説明

塊状重合による吸収可能なポリエステルの調製方法

本発明は、塊状重合によって吸収可能なポリエステルを調製する方法において、反応成分が反応器中で溶融され均一化され、次に反応壁によって画定された内腔を有する重合反応器中へと該反応混合物が移送され、当該反応器壁は脱着可能なように互いにはめ合わされた少なくとも2の部材を有しており、かつ当該内腔内の任意の点から該反応壁までの最短距離が8cm未満であり、該反応混合物が重合され、該反応器壁の部材を脱着することによって得られたポリマーが重合反応器から取り出され該得られたポリマーを長さ方向に露出してくる、上記方法に関する。本発明はさらに、当該方法を実施するための、反応壁によって画定された内腔を有する重合反応器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塊状重合によって吸収可能なポリエステルを調製する方法に関し、該方法では、撹拌された反応器中で反応成分が溶融され均一化され、それから該反応混合物は重合反応器中へと移送されて、重合され、その後に該重合反応器から取り出される。
【背景技術】
【0002】
本発明の方法の目的としての吸収可能なポリエステルは、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド)またはグリコリドに基づいた脂肪族ポリエステル、並びに上述のモノマーのうち2以上の異なったコモノマー単位相互間のコポリマー、および該モノマーとトリメチレンカーボネート(TMC)および/またはイプシロン−カプロラクトンとのコポリマーである。人または動物の体内に使用するための、たとえば固定具、フィルム、膜、縫合糸のための、またはまた医薬物送達システムのための吸収可能なインプラントを調製するために、この部類のポリエステルが好ましく使用される。
【0003】
吸収可能なポリエステルを調製するための重合プロセスは、従来の技術から知られている。比較的低分子量のポリエステルを調製するためにのみ使用されることができる重縮合プロセスに加えて、好ましくは対応する環式モノマー、すなわちL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン−カプロラクトンに金属触媒を添加した開環重合によって、吸収可能なポリエステルは調製される。複数の触媒が従来の技術から知られている。好ましくは、スズまたは亜鉛の化合物が使用される。従来技術に従って、ポリマーの分子量を制御することを可能にする添加剤(鎖長調節剤)が反応混合物に添加されてもよい。脂肪族アルコール、たとえばエタノール、ドデカノール、ヒドロキシカルボン酸、たとえばグリコール酸若しくは乳酸若しくはまたオリゴマー状乳酸または水が適当であることが判明している。
【0004】
ラクチドおよび関連したラクトンの開環重合のための多数の手法も、従来の技術から知られている。溶融重合または融解重合、塊状重合、溶液重合および懸濁重合が例として述べられている(たとえば、J.Nieuwenhuis、Clinical Materials、1992年、第10巻、p.59〜67)。これらのうち、溶融重合および塊状重合が技術的に最も重要である。これら二つの手法の差異は反応温度である。溶融重合においては全ての反応成分が溶融状態にある一方、塊状重合はモノマーが溶融状態にあり、かつ得られたポリマーが固体状態にある温度において実施される。モノマー/ポリマーのタイプに応じて、塊状重合の温度は約50℃〜190℃であることができ、他方、溶融重合の場合、約190℃〜230℃の範囲の温度が一般に選択されなければならない。
【0005】
溶融重合に勝る塊状重合の利点は、より低い反応温度である。すなわち、より穏やかな温度の故に、副反応がかなりより少ない程度に生じることである。一方において、成長反応における連鎖の停止を引き起こしてそれによってポリマーの分子量が制限されることから、重合の際の副反応は有害である。他方で、分子量分布は広くなり並びに残留モノマー含有量も増える。したがって、非常に高い分子量を有する吸収可能なポリエステルは、塊状重合によってのみ製造されることができ、溶融物では製造されることができない。溶融重合の高反応温度は、得られたポリマーがいくらかの変色を帯びることがあるという欠点も有する。高温度で生成されたこれらの不純物は、多くの場合ポリマーに結合されており、したがって後続の精製段階において生成物から除去されることができない。該ポリエステルが人体へ好ましく使用される点からは、あらゆる種類の汚染を避けることが有利である。
【0006】
低反応温度の他の利点は、重合の際のトランスエステル化の抑制である。一面において、トランスエステル化反応はより遅くなり、したがってこのようにして共重合の際のモノマー配列の強いランダム化を防ぐことが可能である。他の面において、反応時間を長くすることによって、ポリマー内のモノマーの均一な分布が高められることができる。また、個々のモノマーの異なる反応性の故に、ブロック様の配列を有するコポリマーが低温度において製造されることができる。
【0007】
特にポリ(L−ラクチド)に関しては、たとえば特許文献1および特許文献2から、並びに非特許文献1から、反応条件、たとえば反応の時間および温度並びに触媒および鎖長調節剤の濃度の適当な選択によって、反応生成物の分子量および反応の速度に関して、塊状重合はしかるべく制御されることができる。
【0008】
好適な重合装置内で大規模に連続的あるいは不連続的に、溶融重合は容易に実施されることができるけれども、塊状重合は大規模に実施されると大きい問題を生じる。重合の間に反応塊が固化するので、撹拌された反応器中で反応を実行することは可能でない。反応生成物は反応器の内壁の形状を帯び、該反応器から緻密な固まりとして取り出されなければならない。したがって、反応混合物が大規模になると、さらにより大きい物質の固まりが製造される。したがって、その取り扱いおよびまた加工可能な顆粒への後続の磨砕は、大きさがある程度にまでなると不可能になる。さらなる難事は反応熱の除去である。これらの重合反応は強い発熱性であり、その上形成されたポリマー塊は非常に不十分な熱伝導性を有するので、より大きい反応器中では温度勾配が形成されることがあり、これは重大なかつ許容できない不均一を生成物中に生じさせる。これらの不均一は、様々な分子量、およびコポリマーの場合には同様に様々な分子組成という形をとることがある。参考文献(1)によると、内部の温度増加は80℃までにもなることがある。
【0009】
小規模反応における塊状重合のための、特にポリ(L−ラクチド)のための好適な反応パラメータの選択に関して、該文献は十分な情報を含むけれども、該反応が工業的規模でどのように実施されることができるかについての教示を、この従来技術は含んでいない。該文献中の実施例は最大数百グラムまでの小規模で実施され、その上、実験室における試験管中で実施されている。
【0010】
特許文献3は、モノマー混合物を多数のより小さいプラスチックボトル中へと移し、当該ボトル中で反応混合物を重合することによって、この問題を解決しようと試みている。重合および(空気中における)冷却後、該ボトルのネックが切り取られ、ポリマーが取り出される。
【0011】
時には90個までにも及ぶこのようなプラスチックボトルの使用およびその後の当該ボトルからのポリマーの取り出しは、複雑で、費用がかかり、工業的規模での製造には決して適していないことは言うまでもない。
【0012】
特許文献4は、塊状重合による吸収可能なポリエステルの調製方法を記載している。この特許出願公開では、得られたポリエステルを反応器から取り出す問題が取り扱われている。管状反応器中で反応混合物を重合することによって、ポリエステルが得られる。得られたポリマーが収縮すると、ポリマーが剥離され反応器から取り出されることができるように、反応器の形状はテーパー付き(先太)になっている。さらに、ポリマーの変色を防ぐために管状反応器の直径は3cm以下でなければならないと、本文に記載されている。テーパー付き反応器の使用は、結晶質ポリマーが調製されるときにのみ有効である。すなわち、非晶質ポリマー(すなわち、グリコリド、D,L−ポリラクチド、L,D,L−ポリラクチド等以外のモノマー50%超を有するコポリマー)の収縮は、小さ過ぎて有効でない。さらに、非晶質ポリマーは結晶質ポリマーよりも粘着性でありがちであり、したがって反応器からの取り出しはより困難であることが判る。さらに、6ページ、23〜27行に示されているように、この方法は少量生産への解決策を提供するのみである。実施例では、100gの数例、400gの数例、および2kgの一例という量が示されている。
【特許文献1】米国特許第4,539,981号明細書
【特許文献2】米国特許第4,550,449号明細書
【特許文献3】国際公開第03/057756号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/006526号パンフレット
【非特許文献1】J.Nieuwenhuis、Clinical Materials、1992年、第10巻、p.59〜67
【非特許文献2】J.LeenslagおよびA.Pennings、Makromol.Chem.、1987年、第188巻、p.1809〜1814
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、穏やかな温度における塊状重合によって吸収可能なポリエステルを調製するために工業的規模で使用されることができる方法を提供することであり、該方法によって高品質の吸収可能なポリエステルが大規模に製造されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
該方法を開発するときに、重合反応器の形状および構成を適合させることによって、上述の課題が克服されることができることが発見された。当該重合反応器中に存在する反応混合物の厚さが薄く保たれることを確実にすることによって、重合の間に生成された熱が反応器壁に輸送されることができ、ポリマーの劣化は生じない。これに加えて、反応器壁は2以上の部材を有していなければならず、該2以上の部材が脱着されて、得られたポリマーが取り出されることができる。
【0015】
この方法では、金属触媒および任意的に鎖長調節剤の添加によって、それ自体知られた様式で上記環式モノマーが反応されて、モノマーは溶融形態で存在するが反応生成物は固形または実質的に固形であるところの温度で、それぞれのポリマーが生成される。
【0016】
したがって、本発明は塊状重合によって吸収可能なポリエステルを調製する方法に関し、該方法では撹拌下の反応器中で反応成分が溶融され均一化され、次に反応器壁によって画定された内腔(ルーメン)を有する重合反応器中へと該反応混合物が場所を変えられ、ここで当該反応器壁は脱着可能なように互いにはめ合わされた少なくとも2の部材を有しており、かつここで当該内腔内の任意の点から該反応器壁までの最短距離が8cm未満であり、該反応混合物が重合され、得られたポリマーが該反応器壁の部材を脱着することによって重合反応器から取り出され、該得られたポリマー形状物が長さ方向に露出される。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、その中で反応が行われる内腔が特定の形状を有している事実の故に、反応混合物の厚さは薄く保たれ、重合プロセスの間に生成された全ての熱は反応器壁中へと十分に輸送されることができて、劣化、したがって不均一は生じることがない。好ましくは、当該内腔内の任意の点から反応壁までの最短距離は4cm未満であり、より好ましくは該最短距離は3cm未満である。
【0018】
反応混合物の厚さは薄く保たれなければならないけれども、大容積を有する重合反応器を造ることはそれでもなお可能だろう。したがって、本発明に従う方法は工業的規模での使用に非常に適している。これは、重合の際に該反応器の反応器壁が、脱着可能なように一緒にはめ合わされた少なくとも2の部材を有しており、冷却後に該部材は互いに脱着されてポリマーの取り出しを可能にするからである。脱着されると、得られたポリマーが長さ方向に露出されるように、該部材は構成されていることが必須である。そうでないと、ポリマー形状物が容易に取り出されることができることが依然として保証されない。たとえば、従来技術では、管状反応器は、シリコーンゴム栓を外し該反応器を上下逆さまに保つことによって、得られたポリマー棒が該反応器から落とされると記載されている。このタイプの反応器は、比較的少量の製造にのみ使用されることができることは言うまでもない。当該脱着可能な取り付け具は、ねじ/ボルト系、ヒンジ、フランジ、覆いまたはこれらの組み合わせを含むことができる。当該部材およびこれらの脱着可能な取り付け具は、反応器壁が容易に検査されることができるという、さらなる利点を有する。さらにその上、得られたポリマー形状物は反応混合物入口を通して取り出される必要がないので、反応混合物入口へのいくつかの改良、たとえば入口の大きさを小さくすることおよび入口の必要な数を減らすこともこれによって可能になる。その中でポリマーがテーパー付きの形態で調製されるところの反応器とは対照的に、より小さい粒子、たとえばチップまたは顆粒へと容易に加工され、任意的にその後に抽出法によってまたは溶解/沈降法によって在りうる未反応モノマーを除くことができるポリマー形状物が調製されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
種々の形状の反応器が選択されて、所望の形状を有する内腔およびそれでいて大きい全反応器容積を造り出すことができる。1の実施態様では、重合反応器は棒形状の内腔を有する。該棒形状の内腔の長さを伸ばすことによって、全系の熱輸送に有害な影響を与えないで、全反応容積は拡大されることができる。重合および冷却の後に反応器壁の部材は脱着され、それによってポリマー棒が長さ方向に露出されることができるので、たとえ得られたポリマー棒の長さが比較的長くても、該棒は容易に取り出されることができる。
【0020】
好まれる実施態様では、重合反応器は少なくとも1の環形状の内腔を有する。その中間に環状内腔が形成されるように互い中へとはめ合わされた2以上の円筒形状物から組み立てられた重合反応器によって、これは得られることができる。該円筒形状物は完全に円筒状である必要はなくて、その断面は扁平、円錐、または多角形等、およびこれらの組み合わせであってもよいことは言うまでもない。互い中へとはめ合わされた数個の円筒形状物を使用すると、系の熱輸送に有害な影響を与えないで、非常に大きい反応器容積が得られることができる。反応混合物が1の入口によって重合反応器中へと容易に輸送されることができるように、互い中へとはめ合わされた数個の円筒形状物を使用したときに形成される環形状の内腔は連結されており、これは取り扱いを簡単にする。何故ならば、一つだけの入口は取り出しに無関係に保たれるはずであり、実際上1の大きい重合反応器が造り出されるからである。反応器壁の部材は重合および冷却の後に脱着され、それによってポリマー形状物が長さ方向に露出されることができるので、たとえ反応器が数個の円筒形状物から構成されていても、得られたポリマー形状物は容易に取り出されることができる。
【0021】
本発明に従う他の好まれる実施態様では、重合反応器は板形状の内腔を有する。一緒にはめ合わされた2以上の板様形状物と任意的に側板とから、板形状の内腔を形成するように組み立てられた重合反応器によって、これは得られることができる。板様形状物は任意の形状、たとえば円形、長方形、三角形、多角形等をとってもよいことは言うまでもない。一緒にはめ合わされた数個の板様形状物を使用すると、系の熱輸送に有害な影響を与えないで、非常に大きい反応器容積が得られることができる。反応混合物が1の入口によって重合反応器中へと容易に輸送されることができるように、数個の板様形状物を使用したときに形成される板形状の内腔は連結されており、これは取り扱いを簡単にする。何故ならば、一つだけの入口は取り出しに無関係に保たれるはずであり、実際上1の大きい重合反応器が造り出されるからである。
【0022】
一緒にはめ合わされた数個の板様形状物の場合には、脱着可能なようにはめ合わされた部材は好ましくは板様形状物であり、これらが脱着されると、ポリマー板が長さ方向に(すなわち、その最大長さにおいて)露出される。長方形の板様形状物の場合、該板の厚さではなくて、その長さおよび幅によって画定される表面において露出されることを、これは意味する。円形の板様形状物の場合、ポリマー円盤の厚さではなくて、円形状の周によって画定される表面を、これは意味する。したがって、得られたポリマー形状物の取り出しに有害な影響を与えないで、非常に大きい反応器容積が造り出されることができる。得られたポリマー板は、より小さい粒子へと容易に加工されることができる。
【0023】
得られたポリマー形状物の取り出しを容易にするために、内腔に区画仕切り板を設けることが、とりわけその中で数個の形状物が互い中へとはめ合わされているところの重合反応器が使用されるときには、適切であるかもしれない。当該区画仕切り板は、たとえば反応器の内腔内に設置されたバッフルである。
【0024】
得られたポリマーが重合反応器から容易に取り出されることができることを確実にするために取ることができる他の手段は、該重合反応器の内壁をコーティングすることである。好ましくは、選択された反応温度において化学的および熱的に安定であって、本発明の方法に使用されることができる物質によって、重合反応器の内壁はコーティングされる。ポリオレフィン、ポリカーボネートまたはフッ素化および部分的フッ素化プラスチックの中から選択されたプラスチックから造られたコーティングが好まれる。ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエタン(Teflon(登録商標))が好まれる。
【0025】
重合プロセスは高められた温度で実施され、該温度は精密に制御されなければならないので、重合反応器の壁は、好ましくは加熱/冷却装置を取り付けられる。好適な加熱/冷却装置は、加熱/冷却媒体として油を含むものおよび蒸気/水/グリコール系である。従来技術では、反応器の外側に設置された加熱装置、たとえば反応器の外側に設けられたオイルバスおよびジャケットが挙げられている。工業的規模の操作が望まれると直ぐに、これらの従来技術の提案は役に立たないだろう。
【0026】
好まれる方法は、以下の段階を含む。すなわち、
(a) (1または複数の)モノマーを撹拌された反応器中で溶融すること、
(a1) 触媒を添加すること、
(a2) 任意的に鎖長調節剤および/または共開始剤を添加すること、
(a3) 撹拌機を使用して反応混合物を均一化すること、
(b) 該反応混合物を重合反応器中へと移送すること、
(c) 所望の重合反応度が達成されるまで、該重合反応器中で重合反応を実施すること、および
(d) 生成された固形ポリマーを該重合反応器から取り出すこと。
【0027】
それ自体知られた方法を使用して、さらなる加工、たとえば顆粒への磨砕が実施されることができ、その後に抽出することによっておよび/若しくは溶解/沈降法によってまたは沈降法によって、在りうる未反応モノマーを除くことができる。上述のように、得られるポリマーが調製される形態は、より小さい粒子、たとえばチップ、顆粒等へのさらなる加工が容易であるようなものである。
【0028】
好まれるモノマーは、相当する環式モノマーの開環重合によって重合されることができるようなものであり、たとえばL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、グリコリド、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、エチレンオキサレート、ラクトン、たとえばベータ−プロピオラクトン、ベータ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、デルタ−バレロラクトン、ベータ−メチル−デルタ−バレロラクトン、およびイプシロン−カプロラクトン、1,3−ジオキサンである。
【0029】
ポリラクチドおよびポリグリコリド、特にポリ(L−ラクチド)、ポリ(DL−ラクチド)、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−TMCの中から選択されたホモポリマーが好まれる。
【0030】
同様に好まれるのは、以下の群から選択された(2以上のタイプのモノマーを含む)コポリエステルである。すなわち、
種々の立体異性ラクチドから得られることができるポリラクチド、特にL−ラクチドとDL−ラクチドとのコポリエステル、グリコリドまたはラクチドとトリメチレンカーボネートとのコポリエステル、ラクチド、特にDL−ラクチドまたはL−ラクチドとグリコリドとのコポリエステル、ラクチドとイプシロン−カプロラクトンとのコポリエステル。
【0031】
段階(a1)および(a2)の順番は逆にされてもよい。触媒および鎖長調節剤および/または共開始剤の種類に応じて、触媒は鎖長調節剤中に溶解されてもよい。
【0032】
反応の間中、反応混合物上の空間は不活性無水ガスによって不活性にされる。アルゴン、ヘリウムおよび窒素が好まれ、このうち窒素が特に好まれる。このことが、連結された複数の内腔を有する重合反応器の使用が好まれる理由である。
【0033】
慣用のポンプを使用して、重力によって、または不活性ガス、特に窒素を使用して溶融物反応器に圧力をかけることによって、該溶融物容器から重合反応器中へと、反応混合物は移送されることができる。溶融物から在りうる粒子状汚染物を除くために、プラスチックまたはステンレス鋼から作られた溶融物フィルターが間に入れられてもよい。
【0034】
重合反応器の容量は、1リットル〜1000リットルの範囲、好ましくは5リットル〜500リットルの範囲、最も好ましくは10リットル〜300リットルの範囲であることができる。
【0035】
反応混合物を溶融し均一化するための反応器は慣用の反応器であることができ、その内壁は該反応混合物に対して化学的に不活性である物質からなり、たとえばステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム、銅、銀、金、白金、クロム、ニッケル、および亜鉛、若しくはこれらの合金、ガラス、エナメル、またはハステロイである。反応器の好まれる大きさは所望のバッチサイズに依存し、1〜1000リットルの範囲内であることができる。均一化のために、反応器はかき混ぜ機、たとえば撹拌機を設けられることができるが、押出機、混練機、混合機が本発明に従う方法に好適に使用されることもできる。
【0036】
50℃〜230℃、好ましくは70℃〜170℃、特に100℃〜150℃の温度において、反応は一般に実施される。ときには反応の間、温度スケジュールが使用されることが最適である。好まれる(および特に好まれる)反応温度は、特定のモノマーまたはモノマー混合物に依存し、たとえば、

である。
【0037】
反応は好ましくは等温的に実施される。しかし、ある場合には、強い発熱反応を避けるために、より低い温度で出発し、モノマーの反応速度を増加するために反応が進行するにつれて温度を上げることが有利である。これは特に、比較的低い反応性のモノマー、たとえばトリメチレンカーボネートまたはイプシロン−カプロラクトンが絡む重合に当てはまる。反応の間に温度を下げることも、もちろん可能である。
【0038】
好まれる触媒はスズまたは亜鉛の化合物であり、さらにハロゲン化スズ(II)、たとえば塩化スズ(II)、およびスズ(II)アルコキシド、たとえばオクタン酸スズ(II)またはエチルヘキサン酸スズ(II)が最も著しく好まれる。鎖長を調節しおよび/または反応を共開始するために使用される添加剤は、(脂肪族)アルコール、脂肪族ポリオール酸、ヒドロキシカルボン酸およびそのエステル、水、またはオリゴマー状ラクチドのような化合物である。水、乳酸、オリゴマー状乳酸、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸エチルヘキシルまたはドデカノールが好まれる。
【0039】
本発明の方法では、一方で反応速度を低く保つことによって重合の際の熱の発生を最小にするために、他方で反応塊がまだ溶融物反応器中にある間に何らかの感知できる程度まで該反応塊が重合することを防ぐために、触媒は好ましくは低濃度で使用される。そうしないと粘度の上昇の故に重合反応器中への移送がより困難になるだろう。しかし、重合反応器への輸送前にモノマー反応器中で、いくらかの重合は通常起きてしまうことが指摘されなければならない。その上、該ポリエステルを人体に使用する点から、触媒の少量の使用が好都合である。スズ化合物の場合、好まれる濃度は1〜100ppm、より好ましくは5〜50ppmである(全反応塊当たり、スズとして各場合が計算された。)。
【0040】
鎖長調節剤の好まれる濃度は、該調節剤の構造およびポリマーの所望の分子量に依存し、全反応塊当たり、0〜100,000ppm、より好ましくは0〜10,000ppm、特に50〜9,000ppmである。
【0041】
1のモノマーまたは複数のモノマーの反応性、選択された温度および触媒の濃度並びに所要の転化率に、要求される反応時間は依存する。0.5〜25日間、より好ましくは1〜10日間、特に2〜9日間の反応時間が好まれる。
【0042】
概して、使用されたモノマーのうち10%未満、好ましくは0〜9%、最も好ましくは0.1〜7%、特に0.2〜5%が本発明に従う方法によって得られたポリマー中に存在すると、所望の重合度は到達される。
【0043】
本発明に従う方法によって調製されたポリエステルは、一般に0.2〜12dl/g、好ましくは0.5〜10dl/g、最も好ましくは1.0〜9.0dl/gの固有粘度(ウベローデ粘度計、クロロホルム、0.1%、25℃)を有する。
【0044】
図1A、1B、2A、2B、3A、3B、4および5を用いて、好適な重合反応器はさらに説明される。
【0045】
図1Aは1の板様形状物(1)を有する重合反応器の断面図であり、図1Bは板形状の内腔(2、2'、および2'')を形成するように一緒にはめ合わされた3の板様形状物(1、1'、および1'')および端板(3)を有する当該重合反応器の断面図である。板様形状物(1)は、反応混合物の入口(4)および該重合反応器の板形状の内腔(2、2')間を連結する溢流口(5)を設けられている。板様形状物(1、1'、および1'')および端板(3)は、取り付け具(6)によって脱着可能なように一緒にはめ合わされている。板様形状物(1、1'、1'')は加熱/冷却手段(7)を設けられている。
【0046】
図2Aには、棒形状の内腔(2)を作り出す環形状物(1)を有する重合反応器の概略図が表現される。図2Bには、図2Aの重合反応器の断面図が示され、該重合反応器は取り付け具(6)を設けられている。当該環形状物(1)は2の部材を含み、これらは脱着可能なように一緒にはめ合わされている。
【0047】
図3Aには、互い中へとはめ合わされて1の環形状の内腔(2)を作り出す2の環形状物(1、1')を有する重合反応器の概略図が表現される。図3Bには、図3Aの重合反応器の断面図が示され、該重合反応器は取り付け具(6)を設けられている。当該環形状物(1)は2の部材を有し、これらは脱着可能なように一緒にはめ合わされている。
【0048】
図4および5には、互い中へとはめ合わされて内腔(2、2')を作り出す3の環形状物(1、1'、1'')を有する重合反応器の概略図が示される。環形状物は2の部材から組み立てられ、これらは取り付け具(6)によって脱着可能なように一緒にはめ合わされている。
【0049】
以下の実施例は、吸収可能なポリエステルを調製するための実施例として行われたいくつかの方法を例示する役目をする。これらは、本発明を実施例の内容に限定することなく、実施例として説明された可能な方法としてのみ意図されている。
【実施例1】
【0050】
棒形状の内腔(長さ55.5cm、幅16cm)を有する管反応器に、L−ラクチドモノマー12.5kgが充填された。それぞれ、99℃の温度で96時間(PLA 1)、105℃で72時間(PLA 2)、反応混合物は重合された。冷却およびポリマーの取り出しの後、得られた棒形状ポリマーの特性(固有粘度I.V.および分子量Mw)が該棒のいくつかの場所で測定された。すなわち、
− 先端から4cmにおいて:A
− 先端から28cmにおいて:B
− 先端から50cmにおいて:C
場所A1、B1、およびC1は側面から20mmにあった。
場所A2、B2、およびC2は側面から30mmにあった。および
場所A3、B3、およびC3は側面から50mmにあった。
結果が表Iにまとめられる。
【表1】

【0051】
これらのデータから、調製されたポリマーは該ポリマー棒内で均一であることが明らかである。
【実施例2】
【0052】
モノマーは、モノマー反応器中で混合され均一化され、油加熱/冷却装置を設けられた重合反応器中へと輸送された。該重合反応器は7の板形状物および1の端板を有し、これらは一緒にはめ合わされて7の板形状の内腔を作り出している。反応混合物が重合され、冷却後、該板形状物が互いに脱着され、得られたポリマー板が反応器から取り出された。次に、それぞれの得られた板形状ポリマーの特性(固有粘度I.V.および残留モノマー含有量RM%)が測定された。
結果が表IIおよび表IIIにまとめられる。
【表2】

【表3】

【0053】
反応器のそれぞれの板形状の内腔中で得られたポリマーは、すべて同一の特性を有することを、これらの結果は示す。
【実施例3】
【0054】
油加熱/冷却装置を設けられた板形状反応器中で、ポリ−L,L−乳酸(PLA)およびL−ラクチド/グリコリドコポリマー(m:m 85/15、PLG 85:15)が、それぞれ反応温度150℃および反応時間36時間、並びに150℃および48時間で調製された。
【0055】
冷却後、得られた板形状ポリマーの特性(固有粘度I.V.および分子量Mw)が、該板(50×70×5cm)のいくつかの場所で測定された。すなわち、
− 先端から5cmおよび側部から5cmにおいて:A
− 先端から35cmおよび側部から25cmにおいて:B
− 先端から65cmおよび側部から5cmにおいて:C
場所A1、B1、およびC1は板の表面にあった。
場所A2、B2、およびC2は1cmの深さにあった。および
場所A3、B3、およびC3は2.5cmの深さにあった。
結果が表IVにまとめられる。
【表4】

【0056】
両ポリマー板において、板全体にわたってポリマーが均一であることを、これらのデータは示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】1の板形状の内腔を有する重合反応器の断面図である。
【図1B】端板とともに一緒にはめ合わされた3の板様形状物から組み立てられた重合反応器の断面図である。
【図2A】棒形状の内腔を有する重合反応器の概略図である。
【図2B】図2Aの重合反応器の断面図である。
【図3A】1の環形状の内腔を有する重合反応器の概略図である。
【図3B】図3Aの重合反応器の断面図である。
【図4】小さい円筒形状物をそれより大きい円筒形状物中へとはめ込むことによって得られた2の環形状の内腔を有する重合反応器の断面図である。
【図5】小さい環形状物をそれより大きい環形状物中へとはめ込むことによって得られた2の環形状の内腔を有する重合反応器の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収可能なポリエステルを塊状重合によって調製する方法において、反応成分が反応器中で溶融され均一化され、次に反応壁によって画定された内腔を有する重合反応器中へと該反応混合物が移送され、当該反応器壁は脱着可能なように互いにはめ合わされた少なくとも2の部材を有しており、かつ当該内腔内の任意の点から該反応壁までの最短距離が8cm未満であり、該反応混合物が重合され、該反応器壁の部材を脱着して得られたポリマーを長さ方向に露出することによって、得られたポリマーが、重合反応器から取り出される、上記方法。
【請求項2】
当該内腔内の任意の点から反応壁までの最短距離が4cm未満である、請求項1に従う方法。
【請求項3】
当該内腔内の任意の点から反応壁までの最短距離が3cm未満である、請求項1に従う方法。
【請求項4】
重合反応器が棒形状の内腔を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
重合反応器が、少なくとも1の環形状の内腔を有する、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
重合反応器が、少なくとも1の板形状の内腔を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
重合反応器の内壁が、ポリオレフィンでコーティングされている、請求項1〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
重合反応器の壁が、加熱/冷却装置を設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に従う方法。
【請求項9】
加熱/冷却装置が油を含んでいる、請求項8に従う方法。
【請求項10】
ポリマーが0.2〜12の固有粘度を有する、請求項1〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
吸収可能なポリエステルが、ポリラクチドまたはポリグリコリドである、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
吸収可能なポリエステルがポリ(L−ラクチド)である、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
吸収可能なポリエステルが、種々の立体異性ラクチドのコポリマーである、請求項1〜12のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
吸収可能なポリエステルが、L−ラクチドとD,L−ラクチドとのコポリマーである、請求項1〜13のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
吸収可能なポリエステルがポリ(D,L−ラクチド)である、請求項1〜14のいずれか1項に従う方法。
【請求項16】
吸収可能なポリエステルが、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーである、請求項1〜15のいずれか1項に従う方法。
【請求項17】
吸収可能なポリエステルが、ラクチドとグリコリドとのコポリマーである、請求項1〜16のいずれか1項に従う方法。
【請求項18】
吸収可能なポリエステルが、DL−ラクチドまたはL−ラクチドとグリコリドとのコポリマーである、請求項1〜17のいずれか1項に従う方法。
【請求項19】
吸収可能なポリエステルが、ラクチドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーである、請求項1〜18のいずれか1項に従う方法。
【請求項20】
吸収可能なポリエステルが、ラクチドとイプシロン−カプロラクトンとのコポリマーである、請求項1〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項21】
反応壁によって画定された内腔を有する重合反応器であって、当該反応器壁が少なくとも2の部材を有しており、該少なくとも2の部材は脱着可能なように互いにはめ合わされ、脱着されると該内腔が長さ方向に露出されるように構成されており、かつ当該内腔内の任意の点から該反応壁までの最短距離が8cm未満であり、該反応器壁の部材を脱着することによって得られたポリマーが長さ方向に露出される、重合反応器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−536996(P2008−536996A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507092(P2008−507092)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061751
【国際公開番号】WO2006/111578
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504421730)ピュラック バイオケム ビー. ブイ. (6)
【Fターム(参考)】