説明

基礎と支持構造体下部との接合構造および接合方法

【課題】 作業性に優れ、簡素な構造で構築することができるコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造および接合方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート壁を有する基礎である基礎1と支持構造体下部10とを継手部材9を介して接合させるため、基礎1を構築する際、パラペットと頂版支持部を設計する必要がない。また、継手部材9を介して基礎1内面と支持構造体下部10が直接接合されるため、水平方向の応力および曲げモーメントは、基礎1と支持構造体下部10の接触面によって伝達される。また、継手部材9によって鉛直方向の応力を伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造およびこの接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部は頂版を介して接合されるように設計されていた。図8は、従来のコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造110(以下単に「接合構造110」と称する)を示す図である。接合構造110は、コンクリート壁を有する基礎であるケーソン基礎107と支持構造体101と頂版105等から構成される。橋脚等である支持構造体101は頂版105の上に設けられ、頂版105はケーソン基礎107によって支持される。
【0003】
ケーソン基礎107と頂版105の接合は、鉄筋アンカー103によって結合される。つまり、ケーソン基礎の側壁内面を縮径した頂版支持部上に頂版105を設置し、頂版105の側面にはケーソン基礎107の外周側を上方に延伸させたパラペット部を設置し、頂版105の上に支持構造体101を設置する。すなわち頂版105は上端の側面がL字状であるケーソン基礎107によって固定される。また、頂版105とケーソン基礎107には鉄筋アンカー103を介して結合する。支持構造体101と頂板105は、支持構造体主鉄筋下端を頂板105内部に埋設することで固定する。支持構造体101が鋼製の場合は鋼製支持構造体101下端のフランジ部を固定するアンカーボルトの突出端を頂板105内部に埋設することで固定する。
【0004】
このような接合構造110のようにケーソン基礎と支持構造体下部とを頂版を介して接合する構造をとる場合、鉛直方向応力は頂版支持部によって、水平方向応力はパラペットによって、曲げモーメントは鉄筋アンカーによってそれぞれ伝達する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−260484
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の接合構造110のようにケーソン基礎と支持構造体下部とを頂版を介して接合する構造を採用する場合、パラペットと頂版支持部とをケーソン基礎の上端に構築する必要がある。また補強のための鉄筋アンカー103を加える必要があり、ケーソン基礎の構造や鉄筋配置の形状は複雑になる。
【0007】
また、ケーソン基礎の構造については、図8に示すように、ケーソン基礎107下端の開口部の内径Lfよりケーソン基礎107上端の開口部の内径Leが小さい。これは、施工時に、開口部下端から土砂を搬出する工程において施工効率を下げる原因となっている。
【0008】
また、頂版105は、単純支持版の状態および固定支持版の状態を考慮して単体で設計されるため、上下面の主鉄筋量が増加する。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、簡素な構造で構築することができるコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造および接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、基礎と支持構造体下部との接合構造であって、筒状のコンクリート壁を有する基礎と、前記基礎の上部内面に設けられる継手と、前記継手を介して前記基礎の内面と接合される支持構造体下部と、を具備し、前記継手は、複数の孔が形成された板状部材であり、前記継手の前記孔を含む一部は、前記基礎に埋設されており、前記継手の前記孔を含む他の一部は、前記支持構造体下部に埋設されることを特徴とする基礎と支持構造体下部との接合構造である。
【0011】
前記継手は、前記板状部材の面方向が前記基礎の軸方向に略垂直であり、前記板状部材の幅方向が前記基礎と前記支持構造体下部とにまたがるように、前記支持構造体下部と前記基礎との間の周方向に所定間隔をあけて複数設けてもよい。
【0012】
