説明

堆肥原料の通気性測定装置及び通気性測定方法、並びに該方法を用いた堆肥の製造方法

【課題】堆積された堆肥原料から堆肥を製造する際に、堆肥原料の通気性を直接的に測定し、堆積された堆肥原料の通気性を最適化可能な堆肥原料の通気性測定装置及び通気性測定方法、並びに該方法を用いた堆肥の製造方法を提供する。
【解決手段】堆肥原料Cの通気性を測定する通気性測定装置1を、中空の容器5と、容器5の内部に配置した通気性のある第1の仕切り材15と、容器5の内部に第1の仕切り材15よりも高い位置に配置した通気性のある第2の仕切り材16と、第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16の間に形成されて堆肥原料Cを充填可能な充填空間20の上にある上側空間21及び下にある下側空間22の少なくともいずれか一方の空間の内圧を調整する内圧調整手段7と、上側空間21及び下側空間22の内圧差を測定する差圧計6と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば牛、豚、鶏等の家畜の糞尿、人の糞尿、生ごみ又は下水汚泥等の堆肥原料から堆肥を製造する際に、堆肥原料の通気性を測定する堆肥原料の通気性測定装置及び通気性測定方法、並びに該方法を用いた堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば牛、豚又は鶏等の家畜の糞尿、人の糞尿、生ごみ若しくは下水汚泥等は、堆肥原料として堆肥化されて有効利用されている。この堆肥化は、例えば好気性微生物等の微生物に堆肥原料を分解させることによって行われる。このため、適切な堆肥化を行うためには、微生物が適正に分解活動できるように、種々の環境条件を整える必要がある。一般に、微生物が堆肥原料を分解するために必要な環境条件としては、栄養源、水分、空気(酸素)、微生物の数、温度及び堆肥化期間等があげられる。
【0003】
上述した環境条件のうちで、空気(酸素)と水分は非常に密接に関係している。具体的には、堆肥原料の水分量が多いと通気性が悪くなる。このため、堆肥原料の空気の量(即ち、通気性)の調整は、一般に、堆肥原料の水分を調整することによって行われる。
【0004】
特許文献1には、赤外線加熱乾燥測定方式により堆肥原料の含水率を測定し、その測定結果に基づいてオガクズ、モミガラ等、吸水性のある副資材を堆肥原料に混合して水分調整を行うことによって通気性を確保する堆肥化技術が開示されている。この赤外線加熱乾燥測定方式による含水率測定では、堆肥原料から所定量のサンプルを抽出し、赤外線加熱により乾燥させてその水分を蒸発させ、乾燥前後の重量差を測定することによって堆肥原料の含水率を求めている。
【0005】
含水率の測定には、水の誘電率が堆肥原料の誘電率より著しく高い値であることを利用したTDR(Time Domain Reflectometry)測定方式が用いられる場合もある。このTDR測定方式では、堆肥原料中に電磁波を流し、電磁波の反射時間を測定することで堆肥原料の誘電率を評価し、堆肥原料の含水率を求める。
【0006】
【特許文献1】特開平9−268087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の堆肥化技術では、堆肥原料の通気性を堆肥原料の水分調整を介して間接的に調整しているため、通気性を適切に調整することが非常に難しい。そのうえ、堆肥原料の水分調整をする際に、堆肥原料の通気性が良好であるとみなせる目安の含水率は、堆肥原料に混合する副資材の種類、堆肥原料の種類及び堆肥原料の処理手順等の各種の条件によって変わってしまう。例えば、副資材としてオガクズ、モミガラを混合する場合に通気性が良好であるとみなせる目安の含水率は、堆肥原料が豚糞なら62%以下、牛糞なら72%以下であると知られている。このように、目安の含水率の値が各種の条件によって変動してしまうことも、堆肥原料の通気性の正確な調整を困難にしている。
【0008】
