説明

塗工液用重合性共重合体の製造方法、塗工液用重合性共重合体、および塗工液

【課題】塗工液用溶媒への溶解性に優れ、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができ、さらに耐久性に優れた塗膜を形成することができる塗工液用重合性共重合体の製造方法を提供。
【解決手段】塗工液用溶媒と相溶性を有する特定の2種の重合用溶媒を含む溶媒中で、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含みエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有主鎖用重合性モノマーと、上記反応性基を含まずエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合すると共に、末端に上記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分を結合させる共重合体形成工程と、上記共重合体が有する反応性基と結合することができるカルボキシル基またはエポキシ基の側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを反応させる付加工程とを有する塗工液用重合性共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工液用溶媒への溶解性に優れ、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができ、さらに耐久性に優れた塗膜を形成することができる塗工液用重合性共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂から成る重合体は、従来より種々の分野において用いられており、例えば、インキ組成物等の塗工液におけるバインダ(塗工液用重合体)として広く用いられている。
【0003】
このようなバインダとして用いられる塗工液用重合体の溶媒への溶解性は、塗工液としての機能発現に重要である。例えば、溶媒への溶解性が良好でない場合には、上記塗工液用重合体の濃度が高い塗工液を調製することが困難となったり、塗工液の調製についても効率的に行えないといった問題が生じる。
また、その結果、塗工液を精度良く塗工することが困難となったり、低濃度の塗工液しか調製できないことによる乾燥時間の増大といった問題が生じることがある。
さらに、長期貯蔵時に粘度上昇が起こりやすいといった問題が生じる。
【0004】
具体的には、塗工液に用いられる塗工液用重合体としてアクリル系樹脂が一般的に用いられている。アクリル系樹脂は、重合させるアクリル系モノマーの種類や組成、分子量を変えることによって物性の変更等が容易であるため、塗工液重合体として好適に用いられている。
【0005】
しかしながら、このようなアクリル系樹脂は、インキ組成物等の塗工液の溶媒として一般的に用いられるアルキルエステルやポリアルキレングリコールアルキルエーテル等に溶解しにくいという問題があった。
【0006】
このような問題に対して、アクリル系モノマーとしてアクリル酸またはメタクリル酸のグリコールモノエステルを用いる方法(例えば、特許文献1)や、特定の有機ケイ素化合物を共重合モノマーとして用いる方法(例えば、特許文献2)や、樹脂を低分子量化することによって溶解性を向上させる方法(例えば、特許文献3)等が提案されている。
【0007】
しかしながら、このような方法によれば、確かに、溶媒との溶解性を向上させることができるが、その塗膜の耐久性が不十分となるといった問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2006−309183号公報
【特許文献2】特開2007−186542号公報
【特許文献3】特開平11−124537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、塗工液用溶媒への溶解性に優れ、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができ、さらに耐久性に優れた塗膜を形成することができる塗工液用重合性共重合体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体の製造方法であって、下記一般式(1)または(2)で表され、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含み、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有主鎖用重合性モノマーと、上記反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとを含む主鎖用重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合し、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含む反応性基含有構成単位と、反応性基非含有構成単位とを含み、末端に上記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合した重合用溶媒成分含有共重合体を形成する重合工程と、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基と、を反応させる付加工程と、を有することを特徴とする塗工液用重合性共重合体の製造方法を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、Yは水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、lおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。また、Xは、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、および−SO−のいずれかの2価の置換基を示し、Xは、nil.、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−のいずれかの2価の置換基を示す。また、XおよびXにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。なお、nil.とは、Xが存在しないことを意味するものである。)
【0013】
本発明によれば、上記重合工程が上記一般式(1)または(2)で示され、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で重合を行うものであるため、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分を末端に有する塗工液用重合性共重合体を容易に得ることができる。
このため、本発明の製造方法により製造される塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用溶媒に対する溶解性に優れたものとすることができる。その結果、上記塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用溶媒に溶解しにくかった構成単位を含むものとする場合であっても、溶解性に優れたものとすることができるため、例えば、上記塗工液用溶媒への溶解性は低いが、耐久性や耐熱性に優れた塗膜を形成できる構成単位を含み、かつ、上記塗工液用溶媒への溶解性に優れたものとすることができる。さらにまた、長期貯蔵時の粘度上昇を抑制することができることから、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができる。
また、上記付加工程を有することにより、上記塗工液用重合性共重合体に重合性基を付与することができる。このため、本発明の製造方法により製造された塗工液用重合性共重合体を含む塗工液を塗布して形成された塗膜において、上記塗工液用重合性共重合体同士を事後的に重合させることが可能となる。したがって、本発明の製造方法により製造された塗工液用重合性共重合体を用いた場合には、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【0014】
本発明においては、上記一般式(1)または(2)で表される重合用溶媒が、上記塗工液用溶媒と同一であることが好ましい。上記塗工液用溶媒への溶解性により優れた塗工液用重合性共重合体を製造することが可能となるからである。
【0015】
本発明においては、上記反応性基含有主鎖用重合性モノマーおよび反応性基含有側鎖用重合性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸の少なくとも1種類、または、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、および(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートの少なくとも1種類が用いられ、上記反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとして、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、およびアダマンチルメタクリレートの少なくとも1種類が用いられることが好ましい。
上記反応性基含有主鎖用重合性モノマー、反応性基含有側鎖用重合性モノマーおよび反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとして、上述した化合物を用いることにより、上記重合工程および付加工程において、重合および反応の制御を容易に行うことができるからである。
【0016】
本発明は、塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体であって、少なくともエチレン性不飽和二重結合を有する重合性基含有構成単位を含み、末端に上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合することを特徴とする塗工液用重合性共重合体を提供する。
