説明

基礎構造、及び当該基礎構造を備える免震構造物

【課題】止水性を確保しつつ、地盤変形に起因するコンクリート基礎の破損、損傷を低減することを目的とする。
【解決手段】隣接する基礎スラブ20は、これらの基礎スラブ20よりも剛性が小さいコンクリート連結体22によって連結されている。また、コンクリート連結体22によって、隣接する基礎スラブ20の間の目地空間28が埋められており、地盤18からコンクリート連結体の支持面20Aへの浸水が阻止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造、及び当該基礎構造を備える免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の基礎構造としては、基礎梁構造や基礎スラブ構造が知られている。例えば、基礎スラブ構造では、上部構造体が、地盤上に構築された基礎スラブで支持される。また、併設された複数の上部構造体が一つの基礎スラブで支持されることもある。
【0003】
ここで、上部構造体の大型化、長大化に伴って、基礎スラブが大面積化すると、地震や不同沈下(圧密沈下、即時沈下等)等の地盤変形によって基礎スラブが破損、損傷する恐れがある。特に、柱や免震装置付近の基礎スラブが破損、損傷すると、上部構造体への影響が大きくなる。
【0004】
この対策として、基礎スラブを複数の区画に分割し、隣接する区画をエキスパンジョン・ジョイントで相対変位可能に連結することが考えられる。この場合、地震や不同沈下による地盤変形がエキスパンジョン・ジョイントで吸収されるため、基礎スラブの破損、損傷が抑制される。しかしながら、エキスパンジョン・ジョイントは止水機能を有しておらず、湧水に対する止水性が問題となる。
【0005】
一方、特許文献1には、高層棟と低層棟の自重差に起因した不同沈下による基礎梁の破損、損傷を抑制する基礎工法を提案されている。この基礎工法では、高層棟を支持する基礎梁と、低層棟を支持する基礎梁との間にスリットを設け、高層棟と低層棟を充分に沈下させた後にスリットにコンクリートを打設して、高層棟を支持する基礎梁と低層棟を支持する基礎梁とを結合する。この基礎工法では、スリットにコンクリートを打設するため、湧水に対する止水性が確保される。
【0006】
しかしながら、特許文献1の基礎工法では、施工中の不同沈下をスリットで吸収するものであり、スリットにコンクリートを打設した後に発生する地震や不同沈下等の地盤変形を吸収することができない。即ち、スリットにコンクリートを打設した後は、地震や不同沈下等の地盤変形によって、基礎梁が破損、損傷する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−27809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、止水性を確保しつつ、地盤変形に起因するコンクリート基礎の破損、損傷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の基礎構造は、地盤上に構築され、上部構造体を支持する複数のコンクリート基礎と、隣接する前記コンクリート基礎を連結すると共に、前記地盤から該コンクリート基礎の支持面への浸水を阻止し、該コンクリート基礎よりも剛性が小さい連結体と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、地盤上に構築され、上部構造体を支持する複数のコンクリート基礎を備えている。隣接するコンクリート基礎は、当該コンクリート基礎よりも剛性が小さい連結体によって連結されている。また、連結体によって、地盤からコンクリート基礎の支持面への浸水が阻止されている。
【0011】
ここで、隣接するコンクリート基礎を連結体で連結したことにより、当該連結体を介して隣接するコンクリート基礎の間でせん断力等の応力が伝達される。従って、上部構造体の鉛直荷重が各コンクリート基礎に分散して伝達されるため、特定のコンクリート基礎に対する集中荷重が低減される。また、地震や不同沈下等の地盤変形に対しても、各コンクリート基礎が協同して抵抗するため、コンクリート基礎の破壊、損傷が抑制される。
【0012】
更に、連結体は、コンクリート基礎よりも剛性が小さくされている。従って、例えば、想定外の地震や不同沈下等によって地盤変形が過大になったときに、コンクリート基礎に先行して連結体が変形又は破壊する。これにより、地盤変形が吸収されるため、コンクリート基礎の破壊が抑制される。
