説明

塗布容器

【課題】容器の姿勢を変化させることなく内容液の吐出と引き伸ばしとを同時に行うことができ、効率の良い塗布作業を行うことができる塗布容器を提供する。
【解決手段】内容液が収容された容器体2と、容器体の口部10bに固定され、内容液を塗布する塗布具4と、を備え、この塗布具は、内容液を吐出する吐出口50が周面に形成された芯部31と、芯部を径方向外側から囲繞するように芯部に回転可能に被着され、吐出された内容液を外表面に流出させる貫通孔60を有し、流出させた内容液を引き伸ばしながら塗布する回転体32と、を備え、芯部の周面には、吐出口に連通した状態で周方向に延びる溝部53が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物に内容液を塗布する塗布容器の1つとして、吐出された内容液を容易に引き伸ばすことができ、広範囲に亘って内容液を塗布することができる塗布容器が知られている(特許文献1参照)。
この塗布容器は、内容液を容器体から注出するポンプの上部に、複数の注出孔が形成された注出筒と、注出孔から吐出された内容液を引き伸ばすローラと、を有する塗布具を備えている。注出筒は、上方に向かって突設しており、内部に流路が確保された部材である。そして、この注出筒の前面に注出孔が形成されている。ローラは、注出筒の後面側に設けられた一対の軸受によって回転可能に取り付けられている。
【0003】
このように構成された塗布容器によれば、複数の注出孔から内容液を吐出した後、ローラを利用して吐出した内容液を容易且つ均一に引き伸ばすことができる。従って、広範囲に亘って内容液を塗布することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4305756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の塗布容器は、注出筒の前面に注出孔が形成され、注出筒の後面側にローラが設けられている。そのため、吐出した内容液をローラで引き伸ばす場合には、塗布容器を一度持ち替えてその姿勢を変更したり、手首の捻り等により対象物に対する注出筒の向きを180度程度変えたりする必要があった。
また、内容液を吐出した後、改めてローラによって引き伸ばすものであるので、内容液の吐出と、内容液の引き伸ばしと、を同時に行うことができるものではなかった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、塗布容器の姿勢を変化させることなく内容液の吐出と引き伸ばしとを同時に行うことができ、効率の良い塗布作業を行うことができる塗布容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る塗布容器は、内容液が収容された有底筒状の容器体と、前記容器体の口部に固定され、前記内容液を塗布する塗布具と、を備え、前記塗布具が、前記内容液を吐出する吐出口が周面に形成された円柱状の芯部と、該芯部を径方向外側から囲繞するように該芯部に回転可能に被着され、吐出された前記内容液を外表面に流出させる貫通孔を有し、流出させた内容液を引き伸ばしながら塗布する回転体と、を備え、前記芯部の周面には、前記吐出口に連通した状態で周方向に延びる溝部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る塗布容器においては、はじめに、塗布の対象である対象物に対して塗布具の回転体を近づける。次いで、容器体に収容されている内容液を塗布具に送り込むと同時に、回転体を対象物に押し付けながら該回転体を対象物上で滑らすように回転させる。
すると、まず塗布具に送り込まれた内容液は、芯部の周面に形成された吐出口を通じて吐出される。そして、吐出された内容液は、芯部の周面に形成された溝部内に流れ込んで、該芯部の周方向に拡がった状態となる。
一方、芯部に被着された回転体は、対象物に押し付けられながら回転させられている。そのため、回転体に形成された貫通孔は、溝部上を移動するように芯部の周面に沿って回転移動する。よって、溝部内に流れ込んだ内容液は、貫通孔を通じて回転体の外表面に流出する。そして、流出した内容液は、回転体の回転によって均一に引き伸ばされながら対象物に塗布される。
