説明

塗布具

【課題】 アイライン、アイシャドウなど目元周りの化粧料塗布具に好適な塗布具において、粒径の大きいラメ等の光輝性材料の吐出を可能とする化粧料塗布具などを提供する。
【解決手段】
内溶液を塗布部30へ押出す押出装置を備えた塗布具であって、前記塗布部30の内溶液吐出部32の形状が、楕円状または方形形状であり、それぞれ吐出部側の短径寸法が0.5〜2mm、長径寸法が2〜8mmとする。この塗布具では、塗布部内径を拡張することで大粒径を吐出でき、更に楕円状にすることで短径方向では細線を、長径方向では太線を描ける形状とした。また塗布具先端に細径突起36を付けたことにより描線を引き伸ばせるとともに突起36内に貯蔵した液体化粧料の保持を可能とする形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用インクや液体化粧料などの化粧品、文具、日常生活品等に使用される塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗布具として、筆、ペン芯、樹脂成形品で構成されたものが知られている。
これらの塗布具において、液体の吐出機構としては、本体の液貯蔵部より機械的(ノックや繰出)に送り出された液が、液貯蔵部と連通したパイプを通過し、パイプと連通した塗布部に送り込まれ、液が吐出されるものが知られている。また、筆タイプの塗布具では、テーパ状(円錐)に製造された形状を持ち、複数束ねた繊維にて筆記、塗布を行なうが、筆先動作のしなやかさが特徴である。
【0003】
しかしながら、筆タイプの塗布具では、繊維の凝集体であり、複数からなる繊維の塊でもあるため、特に、粒径の大きいラメなどの粒子は吐出途中で、繊維との摩擦により繊維間に詰まりはじめ、時には吐出不良を起こすこともある。また、筆タイプでは、加工途中で液流路確保のために略中心部に穴を開けるが、その空間にラメ等が凝集しやすかった。更に、液の繰出し力に対し、管内抵抗が大きく、詰まりの原因となるなどの問題点があった。
【0004】
そこで、先端をブラシ状に形成し、液通路を確保した塗布部を有する塗布具が数多く知られている。
例えば、1)眉毛等の染毛の際に、眉毛に簡便かつ均一に、しかも、地肌を汚すことなく液状化粧料を塗布することができる液状化粧料塗布具を提供するために、液状化粧料が収容される塗布具本体の先端に少なくとも2以上の櫛歯部を有する塗布体を備える液状化粧料塗布具であって、上記櫛歯部は、櫛歯部と櫛歯部との間隔となる櫛歯ピッチPが0.2〜1.0mmであり、かつ、櫛歯部の深さLが上記櫛歯ピッチPの2〜8倍であり、塗布体の吐出口形状が円形状であることを特徴とする液状化粧料塗布具(例えば、特許文献1参照)、2)毛髪化粧料の吐出量を均一に保ちつつ、ムラなく塗布することができる毛髪化粧料塗布具を提供するために、毛髪化粧料塗布具は、内部に毛髪化粧料を収容する容器本体と、その容器本体に嵌合された蓋体とから構成され、蓋体には先端方向に延出する一対の壁体と、該壁体の両端部を接続する一対の側壁体とからなるノズル体が設けられると共に、前記壁体の少なくとも一先端部に複数の櫛歯を配設し、前記容器本体内に収容された毛髪化粧料はノズル体内に穿設された連通路を介してノズル体に形成された吐出口から吐出されるよう構成した毛髪化粧料塗布具(例えば、特許文献2参照)、3)細長い形状の液体吐出口を有するマスカラ等の液体を塗布するための液体塗布具において、その液体吐出口の各部位から液体を略均一に吐出させて、塗布した場合に濃淡が生じないようにするために、液体誘導路の先方に液体流路の横幅を拡大する液体分散路を介して細長い液体吐出口を設けた液体塗布具において、液体分散路の形状を液体吐出口の中心位置における塗布面に垂直な法線を中心線として左右略対称形となし、液体吐出口の両側にブラシを突設した液体塗布具(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0005】
また、4)内部の充填領域に充填された液状充填物を先端側に向かって押し出し可能に構成された容器本体のその先端部に対して装着され、前記充填領域に連通し軸線に沿って先端側に延びる孔部を備えるコア部材と、軟質弾性材より成り、前記コア部材の先端側を覆うように軸線方向に移動不能に装着され、その先端面に開口された吐出口を有する塗布部材と、を具備し、前記コア部材の先端側と前記塗布部材との間には内部空間が画成されると共に、前記塗布部材には前記吐出口と前記内部空間とを連通する吐出孔が設けられ、
