説明

塗料調合方法及び塗料調合システム

【課題】 調合工程において気泡を巻き込まずに適度な攪拌及び分散混合が行え、コスト的にも有利で、洗浄容易な塗料調合方法及び塗料調合システムを提供する。
【解決手段】 混合分散すべき塗料原料を収容するための調合タンク2と、調合タンク2内の塗料原料を吸引し調合タンク2内の塗料原料中に吐出するポンプ3と、該ポンプ3と塗料原料の吐出口4との間に介在された流路絞り部5と、を有し、吐出口4を前記調合タンク内の塗料原料中に液没される位置に配置することにより、攪拌及び混合分散を行うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を調合するシステム及び方法に係り、詳しくは、調合工程において、顔料ペーストや添加剤等を塗料用液中に微粒化させて攪拌及び分散混合する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料の製造では、前練り工程や調合工程において、パドル翼式攪拌機や高速ディゾルバー(ディスパーサーとも言う。)が多用されている。しかしながら、パドル翼式攪拌機や高速ディゾルバーは、パドル翼やディゾルバー羽根の回転数を上げるとボルテックスによって気泡を巻き込むため、回転数を落として処理しようとすると、水性塗料の調合や相溶性の悪い添加剤を調合するのに必要な剪断力を得ることが困難であるという問題がある。そのため、高速ディゾルバー等に代えて、気泡の巻き込みが少ないホモミキサー(ローター/ステーター式ホモジナイザー)が使用されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭57−42324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、高速ディゾルバー等をホモミキサーに変更するには付帯電気設備の変更を含めてコストが嵩むし、ホモミキサーは洗浄性が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、調合工程において気泡を巻き込まずに適度な攪拌及び分散混合が行え、コスト的にも有利で、洗浄容易な塗料調合方法及び塗料調合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る塗料調合方法は、調合タンクに混合分散すべき液状の塗料原料を投入し、前記調合タンク内の塗料原料をポンプによって吸引し、該ポンプによって、吸引した塗料原料を、流路絞り部を通過させた後に、前記調合タンク内の塗料原料中に液没させた吐出口から吐出させることにより、攪拌及び混合分散を行うことを特徴とする。
【0006】
前記ポンプを前記調合タンク外に設置し、前記調合タンク内の原料塗料を、ポンプを介して外部流路と調合タンクとを循環させても良いし、または、水性塗料の場合には前記ポンプを前記調合タンク内に水没設置しても良い。また、塗料原料は、前記システムで循環しながら途中で調合タンクに追加しても良い。
【0007】
前記流路絞り部内の平均流速は、5〜100m/sとすることが好ましい。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る塗料調合システムは、混合分散すべき塗料原料を収容するための調合タンクと、前記調合タンク内の塗料原料を吸引し前記調合タンク内の塗料原料中に吐出するポンプと、該ポンプと塗料原料の吐出口との間に介在された流路絞り部と、を有し、前記吐出口が前記調合タンク内の塗料原料中に液没される位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
前記システムにおいて、前記ポンプが前記調合タンク外に設置され、該ポンプの吸引口が前記調合タンクの排出口とが管接続され、前記ポンプの吐出口に接続された循環用配管の先端を前記塗料原料の吐出口とし、前記循環用配管の先端部または途中位置に前記流路絞り部を設けても良いし、または、水性塗料の場合には前記ポンプを水中ポンプとし、前記調合タンク内に配置しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る塗料調合方法及び製造システムについて、以下に図1を参照しつつ説明する。なお。全図を通し、同様の構成部分には同符号を付した。
【0011】
図1は、本発明に係る塗料調合システムの好適な実施形態を概略的に示すシステム図である。
【0012】
塗料調合システム1は、混合分散すべき塗料原料を収容するための調合タンク2と、調合タンク2内の塗料原料を吸引し調合タンク2内の塗料原料中に吐出するポンプ3と、ポンプ3と塗料原料の吐出口4との間に介在された流路絞り部5と、を有し、吐出口4が調合タンク2内の塗料原料中に液没される位置に配置されている。
【0013】
図示例においてポンプ3は調合タンク2の外部に設置され、ポンプ3の吸引口が調合タンク2の排出口2aと管接続され、ポンプ3の吐出口に接続された循環用配管6の先端を塗料原料中に液没させている。循環用配管6の途中位置には流路絞り部5が介在されている。流路絞り部5は、循環用配管6の先端部に設けることもできる。ポンプ3としては、例えばダイヤフラムポンプを使用することができる。
【0014】
なお、図示しないが、水性塗料の場合にはポンプ3を水中ポンプとし、調合タンク2内に配置することも可能である。この場合、例えば、水中ポンプの吐出口に流路絞り部を接続し、水没させることができる。水中ポンプの固定は、例えば、水中ポンプに支持部材を設けて調合タンク2の外部に該支持部材を固定するか、或いは、水中ポンプに吸盤等を設けて調合タンク2内に吸着固定しても良い。
【0015】
流路絞り部5は、流れ方向に複数の流路をせばめた孔を備えることができる。流路絞り部5の形態は、ノズル、オリフィス等、特に限定されず、流速を速めることができるものであれば良い。
上記構成を有する塗料調合システム1は、次のようにして使用される。
【0016】
