説明

塗布カテーテルのための方法および装置

本発明は、少なくとも1個の側面(3)を有するバルーン(4)よりなるバルーンカテーテル(2)を使用して、薬剤を血管(1)に投与するための方法に関するものであり、この方法によると、薬剤の流れの方向を、0゜〜89゜の角度αとし、この角度αは、血管(1)内での血流方向とバルーン(4)の側面(3)とがなす角度とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の側面を有するバルーンからなるバルーンカテーテルを使用して、薬剤を血管に投与する塗布カテーテル(投与カテーテル)の塗布方法およびカテーテル装置に関する。
【0002】
塗布カテーテルのためのこの種の塗布方法およびカテーテル装置は、薬剤の最適な効果を得る目的で、所望部位に投与するのに用いられる。この局部的投与というアイディアは、極めて局部的に作用物質を集中させ、全身的な副作用を僅少にすることで、より良い結果を得るという考え方を基礎とする。
【0003】
従来技術としては、薬剤を充填したステントの使用がある。さらに、バルーンシステムが知られている。
【背景技術】
【0004】
特許文献1から同種のカテーテルに関するこの種の投与方法および装置が知られている。この従来技術では、2個の順次に配置した膨張可能なバルーンを操作し、このバルーンの外壁を、治療すべき血管の内壁に圧着させる。血管における治療すべき箇所を、双方のバルーンの中間に位置させる。双方のバルーンの中間領域に配置した基本的に直径が小さい領域に、孔をあけておく。この有孔部を経て、薬剤を周知の方法で投与し、この投与方向は、薬剤の流れの方向、すなわち、血流方向に対し、90゜の角度αとなる。薬剤は、それゆえ最大圧力で、血管における治療すべき箇所に到達する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0045860号明細書
【0005】
塗布カテーテルの他の塗布方法もしくは他の装置が、特許文献2に記載されている。これによると、膨張可能なバルーンからなる装置を構成し、この場合、バルーンは、バルーン上の、血管の内壁との接触面において、薬剤の注入のために孔があけられている。
【特許文献2】米国特許第5611775号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような既知のすべての塗布カテーテルは短所がある。すなわち、このような既知方法は、一般的に作用物質の移送力が低く、物質が血管壁から早く洗い流されてしまうので、カテーテルに支援される局部的な治療の効果には限度がある。作用物質をカテーテルによって血管壁に投与する物理的投与能力には限界があり、(血管壁が作用物質に浸される)受動的塗布と、(作用物質が可能な限り最高の圧力で血管壁に投与される)能動的塗布との間の挙動を示し、能動的投与能力と受動的投与能力との双方間での連続的移行を可能にする、適切な方法と適切な装置が探求された。さらに、このような周知のカテーテル装置の場合、治療空間を完全に空の状態にすることは保証されず、この結果、薬剤は部分的に血液によって流され、また体内から除去しなければならなくなる。この場合、体内において、薬剤の望ましくない拡散が生じてしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、血管に損傷を与えることなくより長い塗布時間を可能にする、薬剤を血管壁に投与する塗布カテーテルの投与方法およびカテーテル装置を得るにある。さらに、塗布空間を完全に空の状態にすることを可能にする方法および装置を得るにある。特に、バルーン支援用法に特化した薬剤物質の薬理学的な特性に適合する、適切な解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、薬剤の流れの方向を、0゜〜89゜の角度αとし、角度αは、血管内での血流方向Qとバルーンの側面がなす角度としたことを特徴とする。さらに、上述の目的を達成するため、バルーンに付加的ルーメンを設け、この付加的ルーメンの開放端部をあるバルーンの遠位端末端側端部と隣接するバルーンの基端側端部との間に配置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、作用物質を、高濃度で、及び均等かつ血管に損傷を与えない方法で、一定期間にわたって治療部位に投与することが可能になる。例えば、パクリタキセル (Pactlitaxel)を投与する場合に、このことは重要である。物質そのものががすでに流されてしまった場合にも、パクリタキセルは、その細胞的な作用、すなわち、細胞骨格の変化を残す。本発明の方法によれば、有害な副作用が回避されるか、少なくとも低減される。これに関連して、さらに、例えば以下の物質、すなわちシロリムス(Sirolimus)、エベロリムス(Everolimus)及び幹細胞も、本発明の方法に適した物質である。
【0010】
以下の方法により、薬剤によって、末端部側および基端側のバルーンは同時に、展開及び膨張する。すなわち、薬剤をカテーテルの管に注入する。これによって、まずバルーンが本来の形に展開し、その亜鈴状の形状(末端側および基端側のバルーンが形成する)によって、治療すべき領域の両側で、密封作用を生じる。バルーンを最初に展開させることは、有孔部における孔の総面積を充分に小さくすることによってのみ、技術的に達成可能である。それゆえ、薬剤がバルーンを展開させることなく有孔部における孔から流出してしまうことは、回避しなければならない。塗布空間を空の状態にするには、負圧を利用する。このとき薬剤は、有孔部を経て、再度抜き出される。その際、塗布空間の容積は、カテーテルの総容積よりも充分小さくなるようにしなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好適には、治療すべき疾患のある血管領域に指向するバルーンの側面に有孔部を設け、この側面の傾斜度を調整可能にする。
【0012】
本発明の好適な実施態様では、角度αが、用法および/または薬剤に応じて調整可能にする。すなわち、有孔部を設けたバルーンの側面の傾斜度が、薬剤を治療すべき領域に投与する際の圧力を決定する。したがって、薬剤の作用時間及び進入深さを調整することが可能になる。角度が調節可能であることによって、カテーテル装置は、投与すべき物質と特定の用法に応じて調整可能となる。
【0013】