前記コア部材は、その先端から前記塗布部材の前記吐出孔に向かって突出する突出部と連通させる連通孔とを有し、前記コア部材の前記突出部は、その外面が、前記液状充填物の漏出を防止し得るように前記吐出孔に近接又は当接し、ブラシ機能を有する多数の突起群が配置されていることを特徴とする塗布具(例えば、特許文献4参照)、5)前端に塗布部材とその後方にマスカラ等の流動性を有する化粧料を収容した化粧料容器が設けられ、更に化粧料の後方にポンピング式の加圧機構が設けられてなる化粧料塗布具であって、当該化粧料塗布具は、軸心に化粧料を導通する孔と軸外面の所要位置に前記孔と連通する吐出口とその吐出口の近傍に塗布用ブラシまたは櫛歯状の突片が設けられてなる塗布部材と、塗布部材と吐出口との間には多孔質状で微細な連続通路を有して常時は封止状態となった連続通路を有する弾性体とを有する化粧料塗布具(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、3及び5は眉毛等の染毛用の塗布具であり、上記特許文献2及び4は毛髪用の化粧料塗布具であり、これらの塗布具では、アイライン等の細い線を描くことができず、また、大粒子を含んだ塗布液を塗布する場合、塗布管内での詰まりなどの課題がある。また、上記特許文献3の塗布具では、蛇行した液体誘導路が形成されているため、誘導路で大粒子を含んだ塗布液が効率良く流通しないことがあり、上記特許文献5では、コア部材があることで流路が阻害され詰まりを起してしまうなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−154173号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献2】特開2001−145514号公報(特許請求の範囲、図11、図8等)
【特許文献3】実開平6−60471号公報(実用新案登録請求の範囲、図1、図2等)
【特許文献4】特開2005−87562号公報(特許請求の範囲、図1、図2、図16等)
【特許文献5】特開2005-118367号公報(特許請求の範囲、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、大粒子を含んだ塗布液を塗布する場合でも、アイライン等の細い線を描くことができ、また、塗布管内での詰まりがなく、使用者が満足しうる塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、内溶液を吐出または塗布する機構を備えた塗布部と、内溶液が充填されている貯蔵体と、内溶液を塗布部へ押出す機構を備えた押出装置とを備え、前記塗布部と貯蔵体には連通された流路が設けられ、前記貯蔵体内の内溶液を押出装置より押出すことで内溶液は塗布部と貯蔵部に連通された流路をとおり塗布部より吐出される塗布具であって、前記塗布部における内溶液吐出部の形状を、特定形状、構造等とするにより、上記目的の塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 内溶液を吐出または塗布する機構を備えた塗布部と、内溶液が充填されている貯蔵体と、内溶液を塗布部へ押出す機構を備えた押出装置とを備え、前記塗布部と貯蔵体には連通された流路が設けられ、前記貯蔵体内の内溶液を押出装置より押出すことで内溶液は塗布部と貯蔵部に連通された流路をとおり塗布部より吐出される塗布具であって、
前記塗布部の内溶液吐出部の形状が、楕円状または方形形状であり、それぞれ吐出部側の短径寸法が0.5〜2mm、長径寸法が2〜8mmであることを特徴とする塗布具。
(2) 前記塗布部の吐出部側に、複数の細径突起が設けられ、該細径突起の外径は0.1〜1mm、長さは0.5〜3mm、細径突起の間隔は0.1〜1.5mmであることを特徴とする上記(1)記載の塗付具。
(3) 前記塗布部の吐出部側に設けられる細径突起の先端は、0.001〜0.5Nの垂直方向の力で、1mm撓むことを特徴とする上記(2)記載の塗布具。
(4) 前記塗布部が、ゴムまたはエラストマーからなる軟質プラスチック材料から構成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の塗布具。
(5) 前記内溶液は、EMD型粘度計におけるずり速度76.8S−1の粘度(25℃)が250〜1000mPa・sの範囲となる液体化粧料であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の塗布具。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大粒子を含んだ化粧料等の内溶液を塗布する場合でも、吐出部に設けた細径突起により短径方向での塗布では細線を、長径方向の塗布では太線を描けることができ、使用者が満足しうる塗布具が提供される。
