説明

塗工紙

【課題】高速輪転オフセット印刷機、特に印刷速度が1000rpm以上と高速の輪転オフセット印刷機を用いて印刷をしても、ヒジワの発生が抑制され、白紙光沢および印刷光沢が高く、表面強度が高いため見栄えが良くなり優れた仕上がりとなる印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】前記塗工層中の顔料として、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料粒子の5%以下であり、前記塗工層には接着剤として、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを、前記顔料100質量部に対して4〜7質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工紙に関する。さらに詳しくは、オフセット印刷において発生するヒジワの発生を防止し、かつ印刷光沢度に優れた見栄えの良い印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷機の高速化に伴い、オフセット輪転印刷機での乾燥温度が高くなり、印刷後の乾燥工程において、ヒジワと呼ばれる、画線部と非画線部の収縮率の差に起因するシワの発生が問題になっている。塗工紙は乾燥時に、塗工紙中の水分が水蒸気となって蒸発するため収縮するが、この際、画線部には印刷インキが乗っているため非画線部に比べて水蒸気の蒸発が抑制され、収縮差によりヒジワが発生する。ヒジワの発生を抑止するために種々の提案がなされている。
【0003】
ヒジワを抑止する技術としては、サイズ剤としてα−オレフィン−α−ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含有し、特定のサイズ度に調整する技術(特許文献1を参照)や、最も表面側の塗工層にプラスチックピグメントを含有した塗工紙を、シューカレンダーで処理する技術(特許文献2を参照)、塗工層上にプラスチックピグメント及び表面サイズ剤をスプレー塗工する技術(特許文献3を参照)、塗工層の最下層中に顔料成分として、平均粒子径0.5〜3.0μmの中空樹脂粒子を含有する塗工層をフィルムトランスファー方式で設ける技術(特許文献4を参照)が提案されている。
【0004】
また、脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られ、前記燃焼工程が、第1燃焼炉と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼炉は300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行う、ことによって得られる再生粒子を、塗工層に顔料として含有させる技術もある(特許文献5)。
【0005】
上記技術によりヒジワの発生をある程度低減できるものの、近年の高速輪転オフセット印刷においては、印刷速度(ブランケット胴の回転速度)が従来の600rpm程度から1000rpm以上と高速化しており、これに従い印刷後の乾燥温度も高くなっており、ヒジワが発生しやすい印刷条件になっている。このような印刷速度においては、乾燥温度は紙面温度で110℃以上、更には115℃以上となるため、特にヒジワが発生しやすく、上記技術を用いても充分にヒジワを防止することができず、要求されているほど高レベルで見栄えの良い印刷物が得られないとの問題があった。
【特許文献1】特開2004−211231号公報
【特許文献2】特開2006−138025号公報
【特許文献3】特開2007−154330号公報
【特許文献4】特開2007−211357号公報
【特許文献5】特願2008−227128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高速輪転オフセット印刷機、特に印刷速度が1000rpm以上と高速の輪転オフセット印刷機を用いて印刷をしても、ヒジワの発生が抑制され、さらには印刷物の印刷光沢が高く見栄えが良い印刷用塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基紙および基紙上に、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を有する塗工紙であって、前記顔料は、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料粒子の5%以下であり、前記接着剤として少なくとも、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを含み、前記顔料100質量部に対する前記接着剤の割合が4〜7質量部であることを特徴とする、塗工紙である。
【0008】
さらには、製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を、前記基紙に含有することが好ましい。
【0009】
さらには、前記基紙および前記顔料塗工層の間に、澱粉を主成分とするクリア塗工層が設けられ、前記澱粉が、過硫酸水素カリウムで酸化されて得られた酸化澱粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による塗工紙は、高速輪転オフセット印刷機、特に印刷速度が1000rpm以上と高速の輪転オフセット印刷機を用いて印刷をしても、ヒジワの発生が抑制され、さらには印刷物の印刷光沢が高く見栄えが良い印刷用塗工紙が得られる。
【0011】
本発明は、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料粒子の5%以下であり、前記接着剤として少なくとも、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを含み、前記顔料100質量部に対する前記接着剤の割合が4〜7質量部の塗工紙である。
【0012】
<抄紙>
まず、本実施形態に係る塗工紙を構成する基紙について説明する。
【0013】
基紙は、通常の原料パルプを抄紙して得られるものであればよい。該原料パルプにも特に限定がなく、例えば未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して用いることができる。
【0014】
上記原料パルプに、内添の填料として従来製紙用途で一般的に用られている填料を添加することができる。填料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト、シリカ等の無機填料や、ポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。
【0015】
填料の配合量は特に限定されないが、基紙中の灰分で2〜9質量%となるよう添加することが好ましく、3〜7質量%がより好ましい。灰分が9質量%を超過すると、パルプ同士の水素結合が阻害され易いため腰の無い紙となり、印刷乾燥時の収縮に基紙が耐えられず、ヒジワが発生し易くなるため好ましくない。灰分が2質量%を下回ると、パルプ繊維同士が水素結合で結びつきやすくなり、印刷後乾燥時に塗工紙の収縮が大きくなりやすく、ヒジワが発生しやすくなるため好ましくない。しかしながら本発明においては、後述のとおり、塗工層の顔料として、粒子径が1.0μm以上の粒子が全顔料の5%以下であり、かつ接着剤としてブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを、前記顔料100質量部に対して4〜7質量部含有させることにより、特にヒジワの発生を抑制しやすいため、填料の含有量が上記範囲から外れても、ヒジワの発生を抑制しやすい塗工紙が得られる。尚、本発明の灰分とは、JISP8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準じて測定した値とする。
【0016】
<再生粒子>
本発明では、基紙の空隙率を高めてヒジワを抑制しやすくするために、基紙の填料として、特に空隙率が高い填料を用いることが好ましい。空隙率が高い填料としては、一次粒子を凝集させて二次粒子を形成させた、いがぐり状の粒子やロゼッタ状の粒子などが挙げられるが、本発明においては特に、製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を使用することが好ましい。この再生粒子を基紙に含有させることで、特に空隙性が高くヒジワを防止しやすい基紙および塗工紙が得られる。すなわちこの製造方法により得られた再生粒子は、過焼成による硬質物質の発生が少ないため、基紙においても空隙性およびヒジワ防止効果に劣る硬質物質の含有量を抑制でき、ヒジワ防止効果を基紙に均一に付与しやすい。乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経ずに得られた再生粒子には硬質物質が多く含まれるため、この硬質物質の周辺において充分なヒジワ防止効果が得られにくくなり、局所的にヒジワが発生しやすくなるため好ましくない。
【0017】
上記「再生粒子」とは、主原料として製紙スラッジを、好ましくは古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離される填料又は顔料を含んだ脱墨フロスを主原料に用いて、この主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て再資源化したものである。また、上記「製紙スラッジ」とは、抄紙工程でワイヤーを通過して流出した固形分、パルプ化工程での洗浄過程で発生する排水から回収した固形分、排水処理工程において沈殿・浮上作用等を利用して固形分分離装置により分離若しくは回収した固形分、又は、古紙処理工程で除去された固形分等が混在したものである。この再生粒子は、単一の素材からなる粒子でも複数の素材からなる粒子でもよい。
【0018】
再生粒子に含まれるシリカの割合は、再生粒子の体積平均粒子径及びその元素構成に依存するが上限としては酸化物換算で35質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、上記下限としては9質量%が好ましい。また、同様に上記再生粒子に含まれるカルシウムの割合の上限としては酸化物換算で82質量%が好ましく、一方、上記下限としては30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。また、同様に再生粒子に含まれるアルミニウムの割合の上限としては、酸化物換算で35質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、上記下限としては9質量%が好ましい。上記各成分は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、15KVの加速電圧にて元素分析を行うことで算出することができる。
【0019】
再生粒子に含まれるシリカ、カルシウム及びアルミニウムの質量割合を上記割合に調整する方法としては、例えば、脱墨フロスの原料構成を調整する方法や、後述する第1熱処理工程、第2熱処理工程及び第3熱処理工程において出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で添加する方法、又は焼却炉スクラバー石灰を添加する方法等が挙げられる。具体的に、再生粒子に含まれるシリカの量を調整するには、例えば、不透明度向上剤としてホワイトカーボン等が多量に配合されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用いればよく、カルシウムの量を調整するには、例えば、中性抄紙系の排水スラッジ又は塗工紙製造工程の排水スラッジを用いればよく、アルミニウムの量を調整するには、例えば、酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用されている抄紙系の排水スラッジや、タルクの多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いればよい。なお、この再生粒子の製造方法は後に詳述するが、当該塗工紙の製造方法において、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経て得られる再生粒子を用いることにより、得られる塗工紙の不透明度、白紙光沢度および印刷光沢度、耐ヒジワ性などが向上する。
【0020】
[シリカ複合再生粒子]
上記再生粒子は、再生粒子の表面にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であることが好ましい。再生粒子の表面にシリカを複合させることで、再生粒子の有するカチオン性とシリカの有するアニオン性により、パルプ繊維間の結合が適度に阻害され、得られる塗工紙の耐ヒジワ性を向上させることができる。また、シリカを複合させることにより、粒子の不定形性がさらに向上するため、さらにパルプ繊維間の結合が阻害されやすくなり、さらにヒジワを防止できる塗工紙が得られやすいため好ましい。加えて、再生粒子が、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経て得られるものであると、過焼成に起因する硬質物質の発生が少なくなるため、均一な耐ヒジワ性を得ることができるため好ましい。また、上記シリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面をシリカで複合したものであることから不透明度に優れるため、得られる塗工紙の不透明度も向上しやすいため好ましい。