さらに、上記特許文献1の堆肥化技術では、含水率を測定する際に測定誤差が発生する可能性が高いため、堆肥原料の水分調整自体が適切に行えず、堆肥原料の通気性を最適化できないという問題が存在する。例えば、赤外線加熱乾燥測定方式により含水率を測定する場合には、堆肥原料全体の量に対してサンプルの量が少ないために測定誤差が発生し易い。また、TDR測定方式により含水率を測定した場合には、測定対象である堆肥原料の内部に生じる空隙、堆肥原料を構成する粒子の大きさ及び密度に起因する測定誤差が非常に大きい。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、堆積された堆肥原料から堆肥を製造する際に、堆肥原料の通気性を直接的に測定し、堆積された堆肥原料の通気性を最適化可能な堆肥原料の通気性測定装置及び通気性測定方法、並びに該方法を用いた堆肥の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明によれば、堆肥原料から堆肥を製造する際に堆肥原料の通気性を測定する通気性測定装置であって、中空の容器と、前記容器の内部に配置した通気性のある第1の仕切り材と、前記容器の内部に前記第1の仕切り材よりも高い位置に配置した通気性のある第2の仕切り材と、前記第1の仕切り材及び前記第2の仕切り材の間に形成されて堆肥原料を充填可能な充填空間の上にある上側空間及び下にある下側空間の少なくともいずれか一方の空間の内圧を調整する内圧調整手段と、前記上側空間及び前記下側空間の内圧差を測定する差圧計と、を有することを特徴とする、堆肥原料の通気性測定装置が提供される。
【0011】
上記堆肥原料の通気性測定装置において、前記内圧調整手段は、気体の吸気又は排気の少なくともいずれか一方が可能なポンプであってもよい。
【0012】
上記堆肥原料の通気性測定装置において、前記第1の仕切り材又は前記第2の仕切り材の少なくともいずれか一方が金網であってもよい。
【0013】
上記堆肥原料の通気性測定装置において、前記第2の仕切り材が上下方向に平行移動可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、堆肥原料から堆肥を製造する際に堆肥原料の通気性を測定する通気性測定方法であって、測定対象の堆肥原料からその一部をサンプルとして抽出し、所定の密閉空間を上側空間及び下側空間に仕切るように、前記抽出したサンプルを前記所定の密閉空間内に配置し、前記上側空間又は前記下側空間の少なくともいずれか一方の空間の内圧を調整し、前記上側空間及び前記下側空間の内圧差を計測し、その計測結果に基づいて前記測定対象の堆肥原料の通気性を判断することを特徴とする、堆肥原料の通気性測定方法が提供される。
【0015】
上記堆肥原料の通気性測定方法において、前記抽出したサンプルを前記所定の密閉空間内に配置した後、前記配置したサンプルを押圧して圧密することにより前記測定対象の堆肥原料の状態を再現するようにしてもよい。
【0016】
上記堆肥原料の通気性測定方法において、前記上側空間又は前記下側空間のいずれか一方の空間の内圧を調整する際に、前記一方の空間に対して気体の給気又は排気を行うことによって内圧調整するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、上記通気性測定方法によって前記測定対象の堆肥原料の通気性を測定し、その測定結果に基づいて前記測定対象の堆肥原料を堆肥化させる際の条件を調整することを特徴とする、堆肥の製造方法が提供されてもよい。
【0018】
上記堆肥の製造方法において、前記測定対象の堆肥原料を堆肥化させる際の条件は、前記測定対象の堆肥原料の重量、堆積高さ、容積、温度、含水率、混入する副資材の種類、重量、容積、含水率、温度から成る群より選択される1以上の条件であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、堆積された堆肥原料から堆肥を製造する際に、堆肥原料の通気性を直接的に測定することができ、堆積された堆肥原料の通気性をより容易且つより正確に測定することが可能になる。また、従来公知の堆肥化技術のように、堆肥原料の含水量を測定し、その測定結果に基づいた水分調整を行うことで堆肥原料の通気性を調整する場合よりも、堆積された堆肥原料の通気性をより容易且つより正確に最適化することができる。