請求項2の発明によれば、更に使用者が満足しうる塗布具が得られる。

請求項3の発明によれば、吐出部に設けた細径突起に、適度の撓み性をもたらせることで、肌への接触も好適な塗布力で描けるため、更に痛みを感じずに塗布することができる。
請求項4の発明によれば、塗布部全体をとおし、化粧動作に最適なコシが得られる塗布具となる。
請求項5の発明によれば、塗布部先端に設けた細径突起内に、液体化粧料等の内溶液を好適に保持することができ、更に満足しうる塗布が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗布具の全体断面の説明図であって、(a)は平面視断面図、(b)は正面視断面図である。
【図2】図1の塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視断面図、(d)は平面視断面図である。
【図3】図1の塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視断面図、(d)は平面視断面図である。
【図5】図4の塗布部の説明図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視断面図、(d)は平面視断面図である。
【図7】図6の塗布部の説明図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視断面図、(d)は平面視断面図である。
【図9】図8の塗布部の説明図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る塗布具における塗布部の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視断面図、(d)は平面視断面図である。
【図11】図10の塗布部の説明図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【図12】本発明に係る塗布具における塗布部の吐出部の他の形状を説明する説明図であって、(a)〜(f)はそれぞれ吐出部を平面視態様で示す説明図である。
【図13】本発明に係る塗布具における塗布部の吐出部の他の形状を説明する説明図であって、(a)〜(f)はそれぞれ吐出部を断面態様で示す説明図である。
【図14】本発明の塗布具の液押圧機構となる押出装置を他の実施形態とした場合の塗布具の全体断面の説明図であって、(a)は平面視断面図、(b)は正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら、詳述する。
本発明の第1の実施形態に係る塗布具は、液押圧機構となる押出装置が回転式繰出タイプとなる塗布具であり、図1に示すように、内溶液(本実施形態では、「液体化粧料」、以下同様)を吐出または塗布する機構を備えた塗布部30と、内溶液が充填されている貯蔵部11と、内溶液を塗布部30へ押出す機構を備えた押出装置10とを備え、前記塗布部30と貯蔵部11には連通された流路20が設けられており、前記貯蔵部11内の内溶液を押出装置10より押出すことで内溶液は塗布部30と貯蔵部11に連通された流路20をとおり塗布部30より吐出されるものである。
押出装置10は、軸本体12後端部に配設された繰り出し部材13を軸本体12に対して周方向に相対回転させることにより容器(貯留部)11内の内溶液を繰り出すことにより塗布部30に供給される構成となっている。
【0014】
この塗布具の押出装置10は、軸本体12の後端に回転可能に嵌合された繰り出し部材13と、使用者による繰り出し部材13の回転の力をネジ棒14に伝える駆動筒15と、軸本体12に固定してネジ棒14が螺合するネジ体16と、先端にピストン体17が回転可能に係合したネジ棒14と、軸本体12の貯留部11内を摺動するピストン体17とを有する。前記駆動筒15を介して繰り出し部材13の回転をネジ棒14に伝え、該ネジ棒14の回転によってナット状のネジ体16の雌ネジを介して該ネジ棒14及びピストン体17が前進して貯留部11内から前記内溶液を塗布部30へ繰出す構造になっている。
【0015】
繰り出し部材13は、図1に示すように、後端に天冠13aが嵌入することによって閉じられた筒状を呈する操作部が軸本体12後端部に回動可能に嵌め込まれかつ露出しているものである。駆動筒15が繰り出し部材13内に嵌入して回転方向に固定されており、この駆動筒15内に回転方向固定かつ軸方向への相対移動可能(ネジ体は動かない)にネジ体16が装着されている。13bは、スプリング部材であり、回転体となる繰り出し部材13を後方に付勢するものである(図1の矢印10の下にあるカム体と呼ばれるものを前方付勢するものである)。