【0021】
上記シリカ複合再生粒子に含まれるシリカは、何らかの化学反応によって得られる合成シリカであれば特に制限なく使用でき、このような合成シリカとしては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル又は無水シリカ等が挙げられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力及び吸着力の大きさ、付着性の高さ、又は高吸油性などの優れた特性を有する。これらの合成シリカのうち、例えば、コロイダルシリカとは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカを意味する。また、シリカゲルとは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸を意味する。また、無水シリカとは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものを意味する。これらのシリカは一種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
上記シリカ複合再生粒子に含まれるシリカの割合は、再生粒子の体積平均粒子径及びその元素構成に依存するが、酸化物換算で10質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、41質量%以上49質量%以下とすることがより好ましく、42質量%以上48質量%以下とすることがさらに好ましい。シリカ複合再生粒子に含まれるシリカの割合を上記範囲とすることで、このシリカ複合再生粒子を用いた塗工紙の耐ヒジワ性をより向上させることができる。
【0023】
上記シリカ複合再生粒子に含まれるカルシウムの割合は、酸化物換算で30質量%以上80質量%以下とすることが好ましく、また、上記シリカ複合再生粒子に含まれるアルミニウムの割合は、酸化物換算で7質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。上記各成分は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、15KVの加速電圧にて元素分析を行うことで算出することができる。
【0024】
また、上記シリカ複合再生粒子は、填料の表面がシリカで被覆されているため抄紙工程のワイヤー(網部)の磨耗を低減し、ワイヤーの寿命を延ばすことができる。紙に内添する填料の粒子が硬いと抄紙機のワイヤーを傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるため好ましくないが、上記シリカ複合再生粒子は適度な硬度を有するため、ワイヤーの磨耗を低減し、ワイヤーの寿命を延長させることができる。
【0025】
<再生粒子の製造方法>
ここで、上述した再生粒子の製造方法を図1及び図2を参照しつつ以下に詳述する。図1の再生粒子の製造設備は主に、貯槽21、乾燥装置22、第1熱処理炉(外熱キルン炉)24、第2熱処理炉(外熱キルン炉)25、及び第3熱処理炉(内熱キルン炉)27を備えている。この再生粒子の製造方法は、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を有する。原料20となる製紙スラッジは貯槽21からバーナー36A及び熱風発生炉36を備える乾燥装置22へ送られ、装入機23を経て供給口24Aから第1熱処理炉24へ送られる。バーナー37A及び熱風発生炉37を備える第1熱処理炉24で熱処理された原料20は排出口24Bから排出され、続く第2熱処理炉25へ供給口25Aから投入される。バーナー38A及び熱風発生炉38を備える第2熱処理炉25で熱処理された原料20は排出口25Bから排出され、続いて第3熱処理炉27へ供給口27Aから投入される。バーナー39A及び熱風発生炉39を備える第3熱処理炉27で熱処理された原料20は排出口27Bから排出され、冷却機28、粒子径選別機29を経てサイロ30に貯められる。また、第2熱処理炉25の排出口25Bから排出される燃焼ガスは再燃焼室31、予冷器32、熱交換器33、誘引ファン34を経て煙突35から排出される。なお、必要に応じて乾燥工程の前に、後述する脱水工程、解し(ほぐし)工程を有してもよいし、第3熱処理工程の後に後述する粉砕・選別工程を有していてもよい。
【0026】
以下に詳述する再生粒子の製造方法は、好ましくは乾燥工程、第1熱処理工程、第2熱処理工程、第3熱処理工程の順に熱処理温度が高くなるように設定し、好ましくは、脱水後の原料20を熱気流に同伴させて乾燥することで、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができる。また、乾燥工程と3段階の熱処理工程とをそれぞれ分けて行うことで、目的に応じた熱処理温度を確実に区別し制御することができる。
【0027】
[再生粒子の原料]
再生粒子の原料20は、上述した製紙スラッジを固形分換算で50質量%以上含むことが好ましい。この製紙スラッジは由来となる古紙パルプ製造工程等において、古紙パルプの選定又は選別が行われている品質の安定したものを使用することが好ましい。これにより、未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類の混入を防ぐことができ、上記古紙パルプ製造工程に由来する無機物等の種類、比率、及び量等が一定となり、再生粒子の製造に好適な原料20を得ることができる。
【0028】
また、この原料20に鉄分が含まれていると、得られる再生粒子の白色度低下の原因となるため、鉄分はあらかじめ選択的に取り除くことが好ましい。具体的には、各工程に用いる装置を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等によって鉄分が系内に混入するのを防止したり、各装置内等に磁石等の高磁性体を設置することで選択的に鉄分を除去すること等が挙げられる。
【0029】
[脱水工程]
上記原料20は、一般的に95質量%〜98質量%の水分を含有しているため、公知の脱水装置を用いて脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理は原料20を、例えば、スクリーン等によって水分率65質量%以上90質量%以下まで脱水し、次いで、スクリュープレス等によって水分率の上限として60質量%、好ましくは50質量%、より好ましくは45質量%、また水分率の下限として30質量%、好ましくは35質量%まで脱水することが挙げられる。ここで水分率とは、公知の定温乾燥機を用いて原料20を乾燥させ、質量変動を認めなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式にて算出した値である。
(数1)
水分率(質量%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
【0030】
このように上記脱水工程を行うことにより、無機物の流出を抑制し、後の乾燥工程や熱処理工程におけるエネルギーロスを抑え、乾燥ムラを防止し、原料20のフロックが硬くなり過ぎて解し難くなることを抑制することができる。脱水工程においては、原料20を凝集させる凝集剤等の助剤を添加して脱水効率の向上を図ることもできるが、助剤としては鉄分を含まないものを使用することに留意する。助剤に鉄分が含まれていると、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがあるからである。
【0031】
[解し(ほぐし)工程]
脱水工程後の原料20は貯槽21から切り出して解し(ほぐし)工程に付してもよい。解し工程は、例えば、撹拌機や機械式ロール等の公知の装置を用いて原料20を解せばよい。解し工程後の原料20は、粒子径50mm以上の割合の上限として70質量%が好ましい。一方、粒子径50mm以上の割合の下限としては30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。「粒子径50mm以上の割合」とは、原料20全体における目穴50mmの篩を通過しなかった原料20の質量割合を意味し、JIS−Z8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」に基づく値である。このように解し工程を行うことにより、後の乾燥工程に適した粒子径の原料20を得ることができる。
【0032】
[乾燥工程]
脱水工程後の原料20は、上記の解し工程を適宜経た後、乾燥工程に付される。乾燥工程で用いる乾燥装置22としては、原料20を熱気流に同伴させて乾燥することができる気流乾燥装置を用いることが好ましい。この気流乾燥装置は、原料20を乾燥すると同時に、熱気流の大きな分散力によって原料20を均一に解すことができ、また、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置22から原料20が排出されるため意図しない有機物の熱分解・燃焼等が生じるおそれがないためである。このような乾燥装置22としては、例えば、新日本海重工業社製の商品名「クダケラ」等の公知の装置の他、これらを改良した気流乾燥装置等が挙げられる。本実施形態における乾燥工程では、貯槽21から脱水後の原料20を乾燥装置22に供給するとともに、バーナー36Aを備える熱風発生炉36から熱風が吹き込まれ、この熱風によって生じる熱気流に同伴させることで原料20を乾燥させている。この脱水工程における熱風の温度、流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、原料20の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
【0033】
上記乾燥工程後は、粒子径50mm以上の原料20が存在せずに、かつ平均粒子径の上限としては7mmが好ましく、5mmがより好ましく、3mmがさらに好ましい。一方、平均粒子径の上記下限としては1mmが好ましい。「平均粒子径」とは、JIS−Z8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」に基づいて、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定して、測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、「粒子径50mm以上の割合」は前述したとおりである。このように乾燥工程を行うことにより、後の熱処理工程におけるエネルギーコストを抑え、原料20を表面部から芯部まで均一に熱処理することができる。
【0034】
乾燥工程における上記熱気流の温度は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風発生炉36からの熱風温度の上限として600℃、好ましくは500℃、より好ましくは400℃とし、熱風温度の下限として200℃、好ましくは300℃とすることが挙げられる。また、乾燥装置22からの排ガスの温度は500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。乾燥工程における熱気流及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、わずか1〜3秒で再生粒子の製造に好適な水分率を均一に有する原料20を得ることができる。
【0035】
上記乾燥工程後の原料20の水分率の上限としては5%が好ましく、3%がより好ましく、1%がさらに好ましい。一方、水分率の上記下限としては0%が好ましい。乾燥工程後の原料20の水分率を上記範囲とすることにより、続く熱処理工程(特に第1熱処理工程)での熱処理がより効果的にムラなく行われ、均一な品質を有する再生粒子を安定して得ることができる。また、上記乾燥工程と以下の第1熱処理工程とを分けて行うことにより、目的に応じた熱処理温度を確実に区別して制御することができる。
【0036】
[熱処理工程]
[第1熱処理工程]
第1熱処理工程では、上記乾燥工程を経た原料20が装入機23によって第1熱処理炉24に装入される。この第1熱処理炉24としては、公知の熱処理炉を適宜使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第1熱処理炉24として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を採用しているが、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能である。本実施形態においては、第1熱処理工程に先立って原料20を乾燥し水分を予め除去しているため、熱処理温度を確実に制御できる点で外熱キルン炉の方が好適である。また、キルン炉は、原料20の燃焼度合いの調整が容易で、原料20の歩留まり性に優れ、充分に撹拌ができる点で有機物の熱処理にバラツキが発生せず、得られる再生粒子が均一で過焼成による硬質物質の発生が少ない点においても好適である。
