説明

塀、塀の構築方法

【課題】発泡スチロール製のパネルによって構成される塀の表面の強度、発泡スチロール製のパネルと基礎との連結強度が十分な塀、塀の構築方法を提供する。
【解決手段】シート11は多数の網目を有するメッシュ材から成り、シート11はパネル7の上面から側面の途中までを覆う頂部シート13と、パネル7の側面の途中から下端部までを覆う下部シート15とから成る。接着剤47をシート11とパネル7との間に塗布し、更に接着剤47をシート11の外面側から塗布して、接着剤47をシート11の網目に入り込ませ、この状態でシート11がパネル7に固定されている。シート11をパネル7の上面から基礎3の上面にまで延ばし、この状態でシート11はパネル7と基礎3に固定されている。即ち、基礎3、パネル7及びシート11は互いに固定されて一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塀、塀の構築方法に係り、特に発泡スチロールパネルを構成材料とする塀、塀の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロールは運搬、加工が容易で、また極めて軽量である等の特質を備えている。この発泡スチロール製のパネルから成る塀は、工期が短く、また地震が発生した場合、人、自動車が衝突した場合においても、被害を最小限にできる高い安全性を具備している。このため、発泡スチロール製の塀はコンクリートブロック製の塀に代わり採用されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡スチロール製の塀は上記のような長所を有する反面、コンクリートブロック製の塀に比べると強度が小さく、表面が凹み易いという短所を有している。
特許文献1に記載された塀では、発泡スチロール製のパネル表面にモルタルを塗布しているが、モルタルを厚くし過ぎると剥離し易くなるため、パネルの保護には不十分である。このため、塀表面に比較的小さな衝撃が加わっただけで、モルタルが剥離して、発泡スチロール製のパネルが凹んでしまうおそれがある。
【0005】
また、従来の塀では、基礎に埋設される橋絡バーを発泡スチロール製のパネルの底部間に亘って位置させて、連結支柱管の抜け止めとする等して、塀の強度を上げるようにしているが、発泡スチロール製のパネル自体が強度の大きなものではないため、パネルと基礎との連結が十分な強度をもって為されているとは言い難い。
従って、従来の塀は、塀の表面強度と、発泡スチロール製のパネルと基礎との連結強度が十分ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に着目して為されたものであり、発泡スチロール製のパネルによって構成される塀の表面強度が高く、しかも発泡スチロール製のパネルと基礎との連結強度が高い塀、塀の構築方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、基礎に固定された支持部材に発泡スチロール製のパネルを支持させ、前記パネルに多数の網目を有するメッシュ材から成るシートを接着して補強する塀の構築方法において、前記シートを前記パネルの上面から前記基礎の上面にまで延ばして、基礎に固定することを特徴とする塀の構築方法である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した塀の構築方法において、シートはパネルの上面から側面の途中までを覆う頂部シートと前記パネルの側面の途中から下端部までを覆い、且つ基礎の上面にまで延びる下部シートとから構成され、前記頂部シートと前記下部シートを前記パネルの途中部分において重ね合わせることを特徴とする塀の構築方法である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した塀の構築方法において、複数のパネルを、互いの端面どうしを接合して隣接して備え、シートを隣接するパネルの接合部において重ね合わせることを特徴とする塀の構築方法である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した塀の構築方法において、シートを接着する接着剤を前記シートとパネルとの間に塗布し、更に前記接着剤を前記シートの外面側から塗布して、前記接着剤を前記シートの網目に入り込ませた状態で前記シートを前記パネルに固定することを特徴とする塀の構築方法である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかの塀の構築方法によって構築されたことを特徴とする塀である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塀、塀の構築方法によれば、発泡スチロール製のパネルによって構成される塀に高い表面強度を持たせることができる。更に、発泡スチロール製のパネルと基礎とを高い強度をもって連結することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る塀の斜視図である。
