説明

基板製造方法及び磁気記憶媒体の製造方法

【課題】凹凸形状が形成された基板を作製する。
【解決手段】高周波電源21から、基板16及び基板ホルダ12の少なくとも一方に対して高周波電圧を印加する。供給材料膜15から基板16へ供給材料を供給し、基板表面の下地材料上に供給材料による凸部を形成する。供給材料膜15は、基板16の表面へ供給材料を直接入射させることができない位置に配置されている。基板16の表面の下地材料の常温における表面エネルギーγsubと、供給材料の融点における表面エネルギーγspとは、γsub−γsp>0の関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板製造方法に関し、更に詳しくは、凹凸形状を有する基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に、高い周期性を有する微粒子を形成する方法として、特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1では、不活性ガス存在下で、基板に、供給材料を原子又は分子の状態で供給源から供給し、その基板上に、供給材料と基板表面の材料との合金を凸部として形成することで、ナノメートルオーダーの周期性を有する凹凸形状が形成された基板を作製する。基板作製に際して、供給源は、凸部を形成すべき基板表面へ供給材料を直接入射させることができない位置に配置される。そのような供給源を用い、正負両極性成分を有する100kHz以上100MHz以下の範囲の高周波電圧を、基板に対して印加することで、基板上に凸部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4420954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、その段落0116〜0118にあるように、基板上に形成される微粒子が基板表面に対して馴染まない性質をもつことが重要である。つまり、基板側の表面エネルギーを小さく、微粒子側の表面エネルギー、及び基板表面と微粒子との間の界面エネルギーを大きくすることが重要である。特許文献1では、合金部粒子が基板表面に対して馴染まない性質を示すことで、微粒子(微粒子集合体)が隣り合う微粒子との間に隙間を形成した状態で形成され、個々の微粒子を孤立させることができるとしている。
【0005】
特許文献1では、微粒子形成に用いることができる基板表面の材料(下地材料)と供給材料との組み合わせは、下地材料の常温における表面エネルギー(γsub)とし、供給材料の融点における表面エネルギー(γsp)とすれば、γsub−γsp<0の関係を満たす組み合わせに限られる。しかし、本発明者は、上記関係を満たさない材料の組み合わせにおいても、基板上に供給材料による凸部を形成できることを発見した。
【0006】
本発明は、特許文献1とは異なる材料の組み合わせを用いて凹凸形状が形成された基板を作製する基板製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、基板上に磁性材料による凸部を形成可能な磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、所定周波数の高周波電圧を、表面に下地材料が形成された基板及び当該基板を支持する基板支持部材の少なくとも一方に対して印加する工程と、前記下地材料の常温における表面エネルギーをγsubとし、供給材料の融点における表面エネルギーをγspとしたとき、γsub−γsp>0の関係にある供給材料を、前記基板の表面へ前記供給材料を直接入射させることができない位置に配置された供給源から前記基板に供給する工程とを有し、前記下地材料上に前記供給材料による凸部を形成する基板製造方法を提供する。
【0008】
前記基板への前記供給材料の供給はスパッタリングによって行われてもよい。
【0009】
前記下地材料がRuを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo、Pt、NiW、及びTaから成る群から選択される何れか1つの元素又は分子を主成分とする材料であってもよい。
【0010】
上記に代えて、前記下地材料がPtを主成分とする材料であり、前記供給材料がTaを主成分とする材料でもよい。
【0011】
また、前記下地材料が、Taを主成分とする材料であり、前記供給材料がPt又はTaを主成分とする材料であってもよい。
【0012】
前記下地材料がCoPtを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo、NiW、及びTaから成る群から選択される何れか1つの元素又は分子を主成分とする材料でもよい。
【0013】
前記下地材料がNiを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo又はTaを主成分とする材料でもよい。
【0014】
前記下地材料がCrを主成分とする材料であり、前記供給材料がNiWを主成分とする材料であってもよい。
【0015】
本発明の基板製造方法では、前記基板支持部材上に形成された前記供給材料を前記供給源としてスパッタリングを行い、前記供給材料を前記基板へ供給してもよい。
【0016】
本発明の基板製造方法は、前記供給源から前記供給材料を前記基板に供給する工程に先行して、スパッタリングにより前記供給材料を前記基板支持部材上に供給し、前記基板支持部材上に前記供給材料を形成する工程を更に有していてもよい。
【0017】
前記基板への供給材料の供給を、供給部材を前記基板支持部材上に供給する際に用いた供給材料の供給源と前記基板支持部材との間に遮蔽部材を配置した状態で行ってもよい。
【0018】
本発明は、また、所定周波数の高周波電圧を、表面に下地材料が形成された基板及び当該基板を支持する基板支持部材の少なくとも一方に対して印加する工程と、前記下地材料の常温における表面エネルギーをγsubとし、磁性材料の融点における表面エネルギーをγspとしたとき、γsub−γsp>0の関係にある磁性材料を、前記基板の表面へ前記磁性材料を直接入射させることができない位置に配置された供給源から前記基板に供給する工程とを有し、前記下地材料上に前記磁性材料による凸部を形成する磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、下地材料の常温における表面エネルギーをγsubとし、供給材料の融点における表面エネルギーをγspとしたとき、γsub−γsp>0の関係にある下地材料と供給材料との組み合わせを用いて、下地材料上に供給材料による凸部が形成された基板を作製することができる。特に下地材料に磁性材料を用いることで、下地材料上に磁性材料による凸部が形成された磁気記録媒体を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】凹凸形状を有する基板の製造に用いる装置を示すブロック図。
