説明

塗工される紙製品並びに塗工される紙製品を製造するための方法及び装置

塗工される紙製品並びにその製造のための方法及び装置。紙製品は、原紙を含み、原紙の空孔率は、少なくとも300ml/min(ベンツェン)であり、且つ、原紙の少なくとも一方の側は、色素含有塗工層で被覆される。本発明に従った塗工層は、均質なフィルムを含み、フィルムは、結合剤及び色素から成り、層の坪量のばらつきが5%未満であるよう、並びに、塗工層が原紙に浸透しないよう、カーテン塗工を用いて原紙の表面上に導かれる。その場合には、塗工層は、原紙の表面の少なくとも95%を被覆する。本発明を用いることで、そのような良好な被覆が達成されるので、原紙の多孔性は、塗工紙のグロス又は平滑度、並びに、どのように紙が印刷原紙として機能するかに影響を及ぼさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に従った塗工される紙製品に関する。
【0002】
このような製品は原紙を含み、原紙の空隙率は、少なくとも300ml/min(ベンツェン)であり、原紙の少なくとも1つの表面は、色素含有塗工層で塗工される。
【0003】
本発明は、請求項5の前文に従った塗工紙製品を製造する方法、並びに、請求項13に従った装置にも関する。
【背景技術】
【0004】
製紙において本質的なことは、他の大量製品プロセスにおけると同様に、コストの継続的な低下である。固定費を削減する2つの効果的な方法がある。製紙製造ライン幅を増大すること、或いは、相応して、速度を増大することである。速度を増大することは、薄い紙等級のために特に重要である。ここで、薄い紙等級は、90g/m未満の坪量を有する最終製品を意味する。その場合には、基本ウェブ(web)の坪量は、ほぼ20〜60g/mであり、塗膜重量は、典型的には、各側で2〜15g/mである。
【0005】
原紙の製造及び塗工は、固定費に関して、即ち、機械類に含まれる資本並びにスタッフ費用が考慮されるときに、最も本質的なサブプロセスである。速度が今日一般的使用における装置を用いて増大されるとき、幾つかの問題に直面する。最終製品の品質並びに原紙の製造における塗工機の使用に関して特に問題であるのは、速度が増大されるときに、湿式ウェブの制御を維持するために、乾燥区画の前方端部と湿式プレスとの間のドロー差が増大されなければならないことである。湿式ウェブの引張りは、原紙の構造の広がりをもたらし、孔がその中に生成され、その孔を通じて、塗工機で原紙の表面上に塗布される塗工ペーストが、最悪の場合には、ペーストが紙に完全に浸透するよう、原紙中に強制的に入れられる。そのような孔の広がりは、ある程度は常に起こるが、上述のドロー差が増大するとき、問題はかなり悪くなり、ウェブの制御を保証するために、もし抄紙機の速度が増大されるならば、このドロー差は増大されなければならない。
【0006】
基本ウェブの空隙率の増大は、高速でも特に有害である。何故ならば、今日、フィルムサイジングは、高塗工速度の最良の可能性をもたらすからである。この技法において、ペーストは、所謂塗布シリンダ上に移転され、塗布されるべきウェブはロールニップに導かれ、ロールニップで、ペーストは塗工層の制御された分割を通じて原紙上に移転される。しかしながら、ニップ内には、かなりの圧力パルスが紙及びペーストの上に集中される。結果的に、紙の空隙率が高過ぎるならば、ペーストは原紙さえも通じて浸透する。
【0007】
高速でのフィルムサイジングに関して、新しい問題に直面する。何故ならば、塗工速度と一致するペーストの走行性流動学を適用するために、ペーストは、速度が増大するときに、水で希釈されなければならないからである。もしペーストが過剰に希釈されるならば、煙霧がフィルムサイジング中に起こり、塗工されるべきペーストの品質が最終的には破損される。加えて、ペーストを希釈するとき、その粘性は減少し、それは原紙により一層容易に浸透する。
【0008】
上述の問題を解消するために、フィルムサイジングにおいて、ベーストの乾燥固体を最大限化し、可能な限り小さな計測ロッドを高い回転速度で使用することが有用である。その場合には、1500〜2000m/minの速度範囲を利用することが可能である。
【0009】
しかしながら、実際には、フィルム塗工において、ニップ内に送り出されるフィルムの厚さは、最適よりも大きく、フィルムは、もはや2つのピースに分割され得ず、その代わり、それは3つのピースに分かれる。初期的に、フィルムの中央部分は煙霧として見える。もし速度がさらに増大されるならば、或いは、ペーストが希釈される(ペーストがより厚くなる)ならば、ペーストは、ニップの中央から吹き出す。