これにより、堆肥原料を適切に堆肥化して良質な堆肥を製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明をする。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る堆肥原料の通気性測定装置1の斜視図である。図2は、通気性測定装置1の正面図である。図1及び図2に示すように、通気性測定装置1は、直方体形状の中空の容器5に差圧計6及びポンプ7を設けた構成を有する。容器5の長手方向は鉛直方向に沿って配置されている。本実施の形態では、容器5の水平方向の断面積が例えば111cmに設定されている。容器5の上面10は着脱可能に構成されており、上面10を取付けて閉じた状態では容器5が密閉され、上面10を取外した状態では容器5が開放されるようになっている。
【0022】
図1に示すように、容器5の内部には、薄板形状の第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16が面を水平にして各々異なる高さに設置されている。第1及び第2の仕切り材15、16はいずれも通気性を有し、その大きさが容器5の水平方向の断面と概ね同じ大きさに設定されている。本実施の形態では、第1及び第2の仕切り材15、16として金網を用いている。なお、第1及び第2の仕切り材15、16として、金網以外に多孔質のシート等、通気性のあるその他の材料を用いてもよい。第1の仕切り材15は、固定具(図示せず)によって固定されている。これに対して、第2の仕切り材16は、第1の仕切り材15よりも高い位置に配置され、鉛直上下方向に平行移動できるようになっている。
【0023】
また、第2の仕切り材16は、容器5の上面10より高い位置に移動させることによって容器5の外に取外すことが可能である。第2の仕切り材16を取外した状態で容器5内の第1の仕切り材15の上に堆肥原料Cを積載し、その後で第2の仕切り材16を容器5内に戻して積載された堆肥原料C上に配置することで、図1に示すように、第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16の間に形成される充填空間20内に堆肥原料Cを充填した状態にすることが可能である。容器5の内部空間11は、このようにして充填空間20内に充填された堆肥原料Cによって、充填空間20の上にある上側空間21及び下にある下側空間22に仕切られている。なお、本実施の形態では、堆肥原料Cとして、例えば牛、豚又は鶏等の家畜の糞尿、人の糞尿、生ごみ若しくは下水汚泥等にオガクズ、オガクズ、モミガラ等、吸水性のある副資材を混入したものを用いている。
【0024】
第2の仕切り材16の上には、図1に示すように、充填空間20内の堆肥原料Cに荷重を負荷することによって押圧して圧密する押圧手段としての重り25を載置可能である。載置された重り25は、充填空間20内に充填された堆肥原料Cの上面全体を第2の仕切り材16を介して押圧して堆肥原料Cを圧密するようになっている。本実施の形態では、重り25として重量の異なる平板形状の重りを複数用いている。これら複数の重り25の中から適宜選択して第2の仕切り材16上に載置することによって、堆肥原料Cに負荷する荷重の大きさを調整できるようになっている。
【0025】
差圧計6は、本体30に2本のコード31、32が接続された構成を有する。本実施の形態では、静電容量式の差圧計6が用いられている。2本のコード31、32の先端には気圧を検出するセンサ35が各々設けられている。コード31は、本体30から容器5の上部側壁まで配設され、その先端にあるセンサ35は容器5の上側空間21内に挿入設置されている。一方、コード32は、本体30から容器5の下部側壁まで配設され、その先端に設けたセンサ35は容器5の下側空間22内に挿入設置されている。本体30は、コード31のセンサ35で検出した上側空間21の気圧の値と、コード32のセンサ35で検出した下側空間22の気圧の値とに基づいて、上側空間21及び下側空間22の内圧差を計測することができるようになっている。
【0026】
