説明

塗膜保護シートおよびその製造方法

【課題】良好な初期接着力を有し、かかる接着力の経時安定性が高度に優れた塗膜保護シートを提供する。
【解決手段】イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層2が設けられた塗膜保護シート10であり、かかる塗膜保護シートは、ESCA法により測定される粘着剤層表面の酸素原子の元素比率が該表面全体の1.0at%〜8.0at%である塗膜保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層が設けられた塗膜保護シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソブチレン系ポリマーを粘着剤層とした塗膜保護シートは、例えば、塗装処理された自動車やその部品等の物品を移送、保管、養生、施工(以下、移送等ともいう。)する際において塗膜表面の損傷や汚染、艶ボケ、変色等を防止することを目的として広く利用されている。
【0003】
近年では、ポリイソブチレン系粘着剤層の表面をコロナ放電処理することにより、難接着性の塗膜に対しても良好な接着性を示す塗膜保護シートや、基材と粘着剤層との間に特定の下塗剤層を設けることにより、塗膜表面への糊残りを防止し、且つ屋外においても良好な接着性を維持する塗膜保護シートが開発されており、これらの塗膜保護シートは、自動車およびその部品の塗膜保護シートとして好適に用いられている。かかる用途への塗膜保護シートの利用は、従来より用いられてきたワックス塗布に替わるものであり、これによって、ワックス塗布による不都合、すなわちワックス層の形成不良により汚れやすい、使用後にワックスを除去する作業負担が大きい、ワックスを除去するために溶剤を使用するため環境への負荷が大きい、酸性雨に弱い等の不都合が解消され得る。この種の塗膜保護シートに関する先行技術文献として特許文献1および特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240820号公報
【特許文献2】特開2009−242762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上述したような自動車およびその部品の塗膜保護シートの用途では、自動車およびその部品を移送等する際に塗膜表面が長期間(例えば数日から数十日)に亘って外部環境に曝される場合がある。外部環境への曝露が長期に及ぶと、接着力の経時劣化により保護シートが剥離する場合があり、剥離箇所に位置する塗膜への保護が不充分となる虞があった。したがって、接着力の経時安定性に優れた塗膜保護シートが提供されれば有益である。
【0006】
本発明は、良好な初期接着力を有し、かかる接着力の経時安定性が高度に優れた塗膜保護シートを提供することを一つの目的とする。本発明の他の目的は、かかる塗膜保護シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される塗膜保護シートは、イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層が設けられた塗膜保護シートである。かかる塗膜保護シートは、ESCA法により測定される粘着剤層表面の酸素原子の元素比率が該表面全体の1.0at%〜8.0at%である。
【0008】
本発明者らは、かかるイソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層が設けられた塗膜保護シートにおいて、接着力の経時安定性に関して鋭意検討していたところ、当該粘着剤層の表面に、例えば低温プラズマ処理等の処理を施し、所定の元素比率で酸素原子を導入することによって、長期間に亘って接着力が安定することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、かかる構成の塗膜保護シートによると、ESCA法(X線光電子分光法)により測定される粘着剤層表面の酸素原子が、該表面全体の1.0at%〜8.0at%の範囲内となるように導入されている結果、粘着剤層の接着力の経時的な変化が抑制され、長期間に亘って接着力が安定することが実現される。
【0009】
なお、本明細書において「良好な初期接着力」とは、使用目的等に応じて適宜設定されるものであるので特に限定されないが、塗膜を保護する際には剥離し難いが、使用後には剥がしやすい(再剥離性に優れる)という理由から、鋼板上に形成した代表的な難接着性塗膜であるアクリル系樹脂を主成分とする塗膜に接着した場合において、接着して室温(典型的には20℃〜35℃)且つ大気圧条件下における48時間経過後の接着力が、好ましくは2.0N/25mm以上、より好ましくは3.0N/25mm以上(典型的には4.0N/25mm以上)であり、また、好ましくは20N/25mm以下、より好ましくは15N/25mm以下(典型的には10N/25mm以下)である。接着力の測定方法については、後述する実施例で行った方法が採用され得る。なお、アクリル系樹脂を主成分とする塗膜とは、塗膜中におけるアクリル系樹脂の含有率が、50質量%を超えることを意味し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0010】
ここに開示される塗膜保護シートの好ましい一態様では、鋼板上に形成したアクリル系樹脂を主成分とする塗膜に接着して室温(典型的には20℃〜35℃)且つ大気圧条件下における30日後の接着力が、該塗膜に接着して48時間後の接着力の50%以上(より好ましくは60%以上であり、典型的には70%以上)である。また、上述した本発明による接着力の維持は、室温ではなく温度35℃を超える条件下(典型的には温度50℃以上の条件下)でも実現することが好ましい。このような塗膜保護シートは、移送等の際に外部環境に曝される自動車およびその部品の塗膜保護シートとして好ましく用いられ得る。さらに、使用後に剥がしやすいという観点から、鋼板上に形成したアクリル系樹脂を主成分とする塗膜に接着して30日後の接着力は、塗膜に接着して48時間後の接着力の150%以下であることが好ましい。例えば上記のように、本発明において接着力が経時的に安定するとは、従来技術が奏する接着力の経時安定性とは異なり、際立って優れたものである。
