説明

塗料組成物

【課題】 耐候性、耐熱性のほか、作業性、分散性に優れ、特に反射輝度値、夜間視認性等に優れた顆粒状顔料を含有する塗料組成物、特に、路面標示塗料組成物を提供する。
【解決手段】 イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139、及び、モノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選択される少なくとも1種の有機顔料粉末を主成分としてなる顔料粉末の吸油量以上の溶融樹脂中に前記顔料粉末を練肉分散して得た分散体を粉砕・分級してなる顆粒状顔料を主成分とする顔料組成物、並びに、これを含有してなる塗料組成物、特に、路面標示塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、耐熱性のほか、飛散防止、ハンドリング等の作業性、塗料用樹脂への分散性に優れ、特に反射輝度値、夜間視認性等に優れた、有機顔料を主成分とする顆粒状顔料を主成分としてなる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料は彩度の高い発色に特徴があり、弱点であった耐久性等についても、近年、飛躍的に性能が向上し、無機顔料に劣らない耐久性のものが登場している。その用途も、耐候性、耐熱性の要求される道路の区画線や標示等に使用される塗料組成物、いわゆる路面標示塗料組成物等の過酷な屋外用途にも適用されている。一方、顔料には人体の健康に悪影響を及ぼすおそれのある成分も存在しており、顔料に関する安全と環境問題には充分な留意が必要である。とくに、粉塵やエアロゾルの吸入によって人体へ摂取される可能性があるので、顔料を直接扱う産業現場や作業現場における飛散等による作業環境の汚染は憂慮すべき問題である。さらに、粉塵発生による作業性の低下もまた大きな問題である。
【0003】
路面標示塗料への有機顔料の適用に関しては、例えば、鉛、クロム等の有害重金属を含有しない黄色系有機顔料の使用が提起されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、イソインドリン系、イソインドリノン系又はモノアゾ系顔料の特定の黄色系有機顔料が耐熱性、耐候性に優れ、しかも再帰反射性に優れているので、従来の黄鉛に代わって使用することができ、とくに、路面標示塗料組成物用顔料として好適であることが開示されている。しかしながら、この技術をもってしても、顔料の飛散自体を防止することはできない。
【0004】
顔料の飛散防止対策としては、例えば、顔料を小袋にいれたものを準備しておき、作業現場では小袋に入れた顔料を取り扱うことにより、直接顔料粉末を取り扱う機会をできるだけ少なくする方策が採られることがある。しかしながら、顔料を予め小袋に詰める手間がかかるうえ、必ずしも充分に飛散防止されるわけではない。
【0005】
一方、顔料微粉末を顆粒化することにより、飛散や付着を防止して作業性向上を図る技術としては、例えば、着色顔料と樹脂とを樹脂の融点以上に加熱し均一に溶融撹拌混合した後、急冷固化し、再び撹拌して顆粒状にする技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この技術は、第一に、無機顔料を対象とするものであり、第二に、少ない配合樹脂量及び転動造粒法類似の製造方法であることからわかるように、顆粒状物は顔料が樹脂分で合着された構造を有しており、顆粒状顔料を塗料組成物中に配合した場合における顔料自体の分散度が必ずしも充分ではない。また、この方法は、アスペクト比の比較的大きい有機顔料結晶の顆粒化には適していない。
【0006】
更に、有機顔料とワックスとの水性懸濁液を噴霧乾燥して顔料顆粒を製造する技術がある(例えば、特許文献3参照。)。この方法は、基本的には、対応する顔料粉末の調製過程の仕上工程の間に行われるものであり、顔料表面がワックスでコーティングされた構造の顆粒が得られる。しかしながら、この場合は、顔料の製造工程で適用される方法であって、既に製造された顔料に適用される技術ではないこと、従って、製造された顔料を用いて用途に応じた調色を適宜行う必要のある分野での使用は困難であること、また、ワックスでコーティングされた顔料は、剥離性があるので路面標示用途等には使用できないこと等の問題がある。このように、従来採用されている造粒方法では、有機顔料の優れた特性を導くことが充分ではなく、路面標示用用途等の特殊な特性を保持、発揮できる顆粒を得ることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−114863号公報
【特許文献2】特開昭54−37136号公報第(2)頁