内圧調整手段としてのポンプ7は、配管40を介して容器5内の下側空間22に接続されている。このポンプ7は、空気を排気することによって配管40を介して下側空間22内に空気を給気し、下側空間22の内圧を上昇させることが可能である。また、ポンプ7は、空気を吸気することによって配管40を介して下側空間22内から空気を排気し、下側空間22の内圧を低下させることが可能である。ポンプ7は、このようにして気体の吸気又は排気を行うことで下側空間22の内圧を調整することができる。本実施の形態では、ポンプ7としてダイヤフラム式のポンプを用いている。また、配管40には、ポンプ7が容器5内の下側空間22に対して気体の吸排気を行う際に気体の流量を測定する流量計41として面積流量計が設けられている。
【0027】
以上のように構成された通気性測定装置1を用いて実施される本発明の実施の形態に係る通気性測定方法と、この測定方法を用いた堆肥の製造方法について説明する。
【0028】
本実施の形態では、一例として、図3に示す手順で堆肥原料Cを堆肥化して堆肥を製造する場合について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る製造方法の手順を示すフロー図である。図3に示すように、堆肥の製造を開始する(ステップ0)にあたって、まず、堆肥原料Cを堆肥化処理施設内に堆積する(ステップ1)。次に、堆積された堆肥原料Cが適切に堆肥化されるように堆肥化の条件を調整する(ステップ2)。次に、このように調整した条件下で堆積された堆肥原料Cを所定の堆肥化期間だけ堆肥化する(ステップ3)。以上により、堆肥の製造が完了する(ステップ4)。なお、例えば堆肥原料Cを堆肥化処理施設内に堆積する前に、堆積された堆肥原料Cの各種の条件を設定する等、上記手順と異なる手順で堆肥を製造するようにしてもよい。
【0029】
以下、堆肥の製造方法について詳述する。
【0030】
(ステップ1)
本実施の形態では、堆肥原料Cを、堆肥化処理施設として例えば通気型堆肥舎内に堆積する。この通気型堆肥舎は、堆積した堆肥原料Cの下側から空気を供給するように構成されている。なお、堆肥化処理施設としては、例えば単に堆肥原料Cを堆積するだけの堆肥舎、堆積された堆肥原料Cを開放した状態で撹拌するロータリー式堆肥舎又はスクープ式堆肥舎、堆積された堆肥原料Cを密閉した状態で撹拌する縦型堆肥舎又は横型堆肥舎等、通気型堆肥舎以外の任意の堆肥化処理施設を用いてもよい。
【0031】
(ステップ2)
次に、堆積した堆肥原料Cが適切に堆肥化されるように各種の条件を調整する。本実施の形態では、例えば堆積された堆肥原料Cに副資材として混入するオガクズの量を調整する場合について説明する。なお、堆積された堆肥原料Cを堆肥化させる際に調整する条件としては、堆積された堆肥原料Cの重量、堆積高さ、容積、温度、含水率、混入する副資材の種類、重量、容積、含水率、温度から成る群より選択される1以上の条件であってよい。この調整を行う際には、本発明の実施の形態に係る通気性測定方法を用いて堆積した堆肥原料Cの通気性を測定し、その測定結果に基づいて各種の条件を調整する。図4は、本発明の実施の形態に係る通気性測定方法の手順を示すフロー図である。
【0032】
図4に示すように、堆肥原料Cの通気性の測定を開始する(ステップ10)にあたって、まず、測定対象とする堆積された堆肥原料Cからその一部をサンプルSとして抽出する(ステップ11)。抽出したサンプルSを所定の密閉空間としての容器5の内部空間11内に、この内部空間11が上側空間21と下側空間22に仕切られるように配置する(ステップ12)。本実施の形態では、容器5の上面10を取外した後、容器5内の第2の仕切り材16を鉛直方向上側に移動させてこの第2の仕切り材16を容器5の外に取出してから、抽出したサンプルSを容器5内の第1の仕切り材15の上に積載する。
【0033】
この際に、サンプルSとしての堆肥原料Cが第1の仕切り材15の上面を完全に被覆するように、面方向及び高さ方向の両方向において均一に積載する。サンプルSの積載後、第2の仕切り材16をサンプルSの上に戻すことによって、容器5の内部空間11は、第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16の間の充填空間20内に充填されたサンプルSによって仕切られた状態になる。
【0034】