この塗布具において、軸本体12の前端部12aには、継手部材18、先軸19、塗布部30が嵌入により取り付けられる。軸本体12の貯留部11には、内溶液が収容され、その貯留部11から繰出された内溶液は継手部材18内に設けられる略直管状の流路20をとおり塗布部30に吐出されて塗布可能になる。また、使用後にキャップ40を塗布部30及び先軸19を覆うように先軸19に装着(嵌着)できるよう形成されている。
【0016】
本発明の塗布具における塗布部30は、図2及び図3に示すように、全体形状が後方から前方にかけて縮径状となるものであり、塗布部本体31の前方側に内溶液吐出部32と、後方側にフランジ部33とを有している。
塗布部本体31は、断面視態様で楕円状となっており、内部には流路21に連通する液流通路34が設けられている。この液流通路34は、前方にかけて縮径する縮径流路35aと、断面視同一面積となる管状流路35bとから構成されている。
塗布部本体31の先端開口側となる内溶液吐出部32は、良好な吐出性及び塗布性を発揮せしめる点から、その吐出口形状が楕円状であり、後方側のフランジ部33のみ外形形状が円形状となっている。
【0017】
本発明において、吐出部32の開口部となる吐出口を楕円状、または、後述するように方形形状とすることは、太細字状の塗布ラインと異なる線が塗布できるものとするものであり、図3(a)に示すように、0.5〜2mm、長径寸法bを2〜8mmに設定されている。好ましくは、短径寸法aを0.8〜1.0mm、かつ、長径寸法bを3〜5mmとすることが望ましい。なお、短径寸法aと長径寸法bとが一致しないこと(a=bでないこと)が好ましく、例えば、円形状、正方形形状でないものが望ましい。また、短径寸法a、長径寸法bを規定することから、方形形状では四角形形状以上となるものである。
【0018】
また、前記吐出部32側の吐出口周面には、複数の細径突起36、36…が設けられ、該各細径突起36の大きさは、塗布対象、使用性、内溶液種等により変動するものであるが、粒径の大きい粒子(ラメ)等の吐出性、良好な塗布ラインを描く点から、外径を0.1〜1mm、長さを0.5〜3mm、細径突起の間隔を0.1〜1.5mmとすることが望ましい。
更に好ましくは、外径を0.3〜0.5mm、長さを0.5〜1.0mm、細径突起の間隔を0.2〜0.4mmとすることが望ましい。本実施形態では、16個の細径突起36が設けられている。
【0019】
また、前記塗布部30の吐出部31側に設けられる細径突起36の先端は、0.001〜0.5Nの垂直方向の力で、1mm撓むものとすること望ましい。この塗布具の細径突起の先端を0.001〜0.5Nの垂直方向の力で、1mm撓むことを要件とするが、その測定方法(後述する実施例を含む)は、土台に塗布具とフォースゲージ(今田製作所 LV500N)を取り付け、塗布部先端の接触から1mm撓ませた位置での荷重を測定したものである。
この吐出部32に設けた細径突起36に、上記要件となる適度の撓み性をもたらせることで、肌への接触も好適な塗布力で描けるため、更に痛みを感じずに塗布することができるものとなる。
【0020】
このように構成される塗布部30は、ゴム、プラスチック、またはエラストマーなどの材料を用いて一体成形することができ、塗布部全体をとおし、化粧動作に最適なコシを与える点から、例えば、NBR、シリコーンゴム、EPDM、フロロシリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロブレンゴム、ブタジエンゴム、プチルゴム、シリコーンゴム等のゴム、または、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどのエラストマーからなる軟質プラスチック材料で一体成形することが好ましく、特に好ましくは、更なる化粧動作に最適なコシを与える点から、スチレン系エラストマーで一体成形することが望ましい。
この構成の塗布部30は、先軸19内に嵌入され、後方のフランジ部33が先軸19の後方段部19aと継手部材18の先端部18aに挟まれて固着されるものである。
【0021】
本発明の塗布具の貯留部11内に収容する内溶液としては、塗布具の形態により各種の内溶液を用いることができ、液体化粧料の他、筆記具用のインクなどを用いることができ、その組成等などは特に限定されるものでない。
好ましくは、色材の沈降や、良好な塗布性能を発揮せしめる点から、EMD型粘度計におけるずり速度76.8S−1の粘度(25℃)が250〜1000mPa・sの範囲、更に好ましくは、280〜900mPa・sとなる液体化粧料であり、更に好ましくは、高輝性粒子1〜20質量%と、皮膜形成性樹脂2〜10重量%と、増粘作用を有するアニオン性高分子化合物0.3〜2質量%と、水とを含有してなる液体化粧料となるものが望ましい。