【0010】
今日、ブレード塗工においては、>1800m/minの速度さえもが達成され得る。しかしながら、速度の増大に伴ってブレード圧力が増大し、結果的に、塗工重量の制御は困難であり、ブレードひげがより容易に形成される。制御変数として、ペーストの希釈及び/又は保水の増大が使用される。ブレードステーションでの高速、低い乾燥固体、及び、低い塗工重量は、走行性リスクであり、それらはウェブ破損を引き起こし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、既知の技術に関連する不利点を解消し、塗工される紙製品の製造のための完全に新しい解決を作り出すことである。
【0012】
具体的には、本発明の目的は、多孔性紙品質を高速で塗工するためのプロセス及び装置を作り出すことである。本発明は、少なくとも2000m/minの塗工速度を使用することによって、紙ウェブ及び厚紙ウェブを効果的に塗工するために使用され得る解決にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、塗工層が多孔性紙ウェブの上に導かれ、塗工層は、結合剤及び色素から成る均質なフィルムを含み、塗工層は、非接触式に、換言すれば、塗工層を塗工機からウェブの上に導くことによって、原紙の上に導かれ、塗工機のノズル(又は所謂「塗布/散布素子)はウェブに接触しない。最適には、カーテン塗工がそのような塗工方法として使用される。
【0014】
カーテン塗工において、ウェブの上に導かれるフィルムは薄く、均一な厚さを有する。フィルムの厚さは、普通、約1〜100マイクロメートルであり、層の坪量のばらつきは極めて低く抑えられ、最適には、ばらつきは、フィルムの幅を通じて、<±10%、具体的には、<±5%である。均質なフィルムとしての塗工層を紙ウェブの表面の上に非接触式に塗布することによって、原紙への塗工層の浸透は防止され得るし、同時に、極めて良好な被覆(coverage)が達成され得る−概ね、塗工層は、原紙の表面の少なくとも95%、具体的には、少なくとも97%、最適には、少なくとも98%を被覆する。ここで、「被覆」とは、原紙の少なくとも95%(或いは、少なくとも97%、或いは、相応して、少なくとも98%)が、少なくとも1つのフィルム層によって、紙ウェブの少なくとも一方の側の上に被覆されるよう、塗布/散布素子からのフィルムが原紙の表面の上に導かれることを意味する。
【0015】
本発明によれば、カーテン塗工が、極めて高い、好ましくは、少なくとも約2000m/minの塗工速度で使用され得る。典型的には、速度は、動作範囲において約2000〜2800m/minである。結果として、特異な解決が得られ、そこでは、2000m/min以上の製造速度を使用することによって生成される紙ウェブを塗工するために、1つの塗工機がオンライン又はオフラインで使用される。本発明によれば、ここで、「製造速度」とは、1つの単一の抄紙機のウェビング(webbing)速度或いは2つ以上の抄紙機の結合されたウェビング速度を意味する。第一の場合には、塗工はオンライン又はオフラインで遂行され得る。後者の場合には、塗工の少なくとも一部はオフラインで遂行される。オンライン塗工は、紙の中間ローリングなしに抄紙機と関連して遂行される塗工を意味し、オフライン塗工は、相応して、紙が、抄紙機の後、塗工の前に、リール送り込みされることを意味する。本発明において、カーテン塗工機の塗工速度は、前記製造速度よりも少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%高いように選択される。幾つかの抄紙機からの紙ウェブが1つの単一のカーテン塗工機を使用して塗工されるとき、ウェブの空孔率は200ml/min(ベンツェン)以上であり得る。
【0016】
より具体的には、本発明に従った紙製造は、請求項1の特徴部分において述べられるものによって特徴付けられる。
【0017】
本発明に従った方法は、再び、請求項5の特徴部分において述べられるものによって特徴付けられる。
【0018】
本発明に従った装置は、請求項13の特徴部分において述べられているものによって特徴付けられる。
【0019】
本発明を用いることで、かなりの利点が得られる。よって、本発明に従って作動することによって、製造される紙製品の品質を減少することなしに、紙製造ラインの速度を特にかなり増大することが可能である。塗工方法として前記カーテン塗工を選択することによって、本発明によれば、極めて高い塗工速度で運転することが可能であり、加えて、この方法の実施は、高速で増大する空孔率から発生する上記問題を解決する。本発明において、ペーストは増大する速度に伴って希釈される必要はない。その他に、本発明を実施するとき、原紙の空孔率は、極めて高速が使用されるとき、紙品質にとって、もはや決定的に重要ではない。具体的には、以下に示される試験結果は、カーテン塗工が使用されるときに、原紙の空孔率が塗工される紙のグロス又は平滑度に影響を及ぼさず、紙が印刷原紙としてどれだけ良好かに影響を及ぼさないような良好な被覆が達成されることを示している。