【図2】基板ホルダへの供給材料膜の形成を示すブロック図。
【図3】実施例及び比較例の評価結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態では、表面に所定の下地材料が形成された基板上に、所定の供給材料による凸部を形成する。凸部の形成では、不活性ガスの存在下で、基板及び基板を支持する基板支持部材の少なくとも一方に高周波電圧を印加する。その状態で、基板の表面へ供給材料を直接に入射させることができない位置に配置された供給源から、供給材料を基板に供給する。下地材料の常温における表面エネルギー(γsub)と、供給材料の融点における表面エネルギー(γsp)とは、γsub−γsp>0の関係にある。このような基板作製を行うことで、基板上にナノメートルオーダーの周期性を有する凹凸形状を形成できる。
【0022】
図1は、凹凸形状を有する基板の製造に用いる装置を示す。装置10は、チャンバ11、基板ホルダ12、ターゲット13、シャッタ14、及び高周波電源21を備える。チャンバ11は、基板ホルダ12、ターゲット13、及びシャッタ14を収容する。チャンバ11は、図示しない真空ポンプなどを用いて減圧状態に調整される。また、チャンバ11内には、例えばArやKr、Xeなどの不活性ガスが導入される。
【0023】
基板ホルダ12は、基板支持部材であり、凹凸形状を形成すべき基板16を支持する。また、基板ホルダ12上には基板16へ供給すべき供給材料から成る供給材料膜15が形成される。この供給材料膜15は、「基板表面へ供給材料を直接に入射させることができない位置に配置された供給源」に相当する。基板表面へ供給材料を直接に入射させることができない位置とは、例えば基板16に対して供給材料が直線的に到達しない位置を意味する。
【0024】
図2は、基板ホルダ12への供給材料膜15の形成を示す。ターゲット13は、例えば基板ホルダ12上に供給材料膜15を形成する際に用いられる供給材料の供給源である。装置10において、不活性ガスの存在下で、ターゲット13に所定の直流電圧を印加することで、基板ホルダ12上に供給材料膜15を所定の膜厚で形成することができる。
【0025】
図1に戻り、シャッタ14は、遮蔽部材であり、基板16とターゲット13との間を遮蔽する。すなわちシャッタ14は、ターゲット13からの供給材料が、直線的に基板16の表面に到達することを防ぐ。基板ホルダ12への供給材料膜15の形成を装置10を用いて行わない場合、ターゲット13とシャッタ14とは省くことができる。
【0026】
高周波電源21は、例えば100kHz以上100MHz以下の範囲の高周波電圧を生成する。高周波電源21は、図示しない整合器などを介して、基板16と基板ホルダ12との少なくとも一方に高周波電圧を印加する。高周波電圧は、接地電圧に対して正及び負の双方の成分を有する。高周波電圧の最大値と最小値との差(Vpp)は例えば200Vから2000Vとする。高周波電圧の平均値から接地電圧を引いた値は、例えば−500Vから+100Vとする。
【0027】
基板ホルダ12に接地電圧に対して負の電圧が印加されている時間範囲では、チャンバ11内の不活性ガスイオンに対し、基板ホルダ12に衝突する方向の運動エネルギーが与えられ、不活性ガスイオンは、基板16の表面及び供給源である供給材料膜15の表面に衝突して、それぞれの表面に存在する原子等を物理的に叩き出す。一方、接地電圧に対して正の電圧が印加されている時間範囲では、チャンバ11内の不活性ガスイオンに対し、基板ホルダ12から離れる方向の運動エネルギーが与えられ、基板16の表面及び供給材料膜15から叩き出された原子等は基板16の表面に付着する。このような原子等の叩き出しと付着とを繰り返すことで、基板16の表面を構成する下地材料上に、供給材料による凸部が形成される。
【0028】
以下、実施例を説明する。
【0029】
(実施例1)
まず、基板ホルダ12(図2)上にSi(100)基板上を載せ、Ruターゲット13を用いて、DC250W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板上にRu膜を20nm形成した。次いで、Coターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC800Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にCo膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Co膜15を形成した基板ホルダ12上にRu(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてCoターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。
【0030】
上記のように作成したサンプル表面を原子間力顕微鏡(AFM:日本ビーコ製NanoscopeV)を用いて観察し、ドットが形成されているかどうかを調べた。
【0031】
(実施例2)
まず、基板ホルダ12上にSi(100)基板を載せ、Ruターゲット13を用い、DC250W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板上にRu膜を20nm形成した。次いで、Ptターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にRu(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0032】
(実施例3)
まず、基板ホルダ12上にSi(100)基板を載せ、Ruターゲット13を用い、DC250W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板にRu膜を20nm形成した。次いで、Ni9010ターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にRu(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0033】