前記基礎の断面形状は底部から頂部まで略一定であってもよい。前記基礎および前記支持構造体下部に埋設される部位の前記継手の前記孔には、貫通鉄筋が挿通されてもよい。
【0013】
第1の発明によれば、基礎と支持構造体下部は継手を介して接合されるため、基礎を構築する際、パラペットと頂版支持部を設計する必要がない。また、前述した継手部材を介して基礎内面と支持構造体下部が直接接合されるため、水平方向の応力および曲げモーメントは、基礎と支持構造体下部の接触面によって伝達される。
【0014】
また、継手を、板状部材の面方向が基礎の軸方向に略垂直に、板状部材の幅方向が基礎と前記支持構造体下部とにまたがるように支持構造体下部と基礎との間の周方向に所定間隔をあけて複数設けることによって、より確実に、支持構造体下部から基礎へ鉛直方向の応力を伝達することができる。
【0015】
また、基礎の断面形状が底部から頂部まで略一定であることによって、基礎を簡易な構造の配筋で構築することができるとともに、施工工程において土砂を排出する作業の効率が向上する。
【0016】
また、基礎および支持構造体下部に埋設される部位の継手の孔に、貫通鉄筋が挿通されることにより、せん断力の伝達をさらに向上させることができる。
【0017】
第2の発明は、基礎と支持構造体下部との接合方法であって、複数の孔が形成された板状部材からなる継手を用い、コンクリート壁を有する基礎の上部内面にあらかじめ前記継手の前記孔を含む一部が埋設され、前記継手の前記孔を含む他の一部が前記基礎の内面側に突出した状態の前記基礎を地中に埋設する工程(a)と、前記基礎の上部の内側に、上部が前記基礎の上端から突出するように支持構造体固定部材を設置する工程(b)と、前記継手と前記支持構造体固定部材の一部を埋設するように、前記基礎の内部にコンクリートを打設する工程(c)と、を具備することを特徴とする基礎と支持構造体下部との接合方法である。
【0018】
前記工程(a)および(b)の最中に、前記継手の孔に貫通鉄筋を設置する工程(d)を加えてもよい。
【0019】
第2の発明によれば、基礎と支持構造体下部とを簡素な構造によって確実に接合することができる。基礎は筒状の形状を有し、底部から頂部まで略一定である特徴を有する簡素な構造で設計することができる。したがって、土砂を排出する作業の効率が向上する。継手部材を介して基礎内面と支持構造体下部が直接接合されるため、水平方向の応力および曲げモーメントは、基礎と支持構造体下部の接触面によって伝達することができる。また、継手部材により鉛直方向の応力を伝達することができる。
【0020】
また、基礎および支持構造体下部に埋設される部位の継手の孔に、貫通鉄筋が挿通されることにより、せん断力の伝達をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業性に優れ、簡素な構造で構築することができるコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造および接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合の基礎と支持構造体下部の接合構造を示す図であり(a)は全体正面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図、(c)は(a)に示すB部分拡大図。
【図2】基礎と支持構造体下部との接合構造の施工工程を示す図。
【図3】支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合の施工工程を示す図。
【図4】支持構造体が鋼材により形成される場合の基礎と支持構造体下部の接合構造を示す図であり(a)は全体正面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図、(c)は(a)に示すD部分拡大図。
【図5】支持構造体が鋼材により形成される場合の施工工程を示す図。
【図6】支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合の他の実施形態を示す図で、(a)は図1(a)のA−A線断面図に対応する図、(b)は図1(a)のB部分に対応する拡大図。
【図7】支持構造体が鋼材により形成される場合の他の実施形態を示す図で、(a)は図4(a)のC−C線断面図に対応する図、(b)は図4(b)のD部分に対応する拡大図。
【図8】従来のケーソン基礎と支持構造体下部との接合構造。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかるコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造について説明する。図1は支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合の基礎と支持構造体下部の接合構造2を示す図であり、図1(a)は全体正面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A線断面図、図1(c)は図1(a)に示すB部分拡大図である。基礎1と支持構造体下部10の接合構造2は、主に、基礎1と、支持構造体下部10、継手部材9等から構成される。また支持構造体下部10は、支持構造体固定部材である支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3およびコンクリート5により構成される。
