説明

塗料用組成物

【課題】 塗膜物性(例えば耐汚染性、耐摩耗性等)を損なうことなく、表面平滑性に優れた硬化塗膜を与える塗料用組成物を提供する。
【解決手段】 シリカ(A)、熱硬化型樹脂(B1)および活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化型樹脂(B)、ワックス(C)および有機溶剤(D)からなり、25℃における(C)の(D)への溶解度が(D)の重量に基づいて0.1%以上であることを特徴とする塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用組成物に関する。さらに詳しくは、表面平滑性に優れた塗膜を与える塗料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料は、塗膜面に、はじき、クレーター、フィッシュアイ、曇り等がなく、平滑な外観を有することが必要不可欠となっており、この機能を満たすための塗料用添加剤としては、シリコーン(例えば、特許文献1参照)、アクリル共重合物(例えば、特許文献2参照)、セルロース(例えば、特許文献3参照)等が提唱されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−241698号公報
【特許文献2】特開2006− 56952号公報
【特許文献3】特開2004−307716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に塗料用組成物は極性が高いため、上記シリコーンを添加したものでは、樹脂との相溶性が悪く、はじきが発生する問題があり、また、これを改良して、樹脂との相溶性を重視したアクリル共重合物やセルロースを添加したものでは、塗膜物性(例えば耐汚染性、耐摩耗性等)には問題はないものの、表面平滑性が不十分である。
本発明の目的は、塗膜の物性を損なうことなく、表面平滑性に優れた塗料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、シリカ(A)、熱硬化型樹脂(B1)および活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化型樹脂(B)、ワックス(C)および有機溶剤(D)からなり、(C)が25℃で(D)に溶解することを特徴とする塗料用組成物;該組成物を硬化させてなる硬化物;該硬化物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する被覆物;並びに、予めワックス(C)をシリカ(A)に熱融着させた後、熱硬化型樹脂(B1)および活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化型樹脂(B)および有機溶剤(D)を加えて混練することを特徴とする該組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗料用組成物は、下記の効果を奏する。
(1)塗工性に優れ、塗膜に、はじき、クレーター、フィッシュアイ、曇り等が発生しない。
(2)該組成物を用いた塗膜は、表面平滑性、耐汚染性および耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるシリカ(A)は、特に限定されないが、例えば、合成シリカ(湿式法沈殿シリカ、ゲル状シリカ、コロイダルシリカおよび超微粒子状無水シリカ等)および天然シリカ(結晶性シリカ、破砕溶融シリカおよび球状溶融シリカ等)が挙げられる。 これらのうち塗料組成物中での分散安定性の観点から好ましいのは、合成シリカ、さらに好ましいのは湿式法沈殿シリカおよび超微粒子状無水シリカである。
【0008】
(A)の体積平均粒径は、通常0.002〜20μm、組成物の塗工安定性および組成物中での分散安定性の観点から好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.05〜8μmである。
ここにおいて体積平均粒径は、SKレーザー粒度分布測定機[セイシン企業(株)製]を用いて下記の方法で測定して得られる値である。
(体積平均粒径測定法)
分散媒(イオン交換水)100gに、微粒子状の試料を50〜100mg加えて混合し、超音波(出力200Hz)を60秒間照射して試料を分散させた後、SKレーザー粒度分布測定機を用いて測定する。
【0009】
本発明における熱硬化型樹脂(B1)としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)としては、例えば(ポリ)(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらの(B1)、(B2)は、単独または2種以上併用してもよい。
【0010】
これらのうち塗膜の機械物性、反応速度の観点から好ましいのは、(B2)であり、さらに好ましいのは、(ポリ)(メタ)アクリレートである。
【0011】
(B1)のうち、2液硬化型ポリウレタン樹脂としては、分子中に水酸基を2個以上有するポリオールからなる第(1)液と、ポリイソシアネートからなる第(2)液を水酸基とイソシアネート基との当量比(OH/NCO比)が0.7〜1.5になるように配合したもの等、例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社刊(1987)」に記載のものが挙げられる。
【0012】
該熱硬化型エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、エポキシ基と反応する活性水素を分子中に2個以上有するモノ−またはポリ−アミンとをエポキシ基とアミノ基の活性水素との当量比が0.7〜1.5になるように配合したもの等、例えば「エポキシ樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社刊(1987)」に記載のものが挙げられる。
【0013】
該不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基(2価またはそれ以上)酸[炭素数(以下Cと略記)4〜10、例えばマレイン酸、フマル酸]と多価(2価またはそれ以上)アルコール[C2〜30、例えばエチレングリコール、グリセリン(以下それぞれEG、GRと略記)等]を水酸基とカルボキシル基の当量比が0.7〜1.5になるように配合したもの等、例えば「ポリエステル樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社刊(1988)」に記載のものが挙げられる。
【0014】
(B2)のうち、(ポリ)(メタ)アクリレートには、モノ(メタ)アクリレートおよびポリ(2価〜6価またはそれ以上)(メタ)アクリレートが含まれ、それぞれ以下のものが挙げられる。
(1)モノ(メタ)アクリレート
(1−1)脂肪族(C1〜30)、脂環式(C6〜30)および芳香脂肪族(C7〜10)1価アルコールの(メタ)アクリレート
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等;
(1−2)脂肪族(C1〜30)、脂環式(C6〜30)および芳香脂肪族(C7〜10)1価アルコールのアルキレンオキシド(以下、AOと略記)1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
ラウリルアルコールのエチレンオキシド(以下、EOと略記)2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのプロピレンオキシド(以下、POと略記)3モル付加物の(メタ)アクリレート、その他上記(1−1)における1価アルコールのAO付加物の(メタ)アクリレート等;