(実施例4)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Ruターゲット13を用い、DC250W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板上にRu膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ta膜15を形成した基板ホルダ12上にRu(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0034】
(実施例5)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Ptターゲット13を用い、DC150W、Arガス圧0.15Paの条件で、Si基板上にPt膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ta膜15を形成した基板ホルダ12上にPt(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0035】
(実施例6)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Taターゲット13を用い、DC300W、Arガス圧0.2Paの条件で、Si基板上にTa膜を20nm形成した。次いで、Ptターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にTa(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0036】
(実施例7)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Taターゲット13を用い、DC300W、Arガス圧0.2Paの条件で、Si基板上にTa膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ta膜15を形成した基板ホルダ12上にTa(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0037】
(実施例8)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Co90Pt10ターゲット13を用い、DC700W、Arガス圧0.1Paの条件で、Si基板上にCo90Pt10膜を20nm形成した。次いで、Coターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC800Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にCo膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Co膜15を形成した基板ホルダ12上にCo90Pt10(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてCoターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0038】
(実施例9)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Co90Pt10ターゲットを用い、DC700W、Arガス圧0.1Paの条件で、Si基板上にCo90Pt10膜を20nm形成した。次いで、Ni9010ターゲットを用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にCo90Pt10(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0039】
(実施例10)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Co90Pt10ターゲット13を用い、DC700W、Arガス圧0.1Paの条件で、Si基板上にCo90Pt10膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ta膜15を形成した基板ホルダ12上にCo90Pt10(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0040】
(実施例11)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Niターゲット13を用い、DC900W、Arガス圧0.1Paの条件で、Si基板上にNi膜を20nm形成した。次いで、Coターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC800Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にCo膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜)。続いて、Co膜15を形成した基板ホルダ12上にNi(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてCoターゲット15をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0041】
(実施例12)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Niターゲット13を用い、DC900W、Arガス圧0.1Paの条件で、Si基板上にNi膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いてTa膜15を形成した基板ホルダ12上にNi(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0042】
(実施例13)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Crターゲット13を用い、DC150W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板上にCr膜を20nm形成した。次いで、Ni9010ターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010層を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にCr(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0043】
(比較例1)
