説明

基礎杭キャップ

【課題】 本発明は、基礎杭を掘削孔に建込み時に、正確に埋設することが出来る基礎杭キャップを提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 基礎杭1を掘削孔に建込む時、杭頭固定冶具3を基礎杭1の内周部1b内に挿入しながら、基礎杭キャップ2が基礎杭1の杭頭部1aと水平になるように押し当てる。基礎杭キャップ2を押し込み又は回転させながら基礎杭1を掘削孔に建込む構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭部が開放された中空の基礎杭の該杭頭部に接続され、該基礎杭を地盤へ押し込み又は回転圧入する基礎杭キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤に空けた掘削孔内に基礎杭を構築する際に、基礎杭を地中部に押し込み又は回転圧入するために基礎杭頭部に図5に示すような基礎杭キャップ51を嵌装して接続し、該基礎杭キャップ51を図示しない回転装置により回転させることで基礎杭を地盤へ押し込み又は回転圧入するのが一般である。尚、51aは基礎杭頭部の外周面に突設された杭頭コマが係合する切欠部である。
【0003】
また、中空の基礎杭の杭頭部内に円筒状のガイド部が挿入される杭の吊下げ連結具が実開平3−21451号公報(特許文献1)に提案されている。
【0004】
【特許文献1】実開平3−21451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示す従来例では、円筒状の基礎杭キャップ51を単に基礎杭頭部に嵌装しただけで接続されるため、杭の所定位置からの水平方向のずれが発生し易く不安定であった。また、特許文献1の技術では、芯ずれ防止効果は期待できるが、鋼製のパイプからなるガイド部により基礎杭内周面が傷付き易いといった問題がある。
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、基礎杭を地中部に押し込み又は回転圧入する際に芯ずれが極めて小さく施工でき 、基礎杭内周面が傷付くこともない基礎杭キャップを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る基礎杭キャップの第1の構成は、杭頭部が開放された中空の基礎杭の該杭頭部に接続され、該基礎杭を地盤へ押し込み又は回転圧入する基礎杭キャップであって、前記杭頭部の外周に嵌装される円筒状の基礎杭キャップ本体の上端閉塞部から該基礎杭キャップ本体の下端側に向かって前記基礎杭の中空部の内径に対応する外径を有し、且つ前記円筒状の基礎杭キャップ本体の軸方向長さよりも短い棒状の弾性体からなる杭頭固定冶具を前記基礎杭本体と同軸芯となるように垂設したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る基礎杭キャップの第2の構成は、前記第1の構成において、前記杭頭固定冶具の外周面に、該杭頭固定冶具の軸方向両端部に亘って単数又は複数の溝部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る基礎杭キャップの第1の構成によれば、基礎杭キャップに設けられた弾性体からなる杭頭固定冶具を基礎杭の中空部内に挿入して該基礎杭キャップを杭頭部に接続することで、基礎杭を地中部に押し込み又は回転圧入する際に芯ずれが極めて小さく施工でき、基礎杭内周面が傷付くこともない。
【0010】
また、本発明に係る基礎杭キャップの第2の構成によれば、前記杭頭固定冶具の外周面に、該杭頭固定冶具の軸方向両端部に亘って単数又は複数の溝部を設けたことで、基礎杭内周部から上がってくる土や泥水が前記溝部を介して外部に排出され、埋設時の抵抗となることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図により本発明に係る基礎杭キャップの一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る基礎杭キャップの杭埋設時の側面説明図、図2は杭吊り込み時における基礎杭キャップの側面説明図、図3は長尺状の基礎杭キャップの側面説明図、図4は杭頭固定冶具の外周面に該杭頭固定冶具の軸方向両端部に亘って設けた溝部の一例を説明する図である。
【0012】
図1〜図3において、杭頭部1aが開放された中空の基礎杭1を正確に掘削孔に建込むに際して、杭頭固定冶具3を基礎杭1の内周部1b内に挿入しながら、基礎杭キャップ2が基礎杭1の杭頭部1aと水平になるように押し当て、基礎杭キャップ2を押し込み又は回転させながら基礎杭1を掘削孔に建込むことが出来る。
【0013】
基礎杭キャップ2は、杭頭部1aが開放された中空の基礎杭1の該杭頭部1aに接続され、該基礎杭1を地盤へ押し込み又は回転圧入するものであり、杭頭部1aの外周に嵌装される円筒状の基礎杭キャップ本体2aの上端閉塞部2bから該基礎杭キャップ本体2aの下端2a1側に向かって基礎杭1の中空部の内径に対応する外径を有し、且つ円筒状の基礎杭キャップ本体2aの軸方向(図1〜図3の上下方向)長さよりも短い棒状の弾性体からなる杭頭固定冶具3を基礎杭1本体と同軸芯となるように垂設したものである。
【0014】
図1〜図3に示す基礎杭1は外径直径400mm〜800mm程度の既製コンクリート杭の一例であり、その内径直径は200mm〜650mm程度である。また、杭頭部1a付近の外周面に溶接して突設している杭頭コマ4は、基礎杭1を吊り込む時に用いる鉄製の治具である。
【0015】
図1〜図3に示す基礎杭キャップ2は、基礎杭1を吊り込みまたは、埋設する時に用いる鉄製の治具であり、基礎杭キャップ本体2aは円筒状の形状で、中空かつ底面部が開放しており、外周側面の対面する2箇所には基礎杭1の杭頭部1aの外周面に突出して設けられた杭頭コマ4に係合し得る切欠部2cを有している。
【0016】