【0020】
空孔率に関して、塗工フィルムが、紙の表面の少なくとも95%、具体的には、少なくとも98%を被覆することが本質的である。印刷するとき、隠蔽力(covering power)が、印刷品質の平滑度並びに網点(halftone dot)の品質と相関することを発見した。換言すれば、被覆のオーダが上記に示されるようであるとき、斑点はなく、或いは、斑点は、最大でも、紙製品の外見に影響を及ぼさないように小さい。また、塗工の被覆が良ければ良いほど、点の広がり/欠落点の量はより小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において、本発明は、詳細な記載並びに幾つかの実施例の助けを借りて、より綿密に検討される。
【0022】
本発明において、「多孔性」紙とは、その空隙率が少なくとも300ml/min(ベンツェン)、具体的には、少なくとも310ml/min(ベンツェン)、一般的には、少なくとも340ml/min(ベンツェン)でさえある紙を意味する。紙の通常の空隙率は、約300〜600ml/minである。
【0023】
その坪量が紙側当たり最大で20g/m、典型的には、最大で約15g/m、具体的には、紙側当たり最大で約12g/mである「薄い」塗工層が、多孔性紙の上に塗布される。ノズルから均質で破損されないフィルム(film)を依然としてもたらす最低厚さ限界であるものによって、塗工層の最少厚さが決定される。一般的には、約1g/m、具体的には、約2g/mが、下限として設定され得る。
【0024】
原紙(即ち、未塗装紙ウェブ)の坪量は、概ね15〜150g/m、典型的には、20〜100g/m、最も適切には、約20〜60g/mである。
【0025】
結果的に、製造されるべき紙の坪量は。概ね約20〜160g/mの範囲内にあるが、本発明は、冒頭において上記に特定される薄い紙品質(約20〜70g/m)の製造のために、より好適に使用される。
【0026】
本発明は、例えば、LWC紙又はオフセット紙のような異なる薄い印刷紙を製造するために使用され得る。
【0027】
本発明に従った渡航し製品を製造する方法において、動作方法は、普通、以下の通りである。
【0028】
先ず、少なくとも300ml/min(ベンツェン)の空隙率を備える原紙ウェブが、抄紙機で形成される。紙ウェブは、紙パルプを十分な厚さ(典型的には、約0.1〜1%の固体分)に流し込み、それをワイヤの上に広げることによって、それ自体が既知の方法で形成される。充填剤が、最も適切には、抄紙機又は厚紙機のヘッドボックス内で、繊維スラッシュに加えられる。加えられる量は、一般的には、パルプ繊維の重量の概ね約1〜50重量%である。充填剤の他に、保持薬品及び消泡剤のような添加剤がしばしば繊維スラッシュに加えられる。
【0029】
抄紙機で、繊維スラッシュは、普通、通常の技法を使用して単一層にウェブ状にされるが、多層製品を製造することも可能である。多ウェブ化技法が、これらの製品の製造のために適用され得る。適切なパルプ送出し構成が、例えば、フィンランド国特許出願第105118号及び欧州特許出願第824157号に記載されている。
【0030】
然る後、抄紙機から来る原紙ウェブの少なくとも片面が、色素含有塗工組成で塗工される。塗工のために、少なくとも2000m/min、最も適切には少なくとも2100m/min以上、好適には2500m/min以上でさえある塗工速度を備える特定の塗工機が使用される。
【0031】
最も適切には、この場合には、塗工組成が紙ウェブの表面上に広げられる。組成の粘性は、均質且つ自立型のフィルムを生成するのに十分であり、その正面縁部は移動ウェブに固定され、よって、塗工機からフィルムを引っ張る。塗布装置/ノズルの幅は、意図される95%(或いはそれよりも大きい)範囲を許容するために、最も適切には、少なくとも、塗工されるべき紙ウェブの幅ぐらいの大きさである。紙ウェブが塗工フィルムで塗工され、その縁部が紙ウェブの縁部を僅かに越えるように作動することさえも可能である。
【0032】
上述されたように、カーテン塗工を使用するならば、紙側当たり約2〜30g/mの坪量を備える塗工層が、紙ウェブの表面上に形成される。
【0033】
