説明

塗料用流動調整剤及びそれを含有する非水系塗料

【課題】非水系塗料を掻き混ぜたときの流動性を高め、それを塗布した後の流動性を低下させ、しかもその塗装面に不均一な厚さや液滴状の荒れや凝集模様の凹凸を生じさせず、塗装面の平滑を保持させるために、非水系塗料に添加される流動調整剤を提供する。
【解決手段】非水系塗料用流動調整剤は、ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸を含む炭素数2〜22の脂肪族カルボン酸、及び炭素数2〜16のジアミンとダイマージアミンとの何れかのジアミンを縮合させた低分子量アミド化合物と、同種の該カルボン酸、同種の該ジアミン及び重量平均分子量2000〜100000のカルボキシル基含有ポリマーを縮合させた高分子量アミド化合物とを含有する微粒子が、有機溶媒中に分散されて膨潤している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系塗料を掻き混ぜるときの流動性を高め、それを塗布した後の流動性を低下させる塗料用流動調整剤、及びその流動調整剤を含有し綺麗に塗装できる非水系塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建材や建築物や日用品原材を塗装するのに用いられる非水系塗料は、顔料や樹脂や有機溶媒を含んだものである。静置によって非水系塗料中の顔料等が沈降し不均質になり易いので、非水系塗料を塗装する直前に十分に掻き混ぜる必要がある。また、厚く塗装したり垂直に塗装したりする際に塗装表面で塗料が垂れて厚さが不均一になったり液滴状の荒れが生じたりその所為で光沢が無くなったりしないように、さらに顔料の分離による色分かれが起こらないように、顔料を分散させたまま塗装面に確りと塗料を保持させる必要がある。
【0003】
そこで非水系塗料を掻き混ぜたときの流動性を高め、それを塗布した後の流動性を低下させるという揺変性を発現させるために、非水系塗料に流動調整剤が添加される。
【0004】
そのような流動調整剤として、特許文献1に、脂肪族プライマリージアミンと、12−ヒドロキシステアリン酸及び脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られる脂肪族ポリアミドワックスを、粉砕して、有機溶媒存在下に温熱膨潤させた非水系塗料用流動調整剤が、開示されている。特許文献2に、水素添加ひまし油又はそれを含む有機酸混合物とアミンとから得られるアミドワックス、及び酸価が約2〜50である乳化性ポリエチレンワックスを、固体粒子が分散した非水流体系に混在させるという非水流体系レオロジー特性改善方法が、開示されている。
【0005】
顔料、樹脂、溶剤とりわけ弱溶解性溶剤と共に従来のアミド系の流動調整剤を十分量添加した塗料は、流動調整剤の凝集力によって十分な揺変性を発現し、掻き混ぜ易くしかも垂れ難くなっている反面、その凝集力の所為で、塗装面に凹凸の凝集模様を出現させ、かえって塗装面が荒れてしまうという問題がある。
【0006】
一方、その流動調整剤を少量添加したり分散剤を多量に添加したりした塗料は、凝集力が弱まって塗装面に凝集模様を出現させない反面、揺変性が不十分となり垂れ易くなるので、厚く塗装できなくなったり、塗装面に液滴状の荒れや凹凸を生じ不均一になったりしてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平5−271585号公報
【特許文献2】特開昭50−27784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、非水系塗料を掻き混ぜたときの流動性を高め、それを塗布した後の流動性を低下させ、しかもその塗装面に不均一な厚さや液滴状の荒れや凝集模様の凹凸を生じさせず、塗装面の平滑を保持させるために、非水系塗料に添加される流動調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の非水系塗料用流動調整剤は、ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸を含む炭素数2〜22の脂肪族カルボン酸、及び炭素数2〜16のジアミンとダイマージアミンとの何れかのジアミンを縮合させた低分子量アミド化合物と、同種の該カルボン酸、同種の該ジアミン及び重量平均分子量2000〜100000のカルボキシル基含有ポリマーを縮合させた高分子量アミド化合物とを含有する微粒子が、有機溶媒中に分散されて膨潤していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の非水系塗料用流動調整剤は、請求項1に記載されたもので、該微粒子が、重量比で、該低分子量アミド化合物:該高分子量アミド化合物の99〜50:1〜50を含有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の非水系塗料用流動調整剤は、請求項1に記載されたもので、該脂肪族カルボン酸が、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸、又は同種の該脂肪族ジカルボン酸とダイマー酸とを含んでいることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の非水系塗料用流動調整剤は、請求項1に記載されたもので、該ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸が、水素添加したひまし油の加水分解物であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