【0024】
基礎1は、コンクリート壁を有する筒状の部材である。ここで、筒状とは、円筒形のみならず矩形その他形状の中空体を指すものとする。基礎1の断面形状は、長手方向で略一定である。すなわち、パラペットと頂版支持部等は形成されない。基礎1はケーソン基礎或いは、PCウェル基礎の頂版構造に適用することができる。
【0025】
継手部材9は、板状であり、基礎1の上部内周面とコンクリート5との間に設けられる。なお、継手部材9の詳細は後述する。
【0026】
基礎1の上方内部には、支持構造体下部10が継手部材9を介して接合される。支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3は基礎1の内側に設置され、継手部材9とともに、コンクリート5により埋設される。支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3の上端はコンクリート5の上面より突出する。コンクリート5の上面より突出する支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3には、さらに支持構造体本体を構成する支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋(図示を省略)を接合することができる。
【0027】
支持構造体は、例えば橋脚下部や風力発電タワー下端である。なお、支持構造体の断面は円形に限られず、矩形、八角形や楕円などの形状の場合にも適用できる。支持構造体外径寸法と基礎1の内径の大きさに差がある場合には、基礎1内面形状に合わせて、支持構造体下部10を拡幅すればよい。支持構造体の断面形状と基礎1の断面形状が異なる場合も同様に、支持構造体の断面形状に合わせて支持構造体下部10を拡幅すればよい。
【0028】
図1(b)に示すように、板状である継手部材9は、面方向が基礎1の軸方向に略垂直となるように放射状に配置される。すなわち、継手部材9は支持構造体下部10と基礎1との間の周方向に所定間隔をあけて複数設置される。また、継手部材9の幅方向が基礎1と、支持構造体下部10を構成するコンクリート5とをまたがるように配置される。なお、継手部材9の設置数は図示した例には限られない。
【0029】
図1(c)に示すように、継手部材9は複数の孔7aおよび複数の孔7bを有する板状の部材である。なお、継手部材9は鋼材等の金属部材である。少なくとも1列の孔7aと少なくとも1列の孔7bが略平行に継手部材9本体に設けられる。なお、継手部材9としては、3列以上の複数の孔を形成してもよく、列ごとに孔の大きさを適宜設定することもできる。
【0030】
孔7bおよび孔7aの内部にはそれぞれコンクリート5および基礎1を構成するコンクリートがまわり込む。したがって、継手部材9がそれぞれのコンクリートの強度に応じた必要な応力伝達を行う。すなわち、基礎1と支持構造体下部10の接触面によって水平方向の応力および曲げモーメントを伝達し、継手部材9により鉛直方向の応力を伝達することができる。なお、継手部材9は孔の大きさやピッチを調節することにより、コンクリート5と基礎1を構成するコンクリートが強度の異なる異種のコンクリートであっても、異種コンクリートの応力伝達が可能となり、コンクリート5と基礎1の接合が可能となる。
【0031】
次に、支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合のコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部とを接合する手順について説明する。図2および図3は基礎1と支持構造体下部10の接合工程を示す図である。
【0032】
まず、図2に示すように基礎1を地中に埋設する。この際、基礎1の上部内面には継手部材9の一部が予め埋設されている。継手部材9には、少なくとも2列の複数の孔が形成されており、基礎1の内面側に少なくとも1列の複数の孔を突出させた状態で、他の少なくとも1列の複数の孔を含む部分が基礎1の上部内面にあらかじめ埋設される。たとえば、図示したように、2列の複数の孔を有する継手部材9を用いた場合には、基礎1に1列の複数の孔が埋設され、基礎1内面には、他の一列の孔が露出する。このような継手部材9は、基礎1の内周面に、周方向に略一定の間隔で複数設けられ、さらに必要に応じて鉛直方向にも複数が設置される(図では鉛直方向に継手部材9が3段設置された例を示す)。