【図2】図1の塀の断面図である。
【図3】地面に形成した穴の斜視図である。
【図4】基礎の側面図である。
【図5】基礎の上面にラインやポイントを付ける作業を説明するための図である。
【図6】基礎にアンカーボルトを固定する様子を示す図である。
【図7】パネルの斜視図である。
【図8】パネルを基礎に固定する作業を説明するための図である。
【図9】パネルの貫通穴に接着剤を流し込む様子を示す図である。
【図10】支持棒等でパネルを支持している状態を示す図である。
【図11】頂部シートをパネルに固定する作業を説明するための図である。
【図12】下部シートをパネルに固定する作業を説明するための図である。
【図13】頂部シートと下部シートをパネルに固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る塀1、塀1の構築方法を図面にしたがって説明する。
図1、図2に示すようにコンクリート製の基礎3には支持部材としてのアンカーボルト5が固定されており、このアンカーボルト5が発泡スチロール製のパネル7の貫通穴9に挿入されている。アンカーボルト5によってパネル7が支持されており、この状態でパネル7が基礎3に固定されている。また、パネル7にはシート11が接着され、このシート11はパネル7の全体を覆う状態に備えられている。シート11は基礎3の上面にまで延びていて基礎3に固定されている。
【0015】
図7に示すようにパネル7は、例えば幅180cm、高さ90cm、厚さ12cmのもので構成されている。このパネル7には高さ方向に延びる2つの貫通穴9が形成されており、2つの貫通穴9の間隔は90cmとなっている。このパネル7は塀1の全長に応じた所定の枚数設置されており、これらのパネル7については、所定枚数設置された各パネル7を区別するため便宜的に7a、7b…を付すこととする。
【0016】
図13に示すようにシート11は多数の網目を有するメッシュ材から成っており、このシート11は、パネル7の上面から側面の途中までを覆う頂部シート13と、パネル7の側面の途中から下端部までを覆う下部シート15によって構成されている。頂部シート13と下部シート15は、パネル7の数に対応して所定の枚数設けられている。頂部シート13については、所定枚数設けられた各頂部シート13を区別するために便宜的に13a、13b…を付し、また、下部シート15についても同様に15a、15b…を付すこととする。
【0017】
塀1の構築方法について説明する。
図3に示すように地面Gに幅30cm、深さ28cmの穴17を掘る。この穴17の長さ寸法は塀1の全長より僅かに長い距離となる。そして、図4に示すように穴17の底部に砕石19を敷き詰めた後、砕石19の上にコンクリートを打設して基礎3を形成する。基礎3の上面は、地面Gよりも10cm程度低い位置となる。
【0018】
図5において符号21は長尺な板状のスケールを示し、このスケール21の幅寸法は、パネル7の厚さ寸法と同じ12cmとなっている。このスケール21には、複数の丸穴23が長手方向へ90cm間隔に形成されている。
このスケール21を基礎3の幅方向の中心部に当て、基礎3の上面に墨等でスケール21の側面に沿う線25を引き、また丸穴23の位置に目印27を付ける。そして、スケール21を基礎3上から外す。
【0019】
次に、基礎3の目印27の位置にドリルでボルト挿入穴29(図6参照)をあける。このボルト挿入穴29に向かってアンカーボルト5を打ち込み、その先端部を基礎3に食い込ませて、アンカーボルト5を垂直方向へ延びる姿勢で基礎3に固定する。これによりアンカーボルト5は90cm間隔、即ち、前述したパネル7(図7参照)の2つの貫通穴9の間隔と同じ間隔で複数配置される。
【0020】
図8に示すように基礎3の線25よりも内側の部分に、合成樹脂とモルタルを混合して成る接着剤31を塗布する。パネル7aの貫通穴9をアンカーボルト5に入れて、パネル7aを基礎3に設置する。パネル7aは接着剤31によって基礎3に接着される。そして、パネル7aの側端面に発泡スチロール用の接着剤32を塗布する。