の非水系塗料用流動調整剤は、請求項1に記載されたもので、該カルボキシル基含有ポリマーが、ポリアルキレンを酸化した化合物と、カルボキシル基含有化合物モノマーを共存させつつ、共重合モノマーに共重合され、又は重縮合モノマーに重縮合された化合物とから選ばれる酸化ポリアルキレンであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の非水系塗料は、請求項1〜5の何れかに記載の非水系塗料用流動調整剤を0.1〜20重量%と、塗料用樹脂と、該樹脂を溶解又は分散する溶剤とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非水系塗料用流動調整剤は、非水系塗料に添加されていると、それを素早く掻き混ぜる際の高い剪断速度での流動性を高くし、それを塗布した後の低い剪断速度での流動性を低くするという優れた揺変性を、発現させる。
【0016】
従って、本発明によれば、その揺変性は、高分子量アミド化合物を含有していない従来の低分子量アミド化合物からなる流動調整剤と同等以上である。しかも、この流動調整剤を含有する非水系塗料は、それを塗布した塗装面に不均一な厚さや液滴状の荒れや凝集による凝集模様の凹凸や色分かれを生じさせず、従来のアミド系の流動調整剤よりも優れた塗装面の平滑性の保持効果を奏する。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の非水系塗料用流動調整剤の好ましい実施の一態様は、12−ヒドロキシステアリン酸のようなヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸を主成分とする水素添加ひまし油加水分解物である脂肪族カルボン酸、及びジアミンである脂肪族ジアミンを縮合させた低分子量アミド化合物と、同種の脂肪族カルボン酸、同種のジアミン、及びカルボキシル基含有ポリマーを縮合させた高分子量アミド化合物とを、99〜50:少なくとも1好ましくは1〜50の重量比で含有する微粒子の5〜50重量部好ましくは10〜30重量部が、有機溶媒例えば弱溶解性溶媒の95〜50重量部に分散されて膨潤しているというものである。
【0019】
従来のような高分子量アミド化合物を含有していない低分子量アミド化合物からなる流動調整剤や、低分子量アミド化合物と適度な酸価を有する乳化性ポリエチレンワックスのようなカルボキシル基含有ポリマーとの単なる混合物からなる流動調整剤は、塗布した塗装面に不均一な厚さや液滴状の荒れや凝集による凝集模様の凹凸や色分かれを生じさせてしまう。特に後者は低分子量アミド化合物に特有な揺変性と、カルボキシル基含有ポリマーに特有な凝集緩和性とが、独立して発現されるため、互いに悪影響を及ぼし、かえって揺変作用と凝集緩和作用とを低減させてしまう。
【0020】
しかし、本発明のように、低分子量アミド化合物と、カルボキシル基含有ポリマーを化学的に縮合させた高分子量アミド化合物とを含有する微粒子が、有機溶媒中に分散されて膨潤させると、低分子量アミド化合物に特有な揺変性と、カルボキシル基含有ポリマーに特有な凝集緩和性とを、互いに損なうことなく発現させることができる。
【0021】
なお、脂肪族カルボン酸は、水素添加ひまし油加水分解物を例に示したが、ヒドロキシ飽和脂肪族モノカルボン酸を含むものであればよく、具体的には炭素数2〜22のヒドロキシ飽和脂肪族モノカルボン酸の単一又は複数の混合物が挙げられる。そのラセミ体又は光学活性体のヒドロキシ飽和脂肪族モノカルボン酸、例えば(dl)、(d)又は(l)−12−ヒドロキシステアリン酸であってもよく、その一方の光学活性体が多い混合物であってもよい。
【0022】
脂肪族カルボン酸は、ひまし油加水分解物のようにリシノール酸を主成分とする不飽和脂肪族モノカルボン酸を含むものであってもよく、具体的には炭素数2〜22のヒドロキシ不飽和脂肪族モノカルボン酸の単一又は複数の混合物も挙げられる。そのラセミ体又は光学活性体のヒドロキシ不飽和脂肪族モノカルボン酸、例えば(dl)、(d)又は(l)−12−リシノール酸であってもよく、その一方の光学活性体が多い混合物であってもよい。
【0023】
脂肪族カルボン酸は、前記のヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸のみからなっていてもよいが、別なカルボン酸を含んでいてもよい。別なカルボン酸は、例えば、脂肪族基の途中に又は末端にカルボキシル基を二つ有し、直鎖状、分岐鎖状又は環状であって飽和又は不飽和のもので、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸、ダイマー酸、それらの混合物が挙げられる。より具体的には、脂肪族ジカルボン酸の例として、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環式ジカルボン酸、ダイマー酸などを使用できるがこれらに限られるものではない。ダイマー酸は、大豆油、トール油、亜麻仁油、綿実油などの植物油から得られる不飽和脂肪酸を重合したもので、二量体酸の他にモノマー酸や三量体酸を少量含んでいてもよい。
【0024】
ジアミンとして、脂肪族ジアミンを例に示したが、直鎖状、分岐鎖状又は環状であって飽和又は不飽和のもので、炭素数2〜16の脂肪族ジアミン又は芳香族ジアミンであってもよく、ダイマージアミンであってもよく、それらの単一又は複数の混合物であってもよい。また第1アミノ基を二つ有するジアミン、第2アミノ基を二つ有するジアミンであってもそれらの混合物であってもよく、第3アミノ基を有するジアミンを含むものであってもよい。ジアミンは、炭素数2〜14の脂肪族ジアミンが好ましい。ジアミンの例としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、ダイマージアミン、などを使用できるがこれらに限られるものではない。ダイマージアミンは、ダイマー酸誘導体として、ダイマー酸のカルボキシル基を化学反応させて得ることができる。