【0037】
本実施形態では、第1熱処理炉24は、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転作用および重力作用によって原料20が搬送方向へ徐々に移送される構造を有している。本実施形態における第1熱処理炉24の外表面上には、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット24Cが設けられており、この外熱ジャケット24Cにより炉本体の内表面上に堆積した原料20が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット24Cは、炉本体の軸方向に沿って数個に分割されており、分割された外熱ジャケットを個別に加熱することで、熱処理温度を細やかに制御することができ、原料20の性質及び状態に応じた的確な熱処理を行うことができる。
【0038】
第1熱処理炉24の炉本体内表面温度の上限としては、450℃が好ましく、400℃がより好ましい。一方、上記炉本体内表面温度の下限としては260℃が好ましく、280℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。また、炉本体内の温度の上限としては350℃が好ましく、上記炉本体の温度の下限としては240℃が好ましく、270℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。このように炉本体内表面温度及び炉本体内の温度を上記範囲とすることにより、原料20に含まれるアクリル系有機物及びセルロースを十分に熱処理(熱分解等)することができ、これらが燃焼することによる過剰な加熱を防止することができる。なお、上記炉本体内表面温度は炉本体内表面に設置した熱電対にて実測した値であり、炉本体内の温度は炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
【0039】
また、上記第1熱処理炉24は上記のような外熱方式以外に、例えば、酸素を含有する熱風を適宜供給する内熱方式とすることもできる。内熱方式の場合、熱風はバーナー37Aを備える熱風発生炉37から供給口24Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口24Aから入り炉本体の回転に伴って排出口24Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第1熱処理炉24内のガスは排出口24Bを通して排ガスとして排出される。このような内熱方式では、第1熱処理炉24に供給された原料20を直ちにアクリル系有機物やセルロース等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、排出口24B側に向かう程低温化する温度勾配が生じるため、原料20の過剰な熱処理を防止することができる。なお、このような温度勾配の設定は上記外熱方式でも可能である。第1熱処理炉24は外熱方式と内熱方式を併用することも可能であり、併用する場合は、例えば、バーナー37Aを用いずに熱風発生炉37のみを用いて第1熱処理炉24内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
【0040】
上記内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記排ガスの酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて測定した値である。熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、原料20の過剰な熱処理や熱分解ガスの発火(燃焼)を防止するとともに、アクリル系有機物やセルロース等を充分に熱処理し、後述する発熱量の減少率を容易に調整することができる。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。上記酸素濃度は、外熱方式の場合も同様であり、外熱方式及び内熱方式を併用した場合も同様である。
【0041】
また、上記内熱方式の場合、第1熱処理炉24に供給する熱風の温度の上限としては、420℃が好ましく、410℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましく、360℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては370℃が好ましく、360℃がより好ましく、350℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては250℃が好ましく、300℃がより好ましく、310℃がさらに好ましい。ここで熱風の温度は熱風発生炉37の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、熱分解ガスの発火を防止し、原料20中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が充分に行われ、後の第2熱処理炉25及び第3熱処理炉27における熱処理制御が容易となり、再生粒子の白色度を低下させる原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を有効に抑制し、またスチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することで残カーボンの生成を抑制し、難燃性カーボンの生成を抑制することができる。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常370℃、好ましくは360℃、より好ましくは350℃に調節され、一方、下限としては通常250℃、好ましくは300℃、より好ましくは310℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であり、原料20の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内の温度は、供給口24Aから排出口24Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
【0042】
第1熱処理炉24においては、原料20の発熱量が20%〜90%減少するように、好ましくは50%〜80%減少するように、より好ましくは50%〜70%減少するように熱処理することが好ましい。このように発熱量の減少率を上記範囲とすることで、過剰な熱処理を抑制し、硬質物質の生成を1.5質量%以下に抑制することができる。また、発熱量の減少率を上記範囲とすることにより、原料20に含まれるスチレン系有機物の熱分解を防止し、セルロース等の熱分解ガスの発火及び高発熱量成分であるアクリル系有機物の残留を有効に防止することができる。なお、発熱量の減少率は、第1熱処理炉24に供給される原料20の発熱量と、第1熱処理炉24から排出される原料20の発熱量とを比較した値であり、この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。特に、第1熱処理炉24において、アクリル系有機物及びセルロースを除去して上記発熱量を20%〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300cal/g以上400cal/g以下となるように熱処理することにより、第2熱処理炉25における炉本体内温度の変動幅を10℃以上40℃以下の範囲に抑制し易くなり得られる再生粒子を均質化することができる。第2熱処理炉25における炉本体内温度の変動幅を上記範囲とすることにより、得られる再生粒子の硬度及び白色度のバラツキを防止することができる。
【0043】
第1熱処理炉24における原料20の未燃率の上限としては、30質量%が好ましく、26質量%が好ましく、23質量%がより好ましい。一方、上記未燃率の下限としては、13質量%が好ましく、14質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。ここで、未燃率とは、約600℃に温度調整した電気炉で2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。原料20の未燃率を上記範囲とすることにより、エネルギーコストを抑えつつ、後の第2熱処理炉25における熱処理を緩慢に行うことができる。
【0044】
第1熱処理炉24における原料20の滞留時間の上限としては、120分が好ましく、105分がより好ましく、90分がさらに好ましい。一方、滞留時間の下限としては、30分が好ましく、45分がより好ましく、60分がさらに好ましい。滞留時間を上記範囲とすることにより、原料20に含まれるアクリル系有機物及びセルロース等を緩慢に熱分解することができ、難燃性カーボンの生成を抑制し、得られる再生粒子の白色度の低下や硬質物質の増加を防止することができる。なお、滞留時間は、原料20と色が異なることにより識別できる金属片を供給口24Aから炉本体内に投入し、排出口24Bから排出されるまでの実測時間である。
【0045】
上記第1熱処理工程によって、220℃近傍に発熱量のピークを有するアクリル系有機物及び320℃近傍に発熱量のピークを有するセルロース等の製紙スラッジ由来の高発熱量成分を原料中から熱処理除去することができる。その結果、続く第2熱処理工程での過燃焼を抑制し、再生粒子として不適切なゲーレナイト(CaAlSiO)やアノーサイト(CaAlSi)等の硬質物質の生成を抑制することができる。
【0046】
[第2熱処理工程]
上記第1熱処理炉24において熱処理された原料20は、第2熱処理工程に送られ熱分解や燃焼等の熱処理に付される。
【0047】
原料20は、この第2熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1mm以上7mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下に調節しておくことが好適である。
【0048】
第2熱処理工程において、原料20は第2熱処理炉25に装入される。この第2熱処理炉25としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第2熱処理炉25として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を採用しているが、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能である。本実施形態の第2熱処理炉25は、第1熱処理炉24と同形状のものを採用しているが、例えば、第1熱処理炉24と軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、原料20の滞留時間を異なるものとしてもよい。本発明の第2熱処理炉25の外表面上には、第1熱処理炉24と同様に電気ヒーター等からなる外熱ジャケット25Cが設けられており、この外熱ジャケット25Cにより炉本体の内表面上に堆積した原料20が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット25Cは、炉本体の軸方向に沿って数個に分割されており、分割された外熱ジャケットを個別に加熱することで熱処理温度を細やかに制御することができ、原料20の性質及び状態に応じた的確な熱処理を行うことができる。
【0049】
第2熱処理炉25の炉本体内表面温度の上限としては、550℃が好ましく、500℃がより好ましい。一方、上記炉本体内表面温度の下限としては360℃が好ましく、380℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。また、炉本体内の温度の上限としては400℃が好ましく、上記炉本体の温度の下限としては360℃が好ましい。このように炉本体内表面温度及び炉本体内の温度を上記範囲とすることにより、原料20に含まれるスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができ、過剰な熱処理を防止することができる。原料20の温度は、炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内表面温度の測定方法は第1熱処理炉24と同様である。
【0050】
