説明

塗布方法及び該方法で得られた被塗布物

【課題】 微細な凹凸構造をもつ基板に対し、気泡を巻き込むことなく、凹部を充填する湯に樹脂等を塗布する方法および微細な凹凸構造をもち、気泡を巻き込むことなく樹脂等が塗布された被塗布物を提供する。
【解決手段】 被塗布面に形成されている凹部の直径に対し、吐不易を20%以上90%以下の粒径の液として被塗布面に対し吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば基板表面に形成された微細な凹凸形状に塗布液を充填する、基板への塗布液の塗布方法および塗布物に関わる。たとえばインクジェット記録装置の部品や画像表示装置の部品、プリント基配線基板、その他のデバイスの部品等において、基板上に設けられた微細な凹凸上に、緻密な膜を塗布する際に好適に用いられる、凹凸基板への塗布方法、および該塗布方法で得られた被塗布物に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板、液晶表示素子、画像形成装置、インクジェット記録装置等の製造方法では、基板上に金属、ガラス等の無機物、および樹脂等の有機物、あるいはこれらの混合物など様々な材料によって、微細な構造を作りこみ、またこうした構造を何層か重ね、多層構造としてデバイス化することにより、様々な機能を発現させる。
【0003】
これらの微細構造の製造時、もしくは微細構造基板への機能膜の更なる積層時など、多くのプロセスに於いて、これらの微細構造上に塗布液を塗布する工程が存在する。
【0004】
たとえば、高解像度カラー受像管用のシャドウマスクは、一般的にはエッチングを二段階に行なうことにより製造している。
【0005】
第一段階としてはまず、金属基板の両面に、必要なパターンを施したレジスト膜を形成し、スプレー等によりエッチャントを吹き付け、該基板の片面、もしくは両面共に、多数の凹孔部を形成させる。
【0006】
第一段階では、これらの微細凹孔部は貫通させずにエッチングをとめ、凹孔部の一面を、耐エッチャント性を備えたレジスト等を塗布して保護膜とする。その後、第二段階としてのエッチングをおこなう。
【0007】
すなわち、該保護膜により被覆されていない面を更にエッチングすることにより、両面の凹孔部を貫通させ、多数の微細な貫通孔を得る。
【0008】
耐エッチャント、その他の薬品・溶剤に対する保護膜、あるいはパッシベーション膜等の平坦化膜、そのほか、凹凸面への膜形成については、レジスト等の塗布液を、スピンコート法などにより塗布して硬化させる方法が一般的である。また、同様に、機能に対応する塗布液を、たとえば、実開平6-33150公報に開示されているような塗布装置、方法により塗布して成膜する方法が用いられている。
【0009】
実開平6-33150に開示されている印刷機の概要を記す。同公報における塗布機の代表的な機構を図11に斜視図として示す。
【0010】
図11中で、100は金属薄板、101、102、103はバックアップローラ、104は平滑スキージローラ、105は溝付きスキージローラ、21−1、21−2は塗布液供給パイプ、22は塗布液、109は塗布液22の案内板、110は被覆面を示す。
【0011】
この塗布装置では、金属薄板100が、バックアップローラ101、102,103で図中に示した方向へ送られていく際に、平滑スキージローラ104により、これに備えられた塗布液供給パイプ21−1から供給された塗布液22が、該金属薄板100表面に施された微細凹部に充填され、さらに溝付きスキージローラ105により、同様に塗布液22が塗り重ねられ、金属薄板100表面に、必要な膜厚の塗布が行なわれる。
【0012】
しかしながら以上に説明したような塗布方法においては以下のような問題点を有している。
【0013】
すなわち、金属薄板100に塗布液22を接触させ、塗布を行なうと、この塗布液22の揮発により金属薄板100は熱を奪われ周辺雰囲気よりも低温化し、これに接している塗布液22全体の温度も低温化する。その結果、液22の粘度が上がってしまう。
【0014】