本発明の好適な実施態様によると、カテーテル装置は、付加的ルーメンを有し、このルーメンの開放端部を、あるバルーンの末端側端部と隣接するバルーンの基端側端部との間に配置する。これによって、血管内における血流が及ぼす影響のほとんどを回避できる。適切な手段によって、血流の連続性を保証する。
【実施例1】
【0014】
参照符号1は、治療すべき領域9を有する血管1に該当する。血管1内部では、2個のバルーン4からなるバルーンカテーテル2を、治療すべき領域9が双方のバルーン4の中間に位置するように配置する。バルーン4の断面は、両バルーン4間に存在する中間領域11の断面10よりも、大きい。バルーン4と領域11との接続は、バルーン4の基端側端部7及び末端側端部6における側面3によって行う。治療すべき領域9に対向する側面3の壁には、本発明に従って薬剤を投与するために孔をあけ、中間領域11の壁には孔をあけないよう注意する。図2では、図1における部分Bを示す。角度αは、血管1内での血流方向Qと、薬剤の流れの方向Pとがなす角度として定義する。薬剤は、側面3における有孔部8を経て投与される。角度αはバルーンカーテルを製造する際に調整できるため、衝突圧力及び従って作用強度(作用時間及び作用深度)は、用法と薬剤ごと固有に定めることができる。図3には、図1におけるC‐C線上の横断面を示す。膨張ルーメン12、ワイヤルーメン13及びガイドワイヤ14を示す。
【実施例2】
【0015】
図4に示す実施例では、バルーンカテーテル装置は、別個の薬剤投与のための付加的なルーメン5を有する。薬剤は、付加的なルーメン5を経て、中間領域11に、血流方向Pに平行な方向P´に向かって導入される。付加的なルーメン5の治療空間側の端部を湾曲させることもできる。薬剤は、所望の角度、及びこの角度に関連する衝突圧力で、治療すべき部位に投与される。図5は、図4のA‐A線上の断面図であり、付加的なルーメン5、膨張ルーメン12、ワイヤルーメン13及びガイドワイヤ14のためのルーメンを示す。バルーンカテーテル構造の末端側端部6及び基端側端部7に、有孔部17を設ける。これら有孔部17は、血管における血流維持、及び従って血流均衡を保つ作用を行う。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明による方法は、他の器官系、例えば、気管、気管支、食道、排出尿路または胆管を、特別な薬剤によって治療するのに使用できる。
【0017】
本発明の利点は、特に、用法および薬剤特性に関連する特別な治療のための、方法とカテーテル構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】カテーテル装置の線図的断面図である。
【図2】図1の部分Bを拡大した説明図である。
【図3】図1におけるC‐C線上の断面図である。
【図4】付加的なルーメンを有するカテーテル装置の線図的断面図である。
【図5】図4におけるA‐A線上の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 血管
2 バルーンカテーテル
3 側面
4 バルーン
5 ルーメン
6 末端側端部
7 基端側端部
8 有孔部
9 治療領域
10 中間領域の断面
11 中間領域
12 膨張ルーメン
13 ワイヤルーメン
14 ワイヤ
15 基端側端部
16 末端側端部
17 有孔部
P 流入方向
Q 血管における血流方向
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の側面(3)を有するバルーン(4)よりなるバルーンカテーテル(2)により、薬剤を血管(1)に投与するための方法において、
薬剤の流れの方向Pを、0゜〜89゜の角度αとし、
この角度αは、前記血管(1)内での血流方向Qと前記バルーン(4)の前記側面(3)とがなす角度としたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記角度αを、用法および/または薬剤ごとに調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤を投与する方法。
【請求項3】
カテーテル装置を、投与すべき物質に固有の構成としたことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項4】
前記側面に有孔部を設け、有孔部の孔の総面積は、このバルーン4が亜鈴状に展開及び膨張可能となるように構成したことを特徴とする請求項1、2または3のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜3のうち少なくとも1項に記載の方法に使用するカテーテル装置において、前記バルーン(4)に付加的ルーメン(5)を設け、この付加的ルーメン(5)の開放端部を、あるバルーン(4)の末端側端部(6)と、前記バルーンに隣接するバルーン(4)の基端側端部(7)との間に配置し、治療空間に指向させたことを特徴とするカテーテル装置。
【請求項6】
カテーテル装置の基端側(15)端部及び末端側(16)端部に、有孔部(17)を配置したことを特徴とする請求項4に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記バルーン(4)の少なくとも1個の側面(3)に、薬剤を投与するための有孔部(8)を設けたことを特徴とする請求項4に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
側面(3)が血流方向Qと角度αをなし、この角度を0゜〜89゜としたことを特徴とする請求項4または5に記載のカテーテル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−508880(P2007−508880A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536039(P2006−536039)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011866
【国際公開番号】WO2005/039684
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(504378087)アクロスタク コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】