説明

塗料

【課題】金属独特の高輝度な鏡面光沢感を発現し、有害なクロム化合物などを使用することなくメッキに代替し得る意匠性を有する安全でかつ環境負荷の小さい塗膜を形成し得る塗料を提供すること。
【解決手段】レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料において、金属箔(A)と樹脂組成物(B)との含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であり、かつ上記樹脂組成物(B)の乾燥温度における初期粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック調塗料に関する。より詳しくは、輝度が高く、金属表面様の鏡面光沢感を有するメタリック調塗膜を形成し得る塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウム、クロム、銀、金などの金属を加工した微粉、箔、およびガラスフレークなどの表面にこれらの金属層を蒸着やメッキなどにより付与した微粉などを利用したメタリック調塗料は公知であり、プラスチックやフィルムなどの非金属材料の表面に金属様の意匠を付与することができるため、家電、車両、スポーツ用品、玩具などの多くの産業分野において広く利用されている。
【0003】
また、金属粉として金属箔を利用した塗料も上市されており、金属箔が塗膜中で配向性を有することから鏡面光沢性の向上を目的として開発されたものと考えられるが、塗工後の塗膜中の金属箔の配向乱れおよび凝集により、研磨した金属やメッキ、金属蒸着膜に見られるような金属独特の高輝度な鏡面光沢感は得られていない。
【0004】
すなわち、金属箔は、単独で同一平面上に配向すれば、鏡面金属様の外観を呈するものである。しかしながら、これら金属箔を用いて、例えば、特許文献1に記載されている一般的な塗料バインダーであるアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの塗膜形成樹脂、溶剤および他の添加剤からなる塗料とした場合、該塗料を基材に塗布および乾燥時の溶剤揮散に伴う該塗料の対流および急激な粘度上昇により金属粉の凝集および配向乱れが生じ、金属箔が本来発現し得る鏡面金属様の光沢を大きく低下させてしまう。さらに、これらの塗料バインダーは一般に耐溶剤性が低く、溶剤により塗膜が容易に膨潤または溶解するため、例えば、塗膜表面に保護層を設けるため、溶剤系のクリアー樹脂を塗膜表面に上塗り塗布した場合など、光沢をさらに低下させるなどの欠点を有していた。
【特許文献1】特開平11−80620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために為されたものである。すなわち、本発明の目的は金属箔を使用したメタリック調塗料において、前述の問題点である、塗工後の金属箔の配向乱れおよび凝集に起因する光散乱を抑制することにより、金属独特の高輝度な鏡面光沢感を発現し、有害なクロム化合物などを使用することなくメッキに代替し得る意匠性を有する安全でかつ環境負荷の小さい塗膜を形成し得る塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的は以下の本発明によって達成される。
1.レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料において、金属箔(A)と樹脂組成物(B)との含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であり、かつ上記樹脂組成物(B)の乾燥温度における初期粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする塗料。
2.鱗片状の金属箔(A)が、アルミニウムを主体とした蒸着金属箔である前記1に記載の塗料。
3.硬化性樹脂組成物の架橋反応機構の一部または全てが、下記一般式(1)で示されるシラノール基またはアルコキシシリル基の縮合反応である前記1に記載の塗料。
一般式(1) −Si−OR
(式中Rは水素原子または一価の炭化水素基である。)
【発明の効果】
【0007】
上記本発明によれば、塗工後の金属箔の配向乱れおよび凝集に起因する光散乱を抑制することにより、金属独特の高輝度な鏡面光沢感を発現し、有害なクロム化合物などを使用することなくメッキに代替し得る意匠性を有する安全でかつ環境負荷の小さい塗膜を形成し得る塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の塗料における鱗片状の金属箔は、配向により研磨金属様の鏡面光沢を有するものであればよく、その材質については特に制限はないが、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ニッケルなどの金属および合金を薄く箔状にしたものが例示される。また、これら金属箔は、工業用塗料としてスプレーなどにより塗布されることを考慮すれば、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径は50μm以下である。好ましい平均粒径は5〜50μmである。平均粒径が5μm未満では金属箔外周部、すなわち、金属箔の端面の割合が増えるために、これらの端面に起因する光散乱の増加により、本発明の塗料から形成される塗膜の鏡面光沢が低下するので好ましくない場合がある。一方、平均粒径が50μmを超えると、本発明の塗料をスプレーなどで塗布する場合の塗工性が悪くなったり、また、金属箔の折れ曲がりやカールなどの変形が増え、本発明の塗料から形成される塗膜の鏡面光沢が低下するので好ましくない。なお、本発明における「平均粒径」とは、金属箔の厚みではなく、金属箔の長径の平均を意味する。
【0009】
また、コストおよび原料の入手のし易さから、本発明の塗料における鱗片状の金属箔としては、アルミニウムを主体とした金属粉を溶剤とともにボールミルなどを用いて展延および粉砕することにより得られるアルミニウムペースト顔料およびこのアルミニウムペースト顔料から溶剤を除去したアルミニウムフレークが好ましい。このような鱗片状の金属箔として、例えば、東洋アルミニウム株式会社製アルミニウムペースト(商品名;「0620MS」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径14μm)、同社製アルミニウムフレーク(商品名;「P1100」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径26μm)、旭化成株式会社製アルミニウムペースト(商品名;「GX−201A」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10μm)などが例示され、これらを市場から入手して本発明で使用できる。
