説明

塗料組成物

【課題】 優れた耐屈曲性及び耐クラック性を有し、塗装後の乾燥性にも優れ、かつ無溶剤化・ハイソリッド化が可能な2液常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料組成物を提供する。
【解決手段】 (a)Si含量が12質量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物、(b)1分子中に2つ以上のグリシジル基を含有する化合物、(c)硬化触媒、(d)1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物を含必須成分と、必要に応じて、さらに(e)着色顔料、体質顔料、艶消し剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防藻剤及びその他の塗料添加剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する塗料組成物。該塗料組成物は、好ましくは、(d)成分と反応するグリシジル基を有する成分が第1液中に配合され、(d)成分が第2液中に配合されている2液型の組成物として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関し、更に詳しくは、耐屈曲性及び耐クラック性に優れ、乾燥性等の塗装作業性に優れた、常温硬化が可能な2液型オルガノポリシロキサン系塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン系塗料は、耐候性及び耐汚染性に優れた塗料組成物として、従来より用いられている。オルガノポリシロキサン系塗料のこれらの性能は、シリコーンのシロキサン結合骨格に由来する。塗料組成物として調整可能なシリコーン化合物のうち、常温架橋を可能とする代表的なものは、アルコキシ基を複数有するSi原子を複数もつオルガノシロキサン化合物を主成分として用いられ、塗装後、水分の存在下で脱アルコール縮合により、シロキサン結合を三次元に形成し架橋が進行する。この反応により得られるシロキサン結合物は、緻密である為、塗膜硬度の高い塗膜が得られる。反面、塗膜の脆さ、塗装基材に対する密着不良につながる。また、シロキサン結合は、耐アルカリ性に関して十分な性能を有していない。そこで、これらの性能を解決する手段として、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を上記塗料中に導入することが試みられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2000−63612号公報)には、(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分、有機金属化合物からなる硬化触媒成分及び着色顔料を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物又はそのオリゴマー成分及びシリコーン樹脂成分を含有する無機質組成物とからなる、2液型の塗料組成物が提案されている。
そして、この2液型塗料組成物を用いることで、耐候性及び旧塗膜に対する付着性に優れた塗膜が得られることが開示されている。また、この塗料組成物は、良好な貯蔵安定性を有していることも記載されている。
【0004】
しかしながら、従来のオルガノポリシロキサン系塗料では、塗膜を形成した際の耐クラック性、耐屈曲性が充分でないことが分かっていた。この改善を試みたのが、特許文献2(特開2003−238895号公報)に記載されているもので、アルコキシ基含有有機シラン化合物とグリシジル基含有オルガノシラン、グリシジル基含有非シラン系有機化合物、グリシジル基と反応し得るアクリル系共重合体、これらを成分とする2液型塗料組成物の提案がなされている。そして、この2液型塗料組成物を用いることで、耐候性及び耐汚染性に優れ、かつ、耐屈曲性・耐クラック性に優れた塗膜が得られることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−63612号公報
【特許文献2】特開2003−238895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のものでは、グリシジル基と反応し得るアクリル系共重合体が、その他の組成物と比して反応性が乏しいことが分かってきた。この為、塗装直後から表面タックが消失するまでの時間が比較的長く、その間に塗装面に付着した異物・埃等で汚染されてしまうことがあった。また、グリシジル基と反応し得るアクリル系共重合体を使用すると多くの共重合体は、その他成分に比して粘性が高く、有機溶剤の添加量を多くして塗料の粘性調整を行なう必要があった。更に、グリシジル基と反応し得るアクリル系共重合体がその他成分に対しての相溶性に乏しいため、これを満たすもので原材料を選択せざるを得ず、また相溶性の乏しさを補う目的で有機溶剤の添加が不可欠であった。これらは、好適な諸物性を得ようとする際の、原材料の選択において不利な要因となっていた。
【0006】
ところで、最近の環境への影響への配慮から望まれる塗料として、その影響の少ない有機溶剤等の放散量の少ないものが望まれている。本発明は、これらの問題を解決する要望によりなされたものであり、目的とするものは、優れた耐屈曲性及び耐クラック性を有し、塗装後の乾燥性にも優れ、かつ無溶剤化・ハイソリッド化が可能な2液常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)
(a)Si含量が12質量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物
(b)1分子中に2つ以上のグリシジル基を含有する化合物
(c)硬化触媒
(d)1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物
を含必須成分として含有する塗料組成物。
【0008】