金属薄板100上に設けられた微細凹部にスキージローラ104が塗布液22を押し込む動作に於いては、スキージローラ104が凹部内に存在した周辺雰囲気を押し出して凹部に塗布液22を充填しようとする際に、もともとあった周辺雰囲気が、押し込まれようとする塗布液22と混合し、気泡として混入する。塗布液22の粘度が適度に低い場合には、この気泡が塗膜表面に向かい、表面ではじけて、液中から大気中に拡散するため、塗膜および充填凹部より消滅する。
【0015】
しかしながら、液22の粘度が上昇してしまった場合には、液中に取り込まれた気泡は液中での移動がスムーズに行なわれないためにそのまま液中、および凹部中に留まり、塗布液22がポーラスな状態で膜化することになる。
【0016】
その結果、これらの膜による必要な保護が行なわれなくなり、不良の原因となる。
【0017】
たとえば、上述のような、エッチング工程での保護膜の場合には、これらの気泡部分にエッチャントが流入することにより、不必要な部分に対する下地のエッチングが行なわれ、不良となる。
【0018】
また、この保護工程で熱がかかる場合など、この熱によって、気泡の爆発が発生し、更に大きな保護不良が発生する。
【0019】
また、平坦化膜などで使用する場合にも、膜の焼成時の加熱により、爆発や盛り上がりを生じ、平坦化できなくなるなどの不良を発生する。
【0020】
この、熱の問題を解決するには、特開平10-314652公報に開示されているように、塗膜の気化、硬化に伴う熱の変動を実測し、これに対応する加熱を行なうことにより、塗布液22の温度降下を防ぎ、液の粘度上昇を防いで、気泡無く塗布する方法などがある。
【特許文献1】実開平6-33150号公報
【特許文献2】特開平10-314652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、これらの方法では、塗布液22の初期性状が限られており、凹凸基板への充填被覆塗布を網羅することが出来ない。
【0022】
たとえば、塗布液22の粘度がもとより高く、また、希釈材には沸点・蒸気圧の高い溶剤を用いる場合などは、述べてきた塗布機では塗布液22の粘度は塗布機上でどんどん変化してしまい、気泡無く塗布することが難しい。
【0023】
また、充填すべき凹部の開口部と深さのアスペクト比が1以上となる場合は、充填に必要な塗布液を押し込む際に凹部の気泡をそのまま封じ込めてしまう問題が起きやすく、このような大量の空気を凹部の奥に閉じ込めてしまった場合には、塗布液の表面張力によって、気泡も押さえ込まれてしまい、粘度をある程度低くしても、抜けにくくなってしまう。
【0024】
さらに、凹部の開口形状が星型など、径に対して面積の小さいものである場合や、逆テーパーがかかった構造である場合などについても、従来の塗布方式では、気泡無く充填することは難しく、結果的には、述べてきたような不良を発生する原因となる。
【0025】
また、このような気泡を含んだ膜を保護膜などに用いる場合、温度などの条件によって、時に気泡の体積が増大し、爆発することがある。この場合、爆発部分において膜は保護膜としての機能を果たし得ない。
【0026】
例えばエッチング保護膜であった場合は、爆発した部分で下層にエッチャントが浸透するなどによって、本来、該保護膜により保護されているべき部分が侵食され、不良が発生してしまう。
【0027】
すなわち、かかる微細構造をもった基板類を、何らかの液体を塗布することによってなる膜を用いて保護する場合は特に、気泡の抱きこまれた不均一な塗膜では工程に耐えられず、この工程の不良発生要因となってしまう。
【0028】
本発明の目的はこのような問題点を解決するために、凹凸の施された任意の基板上に、任意の塗布液を気泡を抱き込むことなく充填し、被覆する方法に関するものである。
【0029】
また、その為に使用する塗布装置に関するものである。
【0030】
また、これらを用いて得られる塗布物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的は、以下に述べる本発明によって解決する。