【0010】
また、本発明の塗料における鱗片状の金属箔としてさらに好ましくは、アルミニウムを主体とした金属蒸着膜を粉砕して得られる蒸着金属箔である。蒸着金属箔は、先に述べた展延および粉砕して得られる金属箔に比べ表面平滑性に優れるために輝度が高く、また、厚さが薄いため、単位質量当りの使用量が少なくできるので経済的でもある。このような鱗片状の金属箔としては、Wolstenholme社製アルミニウムペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10μm)、同社製アルミニウムペースト(商品名;「Methasheen XW1840」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10μm)などが例示され、本発明に使用することができる。
【0011】
本発明の塗料におけるバインダーとなる樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物であり、塗布後3次元架橋構造となるため、形成される塗膜の耐熱性および耐溶剤性に優れる。従って、本発明の塗料を基材に塗布後、表面保護のために上塗り塗装をする場合であっても、金属箔の配向乱れが少なく、塗膜表面の光沢劣化が少ない。
【0012】
本発明の塗料におけるバインダーは、その乾燥温度(硬化温度)における初期粘度が100Pa・s以下であることが必要である。すなわち、例えば、本発明の塗料を室温で硬化させる場合には、室温における未硬化時のバインダーの粘度が100Pa・s以下であればよく、また、例えば、本発明の塗料を100℃で加熱硬化させる場合にはその温度における未硬化時のバインダーの粘度が100Pa・s以下であればよい。このような特性を有するバインダーからなる本発明の塗料は、溶剤で希釈して基材に塗布した場合であっても、乾燥時溶剤が揮発した後も流動性を有するため、溶剤揮発時に発生する塗料の対流や沸騰などより引き起こされた金属箔の配向乱れを緩和し再配向することができるため、より高い鏡面光沢が得られる。より好ましい初期粘度は1mPa・s〜100Pa・sである。初期粘度が100Pa・sを超えると、塗布された塗料の溶剤揮発時における塗料の対流や沸騰などにより引き起こされた金属箔の配向乱れの緩和時間がかかり、実質的には金属箔が再配列されないままバインダーが架橋および硬化するため、本発明の塗料で形成された塗膜の鏡面光沢が得られがたい場合がある。
【0013】
本発明の塗料の金属箔およびバインダーの配合比については目的とする光沢度や塗膜厚などにより決定すればよく特に制限はないが、好ましくは金属箔(A)およびバインダーとなる樹脂組成物(B)の含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であることが好ましい。バインダーの含有比が0.01未満であると、含有する金属箔が層間剥離を起こしやすく、また、バインダーの含有比が10を超えると、バインダーの硬化時に塗料の対流による金属箔の配向乱れを生じやすい。
【0014】
本発明の塗料のバインダーとなる硬化性樹脂組成物の架橋反応機構については、その目的が塗膜からの金属箔の脱離およびその配向乱れを抑制するためであることから、特に制限されるものではなく、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂などに例示される樹脂を基材とした架橋反応および紫外線や可視光線などのエネルギー線を利用した架橋反応などの既知の多くの架橋反応応を利用できる。さらに、塗料としての作業性および、物性面から塗料のバインダーである樹脂組成物の硬化機構の全てまたは一部が、下記一般式(1)で表わされるシラノール基またはアルコキシシリル基の縮合反応に基づく架橋反応が好適である。
一般式(1) −Si−OR
式中Rは水素原子または一価の炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などである。
【0015】
本架橋反応の具体例としては、メタクリル酸メチルとγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの共重合体の金属アルコキシド、ケトキシムシラン、アルコキシシランなどによる架橋、アクリル基含有モノマー、アクリル基含有オリゴマー、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および光開始剤からなる組成物の紫外線およびシラノール基の縮合反応併用による架橋、メチルシリケートなどのケイ酸エステル類の分子内および分子間架橋などが例示されるが、これらに限定されるものではない。さらに、これらのシラノール基やアルコキシシリル基は金属表面とも良好に反応するため、含有する金属箔の塗膜からの脱離、浸水や酸化による腐食および変色を防止し、塗膜の耐久性を向上させることができる。また、金属箔の分散性の向上にも効果的に作用するという利点も有する。
【0016】
本発明の塗料は、塗工手段に応じ、アルコール類、ケトン類、グリコール類、炭化水素類、エステル類などの有機系希釈溶剤により適宜希釈した組成物として使用することができる。また、水溶性バインダーを使用した水溶性塗料として使用することもできる。このような塗料における固形分濃度は約0.2〜20質量%であることが好ましい。また、当該範囲よりも高固形分濃度の塗料を作製しておき、使用時において塗布方法に対応して希釈剤により適当な濃度に希釈して使用することができる。また、本発明の塗料は基材に直接塗布してよいが、密着性の向上を目的として適当なプライマーを使用して基材表面にプライマー層を形成し、その上に塗布することもできる。さらに本発明の塗料には表面保護、着色、意匠上の必要に応じ、上塗り塗装をしてもよい。
【0017】