【0013】
このように本発明では、剛性を意図的に小さくした連結体で隣接するコンクリート基礎を連結することにより、想定内の地盤変形に対しては各コンクリート基礎が一体として抵抗する一方で、想定外の地盤変形に対しては、コンクリート基礎に先行して連結体が変形又は破壊され、地盤変形が吸収される。従って、コンクリート基礎の大規模な破壊が抑制される。
【0014】
請求項2に記載の基礎構造は、請求項1に記載の基礎構造において、前記連結体が、隣接する前記コンクリート基礎の間を塞ぐコンクリート連結体である。
【0015】
上記の構成によれば、連結体が、隣接するコンクリート基礎の間を塞ぐコンクリート連結体とされている。即ち、隣接するコンクリート基礎の間が、コンクリート連結体で埋められている。従って、単純な構造で、地盤からコンクリート基礎の支持面へ浸水を抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の基礎構造は、請求項2に記載の基礎構造において、前記コンクリート連結体の厚みが、前記コンクリート基礎よりも薄くされている。
【0017】
上記の構成によれば、コンクリート連結体の厚みが、コンクリート基礎の厚みよりも薄くされている。即ち、コンクリート連結体の厚みによって、コンクリート連結体の剛性がコンクリート基礎よりも小さくされている。従って、単純な構造で、コンクリート連結体の剛性をコンクリート基礎の剛性よりも小さくすることができる。
【0018】
請求項4に記載の基礎構造は、請求項2又は請求項3に記載の基礎構造において、前記コンクリート連結体の下に、骨材を敷き詰めた排水溝を設けている。
【0019】
上記の構成によれば、コンクリート連結体の下には、骨材を敷き詰めた排水溝が設けられている。この排水溝により、隣接するコンクリート基礎の間の空間に溜まる雨水等が排水されるため、コンクリート連結体の施工が容易となる。
【0020】
請求項5に記載の基礎構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載の基礎構造において、複数の前記上部構造体が、前記コンクリート基礎の上に構築され、前記連結体が、隣接する前記上部構造体の間に位置している。
【0021】
上記の構成によれば、コンクリート基礎の上に複数の上部構造体が構築されており、これらの上部構造体の間に連結体が位置している。即ち、上部構造体を直接支持する柱や免震装置が存在しない部位に連結体が位置しており、負担応力が相対的に小さい位置で、隣接するコンクリート基礎が連結されている。従って、連結体の必要強度又は必要破壊耐力が小さくなるため、連結体の構造を単純化することができる。更に、連結体の上方に上部構造体が存在しないため、連結体の施工が容易となる。
【0022】
請求項6に記載の基礎構造は、請求項1に記載の基礎構造において、前記連結体が、隣接する前記コンクリート基礎を連結し、該コンクリート基礎の間の空間を仕切る、又は閉じる鋼連結体である。
【0023】
上記の構成によれば、連結体が、隣接するコンクリート基礎に連結される鋼連結体とされている。この鋼連結体によって隣接するコンクリート基礎の間の空間が仕切られ、又は閉じられている。これにより、コンクリート基礎の支持面へ浸水が阻止される。また、想定外の地震や不同沈下等の地盤変形に対して、鋼連結体が変形又は破断することにより、地盤変形が吸収される。従って、コンクリート基礎の大規模な破壊が抑制される。
【0024】
更に、鋼連結体に低降伏点鋼等を用いることにより、履歴変形によるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0025】
請求項7に記載の免震構造物は、請求項1〜6の何れか1項に記載の基礎構造と、前記基礎構造の上に構築された上部構造体と、前記上部構造体と前記コンクリート基礎との間に設けられ、該上部構造体を支持する免震装置と、を備えている。
【0026】
上記の構成によれば、コンクリート基礎と上部構造体との間に設けられた免震装置によって、上部構造体が支持されている。ここで、隣接するコンクリート基礎が、当該コンクリート基礎よりも剛性が小さい連結体で連結されている。従って、想定外の地震や不同沈下等により地盤変形が過大になったときに、コンクリート基礎に先行して連結体が変形、又は破壊され、地盤変形が吸収される。従って、コンクリート基礎の大規模な破壊が抑制され、上部構造体を支持する免震装置の破損、損傷が抑制される。
