説明

基板表面実装用ソケット

【課題】異方性導電フィルムを用いることにより、従来よりも低い加熱温度で効率よく配線基板に実装できる基板表面実装用ソケットを提供する。
【解決手段】ソケット孔を備えたソケット部2を基台3の上面中央部に立設した樹脂製のソケット本体4を有し、ソケット部2から基台上面側周縁部3Aに向けて延ばした配線5の先端部を取付ける溝部6を、配線先端部5A上面が基台上面側周縁部3Aと略面一になるように基台上面側周縁部3Aに設け、配線5の中間部と基台3との間に空間部8を設け、一端が配線先端部5A上面と接続し他端が下側に凸状に形成された基台下面側周縁部3B上に位置するよう基台周縁部の上下面に跨って折曲したソケット電極9を設けて構成し、異方性導電フィルム23で配線基板21の電気配線22とソケット電極9を接続するように配線基板21に表面実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器を配線基板に表面実装するための基板表面実装用ソケットに関し、特に、異方性導電フィルム(ACF:Anisotopic Conduction Film)を利用した表面実装が可能な基板表面実装用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリレー等の電気機器を配線基板に取付ける際に利用される基板実装用ソケットは、一般に、電気機器の電極端子が抜き差し可能なソケット孔を備えた合成樹脂製のソケット本体を有し、ソケット本体のソケット孔内に設けたコンタクト部と電気的に接続する端子を、ソケット本体底面から突設した構成を有する(例えば、特許文献1等参照)。このような基板実装用ソケットを配線基板に実装する場合、配線基板側の取付け孔に、ソケット本体底面から突設したソケット端子を挿通させ、配線基板の裏側に突出した端子に対して、半田付け処理を行うことでソケットを配線基板に実装する。そして、前記半田付け処理として、例えばフロー方式を採用して自動化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−298388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境問題等に配慮し、この種のソケットのソケット本体用合成樹脂材として、従来の化石燃料を用いる合成樹脂材に代わりに、例えば植物樹脂等の環境に優しい合成樹脂材が使用される傾向にある。しかしながら、環境に優しい合成樹脂材は、化石燃料を用いる合成樹脂材に比べて耐熱性が劣るため、ソケットを配線基板に実装する際に、加熱温度のピークが250℃〜260℃前後になるフロー方式等による半田付け処理を行うと、ソケット本体が溶け出す虞れがあるという問題を有する。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、異方性導電フィルム(ACF)を用いることにより、従来よりも低い加熱温度で効率よく配線基板に実装できる基板表面実装用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明の基板表面実装用ソケットは、電気機器の電極端子が抜き差し可能なソケット孔を備えたソケット部を基台の上面中央部に立設した樹脂製のソケット本体を有し、前記ソケット部から基台上面周縁部に向けて延ばした配線の先端部を取付けるための凹部を、配線先端部上面が基台周縁部上面と略面一になるように基台周縁部に設け、配線中間部と基台との間に空間部を設け、一端が前記配線先端部上面と接続し他端が基台下面周縁部に設けた凸部上に位置するよう基台の上面周縁部と下面周縁部に跨って折曲したソケット電極を設けて構成し、基台下面を配線基板表面に実装するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基板表面実装用ソケットによれば、凸状の基台下面側周縁部によって、ソケット電極上面からの圧力を効果的にソケット電極下面に作用させることができ、加圧効率を高めることができる。また、配線中間部と基台との間に空間部を設けたので、ソケット電極上面加熱時の熱がソケット本体側に四散することを抑制でき、ソケット電極下面側に効率良く熱を伝えることができると共に、樹脂製のソケット本体の溶解を防止できる。そして、本発明の基板表面実装用ソケットによれば、フロー方式等による半田付け処理に比べて低温実装が可能な異方性導電フィルム(ACF)を用いて配線基板への表面実装が可能となるので、化石燃料を用いる合成樹脂材に比べて耐熱性が劣る植物樹脂等の環境に優しい合成樹脂材をソケット本体材料として使用にすることができ、環境保全に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る基板表面実装用ソケットの一実施形態を示す平面図である。
