説明

塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプ

【課題】他の膜との密着性が良く、剥離等する虞の無い塗膜の形成が可能な塗料とそれを用いた塗膜及びその製造方法並びに蛍光ランプを提供する。
【解決手段】本発明の塗料は、イットリウム、アルミニウム、ユーロピウム、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、ケイ素、ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上の元素を含む無機化合物からなる保護膜形成用物質と、水と、必要に応じて低級アルコール、ケトン、エーテルの群から選択される1種または2種以上を含有し、低級アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールの群から選択される1種または2種以上、ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンの群から選択される1種または2種以上、エーテルは、ジエチルエーテル等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプに関し、更に詳しくは、他の膜との密着性が良くかつ剥離等の無い塗膜を形成することが可能な塗料とそれを用いた塗膜、この塗膜の製造方法、この塗膜を透光性封止管の内部に形成した蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ(PC)やワードプロセッサ(WP)等のOA機器に用いられている液晶表示装置(LCD)は、自発発光型ではないために外部にバックライトユニットを設ける必要があり、このバックライトユニットには冷陰極型の蛍光ランプが取り付けられている(特許文献1〜6参照)。
この蛍光ランプは、例えば、ガラス管の両端が封止された透光性封止管の内面に蛍光体からなる発光層を形成し、この透光性封止管内の両端部側にそれぞれ電極を設け、この透光性封止管内に水銀及びアルゴン等の希ガスを封入したものである。
【0003】
ところで、近年、液晶表示装置においては、液晶モニタや液晶テレビジョンの分野では大型化が進む一方、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機、携帯情報端末等の過般型情報機器の分野では小型化、薄型化、軽量化が進んでいる。そして、これらの何れの分野においても、より薄く、より軽く、より高精細に、という要求に加えて、より省電力であることが強く求められている。
液晶表示装置は消費電力が極めて小さく、この消費電力の多くの部分を占めるのはバックライトにおける電力消費である。このため、バックライトの光源として用いられる蛍光ランプとしては、同一消費電力であればより高輝度のものが、また、同一輝度であればより省電力のものが求められている。
【0004】
このように、蛍光ランプに対して高出力化が求められているために、透光性封止管の内壁にかかる負荷が大きくなり、その結果、黒化等により封止管の透明性が損なわれるという問題が生じている。
そこで、透光性封止管と蛍光体層との間に金属酸化物等からなる保護膜を設けることにより、水銀や紫外線に起因する黒化の発生を防止するとともに、輝度の劣化を抑制した蛍光ランプが提案されている(特許文献7参照)。
この蛍光ランプでは、透光性封止管の内壁に、有機溶媒を含む保護膜形成用塗料を塗布し、乾燥することにより保護膜が形成され、この保護膜上に蛍光体スラリを塗布し、乾燥することにより、蛍光体膜が形成される。
【特許文献1】特開2001−15065号公報
【特許文献2】特開2002−222637号公報
【特許文献3】特開2003−16994号公報
【特許文献4】特開2005−11665号公報
【特許文献5】特開2003−123691号公報
【特許文献6】特開2001−76672号公報
【特許文献7】特開平11−312491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の保護膜を備えた蛍光ランプでは、保護膜形成用塗料の主成分が有機溶媒であるために、得られた保護膜も有機溶媒に対して溶出し易く、したがって、次工程において保護膜上に酢酸ブチル等を主成分とする蛍光体スラリを塗工する際に、保護膜が一部溶解し、膜が剥がれてしまうという問題点があった。
このような膜ハガレが生じた場合、蛍光体スラリの塗膜に塗りムラが生じたり、この塗膜に微小突起が発生したり、さらには塗膜のうちに塗工されない部分が生じたり等の不具合が生じることとなる。これらの不具合は、蛍光ランプの輝度を低下させる要因になる。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その上に積層される膜との密着性が良く、この膜が剥離等する虞の無い塗膜を形成することが可能な塗料とそれを用いた塗膜、製造工程の短縮及び製造コストの削減が可能な塗膜の製造方法、この塗膜を透光性封止管の内部に形成することにより、その上に形成される蛍光体層が剥離する虞のない蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、保護膜を形成するための塗料に用いられる溶媒として、蛍光体スラリに用いられている酢酸ブチル等の有機溶媒に溶解しない水を成分として含むこととすれば、この塗料を塗工して得られた膜が蛍光体スラリ等の非水系塗料に含まれる酢酸ブチル等の溶媒に対しても溶解する虞が無く、したがって、膜が剥がれてしまうという虞もないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の塗料は、保護膜形成用物質と水とを含有してなることを特徴とする。
【0009】
前記保護膜形成用物質は、イットリウム、アルミニウム、ユーロピウム、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、ケイ素、ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上の元素を含む無機化合物であることが好ましい。
