説明

基礎工法

【課題】基礎梁の立ち上がり部分がないベタ基礎でも、アンカーボルトや柱脚金物等を型枠には依存しないで精度良く据え付けることのできる基礎工法を提供する。
【解決手段】ベタ基礎の外周部に堰板21を立設し、堰板21で包囲された区画内に発泡樹脂製ブロック23を配置し、該ブロック23の間に基礎梁の鉄筋24を組み、ブロック23の上方に土間スラブの鉄筋25を組んだ後、該区画よりも外側の地盤上に堰板21から離隔させて支保工4を設け、該支保工4を介して該区画の上方に、堰板21には接しないようにして形鋼材からなる定規部材3を水平に架け渡し、該定規部材3の所定位置に予め形成した孔部34又は切欠部35を利用して定規部材3にアンカーボルト5や適宜の柱脚金物6等を吊持させて位置決めし、その状態で区画内にコンクリート7を打設した後、定規部材3及び支保工4を撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎梁の立ち上がり部分が形成されないベタ基礎の施工や、布基礎の基礎梁と土間コンクリートを一体打ちするような基礎の施工において、アンカーボルトや柱脚金物等を、該基礎を形成するための型枠に依存しないで所定位置に据え付ける基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造や鉄骨造による小規模建築物においては、コンクリート基礎を構築する際、基礎の所定位置にアンカーボルトを埋設しておいて、そのアンカーボルトに上部構造体を連結するのが一般的である。かかる連結構造は、基礎に埋設したアンカーボルトに土台を連結して、その土台上に柱を立設する構造と、基礎に埋設したアンカーに直接、或いは適宜の金物等を介して、柱や耐力壁パネル等を直結する構造とに大別される。いずれの連結構造も、多数のアンカーボルトや金物等を、予め基礎内の所定位置に精度良く据え付けておく必要があるが、特に後者の直結構造では、アンカーボルトや柱脚金物の位置決めに、より高い精度が要求される。
【0003】
コンクリート基礎が布基礎(連続フーチング基礎)の形態をなす場合は、基礎梁部分を形成するための型枠パネルを利用して、相対する型枠パネルの天端にアンカーボルト位置決め用治具(定規)を架け渡して固定し、その治具にアンカーボルトを吊持させてアンカーボルトを位置決めする工法がよく知られている。本出願人も、例えば、特許文献1、2等において、かかる工法に利用しうるアンカーボルト位置決め用治具を提案している。
【0004】
しかし、コンクリート基礎がベタ基礎になる場合や、布基礎における基礎梁の天端と土間コンクリートとを一体打ちして同レベルに仕上げるような場合では、上述のようなアンカーボルト位置決め用治具を利用できないことがある。ベタ基礎の施工方法として、例えば特許文献3、4等に開示されているように、地盤を掘削して形成した凹所に捨てコンクリートを打設した後、その凹所の内側に、基礎梁の形成予定位置を挟むようにして複数個の発泡樹脂製ブロックを配置し、それらブロックの間及び上方に基礎梁及び土間スラブの鉄筋を組んだ後、凹所内全体にコンクリートを打設する、という工法が知られている。かかる基礎工法は、型枠パネルの代わりに発泡樹脂製ブロックを埋設増量材として利用することにより、型枠工事を大幅に省力化することができるという利点を有するため、特に建築面積の大きい低層建造物の基礎工法としてよく採用される。しかしながら、この基礎工法では、ベタ基礎を構築する予定領域内に、基礎梁の立ち上がり部分を形成するための型枠パネルが立設されないので、アンカーボルト位置決め用治具を架け渡すための拠り所が得られず、アンカーボルトの位置決め作業が困難になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−6160号公報
【特許文献2】特開2000−54396号公報
【特許文献3】特開平3−228921号公報
【特許文献4】特開平4−371614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、基礎梁の立ち上がり部分が形成されないベタ基礎や、或いは、布基礎における基礎梁の天端近傍のレベルに土間コンクリートを一体打ちするような基礎であっても、その施工に際し、アンカーボルトや柱脚金物等を型枠には依存しないで精度良く据え付けることのできる基礎工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の基礎工法は、基礎を構築する予定領域の外周部に堰板を立設し、前記堰板によって包囲された区画内に基礎梁や土間スラブ等を構成する鉄筋を組んだ後、前記区画内にコンクリートを打設して基礎を構築する基礎工法において、コンクリートの打設に先立ち、前記堰板によって包囲された区画よりも外側の地盤上に堰板から離隔させて支保工を設け、前記支保工を介して前記区画の上方に、堰板には接しないようにして形鋼材からなる定規部材を水平に架け渡し、前記定規部材の所定位置に予め形成した孔部又は切欠部を利用して、前記定規部材にアンカーボルト或いは適宜の柱脚金物等を吊持させて位置決めし、その状態で前記区画内にコンクリートを打設した後、前記定規部材及び支保工を撤去することを特徴とする。