【特許文献3】特開2001−81349号公報特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の現状に鑑み、耐候性、耐熱性のほか、作業性、分散性に優れ、特に反射輝度値、夜間視認性等に優れた、有機顔料を主成分としてなる顆粒状顔料を含有する塗料組成物、特に、路面標示塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、溶融樹脂と有機顔料粉末とを均一練肉分散した分散体を粉砕・分級することにより、アスペクト比の比較的大きな有機顔料粉末の顆粒化が可能であり、しかも塗料用樹脂への分散性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、溶融樹脂に有機顔料粉末を分散して得た分散体を粉砕・分級してなる顆粒状顔料及び塗料用樹脂を含有してなる塗料組成物、特に、路面標示塗料組成物である。
本発明の一態様において、上記顆粒状顔料は、溶融樹脂に、有機顔料粉末に加えて、更に、上記有機顔料粉末に対する調色用顔料粉末を分散して得た分散体を粉砕・分級してなるものである。
本発明の他の一態様において、上記有機顔料は、イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139、及び、モノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
本発明はまた、イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139、及び、モノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選択される少なくとも1種の有機顔料を主成分とする顔料粉末の吸油量以上の溶融樹脂中に前記顔料粉末を練肉分散して得た分散体を粉砕・分級してなる顆粒状顔料を主成分とする顔料組成物でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述の構成であるので、以下の効果を発揮する。
(1)産業現場や作業現場における顔料飛散等による作業環境の汚染、作業性の低下を効果的に防止できる。
(2)本発明の塗料組成物は、有機顔料の塗料用樹脂への分散性に優れ、発色がよい。
(3)本発明の塗料組成物は、黄色系有機顔料、特に、イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139又はモノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181の顆粒を使用して、反射輝度値、黄色としての夜間視認性等に優れた路面標示塗料組成物とすることができる。
(4)本発明の顔料組成物において、その顆粒状顔料は、顆粒を構成する樹脂への顔料の分散性に極めて優れている。
(5)イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139又はモノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181を主成分とする顆粒状顔料を主成分とする本発明の顔料組成物は、反射輝度値、黄色としての夜間視認性が極めて高く、従来よりも少ない配合量で有効である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における顆粒状顔料は、溶融樹脂に有機顔料粉末、又は、有機顔料粉末に加えて、更に、上記有機顔料粉末に対する調色用顔料粉末を分散した分散体を粉砕・分級して得ることができるものである。従って、本発明において、顆粒状顔料とは、溶融樹脂に有機顔料粉末を主成分とし、必要に応じて更に配合される上記有機顔料に対する調色用顔料粉末を分散した分散体を粉砕・分級して得た場合における、元のこれらの顔料粉末粒子よりも大粒径の、有機顔料を主体とする顔料及び樹脂を含有する粒子をいう。この造粒方法を採用することにより、比較的大きなアスペクト比を有する有機顔料結晶粉末を樹脂に均一に分散してなる、典型的には、樹脂と顔料結晶粒子とが所謂海島構造をなしている顆粒を製造することができる。このような顆粒状顔料は、顔料微粒子同士が既に樹脂で隔離されているので、塗料用樹脂に撹拌混合したときに速やかに良好な分散を達成し、従って、発色が優れている。なお、本明細書中、塗料用樹脂とは、上記顆粒状顔料を分散させて塗料組成物とする樹脂をいう。また、後に詳述する黄色系有機顔料を使用した場合には、顆粒化しない場合に比べて黄色としての夜間視認性、反射輝度値等が大きく向上する。
【0014】