本発明の塗料には、また、本発明の塗料の特性を損なわない範囲において他の添加剤を適量配合してよい。他の添加剤の具体例としては、ガラス、石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの無機充填剤、アクリル樹脂粉、エポキシ樹脂粉、ポリエステル樹脂粉などの有機充填剤、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルー、クロムイエロー、二酸化チタンなどの顔料や染料に代表される着色剤、着色マイカ、着色フィルム、ホログラム加工したフィルムなどの意匠材、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、分散剤などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明の代表的な例をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0019】
合成例1
数平均分子量1,000の飽和ポリエステルジオール(商品名;「P−1010」、クラレ社製)1モルと、イソホロンジイソシアナート2モルとに、触媒としてのジブチル錫ジラウレート200ppmを添加し50℃で2時間反応させ、さらに重合禁止剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル)を300ppm加え、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.2モルを反応温度が80℃を超えないように滴下し、滴下終了後、油浴で加熱し80℃で2時間反応させることにより、両末端にアクリル基を有するウレタンプレポリマーを得た。
【0020】
合成例2
無水マレイン酸0.5モル、無水フタル酸1.5モル、プロピレングリコール1モル、およびジエチレングリコール1モルを混合し窒素気流中120℃で2時間、さらに200℃で3時間、縮合により生成する水を除去しながら反応させ、次いでこの反応混合物を80℃まで冷却し、固形分が50%となるようにスチレンモノマーを加え、均一に混合して不飽和ポリエステル樹脂を得た。
【0021】
合成例3
メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸ブチル15部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、トルエン100部、有機過酸化物(商品名;「パーブチルO」、日本油脂社製)1部を攪拌混合し、窒素雰囲気下85℃で5時間重合し、数平均分子量65,000のアクリル樹脂トルエン溶液を得た。
【0022】
実施例1
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、合成例1で得られたウレタンプレポリマー3部、トリエチレングリコールジアクリレート2部、イソボルニルアクリレート5部、光重合開始剤(商品名;「イルガキュア907」、チバ・ガイギー社製)0.2部、有機過酸化物(クメンヒドロキシパーオキサイド)0.1部およびレベリング剤(商品名;「OX−66」、楠本化成製)0.2部を攪拌混合し本発明の塗料とした。
上記塗料をアクリル板に塗布量50g/m2で刷毛塗りし、25℃で10分放置後、同じく25℃で高圧水銀灯を用い2,000mJ/cm2で紫外線照射し、さらに、アルミ箔の影となり紫外線が十分に照射されず硬化不良となった部分を硬化させるため、60℃で1時間加熱硬化させ、金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料における蒸着アルミペーストを除く硬化性樹脂組成物成分(バインダー)の25℃における粘度は1.4Pa・sであった。
【0023】
実施例2
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、メチルシリケート(商品名;「MS51」、三菱化学社製)5部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部、テトラブトキシジルコネート0.05部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し、本発明の塗料とした。
上記塗料を、ガラス板に塗布量20g/m2でスプレーにより塗布し、25℃で10分放置後、100℃で2時間加熱硬化させ、金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の100℃における粘度は50mPa・sであった。
【0024】
実施例3
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、合成例2の不飽和ポリエステル樹脂10部、酢酸ブチル500部、有機過酸化物(商品名;「パーメックN」、日本油脂製)0.3部、およびナフテン酸コバルト0.05部を攪拌混合し本発明の塗料とした。
上記塗料をアクリル板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、25℃で10分放置後、窒素雰囲気下70℃で2時間加熱し金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の70℃における初期粘度は3Pa・sであった
【0025】
実施例4
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、エポキシプレポリマー(商品名;「エピコート828」、ジャパンエポキシレジン社製)5部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン5部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2部、開始剤(商品名;「イルガキュア250」、チバ・ガイギー社製)0.2部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し本発明の塗料とした。
上記塗料をアクリル板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、
25℃で10分放置後、同じく25℃で高圧水銀灯を用い2,000mJ/cm2で紫外線照射し、さらに、アルミ箔の影となり紫外線が十分に照射されず硬化不良となった部分を硬化させるため、室温で24時間以上放置し金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の25℃における粘度は800mPa・sであった。
【0026】
実施例5