【0009】
このように、塗布容器の姿勢を変化させなくても、内容液の吐出と引き伸ばしとを一連の動作の中で同時に行うことができる。従って、効率の良い塗布作業を行うことができる。特に、対象物が水平でない場合、従来の吐出と引き伸ばしとを同時に行えないものは、引き伸ばしを行う前に吐出した内容液が垂れてしまう可能性があった。しかしながら、吐出と引き伸ばしとを同時に行えるのでこのような不都合を抑制することができ、狙った領域に正確に内容液を塗布することができる。
【0010】
(2)本発明に係る塗布容器は、上記本発明の塗布容器において、前記溝部が、一端壁と他端壁とを有するように周方向に分断されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る塗布容器においては、溝部が周方向に分断されて非環状となっているので、吐出口から溝部内に流れ込んだ内容液は一端壁及び他端壁で流れが塞き止められた状態となる。ところで、溝部内に流れ込んだ内容液は、回転体の回転動作に連られてその回転方向に流れようとする力を受ける。そのため、内容液は、溝部内を流動しながら貫通孔を通じて回転体の外表面に流出する形となる。
しかしながら、内容液は一端壁及び他端壁によってその流れが塞き止められるので、貫通孔から逃げ続けるのではなく貫通孔を途中で迎える状態となる。従って、内容液を貫通孔からより流出させ易くすることができ、内容液の塗布作業をより効率良く行うことができる。
【0012】
(3)本発明に係る塗布容器は、上記本発明の塗布容器において、前記溝部が、前記一端壁側に前記吐出口が位置するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る塗布容器においては、一端側の近傍で内容液を吐出口から吐出させることができ、吐出した内容液を他端壁に向かう一方向に向けて溝部内に流すことができる。よって、溝部内における内容液の流れの方向を整えることができるので、貫通孔を通じて回転体の外表面に内容液をスムーズに流出させ易い。従って、内容液の塗布作業をより効率良く行うことができる。
【0014】
(4)本発明に係る塗布容器は、上記本発明の塗布容器において、前記回転体が、前記溝部に沿って前記一端壁から前記他端壁に向かう方向に回転方向が規制されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る塗布容器においては、溝部内を内容液が他端壁に向かって流れる方向に回転体の回転方向が規制されているので、内容液を他端壁に向かってスムーズに流しながら、貫通孔を通じて流出させることができる。
【0016】
(5)本発明に係る塗布容器は、上記本発明の塗布容器において、前記回転体の外表面には、凹部と凸部とが周方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る塗布容器においては、回転体の外表面が滑らかではなく、凹部と凸部とが周方向に沿って交互に形成された凹凸状に形成されている。そのため、内容液を引き伸ばしながら塗布すると同時に対象物に刺激を与えることもできる。つまり、対象物をマッサージしながら内容液の塗布を行うことができる。従って、塗布する機能にマッサージという付加機能を加えることができ、機能性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る塗布容器によれば、塗布容器の姿勢を変化させることなく内容液の吐出と引き伸ばしとを行うことができ、効率の良い塗布作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る塗布容器の全体側面図(一部断面図)である。
【図2】図1に示す塗布容器の塗布具付近を拡大した断面図である。
【図3】図1に示す塗布容器の回転体及び操作筒を上方から見た図である。
【図4】図2に示す塗布容器の芯部の上端部側の側面図である。
【図5】図1に示す塗布容器の回転体を矢印A方向から見た側面図である。