【0025】
カルボキシル基含有ポリマーは、例えば、酸化ポリアルキレンが挙げられる。具体的には、酸化ポリエチレンのような酸化ポリアルキレンや、不飽和基を有するカルボキシル基含有化合物モノマーと不飽和基を有する共重合モノマーとの共重合体や、重縮合性官能基を有するカルボキシル基含有化合物モノマーと重縮合性官能基を有する重縮合モノマーとの重縮合体が挙げられる。カルボキシル基含有ポリマーは、流動調整剤の揺変性等の物性を損なわない限り、モノマーの種類や比を任意に選択したものであってもよい。カルボキシル基含有ポリマーは、酸価が10以上、好ましくは20〜140の共重合体又は重縮合体であることが好ましい。
【0026】
また、カルボキシル基含有ポリマーは、より具体的には、ポリアルキレンであるポリエチレンをオゾン酸化法で処理した酸化ポリエチレンのような酸化ポリアルキレンが挙げられる。
【0027】
また、カルボキシル基含有ポリマーは、より具体的には、(メタ)アクリレート誘導体モノマー、アクリルアミド誘導体モノマー、エチレンのようなビニル含有炭化水素誘導体モノマー、ビニル基含有芳香族炭化水素誘導体モノマー、ビニルエステル誘導体モノマーのようなカルボキシル基非含有不飽和モノマーと、アクリル酸やメタクリル酸のような(メタ)アクリル酸モノマー、マレイン酸モノマー、無水マレイン酸モノマーのような不飽和基を有するカルボキシル基含有化合物モノマーとを、共付加重合させた共重合体が挙げられる。例えばカルボキシル基含有化合物モノマーで変性された共重合体、より具体的には、カルボン酸変性アクリル樹脂、カルボン酸変性ポリエチレン樹脂、カルボン酸変性ポリプロピレン樹脂、カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、カルボン酸変性エチレン−アクリル共重合樹脂、カルボン酸変性ポリスチレン樹脂、カルボン酸変性スチレン−アクリル共重合樹脂が挙げられる。これら変性された共重合体は、未変性の共重合体との混合物であってもよい。
【0028】
また、カルボキシル基含有ポリマーは、より具体的には、多塩基酸例えばテレフタル酸と、多価アルコール例えばグリコールと、重縮合性官能基を有する重縮合モノマー例えば2,2−ビスヒドロキシメチルプロピオン酸とが重縮合した変性ポリエステル樹脂;有機ジイソシアナートと、多価アルコールと、重縮合性官能基を有する重縮合モノマーとが重縮合した変性ポリウレタン樹脂;アルキレンオキシド例えばエチレンオキシドが重縮合し、その末端が重縮合性官能基を有する重縮合モノマー例えば(メタ)アクリル酸に付加した変性ポリアルキレンオキシドも挙げられる。これら変性された重縮合体は、未変性の重縮合体との混合物であってもよい。
【0029】
溶媒は特に制限されないが、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン等の環式飽和炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸プロピル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸アミル、コハク酸メチル、アジピン酸メチルのようなエステル系溶媒のような媒体が挙げられる。それらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせ混合して用いてもよい。溶媒は、これらに、さらにメタノール、エタノールのような脂肪族アルコールやベンジルアルコールのような環状アルコール等を、単独あるいは2種類以上を組み合わせて混合したものであると、微粒子の膨潤を一層促進し、揺変性が一層優れたペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られる。芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒や環式飽和炭化水素系溶媒やエステル系溶媒と、脂肪族アルコールや環状アルコールとは、例えば、重量比で、10〜95:0〜85、好ましくは60〜90:5〜30である。
【0030】
この非水系塗料用流動調整剤は、例えば、以下のようにして調製される。
【0031】
先ず、脂肪族カルボン酸の1モル当量と、脂肪族ジアミンの0.5モル当量とを、無溶媒で、常圧又は真空下で、160〜230℃に加熱しながら、2〜10時間、脱水縮合反応させる。すると、脂肪族カルボン酸と脂肪族ジアミンとが縮合し、酸価及びアミン価が20以下であり、淡黄色〜淡褐色の固体で、その融点が100〜160℃であって熱溶融している低分子量アミド化合物となる。それに対して少なくとも1重量%、好ましくは1〜50重量%、一層好ましくは1〜10重量%のカルボキシル基含有ポリマーを加え、さらに1〜5時間、脱水縮合反応させる。すると、その低分子量アミド化合物のうちの一部が、それの未反応のアミノ基と、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との脱水縮合反応により、高分子量アミド化合物となる。その結果、高分子量アミド化合物と低分子量アミド化合物とを含有し、酸価が30以下、好ましくは5〜20で、アミン価が20以下好ましくは7以下であるワックスが得られる。次いでそのワックスを粉砕機でミクロンオーダー例えば20μm以下、好ましくは10μm以下に粉砕した微粒子にする。その微粒子と、溶媒とを配合し、その微粒子を、ディスパーを用いた機械的な分散方法により、又はガラスビーズ等のメディアを利用した湿式分散機を用いた分散方法により、溶媒へ分散させつつ、温熱下、例えば溶媒に応じ40〜100℃好ましくは50〜90℃に加熱しながら、加熱条件や溶媒に応じて適切な時間をかけて、その溶媒に含浸させる。すると、微粒子が膨潤し、ペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られる。