【0008】
このように、基礎を構築する区画の上方に、その区画全体を跨ぐようにして定規部材を架け渡し、この定規部材を基準にしてアンカーボルトや柱脚金物等を設置することにより、基礎型枠に依存せずとも、アンカーボルトや柱脚金物等を精度良く位置決めすることが可能になる。
【0009】
かかる基礎工法は、ベタ基礎を構築する領域内に、埋設増量材としての発泡樹脂製ブロックを配置する基礎工法には特に好適である。この場合には、ベタ基礎の領域が広くても、発泡樹脂製ブロックの上面に高さ調節可能なサポート部材を配置し、そのサポート部材を介して定規部材の中間部適所を支承すれば、定規部材の水平度を容易に確保することができる。
【0010】
本発明の基礎工法においては、定規部材として、例えばH形鋼やI形鋼、山形鋼、角形鋼管その他の形鋼材を利用することもできるが、特に、溝形鋼を採用し、その開口面を上向き又は下向きにして架け渡すのが好ましい。溝形鋼は撓み変形に対する強度に優れるとともに、アンカーボルトや柱脚金物等の取り付け易さにおいても使い勝手がよい。
【0011】
さらに、本発明の基礎工法においては、定規部材の架け渡しに際して、複数本の定規部材を平面視直交二方向に交差させて架け渡すとともに、少なくともいずれか一方向の定規部材を柱又は壁の通り芯に合わせて配置するのが好ましい。これにより、建築物の上部構造体を支持するのに必要なアンカーボルトや柱脚金物等の配置を最適化することができるとともに、それらの取り付けに必要な孔部や切欠部の加工作業も合理化し易くなる。
【0012】
さらに、本発明においては、アンカーボルト又は柱脚金物等の位置決めに際して、定規部材に適宜の治具を取り付け、前記治具を介して間接的にアンカーボルト又は柱脚金物等を定規部材に吊持させた状態で位置決めすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように構成される本発明の基礎工法では、定規部材が、基礎の外周を包囲する堰板には接しないようにして、基礎の区画全体を跨ぐように架け渡され、堰板の外側に離隔させた支保工によって支承される。つまり、この定規部材は、基礎を構築するための堰板や鉄筋その他の型枠要素からは独立した仮設物となる。そして、この定規部材を基準にすることにより、アンカーボルトや柱脚金物、或いはそれらに準じた基礎埋設物を、基礎の広さや、基礎の平面及び断面の形状、基礎梁の有無等に関わらず、任意の位置に精度よく位置決めして据え付けることができる。定規部材に形鋼材を利用して、たわみ変形に対する強度を確保することにより、定規部材を数m以上のスパンにわたって架け渡すことも可能になる。
【0014】
この基礎工法は、ベタ基礎を構築する領域内に埋設増量材としての発泡樹脂製ブロックを配置する基礎工法には特に好適であって、基礎型枠施工を省力化するのに大いに寄与する。発泡樹脂製ブロックを利用する基礎工法では、コンクリートを打設する際に、軽量の発泡樹脂製ブロックがコンクリートの流動圧を受けて位置ずれを生じることもありえるが、基礎から独立した頑丈な定規部材に支持されるアンカーボルト等は、その影響を受けにくいので、アンカーボルト等の位置精度が向上する。
【0015】
このように、本発明の基礎工法では、基礎を形成する区画を跨ぐようにして該区画の上方に架け渡した定規部材の設置精度と、定規部材に取り付けるアンカーボルトや柱脚金物等の取付精度とによって、上部構造体を連結する部位の施工精度を確保しているので、その分、基礎自体の型枠工事を省力化或いは簡略化し、コストを削減するのが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る基礎工法を説明する断面斜視図であって、ベタ基礎の外周部を堰板で囲み、その区画内に発泡樹脂製ブロックを配置して、基礎梁や土間スラブの鉄筋を組んだ段階を示す図である。
【図2】同じく、本発明の実施形態に係る基礎工法を説明する断面斜視図であって、図1の段階に続き、ベタ基礎の区画の上方に定規部材を架け渡してアンカーボルト等を位置決めした段階を示す図である。
【図3】図2の段階において、アンカーボルト等を定規部材に取り付ける形態の例を示す部分拡大斜視図である。