(1−3)C6〜30の[アルキル(C1〜20)]フェノールのAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等;
【0015】
(2)ジ(メタ)アクリレート
(2−1)ポリオキシアルキレン(C2〜4)〔分子量106以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]3,000以下〕のジ(メタ)アクリレート
ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(Mn400)、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(Mn200)およびポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記)(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−2)2官能フェノール化合物のAO(2〜30モル)付加物のジ(メタ)アクリレート
2官能フェノール化合物[C6〜18、例えば単環フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)、縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール化合物]のAO付加物[レゾルシノールのEO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシナフタレンのPO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、−Fおよび−Sの、EO2モル、およびPO4モル各付加物等]の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−3)脂肪族2価アルコール(C2〜30)のジ(メタ)アクリレート
ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略記)および1,6−ヘキサンジオール(以下、HDと略記)の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−4)脂環含有2価アルコール(C6〜30)のジ(メタ)アクリレート
ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートおよび水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等;
【0016】
(3)ポリ(3価〜6価またはそれ以上)(メタ)アクリレート
(3−1)C3〜40の多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコールおよびそのAO付加物のポリ(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパン(以下、TMPと略記)トリ(メタ)アクリレート、GRトリ(メタ)アクリレート、TMPのEO3モルおよびPO3モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下、PEと略記)のトリ(メタ)アクリレート、PEのテトラ(メタ)アクリレート、PEのEO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(以下、DPEと略記)のヘキサ(メタ)アクリレート等;
【0017】
(4)ポリエステル(メタ)アクリレート
多価(2価〜4価またはそれ以上)カルボン酸、多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコールおよび(メタ)アクリロイル基含有化合物のエステル化反応により得られる複数のエステル結合と複数の末端(メタ)アクリロイル基を有する分子量150以上かつMn4,000以下のポリエステル(メタ)アクリレート等;
【0018】
(5)ウレタン(メタ)アクリレート
多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコール、ポリ(2価〜4価またはそれ以上)イソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートのウレタン化反応により得られる複数のウレタン結合と複数の末端(メタ)アクリロイル基を有する分子量500以上かつMn7,000以下のポリウレタン(メタ)アクリレート等;
【0019】
(6)エポキシ(メタ)アクリレート
多価(2価〜4価またはそれ以上)エポキシドと(メタ)アクリル酸の反応により得られる分子量400以上かつMn5,000以下のエポキシ(メタ)アクリレート等;
【0020】
(7)主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエン重合体
ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート(Mn500〜500,000)等
(8)ジメチルポリシロキサンの主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するシロキサン重合体[Mn300〜20,000、例えばジメチルポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート]
これら(1)〜(8)の(ポリ)(メタ)アクリレートのうち、後述する硬化物の強靭性の観点から好ましいのは(2)〜(6)である。
【0021】
(B2)のうち、脂環式エポキシ樹脂としては、次のものが挙げられる。これらのうち硬化性、硬化物の剛性の観点から好ましいのは2官能脂環式エポキシ樹脂である。
(1)単官能脂環式エポキシ樹脂
シクロヘキサンオキシド、シクロペンタンオキシド、α−ピネンオキシド3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等;
(2)2官能脂環式エポキシ樹脂
2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス〔5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル〕エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル等;
(3)多官能(3価〜14価またはそれ以上)脂環式エポキシ樹脂
3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールのε−カプロラクトン(1〜10モル)付加物と多価(3〜14価)アルコール(GR、TMP、PE、DPE、ヘキサペンタエリスリトール)のエステル化物等。
【0022】
本発明におけるワックス(C)は、25℃において後述する有機溶剤(D)への溶解度が(D)の重量に基づいて0.1%以上、好ましくは0.5〜20%のものである。該溶解度が0.1%未満では表面平滑性が悪くなる。
また、25℃における(C)の(B)への溶解度は、硬化後の塗膜面へのブリードアウトおよび塗膜の表面平滑性付与の観点から、(B)の重量に基づいて好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。
ここにおいて、(C)の(D)への溶解度は、25℃、撹拌下で(D)100gに(C)を加えていき、不均一になった時点で、ろ過し、ろ液中の固形分濃度から算出する方法で測定され、(C)の(B)への溶解度は、25℃で(B)100gに(C)を10g加え1時間撹拌した後、不溶解分をろ別し、ろ液から溶解分をヘキサンで抽出し、ヘキサン溶液を濃縮した後、残留物中のワックス量を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法で定量する方法で測定される。