(2)前記(a)成分、(b)成分(c)成分及び(d)成分に、さらに(e)着色顔料、体質顔料、艶消し剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防藻剤及びその他の塗料添加剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する(1)項記載の塗料組成物。
【0009】
(3)前記(a)成分が、下記一般式(1)で表されるシラン化合物又はその縮合物である(1)項又は(2)項に記載の塗料組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はアルキル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、OR1、アルキル基又はアリール基である)
【0010】
(4)前記(b)成分が、
(i)ヒドロキシル基含有化合物をグリシジルエーテル化した化合物、
(ii)環状オキシラン型化合物、グリシジルエステル型化合物、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型化合物、多価カルボン酸エステル型化合物、ビスフェノールA型化合物、水添ビスフェノールA型化合物及びノボラック型化合物から選ばれる化合物、及び
(iii)アクリル系重合体にグリシジル基含有成分をグラフトした化合物から選ばれる化合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0011】
(5)前記(b)成分の質量平均分子量が200以上、100,000未満であり、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の含有量が(a)成分100質量部に対して(b)成分30〜200質量部、(c)成分0.1〜30質量部及び(d)成分10〜150質量部である、(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0012】
(6)前記(e)成分を前記(a)成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有する(2)項〜(5)項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0013】
(7)さらに、有機溶剤を含有する(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0014】
(8)前記有機溶剤が石油炭化水素系溶剤である(7)項記載の塗料組成物。
【0015】
(9)前記(a)成分〜(d)成分のうち、(d)成分と反応するグリシジル基を有する成分が第1液中に配合され、前記(d)成分が第2液中に配合されている2液型の組成物である(1)項〜(8)項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0016】
(10)前記(a)成分〜(d)成分のうち、(d)成分と反応するグリシジル基を有する成分が第1液中に配合され、前記(d)成分が第2液中に配合され、前記(b)成分、(c)成分及び(e)成分から選ばれる成分は前記第1液と第2液のいずれか1方又は双方に配合されていることを特徴とする(9)項記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗料組成物においては、(a)〜(d)成分という特定の4成分を組合わせる事により、オルガノポリシロキサン系塗料本来の耐候性及び耐汚染性を損なうことなく、耐屈曲性及び耐クラック性に優れ、更に乾燥性にも優れた、良好な作業環境と旧塗膜の不具合の発生を防止出来る無溶剤化が可能な塗料組成物を得る事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の2液常温硬化型のオルガノシロキサン系塗料組成物は、上記した(a)〜(d)成分を必須成分とし、必要に応じて(e)成分を含有するものであるが、使用に際しては、第1液と第2液とからなる2液を混合して調整される。まず、本発明の塗料組成に用いられる各成分について以下に説明する。
【0019】
<(a)成分>
(a)成分として用いるアルコキシ基含有有機シラン化合物は、塗料の耐候性能及び耐汚染性の点からSi含量の下限は、12質量%以上で、好ましくは20質量%である。一方、Si含量の上限は特に定めないが、好ましくは35質量%である。また、有機基と反応し得る反応性基、例えば、グリシジル、アクリル基、ビニル基を含有するアルコキシ基含有有機シラン化合物も好適に使用される。これらの化合物は1種又は2種以上の混合物でも良好に用いられる。
【0020】
ここで、(a)成分のSi含量は、道路公団規格である熱分解方法より求めることができる。具体的には、テフロン(登録商標)耐圧容器に1gの(a)成分(固形分)を精秤し、濃硫酸を2〜3ml加える。次いで、150〜160℃に加熱して24時間放置し、アルコキシ基含有有機シラン化合物を分解する。得られた硫酸溶液を、予め質量を量った白金皿に移し、ゆっくりと大気中で700〜800℃まで上昇させてアルコキシ基含有有機シラン化合物を完全に分解する。冷却後秤量し、残分から次式により、まず、シリカ(SiO2 )量を求める。
シリカ(SiO2 )量=(完全分解後の残分)/〔(a)成分(固形分)の質量〕
そして、求められたシリカ(SiO2 )量(質量%)から、次式により、Si含量(質量%)を求める。
Si含量=〔シリカ(SiO2)量×(Si/SiO2)〕
【0021】
また、本発明においては、アルコキシ基含有有機シラン化合物が、下記の一般式(1)、
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はアルキル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、OR1、アルキル基又はアリール基である)を有するシラン化合物又はその縮合物であることが好ましい。また、本発明において、(a)成分であるアルコキシ基含有有機シラン化合物は、1種類のみとしても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0022】