【図6】図2に示す状態からステムを押し下げている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る塗布容器の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態の塗布容器1は、図1及び図2に示すように、内容液Wが収容された容器体2と、この容器体2の口部10bに固定され、内容液Wを塗布する塗布具4と、塗布具4を覆うオーバーキャップ5と、を備えている。
なお、本実施形態では、容器体2の一例として、内部に上昇可能な中皿6を有する中皿上昇式の容器体を例に挙げて説明すると共に、塗布具4がステム3を有するポンプ部25を介して口部10bに固定されている場合を例に挙げて説明する。
【0021】
なお、図1は、塗布容器1の一部を断面にした全体側面図である。図2は、図1に示す塗布容器1のうち塗布具4付近を中心とした拡大断面図である。また、本実施形態では、容器体2の中心軸を中心軸Oとすると共に、塗布具4の後述する芯部の中心を貫く中心軸を中心軸O’とする。そして、これら中心軸O、O’に直交する方向を径方向、中心軸O、O’を中心にそれぞれ周回する方向を周方向とする。また、容器体2の中心軸O方向に沿って塗布具4側を上側とし、容器体2の底部側を下側とする。
【0022】
容器体2は、容器本体10と底蓋11とで有底筒状に形成され、内部に内容液Wが収容されている。容器本体10は、中心軸Oを中心に筒状に形成され、下側が開口した胴部10aと、この胴部10aの上端部に形成された口部10bと、で構成されている。
胴部10aの下端部には、上記底蓋11が嵌合固定されており胴部10aの開口を閉塞している。なお、底蓋11に、中皿6と底蓋11との間の隙間空間Sと外部とを連通させるための逃げ孔を形成しても構わない。こうすることで、中皿6が上昇した際に、隙間空間Sが負圧になることを抑制でき、中皿6をより滑らかに上昇移動させることが可能となる。
【0023】
中皿6は、容器本体10の内周面に上下摺動可能に嵌合されており、容器本体10に収容されている内容液Wの減少に伴う負圧化によって容器本体10内を上昇移動するようになっている。この中皿6は、容器本体10の内周面に当接する筒状の外筒部15と、外筒部15の開口を塞いで内容液Wを容器本体10内に閉じ込める仕切り部材16と、で構成されている。
外筒部15は、中間部分が径方向内方に若干凹み、上端側と下端側とが全周に亘って容器本体10の内周面に当接するように設計されている。そのため、適度な摩擦力で内周面に接しており、滑らかに摺動移動できるようになっている。
なお、この場合に限られず、外筒部15の外周面全体が容器本体10の内周面に当接したり、外筒部15の外周面の一箇所のみに全周に亘る当接部を形成したりしても構わない。
【0024】
仕切り部材16は、内筒部16aとフランジ部16bと内筒部16aの開口を塞ぐ隔壁部16cとで一体的に形成されている。内筒部16aは、外筒部15の内側に配設されており、隔壁部16cによって開口が塞がれている。フランジ部16bは、環状に形成されており、内筒部16aと外筒部15とを全周に亘って一体的に連結している。
【0025】
ところで、口部10bには、キャップ20が装着されている。このキャップ20は、口部10bを径方向外側から囲む周壁筒21と、周壁筒21の上端に連設され、上方に向けて突出すると共に周壁筒21より縮径した突出筒22と、で構成されている。そして、このキャップ20にはポンプ部25が取り付けられている。
【0026】
このポンプ部25は、ステム3と、内部にステム3の下部が上下動自在に配設され、キャップ20の周壁筒21に固定されたシリンダ26と、シリンダ26の内部において上下動自在に配設された図示しないピストンと、ステム3及びピストンを上方に向けて付勢する図示しない付勢部材と、を備えている。
ステム3は、キャップ20の突出筒22内に配設され、その上端部はシリンダ26の上端を超えて突出筒22の上端よりも上方に位置している。つまり、このステム3は、口部10bに上方付勢された状態で下方移動可能に貫設されている。そして、このステム3を下方移動させることで、容器体2の内部に収容されている内容液Wを塗布具4内に噴出させることが可能とされている。
【0027】
また、突出筒22の外面には、径方向外方に突出する係合凸部22aが環状に形成されている。この係合凸部22aは、オーバーキャップ5側に形成された係合凸部5aに係合し、オーバーキャップ5の脱落防止を図る役割を担っている。
