説明

塗工包装用紙

【課題】本発明は、フレキソ印刷時におけるフレキソインキ発色性に優れ、かつ、通常包装紙として適用されるニス加工、ラミネート加工時の加工適性、製袋適性優れた塗工包装用紙を提供するものである。
【解決手段】原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を有する塗工包装用紙において、該原紙が晒、未晒および半晒クラフトパルプのうちの少なくとも1種以上のパルプを使用し、該塗工層に顔料として焼成カオリンを含有し、かつ接着剤として水分散性樹脂を顔料100質量部に対し、8〜30質量部含有することを特徴とする塗工包装用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工包装用紙に関し、特にフレキソ印刷適性に優れ、製袋適性を備えた包装用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の多色化が進み、要求される印刷品質の高級化、印刷速度の高速化が進んできており、それに対応する包装用紙の開発が求められてきている。ショッピングバックに代表されるような紙製手提げ袋に用いられる包装用紙においても、印刷品質の高級化が強く要求されている。印刷品質の高級化手法としては、例えば、高速で高精細なオフセット印刷やグラビア印刷での印刷が一般的である。しかしながら、包装用紙においては、フレキソ印刷の使用状況はいまだに多く、その印刷品質は、オフセット印刷やグラビア印刷に比べて見劣り感がすることは否めない。一方、フレキソ印刷の技術進歩も目覚しく、小ロット多品種化や環境と安全性問題、コスト削減などの市場課題に対して、近年のデジタル化の波とともに、画期的で斬新な技術でもって注目されている。さらに印刷品質についても、他の印刷方式と比較しても遜色ないレベルまで改良されている。フレキソ印刷は上述のごとく、水性化や無溶剤化の面で大きな優位性が認められ、欧米の包装分野では既にフレキソ印刷が主流となっており、日本においても普及の兆しがある。このようなフレキソ技術を駆使して、一般に使用されているオフセット用やグラビア用印刷用紙にフレキソ印刷をしても、インキ発色性が劣るので濃度の高い印刷ができず、多量にインキを載せると、画線部のインキが紙に吸着せず、流れる現象が起き、印刷品質を高級化するには不十分であった。
【0003】
また、包装用紙は、品物を包装、保持する役割が必要なため、印刷品質だけでなく、強度、剛度などの品質も重要な要素のひとつである。印刷品質と強度を両立する手法として例えば、原紙に両性ポリアクリルアミド系紙力剤及びポリアミドエピクロロヒドリン系紙力剤を含有させ、湿潤強度を持たせた原紙の片面にピグメント層を形成することが開示されている(特許文献1)。
【0004】
抄紙時に表裏の繊維配向角の差及び繊維配向比をある範囲に調整した原紙の少なくとも一方の面に1〜10g/mの塗工層を設けることが開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、針葉樹クラフトパルプを50重量%以上用いて形成され、縦横引っ張り強度比が1.7以上に調整された原紙上の少なくとも片面に顔料と接着剤とを含有する塗工層が1〜10g/m形成された坪量が100〜500g/mの範囲の塗工包装用紙が開示されている(特許文献3)。これら開示された例は、いずれもフレキソ印刷を想定しているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−248394号公報
【特許文献2】特開2006−83487号公報
【特許文献3】特開2006−97149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フレキソ印刷時におけるフレキソインキ発色性に優れ、かつ、通常包装紙として適用されるニス加工、ラミネート加工時の加工適性、製袋適性に優れた塗工包装用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を有する塗工包装用紙において、該原紙が晒、未晒および半晒クラフトパルプのうちの少なくとも1種以上のパルプを使用し、該塗工層に顔料として焼成カオリンを含有し、かつ接着剤として水分散性樹脂を顔料100質量部に対し、8〜30質量部含有することを特徴とする。
前記焼成カオリンの含有量が顔料100質量部に対して、20〜100質量部であることが好ましい。
前記塗工層の塗工量が片面当たり、0.5〜10g/mであることが好ましい。
前記顔料100質量部に対し、タルクが80質量部以下を含有することが好ましい。
塗工層中に顔料100質量部に対し、澱粉誘導体が2〜40質量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、フレキソ印刷におけるインキ発色性に優れた塗工包装用紙提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般に、フレキソ印刷は水性タイプのインキを使用して印刷が実施されることから、印刷面の吸水性度合いによりインキの浸み込みが異なる。このため、フレキソインキにおけるインキ発色性、および網点再現性は、印刷面の吸水性の度合いとフレキソインキ量に大いに影響される。包装用紙表面に形成する塗工層中に焼成カオリンが存在するとフレキソインキ吸収性が極めてよくなり、この焼成カオリンの配合量、及びその他の顔料配合量を調整することにより、各種のフレキソ印刷機に適応したインキ発色性の優れた品質を得ることができる。
【0011】