【0032】
すなわち本発明は、基板表面上に施された凹凸形状の、凹部開口径の20%から90%の大きさの液滴を吐出することにより凹部を効率よく充填する塗布方法である。
【0033】
またこの塗布方法を用いてなる被塗布物である。
【発明の効果】
【0034】
以上説明してきたように本発明による塗布方法を用いれば、従来の塗布方法による工程と比較して、凹凸基板への充填塗布を確実に行なうことが出来る。
【0035】
すなわち、基板上の凹部の直径の20%以上90%の粒径をもつ液滴として塗布液を吐出することによって、該凹部に空気などの気体の混入のない塗布を行なうことが出来る。
【0036】
また、液滴を0.5から2.5Kg/cmの圧力で吐出させることにより、凹部に効率よく、短時間で液を充填させることが出来る。
【0037】
また、液を100cP以下に調整して用いることにより、該凹部を含む基板全体に面精度の良好な充填塗膜を施すことが出来る。
【0038】
また、塗布液の溶媒として70℃以上250℃以下の溶剤を用いることにより、塗布液を基板上で均一に膜化させることが出来る。
【0039】
さらに、塗布液の溶媒として650Pa以下である溶剤を用いることにより、本発明によって、凹部を充填して施した塗膜を精度良いままに溶媒を蒸発させ、あるいは塗布状態のままに均一な状態で樹脂を架橋させるなどして、堅牢な膜とすることができる。
【0040】
以上述べてきた本発明により、この塗布膜を保護膜として行なうエッチングなどの工程や、この塗布膜を平坦化膜などに使用する際における、膜の不完全充填による不良を防ぐことが出来る。
【0041】
また、このような塗布を可能とする装置を用いることにより、微細凹凸上への充填塗布が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明においては、塗布液は、充填すべき凹凸形状に形成されている凹部の直径の20%から90%の粒径となるように該凹部に向かって吐出する。
【0043】
液滴は該凹部上、または、該凹部と基板表面もしくは他構造物との境界上、または、基板表面もしくは他構造物上に着弾する。
【0044】
これらの作用を図1から図4を用いて説明する。
【0045】
図1から図4に於いて、01は基板、02は塗布液(液滴)、03は塗布液吐出ノズル、04は基板表面に設けられた凹部を表す。
【0046】
塗布液吐出ノズル03より、基板01へ向けて吐出した塗布液滴02−01、02−02が、基板に着弾する際、凹部04上に着弾する場合を図1に示す。
【0047】
該液滴02−02は、液滴のまま凹部04の底まで到達し、(a)、(b)、(c)に示すように凹部04は底から順次塗布液で充たされていく。
【0048】
凹部04と基板表面もしくは他構造物との境界上に着弾した場合は、図2(a)に示すように、液滴02−6、02−7は凹部のエッジ部分に02−8のように到達し、エッジ部分で(b)、(c)のように挙動し液滴02−10のように切れて、一部は凹部壁面をつたい降りて底に溜まり、一部は基板表面もしくは他構造物の表面に留まる(d)。
【0049】
また、基板表面や他構造物の表面に着弾した場合にも、同様に図3に示すように、液滴02−12は、図3(a)、(b)、(c)のように挙動し、基板表面や他構造物表面に留まる。
【0050】
液滴の吐出を繰り返し行なうと、以上に述べてきたような着弾が繰り返し行なわれ、凹部底面と、基板表面もしくは他構造物表面に塗布液が溜まっていく。
【0051】
基板表面もしくは構造物表面に、塗布液の液だまりが形成された場合を、図4に示す。この凹部近傍の塗布液だまり02−17に図4(a)に示すように液滴02−18が着弾した際には、新たに着弾した液滴が液だまりの液を押し出すようにして一部は凹部に転がり込む(図4(b)、(c)、(d))。
【0052】
液滴の着弾が繰り返されることにより、これら図1から図4に示したような液滴の諸挙動が繰り返され、凹部04には、あらかじめ凹部内に存在した気体と塗布液02が混合することなく交代して、液02が凹部底面よりスムーズに充填されていく。