【0027】
また、地盤変形時における隣接するコンクリート基礎の相対変位は、免震装置の水平変形によって吸収されるため、この相対変位に上部構造体が追従しない。従って、連結体が破壊され、隣接するコンクリート基礎の相対変位量が大きくなっても、上部構造体に作用する外力が大きくならない。従って、上部構造体の破損、損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記の構成としたので、止水性を確保しつつ、地盤変形に起因するコンクリート基礎の破損、損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基礎構造を備える免震構造物を示す、立面図である。
【図2】第1実施形態に係る基礎構造を備える免震構造物を示す、平面図である。
【図3】(A)及び(B)は、第1実施形態に係る基礎構造を示す、垂直断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、第1実施形態に係る基礎構造の変形例を示す、垂直断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係る基礎構造の変形例を示す、垂直断面図である。
【図6】第1実施形態に係る基礎構造の変形例を示す、立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る基礎構造について説明する。
【0031】
先ず、第1実施形態について説明する。
【0032】
図1及び図2には、免震構造物10が示されている。免震構造物10は、基礎構造12と、基礎構造12の上に構築された上部構造体14と、基礎構造12と上部構造体14との間に設けられ、上部構造体14を支持する免震装置16と、を備えている。
【0033】
基礎構造12は、地盤18上に敷設された複数の基礎スラブ(コンクリート基礎)20と、隣接する基礎スラブ20の間を塞ぐコンクリート連結体(連結体)22と、を備えている。基礎スラブ20は、地盤18を掘り下げて形成された免震層に構築され、地盤18に埋設された杭24が接続されている。また、基礎スラブ20の外周には、擁壁26が立設されている。この基礎スラブ20の支持面20Aに、上部構造体14を支持する免震装置16が設置されている。
【0034】
なお、本実施形態では、免震装置16として積層ゴム支承を用いているが、滑り支承、弾性滑り支承、転がり支承等の種々の免震装置を用いることができる。
【0035】
図2に示されるように、各基礎スラブ20は、複数(本実施形態では、6つ)に区画されたコンクリート打設領域に構築されている。隣接する基礎スラブ20の間には溝状の目地空間28が形成されており、この目地空間28内にコンクリート連結体(連結体)22が設けられている。なお、基礎スラブ20の数や配置は、適宜変更可能である。
【0036】
図3(B)に示されるように、コンクリート連結体22は、目地空間28の下部28Bに設けられ、コンクリート連結体22の上面22Aが基礎スラブ20の支持面20Aよりも低くなっている。即ち、コンクリート連結体22の厚みが基礎スラブ20の厚みよりも小さくされ、コンクリート連結体22の断面積が、基礎スラブ20の断面積よりも小さくなっている。これにより、コンクリート連結体22の剛性及び破壊耐力が、基礎スラブ20よりも小さくなっている。なお、基礎スラブ20とコンクリート連結体22は、同等の強度を有するコンクリートで構成されている。
【0037】
また、コンクリート連結体22の上面22Aと基礎スラブ20の支持面20Aとの間の段差によって、コンクリート連結体22の上方に溝44(目地空間28の上部28A)が形成されている。この溝44によって、基礎スラブ20の支持面20Aに溜まる雨水等が排水される。なお、溝44は図示せぬ井戸状の釜場に接続されており、当該釜場に集められた排水はポンプ等で汲み上げられる。
【0038】