本発明によれば、最小の流量速度/幅は、カーテンが安定的であり且つ所望の厚さを有することを許容するために、1.0cm/s、具体的には、少なくとも1.5cm/s、最大で、約10cm/sを超えなければならない。動的表面張力は、約20〜60mN/m、具体的には、約35〜55mN/m、典型的には、約40mN/m未満でなければならない。
【0034】
塗工は非接触式に起こり、その場合には、塗工カーテンは、紙ウェブの上から、そこに導かれる。典型的には、約1〜1000mmの間隙が、カーテン塗工機のノズルと紙ウェブとの間に残り、最も好ましくは、間隙は約1〜500mm、具体的には、約10〜500mmであり、或いは、100〜500mmでさえある。高さは、塗工重量及び塗工速度に依存する。ノズルで、フィルムの厚さは、概ね約0.1〜10mm、具体的には、約1〜5mmであり、自由落下の場合には、フィルムはより薄くなり、100ミクロンよりも下である。シートパックの厚さは、約1〜50ミクロン、具体的には、約2〜30ミクロン、典型的には、約5ミクロンである。
【0035】
フィルムは、極めて均一な厚さであり且つ結合剤及び色素から成る均質なフィルムを含む。紙の表面で、フィルムの坪量のばらつきは、5%よりも小さく、具体的には、約3%よりも小さく、典型的には、約0.1〜2.5%よりも小さい。ばらつきを決定するために、坪量は、個々の小さな、例えば、約1〜100mmの測定地点から決定され得る。これらから決定される値は、層の平均坪量と比較される。測定地点は、最も好ましくは、カーテンの全幅を通じて等距離に選択される。
【0036】
カーテン塗工は、それ自体が既知の塗工技法であり、且つ、異なる製品の塗工のために、チョコレートキャンディ及び不規則形状の類似物体の塗工のためにさえ使用される塗工技法である。アルミニウム箔及び段ボールのような移動ウェブを塗工するために本方法が使用される用途は、1960年代に一般的になった。何故ならば、カーテン塗工が、以前よりもかなり高い速度を使用することを可能にしたからである。カーテン塗工の最新の開発段階の1つは多カーテン塗工であり、それは感光紙産業において開発された。
【0037】
塗工の脱泡をどのようにより効果的に遂行するかが発見されたとき、抄紙機の速度レベルでカーテン塗工を使用することも可能であるようになった。
【0038】
今日、とりわけ、感光紙、インクジェット紙、及び、特殊紙、並びに、パッケージの製造のために、カーテン塗工が使用される。将来における可能な用途は、とりわけ、紙の機能的塗工及びパッケージ製品である。実験装置を使用するならば、最大で25層さえも同時に塗工することが可能である。
【0039】
3つの異なる種類のカーテン塗工装置がある。即ち、スロット、スライド、及び、カーテン型の解決策である。全ての3つの一般的な動作原理は、塗工装置に送り込まれる全ての塗工材料が、塗工されるべき表面に移転されることである。よって、湿式フィルムの平均的な厚さは、入力流速、塗工装置の幅、及び、塗工されるべき被印刷物の速度によって決定され、それは塗工の流体力学的特性に依存する。全ての3つの方法は、多層塗工にも適する。これらの方法の間の最も重要な相違は、移動する被印刷物及び塗工の自由流れ距離、重力に対する流れの方向、及び、流れている塗工によって被印刷物に誘発される力である。
【0040】
典型的には、スロット及びスライド塗工において、自由落下距離は短いか、或いは、存在しない。結果的に、紙業界における主要な関心は、カーテン塗工に集中されている。何故ならば、この方法においては、塗工層の塗布は、かなり長い(〜50−30cm)自由落下を使用することによって遂行されるからである。カーテン塗工の2つの最良の特性は、所望であれば、平坦でない表面に極めて薄い均一な層を塗工する能力、並びに、高速を使用する可能性である。塗工は被印刷物との接触なしに行われるので、該方法は干渉に耐える。
【0041】
本発明に従って動作されるとき、塗工層は塗工に関連する原紙に浸透し得ない。実際には、これは、通常、塗工の最大約10重量%、最適には5重量%未満、具体的には3重量%未満、具体的には約1重量%未満が、ウェブの表面層の下に浸透することを意味する。ウェブの「表面層」の厚さは、典型的には、ウェブの厚さ全体の最大20%、具体的には最大10%、最適には最大5%である。次いで、塗工されるべきウェブの全厚は、通常、約30〜120マイクロメートルである。
【0042】