【0053】
以下に、実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
ただし、ここに挙げた実施例は、これによって本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0055】
図5は本発明の塗布方法における凹凸基板塗布工程の側面図である。
【0056】
図中の01は基板、03は液滴吐出ノズル、04は基板に設けられた凹部、05は連続吐出された塗布液、06は塗布液により形成された塗布膜を示す。
【0057】
図5(a)では、基板01上で、液滴吐出ノズル03から塗布液を一定範囲のミスト状に連続的05に吐出させ、このノズル03を基板01に平行に一定速度でスキャンさせる様子を表す。
【0058】
図5(b)では、(a)の塗布工程が終了し、基板01と凹部04に塗布膜06が気泡なく塗布されている状態を表す。
【0059】
本実施例において基板01は、金属薄板を用いた。
【0060】
本発明に於いて、使用する基板01はその他、ガラス、シリコンウエハ、樹脂等、あらゆる基板が使用できる。これらはどのような厚みのものでもよく、どのような大きさのものであっても良い。
【0061】
また、あらかじめ形成されている凹凸形状としては、該基板01上を直接エッチングして得られた形状のほか、これらの基板01上に別の塗膜を形成した後、フォトリソエッチング法などによって、微細構造を形成させたものなどが用いられ、これらの材質や、パターン形状は選ばない。さらに、凹凸としては、うねりや荒れのような形状を持つものなど、決まったパターンではないものに対しても有効である。
【0062】
本実施例に於いては、100mm×100mm、厚さ300μmの銅基板上中央部に、深さ40μm、直径80μmの凹部を、ピッチ200μmに縦横50mm×50mmのエリアに、エッチングによって、形成したものを用いた。
【0063】
本実施例において塗布液02/05は、環化ゴムのキシレン溶液(溶剤分90重量部)を用いた。
【0064】
本発明に使用する塗布液02/05にはあらゆる塗布液が使用できる。充填しようとする凹部の開口径の20〜90%の粒径に制御できる性質を備えていれば良い。
【0065】
塗布液の性状としては、あまり粘度の大きくないものが特に適しており、微細構造である凹部のサイズに対応した液滴をつくりやすい。数十μmオーダーの直径を持つ開口部に対しては、特に、塗布液は100cP以下であることが好ましく、塗布液はこれ以下となるように希釈などして調整する。
【0066】
調整に用いる希釈液には、可能であれば適度な沸点であるものが主溶媒となるように選ぶ。沸点としては、250℃以下のもの、特に、70℃以上250℃以下のものが好適に用いられる。また、この溶媒が常温において650Pa以下の蒸気圧であればなお良い。
【0067】
これらの溶媒の性状は、塗布液の均一な塗膜化、および凹部04の充填効率に対し非常に有効である。
【0068】
沸点の低いもの、更に蒸気圧が高いものを、主溶媒に選ぶ場合には溶媒の揮発が激しいため、特に開口部の小さい凹部を充填しようとする場合などは、本発明によれば必要とする液滴が小さくなることから、着弾するまえに、液の溶剤分が低くなり、粘度が上がって、基板上ですでに形成された塗膜などに滑らかに融合しない場合がある。また、ひどく乾燥が進んでしまった場合には、液滴の形状を残した形で基板上に付着し、均一な膜化がおこなわれないことになってしまう。
【0069】
逆に、沸点の高いもの、さらに蒸気圧の低いものを使用した場合には、塗布液が完全に膜化するまでに時間がかかり、特に凹部のアスペクト比が1以上の場合には、凹部の底付近に閉じ込められた液中の溶媒分と、大気に触れている付近にある液の溶媒分に濃度勾配が生じる。
【0070】
この場合、一般的には表面の溶媒分が早く抜けることから、表面付近の塗布液が先に硬化して、後々になって、凹部奥に閉じ込められていた溶媒が、加熱工程などで突沸、爆発などが起こり易く、正常な充填膜が得られにくい。
【0071】