【0017】
本発明によれば、末端に上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合しているため、本発明の塗工液用重合性共重合体を上記塗工液用溶媒への溶解性に優れたものとすることができ、例えば、耐久性や耐熱性に優れた塗膜を形成可能なものとすることが容易となる。
また、上記重合性基含有側鎖を有するため、上記塗工液用重合性共重合体を含む塗工液を塗布して形成された塗膜において、上記塗工液用重合性共重合体同士を事後的に重合させることが可能となる。したがって、本発明の塗工液用重合性共重合体を用いた場合には、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【0018】
本発明は、上記塗工液用重合性共重合体と、塗工液用溶媒とを含むことを特徴とする塗工液を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記塗工液用重合性共重合体が、上記塗工液用溶媒への溶解性に優れるため、例えば、耐久性や耐熱性に優れた塗膜の形成を可能とすることができる。
また、上記塗工液用重合性共重合体の濃度が高いものとすることができ、乾燥時間が短いものとすることができる。また、塗工液の調製を効率的に行うことができる。
さらに、上記塗工液用重合性共重合体が重合性基を有することにより、塗膜形成後に上記塗工液用重合性共重合体同士を重合させることができるため、耐久性等に優れた塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、塗工液用溶媒への溶解性に優れ、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができ、さらに耐久性に優れた塗膜を形成することができる塗工液用重合性共重合体を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、塗工液用重合性共重合体の製造方法、その製造方法を用いて製造された塗工液用重合性共重合体、および、それを用いた塗工液に関するものである。
以下、本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法、塗工液用重合性共重合体および塗工液について説明する。
【0022】
A.塗工液用重合性共重合体の製造方法
まず、本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法について説明する。本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法は、塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体の製造方法であって、下記一般式(1)または(2)で表され、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含み、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有主鎖用重合性モノマーと、上記反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとを含む主鎖用重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合し、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含む反応性基含有構成単位と、反応性基非含有構成単位とを含み、末端に上記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合した重合用溶媒成分含有共重合体を形成する重合工程と、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基と、を反応させる付加工程と、を有することを特徴とするものである。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、Yは水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、lおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。また、Xは、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、および−SO−のいずれかの2価の置換基を示し、Xは、nil.、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−のいずれかの2価の置換基を示す。また、XおよびXにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。なお、nil.とは、Xが存在しないことを意味するものである。)
【0025】
従来、塗工液用重合体の塗工液用溶媒への溶解性を向上させる方法としては、その分子量を小さいものとする方法等があった。しかしながら、この場合には、その塗工液用重合体を含む塗膜の耐久性が低くなる傾向があった。
また、塗膜の耐久性を向上させる方法としては、上記塗工液用重合体の分子量を大きいものとする方法等があった。しかしながら、この場合には、上記塗工液用溶媒への溶解性を十分に優れたものとすることが困難であり、塗工液の調製や、塗布・乾燥作業が困難となるといった問題があった。
このように、従来は、上記塗工液用溶媒への溶解性や、塗膜の耐久性等のバランスを考慮して、上記塗工液用重合体を選択する必要があったため、材料選択の幅が狭いものとなるといった問題があった。
【0026】
一方、本発明における重合工程は、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で重合を行うものであるため、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分を末端に有する塗工液用重合性共重合体を得ることができる。
ここで、重合用溶媒由来成分が末端に結合する理由は、以下のように推測される。
すなわち、本発明における重合工程においては、主鎖用重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、以下の反応機構1に示すような開始、生長および停止の三段階よりなる(参考文献;「改定高分子合成の化学」、(株)化学同人発行、第2版(1979年1月10日発行))
【0027】
<反応機構1>
開始:I→I・+I
・+M→I−M・
生長:I−M・+M→I−M−M・
停止(再結合):2I−M…M・→I−M…M−M…M−I
停止(不均化):2I−M…M・→I−M…M−H+I−M…M−M
(ここで、Iはラジカル重合開始剤を、I・およびI・はラジカル重合開始剤由来のラジカルを、Mは主鎖用重合性モノマーを、M…Mは主鎖用重合性モノマーが重合してなる重合体を表す。)
【0028】
また、ラジカル重合の場合、ラジカルの置換反応である連鎖移動が生長反応と競争して起こることは良く知られている。重合系に存在する全ての物質が連鎖移動に関与するものとして挙げられるが、溶液重合の場合、以下のような溶媒に含まれる重合用溶媒への連鎖移動反応が停止反応に関与すると考えられている。
−M…M・+S−H→I−M…M−H+S・
(ここで、S−Hは重合用溶媒を、S・は連鎖移動反応により生成する重合用溶媒由来ラジカルを表す。)
【0029】
このようにして生成した重合用溶媒由来ラジカルS・が系中に存在する主鎖用重合性モノマーMと反応すると、以下のような反応(再開始反応)により、末端に重合用溶媒由来成分が結合した重合体を生成することができる。
【0030】
<再開始反応>
開始:S・+M→S−M・
生長:S−M・+M→S−M−M・
停止:S−M…M・+S−H→S−M…M−H+S・
【0031】
また、他の反応機構としては、以下の反応機能2に示すような反応も考えられ、このような反応によっても、末端に重合用溶媒由来成分が結合した重合体を生成することができる。
【0032】
<反応機構2>
開始:I→I・+I
・+S−H→I−H+S・
S・+M→S−M・
生長:S−M・+M→S−M−M・
停止:S−M・+S−H→S−M…M−H+S・
【0033】
このように、上記塗工液用重合性共重合を上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を用いて製造することにより、重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分を末端に有するものとすることができるのである。
また、本工程に用いられる重合用溶媒に含まれるXまたはXは、孤立電子対やΠ電子対を有する原子または原子団であるため、このようなXまたはXに隣接する炭素原子に結合している水素が連鎖移動により脱離し、重合用溶媒由来ラジカルとなった場合でも、水素が脱離した後の炭素原子を電気的に安定化するものと考えられる。したがって、このようなXまたはXに隣接する炭素原子に結合した脱離しやすい水素を有する重合用溶媒を用いることにより、重合用溶媒由来成分が結合した塗工液用重合性共重合体を容易に得ることができる。
【0034】
また、上記重合用溶媒由来成分が結合することにより、本発明の製造方法により製造される塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用溶媒に対する溶解性に優れたものとすることができる。
したがって、上記塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用溶媒に溶解しにくかった構成単位を含むものとする場合であっても、溶解性に優れたものとすることができるため、例えば、上記塗工液用溶媒への溶解性は低いが、耐久性や耐熱性に優れた塗膜を形成できる構成単位を含み、かつ、上記塗工液用溶媒への溶解性に優れたものとすることができる。すなわち、樹脂設計の自由度を高いものとすることができるのである。
【0035】