板形状の重り25を第2の仕切り材16の上に載置し、この第2の仕切り材16の上からサンプルSに荷重を負荷することで充填空間20内に充填されたサンプルSを押圧して圧密する。この際に、仕切り材16の上に載置する重り25の個数及び種類を適切に設定し、測定対象とする堆積された堆肥原料Cの状態を再現する(ステップ13)。本実施の形態では、通気型堆肥舎内に堆積された堆肥原料Cの圧密状態を再現することによってその堆積高さを仮想的に再現する。なお、仕切り材16の上に載置する重り25の個数及び種類を適切に設定することによって、堆積された堆肥原料Cの堆積高さ以外に、例えば原料の種類や水分等のその他の条件を仮想的に再現するようにしてもよい。堆肥原料Cの圧密状態を再現した後には、仕切り材16の上に載置された重り25を容器5の外に取除いておく。
【0035】
容器5の上面10を閉じ、容器5の内部空間11(即ち、上側空間21、下側空間22及び充填空間20)を密閉する。ポンプ7によって、配管40を介して容器5内の下側空間22に対する空気の給気を行い、下側空間22内の内圧を上昇させる(ステップ14)。この場合には、下側空間22の内圧を上昇させるように調整する場合について説明するが、下側空間22の内圧を低下させるように調整してもよい。本実施の形態では、下側空間22の内圧調整する際には、流量計41の値に基づいてポンプ7が排気する空気の流量を調整して内圧調整を行っている。下側空間22の内圧が調整された状態で、差圧計6を用いて上側空間21及び下側空間22の内圧差を計測する(ステップ15)。
【0036】
上記ステップ15で得られた計測結果から堆積された堆肥原料Cの通気性を判断する(ステップ16)。堆積された堆肥原料Cの通気性は、以下のように定性的に判断することができる。下側空間22の内圧を上昇させる前には上側空間21及び下側空間22の内圧は概ね同じ内圧(大気圧)であるため、下側空間22の内圧を上昇させた後に測定された両空間(21、22)の内圧差が大きい場合には、上側空間21及び下側空間22の間に充填されたサンプルSの通気性が低いと判断できる。これにより、堆積された堆肥原料Cの通気性が低いということが分かる。
【0037】
これに対して、下側空間22の内圧を上昇させた後に測定された両空間(21、22)の内圧差が小さい場合には、上側空間21及び下側空間22の間に充填されたサンプルSの通気性が高く、堆積された堆肥原料Cの通気性が高いと判断できる。また、内圧調整する際の流量計41で計測される値と、差圧計6から得られる上側空間21及び下側空間22の内圧差との関係を定量的に解析することによって、堆積された堆肥原料Cの通気性を定量的に判断することも可能である。この場合に、流量計41で計測される値以外に、例えば下側空間22の内圧等、その他の値と上側空間21及び下側空間22の内圧差との関係を定量的に解析するようにしてもよい。
【0038】
以上の手順(上記ステップ10〜16)により堆積された堆肥原料Cの通気性の測定が完了する(ステップ17)。本実施の形態では、測定完了後に、次の測定に備えてサンプルSを除去し、上側空間21及び下側空間22の内圧を大気圧に戻す作業を行う。
【0039】
上述のようにして得られた通気性の測定結果に基づいて、堆積された堆肥原料Cに混入するオガクズの量を調整する。例えば堆積された堆肥原料Cの通気性が低いと判断された場合には混入するオガクズの量を増減する等して調整し、その後、通気性測定方法(即ち、上記ステップ10〜17)を再度実行して堆積された堆肥原料Cの通気性を再測定する。以下同様にして、堆積された堆肥原料Cの通気性が高いと判断されるまで、各種の条件の調整(この場合には、オガクズの量の調整)と、通気性の測定を繰返す。本実施の形態では、下側空間22の内圧を所定値に内圧調整した際に、上側空間21及び下側空間22の内圧差が所定の許容値以下になるように設定することで堆肥原料Cの通気性を最適化する。
【0040】
(ステップ3)
次に、堆積された堆肥原料Cを上述したように調整した条件下で所定の堆肥化期間だけ堆肥化する。本実施の形態では、堆肥化期間を例えば2ヶ月に設定している。堆肥期間は、例えば堆肥原料Cとして家畜糞のみを用いる場合、作物収穫残渣との混合物を用いる場合、又は木質物との混合物を用いる場合等、堆肥原料Cの種類、堆肥化方式等によって任意の適切な期間を設定するようにしてもよい。