まず、調合タンクに混合分散すべき液状の塗料原料を投入する。塗料原料によって製造される塗料には、水性塗料、油性塗料、クリア塗料等があり、調合タンクに投入する塗料原料は、前練り工程及びビーズミル等による分散工程を既に終えた原料である。調合工程で使用する塗料原料は、分散工程で得られた顔料ペースト(顔料の凝集体である2次粒子を展色剤中で1次粒子に分散混合させた混合ペーストで比較的高粘度のもの)と、分散媒(展色剤またはビヒクルとも言う。)、添加剤等を混合させたものである。
【0017】
調合タンク2内に所定量の塗料原料を注入した後、ポンプ3を駆動する。調合タンク内の塗料原料は、ポンプ3によって吸引され、ポンプ3から循環用配管6に圧送される。循環用配管6を圧送される塗料原料は、循環用配管6に介在された流路絞り部5を通過した後に、調合タンク2内の塗料原料中に液没させた循環用配管6の吐出口4から噴き出る。
【0018】
吐出口4から塗料原料が吹き出すことにより、調合タンク2内に攪拌流が生じ攪拌が行われるとともに、顔料及び添加剤等の分散が行われる。
【0019】
こうして塗料原料(例えば1kL)を所要時間(例えば、0.3〜3時間)循環させると、顔料及び添加剤等が微粒化されており、ホモミキサー(ローター/ステーター式ホモジナイザー)より高い微粒化能力を発揮することが分かった。これは、塗料原料が流路絞り部5内を高速で通過する際に、流路絞り部で剪断力を受けることと、流路絞り部5から噴出する際に塗料原料と衝突することによるものと考えられる。
【0020】
このような微粒化効果は、流路絞り部5内の平均流速が重要なファクターとなっている。微粒化に適した流速は、流路絞り部5内の流速は、2m/s以上、好ましくは、5m/s以上である。流路絞り部5内の平均流速は、速いほど良いと考えられるが、調合すべき塗料の粘度、ポンプ性能等を考慮すれば100m/s以下である。
【0021】
また、通常処理される塗料原料の粘度範囲(0.001〜10 Pa・s)において上記微粒化効果に必要な流速を得るには、流路絞り部5の最小孔径を、0.3〜30mmとすることが好ましい。
【0022】
なお、必要に応じて、ボルテックスによって気泡を巻き込まない程度の低速で回転するパドル翼等の大型翼を調合タンク2内に配置しても良い。
【0023】
上記のシステムは、ポンプ、流路絞り部、配管という比較的安価な機器を組み合わせることにより、従来装置と同等以上の性能を発揮することができ、従来の装置では効率的な分散が難しかった水性塗料の分散も効率的に為し得る。また、ポンプ3の吸引口と調合タンク2に通常付設されている排出口を配管接続し、ポンプの吐出口に配管接続した配管の先を調合タンク内に液没する等といった単純な組み立て作業で済み、既存設備をそのまま使用できる。さらに、上記システムは、ポンプを通じて洗浄液を流路絞り部、配管の中に流すだけで洗浄できるので洗浄も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る塗料調合システムの好適な実施形態を概略的に示すシステム図である。
【符号の説明】
【0025】
1 塗料調合システム
2 調合タンク
3 ポンプ
4 吐出口
5 流路絞り部
6 循環用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調合タンクに混合分散すべき液状の塗料原料を投入し、前記調合タンク内の塗料原料をポンプによって吸引し、該ポンプによって、吸引した塗料原料を、流路絞り部を通過させた後に、前記調合タンク内の塗料原料中に液没させた吐出口から吐出させることにより、攪拌及び混合分散を行うことを特徴とする塗料調合方法。
【請求項2】
前記ポンプを前記調合タンク外に設置し、前記調合タンク内の原料塗料を、ポンプを介して外部流路と調合タンクとを循環させることを特徴とする請求項1記載の塗料調合方法。
【請求項3】
前記ポンプを前記調合タンク内に水没設置することを特徴とする請求項1記載の塗料調合方法。
【請求項4】
前記流路絞り部の平均流速を、5〜100m/sとしたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の塗料調合方法。
【請求項5】
前記塗料原料が水性塗料原料であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の塗料調合方法。
【請求項6】
前記塗料原料が油性塗料原料であることを特徴とする請求項1,2,4の何れかに記載の塗料調合方法。
【請求項7】
混合分散すべき塗料原料を収容するための調合タンクと、前記調合タンク内の塗料原料を吸引し前記調合タンク内の塗料原料中に吐出するポンプと、該ポンプと塗料原料の吐出口との間に介在された流路絞り部と、を有し、前記吐出口が前記調合タンク内の塗料原料中に液没される位置に配置されていることを特徴とする塗料調合システム。
【請求項8】
前記ポンプが前記調合タンク外に設置され、該ポンプの吸引口が前記調合タンクの排出口とが管接続され、前記ポンプの吐出口に接続された循環用配管の先端を前記塗料原料の吐出口とし、前記循環用配管の先端部または途中位置に前記流路絞り部を設けたことを特徴とする請求項7記載の塗料調合システム。
【請求項9】
前記ポンプが水中ポンプであり、前記調合タンク内に配置されていることを特徴とする請求項7記載の塗料調合システム。
【請求項10】
前記流路絞り部が複数のオリフィスによって形成されていることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載の塗料調合システム。
【請求項11】
前記流路絞り部の最小孔径が0.3〜30mmであることを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の塗料調合システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−143847(P2006−143847A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334448(P2004−334448)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】