本発明においては、(a)成分として、上記一般式(1)中、R1がメチル基又はエチル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立にメチル基、フェニル基、メトキシ基又はエトキシ基、エポキシ基である化合物を用いることがより好ましい。
【0023】
好ましいアルコキシ基含有有機シラン化合物として、具体的には、商品名、DC3074、DC3037、SR2402(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、商品名、KR9218、KR−213、KR510、X40−9227、X40−9247、KR500、KR400、X40−9225、X40−9246、X40−9250(以上、信越化学工業社製)等の市販品が挙げられる。
【0024】
グリシジル基含有アルコキシ基含有有機シラン化合物としては、エポキシ当量(g/eq.)が100〜2000であり、質量平均分子量が150〜10000であるものが、好適に用いられる。具体的には、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(ジメチル)メトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシポリシロキサン等を例示することができる。
【0025】
また、本発明においては、グリシジル基含有シリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されている、商品名、X41−1053、X41−1056(以上、信越化学工業社製)などを(a)成分として用いることも出来る。
【0026】
さらに、(a)成分として、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシシランとグリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジル基含有不飽和モノマーと、加水分解性不飽和シリル基含有不飽和モノマーとの共重合体を用いることも出来る。
【0027】
<(b)成分>
(b)成分として用いる1分子中に2つ以上のグリシジル基を含有する化合物は、他の成分との相溶性の点から、200以上100000以下の質量平均分子量を有していて、好ましくは、200以上5000以下の質量平均分子量である。その化合物の主骨格は、特に限定するものではないが、高い耐候性性能を得るには、飽和炭化水素で構成されることが好ましい。更に、得られる塗膜に可撓性及び被塗物との密着性を向上させる点で、以下の(i)〜(iii)に示すものを用
いることが好ましい。
【0028】
(i)ヒドロキシル基含有化合物をグリシジルエーテル化した化合物:
ここで、ヒドロキシル基化合物としては、(イ)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、それに連なる一価の高級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール、左記の脱水縮合物からなるポリオール類、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール;(ロ)コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール;(ハ)低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオール;(ニ)低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0029】
具体的には、下記一般式で表せるような末端にグリシジル基を有するエーテル化合物が挙げられる。
【化2】

【0030】
(ii)環状オキシラン型化合物、グリシジルエステル型化合物、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型化合物、多価カルボン酸エステル型化合物、ビスフェノールA型化合物、水添ビスフェノールA型化合物又はノボラック型の化合物。かかる化合物の例としては、下記の一般式で示されるようなものが挙げられる。
【0031】
【化3】

【0032】
(iii)アクリル系重合体にグリシジル基含有成分をグラフトした化合物
かかる化合物として具体的にグリシジル基含有不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーの共重合体が挙げられる。ここで、グリシジル含有不飽和モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも反応性の点からグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。また、塗料組成物が架橋硬化後に、実用上好ましい可撓性を有する点では、グリシジル基含有成分をグラフトされたアクリル系共重合体のTgが―50〜10℃の範囲であり、エポキシ当量が500から1500となるようなモノマー組成にすることが好ましい。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートから構成される共重合体をもちいることができる。
【0033】
(iii)の重合に際しては、有機溶媒の使用を制限はしない。重合に用いられる溶
媒としては、溶液重合が可能であり、使用するモノマー及び得られるポリマーを溶解させることができるものであれば、特に制限はない。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼンゼン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ミネラルスピリット等が挙げられる。また、これらは、1種類又は2種類以上組み合わせて使用しても差し支えない。さらに、重合終了後、目的に応じて脱溶剤を行なうこと、溶剤の種類の変更を行なっても差し支えない。
【0034】
<(c)成分>
(c)成分として用いる硬化触媒は、有機金属化合物であることが好ましく、具体的には、Ti、Al、Zr、Sn等の金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属エステル化合物、金属シリケート化合物を用いることができる。