焼成カオリンを塗工層中に含有するとフレキソ印刷適性を改善する理由は必ずしも定かではないが、焼成カオリンは、天然に産するカオリンをキルンなどで約800℃程度の高温処理することにより、カオリンの結晶構造中に存在する結晶水を放出させたもので、結晶構造が崩壊して非晶質な構造となり、不透明性、多孔質でインキ吸収性に優れた性質を持っている。このことから、焼成カオリンのもつ空隙性によって、顔料中にインキを取り込み、またインキ中の溶剤が均一に吸収されて、インキの発色性と均一性が得られ、また密着性の向上による網点の再現性も得られるものと考える。この観点から、焼成カオリンの含有量は20〜100質量部が好ましく、より好ましくは40〜90質量部である。
【0012】
本発明の接着剤としての水分散性樹脂は、一般の塗被紙製造分野で使用されている公知の接着剤が適宜使用される。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等の水分散性接着剤等が使用でき、1種または2種以上を適宜選択して使用できる。なお、例示した水分散性樹脂の中で、費用と接着強度のバランスの良い、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを使用することがより好ましい。また、水分散性接着剤の塗工層中の含有量としては、顔料100質量部に対して8〜30質量部である。より好ましくは、10〜25質量部である。焼成カオリンが多孔質な特徴があることから、水分散性樹脂の含有量が8質量部未満では、塗工層の強度が弱く、後加工時や製袋加工時に塗工層が剥がれ落ちる虞がある。一方、水分散性樹脂の含有量が30質量部を超えると、塗工層の吸収性が阻害される虞がある。
【0013】
本発明の水分散性樹脂以外で使用できる接着剤としては、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、陽性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類が例示される。これら水分散性および/または水溶性接着剤から1種または2種以上を適宜選択して使用できる。
【0014】
本発明に使用する焼成カオリン以外の顔料としては、製紙分野で通常使用されている顔料、例えば、クレー、構造化カオリン、エンジニアードカオリン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム等の一種または二種以上を使用することができる。この中でも、タルクを配合することが好ましい。後加工、製袋加工時に塗工表面に異物が接触して擦れた時、異物付着による汚れが発生しやすいことに対して、タルクが扁平顔料で、塗工層に存在すると摩擦抵抗を低減させる性質を有していることから、異物による汚れを軽減させることが出来る。一般的に製紙用のタルクは、セディグラフによって測定した平均粒径が1〜5μm、クロライト含有率は0〜90%であるが、中でもクロライト含有率5〜80%のタルクの使用は、顔料の分散性と加工時の汚れを軽減させる効果のバランスがとれているため、より好ましい。また、タルク配合部数は顔料100質量部当たり、80質量部以下が好ましい。5質量部以上を配合するとその効果が顕著に発現される。クロライト含有率によりタルク配合部数は変わるものの、さらに好ましくは15〜60質量部である。なお、焼成カオリンを除く顔料は、フレキソインキの吸収性の観点から、本発明の所望する効果を阻害しない範囲で使用するのが望ましいが、プラスチックピグメント等の有機顔料はインキ吸収性が劣るので好ましくない。
【0015】
焼成カオリンは塗工液の保水性が著しく低下させることが知られている。塗工液保水性が低いと、原紙中に塗工液が浸透し易くなり、均一な塗工層が原紙表面に形成することが困難となる。また、塗工装置によっては、塗工筋が発生したり、全く塗工が出来なくたったりすることがあるので、澱粉誘導体を使用することが好ましい。本発明で使用される澱粉誘導体としては、例えば、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリン、冷水可溶性澱粉などが挙げられる。その配合量としては、顔料100質量部あたり2〜40質量部が好ましい。10〜30質量部の割合で配合することがより好ましい。澱粉誘導体の配合量が少なすぎると塗工液の保水効果が得られにくい。一方、澱粉誘導体の配合量が多すぎると塗膜の吸水性を低下する虞がある。なお、インキ発色性向上に対して効果を阻害しない範囲において、本発明使用される塗工液中に、防滑剤、染料等の添加剤を併用してもよい。
【0016】
本発明において、焼成カオリンを含有する塗工液の塗工層は、単層であっても、複層であっても差し支えないが、全体の塗工量は0.5〜10g/m2が好ましい。塗工量がこの範囲であると、経済性にすぐれ、且つ水性フレキソのインキ発色性が優れた塗工包装用紙が得られる。より好ましい塗工量としては、1.5〜7g/m2である。
【0017】
本発明の塗工液を原紙に塗工するに当たっては、塗被紙製造に一般に使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター等の塗工装置を使用して、オンマシン方式またはオフマシン方式で原紙の表面に、単層または多層で塗工される。塗工時の顔料組成物の固形分濃度は、10〜75重量%の範囲で選ぶことができるが、塗工量が0.5〜10g/m2の範囲に留まるよう、また、塗工するコーターを考慮し、適宜調整することが好ましい。
【0018】
本発明で塗工された塗工包装用紙は、塗工面や印刷適性をさらに向上させるために、カレンダー処理をすることが出来る。例えば、金属ロール間でニップするマシンカレンダーや弾性ロールにコットンロールを用いたスーパーカレンダーや弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップが上げられる。ソフトニップカレンダーは合成樹脂ロール表面の耐熱温度がコットンロールに比べて高く設定することが可能なため、高温での処理が可能であり、同一の平滑性を目標とした場合、スーパーカレンダーに比べて処理線圧を低く設定できるので好ましい態様である。