【0021】
次いで、パネル7bの貫通穴9をアンカーボルト5に入れて、パネル7bを基礎3に設置し、また、パネル7bの側端面をパネル7aの側端面に接合する。上記したようにパネル7aの側端面には接着剤32が塗布されているので、パネル7a、7bの側端面どうしが接着される。そして、上記同様にパネル7b…の側端面に接着剤32を塗布し、パネル7c…を設置して、塀1の全長となるようにする。
【0022】
上記パネル7の設置作業の終了後、図9に示すようにコの字状の留め具33を隣接するパネル7どうしの接合部に嵌めて、接合部がずれないようにする。
次に、漏斗35を用いて貫通穴9に無収縮グラウトからなる接着剤37を上面近くまで流し込んだ後、貫通穴9に発泡スチロールから成る円柱状の嵌合部材39を嵌め入れる。パネル7の上面と同一面になるように嵌合部材39をカットして貫通穴9の上面開口を塞ぐ状態とする。
【0023】
図10(A)(B)に示すように支持板41、支持棒43及び杭45によってパネル7を両側から支持する。なお、支持板41の表面には溝が形成されており、この溝には支持棒43の一端部が入り込んでいる。また、支持棒43の他端部は杭45に固定されている。
この状態で接着剤31、32、37が固まるまで養生し、その後、留め具33、支持板41、支持棒43及び杭45を取り外す。
【0024】
図11に示すようにパネル7a、7b…の上端部に、合成樹脂とモルタルを混合して成る接着剤47を塗布する。
頂部シート13aをパネル7aに載置して、この頂部シート13aによってパネル7aの上面から側面の途中までを覆い、且つ、頂部シート13aのパネル7b側の側端部がパネル7bの一部を覆う状態とする。そして、接着剤47を頂部シート13aの外面側から塗布して、この接着剤47を頂部シート13aの網目に入り込ませた状態で頂部シート13aをパネル7a、7bに固定する。
【0025】
上記同様に頂部シート13bをパネル7bに載置して、頂部シート13bによってパネル7bの上面から側面の途中までを覆う。頂部シート13bのパネル7a側の側端部がパネル7aの一部を覆い、且つ、頂部シート13bのパネル7c側の側端部がパネル7cの一部を覆う状態とする。接着剤47を頂部シート13bの外面側から塗布して頂部シート13bの網目に入り込ませ、頂部シート13bをパネル7a、7b、7cに固定する。
これにより頂部シート13aと頂部シート13bが隣接するパネル7a、7bの接合部において互いに重なり合う状態で接着されることとなる。
そして、図示しない頂部シート13c…についても同様にパネル7c…に固定する。
【0026】
次いで、図12に示すように接着剤47をパネル7a、7b…の側面の途中から下端部まで塗布し、また、接着剤47を基礎3の上面にも塗布する。
下部シート15aをパネル7aの側面に当てて、この下部シート15aによってパネル7aの側面の途中から下端部までを覆い、且つ、下部シート15aのパネル7b側の側端部がパネル7bの一部を覆う状態とする。また、下部シート15aの下端部を略直角に折り曲げて基礎3の上面にまで延ばし、下部シート15aの上端部を頂部シート13aの下端部に重ねる。そして、接着剤47を下部シート15aの外面側から塗布して、この接着剤47を下部シート15aの網目に入り込ませた状態で下部シート15aをパネル7a、7bと基礎3に固定する。
【0027】
上記同様に下部シート15bをパネル7bの側面に当てて、この下部シート15bによってパネル7bの側面の途中から下端部までを覆う。下部シート15bのパネル7a側の側端部がパネル7aの一部を覆い、且つ、下部シート15bのパネル7c側の側端部がパネル7cの一部を覆う状態とする。また、下部シート15bの下端部を基礎3の上面にまで延ばし、下部シート15bの上端部を頂部シート13bの下端部に重ねる。接着剤47を下部シート15bの外面側から塗布して下部シート15bの網目に入り込ませ、下部シート15bをパネル7a、7b、7cと基礎3に固定する。
【0028】
これにより、図13に示すように頂部シート13a、13bと下部シート15a、15bがパネル7a、7bの途中部分において互いに重なり合う状態で接着されることとなり、また、下部シート15aと下部シート15bが隣接するパネル7a、7bの接合部において互いに重なり合う状態で接着されることとなる。
そして、図示しない下部シート15c…についても同様にパネル7c…に接着する。