本発明によれば、塗工は、単一塗工として或いは二重塗工として遂行され得る。その場合には、塗工ペーストは、単一塗工ペーストとして並びに所謂下塗及び表面塗工ペーストとして使用され得る。三重塗工も(或いは多数の4〜10重塗工さえも)可能である。一般的には、本発明に従った塗工混合物は、少なくとも1つの色素或いは色素の混合物の10〜100重量部(parts by weight)、少なくとも1つの結合剤の0.1〜30重量部、及び、それ自体既知の他の添加物の1〜10重量部を含む。
【0043】
下塗混合物の典型的な組成は、以下の通りである。

塗工色素(例えば、粗い炭酸カルシウム) 100重量部
結合剤 色素の1〜20重量%
添加剤及び補助剤 色素の0.1〜10重量%
水 残余

【0044】
固形分が概ね40〜70%であるよう、水が下塗に加えられる。本発明によれば、表面塗工混合物又は単一塗工混合物の組成は、例えば、以下の通りである。

塗工色素I(例えば、精細な炭酸) 10〜90重量部
塗工色素II(例えば、精細なカオリン) 10〜90重量部
全色素 100重量部
結合剤 1〜20重量部
添加剤及び補助剤 0.1〜10重量部
水 残余

【0045】
乾燥固形分が典型的には50〜75%であるよう、水がそのような塗工混合物に加えられる。
【0046】
本発明によれば、上記に提示される塗工混合物では、急勾配の粒子サイズ分布を有する色素を使用することが可能であり、それは、最大35%の色素粒子が0.5μmよりも小さく、好ましくは最大で15%が0.2μmよりも小さいことを意味する。
【0047】
本発明は、如何なる色素とも使用され得る。そのような色素の例は、沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、蓚酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン(含水ケイ酸アルミニウム)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、二酸化チタン、及び、亜硫酸バリウム、並びに、それらの混合物である。合成色素を使用することも可能である。上述の色素のうちで、主要な色素は、カオリン、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、石膏であり、それらは、一般的には、塗工混合物中の乾燥固体の50%より上を構成する。焼成カオリン、二酸化チタン、サチンホワイト、水酸化アルミニウムフッ化ケイ酸ナトリウム、及び、プラスチック色素が追加的な色素であり、一般的には、使用される量は、混合物中の乾燥固体の25%未満である。特殊色素のうち、特殊品質カオリン及び炭酸カルシウム、並びに、亜硫酸バリウム及び酸化亜鉛が述べられなければならない。
【0048】
より好ましくは、本発明は、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、及び/又は、亜硫酸バリウム、並びに、それらの混合物である。それらの場合には、下塗混合物中のより好適な主要色素は、炭酸カルシウム又は石膏であり、表面塗工では、炭酸カルシウム又は石膏及びカオリンの混合物である。
【0049】
塗工混合物中の結合剤として、紙製造において使用される如何なる既知の結合剤を使用することも可能である。個々の結合剤の他に、結合剤の混合物を使用することも可能である。典型的な結合剤の例は、エチレン不飽和化合物の重合体又は共重合体、例えば、ブタジエンスチレン型の共重合体から成る合成ラテックスであり、それは、アクリル酸、イタコン酸、又は、マレイン酸のようなカルボキシ基を含む共重合用単量体、及び、カルゴキシ基を含む共重合用単量体を有する酢酸ポリビニルも有し得る。上記に引用された材料と共に、結合剤として、例えば、水溶性重合体、澱粉、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、及び、ポリビニルアルコールを使用することも可能である。
【0050】
さらに、塗工組成中に分散剤(例えば、ポリアクリル酸のナトリウム塩)のような従来的な添加剤及び補助剤、混合物の粘性及び保水性に影響を与える剤(例えば、CMC、ハイドロキシエチルセルロース、ポリアクリレート、アルギン酸、ベンゾエート)、潤滑剤、耐水性を向上するために使用される硬化剤、光学補助剤、消泡剤、pH調整剤、及び、保存剤を使用することも可能である。潤滑剤の例は、スルフォン酸油、エステル、アミン、カルシウム、又は、ステアリン酸アンモニウムを含む。耐水性を向上する剤の例は、グリオキサールである。消泡剤の例は、リン酸エステル、シリコン、アルコール、エーテル、植物油である。ph調整剤の例は、水酸化ナトリウム及びアンモニアである。最後に、保存剤の例は、ホルムアルデヒド、フェノール、第四アンモニウム塩である。
【0051】
カーテン塗工によって提供される塗工の隠蔽力は、印刷品質の平滑度並びに網点の「品質」と相関する。これは、隠蔽力がカーテン塗工のオーダであるとき、殆ど斑点がないことを意味する。また、塗工の被覆が良ければ良いほど、点の広がり/欠落点の量はより小さい。
【0052】
本発明を用いるならば、塗工され、且つ、選択的に、カレンダ処理されたセルロース含有材料ウェブを製造することも可能であり、それは優れた印刷特性、良好な平滑度、並びに、高い隠蔽力及び明度を有する。ここで、「セルロース含有材料」とは、一般的に、紙、厚紙、又は、セルロースを含み且つリグノセルロース含有原材料、特に、木、一年植物、又は、多年生植物から供給される対応材料を意味する。問題の材料は、木を含有し得るし或いは木を含有し得ず、且つ、それは機械的、化学機械、又は、化学パルプから製造され得る。パルプ及び機械的パルプは漂白され得るし或いは漂白され得ない。再生繊維、特に、再生紙又は再生厚紙も材料中に含まれ得る。
【0053】
本発明に従った塗工紙製品を製造する装置は、
− そのような原紙ウェブの製造のための抄紙機装置を含み、その空孔率は少なくとも300ml/min(ベンツェン)であり、その場合には、装置の製造速度は少なくとも2000m/minであり、
− 色素含有塗工組成を備える抄紙機で製造される原紙ウェブの塗工のために使用され得る塗工機を含む。
【0054】
塗工機は、少なくとも2000m/minであり且つ同時に抄紙機装置の製造速度よりも少なくとも2.1倍高い塗工速度で使用され得るカーテン塗工機を含む。
【0055】
本発明によれば、装置は2つ又はそれよりも多くの抄紙機を含み得る。そのウェビング速度は、典型的には、最大で約1000m/minである。これらの抄紙機は、好ましくは、塗工機と共に同一の工場ホール内に配置される。塗工機は、この抄紙機から来るリールが、例えば。リールをロールすることによって塗工機に直接的に移転可能であるよう、例えば、1つの抄紙機と一致して配置され得るのに対し、他の抄紙機/複数の抄紙機から、リールはこれらの複数の抄紙機から軸方向に移転される。幾つかの抄紙機の場合には、カーテン塗工機の塗工速度は、抄紙機の結合ウェビング速度よりも少なくとも幾分高いように選択される。製造中断を避けるために、約10%、特に、少なくとも20%の塗工速度を選択することが有利であるが、実際には、抄紙機(複数の抄紙機)の製造速度よりも最大で約100%高い。
【0056】
上述されたように、1つ又はそれよりも多くの抄紙機から来る紙ウェブが1つの塗工機で塗工される場合には、装置にコンベヤを備え付けることが有利であり、コンベヤは紙リールを抄紙機から塗工ステーションに移転するために使用される。
【0057】
以下の非限定的な実施例は、本発明をより綿密に記載する。
【0058】
[実施例]
塗工試験運転が試験的規模並びに製造中に行われた。所要の原紙が製造中に並びに試験機を用いて製造された。
【0059】
[原紙]
原紙を製造するために試験装置が使用され、原紙の原材料はクラフトパルプ及び機械パルプである。目的は、現代的な原紙製造技法(ギャップフォーマー、シュープレス)を使用して、典型的なLWC原紙を製造することであった。
【0060】
原紙は2つの異なる速度、即ち、27m/s(1620m/min)及び32.5m/s(1950m/min)で製造された。表1は、最も重要な運転値及び原紙特性を示している。表の値が示すように、速度の増大は、運転性に関して、より大きなドロー差を必要とする。次いで、これは原紙の空孔率を明らかに増大する(この試験では60%よりも大きい)。
【0061】
[表1]試験機を用いて製造された原紙
【0062】
【表1】

【0063】
原紙の試験運転は製造中にも遂行される。この運転では、空孔率レベルを変更するために、質量の研磨、機械仕上げ、及び、プレスのドロー差が変更される。
【0064】
試験原紙は表2に示されている。原紙3は低い空孔率地点を示しているのに対し、原紙4は高い空孔率地点を示している。これらの地点では、カレンダ処理は通常よりも軽い。原紙5は通常機械仕上げ製品原紙であり、それはそのよりコンパクトな構成を説明している。
【0065】
[表2]製造原紙
【0066】
【表2】

【0067】
[塗工試験]
原紙4及び5は、試験的規模で塗工試験運転中に塗工された。
【0068】
60部のHydrocarb90及び40部のHydragloss90を具備する従来的なペースト配合が塗工ペーストとして使用された。ラテックス及びペーストの他の添加剤は周知であり、ブレード塗工及びフィルム塗工に良く適している。
【0069】