隣接する基礎スラブ20とコンクリート連結体22とは、これらの基礎スラブ20及びコンクリート連結体22にまたがって埋設された継手筋34によって、せん断力等の応力を伝達可能に接合されている。継手筋34は、隣接する基礎スラブ20の端部からそれぞれ突出し、その端部同士がコンクリート連結体22内で重ねられている(重ね継手)。更に、基礎スラブ20及びコンクリート連結体22には上端筋36、下端筋38、及び補強筋30が埋設されている。このコンクリート連結体22によって、隣接する基礎スラブ20の間の目地空間28が塞がれており、地盤18からの湧水が、基礎スラブ20の支持面20Aへ浸水しないように止水されている。
【0039】
なお、隣接する基礎スラブ20の端部から突出する継手筋34は重ね継手に限らず、継手筋34の端部同士の間に隙間を設ける空き重ね継手としても良いし、継手筋34の端部に、それぞれに添え筋を重ねる添え継手としても良い。更に、継手筋34の端部同士を機械式継手等で接続しても良い。
【0040】
コンクリート連結体22の下には、当該コンクリート連結体22に沿って延びる排水溝40が設けられている。排水溝40は地盤18を溝状に掘削して形成され、内部に骨材42が敷き詰められている。この排水溝40によって、コンクリート連結体22を構築する前に(図3(A)参照)、目地空間28に溜まる雨水や湧水が排水される。また、骨材42は雨水等を通す一方で、粘性を有するコンクリート等が通らないように敷き詰められており、コンクリート連結体22の型枠として機能するようになっている。なお、骨材42としては、砂利、砕砂、砕石、人工骨材等を用いることができる。また、排水溝40は前述した釜場に接続されている。
【0041】
次に、第1実施形態に係る基礎構造の施工方法の例について説明する。
【0042】
図2に示されるように、型枠等によって区画されたコンクリート打設領域に上端筋36、下端筋38、補強筋30、及び継手筋34等を配筋した後に、コンクリートを打設して複数の基礎スラブ20を構築する。なお、排水溝40等は予め形成しておく。その後、隣接する基礎スラブ20の間に形成された目地空間28の下部にコンクリートを打設して、コンクリート連結体22を構築する。このコンクリート連結体22によって、隣接する基礎スラブ20がせん断力等の応力を伝達可能に連結される。
【0043】
次に、第1実施形態に係る基礎構造の作用について説明する。
【0044】
隣接する基礎スラブ20がコンクリート連結体22によってせん断力等の応力を伝達可能に連結されている。従って、上部構造体14の鉛直荷重が基礎スラブ20に分散して伝達されるため、特定の基礎スラブ20に対する集中荷重が低減される。よって、基礎スラブ20のひび割れ、亀裂等が抑制される。
【0045】
また、地震や不同沈下等の地盤変形が発生すると、図2に示されるように、基礎構造12にX方向やY方向等の外力が作用し、隣接する基礎スラブ20が水平方向へ相対変位する。若しくは、図3(B)に示される矢印のように、隣接する一方の基礎スラブ20が沈下して、隣接する基礎スラブ20の間に上下方向の相対変位が生じる。これにより、基礎スラブ20にせん断力、曲げモーメント等の応力が発生する。この応力は、コンクリート連結体22を介して隣接する基礎スラブ20の間で伝達される。即ち、外力に対して、隣接する基礎スラブ20が協同して抵抗する。従って、特定の基礎スラブ20に対する集中荷重が低減され、基礎スラブ20のひび割れ、亀裂等が抑制される。
【0046】
更に、コンクリート連結体22の厚さは、基礎スラブ20よりも小さくされている。即ち、コンクリート連結体22は基礎スラブ20よりも剛性及び破壊耐力が小さくされており、基礎スラブ20に先行して、コンクリート連結体22に破壊が生じるよう構成されている。従って、想定外の大地震(例えば、再現期間500年の極めて稀に生じる地震動を超えるような地震動)等によって、地盤変形が過大になったときに、基礎スラブ20に先行してコンクリート連結体22に破壊が生じる。これにより、隣接する基礎スラブ20の相対変位量が大きくなり、地盤変形が吸収される。従って、基礎スラブ20のひび割れ、亀裂だけでなく、基礎スラブ20の大規模な破壊が抑制される。
なお、施工中における地盤変形は目地空間28によって吸収される。従って、施工中及び施工後の基礎スラブ20のひび割れ、亀裂、大規模な破壊等が抑制される。
【0047】
このように基礎構造12では、剛性及び破壊耐力を意図的に小さくしたコンクリート連結体22で隣接する基礎スラブ20を連結することにより、想定内の地盤変形に対しては各基礎スラブ20が一体として抵抗する一方で、想定外の地盤変形に対しては、基礎スラブ20に先行してコンクリート連結体22が破壊され、地盤変形が吸収される。従って、基礎スラブ20の大規模な破壊が抑制されるため、上部構造体14を支持する免震装置16の破損、損傷が抑制される。