【0023】
(C)としては、例えば、植物ワックス(カルナウバワックス 、キャンデリラワックス 、ライスワックス 、木蝋等) 、動物ワックス(蜜蝋、鯨蝋等) 、鉱物ワックス(モンタンワックス等)、合成ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン等、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体等)が挙げられる。
これらのうち、塗膜の表面平滑性および耐汚染性の観点から好ましいのは、合成ワックス、さらに好ましいのは、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体である。
【0024】
(C)のMnは、塗膜の表面平滑性および耐汚染性の観点から好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜2,000である。(C)の融点は、塗膜の表面平滑性および耐汚染性の観点から好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃である。
ここにおいて、融点は、示差走査熱量計(以下DSCと略記)[DSC−60、(株)島津製作所製]で測定して得られる値である。
【0025】
本発明の塗料用組成物の製造に際しての、(C)の適用方法としては、例えば不溶解成分を含むワックスを後述する有機溶剤(D)に加え、25℃で2〜12時間撹拌し、不溶解成分を濾別した後、濾液をそのまま配合する方法、濾液から溶剤を取り除き、ワックス成分を単離した後、再度配合する方法が挙げられる。
また、(D)に不溶解の成分を含むワックス(C)をそのまま、シリカ(A)に高温(100〜300℃)で噴霧して熱融着(熱融着法)(熱融着の方法については、例えば特開平7−166091号公報参照)させてもよい。不溶解成分は、塗膜の欠陥の原因となるため取り除くのが好ましいが、(A)に熱融着させることで、該(A)と(D)を配合後、溶解成分は組成物中に溶解し、不溶解成分が(A)に熱融着されたままとなるため、この方法の場合は取り除く必要がない。
これらの適用方法のうち、シリカ(A)の分散安定性の観点から好ましいのは熱融着法である。
【0026】
上記(C)のうち、合成ワックスの製造方法としては、例えば、エチレン性不飽和基含有単量体(C2〜10)を重合開始剤の存在下で重合させる方法(I)、該単量体を重合させてなる重合体を熱減成する方法(II)(例えば、特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報、特公平6−70094号公報)が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基含有単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン等が挙げられる。
これらのうち塗膜の表面平滑性の観点から好ましいのはエチレン、プロピレンである。
上記製造方法のうち、分子量調整の観点から好ましいのは(II)の方法である。
【0027】
(I)の方法としては、特に限定されないが、例えば種々のラジカル重合方法(例えば溶液重合、塊状重合および乳化重合)が挙げられる。重合条件は、特に限定されず、一般のラジカル重合条件でよい。
例えば、溶液重合の場合は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃で溶剤(キシレン、トルエン等)中にエチレン性不飽和基含有単量体(またはそれらの2種以上の混合物、以下同じ。)と重合開始剤の溶液を滴下し、2〜10時間反応させる。溶剤の使用量は該単量体の重量に基づいて通常5〜90%、取り扱い易さおよび反応速度の観点から好ましくは15〜80%である。また、必要により連鎖移動剤を使用することもできる。
【0028】
重合開始剤としては、例えば過酸化物〔無機過酸化物[過酸化水素等]、有機過酸化物[ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等]等〕およびアゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等]が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、上記単量体の重量に基づいて通常10%以下、重合速度の観点から好ましくは0.1〜5%である。
【0029】
連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ジフェニルジスルフィド、四塩化炭素が挙げられる。
連鎖移動剤の使用量は、上記単量体の重量に基づいて通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
【0030】
ラジカル重合反応は、常圧、減圧または加圧のいずれの条件下でも行うことができるが、反応時間短縮のため反応温度を高く設定できるとの観点から好ましいのは加圧条件下である。
ラジカル重合反応の進行状況は、重合物についての臭素価等による二重結合当量およびMnの分析、またはガスクロマトグラフィー等による残存単量体量の分析で判断できる。
反応終了後は、安全性、臭気の観点から未反応の単量体および重合開始剤を取り除くのが好ましい。取り除く方法としては、例えば未反応の単量体については重合開始剤を追加して重合させる方法および減圧にして留出除去する方法が挙げられる。重合開始剤については温度をさらに上げて(例えば150〜200℃)分解させる方法が挙げられる。
【0031】
塊状重合の場合は、通常0〜150℃、好ましくは10〜130℃でエチレン性不飽和基含有単量体に重合開始剤(前記に同じ)を加えて2〜10時間反応させる。必要により連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の種類と使用量は、溶液重合の場合と同様である。
【0032】
乳化重合の場合は、通常0〜150℃、好ましくは50〜100℃で水中にエチレン性不飽和基含有単量体、重合開始剤および乳化剤を添加もしくは滴下して乳化したのち、2〜10時間反応させる。必要により連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の種類と使用量は、溶液重合の場合と同様である。
乳化重合において用いられる乳化剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
非イオン性界面活性剤としては、AO付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[例えば飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)、高級脂肪酸(C8〜24)およびフェノール化合物(C7〜24):例えばアルキルもしくはアルケニル(例えばドデシル、ステアリル、オレイル)アルコールおよびアミン、アルカンもしくはアルケン酸(例えばラウリン、ステアリンおよびオレイン酸)]およびアルキルもしくはアルケニルフェノールの(ポリ)オキシアルキレン誘導体〔AO[C2〜4、例えばEO、PO、ブチレンオキシドおよびこれらの2種以上の併用、とくにEO](1〜500モルまたはそれ以上)付加物(分子量174以上かつMn30,000以下)、およびポリアルキレングリコール(例えばPEG:分子量150以上かつMn6,000以下)の高級脂肪酸モノ−およびジエステル〕;