【0032】
脂肪族カルボン酸と、脂肪族ジアミンとを脱水縮合させた後、カルボキシル基含有ポリマーを加えてさらに脱水縮合させた例を示したが、脂肪族カルボン酸と、脂肪族ジアミンと、カルボキシル基含有ポリマーとを同時に混合して脱水縮合させてもよい。
【0033】
本発明の非水系塗料は、例えば、着色する場合に配合される顔料として酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、銅・クロムブラック、コバルトブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、モリブデートオレンジ、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、チタンイエロー、群青、紺青、コバルト・アルミブルー、クロムグリーン、コバルトグリーン等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料等が挙げられる。これらの顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。顔料の混合比率は樹脂成分の固形分100重量部に対し、通常2〜300重量部、好ましくは5〜200重量部である。溶剤成分としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンのほか、テルピン油やミネラルターペン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非水系溶剤が挙げられる。塗料組成分として使用する際は、これらの溶剤を1種もしくは2種類以上を組み合わせ混合して用いてもよい。これらの溶剤は顔料や樹脂の種類に応じて、適切な量を混合する。溶剤の混合比率は、塗料全体に対し、20〜80重量部である。また、塗料を実際に基材に塗装する際に作業性を良くするために更に0〜30重量部程度希釈することもできる。さらに、塗料組成分として必要に応じて通常塗料に配合することが可能な各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、体質顔料、硬化剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、ドライヤー、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、触媒等が挙げられる。
【0034】
この溶剤に可溶な樹脂は、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂が挙げられ、単独で用いてもよく複数混合して用いてもよい。非水分散型樹脂は、前述の脂肪族炭化水素溶剤に樹脂粒子として分散しているものであり、脂肪族炭化水素系溶剤に溶解可能樹脂部分と、溶解しない樹脂部分の両方を併せもつものである。
【0035】
非水系塗料は、これらを配合し、混練することにより得られるが、素材としてはこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を適用する非水系塗料用流動調整剤、及びそれを用いた非水系塗料とを調製した実施例と、本発明を適用外の非水系塗料用流動調整剤、及びそれを用いた非水系塗料とを調製した比較例とを示す。
【0037】
(実施例1)
(低分子量アミド化合物と高分子量アミド化合物とを含有する微粒子の調製)
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12−ヒドロキシステアリン酸600.0重量部を加え、80〜100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5〜8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価4.2、アミン価9.4の低分子量ジアミド化合物を得た。更に、重量平均分子量10000、酸価80mgKOH/gのプロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマーを、68.0重量部を加え、170℃で1〜2時間、脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させたところ、淡黄色で低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物(酸価6.0、アミン価4.2)をワックス状生成物として得た。得られた生成物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化した微粒子を得た。
【0038】
(微粒子の分散による懸濁液の調製)
密閉容器に、ミネラルターペン120重量部、ベンジルアルコール40重量部、調製した微粒子40重量部を加え、10〜20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。