この塗料は、さらに、低沸点有機溶媒を含有してなることが好ましい。
前記低沸点有機溶媒は、低級アルコール、ケトン、エーテルの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記低級アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の塗膜は、本発明の塗料を用いて形成してなることを特徴とする。
本発明の塗膜の製造方法は、基材上に、本発明の塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥または乾燥・熱処理することを特徴とする。
【0011】
本発明の蛍光ランプは、本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料によれば、保護膜形成用物質と水とを含有したので、この塗料を塗工することにより、塗膜中の保護膜形成用物質が水に覆われることとなり、保護膜形成用物質が酢酸ブチル等の有機溶媒を含む非水系塗料に溶解するのを防止することができる。したがって、この塗料を塗工して得られた膜の剥離を防止することができ、よって、空隙(ポア)の少ない緻密な膜を形成することができる。
【0013】
また、この塗料に、さらに、アルコールを含有したことにより、溶媒の乾燥工程、または乾燥・熱処理工程の時間短縮が可能になり、製造工程の短縮及び製造コストの削減を図ることができる。
【0014】
本発明の塗膜によれば、本発明の塗料を用いて形成したので、塗膜が酢酸ブチル等の有機溶媒を含む非水系塗料に溶解するのを防止することができ、したがって、膜の剥離を防止することができる。その結果、空隙(ポア)の少ない緻密な膜とすることができる。
【0015】
本発明の塗膜の製造方法によれば、基材上に、本発明の塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥または乾燥・熱処理するので、酢酸ブチル等の有機溶媒を含む非水系塗料に溶解する虞が無く、したがって、膜の剥離の虞が無く、しかも、空隙(ポア)の少ない緻密な膜を、容易かつ安価に作製することができる。
【0016】
本発明の蛍光ランプによれば、本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成したので、空隙(ポア)の少ない緻密な保護膜とすることができ、この保護膜上に塗工される蛍光体塗膜を空隙(ポア)の少ない緻密な膜とすることができる。よって、蛍光体層における蛍光発光を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプを実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
「塗料」
本発明の塗料は、保護膜形成用物質と水とを含有してなる保護膜形成用塗料である。
この保護膜形成用物質としては、イットリウム、アルミニウム、ユーロピウム、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、ケイ素、ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上の元素を含む無機化合物であることが好ましい。
この無機化合物としては、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ユーロピウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0019】
この塗料に用いられる溶媒は、基本的には水を含有するものであり、さらには低沸点有機溶媒を含有するものである。この溶媒中の水の含有率は、10重量%以上かつ50重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以上かつ35重量%以下である。
この低沸点有機溶媒は、1気圧(1atm=1013.25hPa)下における沸点が100℃以下の有機溶媒であり、低級アルコール、ケトン、エーテルの群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
【0020】
この低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールの群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
また、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンの群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
また、エーテルとしては、沸点が100℃以下であるジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテルの群から選択される1種または2種以上が好適に用いられ、特にジエチルエーテルが好ましい。
【0021】
この塗料には、用途や仕様に応じて上記の他、高沸点有機溶媒、樹脂等の有機高分子、硼珪酸亜鉛ガラス等の低融点ガラス、上記以外の無機化合物、分散剤等を含有していてもよい。
この高沸点有機溶媒は、1気圧(1atm=1013.25hPa)下における沸点が100℃を越える水溶性の有機溶媒であり、例えば、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
また、上記以外の無機化合物としては、マグネシウム、亜鉛、セリウム、ガリウム、ストロンチウムの群から選択される1種または2種以上を含む無機化合物が好適に用いられ、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0023】
本発明の塗料は、保護膜形成用物質と、水と、必要に応じて低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、樹脂等の有機高分子、硼珪酸亜鉛ガラス等の低融点ガラス、上記の保護膜形成用物質以外の無機化合物、分散剤等とをビーズミル等の分散機を用いて均一に分散させることで作製することができる。