また、上記第2熱処理炉25は第1熱処理炉24と同様に、内熱方式とすることもできる。内熱方式の場合、熱風はバーナー38Aを備える熱風発生炉38から供給口25Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口25Aから入り炉本体の回転に伴って排出口25Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第2熱処理炉25内のガスは排出口25Bを通して排ガスとして排出される。このような内熱方式では、第2熱処理炉25に供給された原料20を直ちにスチレン系有機物等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、排出口25B側に向かう程低温化する温度勾配が生じるため原料20の過剰な熱処理を防止することができる。なお、このような温度勾配の設定は第1熱処理炉24と同様に上記外熱方式でも可能である。第1熱処理炉24は外熱方式と内熱方式を併用することも可能であり、併用する場合は、例えば、バーナー38Aを用いずに熱風発生炉38のみを用いて第2熱処理炉25内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
【0051】
また、上記第1熱処理炉24が並流方式の場合等においては、第2熱処理炉25において、排出口25Bから炉本体内に熱風を吹き込み、排ガスを供給口25Aを通して排出する向流方式としてもよい。これにより第1熱処理炉24からの排ガスを通す配管と、第2熱処理炉25からの排ガスを通す配管とを、例えば1つにまとめることができ配管処理が容易となる。さらに、第1熱処理炉24と第2熱処理炉25とを連接し、熱風発生炉37からの熱風を、第1熱処理炉24を介した後、供給口25Aを通して第2熱処理炉25内に供給するとともに、バーナー38Aが備わる熱風発生炉38からの酸素を含有する熱風を供給口25Aを通して第2熱処理炉25内に供給してもよい(並流方式)。
【0052】
上記内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて測定した値である。熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、原料20の過剰な熱処理や熱分解ガスの発火(燃焼)を防止するとともに、スチレン系有機物等を充分に熱処理し、発熱量の減少率を容易に調整し、原料20の硬化を防止し、設備コストやエネルギーコストを上げることなく原料20の白色化を促進することができる。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。
【0053】
また、内熱方式の場合、第2熱処理炉25に供給する熱風の温度の上限としては、550℃が好ましく、530℃がより好ましく、500℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては350℃が好ましく、380℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては、500℃が好ましく、470℃がより好ましく、450℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては300℃が好ましく、330℃がより好ましく、350℃がさらに好ましい。ここで熱風の温度は熱風発生炉38の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、原料20中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が充分に行われ、後の第3熱処理炉27における熱処理制御が容易となり、再生粒子の白色度を低下させる原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を有効に抑制し、またスチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することで残カーボンの生成を抑制することができる。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲として有機物を緩慢に熱処理することにより、原料20の微粉化を抑制し、凝集体の形成を促進させ、原料20の熱処理度合い及び粒揃えを容易かつ安定的に均一化させ、原料20の粒子表面と芯部の未燃率のバラツキを防止することができる。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常500℃、好ましくは470℃、より好ましくは450℃に調節され、一方、下限としては通常300℃、好ましくは330℃、より好ましくは350℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であり、原料20の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内の温度は、第1熱処理炉24と同様に供給口25Aから排出口25Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
【0054】
第2熱処理炉25から排出された排ガスは、再燃焼室31においてバーナー等により再燃焼し、予冷器32において予冷した後、熱交換器33を通して誘引ファン34によって煙突35から排出することができる。ここで、熱交換器33は、外気を昇温し、この昇温した外気を、例えば、第1熱処理炉24に吹き込まれる熱風の用に供し、排ガスの熱回収を図ることもできる。このような排ガスの処理は排ガス中に含まれる有害物質の除去にも有効である。
【0055】
第2熱処理炉25における原料20の滞留時間の上限としては、120分が好ましく、100分がより好ましく、80分がさらに好ましい。一方、滞留時間の下限としては、30分が好ましく、40分がより好ましい。滞留時間を上記範囲とすることにより、原料20に含まれるスチレン系有機物を緩慢に熱分解することができ、難燃性カーボンの生成を抑制し、得られる再生粒子の白色度の低下や硬質物質の増加を防止することができる。
【0056】
第2熱処理炉25における原料20の未燃率の上限としては、20質量%が好ましく、17質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。一方、上記未燃率の下限としては、2質量%が好ましく、5質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。ここで、未燃率とは約600℃に温度調整した電気炉で2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。原料20の未燃率を上記範囲とすることにより、エネルギーコストを抑えつつ、原料20の硬化を防止し、後の第3熱処理炉27における熱処理(燃焼)を短時間で効率よく行うことができ、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上とすることができる。
【0057】
上記第2熱処理工程によって、製紙スラッジ由来の420℃近傍に発熱量のピークを有するスチレン系有機物を熱分解ガス化させ、除去することができる。その結果、続く第3熱処理工程での過燃焼を抑制し、再生粒子として不適切なゲーレナイト(CaAlSiO)やアノーサイト(CaAlSi)等の硬質物質の生成を抑制することができ、均一かつ安定的に白色度の優れた再生粒子を得ることができる。
【0058】
[第3熱処理工程]
第2熱処理炉25において熱処理された原料20は、第3熱処理工程に送られ熱分解や燃焼等の熱処理に付される。
【0059】
原料20は、この第3熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1mm以上4mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下に調節しておくことが好ましい。平均粒子径を上記範囲とすることにより、第3熱処理炉27における原料20の過燃焼を防止し、残カーボンを容易に熱処理(燃焼)でき、芯部まで燃焼が進むことで白色度の高い再生粒子を得ることができる。
【0060】
また、第3熱処理工程に供給する原料20の粒揃えは、粒子径1mm以上5mm以下の割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75質量%以上95質量%以下となるように、より好ましくは80質量%以上95質量%以下とすると、残カーボンを容易に熱処理(燃焼)でき、芯部まで燃焼が進むことで白色度の高い再生粒子を得ることができるため好ましい。
【0061】
第3熱処理工程において、原料20は装入機26から第3熱処理炉27に装入される。この第3熱処理炉27としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第3熱処理炉27として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉の方が、外熱キルン炉よりも熱処理効率が優れるため好ましいが、第1熱処理炉24や第2熱処理炉25と同様に、外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を使用することもできる。外熱ジャケットは、長手方向(搬送方向、炉本体の軸方向)の温度制御が容易な電気ヒーター形式とすると好ましく、このように、長手方向に温度制御が容易であると任意に温度勾配を設けることが可能となり、原料20を所定の時間、所定の温度に保持することができ、原料20に含まれる残留有機分や、残カーボンを限りなくゼロに近づけ除去できる点で好ましい。第3熱処理炉27に外熱キルン炉を採用する場合は、原料20を所定の滞留時間をもって熱処理することができ、原料20に間接的に均一な熱が加わることで燃焼が均一なものとなり、炉内表面の回転による摩擦によって原料20が緩やかに撹拌されるため微粉化を生じ難く、品質及び性状が安定した再生粒子を得ることができる。
【0062】
第3熱処理炉27においては、炉本体の内壁に設けた各種リフターによって原料20の搬送速度を制御し、原料20を緩慢に熱処理することで、得られる再生粒子の均質化を図ることができる。この炉本体の内壁に設ける各種リフターは特に限定されず、例えば、第3熱処理炉27内の内壁に、原料20の供給口27A側から排出口27B側に向けて図3(a)及び(b)に示すような螺旋状リフター50及び/又は軸心と平行な複数の平行リフター51をこの順に設けること等が挙げられる。
【0063】
本実施形態では、この第3熱処理炉27は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に供給口27Aが、他端部に排出口27Bが設けられ、他端又は両端には外筺52内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー(図示せず)が配設されている。外筺52の供給口27A側における耐火壁53の内面には、外筺52の軸心に対して45°以上70°以下の傾斜角を有する複数条の螺旋状リフター50が取付ブラケット54を介して等間隔に突設されており、この他端側には、外筺52の軸心に対して平行な平行リフター51が周方向に取付ブラケット55を介して突設されている。
【0064】
なお、耐火壁53は、耐火キャスタブル又は耐火レンガ等で構成することが好ましく、また、螺旋状リフター50と平行リフター51を、例えば、耐熱性を有するステンレス鋼板等の金属製とすることで高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できる。また、これらのリフターは耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター50と平行リフター51とは、上記のとおり、被燃焼物の供給口27Aから排出口27Bに向けてこの順で配設するのが望ましい。
【0065】
上記のように構成された第3熱処理炉27によれば、供給口27Aから投入された内容物が螺旋状リフター50にて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下するため、落下時に原料20に由来する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と落下物とを効率的に接触させることができる。さらに、引き続いて平行リフター51にて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)とさらに効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター50にて平行リフター51に送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター51部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
【0066】
なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター50と平行リフター51とを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。また、これらのリフターは、第1熱処理炉及び第2熱処理炉にも適宜適用することができる。
【0067】