多価アルコール[2価〜8価またはそれ以上、例えばEG、GR、TMP、PE、ソルビトール(以下SOと略記)、ソルビタンおよびショ糖]の高級脂肪酸(上記)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(上記、分子量320以上かつMn30,000以下、例えばツイーン型ノニオニックス);
高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(上記、分子量330以上かつMn30,000以下);
多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(上記、分子量180以上かつMn30,000以下);
およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコール(上記)およびポリアミン(ジアミンおよび3個〜5個またはそれ以上の1級および/または2級アミノ基を有するポリアミン)のポリオキシプロピレン誘導体(例えばPPGおよびエチレンジアミンPO付加物:Mn500〜5,000)]のポリオキシエチレン誘導体(Mn1,000〜30,000)[プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス];多価アルコール(C3〜60)型ノニオニックス、例えば多価アルコール(上記)の脂肪酸(C8〜20)エステル、多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテル、および高級脂肪酸(上記)アルカノールアミド;
並びに、アミンオキシド型ノニオニックス、例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18:ドデシル、ステアリル、オレイル、2−ヒドロキシドデシル等)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3:メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル等)アミンオキシド等が挙げられる。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸(塩)、例えば高級脂肪酸(C8〜24)、エーテルカルボン酸[高級アルコール(C8〜18)またはそのAO付加物、例えばEO(1〜10モル)付加物 のカルボキシメチル化物]、およびそれらの塩;
硫酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールまたはそのAO付加物の硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート、例えばラウリル硫酸ナトリウム)、硫酸化油(天然の不飽和油脂または不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和した塩)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和した塩)および硫酸化オレフィン(C12〜18のオレフィンを硫酸化して中和した塩);
スルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸 塩およびN−アシル−N−メチルタウリン(例えばイゲポンT型);
並びに、リン酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールもしくはそのAO付加物[例えばEO(1〜10モル)付加物]またはアルキル(C4〜60)フェノールのAO付加物(同上)のリン酸エステル塩(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート)等が挙げられる。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型カチオニックス、例えばテトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)、例えばアルキル(C8〜18:ラウリル、ステアリル等)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18:デシル、オクチル等)ジメチルアンモニウム塩;トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)、例えばラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ステアリルベンジルジメチルアンモニウム塩およびジステアリルベンジルメチルアンモニウム塩;
アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩、例えばセチルピリジニウム塩;
(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4)(重合度1〜100またはそれ以上)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)、例えばポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩;およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩、例えばステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(例えばクロライドおよびブロマイド)、アルキルサルフェート(例えばメトサルフェート)および有機酸(下記)の塩が含まれる];
並びに、アミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミン(C12〜60:ラウリル、ステアリルおよびセチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミン等)、脂肪族アミン(C8〜20)の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(上記、EO付加物など)、およびアシルアミノアルキルもしくはアシル(C8〜18)オキシアルキルジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(例えばステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミンおよびステアラミドエチルジエチルアミン)]の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸など)塩および有機酸(C2〜22:酢酸、プロピオン、ラウリン、オレイン、コハク、アジピンおよびアゼライン酸、安息香酸など)塩等が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤としては、カルボン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアミノ酸型アンフォテリックス、例えばアルキル(C8〜18)アミノプロピオン酸(塩)、およびベタイン型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)ベタイン(例えばアルキルジメチルベタインおよびアルキルジヒドロキシエチルベタイン);
硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)アミンの硫酸エステル(塩)、およびヒドロキシアルキル(C2〜4:ヒドロキシエチル等)イミダゾリン硫酸エステル(塩);
スルホン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上:ペンタデシル等)スルフォタウリン、およびイミダゾリンスルホン酸(塩);