【0048】
また、免震装置16の水平変形によって、隣接する基礎スラブ20の相対変位が吸収されるため、隣接する基礎スラブ20の相対変位に上部構造体14が追従しない。従って、コンクリート連結体22が破壊され、隣接する基礎スラブ20の相対変位量が大きくなっても、上部構造体14に作用する外力が大きくならない。よって、上部構造体14の破損、損傷が抑制される。
【0049】
特に、本実施形態に係る基礎構造12は、大面積(平面面積)の基礎スラブに有効である。基礎スラブは、面積の増加に伴って発生する地震力が大きくなり、また、基礎スラブの端部間で、地震波の到達時間の差が大きくなるため、基礎スラブ20に破壊が生じ易くなるためである。
【0050】
上記に加え、隣接する基礎スラブ20の間に形成された目地空間28が、コンクリート連結体22で埋められているため、地盤18から基礎スラブ20の支持面20Aへ湧水等の浸水が抑制される。従って、従来のエキスパンジョン・ジョイントと比較して、止水性が向上する。
【0051】
更に、コンクリート連結体22の厚みを基礎スラブ20よりも小さくするという単純な構成で、コンクリート連結体22の剛性及び破壊耐力を基礎スラブ20よりも小さくしている。従って、基礎構造12の施工性が向上する。また、コンクリート連結体22及び基礎スラブ20を同じコンクリートで構成できるため、コスト削減を図ることができる。更に、コンクリート連結体22の上面22Aと基礎スラブ20の支持面20Aとの間に段差によって形成された溝44を排水溝として流用することができる。
【0052】
なお、基礎スラブ20の乾燥収縮によるひび割れ対策として、基礎スラブ20を充分に乾燥収縮させた後に、目地空間28にコンクリートを打設してコンクリート連結体22を構築しても良いし、目地空間28の側壁(基礎スラブ20の端面)に水和反応活性剤等を塗布し、基礎スラブ20とコンクリート連結体22との継ぎ目に発生するひび割れや亀裂を抑制しても良い。
【0053】
次に、第1実施形態に係るコンクリート連結体の変形例について説明する。
【0054】
第1実施形態では、コンクリート連結体22の厚みによってコンクリート連結体22の剛性及び破壊耐力を基礎スラブ20よりも小さくしたが、これに限らない。
【0055】
例えば、図4(A)に示されるように、コンクリート連結体32を基礎スラブ20よりも強度が小さいコンクリートで構成することにより、コンクリート連結体32の剛性及び破壊耐力を基礎スラブ20よりも小さくしても良い。例えば、基礎スラブ20が普通コンクリートの場合、コンクリート連結体22を軽量コンクリート等の強度が小さいコンクリートで構成する。また、基礎スラブ20が高強度コンクリートや繊維補強コンクリートの場合、コンクリート連結体22を普通コンクリートや軽量コンクリート等で構成する。
【0056】
図4(A)に示される構成では、コンクリート連結体32の厚みと基礎スラブ20の厚みを同一にすることができ、コンクリート連結体32の上面32Aと基礎スラブ20の支持面20Aとの間の段差を無くすことができる。
【0057】
なお、コンクリート連結体22の補強量(上端筋36、下端筋38、補強筋30等)を基礎スラブ20よりも少なくすることにより、コンクリート連結体22の剛性を基礎スラブ20よりも小さくしても良い。
【0058】
更に、図4(B)に示されるように、コンクリート連結体52の内部にボイド孔54を形成することにより、コンクリート連結体52の剛性及び破壊耐力を基礎スラブ20よりも小さくしても良い。この場合、コンクリート連結体32及び基礎スラブ20のコンクリート強度が同一であっても、コンクリート連結体52の断面積が小さくなるため、その剛性及び耐力を基礎スラブ20よりも小さくすることができる。なお、図4(A)及び図4(B)では、排水溝40を省略している。
【0059】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0060】
図5(A)に示されるように、第2実施形態に係る基礎構造60では、第1実施形態に係るコンクリート連結体22に替えて、鋼連結体(連結体)62を用いている。鋼連結体62はH形鋼で、ウェブ62Aと、ウェブ62Aの端部に設けられたフランジ62Bと、を備えている。鋼連結体62は、普通鋼(例えば、SM490、SS400等)や低降伏点鋼(例えば、LY225等)等が用いられる。