これら、塗布液溶媒として適している沸点、蒸気圧は、充填しようとする凹部の開口径、深さ、これらの割合などに影響を受けるため、必要に応じて適宜調整し用いる。
【0072】
本発明における液滴吐出ノズル03は、必要な粒径に塗布液02を吐出できる機能を有するいずれの装置を用いても良い。
【0073】
ディスペンサー、各種インクジェットノズル、スプレーノズルなどが用いられる。
【0074】
必要とする粒径と、使用する塗布液02の性状によって、ノズル03は適宜選ぶようにする。
【0075】
本実施例に於いては、ノードソン社製のマイクロスプレーノズルを用いた。
【0076】
以上、述べてきた装置、部材を用いて、本実施例に於いて塗布を行なった方法を説明する。
【0077】
固定ステージに基板01を凹凸面を上に固定し、その上を吐出ノズル03で、塗布液02を吐出しながら2回スキャンした。
【0078】
吐出は、ノズルの先端の開放をマイクロアジャスター(図示せず)により2mmに調節し、吐出用霧化エア圧を1.0Kg/cm、また、スキャンスピードを50mm/sec、スキャンピッチを1mmに調節して、該基板全面に対し行なった。
【0079】
吐出条件としては、吐出液滴が開口径に対して必要以上に小さくならないように調節する。
【0080】
一般に、液滴を連続的に吐出させる場合、細かい霧状にするために、ノズル出口を絞り、吐出用霧化エア圧をあげて、細かいミストを発生させようとするが、本発明では、充填しようとする凹部の開口形状の径に応じた粒径のミストがえられればそれで良い。
【0081】
特に、開口径の1割以下のサイズになってしまうと、このミストで凹部を充填するまでの効率が悪く、充填に時間がかかりすぎてしまう。
【0082】
粒径は、好ましくは20%〜90%のサイズとする。
【0083】
粒径を確認するには気中の液滴を測定することの出来る粒度分布系などを用いて測定する。たとえば、粒度分布測定装置 マスターサイザーS(マルバーン社製)などが用いられる。
【0084】
液滴を吐出する際には、液滴は有る分布をもった粒径となるが、この分布の8割が好ましい粒径範囲である凹部直径の20%〜90%に入っていることが好ましい。また特に、凹部直径の90%を超える粒径をもつ液滴については、皆無であることがとくに望ましいが、どうしても混入する場合にも、すべての液滴数の2%以下になるように吐出機構を調節する。
【0085】
本実施例で用いた液滴の粒径を測定したところ、30μm±10μmの範囲に9割の液滴が入っており、また70μm以上の粒径をもつ液滴は皆無であった。
【0086】
吐出用霧化エア圧は、0.5〜2.5Kg/cmの範囲であることが望ましい。
【0087】
この範囲よりも小さい圧力にしてしまうと、ノズル先端から液滴化される塗布液の全体量が少なくなってしまい、充填効率が悪くなってしまう。
【0088】
また、この範囲を超えて大きい圧力をかけてしまうと、この液滴が凹部にスムーズに入りにくくなる。すなわち、この霧化エア圧が基板に強く当たり、凹部近辺で渦を巻いたり、あまりにも強くあたるために、液滴を逆に吹き飛ばしてしまうなどして、液滴が着地することを妨げたり、着地した液をかき混ぜ、エアを巻き込んだり、膜の表面に大きなうねりを残して乾燥させたり、などの悪影響がある。
【0089】
以上、述べてきたような条件で塗布を行なった後、塗布基板は100℃のホットプレートで10分間乾燥して膜化させ、塗膜の状態、凹部の充填状況について、光学顕微鏡で観察した。
【実施例2】
【0090】
図6(a)および(b)は、本実施例において使用した基板01及びこの基板に対する塗布状態を説明した側面図である。
【0091】
本実施例において基板10はシリコンウエハ、11は端部保護膜、12は構造材(ポジレジスト)、13は構造材(ネガレジスト)、14は40μmφ、深さ70μmの凹部、15はパターニングした酸化膜を表す。
【0092】
まず、ウエハ10上に、ポジ型UV樹脂により厚さ15μmの構造材を形成させ、これにネガ型UV樹脂を用いて、図6(a)に示したような構造を形成したものに、フォトリソエッチング法によって、40μmφ、深さ70μmの凹部14を形成した。
