説明

塗料配合物

【課題】ガラス板等の無機物に塗布した塗膜の各種耐久性を改善するとともに、透明性も改良したアクリル−ウレタン系塗料配合物を提供することを目的とする。
【解決手段】アクリルポリオール、イソシアネート、有機溶剤、及び着色剤からなるアクリル‐ウレタン系の塗料配合物において、前記着色剤が塩ビ酢ビ共重合体を分散剤とした粒径が0.11〜0.20μmの顔料を含むことを特徴とする塗料配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料配合物に係り、詳しくはガラス等の無機物の基板に塗布した塗膜の各種耐久性に優れた塗料配合物に関わる。
【背景技術】
【0002】
ガラスコップ、ガラス瓶、室内インテリア、窓ガラス等のガラス製品、ガラスフィルター、看板、各種ディスプレイ、さらには自動車用外装材の塗装・着色等ガラス製品の着色には、従来、例えばガラスフリット法、合わせガラス法がある。しかし、ガラスフリット法では、ガラスフリット、顔料、バインダーからなる着色剤をガラス基板に塗布し、500°C以上の温度で焼き付ける必要があるため、冷却時のガラスの二次加工が困難になるという問題があり、これは裁断等の二次加工の必要がある室内インテリア向けへの適用を困難にしていた。
【0003】
又、合わせガラス法においては、着色したポリエステルフィルムを挟んだポリブチラールフィルムをガラス板で挟んで5層構造の積層体を作製するが、構造、製造工程が複雑となり、コスト高の問題もある。
【0004】
一方、有機樹脂法においては、特許文献1や特許文献2に開示されているように、顔料を添加したアクリル−メラミン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂等の有機樹脂をガラス板表面にスクリーン印刷、スプレー、刷毛塗り等の方法で塗布し、300°C以下の温度で熱処理してガラス基板に焼き付ける。焼付温度が300°C以下であるため、ガラス板の二次加工が容易であるという利点があるが、ガラス板との接着力が不十分で、耐酸、耐アルカリ等各種耐久性に劣るという問題があった。
【特許文献1】特開平10−152632号公報
【特許文献2】特開平11−012530号公報
【0005】
そこで、特許文献3においては、アクリルポリオール、イソシアネート、有機溶剤、及び着色剤からなるアクリル−ウレタン系の塗料配合物においてアクリルポリオール及びイソシアネートからなる主剤に、3官能性のシリコンアルコキシドを、前記主剤の固形分に対してその有効成分が0.5〜15質量%となるように添加した。
【特許文献3】特開2002−322414号公報
【0006】
この改良で、得られた塗料配合物は、塗膜硬度に優れ、ガラス板等の無機物からなる基板に塗布した場合でも、各種耐久性に優れた塗料配合物を提供できるようになった。
【0007】
ところが、透明性が求められる照明機器のカバー等にこれらの塗料配合物を塗布した
場合に塗膜に曇りが発生するという問題が起こっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点を解決する為のものであり、ガラス板等の無機物に塗布した塗膜機の各種耐久性を改善するとともに、透明性も改良したアクリル−ウレタン系塗料配合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成する為に請求項1としてはアクリルポリオール、イソシアネート、有機溶剤、及び着色剤からなるアクリル‐ウレタン系の塗料配合物において、前記着色剤が塩ビ酢ビ共重合体を分散剤とした粒径が0.11〜0.20μmの顔料を含む塗料配合物にある。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記塗料配合物がチクソトロピック剤として脂肪酸アミドを含有する請求項1に記載の塗料配合物にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、アクリルポリオール、イソシアネート、有機溶剤、及び着色剤からなるアクリル‐ウレタン系の塗料配合物において、前記着色剤が塩ビ酢ビ共重合体を分散剤とした粒径が0.11〜0.20μmの顔料を含む塗料配合物であることから、透明度が高い塗料配合物とすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、上記塗料配合物がチクソトロピック剤として脂肪酸アミドを含有する請求項1又は2に記載の塗料配合物であることから、塗膜のタレを防止でき、厚く塗ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
アクリルポリオールは、塗料用として一般的に用いられるものであって、スプレー印刷を始め、ディッピング、スクリーン、コーティング等の方法でガラス等の基板に塗布される。スプレー印刷の場合は、低沸点溶剤を主とし、樹脂分は、10〜50質量部となるように調整する。ここで、低沸点溶剤とはキシレン、ブタノール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン等の溶剤が使用でき、沸点は、80°C〜200°Cのものが使用できる。又、スクリーン印刷の場合は、液状のアクリルポリオールを高沸点有機溶剤に混合してロータリーエバポレーター等を用いて蒸留し、低沸点溶剤を揮発させ、高沸点溶剤に溶剤置換する。ここで低沸点溶剤とは、トルエン、キシレン、アセトン、ブタノール、酢酸ブチル等である。溶剤置換後の樹脂分は30〜80質量部となるように調整される。
【0014】
上記高沸点有機溶剤は、150〜250°Cの沸点を有する溶剤であって、例えばカルビトール、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルイミダゾリジノン、ターピノール、ジアセトンアルコール等がある。沸点が150°C未満の溶媒では、本発明の塗料配合物が印刷時にスクリーンのメッシュに詰まりやすくなり、又250°Cを超える溶媒では、熱処理によっても溶剤が揮発しない問題がある。
【0015】
ポリイソシアネートも塗料用として一般的なものであって、スクリーン印刷用塗料として1液性で使用するためには、安定性の高いブロックイソシアネートが用いられる。アクリルポリオールに対して、NCO/OH=1/1(当量比)の混合比で添加される。上記溶剤置換したアクリルポリオールに上記イソシアネートを加えたものを以下、主剤と呼ぶ。
【0016】
本発明の塗料配合物には、着色剤として、塩ビ酢ビ共重合体を分散剤とした粒径が0.11〜0.20μmの顔料を含んでいることが好ましい。
【0017】
顔料としては、粒径が0.11〜0.20μmの顔料を用いることが好ましい。粒径が0.11μmより小さいと、一般的に分散性が低下するという問題があり、一方0.20μmを越えると塗料として使用したときに透明度が低下する。
【0018】
次に、本発明の塗料配合物を用いて、スプレー印刷を行う方法を説明する。
印刷基板となるガラス板等に、スプレーにて塗装を行う。
印刷基板のガラス板は材質は特に問わずアルカリガラス、石英ガラス、フロートガラス、
強化ガラス等、目的に応じて用いられる。又例えば、照明器具の光源(ランプ)をカバ
ーするガラス製や樹脂製のランプカバー(照明器具用カバー)などの透光部材を適用し、
このランプカバーに対して着色やコーティングを行うために、上記塗料組成物にて塗膜を
形成することができる。又、基材としては、このようなランプカバーに限らないものであ
り、例えば外壁、タイル等、看板、指示板、ステッカー、窓ガラス、ディスプレイ等の各
種ガラス板や樹脂板、金属板、各種ガラス若しくは樹脂フィルター、紫外線カットフィル
ター等、時計、ケース、ビーズ等のガラス製又は樹脂製の小物等を基材とし、これらのも
のに表面保護用コーティングを行ったり着色を行ったりする為に、上記のような塗料組成
物にて塗膜を形成することができる。
【0019】
塗料配合物の塗布に続いて熱処理を行う。これは上記主剤とシリコンアルコキシドの混合物を重縮合させるためのものであって、具体的には130°C〜300°Cの雰囲気温度、1〜60分の加熱時間で行われる。130°C未満では主剤とシリコンアルコキシドの混合物との重縮合反応が進行せず、又300°Cを超えると塗膜が黄色に変色する。
【0020】
尚、スプレー印刷以外の方法、例えばスクリーン印刷などの場合は高沸点の溶剤への溶
剤置換が必要になる場合がある。
【実施例】
【0021】
実施例1〜5、比較例1〜5
アクリルポリオールに、表1に従って、ブロックイソシアネートを加えて主剤を作製した。ここで作製した主剤の固形分濃度は61質量%であった。
【0022】
【表1】