さらに、上記塗工液用溶媒への溶解性に優れることにより、上記塗工液用重合性共重合体を上記塗工液用溶媒中に分散または溶解し塗工液を調製する場合には、短時間で分散または溶解させることができるため、調製を効率的に行うことができるものとすることができる。また、濃度が高い塗工液を容易に調製することができため、乾燥時間を短いものとすることができる。さらに、上記塗工液用重合性共重合体が上記塗工液用溶媒中に均一に分散または溶解した塗工液とすることができるため、塗布作業が容易な塗工液を形成することができる。さらにまた、長期貯蔵時の粘度上昇を抑制することができることから、貯蔵安定性に優れた塗工液を得ることができる。
【0036】
またさらに、上記付加工程を有することにより、上記塗工液用重合性共重合体に重合性基を付与することができる。このような重合性基を有することにより、上記塗工液用重合性共重合体を含む塗工液にて塗膜を形成した場合には、その塗膜において上記塗工液用重合性共重合体同士を事後的に重合させることが可能となる。このため、耐久性等に優れた塗膜を形成することができるものとすることができる。
【0037】
本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法は、重合工程と、付加工程とを有するものである。
以下、本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0038】
1.重合工程
本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法における重合工程は、上記一般式(1)または(2)で表され、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含み、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有主鎖用重合性モノマーと、上記反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとを含む主鎖用重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合し、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含む反応性基含有構成単位と、反応性基非含有構成単位とを含み、末端に上記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合した重合用溶媒成分含有共重合体を形成する工程である。
【0039】
本工程を有することにより、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分を末端に有する塗工液用重合性共重合体を得ることができる。
このため、上記塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用溶媒に対する溶解性に優れたものとすることができる。その結果、塗工液用溶媒に溶解しにくかった構成単位を含む樹脂をも溶解させることを可能とすることができるため、例えば、上記塗工液用溶媒への溶解性が低いが、耐久性や耐熱性に優れた塗膜を形成できる構成単位を含む樹脂を用いることを可能にする等、樹脂設計の自由度を高いものとすることができる。
【0040】
(1)溶媒
本工程に用いられる溶媒は、重合用溶媒を少なくとも含むものである。
また、必要に応じて上記重合用溶媒以外にトルエン、キシレン等のその他の溶媒を含むものであっても良い。
【0041】
本工程に用いられる重合用溶媒は、下記一般式(1)または(2)で表され、上記塗工液用溶媒と相溶性を有するものである。
【0042】
【化3】

【0043】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、Yは水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、lおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。また、Xは、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、および−SO−のいずれかの2価の置換基を示し、Xは、nil.、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−のいずれかの2価の置換基を示す。また、XおよびXにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。なお、nil.とは、Xが存在しないことを意味するものである。)
【0044】
本工程に用いられる重合用溶媒に含まれるXまたはXは、孤立電子対やΠ電子対を有する原子または原子団であるため、このようなXまたはXに隣接する炭素原子に結合した脱離しやすい水素を有する重合用溶媒を用いることにより、本工程において、重合用溶媒由来成分が結合した塗工液用重合性共重合体を容易に得ることができる。
【0045】
およびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示すものである。本工程においては、RおよびRが水素または炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0046】
およびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示すものである。本工程においては、RおよびRが、炭素数1〜8のアルキレン基であることが好ましく、なかでも炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、特に炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。なお、上記式(2)においてmが0である場合には、Rが存在しないものとなり、XとXとが直接結合したものとなる。
【0047】
Yは、水素、1価の炭化水素基または、ヒドロキシアルキル基を示す。本工程においては、水素、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に水素および炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0048】
lおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。本工程においては、lおよびnが1〜8であることが好ましく、なかでも1〜6であることが好ましい。
【0049】
は、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−を示す。本工程においては、−O−、−CO−O−、−NR−、および−NR−CO−であることが好ましく、なかでも、−O−および−CO−O−であることが好ましい。
【0050】
は、nil.、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−を示す。ここで、nil.とは、Xが存在しないことを意味するものである。すなわち、Xが、nil.の場合は、RとRとが直接結合したもの、あるいは、同時にmが0である場合にはXとRとが直接結合したものとなる。
本工程においては、―O−、−CO−O−、−NR−、および−NR−CO−であることが好ましく、なかでも、−O−、および−CO−O−であることが好ましい。
【0051】
本工程において、R〜R、Y、およびX〜Xの好ましい官能基が上述した官能基であり、nおよびlの好ましい範囲が上述した範囲であるとした理由は、上記一般式式(1)および式(2)で表される重合用溶媒が、このような官能基等であることにより、入手が容易であり、塗工液用溶媒として使用頻度の高い溶媒との相溶性が高いものであるからである。
【0052】
本工程に用いられる重合用溶媒としては、上記式(1)で示される化合物および上記式(2)で示される化合物のいずれか一方を含むものであっても良く、両方を含むものであっても良い。
【0053】
本工程において、上記式(1)または式(2)で表される重合用溶媒として好ましく用いられる化合物としては、具体的には、以下の化合物を挙げることができる。
【0054】
1)エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類
2)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコ−ルモノエチルエーテル、プロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル、プロピレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類
3)エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類
4)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類
5)ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ヘキシルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸エチルエステル、プロピオン酸プロピルエステル等のアルキルエステル類
6)ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類
7)4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、4-(3-ヒドロキシプロピル)モルホリン、4-メチルモルホリン等の環状アミン類
8)2-ピロリドン、N−メチル−2-ピロリドン、N−エチル−2−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、カプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリドン等の環状アミド類
9)カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等の環状エステル類