【0033】
次に、基礎1の内面に型枠11を設置する。型枠11は、後述する支持構造体下部が設置できるように、基礎1の上部から所定の高さ(前述した継手部材9の設置範囲の下方)の位置に設けられて固定される。
【0034】
次に、図3(a)に示すように、基礎1の上端から一部が突出するように支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3を設置する。支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3を基礎1の内側に挿入した後、型枠11上にコンクリート5を打設する。すなわち、支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3の一部および継手部材9がコンクリート5により埋設され、支持構造体下部10が形成される。
【0035】
なお、図3(b)に示すように、基礎1の長さが短いときは、基礎1の内側に、貧配合コンクリート13を打設することにより型枠11を省略することが可能である。また、貧配合コンクリートに替えて、発泡モルタルや流動化処理土流動化処理土を使用することも可能である。この場合は、支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3を、貧配合コンクリート等の上部に設置し、その後コンクリート5を打設すればよい。
【0036】
なお、コンクリート5上に露出する支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3と支持構造体本体を構成する鉄筋等(図示を省略)とは、例えば、継手または溶接によって結合することができる。支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋3と支持構造体本体を構成する鉄筋等との接合後、コンクリート6を打設することで支持構造体本体を構築することができる。
【0037】
このように、本発明の実施の形態にかかる接合構造2によれば、簡易な構造である基礎1と支持構造体下部10との接合構造を構成することができる。また、基礎1と支持構造体下部10とを継手部材9によって確実に接合することができる。すなわち、鉛直方向の応力は継手部材9によって確実に基礎1に伝達され、水平方向の応力と曲げモーメントは基礎1とコンクリート5の接触面によって、確実に基礎1に伝達される。また、基礎1を拡張してパラペットや頂板支持部を構築する必要がないため、作業性に優れる。
【0038】
また、基礎1がケーソン基礎である場合、基礎1が簡素な構造であることから、オープンケーソン工法やニューマチックケーソン工法等、各種ケーソン構築方法に適用することができる。また、基礎1はPCウェル基礎の頂板構造等、ケーソン基礎以外のコンクリート構造体であってもよい。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる支持構造体が鋼材等の金属部材により形成される場合のコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部との接合構造について説明する。図4は支持構造体が鋼材等の金属部材により形成される場合の基礎と支持構造体下部の接合構造20を示す図であり、図4(a)は全体正面図、図4(b)は図4(a)におけるC−C線断面図、図4(c)は図4(a)に示すD部分拡大図である。なお、以下の実施形態において、接続構造2と同一の機能を奏する構成については、図1〜図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0040】
基礎と支持構造体下部との接合構造20は、主に、基礎1、支持構造体下部26、継手部材9等から構成される。支持構造体下部26は支持構造体固定部材を構成するアンカーフレーム23a、23bおよびアンカーボルト25と、コンクリート21とにより構成される。なお、以下の説明において、アンカーフレーム23a、23bおよびアンカーボルト25を総称してアンカー部材と称する。
【0041】
アンカーフレーム23a、23bは略矩形の鋼製中空部材である。アンカーボルト25は棒状の鋼製部材である。下方のアンカーフレーム23bの四隅近傍にアンカーボルト25がネジ等で接合される。同様に上方のアンカーフレーム23aの四隅にアンカーボルト25が来るように配置され、ネジ等で接合される。アンカーボルトは支持構造体下端に伝達される曲げモーメントに応じて多数配置してもよい。なお、アンカー部材としては、上記態様に限られない。
【0042】
基礎1の上方内部には支持構造体下部26が継手部材9を介して接合される。アンカー部材は基礎1の内側に設置され、継手部材9とともにコンクリート21によって埋設される。この際、アンカーフレーム23aは、コンクリート21の上面に露出する。コンクリート21の上面より露出するアンカー部材には、さらに鋼製支持構造体19を接合することができる。