【図2】同上実施形態の底面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】図1のA−A矢視断面図である。
【図6】本発明に係る基板表面実装用ソケットの別の実施形態の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5に、本発明に係る基板表面実装用ソケットの一実施形態を示し、図1は平面図、図2は底面図、図3は図1の左側面図、図4は図3の右側面図、図5は図1のA−A矢視断面図である。
図において、本実施形態の基板表面実装用ソケット1は、電気機器の電極端子が抜き差し可能なソケット孔2Aを備えたソケット部2を、基台3の上面中央部に立設した例えば植物樹脂等の環境に優しい樹脂で成形したソケット本体4を有する。ソケット部2から基台3の上面側周縁部3Aに向けて複数本(図1に示すように本実施形態では22本)の配線5が延設されている。配線5の先端部5Aは、前記上面側周縁部3Aの配線先端部5Aを取付ける部位に形成した溝部6に嵌合されている。前記溝部6は、図5に示すように配線先端部5Aの上面が上面側周縁部3Aと略面一になるような深さに形成されている。また、基台3の上面には、ソケット部2と上面周縁部3Aとの間に前記溝部6底部より低い窪み部7を形成し、図5に示すように配線5中間部と基台3との間に空間部8が形成されるように構成してある。
【0010】
尚、図示しないが、ソケット部2内部には電気機器の電極端子が抜き差し可能なコンタクトが収納され、配線5のソケット部2側の端部が前記コンタクトに電気的に接続している。前記コンタクトは、例えばばね材で形成される互いに対向する一対の金属片間に電極端子を保持する形状に形成されている。
【0011】
配線先端部5Aの上面には、例えば金メッキを施したソケット電極9の一端を例えば溶接を用いて接続してある。ソケット電極9は、基台周縁部の上下面に跨って略コ字状に折曲し、ソケット電極9の他端が下側に凸状に形成した基台3下面側周縁部3B上に位置するようにしている。また、前記ソケット電極9の幅は、配線5の幅より広く形成してある。
【0012】
基台3の下面側周縁部3Bには、図2〜図4に示すように、実装する配線基板21側に形成する孔に挿入してソケット本体4を位置決めするための突起部10を例えばその四隅に設けてある。尚、突起部10は必ずしも四隅に設ける必要はなく、ソケット本体4の位置決めができればよく、例えば対角位置に2つだけ設けるようにしてもよい。
【0013】
また、基台3には、図1及び図2に示すように、ソケット本体4を配線基板21上にネジ止め可能なネジ孔11を、例えば4箇所に設けている。
【0014】
また、ソケット部2の側面には、図1、図3、図4に示すように、ソケット部に取付けた電気機器の脱落等を防止するための係止穴12を形成してある。この係止穴12は、電気機器側に設ける突起をこの係止穴12に嵌め込むことで、電気機器が脱落しないようにするものである。
【0015】
尚、図3及び図4中、15はソケット部2に取付けた例えばリレー等の電機機器を示し、この電気機器15を、ソケット1を介して配線基板21に実装する。
【0016】
次に、本実施形態のソケット1を配線基板に表面実装する場合について説明する。
ソケット本体4のソケット電極9と電気的に接続する配線基板21の所定の電気配線22部分(図5に示す)に、図1に点線で示すように異方性導電フィルム(ACF)23を載置する。その後、ソケット本体4の基台3の下面に設けた突起部10を、図4に示すように配線基板21の位置決め孔に嵌め込み、4つのネジ孔11にネジを螺合させて仮止めすることにより、ある程度の予備圧力をかける。この状態で、図5に矢印で示すようにソケット本体4の基台3周縁部に設けたソケット電極9の上面に対して加熱と加圧を同時に行う。この加熱・加圧処理は、基台3の各辺毎に順次行う。この加熱・加圧処理により、図5に示すようにソケット本体4のソケット電極9を、異方性導電フィルム(ACF)23を介して配線基板21の電気配線22に電気的に接続する。その後、ネジを締付けてソケット本体4の下面が配線基板21表面に接触するようにしてソケット本体4下面と配線基板21表面との間に隙間がないようにする。これにより、ソケット1の配線基板21上への表面実装が終了する。