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール(商品名;「C−2090」、クラレ社製)5部、テトラメチロールプロパン1部、ポリイソシアナート(商品名;「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)2部、n−ヘキシルトリメトキシシラン0.5部、ジブチル錫ジラウレート0.01部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し本発明の塗料とした。
上記塗料をアクリル板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、室温で10分放置後、70℃で1時間加熱し金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の70℃における初期粘度は60Pa・sであった
【0027】
実施例6
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、合成例3で得られたアクリル樹脂トルエン溶液10部、テトラブトキシジルコネート0.01部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し本発明の塗料とした。
上記塗料をステンレス板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、室温で10分放置後、150℃で1時間加熱し金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の150℃における初期粘度は70Pa・sであった
【0028】
比較例1
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、合成例3で得られたアクリル樹脂トルエン溶液10部、テトラブトキシジルコネート0.01部、酢酸ブチル500部を攪拌混合し塗料とした。
上記塗料をアクリル板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、室温で10分放置して溶剤を除去後、70℃で1時間加熱し金属光沢を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分は70℃において固体であった。
【0029】
比較例2
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、合成例3で得られたアクリル樹脂トルエン溶液0.1部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し塗料とした。
上記塗料をアクリル板にスプレーにより固形分塗布量20g/m2で塗布し、室温で10分放置して溶剤を除去後、70℃で1時間加熱し金属光沢および鏡面性を有する塗膜を得た。しかしながら、本塗膜は指で軽く擦ると容易に剥離した。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分は70℃において固体であった。
【0030】
比較例3
蒸着アルミペースト(商品名;「Methasheen HR0800」、固形分10%、Wolstenholme社製)100部、メチルシリケート(商品名;「MS51」、三菱化学社製)70部、γ−グリシドキシトリメトキシシラン50部、およびテトラブトキシジルコネート0.1部および酢酸ブチル500部を攪拌混合し塗料とした。 上記塗料を、ガラス板に塗布量20g/m2でスプレーにより塗布し、25℃で10分放置後、100℃で2時間加熱硬化させ金属光沢を有する塗膜を得た。なお、別途作成した上記塗料におけるバインダー成分の100℃における粘度は50mPa・sであった。
【0031】
以上の実施例および比較例により得られた塗膜について、下記の方法により鏡面性、耐溶剤性、および耐水性を評価し性能を比較した。結果を表1に示す。
【0032】
鏡面性は、塗膜表面に蛍光灯を反射させて目視観察した。表1において蛍光灯の輪郭が判別できるものを○とし、その輪郭が判別できないものを×と表記した。
【0033】
耐溶剤性は、塗膜表面に溶剤として、n−プロパノール、酢酸ブチル、n−ヘキサン、およびトルエンを数滴落とし、それぞれの溶剤が揮発した後の塗膜を目視観察した。
表1において、溶剤を滴下した跡が判別できず初期の光沢が保持されていたものを○、溶剤を滴下した跡が判別でき、光沢の劣化が認められたものを×と表記した。
【0034】
耐水性は、塗装した板を40℃の温水に24時間浸漬し、浸漬後の塗膜を目視観察した。表1において、浸漬前後において変化が見られず初期の光沢が保持されていたものを○、浸漬後において腐食により白化が見られたもの、または塗膜が剥離したものを×と表記した。
【0035】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、塗工後の金属箔の配向乱れおよび凝集に起因する光散乱を抑制することにより、金属独特の高輝度な鏡面光沢感を発現し、有害なクロム化合物などを使用することなくメッキに代替し得る意匠性を有する安全でかつ環境負荷の小さい塗膜を形成し得る塗料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料において、金属箔(A)と樹脂組成物(B)との含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であり、かつ上記樹脂組成物(B)の乾燥温度における初期粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする塗料。
【請求項2】
燐片状の金属箔が、アルミニウムを主体とした蒸着金属箔である請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
硬化性樹脂組成物の架橋反応機構の一部または全てが、下記一般式(1)で示されるシラノール基またはアルコキシシリル基の縮合反応である請求項1に記載の塗料。
一般式(1) −Si−OR
(式中Rは水素原子または一価の炭化水素基である。)

【公開番号】特開2006−299200(P2006−299200A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126739(P2005−126739)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(505153188)株式会社システム・トート (8)
【出願人】(505155001)泰栄産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】