【0043】
支持構造体は、例えば橋脚下部や風力発電タワー下端である。なお、支持構造体の断面は円形に限られず、矩形、八角形や楕円などの形状の場合にも適用できる。支持構造体外形寸法と基礎1内径の大きさに差がある場合には、基礎1内面形状に合わせて、支持構造体下部26を拡幅する。支持構造体の断面形状と基礎1の断面形状が異なる場合も同様に、支持構造体の断面形状に合わせて支持構造体下部10を拡幅すればよい。
【0044】
図4(b)に示すように、継手部材9は、継手部材9の幅方向が基礎1と、支持構造体下部を構成するコンクリート21とにまたがるように配置される。なお、継手部材9の設置形態については、前述した接合構造2と同様である。
【0045】
また、図4(c)に示すように、少なくとも1列の孔7aと少なくとも1列の孔7bが略平行に継手部材9本体に設けられ、基礎1およびコンクリート21にそれぞれ埋設される。
【0046】
孔7bおよび孔7aの内部にはそれぞれコンクリート21および基礎1を構成するコンクリートがまわり込む。したがって、継手部材9がそれぞれのコンクリートの強度に応じた必要な応力伝達を行うことができる。すなわち、基礎1と支持構造体下部26の接触面によって水平方向の応力および曲げモーメントを伝達し、継手部材9により鉛直方向の応力を伝達することができる。
【0047】
次に、支持構造体が鋼材等の金属部材により形成される場合のコンクリート壁を有する基礎と支持構造体下部とを接合する手順について説明する。図5は基礎1と支持構造体下部26の接合工程を示す図である。
【0048】
まず、図2に示す方法と同様に、基礎1を地中に埋設する。この際、基礎1の上部内面には継手部材9の一部が予め埋設されている。継手部材9には、少なくとも2列の複数の孔が形成されており、基礎1の内面側に少なくとも1列の複数の孔を突出させた状態で、他の少なくとも1列の複数の孔を含む部分が基礎1の上部内面にあらかじめ埋設される。
【0049】
次に、基礎1の内面に型枠18を設置する。型枠18は、後述する支持構造体下部が設置できるように、基礎1の上部から所定の高さ(前述した継手部材9の設置範囲の下方)の位置に設けられて固定される。
【0050】
次に、図5(a)に示すように、基礎1の上端から露出するようにアンカー部材を設置する。アンカー部材を基礎1の内側に挿入した後、型枠18上にコンクリート21を打設する。すなわち、アンカー部材の一部(アンカーフレーム23bおよびアンカーボルト25の下部)および継手部材9が埋設される。
【0051】
なお、図5(b)に示すように、基礎1の長さが短いときは、基礎1の内側に、貧配合コンクリート28を打設することにより型枠18を省略することが可能である。また、貧配合コンクリートに替えて発泡モルタルや流動化処理土を使用することも可能である。アンカー部材は貧配合コンクリート等の上部に設置し、その後コンクリート21を打設すればよい。
【0052】
なお、コンクリート21上に露出するアンカー部材と鋼製支持構造体19とは、例えば溶接によって結合することができる。
【0053】
このように、第2の実施の形態にかかる接合構造20によれば、簡素な構造で基礎1と支持構造体下部26を継手部材9によって接合することができる。この際、鉛直方向の応力は継手部材9によって基礎1に伝達され、水平方向の応力および曲げモーメントは基礎1とコンクリート21の接触面によって基礎1に確実に伝達される。また、アンカー部材の基礎1上端から露出している部分と鋼製支持構造体とを接合することができる。また、基礎1を拡張してパラペットや頂板支持部を構築する必要がないため、作業性に優れる。
【0054】
また、基礎1がケーソン基礎である場合、基礎1が簡素な構造であることから、オープンケーソン工法やニューマチックケーソン工法等、各種ケーソン構築方法に適用することができる。また、基礎1はPCウェル基礎の頂板構造等、ケーソン基礎以外のコンクリート構造体であってもよい。
【0055】
次に、他の実施形態について説明する。以下の実施形態において、図1等に示す構成と同一の機能を奏する構成については、図1と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0056】
図6は、支持構造体が鉄筋コンクリートにより形成される場合の他の実施形態を示す図で、図6(a)は図1(a)のA−A線に対応する部位の断面図、図6(b)は同じく図1(a)のB部分に対応する拡大図を示す。
【0057】