【0024】
「塗膜の製造方法」
本発明の塗膜の製造方法は、基材上に、本発明の塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理する方法である。
基材としては、熱処理温度に耐える基材であればよく、ガラス基材、透光性のセラミックス基材等が好適に用いられる。
特に、この塗膜を蛍光ランプに適用する場合には、蛍光ランプの仕様に適合可能なガラス管が好適に用いられる。
【0025】
塗布に際しては、形成された後の塗膜の膜厚が0.1μm〜5.0μm、好ましくは0.3μm〜1.5μmとなるような塗布量とすることが好ましい。
塗布方法としては、平面バックライトでも使用できることから、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、メニスカスコート法、吸上げ塗工法、フローコート法等、通常のウエットコート法を用いることができる。特に、蛍光ランプのようにガラス管の内面に塗膜を形成する場合、吸上げ塗工法、フローコート法等が好適に用いられる。
【0026】
次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理する。
乾燥温度は、塗料に含まれる溶媒が充分に散逸する温度であればよく、例えば、常温(25℃)〜100℃である。
この乾燥工程では、塗布膜が充分乾燥すればよく、加熱だけの乾燥でもよく、空気を吹き付けてもよい。具体的には、常温のエアブローでも、熱風を吹き付けてもよい。
熱処理は、500℃〜800℃の範囲の温度にて、蛍光ランプに不具合が生じない範囲で所定時間行う。
【0027】
本発明の塗料は水系塗料であるから、上記の塗布膜を非水系塗料である蛍光体スラリにより製膜された塗布膜と同時に熱処理することも可能である。
この場合、基材上に、本発明の塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、蛍光体スラリを塗布して第2の塗布膜を形成し、この2層構造の塗布膜を大気中にて乾燥または乾燥・熱処理すればよい。
【0028】
「蛍光ランプ」
本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成することで、空隙(ポア)の少ない緻密な保護膜とすることができ、この保護膜上に塗工される蛍光体塗膜を空隙(ポア)の少ない緻密な膜とすることができる。よって、蛍光体層における蛍光発光が安定化した蛍光ランプを得ることが可能である。
図1は、本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す縦断面図、図2は同横断面図であり、図において、1は両端が封止されたガラス管からなる透光性封止管、2は本発明の塗膜であり透光性封止管1の内壁全体(内面)に形成された保護膜、3は赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の混合物からなる蛍光体層、4は透光性封止管1内の両端部側にそれぞれ設けられた電極、5は電極4に電気的に接続されたリード線である。
【0029】
また、Gは透光性封止管1内に封入された封入ガスであり、この封入ガスGは、水銀、及びアルゴン等の希ガスや窒素等の不活性ガスにより構成されている。
また、保護膜2は、電極4、4間に高周波高電圧を印加した場合に、透光性封止管1に含まれている物質とガスGに含まれる水銀とが反応してアマルガムを生成するのを防止する機能を備えている膜である。
【0030】
この蛍光ランプでは、透光性封止管1の内壁全体に本発明の塗料を塗布し、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理することで、空隙(ポア)の少ない緻密な保護膜2を形成したものであるから、この緻密な保護膜2上に製膜された蛍光体層3も空隙(ポア)の少ない緻密な膜となり、よって、蛍光体層3における電子放射性物質による電子放射を安定化することができる。
以上により、蛍光体層における蛍光発光が安定化した蛍光ランプを提供することができる。
【0031】
なお、本実施形態の蛍光ランプでは、透光性封止管1の内壁全体に保護膜2を製膜し、この保護膜2上に蛍光体層3を製膜した構成としたが、この蛍光体層3上にさらに、第2の保護膜を製膜した3層構造としてもよく、また、透光性封止管1の内壁全体に蛍光体層3を製膜し、この蛍光体層3上に保護膜2を製膜した構成としてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
[塗料の調整]
「実施例1」
酸化イットリウム(Y)粉末を、分散剤を含む水中にビーズミルを用いて分散させ、その後ビーズを分離し、酸化イットリウム(Y)を5重量%含む実施例1の酸化イットリウム塗料を作製した。
【0034】
「実施例2」
酸化イットリウム(Y)粉末を、分散剤を含む水と2−プロパノールの混合液(水:2−プロパノール=1:4)中にビーズミルを用いて分散させ、その後ビーズを分離し、酸化イットリウム(Y)を5重量%含む実施例2の酸化イットリウム塗料を作製した。
【0035】
「比較例1」
酸化イットリウム(Y)粉末を、分散剤を含む2−プロパノール中にビーズミルを用いて分散させ、その後ビーズを分離し、酸化イットリウム(Y)を5重量%含む比較例1の酸化イットリウム塗料を作製した。
【0036】
「比較例2」
酸化イットリウム(Y)粉末を、分散剤を含む酢酸−n−ブチル中にビーズミルを用いて分散させ、その後ビーズを分離し、酸化イットリウム(Y)を5重量%含む比較例2の酸化イットリウム塗料を作製した。
【0037】
[塗料の評価]
実施例1、2及び比較例1、2各々の塗料の乾燥速度と、透明性の評価項目である全光線透過率及び曇り度とを下記の方法により評価した。
【0038】
(1)乾燥速度
塗料を、1辺10cmで厚さ2mmのガラス板に膜厚が0.3μmになるように塗布し、得られた塗布膜を室温20℃、湿度50%の条件下に放置し、この塗布膜が全て乾燥するまでの時間を測定した。この塗布膜の評価は、下記の4段階で行った。