まず、Ptターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。次いで、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にSi(100)基板を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0044】
(比較例2)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Agターゲット13を用い、DC1000W、Arガス圧1.6Paの条件で、Si基板上にAg膜を20nm形成した。次いで、Ptターゲットを用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にAg(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0045】
(比較例3)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Alターゲット13を用い、DC1000W、Arガス圧1.6Paの条件で、Si基板上にAl膜を20nm形成した。次いで、Ptターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にAl(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0046】
(比較例4)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Cターゲット13を用い、DC1500W、Arガス圧0.13Paの条件で、Si基板上にC膜を20nm形成した。次いで、Ptターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にPt膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Pt膜15を形成した基板ホルダ12上にC(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてPtターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0047】
(比較例5)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Crターゲット13を用い、DC150W、Arガス圧0.3Paの条件で、Si基板上にCr膜を20nm形成した。次いで、Ruターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にRu層を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ru膜15が形成された基板ホルダ12上にCr(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてRuターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0048】
(比較例6)
まず、Ni9010ターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。次いで、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にSi(100)基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0049】
(比較例7)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Alターゲット13を用い、DC1000W、Arガス圧1.6Paの条件で、Si基板上にAl膜を20nm形成した。次いで、Ni9010ターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にAl(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0050】
(比較例8)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Cターゲット13を用い、DC1500W、Arガス圧0.13Paの条件で、Si基板上にC膜を20nm形成した。次いで、Ni9010ターゲットを用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にNi9010膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ni9010膜15を形成した基板ホルダ12上にC(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてNi9010ターゲット13をシャッタ11で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0051】
(比較例9)
まず、基板ホルダ12にSi(100)基板を載せ、Cターゲット13を用い、DC1500W、Arガス圧0.13Paの条件で、Si基板上にC膜を20nm形成した。次いで、Taターゲット13を用い、Arガス圧0.5Pa、DC500Wの条件でスパッタを行い、基板ホルダ12上にTa膜を100nmスパッタした(図1の供給材料膜15)。続いて、Ta膜15を形成した基板ホルダ12上にC(20nm)を形成したSi基板16を設置し、チャンバ11をAr雰囲気(圧力0.5Pa)としてTaターゲット13をシャッタ14で遮断した状態で基板ホルダ12に高周波RF電圧(180W)を900秒間印加した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル表面の観察を行った。
【0052】
図3は、実施例1〜13、及び比較例1〜9のサンプル評価結果を示す。図3には、下地材料の常温(298.2K)における表面エネルギーγsubと、供給材料の融点における表面エネルギーγspも併せて記している。各材料の表面エネルギーは、「The Surface free Energies of Solid Chemical Elements: Calculation from Internal Free Enthalpies of Atomization」L. Z. Mezey et.al: Jpn. J. Appl. Phys. 21 (1982) P1571から引用した。
【0053】