【0035】
金属アルコキシド化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ−n−ラウリルチタネート等のチタニウムアルコキシド;テトラエチルジルコネート、テトラ−n−プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ−n−ブチルジルコネート、テトラ−sec−ブチルジルコネート、テトラ−tert−ブチルジルコネート、テトラ−n−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ヘキシルジルコネート、テトラ−n−ヘプチルジルコネート、テトラ−tert−オクチルジルコネート、テトラ−n−ステアリルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド;ジブチル錫ジブトキシド等の錫アルコキシドが挙げられる。
【0036】
金属キレート化合物としては、例えば、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロポニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、アセチアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ−sec−ブチレート、メチルアセトアセテートアルミニウム−sec−ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)・モノ−tert−ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム等のチタニウムキレート化合物;テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、トリブトキシ(アセチルアセトナト)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)等が挙げられ、金属エステル化合物としては、例えば、ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタニウムエステル化合物;トリブトキシジルコニウムステアレート等のジルコニウムエステル化合物;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート等の錫エステル化合物等が挙げられ、金属シリケート化合物としては、例えば、ジブチル錫ビストリメトキシシリケート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリメトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケートが挙げられる。
これらの反応触媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0037】
また、硬化触媒によって塗料のポットライフや貯蔵安定性に問題が生じる場合には、ケト・エノール型互変異性化合物を併用することが好ましい。ケト・エノール型互変異性化合物としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル、マロン酸ジエステル、ベンゾイルアセトン、ジベンジイルメタン、ダイアセトンアルコール、サリチル酸メチル等が挙げられる。
【0038】
<(d)成分>
(d)成分として用いる1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物で、質量平均分子量150〜10000有していて、好ましくは、質量平均分子量150〜5000である、1分子中にアミノ基の活性水素が最低1つ以上存在するものを必要とする。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げられる。これらのものは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0039】
更に1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物をシリコーンアルコキシオリゴマー等と性能を損なわない範囲で脱アルコール縮合をおこなったものも同様に好適な利用が出来る。これらのものは、1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物として段落0026に挙げたものと組み合わせて用いることが出来る。
【0040】
(d)成分の添加量は、(a)及び/又は(b)成分のグリシジル基1当量に対し0.1〜2.0当量となることが好ましく、より好ましくは、0.5〜1.2当量である。また、(d)成分には、本発明の目的を損なわない範囲で、併用して3級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物を添加することが出来る。
【0041】
<(e)成分>
本発明の塗料組成物は、上記した必須成分である(a)〜(d)成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、塗料としての美装性・塗装作業性等及び付加性能を付与する目的で、(e)成分として、着色顔料、体質顔料、艶消し剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防藻剤、その他塗料添加剤を適宜配合することが出来る。
【0042】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、塗装作業性を改善する目的で、有機溶剤を添加することが出来る。ただし、本発明の目的には有機溶剤の使用の低減も含まれているから、使用は最小限に留めることが望ましい。使用可能な有機溶剤は、芳香族溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、石油炭化水素系溶剤のいずれにも対応可能である。これらの中では、作業環境の改善に役立つ、脂環式炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、石油炭化水素系溶剤の中で組み合わせ、使用するのが望ましい。