【0017】
かかる構成の基板表面実装用ソケット1によれば、配線5の先端部5Aを溝部6に嵌合して固定すると共に、基台3の下面周縁部3Bを凸状に形成したので、ソケット電極9上面からの圧力を効果的にソケット電極9下面に作用させることができ、加圧効率を高めることができる。また、基台3の中間部に溝部6の底面より低い窪み部7を形成したことで、配線5中間部と基台3との間に空間部8を設けたので、ソケット電極9上面を加熱したときに樹脂製のソケット本体4側に四散することが抑制でき、ソケット電極9の下面側に効率良く熱を伝えることができると共に、ソケット本体4の溶解を防止できる。また、ソケット電極9を配線5より幅広にしたことにより、配線5側よりソケット電極9側へ熱が伝わり易くなり、加熱効率をより一層高めることができる。更に、突起部10を設けて配線基板21上に位置決めするようにしたので、ソケット1の実装時の位置合わせが容易で、実装作業性が良好である。
【0018】
そして、本実施形態の基板表面実装用ソケット1によれば、加熱温度のピークが250℃〜260℃前後になるフロー方式等による半田付け処理に比べて、低温(約180℃程度)実装が可能な異方性導電フィルム(ACF)23を用いて配線基板21への表面実装が可能である。従って、ソケット本体4に、化石燃料を用いる合成樹脂材に比べて耐熱性が劣る植物樹脂等の環境に優しい合成樹脂材を使用することができ、環境保全に有効である。
【0019】
上記実施形態では、基台3の上面側周縁部3Aへの配線先端部5Aの取付け構造は、基台3の上面側周縁部3Aに溝部6を設けて配線先端部5Aを嵌め込む構造としたが、これに限らない。例えば、図6に示すように基台3の上面側周縁部3Aの内側の全周囲に、段差部13を形成し、この段差部13に配線先端部5Aを取付けるような構成としてもよい。段差部13の高さは溝部6の高さと同じ、即ち、配線5の厚さと略同じにすればよい。尚、図6では、図の簡素化のためソケット電極9の図示を省略してある。また、図6中、第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0020】
1 基板表面実装用ソケット
2 ソケット部
3 基台
4 ソケット本体
5 配線
6 溝部
7 窪み部
8 空間部
9 ソケット電極
10 突起部
11 ネジ孔
13 段差部
15 電気機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の電極端子が抜き差し可能なソケット孔を備えたソケット部を基台の上面中央部に立設した樹脂製のソケット本体を有し、前記ソケット部から基台周縁部に向けて延ばした配線の先端部を取付けるための凹部を、配線先端部上面が基台上面側周縁部と略面一になるように基台上面側周縁部に設け、配線中間部と基台との間に空間部を設け、一端が前記配線先端部上面と接続し他端が下側に凸状に形成した基台下面側周縁部上に位置するよう基台周縁部の上下面に跨って折曲したソケット電極を設けて構成し、基台下面を配線基板表面に実装することを特徴とする基板表面実装用ソケット。
【請求項2】
前記凹部は、前記基台の上面側周縁部の配線先端部を取付ける部位に、配線先端部が嵌合するように形成した溝部である請求項1に記載の基板表面実装用ソケット。
【請求項3】
前記基台の上面側周縁部内側の全周囲に段差部を形成して前記凹部とした請求項1に記載の基板表面実装用ソケット。
【請求項4】
前記ソケット部と基台周縁部との間の基台上面部分に窪み部を形成して前記空間部を形成した請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板表面実装用ソケット。
【請求項5】
前記ソケット電極の幅を、前記配線先端部の幅より広くした請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板表面実装用ソケット。
【請求項6】
前記基台の下面側周縁部に、複数の突起部を設ける構成とした請求項1〜5のいずれか1つに記載の基板表面実装用ソケット。
【請求項7】
前記ソケット本体の基台に、当該ソケット本体を配線基板上にネジ止め可能なネジ孔を設けた請求項1〜6のいずれか1つに記載の基板表面実装用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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