並びに、リン酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばグリセリン高級脂肪酸(上記)エステルのリン酸エステル(塩)等が挙げられる。
【0037】
これらのうち乳化物の安定性の観点から好ましいのは非イオン性およびアニオン性界面活性剤である。
【0038】
重合体を熱減成する(II)の方法には、予め(I)の方法で製造した高分子量の重合体(Mnは通常8,000〜500,000、変性のし易さの観点から好ましくは10,000〜300,000)を(1)連続式熱減成法または(2)バッチ式熱減成法で行う方法が含まれる。
【0039】
(1)の方法は、連続槽に一定流量(10〜700kg/時間)で供給される高分子量の重合体を触媒(前記重合開始剤等)の不存在下では、通常300〜450℃で0.5〜10時間、また、該触媒の存在下では、通常180〜300℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法であり、(2)の方法は、閉鎖系反応容器中の高分子量の重合体を上記(1)と同様に該触媒の不存在下または存在下で、同様の熱処理条件で熱減成する方法である。
該触媒の使用量は、高分子量の重合体の重量に基づいて、通常0.01〜10%、分子量制御の観点から好ましくは0.1〜1%である。
【0040】
これらの方法のうち、(C)の生産性および塗膜の表面平滑性の観点から好ましいのは(1)の方法であり、さらに好ましいのは触媒の不存在下、300〜450℃で連続的に熱減成する方法が好ましい。
【0041】
本発明における有機溶剤(D)としては、エステル(C4〜5、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(C4〜6、例えばメチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(C2〜4、例えばジエチルエーテル)、アルコール(C8〜16、例えばデカノール)、およびこれらの混合物等が挙げられる。
これらのうち、塗膜の乾燥性、硬化型樹脂(B)およびワックス(C)の溶解性の観点から好ましいのは、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物である。
【0042】
本発明の組成物を構成するシリカ(A)、硬化型樹脂(B)、ワックス(C)および有機溶剤(D)の割合は、(A)、(B)、(C)、(D)の合計重量に基づいて、(A)は組成物の艶調整および組成物の塗工性の観点から好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜15%;(B)は塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)および組成物の塗工性の観点から好ましくは20〜79%、さらに好ましくは25〜69%;(C)は表面平滑性、耐摩耗性および塗膜の透明性の観点から好ましくは0.005〜5%、さらに好ましくは0.01〜3%;(D)は、塗工性および乾燥性の観点から19〜78%、さらに好ましくは28〜72%である。
【0043】
本発明の組成物は、塗膜の乾燥時および硬化時にワックス(C)のブリードアウトを促進するとの観点から、さらにジメチルポリシロキサン化合物(E)を含有させるのが好ましい。
(E)には、Mn200〜10,000、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(E1)未変性ジメチルポリシロキサン:ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等;
(E2)変性ジメチルポリシロキサン:アルキル変性、フッ素変性、ポリエーテル変性、アルコール変性、アミノ変性、エポキシ変性、フェノール変性、カルボキシル変性および(メタ)アクリロキシ変性ジメチルポリシロキサン等。
例えば、(B)として(ポリ)(メタ)アクリレートを使用する場合、ブリードアウト性および塗工性の観点から好ましいのは、ポリエーテル変性および(メタ)アクリロキシ変性ジメチルポリシロキサンであり、(B)として脂環式エポキシ樹脂を使用する場合、上記と同様の観点から好ましいのはポリエーテル変性、アミノ変性、エポキシ変性およびカルボキシル変性ジメチルポリシロキサンである。
(E)の使用量は、組成物全体の重量に基づいて、ブリードアウト性および塗工性の観点から好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.3〜2%である。
【0044】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料、インキに使用される種々の添加剤(F)を含有させてもよい。(F)には、無機充填剤(F1、有機顔料(F2)、分散剤(F3)、消泡剤(F4)、レベリング剤(F5)、シランカップリング剤(F6)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(F7)、酸化防止剤(F8)および紫外線吸収剤(F9)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤が含まれる。
(F)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.005〜10%である。
【0045】
無機充填剤(F1)としては、無機顔料[白色顔料(二酸化チタン、アルミナ白、ホワイトカーボン、クレー、タルク、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、アルミニウム粉、リトポン等)、黒色顔料(酸化亜鉛、酸化クロム、鉄黒、カーボンブラック等)、赤色顔料(酸化鉄、朱、カドミウムレッド等)、青色顔料(コバルトブルー、群青、紺青等)、黄色顔料(酸化鉄黄、カドミウムイエロー、黄鉛、硫化亜鉛、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート等)、その他(モリブデートオレンジ、ビリジアン、マンガンバイオレット、パール系顔料等)]、導電性充填剤〔炭素粉体(カーボンブラック、グラファイト等)、金属酸化物(スズ・アンチモン複合酸化物、アンチモン・インジウム・スズ複合酸化物、インジウム・スズ複合酸化物、Sn、F、Cl等をドープした導電性酸化インジウム、酸化スズおよび酸化亜鉛)、金属[銅、ニッケル、銀、金、アルミニウム等の各種金属粒子(粉体)または金属繊維]、硬質フィラー(アルミナ、ジルコニア、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド等)等〕、その他充填剤〔ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸マグネシウム等]、硫酸塩[硫酸アルミニウム(硫酸バンド、サチンホワイト等)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石コウ)(無水石コウ、半水石コウ等)等]、鉛白、雲母粉、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー等〕等が挙げられる。
【0046】
有機顔料(F2)としては、下記のものが挙げられる。
(1)アゾ顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等;
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等;
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等;