上記顆粒状顔料において、顔料と混合する樹脂としては、例えば、石油樹脂、ロジン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、室温で液状又は固状であってよく、顔料粉末を分散する際に樹脂が液状であればよい。従って、本発明において、溶融樹脂とは、融点が室温より高くて加熱により溶融している樹脂のみならず、融点が室温より低い樹脂であって室温で液状又は水飴状である樹脂の場合も含む。顆粒の維持の観点から好ましくは、室温で固状の樹脂であり、例えば、軟化点60〜200℃程度の樹脂が好ましく、80〜150℃がより好ましい。なお、塗料用樹脂への相溶性を考慮して樹脂を選択することが好ましい。
【0015】
上記有機顔料としては特に限定されず各種のものを使用可能であり、例えば、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、チオインジゴ顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、縮合アゾ顔料、モノアゾ顔料等を挙げることができる。路面標示塗料組成物のためには、イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139又はモノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181が好ましく、これらは単独で又は2種以上を併用することができる。これらの黄色系顔料は、耐候性、耐熱性及び再帰反射性に優れているので、黄色路面標示塗料組成物に極めて好適である。
【0016】
路面標示塗料組成物のためには、上記顆粒状顔料において、上記黄色系顔料に加えて、所轄官庁通達の道路標示黄色に調色するため、必要に応じて、更に、酸化チタン、酸化鉄、チタンイエロー、ビスマスバナデート(BiVO)等の無機顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、縮合アゾ系顔料、モノアゾ系顔料等の有機顔料を、調色するために必要な量で使用することができる。
【0017】
C.I.Pigment Yellow 139は、下記構造式を有する有機化合物である。
【0018】
【化1】

【0019】
また、C.I.Pigment Yellow 181は、下記構造式を有する有機化合物である。
【0020】
【化2】

【0021】
C.I.Pigment Yellow 110は、下記構造式を有する有機化合物である。
【0022】
【化3】

【0023】
上記顆粒状顔料の造粒方法としては、(1)上記樹脂の溶融状態(すなわち、液状樹脂の状態)に上記有機顔料粉末、又は、有機顔料粉末に加えて、更に、上記有機顔料粉末に対する調色用顔料粉末を均一に分散して分散体を得る工程、及び、(2)得られた分散体を粉砕・分級する工程を含む製造方法を挙げることができる。上記(1)の工程は、各種の混合機、分散機を使用して行うことができ、例えば、2本又は3本ロールミル等の練肉分散機、高速撹拌分散機、2軸押出機、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等を使用できる。これらのうち、樹脂と顔料との均一分散の観点から、練肉分散、例えば、3本ロールミルを用いた練肉分散が好ましい。
【0024】
造粒の際の樹脂と有機顔料粉末又は有機顔料粉末及び調色用顔料との配合比(重量比)は、好ましくは40:60、より好ましくは50:50、更に好ましくは60:40である。配合比が上記範囲内であると、樹脂と顔料粒子との海島構造を形成する上で有利である。本発明においては、更にまた、樹脂の配合量は、顔料粉末の、すなわち、有機顔料粉末の、該当する場合は好ましくは有機顔料粉末及び調色用顔料粉末の、吸油量以上の量とすることが好ましい。上記範囲であると、樹脂と顔料粒子との海島構造を形成する上で有利である。一方、吸油量よりも樹脂量が少ないと、顔料粉末が合着して粒子団子状になり、樹脂と有機顔料とが均一分散した顆粒の形成が困難である。吸油量は顔料の種類により異なる。従って、本発明においては、吸油量を考慮しつつ、上記配合比(重量比)であって、かつ、吸油量以上の量とすることが好ましい。なお、顔料の吸油量とは、顔料を液体と機械的に湿潤混合させて堅いペースト状にするために必要な油の量をいい、JIS K 5101により測定することができる。
【0025】
上記(1)の工程で得られた分散体を、融点以下に冷却・固化した後、上記工程(2)にかけて粉砕・分級する。粉砕・分級のための装置としては、例えば、竪型ローラーミル、遠心ローラーミル、ターボミル、パルベライザー、ピンミル、フェザーミル、プラスチックミル等の粉砕・分級装置を使用することができる。粉砕は過度の粉砕エネルギーをかけると顆粒が崩壊するので、適度な粉砕エネルギーをかけることができることが望ましいが、その調節は当業者が適宜行うことができる。