◎:60秒未満で乾燥
○:60秒以上〜120秒未満で乾燥
△:120秒以上〜180秒未満で乾燥
×:180秒以上で乾燥
【0039】
(2)全光線透過率
上記の塗布膜の全光線透過率をHaze Meter NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。ここでは、塗布膜が形成されていないガラス板の全光線透過率を100%として補正し、評価を下記の4段階で行った。
◎:99.0%以上〜100%
○:98.0%以上〜99.0%未満
△:95.0%以上〜98.0%未満
×:95.0%以下
【0040】
(3)曇り度
上記の塗布膜のヘーズ値をHaze Meter NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、このヘーズ値に基づき曇り度の評価を下記の4段階で行った。
◎:0%〜0.5%未満
○:0.5%以上〜1.0%未満
△:1.0%以上〜3.0%未満
×:3.0%以上
これらの評価結果を表1に示す。
【0041】
[蛍光ランプの作製]
実施例1、2及び比較例1、2各々の塗料を用いて、実施例1、2及び比較例1、2各々の蛍光ランプを作製した。
【0042】
まず、蛍光ランプ用のガラス管を用意し、このガラス管の内面に吹上げ塗工法を用いて実施例1の塗料を膜厚が0.3μmとなるように塗布し、この塗布膜を大気中、90℃にて5分、エアブローしながら乾燥を行い、塗膜とした。
次いで、この塗膜上に、吹上げ塗工法を用いて蛍光体スラリを膜厚が3μmとなるように塗布し、大気中、90℃にて5分、エアブローしながら乾燥を行った。
次いで、大気中、800℃にて30分間、熱処理を行った。その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、実施例1の蛍光ランプを作製した。蛍光体層としては、赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の混合物と、ニトロセルロースを含む酢酸−n−ブチルとの混合物を用いた。
【0043】
[蛍光ランプの評価]
実施例1、2及び比較例1、2各々の蛍光ランプの初期輝度及び保護作用を下記の方法により評価した。測定装置は、全光束測定装置 OSP−150(オプトシリウス社製)を用いた。
【0044】
(1)初期輝度
蛍光ランプを20本作製し、これらの蛍光ランプの明るさ(光束)を測定し、基準値として比較例1の蛍光ランプ20本の明るさの平均値を100としたときの数値を下記の4段階で評価した。
◎:105以上
○:102以上〜105未満
△:98以上〜102未満
×:98未満
【0045】
(2)保護作用
蛍光ランプを20本作製し、これらの蛍光ランプを2000時間連続点灯した後の明るさ(光束)を測定し、基準値として比較例1の蛍光ランプ20本の明るさの平均値を100としたときの数値を下記の4段階で評価した。
◎:105以上
○:102以上〜105未満
△:98以上〜102未満
×:98未満
これらの評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
これらの評価結果によれば、実施例1、2は、全光線透過率、曇り度、初期輝度及び保護作用共に優れており、空隙の少ない緻密な膜が得られていることが分かった。
一方、比較例1、2は、実施例1、2に比べて、乾燥速度は速いものの全光線透過率、曇り度、初期輝度共に劣っており、保護作用についてもバラツキが大きいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す横断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 透光性封止管
2 電子放射機能を有する保護膜
3 蛍光体層
4 電極
5 リード線
G 封入ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護膜形成用物質と水とを含有してなることを特徴とする塗料。
【請求項2】
前記保護膜形成用物質は、イットリウム、アルミニウム、ユーロピウム、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、ケイ素、ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上の元素を含む無機化合物であることを特徴とする請求項1記載の塗料。
【請求項3】
さらに、低沸点有機溶媒を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の塗料。
【請求項4】
前記低沸点有機溶媒は、低級アルコール、ケトン、エーテルの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載の塗料。
【請求項5】
前記低級アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項4記載の塗料。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の塗料を用いて形成してなることを特徴とする塗膜。
【請求項7】
基材上に、請求項1ないし5のいずれか1項記載の塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥または乾燥・熱処理することを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の塗膜を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−150420(P2008−150420A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336922(P2006−336922)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】