【図4】ベタ基礎の型枠と定規部材、柱脚金物等の、高さ方向における配置関係を示す部分断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基礎工法を説明する断面斜視図であって、図2の段階に続き、ベタ基礎の区画内にコンクリートを打設した後、定規部材を撤去した段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
図1、図2、及び図5は、本発明の実施形態に係る基礎工法を工程順に説明する断面斜視図である。例示形態は、比較的良好な地盤上に低層の木造住宅を建築するケースでの基礎工法を想定している。
【0019】
まず、図1に示すように、ベタ基礎を構築する予定領域の地盤を掘削して凹所1を形成し、その凹所1に適宜の地業を施す。地業とは、地盤面に砂利や割栗石11を敷設して突き固め、捨てコンクリート12を打設するなどの作業であるが、本発明において、特にその詳細は限定しない。また、例示形態では凹所1の底面を平坦に均しているが、凹所1の底面には、構築しようとするベタ基礎の断面形状に合わせて、部分的な掘り込みや盛り土等による起伏を形成してもよい。
【0020】
捨てコンクリート12が硬化したら、その底面に墨出しを施し、ベタ基礎の外周部に沿って堰板21を立設する。この堰板21にも、特殊な構造や厳密な寸法精度が要求されるわけではないから、適宜、公知の型枠材料を利用することができる。堰板21の外側には、例えば、斜めサポート22等からなる適宜の支保工を配し、これによって堰板21を外側から支持する。この支保工についても、特にその詳細は限定しない。
【0021】
例示形態では、堰板21によって包囲した区画内に、埋設増量材としての発泡樹脂製ブロック23を配置する。発泡樹脂製ブロック23は、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、或いはそれらの複合材料等からなる成形体であって、一人乃至二人の作業者が容易に持ち運べる程度の大きさや形状、具体的には各辺が数十cm程度の直方体形状、或いは長辺が数m程度までの角棒体形状等に成形されている。このブロック23を、基礎梁の予定位置を挟むようにして凹所1内に配置する。このとき、必要に応じて複数個のブロック23を上下方向に積層したり、横方向に並べて連結したりしてもよい。
【0022】
堰板21の内側面に沿うスペースや、隣接するブロック23間のスペースには、基礎梁を構成する鉄筋24を配設する。基礎梁用の鉄筋24は、現場で組み上げてもよいし、予め籠状に組んだ鉄筋ユニットを現場に据え付けるようにしてもよい。基礎梁用の鉄筋24の下部は、凹所1の底面に載置した適宜のスペーサ等(図示せず)を介して所定の高さに保持する。また、ブロック23の上方には、土間スラブ用の鉄筋25を平面視格子状に組み、これを基礎梁の鉄筋24と結束する。土間スラブ用の鉄筋25も、ブロック23の上面に載置した適宜のスペーサ等(図示せず)を介して所定の高さに保持する。これらの配筋作業と併せ、コンクリート打設時に発泡樹脂製ブロック23が浮き上がるのを抑える手段も適宜、講じる。
【0023】
次いで、図2に示すように、堰板21によって包囲した区画の上方に、該区画全体を跨ぐようにして定規部材3を架け渡す。定規部材3には溝形鋼を利用し、その開口面を上向き又は下向きにして配置する。例示形態では、複数本ずつの定規部材3を平面視直交二方向に交差させ、それらのうちの一部を柱又は壁の通り芯に合致させて配置している。
【0024】
各定規部材3は、その端部近傍を、堰板21の外側に設ける支保工4によって支持する。支保工4には、例えばジャッキベースのように高さ調節可能なものを利用し、該支保工4を堰板21から離隔させて、堰板21よりも外側の地盤上に設置する。ジャッキベースを利用する場合は、図3に示すように、その軸筒部41を定規部材3に形成した孔部31に下方から挿入し、軸筒部41に螺装したジャッキハンドル42によって定規部材3の底面を支承する。そして、定規部材3の高さや傾きを調節しながら、定規部材3を水平に支持する。本発明にあっては、定規部材3を堰板21から離して、堰板21よりも高い位置に保持する点を要部としている。ベタ基礎を形成する区画が広大で、通常の長さの定規部材3では区画全体を跨ぐことができない場合は、適宜の継手手段を用いて定規部材3を延伸する。また、定規部材3を架け渡すスパンが大きくて、その中間部における撓みが大きくなる場合は、定規部材3の中間部適所を、例えば発泡樹脂製ブロック23の上面に配置した適宜のサポート部材(図示せず)を介して支承する。該サポート部材は、高さ調節可能なものが便利であるが、最終的にはコンクリート内に埋め殺しになるので、できるだけ安価なものが好ましい。
【0025】
こうして、定規部材3がベタ基礎の区画上に架け渡されたならば、それらの定規部材3に、アンカーボルト5や柱脚金物6等を取り付ける。その取付形態を図3に示し、該取付形態を構成する部材同士の高さ方向における配置関係を図4にす。