また、突出筒22の内面には、中心軸O回りへの回転を規制しながら塗布具4を上下動可能に案内する縦溝22bが形成されている。
【0028】
塗布具4は、ステム3から噴出した内容液Wを図示しない塗布の対象物に塗布するための部材であって、ステム3の上端に固定されている。つまり、塗布具4は、ステム3を有するポンプ部25及びキャップ20を介して口部10bに固定されている。
この塗布具4について詳細に説明する。塗布具4は、該塗布具4を押し下げる際に指先を押し当てる押下部35aが形成された操作筒30と、操作筒30に固定された円柱状の芯部31と、この芯部31に回転可能に被せられたローラ部(回転体)32と、を備えている。
【0029】
操作筒30は、突出筒22よりも上方に突出したステム3を径方向外側から囲み、突出筒22より縮径した有頂筒状の第1操作筒35と、この第1操作筒35の頂壁に連設され、上方に向けて突出する円筒状の第2操作筒36と、で構成されている。
第2操作筒36は、第1操作筒35よりも縮径しており、頂壁の中心から径方向外方にずれた位置に連設されている。つまり、第1操作筒35の中心軸でもある容器体2の中心軸Oと、第2操作筒36の中心軸O’とは、同軸ではなく、径方向に所定距離ずれるように設計されている。そのため、第1操作筒35の頂壁は、図3に示すように、指先を押し当てることができるように大きく露出している。この部分が、上記押下部35aとして機能する。
なお、図3は、図1に示すローラ部32及び操作筒30を上方から見た図である。
【0030】
ところで、図2に示すように、操作筒30内には第1操作筒35側から第2操作筒36に向けてプラグ部材40が圧入されている。このプラグ部材40は、頂壁に当たって第1操作筒35内に配設される第1プラグ41と、第2操作筒36内に配設される第2プラグ42と、で構成されている。
第1プラグ41には、ステム3の上端部に被嵌される嵌合筒41aと、ステム3から噴出される内容液Wを流通させる流通孔41bが形成されている。一方、第2プラグ42には、流通孔41bを通過した内容液Wを軸芯に向けて通過させる流通溝42aが、第2プラグ42と第2操作筒36との間に中心軸O’に沿って形成されている。
【0031】
このように構成されたプラグ部材40の嵌合筒41aがステム3に被嵌されていることで、塗布具4全体がステム3の上端に固定されている。また、押下部35aを介して操作筒30を押し下げると、プラグ部材40を介してステム3を下方移動させることができるようになっている。この際、第1操作筒35の下側外面には、径方向外方に突出し、突出筒22の内面に形成された縦溝22bに係合する係合突片35bが形成されている。これにより、操作筒30を押し下げる際、塗布具4全体が中心軸O回りに回転してしまうことを防止できるようになっている。
【0032】
芯部31は、ステム3から噴出され、プラグ部材40を通過した内容液Wを吐出する吐出口50が周面に形成された部材であり、第2操作筒36の上方に固定されている。具体的には、第2操作筒36の上端面に押し当たった状態で下端部が第2操作筒36内に圧入されることで、固定されている。この際、プラグ部材40の第2プラグ42との間に若干の隙間が開くように、芯部31の下端部が第2操作筒36内に圧入されている。
また、芯部31の中心軸は、第2操作筒36の中心軸O’と共通であり、この中心軸O’に沿って流通路52が形成されている。この流通路52は、芯部31の下端面に開口していると共に、上記吐出口50に連通している。よって、流通路52を介してプラグ部材40を通過した内容液Wを吐出口50に導き、該吐出口50から吐出させることが可能とされている。
【0033】
更に、芯部31の周面には、図4に示すように、吐出口50に連通した状態で芯部31の周方向に延在し、吐出口50から吐出された内容液Wを流動させる溝部53が形成されている。なお、図4は、芯部31の上端部側の側面図である。
この溝部53は、吐出口50の直径よりも大きい溝幅Hとされており、一端壁53aと他端壁53bとを有するように周方向に分断された状態(非環状)で形成されている。しかも、溝部53は、一端壁53a側に吐出口50が位置するように形成されている。具体的には、吐出口50の開口縁の一部に一端壁53aが重なるように形成されている。これにより、吐出口50から吐出されて溝部53内に流れ込んだ内容液Wは、他端壁53bに向かって溝部53内を流れるようになっている。