【0019】
本発明に使用されるクラフトパルプは通常、繊維長が長く、高強度を確保することが出来る利点がある。このクラフトパルプの種類は特に限定がなく、例えば、針葉樹未晒パルプ(以下、NUKPという)、広葉樹未晒パルプ(以下、LUKPという)、針葉樹晒パルプ(以下、NBKPという)、広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKP)、針葉樹や広葉樹を用いて晒工程を酸素晒工程まで行った針葉樹酸素晒パルプ(NOKP)、広葉樹酸素晒パルプ(LOKP)、または、晒を1段から2段行った半晒パルプ等があげられ、これらの中から1種以上を適宜選択して用いる。
【0020】
上記のパルプ以外に紙の強度を阻害しない範囲において、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、新聞古紙、オフィス古紙、情報用紙古紙、段ボール古紙、紙器古紙等の古紙パルプを必要に応じて脱墨処理をして使用することが可能である。
【0021】
内添薬品は必要に応じて使用でき、例えば、硫酸バンド、ロジン等のサイズ剤、ポリアミド、澱粉等の紙力増強剤、濾水歩留まり向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロヒドリン等の耐水化剤、染料等が使用される。例示したパルプ、内添薬品を使用した原紙を使用する。
【0022】
原紙の抄紙条件においても特に限定は無く、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、丸網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも使用できる。これらの抄紙条件で抄紙された原紙の米坪としては、30〜180g/m2が製袋加工するのに適した坪量であり包装用紙として好ましい。より好ましくは、60〜150g/mである。
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらの範囲に限定されるものでない。なお、例中の「部」、「%」は特に断わらない限り、質量部、
質量%を示す。
【0024】
実施例1
(塗工液の作成)
焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)100部、接着剤(商品名:PA−8064、エイアンドエル社製)を15部、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)20部(いずれも固形分換算)からなる塗工液を、濃度40%となるように調製した。
【0025】
叩解度560mlcsfのNBKP60%、叩解度460mlcsfのLBKP40%のパルプを混合し、カチオン化澱粉(商品名:ピラーP3YK、ピラースターチ社製)0.5%、硫酸バンド1.3%、サイズ剤(商品名:ペローザーE3655、東邦化学工業社製)0.4%を添加して調製した紙料で原紙を抄紙し、引き続きゲートロール塗工装置により上記塗工液を、片面に乾燥重量が3g/m(固形分)となるように塗工し、反対面には、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)を0.5g/mとなるように塗工、乾燥後、カレンダー処理をして紙水分が6.0%で、坪量が80g/mの塗工包装用紙を得た。
【0026】
実施例2
実施例1において、焼成カオリン100部を70部にし、タルク(商品名:ミクロタッチ、日本ミストロン社製)30部とした以外は実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0027】
実施例3
実施例2において、原紙のパルプとして、NOKPを25%、LOKP75%とした以外は、実施例2と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0028】
実施例4
実施例2おいて、原紙のパルプとして、NUKPを25%、LUKPを50%、新聞古紙からなる脱墨処理したパルプを25%とした以外は、実施例2と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0029】
実施例5
実施例1において、塗工液中の顔料を、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)15部、カオリン(商品名:ミラグロスJ、BASF社製)35部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)50部、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)1.5部とした以外は実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0030】
実施例6
実施例1において、塗工液中の顔料を焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)30部、タルク(商品名:ミクロタッチ、前出)70部、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、前出)35部、接着剤(商品名:PA−8064、旭化成社製)を9部とし、裏面にはポリビニアルアルコール(商品名:PVA−105、クラレ社製)0.5g/mとなるように塗工した以外は、実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0031】