【0093】
このウエハ10の端部には、環化ゴムのキシレン溶液(溶剤分70重量部)を周を一周させるようにディップコートすることによって、保護膜を形成した。
【0094】
このウエハ基板10の表面を、実施例1と同様の液滴吐出ノズル03、同じく実施例1と同様の塗布液と用いて、同様の吐出動作によって、塗布を行なった。この動作を3回繰り返した。
【0095】
その後、100℃のホットプレートで10分間乾燥して膜化させた。
【0096】
この塗布膜の状態、凹部の充填状況について光学顕微鏡で観察した。
【0097】
次にこのウエハ10に対し、同様のノズル03、同様の塗布液02を用い、次のような吐出条件によって、1回塗布を行なった。
【0098】
ノズルの先端の開放をマイクロアジャスター(図示せず)により3mmに調節し、吐出用霧化エア圧を2.5Kg/cm、また、スキャンスピードを50mm/sec、スキャンピッチを1mmに調節して、該基板全面に対し塗布を行なった。
【0099】
その後、再び100℃のホットプレートで10分間乾燥して膜化させた。
【0100】
図6(b)に示すように塗布膜06が形成された。
【0101】
この基板をTMAH23重量部、80℃のエッチャント中で10時間揺動させ、エッチングを行なった。
【0102】
その後、塗布膜06、および端部保護膜11を剥離し、該シリコンウエハ10表面をくまなく顕微鏡観察した。
【実施例3】
【0103】
図7(a)に示す通りシリコンウエハ10上に、構造材13で30μmの膜を形成したものに、図8に示すような凹部04を、100μmピッチに250個並べ、この列を500μmピッチに2列並べた形状を形成した。
【0104】
この凹部に対し、実施例1と全く同様のノズル03および塗布液02を用い、同様のレシピで塗布を行なった。
【0105】
100℃のホットプレートで10分間加熱したものを、顕微鏡で同様に観察した。
【0106】
[比較例1]
図9は、実施例1と全く同様の基板01をスピンコーターチャッキングステージ22に固定し、スピンコートを行なった様子と、それによって出来た塗布膜06の様子を示す側面図である。
【0107】
スピンコーターには一般的なものを用いた。
【0108】
基板へは、実施例に用いた塗布液と同様の塗布液を、塗布液供給ノズル21より過剰量滴下し、300rpmで20秒間回転させた。
【0109】
その後再び塗布液を過剰量滴下し、同じく300rpmで20秒間回転させ、100℃のホットプレートで加熱し、塗布膜06を形成した。
【0110】
この後、塗布膜の膜状態と凹部への充填状態を、顕微鏡で観察した。
【0111】
[比較例2]
図10において、基板10、構造材13、凹部04からなる、被塗布物は、実施例3と全く同様のものを用いた。凹部04は図8に示した構造となっている。
塗布装置は、従来例として図11を用いて説明してきた、微細凹部を充填する塗布機である。
【0112】
図10(a)において、21は塗布液供給ノズル、22はこのノズルより供給された塗布液だまり、104は平滑スキージローラを表す。
【0113】
該塗布装置では、(a)に示したものと全く同様にして、104で示した平滑スキージローラが溝付きスキージローラに取り替えられた、2回目の塗布工程が、この後に続く。(a)と全く同じ構成になるため、図は省略した。
【0114】
このような塗布装置を用い、塗布液は、実施例3と同様の成分のものを、溶剤分60重量部として用いた。
【0115】
塗布後に、100℃のホットプレートにより、10分間乾燥させ、塗布膜06を形成した。
【0116】
出来た塗布膜状態と、凹部への充填状態を顕微鏡により観察した。
【0117】
[比較例3]
比較例2と全く同様にして、実施例2に記載した凹凸形状を備えた基板に、比較例2と全く同様の装置、塗布液、塗布条件で塗布を行なった。
【0118】
塗布後に、100℃のホットプレートにより、10分間乾燥させ、塗布膜06を形成した。
【0119】
出来た塗布膜状態と、凹部への充填状態を顕微鏡により観察した。