【0022】
用いる高輝性粒子は、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、雲母チタン、金属被覆雲母チタン、金属被覆ガラス末、金属酸化物被覆ガラス末、金属酸化物被覆合成金雲母、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の少なくとも1種を用いることができる。
用いる高輝性粒子の粒子径は、50〜500μmが好ましく、更に好ましくは、150〜300μmである。なお、本発明(実施例等を含む)における「粒子径」は、顕微鏡により観察し、n=20以上の任意の部分の測定結果の平均粒子径に基づく値である。
これらの高輝性粒子の含有量は、液体化粧料全量に対して、1〜20質量%(以下、単に「%」という)が好ましく、更に好ましくは、2〜10%である。
なお、上記高輝性粒子の他、その他の色材、例えば、黒酸化鉄、黄酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化クロム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタンイエロー、ベンガラなどの無機顔料、有機顔料、もしくは種々の染料やカーボンブラックの少なくとも1種を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
用いる増粘作用を有するアニオン性高分子化合物としては、例えば、(メチルビニルエーテル/マレイン酸)クロスポリマー、〔アクリレーツ/アクリル酸アルキル(炭素数10〜30)〕クロスポリマー、(アクリル酸/ビニルピロリドン)クロスポリマーから選択される1種又は2種が好ましく用いられる。市販品としては、「スタビリーゼ」シリーズ(アイエスピー・ジャパン社製)、「カーボポール」シリーズ(B.F.グッドリッチ社製)等が挙げられる。
これらの増粘作用を有するアニオン性高分子化合物の含有量は、液体化粧料全量に対して、0.3〜2%が好ましく、更に好ましくは、0.4〜1%である。
【0024】
本発明に用いる皮膜形成性樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(炭素数1〜4および炭素数8)アルキルエステルのうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体が用いられる。好ましくは、その単独重合体もしくは共重合体は、その繰り返し構造中、側鎖として酸性残基を有するものであって、中和によって水に溶解し得るアクリル樹脂、アクリル酸アルキル共重合体が良い。市販品では、Luvimer 100P(BASF社製)などが挙げられる。
これらの皮膜形成性樹脂の含有量は、液体化粧料全量に対して、2〜10%が好ましく、更に好ましくは、3〜6%である。
更に、用いる液体化粧料には、水系液体メイクアップ化粧料に通常使用されるキレート剤、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤などを含有することができ、残部は精製水、イオン交換水などの水で調製される。
更に好ましい粘度範囲として、ずり速度3.83s−1で2500〜10000mPa・s、19.20s−1で1000〜3000mPa・s、38.30s−1で500〜1500mPa・sとなるものが望ましい。上記粘度範囲の調整は、用いる高輝性粒子、皮膜形成性樹脂、増粘作用を有するアニオン性高分子化合、水の各含有量を好適に組み合わせたり、また、増粘剤などを含有して好適に調整することができる。
【0025】
このように構成される本実施形態の塗布具は、押出装置10にて貯留部11内から押出された内溶液は継手部材18内部の流路20を通過し、塗布部30の液流通路34へ進入し、塗布部30の吐出部32の開口部から吐出されるものとなる。その後、内溶液は毛細管力の働きにより、細径突起36間の隙間へ保持されることとなり、細径突起36の先端を被塗布面に塗布することで塗布が可能となる。この形態では、塗布部の内径を拡張することで大粒径を吐出でき、開口部を楕円形状にすることで短径方向では細線を、長径方向では太線を描け、また、塗布部先端に細径突起を設けたことにより、描線を引き伸ばせるとともに突起内に貯蔵した液体の保持を可能となり、この細径突起により短径方向での塗布では細線を、長径方向の塗布では太線を描けることができ、使用者が満足しうる塗布ラインを描くことができるものとなる。