【0026】
例示形態では、直交二方向に交差する定規部材3を、下側の定規部材3は溝形鋼の開口面を下向きにし、上側の定規部材3は溝形鋼の開口面を上向きにして重ねている。ただし、構築しようとするベタ基礎の構造や基礎内に埋設する部材等によっては、全ての定規部材3を、溝形鋼の開口面を上向き、或いは下向きにして配設しても差し支えない。
【0027】
各溝形鋼のウェブに当たる中央の水平面部32、及びフランジに当たる両縁の直立片部33には、円形の孔部34や、スリット状或いは十字状の切欠部35が、予め所定位置に形成されている。これらの孔部34や切欠部35を利用して、アンカーボルト5や柱脚金物6、或いはそれらに準じた適宜の基礎埋設物を定規部材3に取り付ける。下側の定規部材3と上側の定規部材3との重合箇所についても、必要に応じて、それぞれの水平面部32に形成された孔部34又は切欠部35を、ボルト・ナット或いは適宜の金具類で綴ることにより連結することができる。
【0028】
アンカーボルト5は、溝形鋼の水平面部32に形成した孔部34に下方から挿入して、上方からナット締結する。ナットの締結位置を調節することにより、アンカーボルト5を吊持する高さを変化させることができる。
【0029】
例示した柱脚金物6は、台座部61の上面中央に一枚の柱脚連結プレート62を立ち上げたもので、木製柱(図示せず)の下端に形成したスリットに柱脚連結プレート62を挿入し、側方からドリフトピン等を打ち込んで木製柱と連結するように構成されている。この柱脚金物6の台座部61に予めアンカーボルト5を取り付けておき、柱脚連結プレート62を溝形鋼の水平面部32に形成した十字状の切欠部35に下方から挿入して、水平面部32の上に突き出す部分に側方からボルト63又はピンを挿入すれば、柱脚金物6が定規部材3に吊持される。
【0030】
開口面を上向きにして配置される溝形鋼にあっては、その直立片部33に前記ボルト63又はピンを挿通させうる孔部36が形成されており、この孔部36の位置が柱脚金物6の据え付け高さを規定することとなる。また、開口面を上向きにして配置される溝形鋼にあっては、下向きの直立片部33に添設した補助プレート37を上方に延ばし、その延設部分にボルト63又はピンを挿通させうる孔部38を形成することにより、前記と同様にして吊持することができる。この形態にあっては、補助プレート37に形成した孔部38による据え付け高さが、開口面を上向きにした溝形鋼の直立片部33に形成した孔部36による据え付け高さと、実質的に同じになるように、それぞれの孔部36、38が予め形成されているのが好ましい。
【0031】
なお、図3には示していないが、アンカーボルト5や例示の柱脚金物6以外にも、それらに準じた適宜の基礎埋設物を、同様にして定規部材3に取り付けることができる。また、例えば、適当な間隔を隔てて並列配置した定規部材3の間に、従来公知のアンカーボルト位置決め用治具(定規)を架け渡すように取り付け、該治具を介して間接的にアンカーボルト5や柱脚金物6等を据え付けることも可能である。
【0032】
こうして、所定の高さに架け渡された定規部材3を利用し、該定規部材3の所定位置にアンカーボルト5や柱脚金物6その他の基礎埋設物が精度良く位置決めされたならば、堰板21によって包囲した区画内にコンクリート7を打設する。例示形態では、図4に示すように、コンクリート7の天端が堰板21の上端よりも数cm程度低くなり、そして、ちょうど柱脚金物6の台座部61がコンクリート7の天端に座るか、多少、コンクリート7内に埋まるような高さまでコンクリート7を打設する。こうすれば、コンクリート7の硬化後に柱脚周りの不陸を整正したり、コンクリート7天端のレベルを補正したりする作業が不要になり、基礎工事の施工性が向上する。また、柱脚金物6自体が定規部材3によって精度良く位置決めされるから、これに取り付けるアンカーボルト5には厳しい位置決め精度が要求されなくなり、その据え付け作業も簡略化することができる。
【0033】
コンクリート7の硬化後、図5に示すように、定規部材3と、それを支持する支保工4とを撤去すれば、コンクリート7の天端にアンカーボルト5や柱脚金物6が据え付けられたベタ基礎が得られる。堰板21を撤去し、ベタ基礎の周囲を埋め戻せば完成であり、発泡樹脂性ブロック23は埋め殺しとなる。
【0034】
このように、本発明の基礎工法では、定規部材3の設置精度(位置や傾き)及び、定規部材3に予め形成する孔部34や切欠部35の加工精度によって、アンカーボルト5や柱脚金物6等の据え付け精度が規定されることから、ベタ基礎自体の型枠品質は多少、低下させても実用上、差し支えないことになる。したがって、例えば堰板21を構成する型枠パネルについても、高価なメタルフォームではなく安価な木製パネルを採用したり、基礎天端の不陸整正やレベル補正作業を省略したりするなどして、様々な面から基礎型枠工事の省力化や簡略化を図り、それによって施工コストを削減するのが容易になる。