【0039】
(懸濁液の加熱による非水系塗料用流動調整剤の調製)
懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、ペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られた。
【0040】
(実施例2)
(低分子量アミド化合物と高分子量アミド化合物とを含有する微粒子の調製)
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12−ヒドロキシステアリン酸600.0重量部を加え、80〜100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンである1,4ジアミノブタン88.0重量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5〜8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価3.4、アミン価7.3の低分子量ジアミド化合物を得た。更に、カルボキシル基含有ポリマーとして重量平均分子量10000、酸価41mgKOH/gのエチレン・アクリル酸共重合体である酸化ポリエチレンを、32.6重量部を加え、170℃で1〜2時間、脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させたところ、淡黄色で低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物(酸価5.5、アミン価3.8)をワックス状生成物として得た。得られた生成物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化した微粒子を得た。
【0041】
(微粒子の分散による懸濁液の調製)
密閉容器に、ミネラルターペン120重量部、ベンジルアルコール40重量部、調製した微粒子40重量部を加え、10〜20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。
【0042】
(懸濁液の加熱による非水系塗料用流動調整剤の調製)
懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、ペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られた。
【0043】
(比較例1)
(低分子量アミド化合物を含有する微粒子の調製)
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12−ヒドロキシステアリン酸600.0重量部を加え、80〜100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0重量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下で5〜8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させたところ、淡黄色で酸価4.5、アミン価8.8の低分子量ジアミド化合物を得た。得られたジアミド化合物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化した微粒子を得た。
【0044】
(微粒子の分散による懸濁液の調製)
密閉容器に、ミネラルターペン120重量部、ベンジルアルコール40重量部、調製した微粒子40重量部を加え、10〜20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。
【0045】
(懸濁液の加熱による非水系塗料用流動調整剤の調製)
懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、ペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られた。
【0046】
(比較例2)
比較例1のヘキサメチレンジアミンの代わりに1,4ジアミノブタン88.0重量部を用い、淡黄色のジアミド化合物(酸価4.7、アミン価7.1)を得たこと以外は比較例1と同様にしてペースト状の非水系塗料用流動調整剤を得た。
【0047】
(比較例3)
(低分子量アミド化合物とカルボキシル基含有ポリマーとを含有する微粒子の調製)
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12−ヒドロキシステアリン酸600.0重量部を加え、80〜100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0重量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5〜8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価4.2、アミン価9.4の低分子量ジアミド化合物を得た。更に、重量平均分子量10000、酸価80mgKOH/gであるプロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマーを、68.0重量部を加え、1〜5分溶融させ、低分子量ジアミド化合物とカルボキシル基含有ポリマーとの混合物(酸価11.7、アミン価9.4)を得た。得られた混合物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化した微粒子を得た。
【0048】