【0041】
(ステップ4)
以上により、堆肥原料Cからの堆肥の製造が完了する。
【0042】
以上の実施の形態によれば、堆積された堆肥原料Cから堆肥を製造する際に、容器5内の上側空間21及び下側空間22の間に形成される充填空間20内に堆肥原料C(サンプルS)を充填し、両空間(21、22)の内圧差から堆肥原料Cの通気性を直接的に測定するようにしたことによって、堆積された堆肥原料Cの通気性を容易且つ正確に測定することができる。特に、充填空間20内に充填する堆肥原料C(サンプルS)を重り25を用いて押圧して圧密することによって、堆積された堆肥原料Cが自重で圧密されている状態を再現することができ、測定対象である堆積された堆肥原料Cの通気性をより正確に測定することができる。
【0043】
さらに、上述のようにして得られた堆肥原料Cの通気性の正確な測定結果に基づいて、堆肥原料Cを堆肥化させる際の条件を調整するようにしたことによって、堆肥原料Cを堆肥化させる際の条件をより容易且つより正確に最適化することが可能になる。これにより、堆積された堆肥原料Cを適切に堆肥化して良質な堆肥を製造することが可能になる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
上述した実施形態においては、中空の容器5が直方体形状である場合について説明したが、容器5は例えば円筒形状、三角柱形状等の任意の形状であってよい。
【0046】
上述した実施形態においては、中空の容器5の断面積が例えば111cmに設定されている場合について説明したが、容器5の断面積及び高さ等、その寸法は任意に設定されてもよい。
【0047】
上述した実施形態においては、第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16が水平に配置されている場合について説明したが、第1の仕切り材15及び第2の仕切り材16は、いずれか一方又は両方が略水平に配置されていてもよい。
【0048】
上述した実施形態においては、第1の仕切り材15が固定され、第2の仕切り材16が鉛直上下方向に平行移動できる場合について説明したが、第2の仕切り材16が固定され、第1の仕切り材15が移動可能に構成されていてもよい。また、第1及び第2の仕切り材15、16が両方共に固定されていてもよいし、両方共に移動可能に構成されていてもよい。さらに、移動方向も任意に設定されていてよい。
【0049】
上述した実施形態においては、押圧手段として平板形状の重り25を用いる場合について説明したが、重りの形状は例えば円筒形状等の任意の形状であってよい。また、押圧手段として重り25以外の装置を用いるようにしてもよい。
【0050】
上述した実施形態においては、差圧計6として静電容量式の差圧計が用いられている場合について説明したが、差圧計6は静電容量式以外の差圧計が用いられてもよい。
【0051】
上述した実施形態においては、下側空間22の内圧を調整する内圧調整手段として気体の吸気又は排気の両方を行うことが可能であるダイヤフラム式のポンプが用いられている場合について説明したが、内圧調整手段としてダイヤフラム式ポンプ以外のポンプが用いられてもよいし、気体の吸気又は排気のいずれか一方だけが可能なポンプが用いられてもよい。さらに、内圧調整手段として、ポンプ以外の装置が用いられてもよい。
【0052】
上述した実施形態においては、内圧調整手段を用いて下側空間22の内圧が調整されている場合について説明したが、内圧調整手段を用いて上側空間21の内圧を調整するようにしてもよいし、上側空間21及び下側空間22の両方の空間の内圧を調整するようにしてもよい。
【0053】
上述した実施形態においては、堆積された堆肥原料Cの通気性を測定する際に、下側空間22の内圧を調整する場合について説明したが、下側空間22ではなく上側空間21の内圧を調整して堆積された堆肥原料Cの通気性を測定するようにしてもよい。
【0054】