試験運転では、両方の原紙は、ジェットブレードステーション並びにフィルムサイザー(film sizer)で塗工された。両方の場合では、2つの異なる塗工重量が試験された。塗工中、目標は可能な限り現実的条件として達成された。即ち、塗工速度は2000m/minであり、ペースト温度は35℃であり、塗工ステーションの前にウェブを40℃の目標温度に加熱するために、下方予熱機が使用された。試験中、目標は、速度及び塗工重量の制御に関して、最大固形分を使用することであった。
【0070】
塗工サンプルは、Option8多ニップカレンダを使用して最終カレンダ処理された。カレンダ仕上げ速度は、1200m/min、線形荷重は200kN/m、熱ロールの温度は110/120℃であった。塗工され且つ最終カレンダ処理されたサンプルは、KCIからのHSWO試験印刷機で標準密度に印刷された。
【0071】
紙の基本的な技術的な値は、非印刷サンプル及び印刷サンプルの両方から決定された。加えて、モットリング(mottling)値は、C70及びB70%場からのPapeye装置を用いた印刷サンプルから決定された。その上、電子顕微鏡、即ち、SEMを使用することで、隠蔽力は非印刷サンプルから決定された。該方法では、画像は後方散乱構成を使用して取られ、隠蔽力は画像分析法を用いて画像から決定された。
【0072】
[表3]ブレード及びフィルム被覆運転からの結果
【0073】
【表3】

【0074】
7g/mの塗工重量を備えるブレード塗工サンプル:
− 約2単位(unit)、より低い多孔性サンプルのグロス(gloss)。
− 0.2μm、より粗い多孔性サンプルの表面。
− 印刷グロス及び平滑度においても、同一の差が観察され得る。
− 多孔性サンプルのB70及びC70の双方のモットリングは、0.2〜0.3単位、より高い。
− 多孔性サンプルの隠蔽力は、約2単位、より低い。
− 多孔性サンプルのプリントスルーは、より高い。
【0075】
差は類似するが、10g/mの塗工重量を備えるブレード塗工サンプルのために、より大きい。
【0076】
7g/mの塗工重量を備えるフィルム塗工サンプル:
− 多孔性サンプルのグロスは、約6単位、より低いが、印刷グロスの差は、約2単位のみである。
− 多孔性サンプルの表面は、非印刷表面及び印刷表面の両方において約0.3μm、より粗い。
− 多孔性サンプルのB70及びC70モットリングは、0.2〜0.4単位、より高い。
− 多孔性サンプルの隠蔽力は、約2単位、より低い。
− 多孔性サンプルのプリントスルーは、より高い。
【0077】
差は類似し、9g/mの塗工重量を備えるフィルム塗工サンプルのために、殆ど等しく大きい。
【0078】
カーテン塗工試験は、試験装置を用いて遂行された。試験運転において、試験工場で準備された原紙1及び2、並びに、製造原紙3及び4が塗工された。色素Hydrocarb60、CapimSP、及び、Hydragloss90が、試験運転において使用された。塗工重量は各側で13g/mであった。塗工速度は1200m/minであった。サンプルはOptiload8多ニップカレンダでカレンダ処理された。カレンダ仕上げ速度は830m/minであり、線形荷重は200kN/mであり、熱リールの温度は145℃であった。サンプルは、HSWO試験印刷機で標準密度に印刷された。
【0079】
[表4]カーテン塗工試験運転からの結果
【0080】
【表4】

【0081】
表4中の試験結果が示すように、測定精度限界内で異なるグロス値及び平滑度値(印刷及び非印刷の双方)に殆ど如何なる差もない。特に顕著であるのは、原紙の多孔性が隠蔽力に何ら影響を及ぼさないことである。モットリング上での原紙の多孔性の効果も、測定精度内で存在しない。プリントスルー能力も、原紙に拘わらず同一レベルのままであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙を含み、該原紙の空孔率は、少なくとも300ml/minであり、前記原紙の少なくとも一方の側は、色素含有塗工層で塗工される、
塗工される紙製品であって、
前記塗工層は、均質なフィルムを含み、該フィルムは、結合剤及び色素で形成され、前記フィルムは、層の坪量のばらつきが5%未満であり、且つ、前記塗工層が前記原紙中に浸透しないよう、カーテン塗工を用いて前記原紙の表面の上に導かれ、
前記塗工層は、前記原紙の表面の少なくとも95%を覆うことを特徴とする、
紙製品。
【請求項2】
前記塗工層の坪量は、紙側当たり最大17g/mであり、好ましくは、紙側当たり約6〜15g/mであることを特徴とする、請求項1に記載の紙製品。
【請求項3】