10)シクロヘキサノン等の環状ケトン類
11)テトラメチレンスルホン等のスルホラン類
12)ドデカンチオール、デカンチオール等のチオール類
【0055】
本工程においては、なかでも、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、環状エステル類を好ましく用いることができ、特に、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類を好ましく用いることができる。上記重合用溶媒が上述した化合物であることにより、水素が脱離した後の炭素原子をより電気的に安定化することができ、重合用溶媒由来成分が結合した塗工液用重合性共重合体をより容易に得ることができるからである。
【0056】
本工程に用いられる重合用溶媒の含有量としては、所望の重合用溶媒由来成分が結合したものとすることができるものであれば良いが、全溶媒中に30質量%以上含まれることが好ましい。上記重合用溶媒の含有量が上記範囲より少ない場合には、本発明の硬化が十分に得られない可能性があるからである。
本工程においては、なかでも、50質量%以上であることが好ましく、特に上記溶媒が上記重合用溶媒のみからなるものであることが好ましい。上記重合用溶媒由来成分を効率良く結合させることができるからである。
【0057】
また、本工程に用いられる重合用溶媒は、上記塗工液用溶媒と相溶性を有するものである。
ここで、上記塗工液用溶媒と相溶性を有するとは、上記塗工液用溶媒と室温にて任意の割合で混合した場合に、相分離しないことをいうものである。
【0058】
本工程における塗工液用溶媒は、本発明の塗工液用重合性共重合体を用いた塗工液において主溶媒として用いられるものである。
ここで、主溶媒とは、塗工液に含まれる溶媒の主なる特性を発揮する程度に含まれる溶媒をいうものであり、通常、上記塗工液に含まれる全溶媒の50質量%以上含まれるものをいうものである。
本工程においては、なかでも、上記塗工液に含まれる全溶媒の60質量%以上であることが好ましく、特に70質量%以上であることが好ましい。本発明の製造方法により製造した塗工液用重合性共重合体を、上記塗工液用重合性共重合体がより溶解性良く溶解・分散した塗工液を得ることができるものとすることができるからである。
【0059】
このような塗工液用溶媒としては、上記塗工液の用途等に応じて適宜設定されるものであり、一般的な有機溶剤や水溶液等を用いることができる。
具体的には、上記重合用溶媒として挙げたものを好ましく用いることができる。
【0060】
(2)主鎖用重合性モノマー
本工程に用いられる主鎖用重合性モノマーは、上記反応性基含有主鎖用重合性モノマーおよび反応性基非含有主鎖用重合性モノマーを含むものである。
【0061】
本工程に用いられる主鎖用重合性モノマーの含有量としては、重合反応を均一に行えるものであれば良いが、具体的には、上記溶媒100重量部に対して、10重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも、20重量部〜60重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、上記主鎖用重合性モノマー同士が十分に重合せずに未反応モノマーが多くなるおそれがあるからであり、上記範囲より多いと、重合時の発熱の制御が難しいという問題や、得られた重合体溶液の粘度が高くなりすぎて、その後の取り扱いが困難になる可能性があるからである。
【0062】
(a)反応性基含有主鎖用重合性モノマー
本工程に用いられる反応性基含有主鎖用重合性モノマーは、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含み、エチレン性不飽和二重結合を有するものである。
また、上記ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合可能なものである。
【0063】
このような反応性基含有主鎖用重合性モノマーのうち、カルボキシル基を含むものの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、カルボキシル基を含む反応性基含有主鎖用重合性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸の少なくとも1種類を含むものであることが好ましい。上記重合工程および付加工程において、重合および反応の制御を容易に行うことができるからである。
また、エポキシ基を含むものの具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、および4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、エポキシ基を含む反応性基含有主鎖用重合性モノマーとして、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、および(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートの少なくとも1種類を含むものであることが好ましい。上記重合工程および付加工程において、重合および反応の制御を容易に行うことができるからである。
【0064】
本工程において用いられる反応性基含有主鎖用重合性モノマーとしては、1種類の化合物のみからなるものであっても良く、2種類以上を組み合わせたものであっても良い。
【0065】
本工程における反応性基含有主鎖用重合性モノマーの含有量としては、所望の機能を有する塗工液用重合性共重合体を得ることができるものであれば良く、用途等により異なるものであるが、上記反応性基非含有主鎖用重合性モノマーの1mol%〜100mol%の範囲内で含まれるものであることが好ましく、なかでも5mol%〜50mol%の範囲内で含まれるものであることが好ましい。上記範囲内であることにより、後述する付加工程において、自由度高く重合性基を結合させることができるからである。
【0066】
(b)反応性基非含有主鎖用重合性モノマー
本工程に用いられる反応性基非含有主鎖用重合性モノマーは、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合を有するものである。
また、上記ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合可能なものである。
【0067】
このような反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとしては、具体的には、以下の化合物を挙げることができる。
1)スチレン
2)スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル
3)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−iso−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−iso−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸−iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
4)(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ステアリルアミド、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミド、(メタ)アクリル酸フェニルアミド、(メタ)アクリル酸ベンジルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド
5)(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、酢酸ビニル等のビニル化合物
6)N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリンマレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド
7)N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどのフタルイミド
本工程においては、なかでも、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、およびアダマンチルメタクリレートの少なくとも1種類を含むものであることが好ましい。上記重合工程および付加工程において、重合および反応の制御を容易に行うことができるからである。
なお、本願明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の両者を意味するものである。これらのモノマーのいくつかは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
【0068】
本工程において用いられる反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとしては、1種類の化合物のみからなるものであっても良く、2種類以上を組み合わせたものであっても良い。
【0069】
(3)ラジカル重合開始剤
本工程に用いられるラジカル重合開始剤は、上記溶媒中で、上記主鎖用重合性モノマーをラジカル重合させることができるものであれば良い。
【0070】
このようなラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物を挙げることができ、なかでも、以下に挙げるようなハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物を好ましく用いることができる。
なお、下記において、化合物名の右肩に「*」が付されたものは、本工程において好ましく用いられる化合物である。
【0071】
1)ハイドロパーオキサイド類、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等
2)ジアルキルパーオキサイド類、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等