【0035】
定規部材3はベタ基礎の施工完成後に撤去されるが、この定規部材3はコンクリート7の打設で汚損されることもない。したがって、例えば柱割りや間取りが標準化されたような建築物を複数棟、設置する場合などにあっては、定規部材3を何度も再利用することができ、これによっても大幅な省力化や基礎工事のコスト削減が可能になる。
【0036】
なお、上述の説明ではベタ基礎を例示したが、例えば布基礎の施工において、基礎梁の天端近傍のレベルに土間コンクリートを基礎梁と一体に打設するような場合も、その基礎の外周部を囲む堰板よりも外側に支保工を設けて、前記と同様に基礎の上方に定規部材を架け渡すことにより、該定規部材を基準にして、アンカーボルトや柱脚金物等を任意の位置に精度良く据え付けることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 凹所
21 堰板
23 発泡樹脂製ブロック
24 基礎梁用の鉄筋
25 土間スラブ用の鉄筋
3 定規部材
34 孔部
35 切欠部
37 補助プレート
4 支保工
5 アンカーボルト
6 柱脚金物
61 台座部
62 柱脚連結プレート
7 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎を構築する予定領域の外周部に堰板を立設し、前記堰板によって包囲された区画内に基礎の基礎梁や土間スラブ等を構成する鉄筋を組んだ後、前記区画内にコンクリートを打設して基礎を構築する基礎工法において、
コンクリートの打設に先立ち、前記堰板によって包囲された区画よりも外側の地盤上に堰板から離隔させて支保工を設け、前記支保工を介して前記区画の上方に、堰板には接しないようにして形鋼材からなる定規部材を水平に架け渡し、
前記定規部材の所定位置に予め形成した孔部又は切欠部を利用して、前記定規部材にアンカーボルト或いは適宜の柱脚金物等を吊持させて位置決めし、その状態で前記区画内にコンクリートを打設した後、前記定規部材及び支保工を撤去することを特徴とする基礎工法。
【請求項2】
ベタ基礎を構築する予定領域の外周部に堰板を立設し、前記堰板によって包囲された区画内に基礎梁の予定位置を挟むようにして発泡樹脂製ブロックを配置し、前記ブロックの間に基礎梁の鉄筋を組み、前記ブロックの上方に土間スラブの鉄筋を組んだ後、前記区画内にコンクリートを打設してベタ基礎を構築する基礎工法において、
コンクリートの打設に先立ち、前記堰板によって包囲された区画よりも外側の地盤上に堰板から離隔させて支保工を設け、前記支保工を介して前記区画の上方に、堰板には接しないようにして形鋼材からなる定規部材を水平に架け渡し、
前記定規部材の所定位置に予め形成した孔部又は切欠部を利用して、前記定規部材にアンカーボルト或いは適宜の柱脚金物等を吊持させて位置決めし、その状態で前記区画内にコンクリートを打設した後、前記定規部材及び支保工を撤去することを特徴とする基礎工法。
【請求項3】
請求項2に記載の基礎工法における定規部材の架け渡しに際して、
定規部材の中間部適所を、発泡樹脂製ブロックの上面に配置した高さ調節可能なサポート部材を介して支承することを特徴とする基礎工法。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の基礎工法において、
定規部材には溝形鋼を使用し、前記溝形鋼の開口面を上向き又は下向きにして架け渡すことを特徴とする基礎工法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の基礎工法における定規部材の架け渡しに際して、
複数本の定規部材を平面視直交二方向に交差させて架け渡すとともに、少なくともいずれか一方向の定規部材を柱又は壁の通り芯に合わせて配置することを特徴とする基礎工法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基礎工法におけるアンカーボルト又は柱脚金物等の位置決めに際して、
定規部材に適宜の治具を取り付け、前記治具を介して間接的にアンカーボルト又は柱脚金物等を定規部材に吊持させた状態で位置決めすることを特徴とする基礎工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6849(P2011−6849A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148544(P2009−148544)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】