【0026】
また、上記(1)及び(2)の工程を連続一体的に行うことも可能であり、例えば、高速撹拌機等の造粒機により、分散と造粒とを行うことも可能である。従って、本発明の目的を阻害しないかぎり、このような製造方法により得られた顆粒状顔料も適用可能である。
【0027】
本発明において顆粒状顔料は、体積平均粒径が0.1〜10mmが好ましく、より好ましくは0.1〜3mmである。平均粒径が上記範囲であると、顆粒状顔料の塗料組成物での拡散、分散が良い。
【0028】
本発明の顔料組成物は、上記顆粒状顔料を主成分とし、必要に応じて、調色用顔料、増量・補強用の体質顔料等を配合することができる。
【0029】
本発明の塗料組成物において、塗料用樹脂としては特に限定されず、塗料組成物に通常使用される塗料用樹脂を使用することができる。溶融式(3種)路面標示塗料とする場合には、脂肪族石油樹脂、ロジン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0030】
本発明の塗料組成物において、路面標示塗料組成物としては、C.I.Pigment Yellow 181とC.I.Pigment Yellow 139のうち少なくとも1種を主成分として含有することが好ましい。
【0031】
C.I.Pigment Yellow 139は、顔料結晶粉末の体積平均粒径が0.05〜2μmであることが好ましい。0.05μm以上であることは、再帰反射性を充分に発揮するうえで有利であり、2μmを超える粒子を形成することは技術的に困難である。より好ましくは0.1〜1μmである。
【0032】
本発明の塗料組成物において、路面標示塗料組成物としては、上記のほか、C.I.Pigment Yellow 110を主成分として構成することもできる。C.I.Pigment Yellow 110を主成分とする場合には、顔料結晶粉末の粒子の長径は0.1〜2μmであることが好ましい。0.1μm以上であることは、再帰反射性を発揮するうえで有利であり、2μmを超える粒子を形成することは技術的に困難である。より好ましくは0.2〜1μmである。
【0033】
路面標示塗料組成物において、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 181、及び、C.I.Pigment Yellow 110の含有量は特に限定されず、必要に応じて、所轄官庁通達の道路標示黄色に調色する際に、適宜選択することができる。
【0034】
本発明において、路面標示塗料組成物は、塗料用樹脂としての熱可塑性塗料用樹脂、ガラスビーズ、その他の必要に応じて使用される添加剤、例えば、寒水石、可塑剤、体質顔料等を加えた混合物中に、上記顆粒状顔料を必要量を添加することにより、溶融式(3種)路面標示塗料とすることができる。
【0035】
上記体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ粉等の無機の体質顔料を添加することができる。これらの配合量は、塗料組成物中、30〜70重量%であることが好ましい。
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
製造例1
顆粒状顔料の製造
以下の配合(重量比)で3本ロールミル(井上製作所社製)(ロール温度150〜160℃)を用いて均一分散して得た分散体を室温に冷却・固化したものを、粉砕・分級装置(ホソカワミクロン社製、フェザーミル)により粉砕・分級して、体積平均粒径3mmの顆粒状顔料を得た。
配合
C.I.Pigment 181 (吸油量115ml/100g) 45g
石油樹脂(融点95℃、三井化学社製) 55g
【0038】
実施例1〜5、比較例1〜7
着色材については表1に示す着色材の種類と配合によりつつ、下記配合の混合物を、マントルヒーターにて加熱して180℃に保ち、5分間攪拌しながら、溶融混合をして路面標示塗料組成物を製造した。なお、塗料組成物の配合は以下のとおり。
配合
樹脂ハイレッツR−500X(脂肪族石油樹脂、三井化学社製)13重量部
寒水石20重量部
炭酸カルシウム47重量部
ガラスビーズ(JIS R 3301−1号適合品)16重量部
植物油変性アルキド樹脂(荒川化学社製)3重量部
着色材(表1に示す着色材の種類と配合)
なお、表1中の略号は以下のとおり。
A:C.I.Pigment 181
B:顆粒状C.I.Pigment 181
C:ビスマスバナデートを用いた顔料
D:黄鉛
【0039】
評価方法
70mm×150mm×0.3mmのブリキ板に、JIS K 5665の3種用アプリケーターで塗板を作成した。なお、色調及び黄色としての夜間視認性の観察においては、平板上に上記塗料組成物を塗布し、塗膜が冷却する前に、ガラスビーズを25g/mの割合で満遍なく散布固着させた状態で観察した。