図1〜図3に示す杭頭固定冶具3は、円筒状で、その下端部は基礎杭1の内周部1b内に挿入する時、ガイドし易い凸型部3aを有している。杭頭固定冶具3の外径直径は基礎杭1の内径よりも小径とし、軸方向(図1〜図3の上下方向)長さは施工性を考慮し、基礎杭キャップ2の円筒状の基礎杭キャップ本体2aの軸方向(図1〜図3の上下方向)の長さよりも短いものとする。杭頭固定冶具3は基礎杭キャップ2の中空部上面の上端閉塞部2bの中心部に設けられた図示しない貫通孔或いはネジ孔にボルトまたはネジにより剛結されており、杭頭固定冶具3の材質は、基礎杭1の内面を傷つけないように硬質ゴム等の剛性のある弾性体を用いている。
【0017】
また、図4に示すように、杭頭固定冶具3の外周面に、該杭頭固定冶具3の軸方向(図4の上下方向)両端部に亘って単数又は複数の溝部3bが設けられており、該溝部3bを介して基礎杭1の内周部1bの下部から上がってくる土又は泥水を外部に排出することが出来る。本実施形態の溝部3bは断面半月状に形成された場合の一例であるが、断面方形状や断面V字形状の溝部3bを形成しても良い。
【0018】
図3に示す基礎杭キャップ2は、図1に示す基礎杭キャップ2の円筒状の基礎杭キャップ本体2a及び杭頭固定冶具3をそれぞれ軸方向(図1、図3の上下方向)に直線上に延長した形状であり、地下深度の深いところまで使用できるものである。尚、図1に示す基礎杭キャップ2の円筒状の基礎杭キャップ本体2aの軸方向(図1の上下方向)の長さは基礎杭1の外径直径程度に設定され、図3に示す基礎杭キャップ2の円筒状の基礎杭キャップ本体2aの軸方向(図3の上下方向)の長さは基礎杭1の外径直径の4倍程度に設定された一例であるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
次に上記の如く構成された基礎杭キャップ2を、基礎杭1に接続する際の手順について説明する。基礎杭1は既に先端部分から所定の部位まで地中に埋設されており、上端を含む上方の一部が露出している。このような基礎杭1の上方に基礎杭キャップ2を対向させ、基礎杭キャップ本体2aに設けられた切欠部2cの開口部を基礎杭1の杭頭部1aに突設された杭頭コマ4の位置に合わせた状態で杭頭固定冶具3を基礎杭1の内周部1b内に挿入すると共に、基礎杭キャップ本体2aを基礎杭1の杭頭部1aの外周部に嵌装する。尚、本実施形態の基礎杭キャップ本体2aに設けられた切欠部2cの開口部形状は図5に示された切欠部51aの開口部51a1の形状と略同様である。
【0020】
その後、図1に示す様に、基礎杭キャップ2の上端閉塞部2bを基礎杭1の天端に押し当てて回転させることで、基礎杭キャップ本体2aの切欠部2c内に基礎杭1の杭頭部1aに突設された杭頭コマ4が係合されて基礎杭1が基礎杭キャップ2により把持される。
【0021】
上記の如くして基礎杭1に接続された基礎杭キャップ2に対し、図示しない埋設機の駆動装置から回転トルクを付与すると、付与された回転トルクは基礎杭キャップ2を通じて圧接による接触摩擦によって基礎杭1に伝達され、これにより基礎杭1が回転し、地中に埋進される。
【0022】
基礎杭1が所定の深さまで埋設されたことが確認されたとき(この状態では基礎杭1の上端は地中の深い位置にあり、地上から視認することができず、操作することもできない)、杭頭コマ4が基礎杭キャップ本体2aの切欠部2cの開口部の位置に来るまで基礎杭キャップ2を回転させ、上昇させる。
【0023】
上記の如くして基礎杭キャップ2を基礎杭1から離脱させた後、図示しない埋設機を駆動して基礎杭キャップ2を上昇させることにより地上に引き抜き、これにより、基礎杭1を地中に埋設することが可能である。
【0024】
尚、上記の如く構成された基礎杭キャップ2では、基礎杭1を埋設する際に基礎杭1の中空部から上がってくる土砂や地下水が杭頭固定冶具3により閉塞されてしまい上がってこず、埋設時の抵抗となることがあるので、杭頭固定冶具3は、図4に示す様に溝部3bを設けることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の活用例として、杭頭部が開放された中空の基礎杭の該杭頭部に接続され、該基礎杭を地盤へ押し込み又は回転圧入する基礎杭キャップに適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る基礎杭キャップの杭埋設時の側面説明図である。
【図2】杭吊り込み時における基礎杭キャップの側面説明図である。
【図3】長尺状の基礎杭キャップの側面説明図である。
【図4】杭頭固定冶具の外周面に該杭頭固定冶具の軸方向両端部に亘って設けた溝部の一例を説明する図である。
【図5】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
1…基礎杭
1a…杭頭部
1b…内周部
2…基礎杭キャップ
2a…基礎杭キャップ本体
2a1…下端
2b…上端閉塞部
2c…切欠部
3…杭頭固定冶具
3a…凸型部
3b…溝部
4…杭頭コマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部が開放された中空の基礎杭の該杭頭部に接続され、該基礎杭を地盤へ押し込み又は回転圧入する基礎杭キャップであって、
前記杭頭部の外周に嵌装される円筒状の基礎杭キャップ本体の上端閉塞部から該基礎杭キャップ本体の下端側に向かって前記基礎杭の中空部の内径に対応する外径を有し、且つ前記円筒状の基礎杭キャップ本体の軸方向長さよりも短い棒状の弾性体からなる杭頭固定冶具を前記基礎杭本体と同軸芯となるように垂設したことを特徴とする基礎杭キャップ。
【請求項2】
前記杭頭固定冶具の外周面に、該杭頭固定冶具の軸方向両端部に亘って単数又は複数の溝部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の基礎杭キャップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate