塔状構造物の解体工法
【課題】大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法を提供することができる。
【解決手段】解体すべき塔状構造物としての蓄熱炉1を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、蓄熱炉1の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって蓄熱炉1を解体する工法において、蓄熱炉1の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置2を設置し、重量物昇降装置2間を上部梁3A、主梁3B、下部梁3Cにより互いに連結し、主梁3Bを介してジャッキ5を重量物昇降装置2に取り付け、蓄熱炉1の下部を切断し、次いで、ジャッキ5により切断箇所より上部の蓄熱炉1を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、ジャッキ5により蓄熱炉1を吊り下ろし、次いで、蓄熱炉1の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行う。
【解決手段】解体すべき塔状構造物としての蓄熱炉1を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、蓄熱炉1の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって蓄熱炉1を解体する工法において、蓄熱炉1の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置2を設置し、重量物昇降装置2間を上部梁3A、主梁3B、下部梁3Cにより互いに連結し、主梁3Bを介してジャッキ5を重量物昇降装置2に取り付け、蓄熱炉1の下部を切断し、次いで、ジャッキ5により切断箇所より上部の蓄熱炉1を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、ジャッキ5により蓄熱炉1を吊り下ろし、次いで、蓄熱炉1の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塔状構造物の解体工法、特に、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、製鉄所に構築されている高さ数十メートルもある高炉の熱風炉用蓄熱室の解体は、大型クレーンを使用して行われていた。しかし、蓄熱室の周囲に大型クレーンの設置スペースがない場合には、大型クレーンを使用しない他の解体工法により解体せざるを得なかった。
【0003】
従って、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法の開発が強く望まれていた。
【0004】
特許文献1(特開2000−319709号公報)には、大型クレーンを使用しない高炉の解体工法が開示されている。以下、この解体工法を、従来解体工法といい、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図9は、解体前の既設高炉を示した図、図10は、搬送用レールの敷設要領の説明図、図11は、炉底部を除く各分割ブロックの解体要領の説明図である。
【0006】
従来解体工法は、先ず、図9に示すように、塔状構造物としての高炉の炉体31の支持柱32の下部に架台33を構築し、炉体31を複数個のリング状ブロック(A)から(F)に切断する。最下段のリング状ブロック(F)の高さと架台33の高さは等しい。
【0007】
次いで、図10に示すように、支持柱32に設置したジャッキ34によって、リング状ブロック(F)より上の炉体31を吊り上げた後、架台33とリング状ブロック(E)の下部に亘ってレール35を敷設する。
【0008】
次いで、レール35を走行する台車36をリング状ブロック(E)の下に移動させた後、炉体31を吊り下げて台車36上に乗せる。
【0009】
次いで、図11に示すように、リング状ブロック(E)から上の炉体31をジャッキ34により吊り上げる。
【0010】
そして、台車36によりリング状ブロック(E)を架台33上に移動し、複数ブロックに切断するなどして搬出する。
【0011】
以上の工程をリング状ブロック(D)から(A)につき繰り返し行って、炉体31を解体する。なお、最下段のリング状ブロック(F)は、台車36により移動させることなく複数ブロックに分解して搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−319709号公報
【特許文献2】特開2009−102972号公報
【特許文献2】特許第2828430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した従来解体工法によれば、高炉を大型クレーンを使用することなく解体することができるが、以下の問題があった。
【0014】
(a)高炉の炉体31を覆うことが可能な大型の支持柱32を仮設架構として構築する必要があるが、大きな荷重を支えるための補強が必要であり、この補強作業は、高所作業となり危険が伴う。
【0015】
(b)リング状ブロック(A)から(F)を搬出する架台33を構築する必要がある。
【0016】
(c)高炉を吊り上げるジャッキ34を炉体31と支持柱32との間に設置する必要があるが、この作業は高所作業となり危険が伴う。
【0017】
従って、この発明の目的は、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0019】
請求項1に記載の発明は、解体すべき塔状構造物を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、前記塔状構造物の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって前記塔状構造物を解体する、塔状構造物の解体工法において、前記塔状構造物の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置を仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により互いに連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記塔状構造物の下部を切断し、次いで、前記ジャッキにより切断箇所より上部の前記塔状構造物を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、前記ジャッキにより前記塔状構造物を吊り下ろし、次いで、前記塔状構造物の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行うことに特徴を有するものである。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記梁材にガイド部材を取り付けて、下降時の前記塔状構造物をガイドすることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することに特徴を有するものである。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載の発明において、前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、以下のような効果がもたらされる。
【0024】
(a)仮設架構として伸縮可能な重量物昇降装置を使用することにより、仮設架構を容易に構築することができ、また、仮設架構の標準化および他の塔状構造物の解体工事への転用が可能となるので、解体コストを低減することができる。
【0025】
(b)従来解体工法によれば、塔状構造物全体を覆うことが可能な大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全である。
【0026】
(c)重量物昇降装置の頂部に解体前の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整すれば、重量物昇降装置を塔状構造物全体に亘り構築することなく、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す平面図である。
【図2】蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】重量物昇降装置を示す正面図である。
【図6】重量物昇降装置を示す平面図である。
【図7(A)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、蓄熱室に吊り金具を固定する工程を示す正面図である。
【図7(B)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、ブロックB1を切断する工程を示す正面図である。
【図7(C)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断したブロックB1を撤去する工程を示す正面図である。
【図7(D)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断後の蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(E)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、吊り金具による吊り位置を変えた後、ブロックB2を切断する工程を示す正面図である。
【図7(F)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、炉頂部が重量物昇降装置の頂部に来るまで解体した蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(G)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、炉頂部を撤去した後、吊り金具の位置を変える工程を示す正面図である。
【図7(H)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断したブロックB3を撤去する工程を示す正面図である。
【図7(I)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断後の蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(J)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、最後のブロックBnを下降させる工程を示す正面図である。
【図7(K)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、最後のブロックBnを撤去する工程を示す正面図である。
【図8】油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【図9】解体前の既設高炉を示した図である。
【図10】搬送用レールの敷設要領の説明図である。
【図11】炉底部を除く各分割ブロックの解体要領の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の、塔状構造物の解体工法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す平面図、図2は、蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す正面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図2のB−B線断面図である。
【0030】
図1から図4において、1は、解体すべき塔状構造物としての高炉の熱風炉用蓄熱室(No.1)であり、円筒形状をなし、数十メートルの高さを有している。蓄熱室と燃焼室とを備えた熱風炉は、高炉の羽口から炉内に送り込む熱風をつくる炉であり、一基の高炉に対して複数基、設けられていて、各熱風炉は、蓄熱と送風の状態を交互に繰り返し行う。
【0031】
2は、地盤上に設置された伸縮可能な複数台(この例では4台)の重量物昇降装置であり、蓄熱室1の周囲に蓄熱室1を取り囲むように四角形のコーナー部に配置されている。重量物昇降装置2間は、後述する上部梁3A、主梁3Bおよび下部梁3Cにより互いに連結され、重量物昇降装置2は、後述するジャッキ5により蓄熱室1を吊り上げるための仮設架構として使用される。重量物昇降装置2の頂部間を連結する上部梁3Aおよび重量物昇降装置2の下方部間を連結する下部梁3Cには、下降時の蓄熱室1をガイドするチルタンク等からなるガイド部材6が取り付けられている。上部梁3Aと下部梁3Cとの間の重量物昇降装置2間を連結する主梁3Bのコーナー部は、副梁4により連結され、副梁4にジャッキ5が取り付けられている(図4参照)。上部梁3Aの高さが蓄熱室1の重心位置以上の高さとなるように、重量物昇降装置2の頂部高さを調整することによって、蓄熱室1の全長に亘り重量物昇降装置2を設けなくても、蓄熱室1を安定支持することができる。蓄熱室1の安定支持は、ガイド部材6によりさらに向上する。
【0032】
なお、ジャッキ5の容量を大型化することで、重機工法ではできなかった、蓄熱室1内に耐火材、触媒等の内蔵物を組み込んだ状態での一体解体が可能となる。特に、ジャッキ工法は、振動を与えず解体ができるため、作業における安全性も高いといった利点を有する。
【0033】
重量物昇降装置2としては、例えば、特開2009−102972号公報に開示されている重量物昇降装置を使用する。以下、重量物昇降装置2を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図5は、重量物昇降装置を示す正面図、図6は、重量物昇降装置を示す平面図である。
【0035】
図5および図6に示すように、重量物昇降装置2は、外側支柱7A、中間支柱7B、内側支柱7Cが入れ子式に且つそれぞれ複数台の外側昇降手段8A、内側昇降手段8Bにより昇降可能に組み立てられ、内側支柱7Cの頂部間に上述した上部梁3Aが連結されている。
【0036】
外側昇降手段8Aおよび内側昇降手段8Bは、例えば、特許文献2に開示された油圧ジャッキ装置からなっている。この油圧ジャッキ装置については、後述する。
【0037】
外側昇降手段8Aは、中間支柱7Bの上下端間に張り渡された外側ストランド9Aと、外側支柱7Aに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な外側ジャッキ本体10Aとからなっている。外側ジャッキ本体10Aは、可動側に設けられる第1把持手段(後述する上部ワイヤグリッピング装置41a)と、外側ジャッキ本体10Aの固定側に取り付けられる第2把持手段(後述する下部ワイヤグリッピング装置41b)とを備え、外側ジャッキ本体10Aの伸張時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、一方、外側ジャッキ本体10Aの縮小時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、かくして、外側ジャッキ本体10Aの伸縮によって内側支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に間歇的に昇降する。
【0038】
内側昇降手段8Bは、内側支柱7Cの上下端間に張り渡された内側ストランド9Bと、中間支柱7Bに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な内側ジャッキ本体10Bとからなっている。内側ジャッキ本体10Bは、可動側に設けられる第1把持手段と、内側ジャッキ本体10Bの固定側に取り付けられる第2把持手段とを備え、内側ジャッキ本体10Bの伸張時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、一方、内側ジャッキ本体10Bの縮小時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、かくして、内側ジャッキ本体10Bの伸縮によって内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して間歇的に昇降する。
【0039】
このようにして、中間支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に昇降し、内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して昇降するが、これらの昇降は、各支柱7A、7B、7C間に取り付けられたチルタンク等からなるガイド部材11によって円滑に行われる。
【0040】
特許文献2に開示された油圧ジャッキ装置の概略を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図8は、油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【0042】
図8に示すように、油圧ジャッキ装置は、上部ワイヤグリッピング装置41aと下部ワイヤグリッピング装置41bとをストランド40に沿って上下に間隔をあけて設けたものから構成されている。上部ワイヤグリッピング装置41aの上部アンカーベースプレート42aは、油圧ジャッキ43のピストン45側に固定され、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部アンカーベースプレート42bは、油圧ジャッキ43のシリンダ44側に固定されている。油圧ジャッキ43は、対称位置に複数個、設置され、それぞれ油圧系統により同期して駆動される。
【0043】
上部ワイヤグリッピング装置41aの上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、上部アンカーブロック48aを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する上部クランピングシリンダ50aにより一体的に上下動する。同様に、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47とは、下部アンカーブロック48bを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する下部クランピングシリンダ50bにより一体的に上下動する。
【0044】
上部アンカーブロック48aには、上部クランピングシリンダ50aが固定され、そのピストン52a側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、上部クランピングシリンダ50aを作動させれば、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、一体的に上下動する。同様に、下部アンカーブロック48bには、下部クランピングシリンダ50bが固定され、そのピストン52b側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、下部クランピングシリンダ50bを作動させれば、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとは、一体的に上下動する。
【0045】
上部クランピングシリンダ50aにより、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとを同時に上下動させて、上部ワイヤグリッピング装置41aの上部ワイヤグリップ51aを強制的に上部アンカーブロック48aの貫通孔53aに対して緩めたり、貫通孔53aに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。同様に、下部クランピングシリンダ50bにより、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとを同時に上下動させて、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部ワイヤグリップ51bを強制的に下部アンカーブロック48bの貫通孔53bに対して緩めたり、貫通孔53bに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。
【0046】
この操作を上部および下部ワイヤグリッピング装置41a、41bについて交互に行い、ストランド40を把持した上部ワイヤグリッピング装置41aを油圧ジャッキ43により昇降させれば、ストランド40の先端に連結した重量物54の吊り上げ、吊り下ろしが行える。すなわち、上記支柱7B、7Cを昇降させることができる。
【0047】
ジャッキ5は、外側および内側昇降手段8A、8Bと同様な油圧ジャッキ装置からなり、副梁4に取り付けられたジャッキ本体12と、ジャッキ本体12と後述する吊り金具13との間に張り渡されたストランド14とからなっている。
【0048】
図3に示すように、吊り金具13は、蓄熱室1の外面に当てがわれる複数枚(この例では4枚)の円弧状の当て板15と、当て板15をリング状に締め付ける油圧シリンダ16とからなっている。吊り金具13は、当て板15同士を油圧シリンダ16により締め付けることによって、蓄熱室1に強固に固定することができ、かくして、蓄熱室1は、ジャッキ5によって吊り上げられる。油圧シリンダ16を使用することによって、蓄熱室1への吊り金具13の固定が容易かつ確実に行える。
【0049】
次に、この発明による、塔状構造物の解体工法を、塔状構造物として蓄熱室を例に挙げて、図7を参照しながら説明する。
【0050】
先ず、図7(A)に示すように、解体すべき蓄熱室1(No.1)の周囲に重量物昇降装置2を設置し、重量物昇降装置2間を上部梁3A、主梁3B、下部梁3Cにより連結し、かつ、ガイド部材6および副梁4を取り付け、副梁4にジャッキ5を設置する。この際、重量物昇降装置2の上部梁3Aが蓄熱室1の重心位置に来るように、重量物昇降装置2の高さを調整する。次に、蓄熱室1の下部(ブロックB1より上部)に吊り金具13を仮止めし、ジャッキ5のストランド14の下端に吊り金具13を固定する。そして、吊り金具13をシリンダ16により本締めして、蓄熱室1に吊り金具13を固定する。なお、蓄熱室1は、吊り金具13との間の摩擦力により吊り下げられるが、蓄熱室1の強度上、吊り金具13を強く締め付けられない場合には、蓄熱室1の外壁にブロック17を溶接し、ブロック17を介して吊り金具13を固定する(図2参照)。
【0051】
次いで、図7(B)に示すように、蓄熱室1のブロックB1を切断する。
【0052】
次いで、図7(C)に示すように、ジャッキ5により蓄熱室1を吊り上げた状態で、ブロックB1を水平に引き出して撤去する。
【0053】
次いで、図7(D)に示すように、ジャッキ5によって蓄熱室1を地面まで吊り下ろす。
【0054】
次いで、図7(E)に示すように、吊り金具13のみを、次に切断するブロックB2より上部まで吊り上げて蓄熱室1に固定し、同図に示すように、ブロックB2を切断し、撤去する。
【0055】
このような作業を、図7(F)に示すように、蓄熱室1の頭部1Aが上部梁3Aの直上に来るまで繰り返し行う。
【0056】
蓄熱室1の頭部1Aが上部梁3Aの直上に来たら、図7(G)に示すように、蓄熱室1の頭部1Aをクレーン等で撤去する。この撤去作業は、頭部1Aの高さが低いので、安全かつ容易に行える。
【0057】
頭部1Aを撤去したら、図7(G)に示すように、吊り金具13を上方に移動させた後、蓄熱室1の下部のブロックB3を切断し、図7(H)に示すように、ブロックB3を撤去する。
【0058】
次いで、図7(I)に示すように、ジャッキ5によって蓄熱室1を地面まで吊り下ろす。
【0059】
このような解体作業を繰り返し行って、図7(J)に示すように、最後のブロックBnを地面まで吊り下ろしたら、図7(K)に示すように、吊り金具13を外して、最後のブロックBnを撤去する。
【0060】
以上のようにして、蓄熱室1(No.1)の解体が終了する。蓄熱室1の解体が終了したら、次の解体すべき蓄熱室1(No.2)についても、蓄熱室1におけると同様にして解体する。
【0061】
以上は、解体すべき塔状構造物が蓄熱炉の場合であるが、他の塔状構造物であっても、この発明の解体工法を適用することがきることは勿論である。
【0062】
以上、説明したように、この発明によれば、仮設架構として伸縮可能な重量物昇降装置を使用することにより、仮設架構を容易に構築することができ、また、塔状構造物の大きさによらず、同じ重量物昇降装置を使用することができるので、仮設架構の標準化を図ることができ、さらに、重量物昇降装置は、他の塔状構造物の解体工事に転用することが可能となるので、解体コストを低減することができる。
【0063】
また、従来解体工法によれば、塔状構造物全体を覆うことが可能な大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全である。
【0064】
さらに、重量物昇降装置の頂部に解体前の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整すれば、重量物昇降装置を塔状構造物全体に亘り構築することなく、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【符号の説明】
【0065】
1:蓄熱室
1A:頭部
2:重量物昇降装置
3A:上部梁
3B:主梁
3C:下部梁
4:副梁
5:ジャッキ
6:ガイド部材
7A:外側支柱
7B:中間支柱
7C:内側支柱
8A:外側昇降手段
8B:内側昇降手段
9A:外側ストランド
9B:内側ストランド
10A:外側ジャッキ本体
10B:内側ジャッキ本体
11:ガイド部材
12:ジャッキ本体
13:吊り金具
14:ストランド
15:当て板
16:油圧シリンダ
17:ブロック
31:炉体
32:支柱
33:架台
34:ジャッキ
35:レール
36:台車
40ストランド
41a:上部ワイヤグリッピング装置
41b:下部ワイヤグリッピング装置
42a:上部アンカーベースプレート
42b:下部アンカーベースプレート
43:油圧ジャッキ
44:シリンダ
45:ピストン
46a:上部プレッシャープレート
46b:下部プレッシャープレート
47a:上部リリースプレート
47b:下部リリースプレート
48a:上部アンカーブロック
48b:下部アンカーブロック
49:連結棒
50a:上部クランピングシリンダ
50b:下部クランピングシリンダ
51a:上部ワイヤグリップ
51b:下部ワイヤグリップ
52a:ピストン
52b:ピストン
53a:貫通孔
53b:貫通孔
54:重量物
【技術分野】
【0001】
この発明は、塔状構造物の解体工法、特に、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、製鉄所に構築されている高さ数十メートルもある高炉の熱風炉用蓄熱室の解体は、大型クレーンを使用して行われていた。しかし、蓄熱室の周囲に大型クレーンの設置スペースがない場合には、大型クレーンを使用しない他の解体工法により解体せざるを得なかった。
【0003】
従って、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法の開発が強く望まれていた。
【0004】
特許文献1(特開2000−319709号公報)には、大型クレーンを使用しない高炉の解体工法が開示されている。以下、この解体工法を、従来解体工法といい、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図9は、解体前の既設高炉を示した図、図10は、搬送用レールの敷設要領の説明図、図11は、炉底部を除く各分割ブロックの解体要領の説明図である。
【0006】
従来解体工法は、先ず、図9に示すように、塔状構造物としての高炉の炉体31の支持柱32の下部に架台33を構築し、炉体31を複数個のリング状ブロック(A)から(F)に切断する。最下段のリング状ブロック(F)の高さと架台33の高さは等しい。
【0007】
次いで、図10に示すように、支持柱32に設置したジャッキ34によって、リング状ブロック(F)より上の炉体31を吊り上げた後、架台33とリング状ブロック(E)の下部に亘ってレール35を敷設する。
【0008】
次いで、レール35を走行する台車36をリング状ブロック(E)の下に移動させた後、炉体31を吊り下げて台車36上に乗せる。
【0009】
次いで、図11に示すように、リング状ブロック(E)から上の炉体31をジャッキ34により吊り上げる。
【0010】
そして、台車36によりリング状ブロック(E)を架台33上に移動し、複数ブロックに切断するなどして搬出する。
【0011】
以上の工程をリング状ブロック(D)から(A)につき繰り返し行って、炉体31を解体する。なお、最下段のリング状ブロック(F)は、台車36により移動させることなく複数ブロックに分解して搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−319709号公報
【特許文献2】特開2009−102972号公報
【特許文献2】特許第2828430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した従来解体工法によれば、高炉を大型クレーンを使用することなく解体することができるが、以下の問題があった。
【0014】
(a)高炉の炉体31を覆うことが可能な大型の支持柱32を仮設架構として構築する必要があるが、大きな荷重を支えるための補強が必要であり、この補強作業は、高所作業となり危険が伴う。
【0015】
(b)リング状ブロック(A)から(F)を搬出する架台33を構築する必要がある。
【0016】
(c)高炉を吊り上げるジャッキ34を炉体31と支持柱32との間に設置する必要があるが、この作業は高所作業となり危険が伴う。
【0017】
従って、この発明の目的は、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで解体することができる、塔状構造物の解体工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0019】
請求項1に記載の発明は、解体すべき塔状構造物を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、前記塔状構造物の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって前記塔状構造物を解体する、塔状構造物の解体工法において、前記塔状構造物の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置を仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により互いに連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記塔状構造物の下部を切断し、次いで、前記ジャッキにより切断箇所より上部の前記塔状構造物を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、前記ジャッキにより前記塔状構造物を吊り下ろし、次いで、前記塔状構造物の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行うことに特徴を有するものである。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記梁材にガイド部材を取り付けて、下降時の前記塔状構造物をガイドすることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することに特徴を有するものである。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載の発明において、前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、以下のような効果がもたらされる。
【0024】
(a)仮設架構として伸縮可能な重量物昇降装置を使用することにより、仮設架構を容易に構築することができ、また、仮設架構の標準化および他の塔状構造物の解体工事への転用が可能となるので、解体コストを低減することができる。
【0025】
(b)従来解体工法によれば、塔状構造物全体を覆うことが可能な大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全である。
【0026】
(c)重量物昇降装置の頂部に解体前の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整すれば、重量物昇降装置を塔状構造物全体に亘り構築することなく、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す平面図である。
【図2】蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】重量物昇降装置を示す正面図である。
【図6】重量物昇降装置を示す平面図である。
【図7(A)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、蓄熱室に吊り金具を固定する工程を示す正面図である。
【図7(B)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、ブロックB1を切断する工程を示す正面図である。
【図7(C)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断したブロックB1を撤去する工程を示す正面図である。
【図7(D)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断後の蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(E)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、吊り金具による吊り位置を変えた後、ブロックB2を切断する工程を示す正面図である。
【図7(F)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、炉頂部が重量物昇降装置の頂部に来るまで解体した蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(G)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、炉頂部を撤去した後、吊り金具の位置を変える工程を示す正面図である。
【図7(H)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断したブロックB3を撤去する工程を示す正面図である。
【図7(I)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、切断後の蓄熱室を下降させる工程を示す正面図である。
【図7(J)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、最後のブロックBnを下降させる工程を示す正面図である。
【図7(K)】この発明の、塔状構造物の解体工法の工程のうち、最後のブロックBnを撤去する工程を示す正面図である。
【図8】油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【図9】解体前の既設高炉を示した図である。
【図10】搬送用レールの敷設要領の説明図である。
【図11】炉底部を除く各分割ブロックの解体要領の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の、塔状構造物の解体工法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す平面図、図2は、蓄熱室の周囲に設置された重量物昇降装置を示す正面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図2のB−B線断面図である。
【0030】
図1から図4において、1は、解体すべき塔状構造物としての高炉の熱風炉用蓄熱室(No.1)であり、円筒形状をなし、数十メートルの高さを有している。蓄熱室と燃焼室とを備えた熱風炉は、高炉の羽口から炉内に送り込む熱風をつくる炉であり、一基の高炉に対して複数基、設けられていて、各熱風炉は、蓄熱と送風の状態を交互に繰り返し行う。
【0031】
2は、地盤上に設置された伸縮可能な複数台(この例では4台)の重量物昇降装置であり、蓄熱室1の周囲に蓄熱室1を取り囲むように四角形のコーナー部に配置されている。重量物昇降装置2間は、後述する上部梁3A、主梁3Bおよび下部梁3Cにより互いに連結され、重量物昇降装置2は、後述するジャッキ5により蓄熱室1を吊り上げるための仮設架構として使用される。重量物昇降装置2の頂部間を連結する上部梁3Aおよび重量物昇降装置2の下方部間を連結する下部梁3Cには、下降時の蓄熱室1をガイドするチルタンク等からなるガイド部材6が取り付けられている。上部梁3Aと下部梁3Cとの間の重量物昇降装置2間を連結する主梁3Bのコーナー部は、副梁4により連結され、副梁4にジャッキ5が取り付けられている(図4参照)。上部梁3Aの高さが蓄熱室1の重心位置以上の高さとなるように、重量物昇降装置2の頂部高さを調整することによって、蓄熱室1の全長に亘り重量物昇降装置2を設けなくても、蓄熱室1を安定支持することができる。蓄熱室1の安定支持は、ガイド部材6によりさらに向上する。
【0032】
なお、ジャッキ5の容量を大型化することで、重機工法ではできなかった、蓄熱室1内に耐火材、触媒等の内蔵物を組み込んだ状態での一体解体が可能となる。特に、ジャッキ工法は、振動を与えず解体ができるため、作業における安全性も高いといった利点を有する。
【0033】
重量物昇降装置2としては、例えば、特開2009−102972号公報に開示されている重量物昇降装置を使用する。以下、重量物昇降装置2を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図5は、重量物昇降装置を示す正面図、図6は、重量物昇降装置を示す平面図である。
【0035】
図5および図6に示すように、重量物昇降装置2は、外側支柱7A、中間支柱7B、内側支柱7Cが入れ子式に且つそれぞれ複数台の外側昇降手段8A、内側昇降手段8Bにより昇降可能に組み立てられ、内側支柱7Cの頂部間に上述した上部梁3Aが連結されている。
【0036】
外側昇降手段8Aおよび内側昇降手段8Bは、例えば、特許文献2に開示された油圧ジャッキ装置からなっている。この油圧ジャッキ装置については、後述する。
【0037】
外側昇降手段8Aは、中間支柱7Bの上下端間に張り渡された外側ストランド9Aと、外側支柱7Aに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な外側ジャッキ本体10Aとからなっている。外側ジャッキ本体10Aは、可動側に設けられる第1把持手段(後述する上部ワイヤグリッピング装置41a)と、外側ジャッキ本体10Aの固定側に取り付けられる第2把持手段(後述する下部ワイヤグリッピング装置41b)とを備え、外側ジャッキ本体10Aの伸張時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、一方、外側ジャッキ本体10Aの縮小時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、かくして、外側ジャッキ本体10Aの伸縮によって内側支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に間歇的に昇降する。
【0038】
内側昇降手段8Bは、内側支柱7Cの上下端間に張り渡された内側ストランド9Bと、中間支柱7Bに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な内側ジャッキ本体10Bとからなっている。内側ジャッキ本体10Bは、可動側に設けられる第1把持手段と、内側ジャッキ本体10Bの固定側に取り付けられる第2把持手段とを備え、内側ジャッキ本体10Bの伸張時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、一方、内側ジャッキ本体10Bの縮小時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、かくして、内側ジャッキ本体10Bの伸縮によって内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して間歇的に昇降する。
【0039】
このようにして、中間支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に昇降し、内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して昇降するが、これらの昇降は、各支柱7A、7B、7C間に取り付けられたチルタンク等からなるガイド部材11によって円滑に行われる。
【0040】
特許文献2に開示された油圧ジャッキ装置の概略を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図8は、油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【0042】
図8に示すように、油圧ジャッキ装置は、上部ワイヤグリッピング装置41aと下部ワイヤグリッピング装置41bとをストランド40に沿って上下に間隔をあけて設けたものから構成されている。上部ワイヤグリッピング装置41aの上部アンカーベースプレート42aは、油圧ジャッキ43のピストン45側に固定され、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部アンカーベースプレート42bは、油圧ジャッキ43のシリンダ44側に固定されている。油圧ジャッキ43は、対称位置に複数個、設置され、それぞれ油圧系統により同期して駆動される。
【0043】
上部ワイヤグリッピング装置41aの上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、上部アンカーブロック48aを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する上部クランピングシリンダ50aにより一体的に上下動する。同様に、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47とは、下部アンカーブロック48bを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する下部クランピングシリンダ50bにより一体的に上下動する。
【0044】
上部アンカーブロック48aには、上部クランピングシリンダ50aが固定され、そのピストン52a側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、上部クランピングシリンダ50aを作動させれば、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、一体的に上下動する。同様に、下部アンカーブロック48bには、下部クランピングシリンダ50bが固定され、そのピストン52b側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、下部クランピングシリンダ50bを作動させれば、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとは、一体的に上下動する。
【0045】
上部クランピングシリンダ50aにより、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとを同時に上下動させて、上部ワイヤグリッピング装置41aの上部ワイヤグリップ51aを強制的に上部アンカーブロック48aの貫通孔53aに対して緩めたり、貫通孔53aに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。同様に、下部クランピングシリンダ50bにより、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとを同時に上下動させて、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部ワイヤグリップ51bを強制的に下部アンカーブロック48bの貫通孔53bに対して緩めたり、貫通孔53bに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。
【0046】
この操作を上部および下部ワイヤグリッピング装置41a、41bについて交互に行い、ストランド40を把持した上部ワイヤグリッピング装置41aを油圧ジャッキ43により昇降させれば、ストランド40の先端に連結した重量物54の吊り上げ、吊り下ろしが行える。すなわち、上記支柱7B、7Cを昇降させることができる。
【0047】
ジャッキ5は、外側および内側昇降手段8A、8Bと同様な油圧ジャッキ装置からなり、副梁4に取り付けられたジャッキ本体12と、ジャッキ本体12と後述する吊り金具13との間に張り渡されたストランド14とからなっている。
【0048】
図3に示すように、吊り金具13は、蓄熱室1の外面に当てがわれる複数枚(この例では4枚)の円弧状の当て板15と、当て板15をリング状に締め付ける油圧シリンダ16とからなっている。吊り金具13は、当て板15同士を油圧シリンダ16により締め付けることによって、蓄熱室1に強固に固定することができ、かくして、蓄熱室1は、ジャッキ5によって吊り上げられる。油圧シリンダ16を使用することによって、蓄熱室1への吊り金具13の固定が容易かつ確実に行える。
【0049】
次に、この発明による、塔状構造物の解体工法を、塔状構造物として蓄熱室を例に挙げて、図7を参照しながら説明する。
【0050】
先ず、図7(A)に示すように、解体すべき蓄熱室1(No.1)の周囲に重量物昇降装置2を設置し、重量物昇降装置2間を上部梁3A、主梁3B、下部梁3Cにより連結し、かつ、ガイド部材6および副梁4を取り付け、副梁4にジャッキ5を設置する。この際、重量物昇降装置2の上部梁3Aが蓄熱室1の重心位置に来るように、重量物昇降装置2の高さを調整する。次に、蓄熱室1の下部(ブロックB1より上部)に吊り金具13を仮止めし、ジャッキ5のストランド14の下端に吊り金具13を固定する。そして、吊り金具13をシリンダ16により本締めして、蓄熱室1に吊り金具13を固定する。なお、蓄熱室1は、吊り金具13との間の摩擦力により吊り下げられるが、蓄熱室1の強度上、吊り金具13を強く締め付けられない場合には、蓄熱室1の外壁にブロック17を溶接し、ブロック17を介して吊り金具13を固定する(図2参照)。
【0051】
次いで、図7(B)に示すように、蓄熱室1のブロックB1を切断する。
【0052】
次いで、図7(C)に示すように、ジャッキ5により蓄熱室1を吊り上げた状態で、ブロックB1を水平に引き出して撤去する。
【0053】
次いで、図7(D)に示すように、ジャッキ5によって蓄熱室1を地面まで吊り下ろす。
【0054】
次いで、図7(E)に示すように、吊り金具13のみを、次に切断するブロックB2より上部まで吊り上げて蓄熱室1に固定し、同図に示すように、ブロックB2を切断し、撤去する。
【0055】
このような作業を、図7(F)に示すように、蓄熱室1の頭部1Aが上部梁3Aの直上に来るまで繰り返し行う。
【0056】
蓄熱室1の頭部1Aが上部梁3Aの直上に来たら、図7(G)に示すように、蓄熱室1の頭部1Aをクレーン等で撤去する。この撤去作業は、頭部1Aの高さが低いので、安全かつ容易に行える。
【0057】
頭部1Aを撤去したら、図7(G)に示すように、吊り金具13を上方に移動させた後、蓄熱室1の下部のブロックB3を切断し、図7(H)に示すように、ブロックB3を撤去する。
【0058】
次いで、図7(I)に示すように、ジャッキ5によって蓄熱室1を地面まで吊り下ろす。
【0059】
このような解体作業を繰り返し行って、図7(J)に示すように、最後のブロックBnを地面まで吊り下ろしたら、図7(K)に示すように、吊り金具13を外して、最後のブロックBnを撤去する。
【0060】
以上のようにして、蓄熱室1(No.1)の解体が終了する。蓄熱室1の解体が終了したら、次の解体すべき蓄熱室1(No.2)についても、蓄熱室1におけると同様にして解体する。
【0061】
以上は、解体すべき塔状構造物が蓄熱炉の場合であるが、他の塔状構造物であっても、この発明の解体工法を適用することがきることは勿論である。
【0062】
以上、説明したように、この発明によれば、仮設架構として伸縮可能な重量物昇降装置を使用することにより、仮設架構を容易に構築することができ、また、塔状構造物の大きさによらず、同じ重量物昇降装置を使用することができるので、仮設架構の標準化を図ることができ、さらに、重量物昇降装置は、他の塔状構造物の解体工事に転用することが可能となるので、解体コストを低減することができる。
【0063】
また、従来解体工法によれば、塔状構造物全体を覆うことが可能な大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全である。
【0064】
さらに、重量物昇降装置の頂部に解体前の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整すれば、重量物昇降装置を塔状構造物全体に亘り構築することなく、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【符号の説明】
【0065】
1:蓄熱室
1A:頭部
2:重量物昇降装置
3A:上部梁
3B:主梁
3C:下部梁
4:副梁
5:ジャッキ
6:ガイド部材
7A:外側支柱
7B:中間支柱
7C:内側支柱
8A:外側昇降手段
8B:内側昇降手段
9A:外側ストランド
9B:内側ストランド
10A:外側ジャッキ本体
10B:内側ジャッキ本体
11:ガイド部材
12:ジャッキ本体
13:吊り金具
14:ストランド
15:当て板
16:油圧シリンダ
17:ブロック
31:炉体
32:支柱
33:架台
34:ジャッキ
35:レール
36:台車
40ストランド
41a:上部ワイヤグリッピング装置
41b:下部ワイヤグリッピング装置
42a:上部アンカーベースプレート
42b:下部アンカーベースプレート
43:油圧ジャッキ
44:シリンダ
45:ピストン
46a:上部プレッシャープレート
46b:下部プレッシャープレート
47a:上部リリースプレート
47b:下部リリースプレート
48a:上部アンカーブロック
48b:下部アンカーブロック
49:連結棒
50a:上部クランピングシリンダ
50b:下部クランピングシリンダ
51a:上部ワイヤグリップ
51b:下部ワイヤグリップ
52a:ピストン
52b:ピストン
53a:貫通孔
53b:貫通孔
54:重量物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体すべき塔状構造物を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、前記塔状構造物の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって前記塔状構造物を解体する、塔状構造物の解体工法において、
前記塔状構造物の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置を仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により互いに連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記塔状構造物の下部を切断し、次いで、前記ジャッキにより切断箇所より上部の前記塔状構造物を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、前記ジャッキにより前記塔状構造物を吊り下ろし、次いで、前記塔状構造物の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行うことを特徴とする、塔状構造物の解体工法。
【請求項2】
前記梁材にガイド部材を取り付けて、下降時の前記塔状構造物をガイドすることを特徴とする、請求項1に記載の、塔状構造物の解体工法。
【請求項3】
前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の、塔状構造物の解体工法。
【請求項4】
前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の、塔状構造物の解体工法。
【請求項1】
解体すべき塔状構造物を水平に切断し、次いで、切断したブロックを撤去する解体作業を、前記塔状構造物の下部から上部に向かって順次、繰り返し行うことによって前記塔状構造物を解体する、塔状構造物の解体工法において、
前記塔状構造物の周囲に複数台の伸縮可能な重量物昇降装置を仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により互いに連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記塔状構造物の下部を切断し、次いで、前記ジャッキにより切断箇所より上部の前記塔状構造物を吊り上げ、次いで、切断したブロックを撤去し、次いで、前記ジャッキにより前記塔状構造物を吊り下ろし、次いで、前記塔状構造物の下部を切断し、そして、切断したブロックを撤去する工程を繰り返し行うことを特徴とする、塔状構造物の解体工法。
【請求項2】
前記梁材にガイド部材を取り付けて、下降時の前記塔状構造物をガイドすることを特徴とする、請求項1に記載の、塔状構造物の解体工法。
【請求項3】
前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の、塔状構造物の解体工法。
【請求項4】
前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の、塔状構造物の解体工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図7(C)】
【図7(D)】
【図7(E)】
【図7(F)】
【図7(G)】
【図7(H)】
【図7(I)】
【図7(J)】
【図7(K)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図7(C)】
【図7(D)】
【図7(E)】
【図7(F)】
【図7(G)】
【図7(H)】
【図7(I)】
【図7(J)】
【図7(K)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−108324(P2013−108324A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256186(P2011−256186)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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