【0061】
鋼連結体62は、フランジ62Bの外面を基礎スラブ20の端面に重ねた状態で、隣接する基礎スラブ20の間に配置されている。フランジ62Bの外面には、基礎スラブ20に埋設されるせん断力伝達部としてのスタッド64が設けられている。このスタッド64によってフランジ62Bが基礎スラブ20に固定され、隣接する基礎スラブ20が鋼連結体62によりせん断力等の応力を伝達可能に連結されている。
【0062】
なお、せん断力伝達部としては、スタッド64の他に異形鉄筋やエポキシ樹脂等の接着剤を用いても良い。また、鋼連結体62には、防錆処理を適宜施すことが望ましい。
【0063】
鋼連結体62のウェブ62Aの板厚や材料は、その剛性が基礎スラブ20よりも小さくなるように設定されている。また、ウェブ62Aによって、隣接する基礎スラブ20の間の目地空間28が上下方向(鋼板の面外方向)に仕切られ、地盤18からの湧水が基礎スラブ20の支持面20Aへ浸水しないように止水されている。なお、ウェブ62Aの上面とフランジ62Bの内面で囲まれた溝状の空間66(ウェブ62Aで仕切られた目地空間28の上部28A)は、基礎スラブ20の支持面20Aに溜まる雨水等を排水する排水溝として利用可能である。
【0064】
なお、鋼連結体62は、ウェブ62Aの剛性が基礎スラブ20よりも小さければ良く、ウェブ62Aとフランジ62Bとを異なる鋼材で構成しても良い。例えば、ウェブ62Aを低降伏点鋼で構成し、フランジ62Bを普通鋼で構成しても良い。
【0065】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0066】
隣接する基礎スラブ20が鋼連結体62によってせん断力等の応力を伝達可能に連結されている。従って、上部構造体14の鉛直荷重が基礎スラブ20に分散して伝達されるため、特定の基礎スラブ20に対する集中荷重が低減される。また、地震等の外力に対して、各基礎スラブ20が協同して抵抗する。従って、特定の基礎スラブ20に対する集中荷重が低減される。よって、基礎スラブ20のひび割れ、亀裂等が抑制される。
【0067】
また、鋼連結体62のウェブ62Aの剛性及び破壊耐力が、基礎スラブ20よりも小さくなっている。即ち、基礎スラブ20に先行して、ウェブ62Aが変形又は破断するように構成されている。従って、想定外の大地震(例えば、再現期間500年の極めて稀に生じる地震動を超えるような地震動)等によって、地盤変形が過大になったときに、基礎スラブ20に先行してウェブ62Aが変形又は破断する。これにより、隣接する基礎スラブ20の相対変位量が大きくなり、地盤変形が吸収される。従って、基礎スラブ20のひび割れ、亀裂だけでなく、基礎スラブ20の大規模な破壊が抑制される。
【0068】
このように基礎構造60では、ウェブ62Aの剛性及び破断耐力を意図的に小さくした鋼連結体62で、隣接する基礎スラブ20を連結することにより、想定内の地盤変形に対しては各基礎スラブ20が一体として抵抗する一方で、想定外の地盤変形に対しては、基礎スラブ20に先行して鋼連結体62のウェブ62Aが変形又は破断され、地盤変形が吸収される。従って、基礎スラブ20の大規模な破壊が抑制されるため、上部構造体14を支持する免震装置16の破損、損傷が抑制される。
【0069】
また、第1実施形態で説明したように、免震装置16の水平変形によって、隣接する基礎スラブ20の相対変位が吸収されるため、この相対変位に上部構造体14が追従しない。従って、鋼連結体62のウェブ62Aが変形又は破断され、隣接する基礎スラブ20の相対変位量が大きくなっても、上部構造体14に作用する外力は大きくならない。従って、上部構造体14の破損、損傷が抑制される。
【0070】
更に、隣接する基礎スラブ20の間の目地空間28が、鋼板72によって上下方向に仕切られている。これにより、地盤18から基礎スラブ20の支持面20Aへ湧水等の浸水が抑制される。従って、従来のエキスパンジョン・ジョイントと比較して、止水性が向上する。
【0071】
更にまた、ウェブ62Aを低降伏点鋼等で構成することにより、履歴変形によるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、鋼連結体62としてH形鋼を用いたがこれに限らない。例えば、図5(B)に示されるように、基礎スラブ20よりも剛性が小さい鋼板(鋼連結体、連結体)72で、隣接する基礎スラブ20を連結しても良い。