【0023】
作製した主剤を攪拌しながら顔料を添加し、最後に脂肪酸アマイドを添加した。攪拌は、500rpm程度で15分以上行った。スプレー直前に上記配合物と、シンナー、シリコンアルコキシドを混合して攪拌し、スプレー塗装を行った。配合物中に脂肪酸アマイドを添加していたことから、塗装後のタレは発生しなかった。脂肪酸アマイドを添加しなかったものはタレが発生した。実施例の配合物を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
作製した前記配合物をガラス板上に塗布し、表3に示す各顔料による透明性を評価した。測定方法は、動的光散乱法によった。
【0026】
【表3】

【0027】
比較例は、それぞれ平均粒子径が0.2μmを超える顔料を使用した。そして、実施例と同様の方法で膜厚当たりの濁度を測定した。その結果を表4に示す。
【0028】
【表4】

【0029】
平均粒子径が0.2μm以内である実施例は膜厚当たりの濁度も0.1%/μm以下となっており、平均粒子径が0.2μmを超える比較例の膜厚当たりの濁度は、0.6%/μm以上となっている。従って、比較例に比べて実施例は透明度が格段に上昇していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオール、イソシアネート、有機溶剤、及び着色剤からなるアクリル‐ウレタン系の塗料配合物において、前記着色剤が塩ビ酢ビ共重合体を分散剤とした粒径が0.11〜0.20μmの顔料を含むことを特徴とする塗料配合物。
【請求項2】
上記塗料配合物がチクソトロピック剤として脂肪酸アミドを含有する請求項1又は2に記載の塗料配合物。

【公開番号】特開2010−84038(P2010−84038A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255525(P2008−255525)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】