上記第3熱処理炉27が内熱方式の場合、熱風はバーナー39Aを備える熱風発生炉39から供給口27Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口27Aから入り炉本体の回転に伴って排出口27Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第3熱処理炉27内のガスは、例えば、排出口27Bを通して排ガスとして排出される。また、熱風を原料20の排出口27Bを通して吹き込み、第3熱処理炉27内のガス(排ガス)を、供給口27Aを通して排出する向流方式としてもよい。このように向流方式とすると、排ガス中の煤塵が原料20中に混入することを防止でき、得られる再生粒子の品質の低下を防止することができる。すなわち、原料20に含まれる残カーボンが直ちに燃焼され、この残カーボンの燃焼に伴い発生する煤塵が供給口27A側から排ガスとともに速やかに炉本体外に排出されるため、排出口27Bから排出される原料20に混入することを防止することができる。また、第3熱処理炉27を外熱方式とする場合は、例えば、バーナー39Aを用いずに熱風発生炉39のみを用いて第3熱処理炉27内に酸素含有ガスを吹き込めばよい。
【0068】
上記第3熱処理炉27が内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記排ガスの酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて測定した値である。熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、原料20の過剰な熱処理や熱分解ガスの発火(燃焼)を防止するとともに、圧縮空気や付加設備を必要とすることなく残カーボンや残留有機物を充分に熱処理することができ、再生粒子の白色化を促進することができる。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。
【0069】
また、第3熱処理炉27が内熱方式の場合、供給する熱風の温度の上限としては、780℃が好ましく、750℃がより好ましく、720℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては550℃が好ましく、600℃がより好ましく、650℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては、780℃が好ましく、750℃がより好ましく、720℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては550℃が好ましく、600℃がより好ましく、650℃がさらに好ましい。ここで、熱風の温度は熱風発生炉39の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、原料20中の残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に行われ、有機物を緩慢に熱処理することにより原料20の微粉化が抑制すると同時に凝集体の形成を促進し、原料20の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、原料20の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むことを防止し、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることができ、得られた再生粒子をスラリー化したときの固まりを防止することができる。熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常780℃、好ましくは750℃、より好ましくは720℃に調節され、一方、下限としては通常550℃、好ましくは600℃、より好ましくは650℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であるが、上記炉本体内の温度は、第1熱処理炉24及び第2熱処理炉25と同様に供給口27Aから排出口27Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
【0070】
一方、第3熱処理炉27が外熱方式の場合は、炉本体外表面の温度の上限が780℃、好ましくは750℃、より好ましくは720℃となるように、一方、上記下限として550℃、好ましくは600℃、より好ましくは650℃となるように外熱ジャケット等の温度を制御することが好ましい。炉本体外表面の温度を上記範囲とすることにより、残カーボンや、第2熱処理炉25で燃焼しきれなかったスチレン−アクリルやスチレン等の残留有機物を充分に燃焼することができる。なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しているため、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度となり、炉本体内の温度や原料20の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、炉本体外表面や内表面の温度と実質的に同一の温度になると推定される。
【0071】
第3熱処理炉27における原料20の滞留時間の上限としては、240分が好ましく、150分がより好ましい。一方、滞留時間の下限としては、60分が好ましく、90分がより好ましく、120分がさらに好ましい。滞留時間を上記範囲とすることにより、原料20に含まれる残留有機物や残カーボンを充分に燃焼することができ、硬化物質の増加を抑制し、白色度の優れた再生粒子を安定して生産することができるようになる。
【0072】
上記第3熱処理工程によって、原料10に含まれる残カーボン等の有機物を効率よく熱処理除去することができる。また、第3熱処理工程では過燃焼を抑制することができるため、再生粒子として不適切なゲーレナイト(CaAlSiO)やアノーサイト(CaAlSi)等の硬質物質の生成を抑制することができ、均一かつ安定的に白色度の優れた再生粒子を得ることができる。
【0073】
上記第1〜第3熱処理工程において熱処理炉として用いられる内熱又は外熱キルン炉は内壁を構成する耐火物を円周状(円筒状)、六角形状及び八角形状等に構成することができるが、簡便に原料20を撹拌するためには、耐火物等を円筒状として前述したようなリフターを設ける構成を採用することが好ましい。熱処理炉をこのような構成とすることにより、原料20を滑らすことなく持ち上げて充分に撹拌することができる。
【0074】
なお、「硬化物質」とは、硬度が高く微量であっても、抄紙用填料として使用した場合には、製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合には、ドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となる物質のことで、具体的には、ゲーレナイト(CaAlSiO)やアノーサイト(CaAlSi)等が挙げられる。これは、原料20の主成分となる製紙スラッジは、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、抄紙助剤としての硫酸アルミニウム等の無機物を多く含んでいる。この中でも、例えば、炭酸カルシウム(CaCO)は、熱処理の際に600℃以上750℃以下の温度で質量が減少し、硬質で水溶性の酸化カルシウム(CaO)に変化し、また、クレー(AlSi(OH))は、500℃前後で脱水により質量減少し、メタカオリンとなり、1000℃前後の高温では硬質なムライト(AlSi13)に変化する。また、タルク(MgSi10(OH))は、900℃前後で質量減少し、エンスタタイト(MgSiO)に変化する。これらの変化は示差熱熱重量分析(TG/DTA6200)とX線回折(RAD2X)とによる燃焼物の分析によって確認できる。また、X線回折(RAD2X)によって、熱処理後の燃焼物中にはゲーレナイトやアノーサイトが存在することが確認できる。これらのゲーレナイトやアノーサイトは、熱処理温度が500℃前後でも生じ、熱処理温度の上昇に応じて生成量が増大する。また、製紙スラッジ中の酸化物換算によるカルシウムの含有量が増えると、アノーサイトは減少し、ゲーレナイトは増える傾向を示す。アノーサイトは、炭酸カルシウムの過燃焼により生じる酸化カルシウムとカオリンとの混合燃焼により生成され易く、したがって、上述の各種熱処理工程においては、25℃〜800℃における示差熱熱重量分析において、重量減量割合が5%(TG)以上となるように熱処理を行い、酸化カルシウムの生成自体を可及的に抑制するのが好ましい。また、水酸化カルシウムは、酸化カルシウムよりも一段とアノーサイトを生成し易いため、原料20の脱水率(水分率)や、各種熱処理における酸素濃度は、厳格に調節するのが好ましい。また、シリカにはゲーレナイトやアノーサイトの生成を助長する作用があるため、原料20に含まれるシリカを可能な限り低減しておくのが好ましく、その為には、例えば、新聞古紙や新聞抄紙系白水の使用を抑えることで、比較的低融点のゲーレナイトやアノーサイトの生成を抑制したり、得られた再生粒子をシリカで被覆することが挙げられる。
【0075】
[粉砕・選別工程]
第3熱処理炉27から排出された原料20は、平均粒子径15.0μm以下、好ましくは0.1μm以上10.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下となるように粉砕等して平均粒子径を調節することが好ましい。粉砕後の平均粒子径は、レーザー回折方式の粒度分布径(型番:SALD−2200、島津製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径(D50)である。粉砕方法は特に限定されず、例えば、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機等が挙げられる。
【0076】
粉砕後の原料20は、好適には凝集体であり、冷却機28において冷却後、振動篩機等の粒子径選別機29により選別し、再生粒子としてサイロ30に貯留される。
【0077】
[シリカ複合再生粒子の製造方法]
上述した再生粒子の表面にシリカを複合させる方法としては、例えば、特許第3907688号公報、又は特許第4087431号公報に記載の方法等を適宜用いることができる。但し、より不透明性に優れたシリカ複合再生粒子が得られる点で以下の製造方法が好ましい。
【0078】
シリカ複合再生粒子の製造方法としては、上記再生粒子の製造方法で得られた再生粒子を、珪酸アルカリ水溶液に添加・分散してスラリーとし、撹拌しながら50℃以上100℃以下の温度範囲で鉱酸を添加する方法が好ましい。中でも、少なくとも2段階に分けて鉱酸を添加してシリカ複合の反応を行うことがより好ましい。この製造方法について以下に詳述する。
【0079】
シリカ複合再生粒子の製造方法には、体積平均粒子径が1.0μm以上10.0μm以下の再生粒子を用いることが好ましい。なお、上記体積平均粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により再生填料の粒子径を測定し平均化した値である。用いる再生粒子の体積平均粒子径を上記範囲とすることで、得られるシリカ複合再生粒子が填料として適度な粒子径を有する。
【0080】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる珪酸アルカリ水溶液は、特に限定されず、例えば、容易に入手可能な珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)等が挙げられる。珪酸アルカリ溶液の濃度は、水溶液中の珪酸分(SiO換算)として3質量%以上10質量%以下が好ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度を上記範囲とすることで、シリカのホワイトカーボン化を防止し、再生粒子表面を均一にシリカで被覆することができる。
【0081】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加及び分散してスラリーを調製する場合のスラリー濃度は8質量%以上14質量%以下が好ましい。スラリー濃度を上記範囲に調整することで、形成されるシリカ複合再生粒子の粒子径をコントロールすると同時に再生粒子とシリカの組成比率を調整することができる。
【0082】
また、上記再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比としては、再生粒子100質量部に対して5質量部以上20質量部以下が好ましい。再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比を上記範囲とすることで、シリカ複合再生粒子表面に十分なシリカの析出が得られ、塗工紙の空隙性および不透明性を向上させることができる。
【0083】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加する際の珪酸アルカリ水溶液の温度は、特に制限されないが、例えば、珪酸アルカリ水溶液の液温を予め50℃以上とした後に再生粒子を添加しても良いし、再生粒子を添加した後に適宜加熱しても良い。中でも、珪酸アルカリ水溶液を予め50℃以上に加温した状態で再生粒子を添加すると、加温によって流動性が向上し、スラリーが容易に均質化されるため好ましい。熱源としては、公知の熱源を適宜利用すればよく、例えば、工場内の生蒸気(例えば、13kg/cm、120℃等)を吹き込むことにより、昇温時間の短縮及びエネルギー効率の向上が図れる。