3)パーオキシエステル類、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン
4)ジアシルパーオキサイド類、例えば、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等
5)パーオキシカーボネート類、例えば、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート
6)パーオキシケタール類、例えば、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート
7)ケトンパーオキサイド類、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等
【0072】
本工程においては、特に、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物を好ましく用いることができる。
上記重合用溶媒からの脱水素を容易に行うことができ、上述した反応機構2に示すように、上記重合用溶媒由来ラジカルの生成が容易であるためである。このため、このようなラジカル重合開始剤を用いることにより、上記重合用溶媒成分含有共重合体を容易に得ることができるからである。
【0073】
本工程に用いられるラジカル重合開始剤の含有量としては、上記重合用溶媒成分含有共重合体の分子量等に応じて適宜設定されるものであるが、具体的には、上記主鎖用重合性モノマー100重量部に対して0.05重量部〜25重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも0.1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲より少ない場合には、未反応モノマーが多く発生し、収率が低いものとなるおそれがあるからであり、上記範囲より少ない場合には、反応時の発熱の制御が難しいからである。
【0074】
(4)重合用溶媒成分含有共重合体の重合方法
本工程おける上記重合用溶媒成分含有共重合体の重合方法としては、上記重合用溶媒成分含有共重合体を収率良く得られる方法であれば良く、一般的なラジカル重合方法を用いることができる。
具体的には、上記溶媒中に、上記主鎖用重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤の混合物を添加する方法や、上記溶媒中に、上記主鎖用重合性モノマーを添加した後、上記ラジカル重合開始剤を添加する方法を用いることができる。
【0075】
また、上記主鎖用重合性モノマーの重合方法は、上記主鎖用重合性モノマーに含まれる全てのモノマーを一度に重合(ランダム共重合)する方法であっても良く、上記主鎖用重合性モノマーの各成分を順次重合(ブロック共重合)する方法であっても良い。
【0076】
本工程においては、上記溶媒、主鎖用重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を用いて上記重合用溶媒成分含有共重合体を重合するものであるが、必要に応じて、連鎖移動剤等の存在下で重合するものであっても良い。
【0077】
本工程において、上記重合用溶媒成分含有共重合体を重合する際の重合温度としては、用いるラジカル重合開始剤により異なるものであるが、ラジカル重合開始剤の1時間半減温度±20℃の範囲内であることが好ましい。これより低い温度で反応を行うと、未反応のラジカル重合開始剤や主鎖用重合性モノマーが多く発生したり、重合に時間がかかるおそれがあるからである。また、これより高い温度で重合を行うと、上記ラジカル重合開始剤の分解が速過ぎるため、上記主鎖用重合性モノマーが十分に重合せず、未反応モノマーとして多く残る結果となる可能性があるからである。
【0078】
(5)重合用溶媒成分含有共重合体
本工程により形成される重合用溶媒成分含有共重合体は、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含む反応性基含有構成単位と、反応性基非含有構成単位とを含み、末端に上記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合したものである。
【0079】
このような重合用溶媒成分含有共重合体としては、例えば、下記式(3)で示されるものを挙げることができる。
【0080】
【化4】

【0081】
ここで、Sが重合用溶媒由来成分であり、(M)がラジカル重合により上記主鎖用重合性モノマーのエチレン性不飽和二重結合が開裂してなる反応性基含有構成単位または反応性基非含有構成単位であり、Hが水素である。また、pは任意の整数を示す。
以下、本工程により得られる重合用溶媒成分含有共重合体の各構成について説明する。
【0082】
(a)反応性基含有構成単位
本工程における反応性基含有構成単位は、上記反応性基含有主鎖用重合性モノマーのエチレン性不飽和二重結合が開裂したものであり、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基、および、エチレン性不飽和二重結合が開裂した構造を有するものである。
【0083】
(b)反応性基非含有構成単位
本工程における反応性基非含有構成単位は、上記反応性基非含有主鎖用重合性モノマーのエチレン性不飽和二重結合が開裂したものであり、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合が開裂した構造を有するものである。
【0084】
(c)重合用溶媒由来成分
本工程における重合用溶媒由来成分は、上記重合用溶媒から脱水素したものである。ここで、脱水素する水素は、脱離のしやすさから、通常、上記式(1)または(2)のXまたはXに隣接する炭素原子に結合している水素である。
【0085】
本工程における重合用溶媒由来成分の含有量としては、本発明の製造方法により製造される塗工液用重合性共重合体に要求される上記塗工液用溶媒への溶解性により異なるものであるが、具体的には、上記反応性基含有構成単位および反応性基非含有構成単位を含む全構成単位の0.05mol%〜5mol%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.1mol%〜5mol%の範囲内であることが好ましく、特に0.5mol%〜5mol%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記塗工液用重合性共重合体を上記塗工液用溶媒への溶解性に特に優れたものとすることができるからである。
【0086】
2.付加工程
本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法における付加工程は、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基と、を反応させる工程である。
【0087】
(1)反応性基含有側鎖用重合性モノマー
本工程に用いられる反応性基含有側鎖用重合性モノマーは、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有するものである。
ここで、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基とは、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基がカルボキシル基である場合には、エポキシ基をいうものであり、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基がエポキシ基である場合には、カルボキシル基をいうものである。
【0088】
このような反応性基含有側鎖用重合性モノマーとしては、具体的には、上記「1.重合工程」の「(2)主鎖用重合性モノマー」の「(b)反応性基含有主鎖用重合性モノマー」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
【0089】
本工程において、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に対する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの添加量としては、本発明により製造される塗工液用重合性共重合体に要求される重合性の程度により適宜設定されるものであるが、上記重合用溶媒成分含有共重合体に含まれる反応性基の10mol%〜100mol%の範囲内であることが好ましく、なかでも30mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記塗工液用重合性共重合体が有する重合性を十分に高いものとすることができる。その結果、このような塗工液用重合性共重合体を用いて形成された塗膜を、耐久性に優れたものとすることができるからである。
【0090】
(2)反応方法
本工程において、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、上記反応性基含有側鎖用重合性モノマーとを反応させる反応方法としては、上記反応性基と側鎖形成用反応性基とが所望の効率で反応し結合することができる方法であれば良い。
【0091】
このような反応方法としては、通常、上記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、上記反応性基含有側鎖用重合性モノマーとの反応を容易にする重合性基付加用触媒が用いられる。
このような重合性基付加用触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルアンモニウムブロマイド、トリフェニルホスフィン、フェノチアジン等を挙げることができる。
【0092】
また、本工程における反応方法としては、上記重合工程後の重合用溶媒成分含有共重合体を含む溶媒中に、上記反応性基含有側鎖用重合性モノマーおよび重合性基付加用触媒等を添加し、反応させる方法であっても良く、上記重合工程後の溶媒から重合用溶媒成分含有共重合体を精製した後に、上記重合用溶媒成分含有共重合体と、上記反応性基含有側鎖用重合性モノマーおよび重合性基付加用触媒等とを、新たに準備した溶媒中で混合した後に、反応させる方法であっても良い。