【0043】
本発明の塗料組成物は、塗料成分は第1液と第2液とからなり、使用に際して、かかる2液を混合する。本発明の塗料組成物においては、貯蔵安定性の点から、第1液及び第2液に調整することが望ましい。すなわち、本発明の2液型塗料組成物に含まれる各成分は、以下のように調整されていることが好ましい。また、任意成分である(e)成分は、第1液若しくは第2液のいずれかに、又は、第1液及び第2液の両方に存在させることが可能である。
【0044】
(a)成分がグリシジル基含有化合物を含む場合、
(a)成分は第1液に存在させ、
(b)成分は第1液に存在させ、
(c)成分は第1液及び/又は第2液に存在させ、
(d)成分は第2液に存在させ、
(e)成分は第1液及び/又は第2液に存在させる。
【0045】
(a)成分がグリシジル基含有化合物を含まない場合、
(a)成分は第1液及び/又は第2液に存在させ、
(b)成分は第1液に存在させ、
(c)成分は第1液及び/又は第2液に存在させ、
(d)成分は第2液に存在させ、
(e)成分は第1液及び/又は第2液に存在させる。
【0046】
本発明の塗料組成物の製造方法については、特に制限はなく、使用の際に第1液と第2液とを混合・撹拌すればよい。なお、第1液と第2液とを混合割合についても特に制限はない。また、塗料としての可使時間は3〜8時間とすることが好ましい。
【0047】
本発明の塗料組成物は、常温硬化、低汚染高耐候性であることから、機械、船舶、車両、航空機、土木、建築、重防食、その他一般工業分野において好適に用いられる。特に、本発明の塗料組成物を用いると、オルガノポリシロキサン系塗料でありながら、その性能を損なうことなく、優れた可撓性を示す塗膜が得られる為、これまで使用を躊躇われた被塗物に対し好適である。また、本発明の塗料組成物は、10〜20年といった長期に渡る塗膜性能の維持が期待できるので、高層ビル等に使用される窯業系・金属カーテンウォール等、メンテナンスサイクルが長期の分野に好適に用いることが出来る。
【0048】
以上のように、本発明の塗料組成物においては、(a)〜(d)成分という特定の4成分を組み合わせることにより、オルガノポリシロキサン系塗料本来の耐候性及び耐汚染性を損なわず、可撓性にも優れたオルガノポリシロキサン系塗料組成物を得ることが出来る。また、(a)〜(d)成分の配合量を特定の量とすることにより、耐候性、耐汚染性、耐屈曲性、耐クラック性及び耐アルカリ性の全てにおいて優れた性能を有する塗料組成物を得ることになる。
【0049】
さらに、本発明の塗料組成物は、(a)〜(d)成分の配合量を特定の量とすることにより、(e)成分に有機溶剤を加えなくとも、塗装作業性が良好な塗料に設計可能となる。本発明の塗料組成物は、そのものが、低臭気の成分で構成されている為、環境に配慮した塗料に設計することが出来る。また、塗装作業時に粘性調整を必要とした場合においても、溶解力が低いとされる、石油炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤に対しても可溶で、好適に希釈可能であり、旧塗膜のある箇所、耐溶剤性の乏しい基材への塗装に用いることが出来る。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について具体的な実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、実施例、比較例で用いられる塗料組成物の物性評価法について説明する。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0051】
<耐屈曲性>
耐屈曲性の評価は、JIS K 5600−5−1に準拠し、心棒の直径が10mmのものを使用した。また、試験片としては、150×50×0.3mmの鋼板に、乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物を刷毛で塗布し、23℃、50%RHの条件下で4日間養生後、更に80℃で3日間の強制乾燥を行ったものを使用した。評価は目視により塗膜の屈曲部を観察し、試験片の割れ、剥がれのないものを「○」とし、それ以外を「×」とした。
【0052】
<耐クラック性>
耐クラック性はJIS K 5600−7−4(耐湿潤冷熱繰返し性)に準じ、23℃の水に18時間浸水しその後−20℃の冷凍庫で3時間、更に50℃で3時間加温した。この繰返しを50サイクル行い、試験終了後の塗膜の状態を目視にて観察し、塗膜における割れ、膨れ及び白化の程度を以下の3段階で評価した。なお、試験片は、70×70×6mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物を刷毛で塗装し23℃、50%RHの条件下で4日間養生後、更に80℃で3日間の強制乾燥を行うことにより作成した。
○:塗膜に変化が見られない。
△:塗膜の一部に割れ、膨れが認められる。
×:塗膜に著しい割れ、膨れが認められる。
【0053】
<促進耐候性>
促進耐候性試験は、超促進耐候試験機〔岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスター〕を用いて行った。また、試験片は、50×50×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜が50μmになるように塗料組成物を刷毛で塗装し、23℃、50%RHの条件下で7日間乾燥を行うことにより作製した。試験条件としては、波長295〜450nm、紫外線照射度100mW・cm2、ブラックパネル温度63℃、50%RH、1サイクルを照射4時間、結露4時間とし、125サイクル(1000時間)試験した。試験終了後、塗膜の初期60度鏡面光沢値に対する光沢保持率を求め、以下の3段階で評価した。
○:光沢保持率 70%以上
△:光沢保持率 50%以上、70%未満
×:光沢保持率 50%未満