(4)その他
アジン系顔料(アニリンブラック等)、昼光けい光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等。
(F2)の使用量は、組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、塗膜の着色性および可撓性の観点から好ましくは0.1〜5%である。
【0047】
分散剤(F3)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100〜Mn2,000未満)]および無機分散剤が挙げられる。
【0048】
高分子分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mn2,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn2,000〜100,000)等が挙げられる。
【0049】
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、SOおよびソルビタン)のモノエステル化合物
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のアルカリ金属(上記に同じ)塩
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(前記に同じ)塩等
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(上記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(前記に同じ)塩
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(上記に同じ)塩、4級アンモニウム塩等]
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等
が挙げられる。
【0050】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(上記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
(F3)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、組成物の分散安定性および塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)の観点から好ましくは0.05〜3%である。
【0051】
消泡剤(F4)としては、低級アルコール(C1〜6)(メタノール、ブタノール等)、高級アルコール(C8〜18)(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、高級脂肪酸(C10〜20)(オレイン酸、ステアリン酸等)、高級脂肪酸エステル(C11〜30)(グリセリンモノラウリレート)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[PEG(Mn200〜10,000)、PPG(Mn200〜10,000)等]、および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
(F4)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)および塗膜の透明性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0052】
レベリング剤(F5)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)等が挙げられる。
(F5)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、塗膜の表面平滑性および塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0053】
シランカップリング剤(F6)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤[ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等]、メタクリレート基含有シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
(F6)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)および塗膜の透明性の観点から好ましくは0.5〜3%である。
【0054】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(F7)としては、無機チクソトロピー性付与剤(ベントナイト、有機処理ベントナイトおよび極微細表面処理炭酸カルシウム等)および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
(F7)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、組成物の分散安定性および組成物の塗工性の観点から好ましくは0.5〜3%である。
【0055】
酸化防止剤(F8)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(F8)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、熱安定性および塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0056】
紫外線吸収剤(F9)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(F9)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、光安定性および塗膜物性(耐汚染性および耐摩耗性)の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0057】
上記(F1)〜(F9)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0058】
本発明の組成物は、(B2)が(ポリ)(メタ)アクリレートの場合は、さらに光重合開始剤を含有させることができ、また(B2)が脂環式エポキシ樹脂の場合は光カチオン重合開始剤を含有させることができる。
【0059】
光重合開始剤としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち塗膜の耐光性の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0060】
光重合開始剤の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて通常20%以下、硬化性および塗膜の非着色性の観点から好ましくは0.1〜10%である。
【0061】
光カチオン重合開始剤としては、アリルスルホニウム塩[トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等]、アリルヨードニウム塩[ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等]、スルホン酸エステル[o−ニトロベンジルトシレート、ジメトキシアントラセンスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、トシレートアセトフェノン等]、フェロセン〔(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート等〕等が挙げられる。