【0093】
本工程における重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基とを反応させる際の温度等の反応条件については、用いる反応性基含有側鎖用重合性モノマーや重合性基付加用触媒等の種類に応じて適宜設定されるものである。
【0094】
3.塗工液用重合性共重合体の製造方法
本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法は、少なくとも、上記重合工程および付加工程を含むものであるが、必要に応じて、上記重合工程後に、上記重合用溶媒成分含有共重合体を抽出する抽出工程を有するものであっても良い。
上記重合工程では、通常、上記重合用溶媒成分含有共重合体とともに、上記重合用溶媒由来成分を含まない共重合体も重合される。このため、このような抽出工程を有することにより、上記重合用溶媒成分含有共重合体の含有比率を高めることができるからである。
なお、このような抽出方法としては、例えば、上記重合用溶媒成分含有共重合体と、上記重合用溶媒由来成分を含まない共重合体との上記塗工液用溶媒への溶解度の差を利用する方法を挙げることができる。
【0095】
4.塗工液用重合性共重合体
本発明の製造方法により製造される塗工液用重合性共重合体の用途としては、上記塗工液用溶媒を含む塗工液のバインダ樹脂として用いられるものであり、より具体的には、インキ、塗料や接着剤等のバインダ樹脂を挙げることができる。
【0096】
B.塗工液用重合性共重合体
次に、本発明の塗工液用重合性共重合体について説明する。本発明の塗工液用重合性共重合体は、塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体であって、少なくとも、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性基含有構成単位を含み、末端に上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合することを特徴とするものである。
【0097】
本発明によれば、末端に上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合しているため、本発明の塗工液用重合性共重合体を上記塗工液用溶媒への溶解性に優れたものとすることができる。
また、上記重合性基含有側鎖を有するため、上記塗工液用重合性共重合体を含む塗工液を塗布して形成された塗膜において、上記塗工液用重合性共重合体同士を事後的に重合させることが可能となる。このため、本発明の塗工液用重合性共重合体を用いた場合には、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【0098】
本発明の塗工液用重合性共重合体は、少なくとも重合性基含有構成単位および重合用溶媒由来成分を含むものである。
【0099】
1.重合用溶媒由来成分
本発明の塗工液用重合性共重合体を構成する重合用溶媒由来成分は、上記塗工液用重合性共重合体の末端に結合するものであり、上記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来するものである。
【0100】
本発明の塗工液用重合性共重合体がこのような重合用溶媒由来成分を含むものであることにより、上記塗工液用溶媒への溶解性は低いが、耐久性や耐熱性に優れた構成単位を含む場合であっても、溶解性に優れたものとすることができる。
【0101】
なお、重合用溶媒由来成分および上記塗工液用重合性共重合体を構成する構成単位に対する含有量(mol%)としては、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」の「1.重合工程」の「(5)重合用溶媒成分含有共重合体」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
2.重合性基含有構成単位
本発明の塗工液用重合性共重合体を構成する重合性基含有構成単位は、エチレン性不飽和二重結合を有するものであり、さらに、エチレン性不飽和二重結合が開裂した構造を有するものであれば良い。
【0103】
本発明においては、このような重合性基としてエチレン性不飽和二重結合を有する重合性基含有構成単位を含むことにより、上記塗工液用重合性共重合体を含む塗工液を塗布して形成された塗膜において、上記塗工液用重合性共重合体同士を事後的に重合させることが可能となる。したがって、本発明の塗工液用重合性共重合体を用いた場合には、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【0104】
このような構成単位としては、具体的には、反応性基含有構成単位が有する反応性基に、上記反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基を反応させてなるものを挙げることができる。
【0105】
なお、上記反応性基含有構成単位、上記反応性基含有側鎖用重合性モノマー、含有量および上記反応性基と上記側鎖形成用反応性基との反応方法については、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
3.その他
本発明の塗工液用重合性共重合体は、構成単位として、上記重合性基含有構成単位を含み、末端に上記重合用溶媒由来成分を含むものであるが、必要に応じて、反応性基含有構成単位および反応性基非含有構成単位等のその他の構成単位を有するものであっても良い。
このような反応性基含有構成単位および反応性基非含有構成単位等については、上記具体的には、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0107】
本発明の塗工液用重合性共重合体の製造方法としては、上記重合性基含有構成単位を有し、重合用溶媒由来成分を末端に含むものを収率良く得られる方法であれば良いが、具体的には、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」に記載の方法を用いることができる。
【0108】
本発明の塗工液用重合性共重合体の用途としては、上記塗工液用溶媒を含む塗工液のバインダ樹脂として用いられるものであり、より具体的には、インキ、塗料や接着剤等のバインダ樹脂を挙げることができる。
【0109】
C.塗工液
次に、本発明の塗工液について説明する。本発明の塗工液は、上記塗工液用重合性共重合体と、塗工液用溶媒とを含むことを特徴とするものである。
【0110】
本発明によれば、上記塗工液用重合性共重合体が、上記塗工液用溶媒への溶解性に優れるため、例えば、耐久性に優れた塗膜の形成を可能とすることができる。
また、上記塗工液用重合性共重合体の濃度が高いものとすることできる、乾燥時間が短いものとすることができる。また、塗工液の調製を効率的に行うことができる。
さらに、上記塗工液用重合性共重合体が重合性基を有することにより、塗膜形成後に上記塗工液用重合性共重合体同士を重合させることができるため、耐久性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0111】
本発明の塗工液は、上記塗工液用重合性共重合体と、塗工液用溶媒とを含むものである。
なお、上記塗工液用溶媒については、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
1.塗工液用重合性共重合体
本発明の塗工液に含まれる塗工液用重合性共重合体の含有量としては、上記塗工液用重合性共重合体の種類や用途等に応じて適宜設定されるものであるが、塗工液中に2質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記塗工液用重合性共重合体が上記範囲で含まれることにより、上記塗工液を塗工性に優れたものや、耐久性に優れた塗膜を形成が可能なものとすることができるからである。
【0113】
なお、上記塗工液用重合性共重合体については「B.塗工液用重合性共重合体」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
2.塗工液
本発明の塗工液は、上記塗工液用重合性共重合体と、塗工液用溶媒とを含むものであるが、塗膜形成後にラジカル重合を行い、耐久性や耐熱性に優れた塗膜とすることを目的として、ラジカル重合開始剤、多官能性モノマー等を含むものであることが好ましい。
また、必要に応じて、顔料、分散剤、光安定剤、紫外線吸収剤、または、熱安定剤等のその他の添加剤を含むものであっても良い。
【0115】
上記ラジカル重合開始剤としては、上記塗工液用重合性共重合体が有する重合性基、すなわち、エチレン性不飽和二重結合同士をラジカル重合させることができるものであれば良い。このようなラジカル重合開始剤としては、具体的には、上記「A.塗工液用重合性共重合体の製造方法」の項に記載したものと同様のものや、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0116】
このような光重合開始剤としては、例えば、イミダゾール系、アセトフェノン系、オキシムエステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系、トリアジン系、ベンジル系、アントラキノン系、チオール系およびイオウ化合物系光重合開始剤を挙げることができ、特に好ましくはイミダゾール系、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系およびチオキサントン系光重合開始剤を挙げることができる。
【0117】
上記のイミダゾール系光重合開始剤としては、ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物等が挙げられ、これらの化合物としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾリル、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ−(p−メトキシフェニル)ビスイミダゾリル、2,2’−ビス(2クロロフェニル)−4,4’−5,5’テトラキスフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。