(微粒子の分散による懸濁液の調製)
密閉容器に、ミネラルターペン120重量部、ベンジルアルコール40重量部、調製した微粒子40重量部を加え、10〜20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。
【0049】
(懸濁液の加熱による非水系塗料用流動調整剤の調製)
懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、ペースト状の非水系塗料用流動調整剤が得られた。
【0050】
実施例1〜2、及び比較例1〜3で得られた非水系塗料用流動調整剤について、以下のようにして性能評価試験を行った。
【0051】
(揺変付与性性能評価試験)
ポリオール樹脂66.7重量部に、酸化チタン29.6重量部を加え、サンドグラインダーで十分に分散した塗液をミルベースとする。ミルベース100重量部に実施例1〜2及び、比較例1〜3で得られた非水系塗料用流動調整剤10.0重量部をそれぞれ添加し、ディスパー2000rpmで10分間分散した分散液を得た。更にミネラルターペン可溶NAD(非水ディスパージョン)樹脂100重量部を加え、ディスパー2000rpmで2分間分散して非水系塗料用流動調整剤を含有する非水系塗料サンプルを得た。なお、ペースト状揺変性付与剤を添加していない塗液をブランクの塗液サンプルとした。各非水系塗料サンプルを、B型粘度計により、6rpm及び60rpmでの粘度(mPa・s)を測定した。6rpmにおける粘度を、60rpmにおける粘度で除し、TI値(チクソトロピックインデックス:Thixotropic Index)を算出した。TI値は高いほど揺変性が優れていることを示す指標である。その結果を表1に示す。
【0052】
(垂れ面の凝集状態評価試験)
揺変付与性性能評価試験の際に得た非水系塗料サンプル100.0重量部に、イソシアネート樹脂9.3重量部を加え、更に希釈溶剤としてミネラルターペン30.0重量部を添加し、ディスパー2000rpmで1分間攪拌した。これにより、過剰に希釈され、垂れが発生しやすい凝集状態評価試験用塗液とした。これをアルミ塗板上に流して塗装し、直ちに垂直に塗板を立て、1日間室温で乾燥後、塗膜の状態を目視で観察することにより、垂れ面の凝集状態を評価した。凝集模様が観察された塗膜を×、凝集模様が観察されない塗膜を○とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、本発明を適用する実施例の非水系塗料用流動調整剤を用いた塗料サンプルは、本発明を適用外の比較例の非水系塗料用流動調整剤を用いた塗料サンプルに比べると、揺変付与性と垂直面でのタレ防止性能とがいずれも優れていた。従って、実施例の塗料サンプルは、比較例の塗料サンプルに比べ、適度な凝集力を有していることに起因して、垂れ難いうえ、凝集模様が出現しないから、塗装面が綺麗である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の非水系塗料用流動調整剤は、建材や建築物や日用品原材を塗装したり、ペンやマーカーのインキとして充填したりする非水系塗料に、添加して用いられる。この流動調整剤を含有する非水系塗料は、建材や建築物や日用品原材を塗装、塗布、噴霧して表面保護をしたり着色したり、ペン等に充填して描画したりするのに用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸を含む炭素数2〜22の脂肪族カルボン酸、及び炭素数2〜16のジアミンとダイマージアミンとの何れかのジアミンを縮合させた低分子量アミド化合物と、同種の該カルボン酸、同種の該ジアミン及び重量平均分子量2000〜100000のカルボキシル基含有ポリマーを縮合させた高分子量アミド化合物とを含有する微粒子が、有機溶媒中に分散されて膨潤していることを特徴とする非水系塗料用流動調整剤。
【請求項2】
該微粒子が、重量比で、該低分子量アミド化合物:該高分子量アミド化合物の99〜50:1〜50を含有することを特徴とする請求項1に記載の非水系塗料用流動調整剤。
【請求項3】
該脂肪族カルボン酸が、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸、又は同種の該脂肪族ジカルボン酸とダイマー酸とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の非水系塗料用流動調整剤。
【請求項4】
該ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸が、水素添加したひまし油の加水分解物であることを特徴とする請求項1に記載の非水系塗料用流動調整剤。
【請求項5】
該カルボキシル基含有ポリマーが、ポリアルキレンを酸化した化合物と、カルボキシル基含有化合物モノマーを共存させつつ、共重合モノマーに共重合され、又は重縮合モノマーに重縮合された化合物とから選ばれる酸化ポリアルキレンであることを特徴とする請求項1に記載の非水系塗料用流動調整剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の非水系塗料用流動調整剤を0.1〜20重量%と、塗料用樹脂と、該樹脂を溶解又は分散する溶剤とを含んでいることを特徴とする非水系塗料。

【公開番号】特開2008−260834(P2008−260834A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104066(P2007−104066)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】