【0084】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる鉱酸としては、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等が挙げられ、中でも、価格が安くハンドリングが容易な点で希硫酸が好ましい。鉱酸の濃度としては、例えば、希硫酸を使用する場合は4N以上10N以下の濃度が好ましい。希硫酸の濃度を上記範囲とすることで、十分な反応速度を保ちつつ、ムラなくシリカの複合反応が進む。また、鉱酸の添加量が多いほど短時間でシリカが複合するため目的とする条件に合わせて添加量を適宜調整すればよい。しかし、芯材として用いる再生粒子は、カルシウム、アルミニウム、シリカを含有しているため、過度の鉱酸添加は再生粒子の変質を生じる恐れがあるため注意が必要である。
【0085】
上記鉱酸の添加方法としては、連続して添加しても良いが、2段階以上に分けて添加することが望ましい。
【0086】
鉱酸を連続して添加する場合は、pHが1低下するのに鉱酸の添加時間が40分以上となるように添加量を設定することが好ましい。
【0087】
鉱酸を2段階以上に分けて添加する場合は、均質なシリカの複合が得られるように各段階における鉱酸の添加量を均等にすることが好ましい。第1段階目の添加としては、例えば、珪酸アルカリ水溶液の中和率が20%以上50%以下となるまで鉱酸を添加すればよく、この第1段階目の添加終了後に、5分以上20分以下の間鉱酸の添加を止めてシリカ複合反応に保留状態を設けることで、再生粒子の表面にシリカを均質に複合させることができる。続いて、更なる第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させ再生粒子の表面にシリカをより均一に複合させることができる。
【0088】
上記第1段階目の鉱酸の添加においては、鉱酸の添加にかかる時間が10分以上45分以下となるように鉱酸の添加量を設定することが好ましく、第2段階目以降の添加においては、pHが1低下するのに鉱酸の添加にかかる時間が10分以上120分以下となるように設定することが好ましい。このように鉱酸の添加量を設定することにより、再生粒子の表面に均質にシリカを複合させることができる。
【0089】
鉱酸を連続して添加する際の反応温度は、例えば、スラリー液温の上限としては100℃が好ましく、98℃がより好ましい。一方、上記液温の下限としては、50℃が好ましい。このスラリー液温はシリカの生成、結晶成長速度及び得られるシリカ複合再生粒子の力学的強度に影響を及ぼすため、スラリー液温を上記範囲とすることにより、再生粒子の表面にシリカを均一に複合させることができ、また十分な強度を有するシリカ複合再生粒子を得ることができる。なお、上記スラリー液温が100℃を超えると、過度に反応が進み、シリカ複合再生粒子の形態が緻密になり、得られるシリカ複合再生粒子としての不透明度が低下するため注意が必要である。
【0090】
また、鉱酸を2段階以上に分けて添加する場合の反応温度は、例えば、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー液温を50℃以上75℃以下と設定し、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー液温を少なくとも第1段階目の添加時よりも10℃以上高く設定することが好ましい。より具体的には、例えば、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー液温を50℃以上75℃以下と設定し、続く第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー液温を70℃以上100℃以下と設定し、反応の最終段階でスラリー液温を90℃以上98℃以下と設定することが好ましい。このように鉱酸添加時のスラリー液温を上記範囲とすることで、再生粒子にシリカがより均質に複合したシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0091】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法において、最終反応液のpHの上限としては11が好ましく、10がより好ましく、9がさらに好ましい。一方、上記pHの下限としては8が好ましく、8.3がより好ましく、8.5がさらに好ましい。このように最終反応液のpHを上記範囲とすることで、再生粒子に含まれるカルシウム成分の水酸化カルシウムへの変化を防止し、形状が均質で、適度な粒子径を有し、十分な不透明性向上効果を有するシリカ複合再生粒子が得られる。
【0092】
上記製造方法により得られるシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径は、シリカと複合させる再生粒子の粒子径にもよるが、体積平均粒子径の上限としては10μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、上記下限としては1.7μmが好ましく、3μmがより好ましい。このようにシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径を上記範囲とすることで、シリカ複合の効果が十分に発現でき、吸油量及び不透明度の向上効果に優れ、パルプ繊維間の空隙を緻密に充填することができるシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0093】
上記製造方法においては、スラリー全体に均一に反応が進むように、例えば、撹拌槽内の撹拌羽根を逆転させて乱流を生じさせる、又は邪魔板を撹拌槽内に設ける等の撹拌手段を適宜採用することが好ましい。
【0094】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法によって、走査型電子顕微鏡による実測の粒子径として10nm以上20nm以下のシリカゾル粒子が再生粒子の表面に形成される。このシリカゾル粒子の粒子径は、反応時の撹拌条件又は鉱酸の添加条件等によりコントロールすることができる。
【0095】
また、上記製造方法によって得られるシリカ複合再生粒子の細孔半径は10,000オングストローム以下であることが好ましく、上記シリカ複合再生粒子の細孔容積は水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用いた測定値における10,000オングストローム以下の領域の細孔容積の上限として1.5cc/gが好ましく、1.45cc/gがより好ましく、1.35cc/gがさらに好ましい。一方、上記細孔容積の下限としては、0.5cc/gが好ましく、0.68cc/gがより好ましく、0.70cc/gがさらに好ましい。このように細孔容積を上記範囲とすることで、十分な吸油量及び不透明度を有するシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0096】
上記再生粒子は不定形であるがゆえに歩留性が高いため、耐ヒジワ性が高く、不透明度や印刷光沢に優れた塗工紙が得られる。その結果、当該製造方法で得られる再生粒子を基紙中に含有する塗工紙は、印刷速度1000rpm以上の高速のオフセット輪転印刷を行っていもヒジワが発生しにくい。
【0097】
原料パルプには上述の填料以外にも内添サイズ剤を添加することが好ましい。填料として再生粒子を基紙に含有させると、基紙のインキ吸収性が高くなりやすく、印刷インキを吸収して印刷光沢が低下しやすい。そこで、内添サイズ剤を添加しすることで基紙のインキ吸収性を低下させ、印刷光沢度を向上させることが好ましい。
【0098】
本実施形態においては、前記内添サイズ剤以外にも、該原料パルプに、例えば紙力向上剤、紙厚向上剤、歩留向上剤(各種合成高分子や澱粉類等の水溶性高分子)、及びこれらの定着剤等の、通常塗工紙の基紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。
【0099】
また、抄紙機においてジェットワイヤー比を調整することで、よりヒジワを防止できるため好ましい。印刷時、用紙は抄紙方向に引っ張られながら印刷されるため、基紙中の水分蒸発に起因するヒジワは一般に、抄紙方向では発生しにくく、幅方向でより発生しやすい。このため、ジェットワイヤー比を1以上の押し地合(紙料ジェットのスピードがワイヤースピードよりも速い)とすることで、繊維を幅方向に配向させやすくなり、幅方向の引張強度を向上でき、よりヒジワを低減させやすい。
【0100】
前記のごとき抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造することができ、次いでコーターパートにて後述する塗工液を基紙上に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパート等に供して目的とする塗工紙を得ることができる。
【0101】
基紙の坪量に特に限定はないが、後述するように、目的とする塗工紙の坪量が好ましくは40〜100g/mであることを考慮して、該基紙の坪量は、通常20〜80g/m程度となるように調整することが好ましい。
【0102】
<クリア塗工層>
基紙には、後述する顔料塗工層を設ける前に、水溶性高分子を主成分とするクリア塗工層を設けても良い。
【0103】
クリア塗工層に用いる水溶性高分子は特に制限は無く、一般的に製紙用途に使用できるものを用いることができる。具体的には、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、生澱粉などの澱粉またはその誘導体、ポリビニルアルコールなどの合成高分子等を使用することができる。この中でも酸化澱粉を用いると、基紙へのラテックスの沈み込みを防止しつつ、表面強度を十分に向上でき、かつ印刷時の断紙を防止できるため好ましい。
【0104】
一般に酸化澱粉には、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ソーダ、過硫酸水素カリウムなどの酸化剤により澱粉を酸化分解するもの、酸による加水分解で酸化するものなどがあるが、この中でも過硫酸水素カリウムで酸化されて得られた酸化澱粉を用いると、よりヒジワを防止しやすいため好ましい。過硫酸水素カリウム以外の酸化剤を用いて得られた酸化澱粉では、ラテックス、特に後述するブタジエン成分が50質量%以上であるラテックス、さらには平均粒子径が115〜160nmであるラテックスの基紙への沈み込みを防止しにくい傾向があり、ヒジワの発生を過硫酸水素カリウムほど防止しにくい。
【0105】
クリア塗工層は、片面あたり0.2〜2.0g/mとなるよう設けることが好ましく、更には片面あたり0.5〜1.0g/mとなるよう設けることがより好ましい。0.2g/mを下回ると目止め効果が充分に得られにくくなり、顔料塗工層から基紙へのラテックスの浸透を防止しにくく、表面強度が低下しやすいため好ましくない。2.0g/mを超過すると、塗工量が多くなりすぎて印刷後乾燥時に基紙中の水分が蒸発しにくくなるため、ヒジワが発生しやすくなるため好ましくない。
【0106】
クリア塗工液は、抄紙工程中のサイズプレス工程で公知の種々の方式により塗工されることができるが、特にフィルム転写方式により塗工されることが好ましい。フィルム転写方式は、塗工塗料をロールに塗工した後に、塗料を紙に転写する方式のため、例えばツーロールサイズプレスのように塗工液のポンドを形成し塗工する方式に比べて、基紙表面への塗工液の押付けが低減され、より嵩高で空隙率が高いクリア塗工層を形成できるため好ましい。加えてフィルム転写方式は、一定膜厚の塗工層を基紙表面に塗工できるので、均一な塗工層が得られ、ムラなく水蒸気が透過できるクリア塗工層を形成できるため、局所的なヒジワが発生しにくいため好ましい。
【0107】
(プレカレンダーパート(平坦化処理))
基紙またはクリア塗工層を設けた基紙は、顔料塗工を行う前に、プレカレンダーによる平坦化処理を行うことが好ましい。平坦化処理を行うことで、基紙の平滑性のムラを低減でき、顔料塗工層の厚みを均一にしやすく、基紙からの水蒸気の蒸発を均一にしやすく、局所的なヒジワを防止しやすい。
【0108】
<顔料塗工層>
基紙またはクリア塗工層を設けた基紙には、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を設ける。
(顔料)
塗工層に用いる顔料としては、従来一般に製紙用途にて顔料として使用されているものを用いることができ、例えば炭酸カルシウム、カオリンクレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等が挙げられ、必要に応じて1種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上述した再生粒子を用いても良い。