また、細径突起36の外径、長さ、間隔、個数を適宜調整することにより、保持する内溶液量、塗布距離、塗布量及びその塗布幅などを好適に調整することができるものとなる。
更に、図1に示すように、液収容部となる貯留部11から吐出口先端まで略直管状接かつ直線状とすることで、内溶液に発生する抵抗は内径の管内抵抗のみとなり、筆タイプのような繊維による抵抗がないため、詰まりに対して有効であり、例えば、粒子径700μmのラメ等の高輝性粒子であっても良好な吐出性能を発揮することができる。
【0026】
本発明の塗布具は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
本発明の塗布具は、塗布部30の形状、構造等に特徴を有するものであるので、これ以外の構成については適宜他の形態を採用することができるものである。
上記実施形態において、吐出部32に設けた細径突起36を真直方向に立設したが、図4〜図11に示すように、細径突起36の立設方向を種々の傾き等にして、塗布性能、塗布ラインを種々のバリーエションとなるものとしても良いものである。なお、図4以下において、図1〜図3中と同じ構成のものは同一符号を示し、その説明を省略する。
【0027】
図4及び図5は、第2の実施形態の塗布部であり、第1の実施形態と比較して、塗布部30の細径突起が軸中心側に傾斜している細径突起36aとなるものである。
図6及び図7は、第3の実施形態の実施形態の塗布部であり、第1の実施形態と比較して、塗布部の細径突起が一定方向に斜向している細径突起36bとなるものである。
図8及び9は、第4の実施形態の塗布部であり、第1の実施形態と比較して、塗布部の細径突起をより軸中心側に傾斜させた細径突起36cとなるものである。
図10及び図11は第5の実施形態の塗布部であり、第1の実施形態と比較して、塗布部の細径突起の径を細くした細径突起36dとなるものである。
【0028】
また、上記実施形態において、吐出部32の開口部の形状を楕円形状としたが、図12(a)〜(f)及び図13(a)〜(f)に示すように、順次、ひし形形状、長方形の角部を面取りした形状、変形六角形状、トラック形状、長方形形状尾、扁平形楕円形状とすることができ、それぞれの開口部周面上に、上記各実施形態となる細径突起36,36a〜36dを設けることができる。
【0029】
更に、上記実施形態では、塗布具としてリキッドアイライナーおよびリキッドアイシャドの塗布具を例にして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、眉毛にラインを描くアイブロー塗布具、肌、唇にラインを描くことにも適用することができる他、塗布液を筆記具用インクとし、細いラインを描くことができる筆記具としてもよいものである。
【0030】
更にまた、上記実施形態の塗布具の液押圧機構となる押出装置として、図1に示す、回転式繰出タイプとなる塗布具を用いたが、例えば、図14に示す、ノック式繰出タイプとなる塗布具を用いても良いものである。
【0031】
図14は、ノック式繰出タイプの塗布具の説明図である。なお、図14中、上記図1の実施形態と同様の箇所には、同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施形態に係るノック式繰出タイプの塗布具は、図14に示すように、軸本体12後端部に配設されたノック部材50を軸方向前方に押圧することにより貯留部11内の内溶液を繰り出すことができるものであって、使用者のノック操作によるノック部材50の押圧の力をカム機構により回転の力に変換するノック機構部60と、軸本体12に固定したネジ体61と、ネジ体61に螺合させたネジ棒62とを有し、そのノック機構部60が変換した回転の力でネジ棒62を回転させることによってネジ体61を介して該ネジ棒62を前進させて前記塗布液を繰出すものである。また、ノック部材50の押圧による力を回転の力に変換するノック機構部60は、第1及び第2のカム面を有する回転体63と、第1の固定カム面を有するネジ体61、第2の固定カム面を有するカム体65とを主な構成要素とするものである。
【0032】