【0120】
その後、この基板を、実施例2と全く同様のエッチャントを用いてエッチングし、実施例2と全く同様にして観察を行なった。
【0121】
以上説明してきた実施形態、および比較例についての観察結果を、まとめたものが図12である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(a)〜(c)は本発明の充填塗布のメカニズムを説明する、凹部、液滴の様子を表した模式図。
【図2】(a)〜(d)は本発明の充填塗布のメカニズムを説明する、凹部、液滴の様子を表した模式図。
【図3】(a)〜(c)は本発明の充填塗布のメカニズムを説明する、凹部、液滴の様子を表した模式図。
【図4】(a)〜(d)は本発明の充填塗布のメカニズムを説明する、凹部、液滴の様子を表した模式図。
【図5】(a)および(b)は本発明の第1の実施例における凹凸基板の側面図および液滴吐出状態を表す側面図。
【図6】(a)および(b)は本発明の第2の実施例における凹凸構造基板と吐出工程を説明する側面図。
【図7】(a)および(b)は本発明の第3の実施例における凹凸基板の塗布工程を説明する凹凸基板および塗布状態の側面図。
【図8】本発明の第3の実施例および第2の比較例にて用いた基板の凹部形状をあらわした平面図。
【図9】従来技術である、本明細書の第1の比較例における凹凸基板への塗布工程を説明する凹凸基板および塗布状態を表した側面図。
【図10】従来技術である、本明細書の第2の比較例における凹凸基板への塗布工程を説明する凹凸基板および塗布状態を表した側面図。
【図11】従来技術の塗布装置を示す斜視図。
【図12】実施例比較例の結果のまとめ。
【符号の説明】
【0123】
01 基板
02(−01〜21) 塗布液(液滴)
03 液滴吐出ノズル
04 凹部
05 連続吐出された塗布液
06 塗布膜
07 気泡
10 ウエハ
11 端部保護膜(ディップコート)
12 ポジレジスト
13 ネガレジスト
14 40μmφ凹部
15 酸化膜
16 凹凸構造物
20 スピンコーターチャッキングステージ
21 塗布液供給ノズル
22 塗布液だまり
100 金属薄板
101、102、103 バックアップローラ
104 平滑スキージローラ
105 溝付きスキージローラ
21−1、2 塗布液供給ノズル
109 塗布液案内板
110 被覆面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの凹部が形成された基板に樹脂膜を塗布する方法に於いて、塗布液を該凹部の直径の20%以上90%以下の粒径として吐出させることを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
液滴を0.5から2.5Kg/cm2の範囲の圧力で吐出させることを特徴とする、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
塗布液を100cP以下の粘度に調整して用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗布方法。
【請求項4】
塗布液に含まれる少なくとも一種類の溶剤の沸点が、70℃以上250℃以下である塗布液を用いることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
塗布液に含まれる少なくとも一種類の溶剤の蒸気圧が、650Pa以下である塗布液を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗布方法を用いて塗布された被塗布物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−188545(P2008−188545A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26896(P2007−26896)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】