電圧検出・比較回路20が検出する電圧が所定値以上となる。すると、残留電圧検出・比較回路20からの出力が生じ、これがトランジスタTrのベースへ入力することでトランジスタTrがオンとなり、ソレノイドロック18が作動し、ピン19が大きく突出する。大きく突出したソレノイドロック18のピン19は回転ブロック14の側面に緩衝し(図6(B)の状態)、回転ブロック14の下降回転を阻止する状態となる。
【0022】
すなわち、通電動作試験の終了後は、ターゲット基板10をピンボード3上から取り去っても良くなるのであるが、検査終了直後には、既に述べたように、ターゲット基板10に触れることで電解コンデンサに蓄積された電荷が放出されてターゲット基板が備える部品が破損したり、試験者、操作者が感電したりする可能性があり、しばらくの時間、すなわち問題になるのが電解コンデンサに蓄積された電荷であれば、その電圧値(あるいは電荷量:以下同じ)が所定値以下になるまで待つことが必要である。そこで、通電動作試験の終了後も試験中と同じ状態のまま保つためにソレノイドロック18を作動させ、ピン19で回転ブロック14の下降回転、すなわちレバー4の回転動作を阻止する。このピン19による阻止は、試験者あるいは操作者がレバー4に力を掛けて回転させようとしても、これを機械的に阻止するものとなり、かつ試験者あるいは操作者は機械的な動作阻止状態にあることを体感できる。
【0023】
そして通電動作試験の終了後、ある程度時間が経過すると電解コンデンサに蓄積された電荷がプローブピンを介して放出され、蓄積電荷量が少なくなり、残留電圧検出・比較回路20が検出する電圧値が所定値以下になると、残留電圧検出・比較回路20からトランジスタTrのベースへ入力される出力がなくなり、それによってトランジスタTrがオフとなり、ソレノイドロック18のピン19は図6(A)に示すようなあまり大きくは突出していない状態に戻る。すると、回転ブロック14の下降回転を阻止するものがなくなるので、試験者あるいは操作者がレバー4を上向きに回転させれば、ピンボード3が下降して待機位置に戻り、天板2を上げればターゲット基板10を取り去れる。この状態になったときは、ターゲット基板10の電解コンデンサには確実に電荷が蓄積されていないので、部品破損や感電といった問題は生じなくなっている。
【0024】
なお、阻止手段や残留電圧(又は残留電荷)の検出・比較手段の構成は、図示の例には限定されず、他の種々公知の手段を採用できることは勿論である。また、残留電圧や残留電荷だけでなく、その他のターゲット基板が示す電気的特徴値を検出する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る基板検査装置の外観を示す斜視図
【図2】図1の装置の天板の開閉機構部分の拡大側面断面図
【図3】天板が開いており、ピンボードが下降している状態を示す斜視図(A)、天板は開いたままで、レバーの操作によりピンボードが上昇している状態を示す斜視図(B)
【図4】操作体であるレバーの作動を機械的に阻止する阻止手段を示す正面図(A)と側面図(B)
【図5】ターゲット基板の残留電圧検出・比較手段の電気的な回路構成を示す図
【図6】ソレノイドロックの非動作状態を示す図(A)と動作状態を示す図(B)
【符号の説明】
【0026】
1:装置本体
2:天板
2a:取手
2b:ピン
3:ピンボード
4:レバー
5:ストッパ
5a:ストッパの係止部
6:係止機構
7:ロックピン
10:ターゲット基板
11:レバーの支軸
12:検査装置の筐体
13:軸受
14:回転ブロック
15:回転ブロックの凹部
16:コロ
16a:コロの軸
17:長孔
18:ソレノイドロック
19:ソレノイドロックのピン
20:残留電圧検出・比較回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体下部に位置し、プローブピンを備え、検査対象とするターゲット基板をセットした状態で上下動させ得る昇降機構を備えるピンボードと、前記装置本体外部から操作可能で前記ピンボードを上下動させるためのレバーやハンドル等の操作体と、前記装置本体上部に位置し、上下方向に回動開閉可能で下方回動時に前記ピンボード上の前記ターゲット基板を押さえて前記プローブピンを前記基板に接触させる天板とからなり、前記プローブピンを介して通電して前記基板の動作試験行う基板検査装置において、
前記ターゲット基板の残留電圧及び/又は残留電荷を検出する検出手段と、
前記ターゲット基板の残留電圧及び/又は残留電荷が所定値以下になるまで前記操作体の作動を機械的に阻止する阻止手段とを有することを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
請求項1の基板検査装置において、前記阻止手段は、前記検出手段からの信号に応じてピンが突出するソレノイドであり、突出した前記ピンにより前記操作体又は前記昇降機構の動作を阻止することを特徴とする基板検査装置。
【請求項3】
請求項2の基板検査装置において、前記操作体を前記装置本体へ取り付ける支軸を前記装置本体内に挿通させ、該支軸の両端近傍を前記装置本体側で軸支し、該軸支部分の近傍に前記ピンボードを上下動させるための機構を構成する回転ブロックを備え、該回転ブロックがレバー状体を備え、前記ソレノイドのピンが該レバー状体の側縁に当接して前記操作体又は前記昇降機構の動作を阻止することを特徴とする基板検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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