このノック式繰出タイプの塗布具は、ノック部材50を軸線方向に押圧してノックを開始すると、ノック部材50と回転体63はバネ部材64を圧縮させながら一体的に前方へ移動を開始し、さらにノックを続けると、回転体63が所定方向に回転しながら前方へ移動する。この時、回転体63はノック部材50に対して回転可能に取り付けられているためノック部材50自体は回転しない。このノック時の回転体63の回転に伴い、回転体63と回転方向に規制され軸線方向に移動自由に設けたネジ棒62が回転体63と一体的に回転する。ネジ棒62はネジ体61と螺合していることによりピストン体66と共に前進し貯留体11の内溶液を繰り出すものとなる。この状態からノックを解除する。ネジ体61内部に配設されたバネ部材64が回転体63を押上げることでノックを解除して行くが、この時、回転体63は所定回転方向に回転及び後方へ移動を開始する。さらにノック解除を続けると、バネ部材64の押上げ力で回転体63も回転しながら後退する。この回転時も上記の通りネジ棒62を回転させピストン体66と共に前進し、塗布液を繰り出すものとなる。上記のノック動作を繰り返すことにより、軸線方向のノック動作及び解除動作が回転の力に変換され、ネジ棒62を回転させ、ピストン体66を押し出すことで内溶液を定量的に繰出すことが可能となる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
下記図1〜図3に準拠、下記大きさ等となる塗布部を用いて、図1に準拠する塗布具を作製した。
(塗布部の構成)
短径寸法a:0.8mm、長径方向b:3.2mm、吐出部付近の肉厚:0.3mm。
また吐出口に設けた細径突起(個数8)は,外径がφ0.3mm、長さは1mm、互いの間隔は0.4mm、細径突起を除く塗布部の長さ13.5mm。細径突起は、1mm撓ませた位置での荷重は0.01Nであった。この塗布部は、スチレン系エラストマー(リケンテクノス社製、商品名「アクティマー」)を用いて一体成形した。
内溶液として、別紙表1の組成例1〜7の各液体化粧料1.4mlを塗布具に充填した。
【0035】
【表1】

【0036】
得られた各塗布具を用いて、繰出操作により、内溶液となる液体化粧料を押し出したところ、液体化粧料(各組成例1〜7)は溝から吐出し、毛細管力により細径突起間に保持され、この先端を被塗布面となる目元に塗布したところ、大粒子を含んだ化粧料等の内溶液を塗布する場合でも、吐出部に設けた細径突起により短径方向での塗布では細線を、長径方向の塗布では太線を描けることができ、使用者が満足しうる塗布具となることが判った。
また、化粧動作に最適なコシが得られ、吐出部に設けた細径突起に、適度の撓み性を有するので、肌への接触も好適な塗布力で描けるため、痛みを感じずに塗布することができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
リキッドアイライナー、リキッドアイシャドなどの塗布具に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 押出装置(液押圧機構)
12 軸本体
13 繰り出し部材
17 ピストン体
18 継手部材
19 先軸
21 流路
30 塗布部
31 吐出部
36 細径突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内溶液を吐出または塗布する機構を備えた塗布部と、内溶液が充填されている貯蔵体と、内溶液を塗布部へ押出す機構を備えた押出装置とを備え、前記塗布部と貯蔵体には連通された流路が設けられ、前記貯蔵体内の内溶液を押出装置より押出すことで内溶液は塗布部と貯蔵部に連通された流路をとおり塗布部より吐出される塗布具であって、
前記塗布部の内溶液吐出部の形状が、楕円状または方形形状であり、それぞれ吐出部側の短径寸法が0.5〜2mm、長径寸法が2〜8mmであることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記塗布部の吐出部側に、複数の細径突起が設けられ、該細径突起の外径は0.1〜1mm、長さは0.5〜3mm、細径突起の間隔は0.1〜1.5mmであるであることを特徴とする請求項1記載の塗付具。
【請求項3】
前記塗布部の吐出部側に設けられる細径突起の先端は、0.001〜0.5Nの垂直方向の力で、1mm撓むことを特徴とする請求項2記載の塗布具。
【請求項4】
前記塗布部が、ゴムまたはエラストマーからなる軟質プラスチック材料から構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の塗布具。
【請求項5】
前記内溶液は、EMD型粘度計におけるずり速度76.8S−1の粘度(25℃)が250〜1000mPa・sの範囲となる液体化粧料であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−231920(P2012−231920A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102054(P2011−102054)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】