【0054】
<耐アルカリ性>
耐アルカリ性試験は、JIS K 5600−6−1に準じ、水酸化ナトリウムを脱イオン水で5W/V%に調整した液に、試験片を23℃の条件下で7日間浸漬させた。浸漬後、試験片を流水で静かに洗い、2時間乾燥させて、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、つやの変化を目視によって観察し、3段階で評価した。なお、試験片としては、150×70×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように刷毛で塗装し、23℃、50%RHの条件下で14日間乾燥したものを用いた。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
【0055】
<付着性>
付着性試験は、JIS K 5600−5−6 クロスカット法に準じ、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、碁盤目状(25マス;縦5分割×横5分割)に切り傷をつけ、この碁盤目の上にセロハン粘着テープをはり、テープの一端を持って塗面に直角方向に瞬間的に引き剥がし、塗膜の剥がれの面積を測定することで行った。なお、試験片としては、150×70×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように刷毛で塗装し、23℃、50%RHの条件下で14日間乾燥したものを用いた。塗膜の全面積に対する塗膜の剥がれの面積から、付着性を以下の通り評価した。
○:塗膜の剥がれの面積が全面積の5%未満の場合
△:塗膜の剥がれの面積が全面積の5%以上、35%未満の場合
×:塗膜の剥がれの面積が全面積の35%以上の場合
【0056】
<強制汚染>
150×70×0.8mmのアルミ板に乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物を刷毛で塗装し、23℃、50%RHの条件下で14日間乾燥し、試験片を作製した。得られた試験片に、カーボン懸濁水(デグサ・ヒュルス社製カーボンブラックColor Black FW200 5部と脱イオン水95部にガラスビーズを加えペイントシェーカー2時間分散した分散液)をエアスプレーで、隠蔽するまで塗布し、直ちに60℃で1時間乾燥させた。乾燥後、室温まで放冷し、試験片の表面を流水下にてを使用して、汚れ物質が落ちなくなるまで洗浄した。洗浄後、室温で3時間乾燥し、汚れの程度を色差計にて測定して、試験前後における塗膜の明度差(△L*)を求め、以下の3段階で評価した。なお、明度差が小さいものほど、耐汚染性に優れた塗料であることを示している。
明度差(△L*)=[試験後の塗膜明度(L*1)−試験前の塗膜明度(L*0)]
○:明度差 −5以上
△:明度差 −10以上 −5未満
×:明度差 −10未満
【0057】
<乾燥性>
乾燥性の評価はJIS K 5600−1−1指触乾燥に準じて、行うことが出来る。なお、試験片としては、150×70×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように刷毛で塗装し、23℃、50%RHの条件下で乾燥し、塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れなくなるまでの時間を計測し、以下の3段階で評価する
○:乾燥時間 4時間以内・・・・乾燥性良好
△:乾燥時間 4時間以上、8時間未満・・・・乾燥性普通
×:乾燥時間 8時間以上・・・・乾燥性不良
【0058】
<総合評価>
上に示した塗料組成物の性能測定の結果に基づき、塗料組成物の総合評価を以下に示す規準で行った。
○:全てが○の評価であり、塗料組成物として非常に好適に使用できるレベル
△:△の評価があり、塗料組成物として使用できるレベルであるが、その用途が限られる場合がある。
×:×の評価があり、塗料組成物としての使用が困難なレベル。
【0059】
次に、塗料組成物に配合する成分について説明する
<(a)成分>
(a−1)メチルフェニル系アルコキシシランオリゴマー (商品名:KR−510 信越化学工業社製、Si原子約25%)
(a−2)メチル系アルコキシシランオリゴマー(商品名KR−500 信越化学工業社製 Si原子約31%)
(a−3)グリシジル基含有シリコーンオリゴマー(商品名X−41−1053信越化学工業社製 エポキシ当量820、Si原子≒23%)
【0060】
<(b)成分>
(b−1)アデカレジンEP−4080S (旭電化社製 エポキシ当量240 分子量480 )
(b−2)アデカグリシロールED−506(旭電化社製 エポキシ当量310 分子量620)
(b−3)アデカオプトマーKRM−240(旭電化社製 エポキシ当量≒250 分子量≒500)
【0061】
<(c)成分>
(c−1)アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート
(c−2)ジブチル錫ジアセテート
【0062】
<(d)成分>
(d−1)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−903 信越化学工業社製)
(d−2)γ−(2アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−1122 日本ユニカー社製)
【0063】
<(e)成分>
(e−1)ルチル型酸化チタン (デュポン社製)
(e−2)高分子湿潤分散剤(商品名:Disperbyk 110 BYKケミー社製)
(e−3)ヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200 アエロジル社製)
(e−4)表面調整剤(商品名:BYK−300 BYKケミー社製)
【0064】
以上の(a)成分〜(e)成分を表1に示すように配合した実施例1〜5及び比較例1〜3の塗料組成物調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1は本発明の標準配合組成物であり、本発明の意図する耐屈曲性、耐クラック性、耐候性、耐汚染性に優れ、付着性、乾燥性等の塗装作業性に優れた塗料組成物であることがわかる。