実施例7
実施例1において、表面の塗工液塗布量が0.3g/m、裏面の澱粉塗工量を0.2g/mとした以外は実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0032】
比較例1
実施例1の原紙上に、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)を両面での塗工量を0.4g/m塗工し、乾燥後、カレンダー処理をして紙水分が6.0%、80g/mの包装用紙を得た。
【0033】
比較例2
実施例1において、塗工液中の顔料をカオリン(商品名:ミラグロスJ、BASF社製)50部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)50部とし、接着剤(商品名:PA−8064、前出)を11部、酸化澱粉(商品名:GRS−T110、前出)7部として、塗工量を7.5g/m塗工し、裏面にポリビニアルアルコールを0.8g/m塗工した以外は、実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0034】
比較例3
実施例1において、接着剤(商品名:PA−8064、前出)を5部とした以外は、実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。後加工の印刷時に塗工層が剥がれたため、製袋できなかった。
【0035】
比較例4
実施例1の原紙において、原紙のパルプとして、サーモメカニカルパル40%、ストーングランドパルプ30%、プレッシャライズドグランドパルプ30%とした以外は、実施例1と同様にして塗工包装用紙を得た。
【0036】
得られた各塗工包装用紙について、下記の評価方法で評価を行い、得られた結果を表1に示した。なお、本発明における測定及び評価については特に記載のない限り、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0037】
(平滑度)
JAPAN TAPPI No.5−2:2000に準じ、王研式平滑度計(ASAHI−SEIKO社製)を使用して測定した。
【0038】
(フレキソ印刷におけるインキの発色性)
K印刷プルーファー(RK Print−Coat Instruments社製)、100線/インチに彫刻したアニロックスプレートで、水性フレキソ藍インキ(商品名:ラップトーンHR、サカタインクス社製)を使用して、得られた塗工包装用紙に印刷した。印刷した面をカラー反射濃度計(Model404G、X−Rite社製)でシアンインキ濃度を計測した。
【0039】
(印刷部のインキ流れ)
上記K印刷プルーファーにて印刷した部分を観察し、印刷面のインキが均一に定着されているかを拡大鏡と目視で評価した。
[評価基準]
◎:拡大鏡、目視ともインキが均一に定着されている。
○:拡大して印刷部分を観察すると、不均一部が一部存在するが、目視では均一に定着されている。
×:インキが用紙に吸収が悪く、インキが泳いでおり、インキ定着面が不均一である。
【0040】
(製袋適性)
自動製袋機で、底幅115mm、袋幅315mm、袋長さ315mmの角底袋(手提げ袋)に加工した。加工後に折部の割れ、印刷部の割れを総合的に目視評価した。
[評価基準]
◎:全く折れが発生しない。
○:ごく一部折れが発生したが、実用的に問題ない範囲である。
×:折れが定常的に発生した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記表1に明らかなように、焼成カオリンを含有している実施例1〜7と含有していない比較例1、2と比べると、フレキソ印刷のインキ濃度が高く、インキ発色性に優れている。比較例3、4は焼成カオリンを100部含有しているが、比較例3は水分散性樹脂量が少ないので、印刷時に塗工層の剥離が生じて印刷品質が劣り、比較例4は、原紙にクラフトパルプを含有していないので、製袋時に折れが発生してしまい、包装用紙として使用できない。
以上の通り、本発明によりフレキソ印刷インキ、特に水性フレキソインキに対して優れたインキ発色性と印刷面の仕上がりを持ち、製袋適性に優れた塗工包装用紙を得ることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を有する塗工包装用紙において、該原紙が晒、未晒および半晒クラフトパルプのうちの少なくとも1種以上のパルプを使用し、該塗工層に顔料として焼成カオリンを含有し、かつ接着剤として水分散性樹脂を顔料100質量部に対し、8〜30質量部含有することを特徴とする塗工包装用紙。
【請求項2】
前記焼成カオリンの含有量が顔料100質量部に対して、20〜100質量部である請求項1記載の塗工包装用紙。
【請求項3】
前記塗工層の塗工量が片面当たり0.5〜10g/mである請求項1または2記載の塗工包装用紙。
【請求項4】
前記顔料100質量部に対し、タルクが80質量部以下を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の塗工包装用紙。
【請求項5】
塗工層中に顔料100質量部に対し、澱粉誘導体が2〜40質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の塗工包装用紙。

【公開番号】特開2011−26734(P2011−26734A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173258(P2009−173258)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】