【0109】
塗工層の顔料は、粒子径1.0μm以上の粒子が顔料全体の5質量%以下とする。粒子径1.0μm以上の粒子、例えばデラミネーテッドクレーや大粒子径クレーが顔料全体の5%を超過すると、被覆性が良好となり印刷光沢は向上するものの、白紙光沢度が低下しやすいため、平坦化工程におけるカレンダー圧力を強くする必要があり、剛性に劣る塗工紙となる。剛性に劣る塗工紙は水分の吸収または蒸発により収縮しやすくなり、印刷においてヒジワが発生する問題がある。逆に、粒子径1.0μm以上の粒子が顔料全体の5質量%以下では、顔料が密に充填しやすく塗工層内部の空隙が少なくなりすぎて、基紙中の水分が特に蒸発しにくく、ヒジワの発生を防止しにくくなる。このため本発明においては、単に塗工層の顔料として粒子径1.0μm以上の粒子を粒子全体の5%以下とするだけでなく、後述するとおり、接着剤としてブタジエン成分を50質量%以上含有する接着剤を、顔料100質量部に対して4〜7質量部含有させることにより、充分にヒジワを防止できる塗工紙が得られるのである。すなわち、接着性の高いブタジエン成分を多く含む接着剤を用いることで、顔料に対して接着剤の量を最小限度の4〜7質量部まで低減させることができるため、印刷時には塗工層中の接着剤の成膜に由来する、水蒸気の透過性低下を最小限に抑えることができ、耐ヒジワ性の低下を防止できる。
【0110】
なお、本発明の粒子径は次のように測定した。走査電子顕微鏡(型番:S−2150、(株)日立製作所製)を用いて塗工紙表面の顔料粒子を撮影した。顔料粒子は真円ではないため、粒子全体を内包できる最小の円(粒子に外接する最小の円)の直径を粒子径とした。
【0111】
(接着剤)
塗工層の接着剤としては、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを、顔料100質量部に対して4〜7質量部用いる必要がある。
【0112】
スチレン−ブタジエンラテックス中のブタジエン含有量が50質量%を下回ると、接着力が低下しやすくなることに加え、塗工液中のラテックスが基紙に吸収されやすくなるため、より表面強度が低下しやすい問題がある。加えて、塗工層自体の強度も低下するため、ヒジワをさらに防止しにくくなるため好ましくない。
【0113】
ラテックスの含有量が顔料100質量部に対して4質量部を下回ると、塗工層中のラテックスが少なくなりすぎて、塗工層の表面強度および耐ヒジワ性が低下する問題がある。ラテックスが7質量部を超えて含有させると、塗工層中でラテックスが成膜して水蒸気を透過させにくくなり、十分な耐ヒジワ性を発揮できない。加えて、ラテックスが塗工層中に多く含まれるため塗工顔料由来の白紙光沢度および印刷光沢度が低下する問題がある。本発明はブタジエン成分が50質量%以上のラテックスを7部以下と低量に抑えることで、ラテックスが基紙に浸透しにくく塗工層中に留まり易いため、白紙光沢度および印刷光沢度が高く、表面強度および塗工層強度に優れ、かつヒジワが発生しない塗工紙を得ることができるものである。
【0114】
このようなラテックスとしては、特にガラス転移温度が−20〜10℃のラテックスであると塗工層が柔らかくなるため、水蒸気が塗工層を透過しやすく、ヒジワの発生を効果的に防止できるため、より好ましい。更にはラテックスの平均粒子径が115〜160nmと大きい場合には、塗工層の空隙が大きくなるため、更に水蒸気が塗工層を透過しやすくなる。加えて、ゲル含有量が70〜95質量%と低い場合には、より空隙の大きい塗工層が得られるため蒸気が特に塗工層を透過しやすく、特にヒジワを防止する効果が高くなる。上述のごとく、顔料として粒子径が1.0μm以上の粒子が顔料全体の5質量%以下であることに加えて、前記塗工層には接着剤としてブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを、前記顔料100質量部に対して4〜7質量部と低量で含有させることで、ヒジワの発生を防止しやすい塗工紙が得られる。
【0115】
さらには本発明のごとく、前記製造工程で得られた再生粒子のような空隙率の高い粒子を含有する基紙を用いる場合は、上記平均粒子径、ガラス転移温度及びゲル含有量を有するラテックスと併用することで、さらにヒジワの発生を防止できるため好ましい。特に本発明のごとく、印刷速度が1,000rpm以上と高速な輪転オフセット印刷機を用いて印刷した場合には、紙面温度が110℃以上と高温になりやすいが、上記構成の塗工紙とすることで、特に効果的にヒジワの発生を防止できる。
【0116】
接着剤としては、ブタジエン含有量が50質量%以上のラテックス以外にも、従来一般的に製紙用途で使用できる接着剤を併用することができる。例えばカゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックスもしくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常塗工紙に用いられる接着剤が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して併用することができる。
【0117】
本実施形態にて用いる塗工液には、顔料及び接着剤以外にも、例えば、ダスト防止剤、蛍光染料、蛍光染料増白剤、消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等、製紙用途で一般に用いられる各種助剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0118】
塗工液を調製する方法には特に限定がなく、顔料、接着剤、ダスト防止剤や、必要に応じて各種助剤等の配合割合を適宜調整し、適切な温度にて均一な組成となるように撹拌混合すればよい。また塗工液の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗工装置や塗工量に応じて、例えば60〜75質量%程度に調整することが好ましい。
【0119】
顔料塗工層は塗工後に、乾燥装置で乾燥される。乾燥装置は各種の方式が知られているが、通常は熱風ドライヤーや赤外線乾燥装置が一般的に使用される。本発明においては、塗工直後に少なくとも1つの赤外線乾燥装置を用いて乾燥することが好ましい。赤外線による乾燥は、塗工層内部から均一に加熱されるので塗工液の流動(マイグレーション)が起きにくいこと、特に基紙へのラテックスの沈み込みが防止しやすいことから、ラテックスが均一に存在した塗工層を形成できるため、局所的なヒジワの発生を防止しやすいため好ましい。一方、熱風乾燥は、顔料塗工層表面から急激に水分が蒸発されるため、塗工層内部で塗工液が流動(特にマイグレーション)が発生しやすく、ラテックスが偏在しやすいため好ましくない。
【0120】
赤外線乾燥は、塗工直後に行う初期乾燥に用いることが好ましく、熱風ドライヤー群より前に設置することが好ましい。塗工直後に赤外線乾燥を行うことで、特に塗工液の流動(特にマイグレーション)やラテックスの基紙への吸収を防止しやすく、ラテックスの偏在をより防止しやすいため好ましい。
【0121】
赤外線の出力は特に限定されないが、上述のごとくラテックスの偏在を防止するためには、より赤外線の出力が大きく乾燥能力が高い赤外線乾燥装置を用いることが好ましい。出力は例えば、塗工速度1500m/分では塗工巾あたり200kWh/m以上の赤外線乾燥装置を用いることが好ましい。200kWh/mを下回ると、ラテックスの流動を充分に抑制できない可能性があり、ヒジワの発生を防止しにくいだけでなく、塗工層中のラテックスの偏在による表面強度の低下が発生しやすいため好ましくない。
【0122】
用いる赤外線は、近赤外、中間赤外、遠赤外のどの波長も使用可能であり、波長が0.75〜10μmのものであれば特に制限なく使用できる。
【0123】
上述のとおり、クリア塗工層に酸化澱粉、特に過硫酸水素カリウムで酸化されて得られた酸化澱粉を含有し、顔料塗工層のラテックスとして平均粒子径が115〜160nmと大きいものを用い、かつ初期乾燥として塗工巾あたり200kWh/m以上と出力が大きい赤外線乾燥装置を用いることで、ラテックスの基紙への吸収を抑制しやすく、特にヒジワの発生を防止しやすいため好ましい。
【0124】
また、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経て得られる再生粒子を含有する基紙上に、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料の5%以下であり、かつ接着剤として、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを顔料100質量部に対して4〜7質量部含む顔料塗工層を設けることにより、基紙の空隙性および塗工層の空隙性の両方を向上でき、かつ硬質物質に起因する基紙の空隙性のムラと、ラテックスに起因する水蒸気の透過性の低下を低減できるため、印刷速度が1,000rpm以上と高速であるオフセット輪転印刷機においても充分にヒジワ、特に局所的に発生するヒジワの発生を防止しやすいため好ましい。
【0125】
さらには、基紙上に酸化澱粉、特に過硫酸水素カリウムで酸化した酸化澱粉を含有するクリア塗工層を設けると、上述のブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスの基紙への浸透を抑制しやすく、ラテックスが顔料100質量部に対して4〜7質量部と低量であっても充分に顔料を接着できるだけでなく、ラテックスの成膜に起因する水蒸気の透過性の低下を最小限に抑えることができるため、ヒジワの発生を特に防止しやすくなるため好ましい。
【0126】
上述のごとく、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経て得られる再生粒子を紙中灰分で2〜10質量%、好ましくは3〜9質量%含有する基紙上に、片面あたり0.2〜2.0g/m、好ましくは片面あたり0.5〜1.0g/mとなるよう酸化澱粉、特に過硫酸水素カリウムで酸化した酸化澱粉を含むクリア塗工層を設け、さらに粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料の5%以下であり、かつ接着剤として、ブタジエン成分が50質量%以上で平均粒子径が115〜160nmのスチレン−ブタジエンラテックスを顔料100質量部に対して4〜7質量部含む顔料塗工層を設け、かつ初期乾燥として塗工巾あたり200kWh/m以上と出力が大きい赤外線乾燥装置を用いることにより、基紙の空隙性および塗工層の空隙性の両方を向上でき、かつ硬質物質やラテックスの偏在が抑制できるため、印刷速度が1,000rpm以上と高速であるオフセット輪転印刷機においても充分にヒジワ、特に局所的に発生するヒジワの発生を防止しやすい塗工紙が得られるため好ましい。
【0127】
前記のごとく形成された塗工層には、印刷適性をさらに向上させる目的で、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等、弾性ロールと金属ロールとを組み合わせた平坦化設備にて平坦化処理を施すことができる。このような平坦化設備は、従来のマシンカレンダーとは異なり、用紙表面を幅広の面で、高温で処理することで、基紙の密度や塗工層の密度を過度に高めることなく平坦化が可能であり、例えばオフセット印刷、電子写真印刷等において好適な印刷面を形成させることができる。中でも、マルチニップカレンダー、より望ましくは6段、8段、10段のマルチニップカレンダーが、ニップ圧を調整しやいため好ましい。適宜線圧を調整できるマルチニップカレンダーを用いると、他のカレンダー設備に比して塗工層中の空隙性の低下を最小限に抑えることができる。
【0128】
また、カレンダーの設置場所としては、抄紙機及び塗工機と一体になったオンマシンタイプが好ましい。オンマシンタイプでは、塗工後すぐ、紙面温度が高い状態で平坦化処理できるため、白紙光沢度が向上しやすく、目的の塗工紙を得るために必要な線圧が低く、塗工紙が潰され難いため、よりヒジワの発生を防止した塗工紙となる。
【0129】
各種カレンダー設備を用いた平坦化処理の線圧や温度、速度は特に限定されないが、処理後の塗工層の平滑性を充分に向上させつつ、手肉感が良好となるには、例えば線圧は100〜300kN/m、金属ロール温度は100〜200℃、速度は1,000〜2,000m/分となるように調整することが好ましい。但し、塗工紙を潰しすぎると剛性がなくなり、ヒジワの発生を防止しにくいため、線圧は100〜250kN/mに抑えることがより好ましい。
【実施例】
【0130】
次に、本発明の塗工紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
実施例及び比較例
表1に示す種類及び割合で、抄紙、クリア塗工、顔料塗工、乾燥および平坦化処理を行い、印刷用塗工紙を得た。用いた顔料、原料および薬品は以下のとおりである。
<再生粒子の製造>