上述した実施形態においては、測定対象とする堆積された堆肥原料Cの状態を再現した後に仕切り材16の上に載置された重り25を容器5の外に取除く場合について説明したが、重り25を仕切り材16の上に載置して荷重が負荷された状態を保持したまま、通気性測定方法の残りの手順を実行するようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態においては、押圧手段としての重り25を用いて堆積された堆肥原料Cの状態を再現する場合について説明したが、堆肥原料Cを堆積せずにサンプルSだけを作成し、堆肥原料Cが堆積された状態を仮想してその通気性を測定するようにしてもよい。また、その測定結果に基づいて堆積された堆肥原料Cを堆肥化させる際の最適な各種の条件を求め、この求めた条件に基づいて堆肥を製造するようにしてもよい。なお、求める各種の条件として、堆積された堆肥原料Cの重量、堆積高さ、容積、温度、含水率、混入する副資材の種類、重量、容積、含水率、温度から成る群より選択される1以上の条件であってもよい。
【実施例】
【0056】
図1に示す本発明の実施の形態に係る通気性測定装置を用いて本発明を検証する。以下に示すように、本発明の通気性測定装置を用いて乳牛糞尿混合物(含水率88%)にオガクズ、モミガラを副資材として混合した堆肥原料を堆肥化する際の最適な条件を求めてみた。
【0057】
図5は、測定に用いた通気性測定装置が備える容器、ポンプ、差圧計及び流量計の性能を示す図である。図6に示すように、この通気性測定装置を用いて堆肥原料のサンプル1〜3(いずれも含水率75%)の圧密度を変更することにより、堆肥原料を堆肥化させる際の条件の一例として堆積高さの値を変更した。具体的に説明すると、重りを用いてサンプル1〜3に27.5〜165.7Nの荷重を負荷し、その圧密状態を変化させることで堆積された堆肥原料の堆積高さを仮想的に再現した。
【0058】
図7は、図6に示す各サンプル1〜3の通気性を種々の通気量(50、100、150(mL/min))について測定した結果を示す図である。図8は、図7に示す結果を、横軸がポンプから容器の下側空間内に供給する空気の流量(mL/min)であり且つ縦軸が容器の上側空間及び下側空間の内圧差(Pa)であるグラフにプロットした図である。
【0059】
図7及び図8に示すように、堆積された堆肥原料の堆積高さを2.0m以下に設定した場合(サンプル1、2)に比べ、堆積高さを2.0mに設定した場合(サンプル3)には、容器5の上側空間21及び下側空間22の内圧差が著しく大きくなっている。これは、堆積高さを2.0mに設定した場合には、堆肥原料Cの通気性が著しく低くなることを示しており、堆肥原料Cの堆積高さとしては、2.0m未満の値を設定すると、堆肥原料Cの通気性を最適化できると判断することができる。このようにして本発明によれば、堆肥原料Cの堆積高さを2.0m未満の値に設定することで、堆肥原料Cの通気性を最適化し、良質の堆肥を製造することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば牛、豚、鶏等の家畜の糞尿、人の糞尿、生ごみ又は下水汚泥等の堆肥原料から堆肥を製造する際に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る堆肥原料の通気性測定装置1の斜視図である。
【図2】通気性測定装置1の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る製造方法の手順を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る通気性測定方法の手順を示すフロー図である。
【図5】測定に用いた通気性測定装置が備える容器、ポンプ、差圧計及び流量計の性能を示す図である。
【図6】図1に示す通気性測定装置を用いて堆肥原料のサンプル1〜3の圧密度を変更することにより、堆肥原料を堆肥化させる際の条件の一例として堆積高さの値を変更した結果を示す図である。
【図7】図6に示す各サンプル1〜3の通気性を種々の通気量について測定した結果を示す図である。
【図8】図7に示す結果を、横軸がポンプから容器の下側空間内に供給する空気の流量(mL/min)であり且つ縦軸が容器の上側空間及び下側空間の内圧差(Pa)であるグラフにプロットした図である。
【符号の説明】