また、芯部31の最上部の周面には、径方向外側に向けて膨出した環状の膨出部54が形成されている。この膨出部54は、ローラ部32の抜け止めとして機能する。
【0034】
ローラ部32は、内容液Wを引き伸ばしながら対象物に塗布する部材であって、有頂筒状に形成されている。そして、このローラ部32は、中心軸O’回りに回転可能な状態で芯部31に被着されている。この際、ローラ部32は、芯部31側に形成された膨出部54によって該芯部31から脱落しないように被着されている。
なお、ローラ部32の形状は有頂筒状に限られず、円筒状でも良く、少なくとも芯部31を径方向外側から囲繞できれば良い。
【0035】
また、ローラ部32には、図2及び図5に示すように、吐出された内容液Wを外表面に流出させるための貫通孔60が形成されている。これにより、貫通孔60から流出した内容液Wを引き伸ばしながら対象物に塗布することが可能とされている。なお、図5は、図1に示す矢印A方向から見たローラ部32の側面図である。
ところで、本実施形態のローラ部32の外周面には、凹部61と凸部62とが周方向に沿って交互に形成されている。よって、ローラ部32を回転させた際に、凸部62が周期的に対象物に当たり、該対象物に刺激を与えることが可能とされている。なお、貫通孔60は、凹部61に開口が位置するように形成されている。
【0036】
また、図2に示すように、吐出口50及び溝部53よりも下側において、ローラ部32と芯部31との間にはOリング63が介在されている。これにより、仮に吐出口50及び溝部53からローラ部32と芯部31との間の隙間を伝って内容液Wが垂れてきたとしても、Oリング63で垂れを止め、ローラ部32の下端から漏れ出してしまうことを防止している。
【0037】
オーバーキャップ5は、図1に示すように、有頂筒状に形成された着脱自在なキャップである。このオーバーキャップ5は、突出筒22に外嵌する形で装着されるようになっている。この際、オーバーキャップ5の下端が周壁筒21と突出筒22との間の段差部に当接して上下方向に位置決めされるようになっている。また、オーバーキャップ5の下側内周面には、径方向内方に突出する環状の係合凸部5aが形成されている。
そのため、オーバーキャップ5を装着する際に、この係合凸部5aが突出筒22側に形成された係合凸部22aを乗り越えた後、係合するようになっている。そのため、オーバーキャップ5は、容易に脱落しないように設計されている。
【0038】
次に、このように構成された塗布容器1を利用して、図示しない対象物に内容液Wを塗布する場合について説明する。
はじめに、オーバーキャップ5を取り外した後、容器体2を保持しながら対象物に対して塗布具4のローラ部32を近づける。次いで、図6に示すように、押下部35aを介して操作筒30を押し下げて塗布具4全体を下方移動させ、容器体2に収容されている内容液Wを塗布具4に送り込むと同時に、ローラ部32を対象物に押し付けながら該ローラ部32を対象物上で滑らすように中心軸O’回りに回転させる。
【0039】
まず塗布具4の押し下げによって容器体2に対してステム3が下方移動すると、これに連係してピストンがシリンダ26の内周面に摺接しつつ下方に移動する。すると、シリンダ26内の内容液Wが圧縮されてステム3内に侵入し、該ステム3内を上方に向けて移動する。これにより、内容液Wをステム3から噴出させることができる。噴出した内容液Wは、プラグ部材40の流通孔41b及び流通溝42aを順次通過した後、芯部31の流通路52に流れ込み、該流通路52を上方に向かって移動する。そして、この内容液Wは、芯部31の周面に形成された吐出口50を通じて芯部31の外部に吐出される。次いで、吐出口50から吐出された内容液Wは、芯部31の周面に形成された溝部53内に流れ込んで、該芯部31の周方向に拡がった状態となる。
【0040】
一方、ローラ部32は、上述したように対象物に押し付けられながら回転させられている。そのため、ローラ部32の貫通孔60は、溝部53上を移動するように芯部31の周面に沿って回転移動する。よって、溝部53内に流れ込んだ内容液Wは、貫通孔60を通じてローラ部32の外表面に流出する。そして、流出した内容液Wは、ローラ部32の回転によって均一に引き伸ばされながら対象物に塗布される。