【0073】
鋼板72は、その下面に設けられたせん断力伝達部としてのスタッド64を基礎スラブ20に埋設することにより、基礎スラブ20に固定されている。この鋼板72によって、隣接する基礎スラブ20の間の目地空間28(空間)が閉じられ、地盤18から基礎スラブ20の支持面20Aへ湧水等の浸水が抑制される。
【0074】
なお、上記第1、第2実施形態では、基礎構造12の上方に一つの上部構造体14を構築したが、これに限らない。例えば、図6に示されるように、基礎構造12の上に複数(図6では、3棟)の上部構造体74を構築しても良い。この場合、隣接する上部構造体74の間には、上部構造体74を支持する免震装置16が存在せず、基礎構造12が負担する鉛直荷重が小さくなる。従って、隣接する上部構造体74の間に、コンクリート連結体22(又は鋼連結体62)を位置させることで、コンクリート連結体22(又は鋼連結体62)の必要強度又は必要破壊耐力を小さくすることができる。更に、連結体の上方に上部構造体74が存在しないため、コンクリート連結体22(又は鋼連結体62)の施工が容易となる。
【0075】
なお、図6に示す構成では、上部構造体14が隣接する基礎スラブ20にまたがっていないため、コンクリート連結体22が破壊され、隣接する基礎スラブ20の相対変位量が大きくなっても、免震装置16の有無に関わらず、上部構造体14に作用する外力は大きくならない。即ち、図6に示す構成では、免震装置16を省略し、上部構造体14を基礎スラブ20で直接支持することも可能である。
【0076】
また、第1、第2実施形態では、基礎スラブ20を例に説明したがこれに限らず、マットスラブや基礎梁でも良い。また、第1、第2実施形態は、べた基礎、布基礎、杭基礎等の種々の基礎構造に適用することができる。
【0077】
以上、本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2の実施形態を組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 免震構造物
12 基礎構造
14 上部構造体
16 免震装置
18 地盤
20 基礎スラブ(コンクリート基礎)
20A 支持面
22 コンクリート連結体(連結体)
28 目地空間(空間)
32 コンクリート連結体(連結体)
40 排水溝
42 骨材
52 コンクリート連結体(連結体)
62 鋼連結体(連結体)
72 鋼板(鋼連結体、連結体)
74 上部構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に構築され、上部構造体を支持する複数のコンクリート基礎と、
隣接する前記コンクリート基礎を連結すると共に、前記地盤から該コンクリート基礎の支持面への浸水を阻止し、該コンクリート基礎よりも剛性が小さい連結体と、
を備える基礎構造。
【請求項2】
前記連結体が、隣接する前記コンクリート基礎の間を塞ぐコンクリート連結体である請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記コンクリート連結体の厚みが、前記コンクリート基礎よりも薄い請求項2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記コンクリート連結体の下に、骨材を敷き詰めた排水溝を設けた請求項2又は請求項3に記載の基礎構造。
【請求項5】
複数の前記上部構造体が、前記コンクリート基礎の上に構築され、
前記連結体が、隣接する前記上部構造体の間に位置している請求項1〜4の何れか1項に記載の基礎構造。
【請求項6】
前記連結体が、隣接する前記コンクリート基礎を連結し、該コンクリート基礎の間の空間を仕切る、又は閉じる鋼連結体である請求項1に記載の基礎構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の基礎構造と、
前記基礎構造の上に構築された上部構造体と、
前記上部構造体と前記コンクリート基礎との間に設けられ、該上部構造体を支持する免震装置と、
を備える免震構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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