実施例1から実施例13では、何れも基板上にある程度の周期性を有するドット(凸部)を形成できた。ここで、ドットが周期的に形成されているとは、ほぼ同じ大きさのドットがある程度の規則性を持ってある領域に一様に分布している状態を意味するものとする。実施例1から実施例13では、ドット周期は15nm〜50nm程度の範囲で、ドット高さは1nm〜3nm程度となった。各実施例において、下地元素の表面エネルギーγsubと供給材料の表面エネルギーγspとを比較すると、何れもγsub−γsp>0であった。この結果から、少なくとも実施例における材料の組み合わせにおいて、γsub−γsp>0の条件で基板上にナノレベルオーダーの周期性を有する凹凸形状を形成できることが確かめられた。
【0054】
一方、比較例においては、基板上に供給材料による凸部を周期的に形成することができなかった。各比較例において、下地材料の表面エネルギーγsubと供給材料の表面エネルギーγspとの関係はγsub−γsp<0となった。本発明者は、以上の実施例及び比較例の評価結果から、逆スパッタプロセスを用い、微粒子側の表面エネルギーに比して基板側の表面エネルギーを大きくすることで、周期性を有するドットを基板上に形成できることを見出した。γsub−γsp>0の条件でなぜドットが形成できるかについて、その理由はよくわかっていない。しかしながら、現実に、少なくとも実施例で評価を行った範囲において、γsub−γsp>0の条件で、基板表面にある程度の周期性を持った凹凸形状を形成することができた。
【0055】
ここで、下地材料及び供給材料には、結晶質の材料を用いることが好ましいものと考えられる。γsub−γsp>0の条件では、供給材料は下地材料に対して濡れ性がいいため、供給材料は下地材料上に広がり、普通に考えれば凸部は形成されない。それにもかかわらず、凸部が形成できるのは、成膜のプロセスにおいて、供給材料が下地材料上にエピタキシャルで成長し、ある時点でひずみが生じると、そのひずみの影響を受けて凸部になるためであると考えられる。
【0056】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の基板製造方法及び磁気記録媒体の製造方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10:装置
11:チャンバ
12:基板ホルダ
13:ターゲット
14:シャッタ
15:供給材料膜
16:基板
21:高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の高周波電圧を、表面に下地材料が形成された基板及び当該基板を支持する基板支持部材の少なくとも一方に対して印加する工程と、
前記下地材料の常温における表面エネルギーをγsubとし、供給材料の融点における表面エネルギーをγspとしたとき、γsub−γsp>0の関係にある供給材料を、前記基板の表面へ前記供給材料を直接入射させることができない位置に配置された供給源から前記基板に供給する工程とを有し、
前記下地材料上に前記供給材料による凸部を形成する基板製造方法。
【請求項2】
前記基板への前記供給材料の供給がスパッタリングによって行われることを特徴とする請求項1に記載の基板製造方法。
【請求項3】
前記下地材料がRuを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo、Pt、NiW、及びTaから成る群から選択される何れか1つの元素又は分子を主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項4】
前記下地材料がPtを主成分とする材料であり、前記供給材料がTaを主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項5】
前記下地材料が、Taを主成分とする材料であり、前記供給材料がPt又はTaを主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項6】
前記下地材料がCoPtを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo、NiW、及びTaから成る群から選択される何れか1つの元素又は分子を主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項7】
前記下地材料がNiを主成分とする材料であり、前記供給材料がCo又はTaを主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項8】
前記下地材料がCrを主成分とする材料であり、前記供給材料がNiWを主成分とする材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板製造方法。
【請求項9】
前記基板支持部材上に形成された前記供給材料を前記供給源としてスパッタリングを行い、前記供給材料を前記基板へ供給するものであることを特徴とする請求項1から8何れかに記載の基板製造方法。
【請求項10】
前記供給源から前記供給材料を前記基板に供給する工程に先行して、スパッタリングにより前記供給材料を前記基板支持部材上に供給し、前記基板支持部材上に前記供給材料を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項9に記載の基板製造方法。
【請求項11】
前記基板への供給材料の供給が、供給部材を前記基板支持部材上に供給する際に用いた供給材料の供給源と前記基板支持部材との間に遮蔽部材を配置した状態で行われるものであることを特徴とする請求項10に記載の基板製造方法。
【請求項12】
所定周波数の高周波電圧を、表面に下地材料が形成された基板及び当該基板を支持する基板支持部材の少なくとも一方に対して印加する工程と、
前記下地材料の常温における表面エネルギーをγsubとし、磁性材料の融点における表面エネルギーをγspとしたとき、γsub−γsp>0の関係にある磁性材料を、前記基板の表面へ前記磁性材料を直接入射させることができない位置に配置された供給源から前記基板に供給する工程とを有し、
前記下地材料上に前記磁性材料による凸部を形成する磁気記録媒体の製造方法。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−74095(P2012−74095A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216607(P2010−216607)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】