【0041】
このように、塗布容器1の姿勢を変化させなくても、内容液Wの吐出と引き伸ばしとを一連の動作の中で同時に行うことができる。従って、効率の良い塗布作業を行うことができる。特に、対象物が水平でない場合(例えば顔の表面等の場合)、従来の吐出と引き伸ばしとを同時に行えないものは、引き伸ばしを行う前に吐出した内容液Wが垂れてしまう可能性があったが、本実施形態の塗布容器1によれば、吐出と引き伸ばしとを同時に行えるので、このような不都合を抑制することができる。従って、狙った領域に正確に内容液Wを塗布することができる。
【0042】
なお、内容液Wをステム3から噴出させた後、押下部35aから指先を離すと、付勢部材の上方付勢力によりステム3と共にピストンがシリンダ26の内周面に摺接しつつ上方に移動する。これにより、容器体2に対して塗布具4が上昇するので、該塗布具4を元の位置に自然と復旧させることができる。また、ピストンが上方に移動することで、シリンダ26内が減圧され、容器体2に収容されている内容液Wがシリンダ26内に吸い上げられる。これにより、次の吐出に備えることができる。
【0043】
また、吸い上げによる内容液Wの減少に伴って容器本体10内が負圧化されるので、中皿6が容器本体10内を上昇移動する。これにより、内容液Wの吸い上げを促すことができ、仮に粘性の高い内容液Wであってもシリンダ26内に確実に吸い上げさせることが可能となる。
【0044】
更に、本実施形態の塗布容器1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
即ち、本実施形態の溝部53は、周方向に分断されて非環状に形成されているので、吐出口50から溝部53内に流れ込んだ内容液Wは一端壁53a及び他端壁53bで流れが塞き止められた状態となる。ところで、溝部53内に流れ込んだ内容液Wは、ローラ部32の回転動作に連られてその回転方向に流れようとする力を受ける。そのため、内容液Wは、溝部53内を流動しながら貫通孔60を通じてローラ部32の外表面に流出する形となる。
しかしながら、上述したように内容液Wは一端壁53a及び他端壁53bによってその流れが塞き止められるので、貫通孔60から逃げ続けるのではなく、貫通孔60を途中で迎える状態(待ち受ける状態)となる。従って、内容液Wを貫通孔60からより流出させ易くすることができる。
【0045】
しかも、吐出口50の開口縁の一部に一端壁53aが重なるように形成されているので、一端壁53aの近傍で内容液Wを吐出口50から吐出させることができ、吐出した内容液Wを他端壁53bに向かう一方向に向けて溝部53内に流すことができる。よって、溝部53内における内容液Wの流れの方向を整えることができるので、貫通孔60を通じてローラ部32の外表面に内容液Wをスムーズに流出させ易い。以上のことから、内容液Wの塗布作業を効率良く行うことができる。
【0046】
また、本実施形態のローラ部32は、外表面が滑らかではなく、凹部61と凸部62とが周方向に連続的に繰り返された凹凸状に形成されている。そのため、内容液Wを引き伸ばしながら塗布すると同時に、対象物に刺激を与えることもできる。つまり、対象物をマッサージしながら内容液Wの塗布を行うことができる。このように、塗布する機能にマッサージという付加機能を加えることができ、機能性を高めることができる。
【0047】
ところで、上記実施形態において、ローラ部32の回転方向を規制するように構成しても構わない。具体的には、溝部53に沿って一端壁53aから他端壁53bに向かう方向に回転方向を規制しても構わない。こうすることで、溝部53内を内容液Wが他端壁53bに向かって流れる方向にローラ部32の回転方向を規制できるので、内容液Wを他端壁53bに向かってスムーズに流しながら貫通孔60を通じて流出させることができる。
【0048】
更に、上記実施形態において、未使用時に、溝部53が分断された位置(図4に示すP点)に貫通孔60がセットされた状態でローラ部32を位置決めできるように構成しても構わない。こうすることで、未使用時に貫通孔60から内容液Wが流出し難くなるので、より好ましい。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、容器体2の一例として中皿上昇式の容器体を例に挙げて説明したが、この場合に限られるものではない。例えば、スクイズ変形可能な容器体であっても構わない。