次に、図1に示すようにシート11の外面にモルタルなどから成る仕上げ材49を塗布する。そして、図2に示すように穴17に土51を入れて、穴17を完全に塞ぐ。
【0029】
前述したように接着剤47をシート11とパネル7との間に塗布し、更に、接着剤47をシート11の外面側から塗布して、接着剤47をシート11の網目に入り込ませ、この状態でシート11がパネル7に固定されている。また、頂部シート13と下部シート15、頂部シート13どうし及び下部シート15どうしは互いに重ね合わされている。従って、塀1に高い表面強度を持たせることができる。
前述したように隣接するパネル7の接合部においてシート11が重ね合わされているので、隣接するパネル7どうしを高い強度をもって連結することが可能である。
【0030】
また、シート11をパネル7の上面から基礎3の上面にまで延ばしており、この状態でシート11はパネル7と基礎3に固定されている。即ち、基礎3、パネル7及びシート11は互いに固定されて一体化する。従って、パネル7と基礎3とを高い強度をもって連結することができるようになる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、パネル7の寸法を幅180cm、高さ90cm、厚さ12cmとしたが、パネル7の寸法を適宜変更してもよい。
そして、予めパネル7の表面に切削加工等をして模様等を施してもよく、更に、仕上げ材49に骨材を含有させてもよい。
【0032】
また、基礎3をコンクリートによって構成したが、基礎3はコンクリート製に限らず、基礎3を、木材や金属板などによって構成してもよい。
更に、基礎3の上面を地面Gよりも10cm程度低い位置としたが、基礎3の上面の位置を適宜変更してもよく、また、穴17の寸法を幅30cm、深さ28cmとしたが、穴17の寸法を適宜変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は発泡スチロール製のパネルを構成材料とする塀の建設業や製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…塀 3…基礎 5…アンカーボルト
7(7a、7b)…パネル 9…貫通穴 11…シート
13(13a、13b)…頂部シート
15(15a、15b)…下部シート
17…穴 19…砕石 21…スケール
23…丸穴 25…線 27…目印
29…ボルト挿入穴 31、32…接着剤 33…留め具
35…漏斗 37…接着剤 39…嵌合部材
41…支持板 43…支持棒 45…杭
47…接着剤 49…仕上げ材 51…土
G…地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に固定された支持部材に発泡スチロール製のパネルを支持させ、前記パネルに多数の網目を有するメッシュ材から成るシートを接着して補強する塀の構築方法において、前記シートを前記パネルの上面から前記基礎の上面にまで延ばして、基礎に固定することを特徴とする塀の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載した塀の構築方法において、シートはパネルの上面から側面の途中までを覆う頂部シートと前記パネルの側面の途中から下端部までを覆い、且つ基礎の上面にまで延びる下部シートとから構成され、前記頂部シートと前記下部シートを前記パネルの途中部分において重ね合わせることを特徴とする塀の構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した塀の構築方法において、複数のパネルを、互いの端面どうしを接合して隣接して備え、シートを隣接するパネルの接合部において重ね合わせることを特徴とする塀の構築方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した塀の構築方法において、シートを接着する接着剤を前記シートとパネルとの間に塗布し、更に前記接着剤を前記シートの外面側から塗布して、前記接着剤を前記シートの網目に入り込ませた状態で前記シートを前記パネルに固定することを特徴とする塀の構築方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの塀の構築方法によって構築されたことを特徴とする塀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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