【0011】
ここに開示される塗膜保護シートの他の好ましい一態様では、前記粘着剤層がポリオレフィン系基材の上に設けられており、前記基材の厚さが30μm〜50μmであり、前記粘着剤層の厚さが10μm〜20μmである。かかる塗膜保護シートは、例えば、自動車およびその部品の塗膜保護シートとして好ましく用いられ得る。
【0012】
本発明によると、また、イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層を設けた塗膜保護シートを製造する方法が提供される。かかる塗膜保護シートの製造方法は、所定の基材上に前記粘着剤層を形成すること、および前記形成された粘着剤層の表面に低温プラズマ処理を施すこと、を包含し、前記低温プラズマ処理を、前記粘着剤層表面におけるESCA法により測定される酸素原子の元素比率が、該表面全体の1.0at%〜8.0at%になるように行う。かかる低温プラズマ処理を行うことにより、粘着剤層表面における酸素原子の元素比率が、塗膜に対して良好な接着力を発現する1.0at%〜8.0at%の範囲内に調整され、長期間に亘って良好な接着力が維持される。なお、本明細書において「低温プラズマ処理」とは、電極間に直流または交流の高電圧を印加することによって開始持続する放電、例えば大気圧下でのコロナ放電または真空でのグロー放電等に処理基材を曝すことによってなされる処理をいう。
【0013】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、前記低温プラズマ処理は、不活性ガスを所定のチャンバー内に導入して0.01MPa以下に減圧された条件下で行われるものであり、前記低温プラズマ処理の終了後、大気圧に戻した際に、前記粘着剤層の表面に酸素原子が導入される。このように、不活性ガスを導入した減圧条件下で低温プラズマ処理を行うことにより、大気圧に戻した際に粘着剤層表面に酸素原子が導入され、その結果、良好な初期接着力が得られ、且つ長期間に亘って接着力が維持される。
【0014】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、前記低温プラズマ処理が、内部電極方式の低温プラズマ処理機により行われるものであり、前記低温プラズマ処理の強度が、15W・min/m2〜1000W・min/m2の範囲内である。これにより、粘着剤層表面の酸素原子の元素比率を、該表面全体の1.0at%〜8.0at%の範囲内に調整することを好適に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る塗膜保護シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施に用いる低温プラズマ処理機の一構成例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
本発明に係る塗膜保護シート(例えば、自動車やその部品の保護に使用される自動車塗膜保護シート)は、イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層が設けられた構成を有する。例えば図1に模式的に示すように、塗膜保護シート10は、基材1の片面上に粘着剤層2が設けられた構成を有し、粘着剤層2を被着体(保護対象物品、例えば自動車やその部品等の塗膜を有する物品)に貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の保護シート10は、粘着剤層2の表面(接着面)が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー(図示せず)によって保護された形態であり得る。また、基材1の他面(背面)が剥離面となっており、保護シート10がロール状に巻回されることにより該他面に粘着剤層2が当接してその表面が保護された形態の保護シート10であってもよい。
【0018】
また、塗膜保護シート10は、剥離時に被着体側に粘着剤が残る事象(すなわち糊残り)を防止する等の目的に応じて、基材1と粘着剤層2との間に中間層(図示せず)を設けてもよい。そのような中間層としては、例えば、上述した特許文献2に開示された下塗剤層を好ましく採用し得る。なお、このように基材1と粘着剤層2との間に中間層が設けられた構成も、基材1上に粘着剤層2が設けられていることに包含される。
【0019】
ここに開示される塗膜保護シートに具備されるイソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層(以下、ポリイソブチレン系粘着剤層ともいう。)は、イソブチレン系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とする粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。
【0020】
上記イソブチレン系ポリマーは、イソブチレンのホモポリマー(ホモイソブチレン)であってもよく、イソブチレンを主モノマーとするコポリマーであってもよい。該コポリマーは、例えば、イソブチレンとノルマルブチレンとの共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム等)、これらの加硫物や変性物(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の官能基で変性したもの)等であり得る。接着強度の安定性(例えば、経時や熱履歴によって接着強度が過剰に上昇しない性質)の観点から好ましく使用されるイソブチレン系ポリマーとして、ホモイソブチレンおよびイソブチレン−ノルマルブチレン共重合体が挙げられる。なかでもホモイソブチレンが好ましい。
【0021】