【0062】
光カチオン重合開始剤の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、組成物の硬化性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.3〜10%、とくに好ましくは0.5〜5%である。
【0063】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により有機溶剤(D)以外のその他の溶剤を併用することができる。
該溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素(C5〜C10、例えばヘキサン、オクタン)、脂環式炭化水素(C5〜C10、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エーテルエステル(C6〜10、例えばメトキシブチルアセテート)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤の使用量は、(D)の重量に基づいて通常50%以下、好ましくは30%以下である。
【0064】
本発明の塗料用組成物の製造方法としては、特に限定はされないが、混合時生じる泡を取り除き、シリカ(A)と硬化型樹脂(B)との濡れを良くするため、減圧下(13kPa以下)で行うのが好ましく、混合装置としては釜内減圧可能な万能混合機またはプラネタリーミキサー等が好ましい。混合する際の温度は、通常0〜60℃、均一混合性および(D)の揮散抑制、(B)の熱安定性の観点から好ましくは5〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。
【0065】
混合する順序は、特に限定されず、シリカ(A)、硬化型樹脂(B)、ワックス(C)および有機溶剤(D)を同時に一括混合する方法、(A)または(C)を(B)または(D)に混合したのち、(C)または(A)および(D)または(B)を加える方法、(A)を分けて(B)および(D)にそれぞれ混合した後、これらと(C)を混合する方法、(B)、(C)および(D)を混合したのち、(A)を混合する方法、(A)、(B)および(D)を混合した後、(C)を混合する方法、前述の予め(A)に(C)を熱融着させたものと(B)および(D)を一括混合する方法、(A)に(C)を熱融着させたものを(B)または(D)に混合後、さらに(D)または(B)に混合する方法等が挙げられる。(A)、(B)、(C)および(D)以外で必要により加えられるその他の成分[(E)、(F)]については、上記いずれかの方法の任意の段階で混合することができる。
【0066】
本発明の塗料用組成物は、基材に塗工し必要により乾燥させることで基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物(塗膜)を有する被覆物を得ることができる。
使用できる基材としては通常の塗料が適用できるものであれば、材質、形状、寸法等、特に限定されないが、材質としては例えば紙、木材、金属、プラスチック等、形状としては、例えばフィルム状、板状が挙げられる。
該塗工に際しては、種々の装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化後の膜厚として、通常0.5〜300μm、下限は耐摩耗性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から、上限は乾燥性、硬化性の観点から好ましくは1〜250μmである。
【0067】
該組成物の基材への塗工後の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、下限は乾燥速度の観点から、上限は塗膜の表面平滑性の観点から好ましくは30〜150℃である。乾燥時間は通常10分以下、生産性の観点から好ましくは0.5〜5分である。
【0068】
本発明の組成物は、公知の塗料の硬化方法、例えば、塗工後に熱および/または活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)で硬化させることで塗膜が得られる。
【0069】
熱により硬化させる場合は、通常50〜200℃、硬化速度および基材の損傷防止の観点から好ましくは80〜180℃のオーブンで1分〜20時間加熱処理される。
電子線で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置〔例えばエレクトロンビーム[岩崎電気(株)製]〕を使用することができる。電子線の照射量は、通常0.5〜20Mrad、下限は組成物の硬化性の観点から、上限は硬化物(塗膜)の可撓性、並びに硬化物または基材の損傷を避けるとの観点から、好ましくは1〜15Mradである。
【0070】
紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置〔例えばアイグランデージ[アイグラフィック(株)製、以下同じ。]〕を使用することができる。紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2、下限は組成物の硬化性の観点から、上限は硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0071】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、%は重量%を示す。
【0072】
製造例1
滴下ロート、温度計、還流冷却管および撹拌棒を備えたガラス製反応容器中にエチレン/1−ブテンコポリマー[商品名「エクセレンFXCX5501」、住友化学(株)製]500部を仕込み、窒素雰囲気下で、撹拌しながら350℃で3時間熱減成を行った。次いで200℃まで冷却後、低分子量エチレン/1−ブテンコポリマーからなる熱減成物(c1)を得た。
次に、同様の容器に酢酸エチル100部と(c1)50部を仕込み、25℃で4時間撹拌した。その後、ろ紙[No.2 ADVANTEC(株)製、以下同じ。]でろ過し、不溶解分を濾別した後、エバポレーターでろ液から酢酸エチルを留去し、固形物を乾燥させて、ワックス(C−1)を得た。(C−1)は、Mn1,500、融点56℃、酢酸エチルの重量に基づく溶解度(25℃)は10%であった。
【0073】
製造例2
製造例1と同様の反応容器にポリエチレン[商品名「スタフレンE750C」、日本石油化学(株)製]500部を仕込み、窒素雰囲気下で、撹拌しながら370℃で4時間熱減成を行った。次いで200℃まで冷却後、低分子量ポリエチレンからなる熱減成物(c2)を得た。
次に、同様の容器に酢酸エチル100部と(c2)50部を仕込み、25℃で4時間撹拌した。その後、ろ紙でろ過し、不溶解分を濾別した後、エバポレーターでろ液から酢酸エチルを留去し、固形物を乾燥させて、ワックス(C−2)を得た。(C−2)は、Mn2,000、融点73℃、酢酸エチルの重量に基づく溶解度(25℃)は7%であった。
【0074】
製造例3
製造例1と同様の反応容器にキシレン100部と(c2)10部を仕込み、100℃で2時間混合し、(c2)の均一溶液を得た。
プラネタリーミキサーにシリカ[商品名「サイリシア 350」、富士シリシア(株)製、体積平均粒径5μm]100部を仕込み、撹拌しながら、(c2)の均一溶液を150℃で噴霧した後、150℃で減圧乾燥させてシリカの表面に(c2)を熱融着させた。その後、分級して粒径が10μm以上のものを取り除き、ワックス熱融着シリカ(A−1)を得た。