本実施形態では、図6(a)、図6(b)に示すように、継手部材9の孔7bに貫通鉄筋31が挿通される。同様に、継手部材9の孔7aには貫通鉄筋32が挿通される。貫通鉄筋31および貫通鉄筋32は、略リング状であり、周方向に設けられる。貫通鉄筋31および貫通鉄筋32は、例えば、基礎1が地中に埋設された後に挿通すればよい。なお、貫通鉄筋31および貫通鉄筋32は全てつながっていなくてもよく、継手部材9に短鉄筋を貫通させてもよい。貫通鉄筋31および貫通鉄筋32を用いて基礎1と支持構造体下部との接合を補強することにより、せん断力の伝達をさらに向上させることができる。
【0058】
図7は、支持構造体が鋼材により形成される場合の他の実施形態を示す図で、図7(a)は図4(a)のC−C線に対応する部位の断面図、図7(b)は同じく図4(a)のD部分に対応する拡大図を示す。
【0059】
図7(a)、図7(b)に示すように、この場合でも、継手部材9の孔7bに貫通鉄筋35を、孔7aに貫通鉄筋36を挿通させればよい。なお、貫通鉄筋35および貫通鉄筋36は前述した貫通鉄筋31と同様の構成である。貫通鉄筋35および貫通鉄筋36を用いることで、基礎1と支持構造体下部との接合を補強することにより、せん断力の伝達をさらに向上させることができる。
【0060】
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、各実施形態は互いに組み合わせることができることはもちろんのこと、各構成の形状や設置範囲、設置個数等は、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、
1a、1b………基礎
2………接合構造
3………支持構造体主鉄筋及び帯鉄筋
5………コンクリート
6………コンクリート
7a、7b………孔
9………継手部材
10………支持構造体下部
11………型枠
13………貧配合コンクリート
18………型枠
19………鋼製支持構造体
20………接合構造
21………コンクリート
23a、23b………アンカーフレーム
25………アンカーボルト
26………支持構造体下部
28………貧配合コンクリート
31、32、35、36………貫通鉄筋
101………支持構造体
103………鉄筋アンカー
105………頂版
107………ケーソン基礎
110………接合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と支持構造体下部との接合構造であって、
筒状のコンクリート壁を有する基礎と、
前記基礎の上部内面に設けられる継手と、
前記継手を介して前記基礎の内面と接合される支持構造体下部と、
を具備し、
前記継手は、複数の孔が形成された板状部材であり、
前記継手の前記孔を含む一部は、前記基礎に埋設されており、
前記継手の前記孔を含む他の一部は、前記支持構造体下部に埋設されることを特徴とする基礎と支持構造体下部との接合構造。
【請求項2】
前記継手は、前記板状部材の面方向が前記基礎の軸方向に略垂直であり、前記板状部材の幅方向が前記基礎と前記支持構造体下部とにまたがるように、前記支持構造体下部と前記基礎との間の周方向に所定間隔をあけて複数設けられることを特徴とする請求項1記載の基礎と支持構造体下部との接合構造。
【請求項3】
前記基礎の断面形状が底部から頂部まで略一定であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基礎と支持構造体下部との接合構造。
【請求項4】
前記基礎および前記支持構造体下部に埋設される部位の前記継手の前記孔には、貫通鉄筋が挿通されることを特徴とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基礎と支持構造体下部との接合構造。
【請求項5】
基礎と支持構造体下部との接合方法であって、
複数の孔が形成された板状部材からなる継手を用い、
コンクリート壁を有する基礎の上部内面にあらかじめ前記継手の前記孔を含む一部が埋設され、前記継手の前記孔を含む他の一部が前記基礎の内面側に突出した状態の前記基礎を地中に埋設する工程(a)と、
前記基礎の上部の内側に、上部が前記基礎の上端から突出するように支持構造体固定部材を設置する工程(b)と、
前記継手と前記支持構造体固定部材の一部を埋設するように、前記基礎の内部にコンクリートを打設する工程(c)と、
を具備することを特徴とする基礎と支持構造体下部との接合方法。
【請求項6】
前記工程(a)および(b)の最中に、前記継手の孔に貫通鉄筋を設置する工程(d)をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の基礎と支持構造体下部との接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92566(P2012−92566A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240720(P2010−240720)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】