また、上記実施形態では、ポンプ機構を使用しているがこれに変えてエアゾール機構を使用しても良い。更に、スクイズ変形可能な容器体を採用した場合には、ポンプ機構やエアゾール機構等の吐出器を介在させずに、口部10bに塗布具4を直接固定しても構わない。この場合には、容器体をスクイズ変形させることで、内容液Wを塗布具4に直接送り込むことができる。従って、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、ローラ部32の外表面を凹部61と凸部62とが周方向に沿って交互に形成された凹凸状に形成したが、この場合に限定されるものではなく、凹凸が無い滑らかな外表面であっても構わないし、突起状の凸部又は凹部の少なくとも一方が規則的に或いは不規則的に複数形成された外表面であっても構わない。
【0052】
また、上記実施形態では、吐出口50の開口縁の一部に一端壁53aが重なるように溝部53が形成されている場合を例に挙げたが、吐出口50と溝部53との関係はこの場合に限定されるものではない。
例えば、溝部53の中間付近に吐出口50が形成されたり、吐出口50が複数形成されていたりしても構わないし、吐出口50の直径よりも溝幅が小さい溝部53としても構わない。また、溝部53は、周方向に分断されていなくても良く、環状に形成されていても構わない。
更に、中心軸O’に沿って間隔を開けて溝部53を複数列形成し、各溝部53に流通路52に連通した吐出口50を形成しても構わない。
なお、ローラ部32と芯部31との少なくとも一方を着脱自在とすることもでき、この場合、当該部材の洗浄及び交換が容易となる。
【符号の説明】
【0053】
W…内容液
1…塗布容器
2…容器体
4…塗布具
10b…容器体の口部
31…芯部
32…ローラ部(回転体)
50…吐出口
53…溝部
53a…溝部の一端壁
53b…溝部の他端壁
60…貫通孔
61…回転体の凹部
62…回転体の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容された有底筒状の容器体と、
前記容器体の口部に固定され、前記内容液を塗布する塗布具と、を備え、
前記塗布具は、
前記内容液を吐出する吐出口が周面に形成された円柱状の芯部と、
該芯部を径方向外側から囲繞するように該芯部に回転可能に被着され、吐出された前記内容液を外表面に流出させる貫通孔を有し、流出させた内容液を引き伸ばしながら塗布する回転体と、を備え、
前記芯部の周面には、前記吐出口に連通した状態で周方向に延びる溝部が形成されていることを特徴とする塗布容器。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布容器において、
前記溝部は、一端壁と他端壁とを有するように周方向に分断されていることを特徴とする塗布容器。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布容器において、
前記溝部は、前記一端壁側に前記吐出口が位置するように形成されていることを特徴とする塗布容器。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布容器において、
前記回転体は、前記溝部に沿って前記一端壁から前記他端壁に向かう方向に回転方向が規制されていることを特徴とする塗布容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の塗布容器において、
前記回転体の外表面には、凹部と凸部とが周方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93565(P2011−93565A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249036(P2009−249036)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】