【0118】
また、上記のアセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「IRGACURE369」)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「IRGACURE907」)、2−ヒドロキシ2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ1-{4−[4−(2−ヒドロキシ2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
【0119】
また、上記のベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0120】
また、上記のチオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、2−及び4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等が挙げられる。
【0121】
上記多官能性モノマーとしては、上記ラジカル重合開始剤によって重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が用いられる。本発明においては、なかでも、上記エチレン性不飽和二重結合を2以上有する多官能性モノマーであることが好ましく、特に上記エチレン性不飽和二重結合として、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0122】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0123】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0124】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0125】
本発明の塗工液の製造方法としては、上記塗工液用重合性共重合体が、上記塗工液用溶媒を主成分とする溶媒中に均一に分散・溶解したものとする方法であれば良く、公知の混合・分散手段を用いることができる。
【0126】
本発明の塗工液の用途としては、塗工液用重合性共重合体をバインダ樹脂として含む塗工液であれば良く、具体的には、インキ、塗料や接着剤等に用いることができる。
【0127】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0129】
[実施例1]
攪拌機および窒素導入管を備えた4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)50gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)75gを入れ、マントルヒーターで110℃に加熱した。
そこに、メチルメタクリレート(MMA;三菱レイヨン製、アクリエステルM)35gとメタクリル酸(MAA、三菱レイヨン製)30g、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂製パーブチルO)6.0gの混合液を、滴下漏斗より1.5時間かけて滴下した。
滴下中は、フラスコ内の温度が110℃±1℃となるようにした。滴下終了後、パーブチルOを0.3g添加し、110℃に保ったまま1時間加熱攪拌した。
その後、再度パーブチルOを0.3g添加し、さらに110℃で3時間反応させることにより、無色透明のMMA/MAA共重合体(主鎖)溶液を得た。
反応終了後冷却し、このMMA/MAA共重合体溶液にグリシジルメタクリレート(GMA;三菱レイヨン製アクリエステルG)35g、p−メトキシフェノール0.05g、N,N−ジメチルベンジルアミン0.3gを加え、窒素導入管の代わりに空気導入管を接続し、110℃で10時間加熱することにより、側鎖に不飽和二重結合を有するアクリル重合体1を得た。
GPC測定装置(東ソー(株)製HLC−8220GPC)にてゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体1の重量平均分子量(Mw)は14000(ポリスチレン換算)であった。
【0130】
[実施例2]
溶媒をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EMDG)125gとした以外は、実施例1の合成方法と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体2を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体2の重量平均分子量は11000(ポリスチレン換算)であった。
【0131】
[実施例3]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをMMA20g、ベンジルメタクリレート(BzMA;三菱レイヨン製アクリエステルBZ)15g、MAA30gとした以外は実施例2と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体3を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体3の重量平均分子量は10000(ポリスチレン換算)であった。
【0132】
[実施例4]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをBzMA35g、MAA30gとした以外は実施例2と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体4を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体4の重量平均分子量は10000(ポリスチレン換算)であった。
【0133】
[実施例5]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをフェノキシエチルメタクリレート(PhEMA)35g、MAA30gとした以外は実施例2と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体5を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体5の重量平均分子量は11000(ポリスチレン換算)であった。
【0134】
[実施例6]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをスチレン(St)35g、MAA30gとした以外は実施例2と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体6を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体6の重量平均分子量は14000(ポリスチレン換算)であった。
【0135】
[実施例7]
溶媒をPGMEA150g、主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをMMA15g、BzMA50g、MAA20gとし、側鎖を形成するラジカル重合性モノマーをGMA15gとした以外は実施例1と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体7を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体7の重量平均分子量は13000(ポリスチレン換算)であった。
【0136】
[実施例8]
重合開始剤をジベンゾイルパーオキサイドとした以外は実施例7と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体8を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体8の重量平均分子量は13000(ポリスチレン換算)であった。
【0137】
[実施例9]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをMMA65g、MAA20gとし、重合開始剤をt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂(株)パーブチルI)とした以外は実施例7の合成方法と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体9を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体9の重量平均分子量は12000(ポリスチレン換算)であった。
【0138】
[実施例10]
攪拌機および窒素導入管を備えた4つ口フラスコにPGMEA150gを入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。
そこに、MMA15gと、BzMA50g、MAA20g、パーブチルO1.5g、および連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(nDM)5.0gの混合液を、滴下漏斗より1.5時間かけて滴下した。
滴下中は、フラスコ内の温度が100℃±1℃となるようにした。滴下終了後、パーブチルOを0.3g添加し、110℃に保ったまま1時間加熱攪拌した。
その後、再度パーブチルOを0.3g添加し、さらに100℃で3時間反応させることにより、無色透明のMMA/BzMA/MAA共重合体(主鎖)溶液を得た。
反応終了後冷却し、このMMA/BzMA/MAA共重合体溶液にGMA15g、p−メトキシフェノール0.05g、N,N−ジメチルベンジルアミン0.3gを加え、窒素導入管の代わりに空気導入管を接続し、110℃で10時間加熱することにより、側鎖に不飽和二重結合を有するアクリル重合体10を得た。