古紙パルプを製造する古紙処理工程由来の製紙スラッジを主原料として用い、脱水工程終了後の水分率が35質量%となるように原料を脱水した後、粒子径50mm以上の割合が50質量%となるように原料を解し、さらに平均粒子径が3mmとなるように乾燥装置(新日本海重工業(株)製、「クダケラ」)を用いて気流乾燥させ、続いて、第1熱処理工程(炉本体内温度280℃、炉本体内酸素濃度12容量%)、第2熱処理工程(炉本体内温度380℃、炉本体内酸素濃度12容量%)及び第3熱処理工程(供給熱風温度700℃、炉本体内酸素濃度12容量%)を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子を得た。
【0132】
なお、上記第1及び第2熱処理工程において用いた外熱キルン炉は、内部に平行リフター及び螺旋状リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用し、また、上記第3熱処理工程では、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用い、この内熱キルン炉一端の原料供給口から脱墨フロス等の原料を供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。
【0133】
得られた上記再生粒子を、セラミックボールミルを用いて湿式粉砕処理し、体積平均粒子径を1.0μmに調整した。
【0134】
再生粒子以外の填料、澱粉、顔料、ラテックスは次のとおり。
(填料)
・炭酸カルシウム(軽質、品番:TP−121−6S、奥多摩工業社製)
(クリア塗工層)
・A:過硫酸水素カリウムで酸化した酸化澱粉
・B:次亜塩素酸ソーダで酸化した酸化澱粉
・C:過硫酸アンモニウムで酸化した酸化澱粉
いずれも生澱粉(三和コーンスターチ、三和澱粉工業社製)を上記酸化剤で酸化して調製した。
(顔料)
・重質炭酸カルシウム(品番:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製、平均粒子径
1.3μm)
・HCクレー(品番:CENTURY−HC、三菱商事社製、平均粒子径(d50)2.7μm)
・微粒クレー(品番:アマゾンプラス、CADAM社製、平均粒子径(d50)0.3μm)
(接着剤)
・D:スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(品番:PA9902、日本エイアンドエル社製、平均粒子径:115nm、ブタジエン53質量%)。
・E:スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(品番:G−1377、旭化成社製、平均粒子径:160nm、ブタジエン57質量%)。
・F:スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(品番:T−2730P、JSR社製、平均粒子径:110nm、ブタジエン37質量%)。
・G:スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(品番:XY−2、日本エイアンドエル社製、平均粒子径:130nm、ブタジエン43質量%)。
・H:スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(品番:PA−4098、日本エイアンドエル社製、平均粒子径:95nm、ブタジエン48質量%)。
・PVA:ポリビニルアルコール(品番:PVA110、クラレ社製)。
【0135】
(製造手順)
原料パルプとしてNBKP、LBKPおよび雑誌古紙由来のDIPを、20:70:10の割合で混合し、このパルプ(絶乾量)に対して各々固形分で、表1に記載の種類の填料を表1に記載の量となるよう含有させ、また、内添サイズ剤(品番:AK−720H、ハリマ化成(株)製)0.05質量%、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1.0質量%、及び歩留向上剤(品番:NP442、日産エカケミカルス(株)製)0.02質量%を添加してパルプスラリーを得た。
【0136】
パルプスラリーを表1に記載のジェットワイヤー比(J/W)で抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造し、次いでアンダーコーターパートにおいて、表1に記載の酸化澱粉またはPVAを含むクリア塗工層を片面あたり表1に記載の量となるよう塗工して設け、トップコーターパートにおいて、表1に記載の顔料と、顔料100質量部に対して表1に記載の種類の接着剤を表1に記載の量で含む塗工薬品を片面あたり7g/mとなるよう塗工し、坪量64g/mの印刷用塗工紙を製造した。なお、顔料は表1に記載のクレーと表1に未記載の重質炭酸カルシウムとを混合し、100質量部となるようにした。
【0137】
アフタードライヤーパートにおいて、乾燥速度1500m/分で赤外線乾燥装置(IRT−SYSTEM 18kWモジュール 2段、富士電機システック社製)を表1に記載の出力で用い、さらに熱風乾燥を行い塗工紙を乾燥させた。さらにカレンダーパートにおいて、表1に記載の平坦化条件(ニップ圧)および速度1000m/分でカレンダーを掛け平坦化を施した。
【0138】
製造システムは上記以外にも、抄紙機とコーターパートとを分離したオフマシンコーターを用いても良く、抄紙機とソフトカレンダーを分離したオフマシンカレンダーを含むシステムを用いても良い。
【0139】
なお、ワイヤーパートではギャップフォーマーを用いて抄紙し、アンダーコーターパートではロッドメタリングサイズプレスコーターを用い、トップコーターパートではブレードコーターを用いた。またカレンダーパートでは、スーパーカレンダーを用いた。
【0140】
得られた塗工紙について、白紙光沢度、印刷光沢度、表面強度および輪転印刷時に発生するヒジワを以下の方法にて評価した。その結果を表1に示す。
【0141】
なお、粒子径2μm以上の顔料粒子の割合は次のとおり求めた。塗工紙をA4サイズに切り出し、用紙短辺を上辺として、上辺から下にAcm、左辺からAcmの地点で、縦横5mm角のサンプルを切り出した。ここでAは1〜20の整数であり、合計20サンプルを採取した。切り出したサンプルの表面を、走査電子顕微鏡(型番:S−2150、(株)日立製作所製)を用いて倍率12000倍で写真撮影した。写真の上辺から下にBcm、左辺からBcmの地点に最も近く、かつ粒子全体が撮影されているクレーについて、粒子径を測定した。ここでBは1〜5の整数であり、1サンプルから5個のクレー粒子の粒子径を求め、合計100点のクレー粒子について粒子径を求めた。再生粒子、炭酸カルシウム、カオリンクレー等、複数種類の顔料を併用した場合には、どの粒子がいずれの顔料であるかを、粒子形状で判断することができる。再生粒子は脱墨フロス由来のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムからなる、凝集塊状の粒子であり、重質炭酸カルシウムは不定形の球状粒子、軽質炭酸カルシウムは紡錘状粒子であり、カオリンクレーは板状の粒子である。上記形状は、倍率12000倍で充分判別可能である。
【0142】
(a)白紙光沢度
JIS−P−8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に記載の方法に準じて、未印刷の塗工紙について測定した。白紙光沢度が40%以上であれば白紙光沢度が良いため見栄えが良く実使用可能であり、白紙光沢度が50%以上であれば白紙光沢度に優れるため見栄えに優れる塗工紙となる。白紙光沢度が40%を下回ると、白紙光沢度に劣るため、実使用不可能な塗工紙となる
【0143】
・印刷サンプルの調製
オフセット印刷機(型番:LITHOPIAMAXBT2−1000、三菱重工業(株)製)を使用し、カラーインク(品番:ADVAN、大日本インキ化学工業(株)製)にて、B4折のカラー4色印刷を、速度1,000rpmで5000部印刷した。紙面温度は115℃に設定した。
【0144】
(b)印刷光沢度
JIS−P−8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に記載の方法に準じて、上記のとおり印刷した印刷サンプルについて測定した。印刷光沢度が70%以上であれば印刷光沢度が良いため見栄えが良く実使用可能であり、印刷光沢度が76%以上であれば印刷光沢度に優れるため見栄えに優れる塗工紙となる。印刷光沢度が70%を下回ると、印刷光沢度に劣るため、実使用不可能な塗工紙となる
【0145】
(c)表面強度
上記印刷サンプルをルーペ(10倍)を用いて目視確認し、未印刷部分(白抜け)の発生程度を次のとおり評価した
○:白抜けの発生がなく、見栄えに優れる塗工紙である。
△:白抜けが若干発生したものの、見栄えが良い塗工紙であり、実使用可能である。
×:白抜けが発生し、見栄えが悪い塗工紙であり、実使用不可能である。
【0146】
(d)ヒジワ
印刷サンプルでのヒジワの発生程度を以下の基準で目視評価した。
○:ヒジワの発生がなく、実使用可能。
△:ヒジワが若干発生したものの、実使用可能。
×:ヒジワが発生し、見栄えが劣り、実使用不可能。
【0147】
【表1】

【0148】
実施例の塗工紙はいずれも、前記塗工層中の顔料として、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料の5%以下であり、前記塗工層には接着剤として、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを、前記顔料100質量部に対して4〜7質量部含有しているため、白紙光沢度、印刷光沢度および表面強度が高く、ヒジワが発生しにくい塗工紙である。
【0149】
これに対して、比較例の塗工紙は、前記塗工層中の顔料として、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料の5%以下でないか、前記塗工層には接着剤として、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスでないか、ラテックスを前記顔料100質量部に対して4〜7質量部含有していないため、白紙光沢度、印刷光沢度、表面強度のいずれかまたは複数の項目が劣り、かつヒジワの発生を防止できない塗工紙である。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の塗工紙は、オフセット印刷で使用される印刷用塗工紙として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の塗工紙の一実施形態に用いられる再生粒子の製造設備の模式的概要図である。
【図2】図1の再生粒子の製造設備の第3熱処理炉の模式的概要図である。(a)は第3熱処理炉の模式的縦断面図、(b)は第3熱処理炉の内面の模式的展開図である。
【符号の説明】
【0152】
1…プレタンク
2…受入チェスト
3…配合チェスト
4…第1ファンポンプ
5…マシンチェスト
6…第2ファンポンプ
7…種箱
8…第3ファンポンプ
9…クリーナー
10…第4ファンポンプ
11…スクリーン
12…抄紙機
20…原料
21…貯槽
22…乾燥装置
23…装入機
24…第1熱処理炉(外熱キルン炉)
24A…供給口
24B…排出口
24C…外熱ジャケット
25…第2熱処理炉(外熱キルン炉)
25A…供給口
25B…排出口
25C…外熱ジャケット
26…装入機
27…第3熱処理炉(内熱キルン炉)
27A…供給口
27B…排出口
28…冷却機
29…粒子径選別機
30…サイロ
31…再燃焼室
32…予冷器
33…熱交換器
34…誘引ファン
35…煙突
36〜39…熱風発生炉
36A〜39A…バーナー
50…螺旋状リフター
51…平行リフター
52…外筺
53…耐火壁
54…取付ブラケット
55…取付ブラケット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙および基紙上に、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を有する塗工紙であって、
前記顔料は、粒子径2μm以上の顔料粒子が全顔料粒子の5%以下であり、
前記接着剤として少なくとも、ブタジエン成分が50質量%以上のスチレン−ブタジエンラテックスを含み、前記顔料100質量部に対する前記接着剤の割合が4〜7質量部であることを特徴とする、塗工紙。
【請求項2】
製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を、前記基紙に含有することを特徴とする、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記基紙および前記顔料塗工層の間に、澱粉を主成分とするクリア塗工層が設けられ、前記澱粉が、過硫酸水素カリウムで酸化されて得られた酸化澱粉であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗工紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−190558(P2011−190558A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58631(P2010−58631)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】