実施例3は実施例1の配合の(a)成分にエポキシ基含有メトキシ基含有シリコーンオリゴマーを添加し、アミノ基含有シラン化合物を1級と2級の2つのアミノ基を持つ化合物に変えた組成物であるが、塗膜性能、塗装適性も良好である。塗料組成物設計の自由度が大きく、目的用途に応じて、適切な原料を選択できる。
【0067】
実施例2は、1,2級アミノ基含有シラン化合物と3級アミノ基含有シラン化合物を併用した場合の塗料組成物の例であるが、実施例1と同様の結果を得た。また、実施例2の(d)成分を3級アミノ基含有シラン化合物に置換した比較例3は、低反応性のために、塗膜物性、塗装適性の面で、性能不足を来たしているが、1,2級アミノ基含有シラン化合物と併用すれば3級アミノ基含有シラン化合物も使用できる事は、塗料組成物設計の自由度が大きく、好ましい。
【0068】
実施例4は、実施例1の配合をベースに塗料配合を行った場合の塗膜物性、塗装適性である。何れも実施例1で得られた性能を確保していることがわかる。
実施例5は、被塗物の状況によっては、本発明の塗料組成物の粘度、粘性を調整する必要がある場合を想定し、実施例1の配合の1液、2液夫々に10%の石油炭化水素系有機溶剤を含ませたハイソリッド配合例である。この場合も、塗膜物性、塗装適性は好適に確保される。
【0069】
比較例1は(a)成分の限定条件Si原子12%以上の限外であるSi原子約10.2%のアルコキシ基含有有機シラン化合物を用いた場合の例であるが、シロキサン結合の不足と思われる塗膜欠陥が見られる。
比較例2は(b)成分に大過剰(エポキシ1当量に2当量以上のアミン)の(d)成分を配合した場合、未反応遊離アミンによると思われる塗膜性能、塗装適性の低下を生じる。
【0070】
以上のように、本発明の目的である、優れた耐屈曲性及び耐クラック性を有し、塗装後の乾燥性にも優れた、無溶剤化、ハイソリッド化の可能な2液常温硬化型オルガノポリシロキサン系塗料組成物の提供が可能となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Si含量が12質量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物
(b)1分子中に2つ以上のグリシジル基を含有する化合物
(c)硬化触媒
(d)1級又は2級アミノ基を有するアルコキシ基含有有機シラン化合物
を含必須成分として含有する塗料組成物。
【請求項2】
前記(a)成分、(b)成分(c)成分及び(d)成分に、さらに(e)着色顔料、体質顔料、艶消し剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防藻剤及びその他の塗料添加剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記(a)成分が、下記一般式(1)で表されるシラン化合物又はその縮合物である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はアルキル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、OR1、アルキル基又はアリール基である)
【請求項4】
前記(b)成分が、
(i)ヒドロキシル基含有化合物をグリシジルエーテル化した化合物、
(ii)環状オキシラン型化合物、グリシジルエステル型化合物、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型化合物、多価カルボン酸エステル型化合物、ビスフェノールA型化合物、水添ビスフェノールA型化合物及びノボラック型化合物から選ばれる化合物、及び
(iii)アクリル系重合体にグリシジル基含有成分をグラフトした化合物から選ばれる化合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記(b)成分の質量平均分子量が200以上、100,000未満であり、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の含有量が(a)成分100質量部に対して(b)成分30〜200質量部、(c)成分0.1〜30質量部及び(d)成分10〜150質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記(e)成分を前記(a)成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有する請求項2〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
さらに、有機溶剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記有機溶剤が石油炭化水素系溶剤である請求項7記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記(a)成分〜(d)成分のうち、(d)成分と反応するグリシジル基を有する成分が第1液中に配合され、前記(d)成分が第2液中に配合されている2液型の組成物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記(a)成分〜(d)成分のうち、(d)成分と反応するグリシジル基を有する成分が第1液中に配合され、前記(d)成分が第2液中に配合され、前記(b)成分、(c)成分及び(e)成分から選ばれる成分は前記第1液と第2液のいずれか1方又は双方に配合されていることを特徴とする請求項9記載の塗料組成物。



【公開番号】特開2006−36985(P2006−36985A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220692(P2004−220692)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(591137086)恒和化学工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】