GPC測定装置(東ソー(株)製HLC−8220GPC)にてゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体10の重量平均分子量(Mw)は8000(ポリスチレン換算)であった。
【0139】
[実施例11]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをシクロヘキシルメタクリレート(CHMA;三菱レイヨン製アクリエステルCH)30g、MMA35g、MAA20gとした以外は、実施例10の合成方法と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体11を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体11の重量平均分子量は10000(ポリスチレン換算)であった。
【0140】
[実施例12]
溶媒をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EMDG)、主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをBzMA65g、MAA20gとし、側鎖を形成するラジカル重合性モノマーをGMA15gとした以外は実施例10と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体12を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体12の重量平均分子量は8000(ポリスチレン換算)であった。
【0141】
[実施例13]
主鎖を形成するラジカル重合性モノマーをMMA65g、MAA20gとし、連鎖移動剤としてnDMの代わりにデシルメルカプタン(DeM)を使用し、側鎖を形成するラジカル重合性モノマーを3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート15gとした以外は実施例10と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体13を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体13の重量平均分子量は9000(ポリスチレン換算)であった。
【0142】
[比較例1]
溶媒をキシレンとした以外は、実施例7と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体14を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体14の重量平均分子量は15000(ポリスチレン換算)であった。
【0143】
[比較例2]
溶媒をキシレンとし、ラジカル重合開始剤をアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)とした以外は比較例1と同様にして、不飽和二重結合を有するアクリル重合体15を得た。
ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、重合体15の重量平均分子量は12000(ポリスチレン換算)であった。
【0144】
[評価]
実施例および比較例により作成した不飽和二重結合を有するアクリル重合体を、ヘキサン中で精製することにより、重合・反応用の溶媒を取り除き、さらに真空下で12時間乾燥させることで樹脂粉末としたものについて、溶解性評価および質量分析を行った。
【0145】
1.溶解性評価
実施例および比較例により作製した不飽和二重結合を有するアクリル重合体の樹脂粉末100mgを溶解用溶剤5gに混合、攪拌し、樹脂粉末が完全に溶解するまでの時間を測定した。以下の評価基準で評価した結果を、下記表1に示す。
なお、表1中において、化合物名後の数字はグラム数を示すものである。
【0146】
A:5分以内に溶解
B:10分以内に溶解
C:10分より長い時間必要
【0147】
【表1】

【0148】
表1に示すように、実施例のように、溶解用溶剤と相溶性の高い溶媒中で重合した不飽和二重結合を有するアクリル重合体は、溶解性に優れることが確認できた。
また、比較例のように、溶解用溶剤と相溶性の低い溶媒中で重合した不飽和二重結合を有するアクリル重合体は、溶解性が低い結果となった。
【0149】
2.質量分析
実施例9で得られた重合体9について、MALDI TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)(島津製作所(株)製、AXIMA−CFR plus、マトリックス;ジチラノール、カチオン化剤;NaI)にて、質量数を測定したところ、図1に示すような結果を得た。なお、得られた質量数の数値は、Naイオン(Na)でイオン化したポリマーの質量を表すものである。
【0150】
図1より、重合体9の「922.0,936.1,950.1」のピークは、それぞれMMA/MAA共重合比6/2、7/1、8/0の共重合体に重合溶媒であるPGMEAと重合開始剤由来成分(イソプロピル基)が結合した分子の質量数と一致し、分子鎖に重合溶媒に由来する重合溶媒由来成分が結合していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】実施例9により得られた重合体9を、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置によって測定したときのデータを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体の製造方法であって、
下記一般式(1)または(2)で表され、前記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒を含む溶媒中で、カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含み、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有主鎖用重合性モノマーと、前記反応性基を含まず、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとを含む主鎖用重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合し、
カルボキシル基またはエポキシ基の反応性基を含む反応性基含有構成単位と、反応性基非含有構成単位とを含み、末端に前記重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合した重合用溶媒成分含有共重合体を形成する重合工程と、
前記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基と、前記重合用溶媒成分含有共重合体が有する反応性基に結合することができる側鎖形成用反応性基およびエチレン性不飽和二重結合を有する反応性基含有側鎖用重合性モノマーの側鎖形成用反応性基と、を反応させる付加工程と、
を有することを特徴とする塗工液用重合性共重合体の製造方法。
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、Yは水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、lおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。また、Xは、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、および−SO−のいずれかの2価の置換基を示し、Xは、nil.、−O−、−CO−O−、−NR−、−SO−、−NR−CO−、−S−、−SO−のいずれかの2価の置換基を示す。また、XおよびXにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。なお、nil.とは、Xが存在しないことを意味するものである。)
【請求項2】
前記一般式(1)または(2)で表される重合用溶媒が、前記塗工液用溶媒と同一であることを特徴とする請求項1に記載の塗工液用重合性共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記反応性基含有主鎖用重合性モノマーおよび反応性基含有側鎖用重合性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸の少なくとも1種類、または、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、および(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートの少なくとも1種類が用いられ、
前記反応性基非含有主鎖用重合性モノマーとして、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、およびアダマンチルメタクリレートの少なくとも1種類が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗工液用重合性共重合体の製造方法。
【請求項4】
塗工液用溶媒と共に用いられる塗工液用重合性共重合体であって、
少なくとも、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性基含有構成単位を含み、
末端に前記塗工液用溶媒と相溶性を有する重合用溶媒に由来する重合用溶媒由来成分が結合することを特徴とする塗工液用重合性共重合体。
【請求項5】
請求項4に記載の塗工液用重合性共重合体と、塗工液用溶媒とを含むことを特徴とする塗工液。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150404(P2010−150404A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330505(P2008−330505)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】