比較製造例1
製造例1と同様の反応容器にポリエチレン[商品名「スタフレンE750C」、日本石油化学(株)製]500部を仕込み、窒素雰囲気下で、撹拌しながら300℃で4時間熱減成を行った。次いで200℃まで冷却後、低分子量ポリエチレンからなる熱減成物(c3)を得た。(c3)は、Mn8,000、融点85℃、酢酸エチルの重量に基づく溶解度(25℃)は0.01%であった。
【0075】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1の配合組成に従ってプラネタリーミキサーで30分間混錬し、実施例1〜7および比較例1〜4の塗料用組成物を得た。該組成物について、25℃での粘度および分散安定性の評価、および硬化塗膜についての物性評価を下記の方法に従って行った。結果を表1に示す。なお、(C)の(D)または(B)に対する溶解度についても表1に示した。
【0076】
評価方法
[1]組成物評価
(1)粘度
JIS K−7117に準じ、BL型粘度計[東京計器(株)製]を用いて液温25℃での粘度を測定した。
(2)分散安定性
口径2cm、高さ10cmの円筒形のガラス容器に試料を高さ9cmまで充填して25℃で静置、4時間後に試料全体の高さに対する上澄み高さの割合(%)を測定した。
【0077】
[2]硬化物(塗膜)評価
試料をPETフィルム(基材厚さ100μm)上にアプリケーターで塗工し(硬化後の膜厚25μm)、ドライヤー(約100℃)で30秒間加熱して溶剤を乾燥除去した後、紫外線照射装置で紫外線を2,000mJ/cm2照射し、硬化させる。得られた硬化物の外観、静摩擦係数、耐摩耗性、耐汚染性を下記の方法で評価する。
(1)外観
下記基準で外観を評価する。
○ はじきがない。
× はじきがあり。
(2)硬化物(塗膜)物性
(2−1)静摩擦係数
JIS K−7125に従って、表面特性評価装置[SUPER PROPERTY TESTER TYPE140R HEIDON(株)製]で静摩擦係数を測定する。
(2−2)耐摩耗性
JIS K−6902に従って、下記のテーバー摩耗試験法で耐摩耗性を評価する。
[テーバー摩耗試験法の手順]
<1> 基材の塗膜面とは反対側の片面を、粘着加工したボール紙に張り付け、100mm×100mmの大きさに切り取り、これを試験片とする。
<2> JIS K−6902に従い、塗膜面についてテーバー摩耗試験(回転数50/分)を行う。試験前後の試験片重量(mg)から、塗膜の摩耗量(mg)を算出する。
(3)耐汚染性
JIS K−6902に従い、下記の手順で耐汚染性評価を行う。汚染試験物は4品目(青インク、赤インク、マスタードおよび靴墨)とする。
<1> 基材の塗膜面とは反対側の片面を、粘着加工したボール紙に貼り付け、100mm×100mmの大きさに切り取り、これを試験片とする。
<2> 塗膜面上に汚染試験物を滴下または付着させ、該滴下または付着箇所を時計皿で覆い、24時間室温で静置する。
<3> 時計皿を取り除いた塗膜面を水、さらにメタノールで洗い、乾燥した清浄なガーゼで拭ってから、1時間室温で静置する。
<4> 下記の基準で塗膜面の外観を評価する。
○ シミが残らない。
△ わずかにシミが残る。
× 明らかにシミが残る。
【0078】
【表1】

S350 :シリカ[商品名「サイリシア350」、富士シリシア(株)製、体積平均
粒径5μm]
ED−2 :シリカ[商品名「サイロイドED−2」、グレーズ(株)製、体積平均粒
径2μm]
ED−10 :シリカ[商品名「サイロイドED−10」、グレーズ(株)製、体積平均
粒径10μm]
BA−641:EO変性ビスフェノールAジアクリレート[商品名「ネオマーBA−64
1」、三洋化成工業(株)製]
TA−401:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名「ネオマーT
A−401」、三洋化成工業(株)製]
POA :フェノキシエチレングリコールアクリレート
[商品名「ライトアクリレートPO−A」、共栄社化学(株)製]
DA−600:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
[商品名「ネオマーDA−600」、三洋化成工業(株)製]
VR−77 :ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート化物
[商品名「リポキシVR−77」、昭和高分子(株)製]
X22−164B:ジメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン
[商品名「X22−164B」、信越化学(株)製]
SH−200:ポリジメチルシロキサン
[商品名「SH−200」、東レシリコーン(株)製]
I184 :1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャリティケミカル(株)製 ]
【0079】
表1の結果から、本発明の塗料用組成物からなる硬化塗膜は、比較のものに比べ外観、静摩擦係数、耐摩耗性および耐汚染性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の塗料用組成物を硬化させてなる硬化物は、耐汚染性、耐摩耗性並びに表面平滑性が良好なことから、コーティング用途等に幅広く用いることができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ(A)、熱硬化型樹脂(B1)および活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化型樹脂(B)、ワックス(C)および有機溶剤(D)からなり、25℃における(C)の(D)への溶解度が(D)の重量に基づいて0.1%以上であることを特徴とする塗料用組成物。
【請求項2】
(C)の(B)への溶解度が、(B)の重量に基づいて25℃で0.1%以下である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ワックス(C)が、予めシリカ(A)に熱融着されてなる請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
(A)〜(D)の合計重量に基づく含有量が、(A)が1〜20%、(B)が20〜79%、(C)が0.005〜5%、(D)が19〜78%である請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに、ジメチルポリシロキサン化合物(E)を含有させてなる請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
さらに、無機充填剤、有機顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のその他の添加剤(F)を含有させてなる請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する被覆物。
【請求項9】
予め、ワックス(C)をシリカ(A)に熱融着させた後、熱硬化型樹脂(B1)および活性エネルギー線硬化型樹脂(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化型樹脂(B)および有機溶剤(D)を加えて混練することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−19433(P2008−19433A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156573(P2007−156573)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】