(1)色調
サンプル塗板を目視により、昼間の黄色としての視認性を評価し、つぎの基準で示した。
A:色調が鮮明である
B:色調の鮮明さに欠ける
(2)黄色としての夜間視認性
サンプル塗板を目視により、夜間に車のヘッドライトを照射させたときの黄色としての視認性を評価し、以下の基準で示した。
A:従来の黄鉛を使用した塗料と比べて同等の視認性である
B:少し劣るが黄色として視認できる
C:黄色として視認できない
(3)塗布性
平板上に上記塗料を塗布する際の作業性を主観的に評価し、つぎの基準で示した。
A:良好
B:良
C:劣る
(4)反射輝度値
塗布面が乾燥状態で輝度計(ミロラックス(商品名)、ポッターズバロティーニ社製)を用い、入射角86.5度、観測角1.5度にて前方の塗布面に照射された投光器からの光がさらに前方の受光器により受光されることで塗布面の輝度を測定した(単位:mcd/lx・m
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1〜5の夜間視認性や反射輝度値は、それぞれ同一配合量である比較例1〜5に比べて1.3〜1.4倍優れており、また例えば、実施例3における反射輝度値を確保するためには、比較例の態様では約1.5倍の着色材を配合する必要がある。また、実施例1、2のように比較的配合量の少ない場合でも黄色としての夜間視認性に優れているのに対して、比較例1、2の態様は、夜間視認性が不充分である。このように、本発明における顆粒状顔料は、顆粒化していない場合に比べて分散が極めて良好であるので、色調、夜間視認性、反射輝度値等において顕著な向上を示している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の塗料組成物は、有機顔料を使用する際の飛散や作業性への悪影響を防止でき、しかも、顔料分散性に優れているので、作業環境の向上のみならず、塗料組成物の特性も向上し、産業分野における実施に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂に有機顔料粉末を分散して得た分散体を粉砕・分級してなる顆粒状顔料及び塗料用樹脂を含有してなることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
顆粒状顔料は、溶融樹脂に、有機顔料粉末に加えて、更に、前記有機顔料粉末に対する調色用顔料粉末を分散して得た分散体を粉砕・分級してなるものである請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記有機顔料は、イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139、及び、モノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の塗料組成物。
【請求項4】
C.I.Pigment Yellow 139は、その体積平均粒径が0.05〜2μmである請求項3記載の塗料組成物。
【請求項5】
C.I.Pigment Yellow 110は、その粒子の長径が0.1〜2μmである請求項3記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記顆粒状顔料は、顔料粉末の吸油量以上の溶融樹脂中に前記顔料粉末を練肉分散して得た分散体を粉砕・分級してなるものである請求項1〜5のいずれか記載の塗料組成物。
【請求項7】
路面標示塗料組成物である請求項1〜6のいずれか記載の塗料組成物。
【請求項8】
イソインドリノン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 110、イソインドリン系顔料であるC.I.Pigment Yellow 139、及び、モノアゾ系顔料であるC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選択される少なくとも1種の有機顔料を主成分とする顔料粉末の吸油量以上の溶融樹脂中に前記顔料粉末を練肉分散して得た分散体を粉砕・分級してなる顆粒状顔料を主成分とする顔料組成物。

【公開番号】特開2006−104250(P2006−104250A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289852(P2004−289852)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(593149926)レジノカラー工業株式会社 (7)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】