前記原紙の坪量は、90g/m未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙製品。
【請求項4】
前記紙の空孔率は、少なくとも310ml/minであることを特徴とする、上記請求項のうちのいずれか1項に記載の紙製品。
【請求項5】
抄紙機を使用することで、原紙ウェブが形成され、該原紙ウェブの空孔率は少なくとも300ml/minであり、
前記原紙ウェブは、少なくとも1つの側で、色素含有塗工組成で塗工される、
塗工される紙製品を製造するための方法であって、
前記紙ウェブは、カーテン塗工並びに少なくとも2000m/minの塗工速度を用いて塗工される、
方法。
【請求項6】
紙ウェブは、結合剤及び色素から成り且つ前記層の坪量のばらつきが5%未満であるよう、前記原紙の表面の上に導かれる均質なフィルムを含む塗工層で塗工されることで、
前記塗工層は、前記原紙中に実質的に浸透せず、
前記塗工層は、前記原紙の表面の少なくとも95%を被覆することを特徴とする、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記紙ウェブの表面の上に、塗工組成が塗布され、その動的表面張力は、約20〜60mN/m、具体的には、約35〜55mN/m、好ましくは、約40mN/m未満であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記紙ウェブの表面の上に、最大容積流れ速度/幅を用いて塗工組成が塗布され、最大容積流れ速度/幅は、安定的な塗工カーテンを製造するために、1.0cm/sを越え、具体的には、少なくとも1.5cm/sであることを特徴とする、請求項5乃至7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
約1〜1000mm、最適には、約1〜500mm、具体的には、約10〜500mmである間隙が、前記カーテン塗工機の前記ノズルと前記紙ウェブとの間に残る、請求項5乃至8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記紙ウェブに導かれる前記フィルムの厚さは、約0.1〜10mm、具体的には、約1〜5mmであることを特徴とする、請求項5乃至9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記紙ウェブの表面の上に、塗工層が形成され、該塗工層の坪量は、紙側当たり最大15g/mである、請求項5乃至10のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記紙ウェブは、2100m/minよりも高い、好ましくは、2500m/minよりも高い塗工速度を用いて塗工されることを特徴とする、請求項5乃至11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
塗工される紙製品の製造のための装置であり、
そのような原紙ウェブの製造のための抄紙機装置を含み、前記原紙ウェブの空孔率は、少なくとも200ml/minであり、
色素含有塗工組成を用いて、前記抄紙機で製造される前記原紙ウェブを塗工するために使用され得る塗工機を含む装置であって、
前記抄紙機装置の製造速度は、少なくとも2000m/minであり、
前記塗工機は、カーテン塗工機を含み、該カーテン塗工機は、前記製造速度よりも少なくとも10%高い塗工速度で使用され得ることを特徴とする、
装置。
【請求項14】
前記抄紙機は、原紙ウェブを製造するために使用され、前記原紙ウェブの空孔率は、少なくとも300ml/minであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記装置は、1つの塗工機毎に少なくとも2つの抄紙機を含み、
前記塗工機は、カーテン塗工機を含み、
該カーテン塗工機は、少なくとも2000m/minであり且つ同時に前記抄紙機の結合ウェブリング速度よりも少なくとも10%高い塗工速度で使用され得ることを特徴とする、
請求項13又は14に記載の装置。

【公表番号】特表2008−527181(P2008−527181A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548853(P2007−548853)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000563
【国際公開番号】WO2006/070065
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507221357)
【Fターム(参考)】