【0062】
1 堆肥原料の通気性測定装置
5 容器
6 差圧計
7 ポンプ
10 上面
15 第1の仕切り材
16 第2の仕切り材
20 充填空間
21 上側空間
22 下側空間
25 重り
30 差圧計の本体
31、32 コード
35 センサ
40 配管
41 流量計
C 堆肥原料
S サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥原料から堆肥を製造する際に堆肥原料の通気性を測定する通気性測定装置であって、
中空の容器と、
前記容器の内部に配置した通気性のある第1の仕切り材と、
前記容器の内部に前記第1の仕切り材よりも高い位置に配置した通気性のある第2の仕切り材と、
前記第1の仕切り材及び前記第2の仕切り材の間に形成されて堆肥原料を充填可能な充填空間の上にある上側空間及び下にある下側空間の少なくともいずれか一方の空間の内圧を調整する内圧調整手段と、
前記上側空間及び前記下側空間の内圧差を測定する差圧計と、を有することを特徴とする、堆肥原料の通気性測定装置。
【請求項2】
前記内圧調整手段は、気体の吸気又は排気の少なくともいずれか一方が可能なポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の堆肥原料の通気性測定装置。
【請求項3】
前記第1の仕切り材又は前記第2の仕切り材の少なくともいずれか一方が金網であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の堆肥原料の通気性測定装置。
【請求項4】
前記第2の仕切り材が上下方向に平行移動可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の堆肥原料の通気性測定装置。
【請求項5】
堆肥原料から堆肥を製造する際に堆肥原料の通気性を測定する通気性測定方法であって、
測定対象の堆肥原料からその一部をサンプルとして抽出し、
所定の密閉空間を上側空間及び下側空間に仕切るように、前記抽出したサンプルを前記所定の密閉空間内に配置し、
前記上側空間又は前記下側空間の少なくともいずれか一方の空間の内圧を調整し、
前記上側空間及び前記下側空間の内圧差を計測し、その計測結果に基づいて前記測定対象の堆肥原料の通気性を判断することを特徴とする、堆肥原料の通気性測定方法。
【請求項6】
前記抽出したサンプルを前記所定の密閉空間内に配置した後、前記配置したサンプルを押圧して圧密することにより前記測定対象の堆肥原料の状態を再現することを特徴とする、請求項5に記載の堆肥原料の通気性測定方法。
【請求項7】
前記上側空間又は前記下側空間のいずれか一方の空間の内圧を調整する際に、前記一方の空間に対して気体の給気又は排気を行うことによって内圧調整することを特徴とする、請求項5又は6に記載の堆肥原料の通気性測定方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の通気性測定方法によって前記測定対象の堆肥原料の通気性を測定し、その測定結果に基づいて前記測定対象の堆肥原料を堆肥化させる際の条件を調整することを特徴とする、堆肥の製造方法。
【請求項9】
前記測定対象の堆肥原料を堆肥化させる際の条件は、前記測定対象の堆肥原料の重量、堆積高さ、容積、温度、含水率、混入する副資材の種類、重量、容積、含水率、温度から成る群より選択される1以上の条件であることを特徴とする、請求項8に記載の堆肥の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−50176(P2008−50176A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225055(P2006−225055)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月1日 独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター発行の「平成17年度 事業報告」に発表
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】