かかるイソブチレン系ポリマーの分子量は特に制限されず、例えば質量平均分子量(Mw)が凡そ10×10〜150×10のものを適宜選択して使用することができる。好ましく使用し得るイソブチレン系ポリマーとして、Mwが凡そ20×10以上(好ましくは凡そ30×10以上、より好ましくは凡そ35×10以上)であり、また、凡そ70×10以下(好ましくは凡そ60×10以下、より好ましくは凡そ50×10以下)のイソブチレン系ポリマーが例示される。なお、上記イソブチレン系ポリマーは、より高分子量のイソブチレン系ポリマーをシャク解処理することにより低分子量化(好ましくは、上述した好ましい質量平均分子量となるように低分子量化)してなるイソブチレン系ポリマー(シャク解処理体)であってもよい。上記シャク解処理は、シャク解処理前の凡そ10%〜80%のMwを有するイソブチレン系ポリマーが得られるように行うことが好ましい。また、数平均分子量(Mn)が凡そ10×10〜40×10のイソブチレン系ポリマーが得られるように行うことが好ましい。かかるシャク解処理は、例えば、特許第3878700号公報の記載等に基づいて実施することができる。
【0022】
上記粘着剤層を構成するポリイソブチレン系粘着剤は、このようなイソブチレン系ポリマーから選択される一種または二種以上をベースポリマーとするものであり得る。換言すれば、本明細書において「イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層」とは、粘着剤層中におけるイソブチレン系ポリマーの含有率が、50質量%を超えることを意味し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。したがって、該ポリイソブチレン系粘着剤は、上記ベースポリマーに加えて、副成分としてポリイソブチレン系以外のポリマーを含有するものであり得る。かかるポリマーの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等が挙げられる。これらポリイソブチレン系以外のポリマーの含有量は、通常はポリイソブチレン系粘着剤に含まれるポリマー成分全体の10質量%以下とすることが好ましい。ポリイソブチレン系以外のポリマーを実質的に含有しない粘着剤であってもよい。
【0023】
上記ポリイソブチレン系粘着剤には、例えば、粘着付与剤、軟化剤、顔料、充填材、酸化防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)その他の安定剤等の種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。好ましく使用し得る粘着付与剤の例としては、例えばアルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、エポキシ系樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、それらの水素添加物等が挙げられる。軟化剤の例としては、プロセスオイル、石油系軟化剤等が挙げられる。顔料または充填材として好ましく使用し得る材料の例として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ等の無機粉末が挙げられる。酸化防止剤の例としては、アルキルフェノール類、アルキレンビスフェノール類、チオプロピオン酸エステル類、有機亜リン酸エステル類、アミン類、ヒドロキノン類、ヒドロキシルアミン類等を有効成分とするものが挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類、ベンゾエート類等を有効成分とするものが挙げられる。このような添加剤は、それぞれ、一種のみを単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、例えば、塗膜保護シート(例えば、自動車塗膜保護シート)用粘着剤の分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0024】
上記ポリイソブチレン系粘着剤層は、その表面の酸素原子の元素比率が、ESCA法により測定した場合において該表面全体の1.0at%〜8.0at%である。前記酸素原子の元素比率は、好ましくは1.2at%以上(より好ましくは1.5at%以上)であり、また、好ましくは7.0at%以下(より好ましくは6.0at%以下)である。酸素原子の元素比率と接着力(初期接着力および経時的な接着力の安定性)との関係についての作用機序は明らかではないが、該粘着剤層表面において、酸素原子を有する官能基(例えばカルボキシル基やカルボニル基)が、酸素原子の元素比率が1.0at%〜8.0at%の範囲内となるように形成されることによって、塗膜に対して良好な初期接着力が得られることが考えられ得る。また、酸素原子の元素比率が8.0at%以下であることにより、接着力に作用する酸素原子を有する官能基が粘着剤層の表面に過剰に形成されず、例えば、形成された官能基が粘着剤層の表面から内部に移ることにより接着力が経時的に変化することが回避され、それにより、接着力に作用する前記官能基が粘着剤層の表面に安定して存在し得ることとなり、接着力が経時的に安定すると推察される。
【0025】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。通常は、平均厚さで凡そ2μm〜30μmとすることが適当であり、好ましくは凡そ3μm以上(典型的には凡そ10μm以上)であり、また、好ましくは凡そ25μm以下(典型的には凡そ20μm以下)である。例えば、自動車塗膜保護シートに具備される粘着剤層の厚さとして、上記範囲を好ましく採用することができる。
【0026】
ここに開示される技術は、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂成分を主体とする樹脂シート(典型的には、このような樹脂成分を主体とする樹脂組成物を膜状に成形してなる樹脂フィルム)を基材とする塗膜保護シートに好ましく適用され得る。特に好ましい適用対象として、基材を構成する樹脂成分が主としてポリオレフィン系樹脂であるポリオレフィン系基材(以下、ポリオレフィン系樹脂シート(フィルム)ともいう。)が挙げられる。かかる組成の基材はリサイクル性等の観点からも好ましい。
【0027】
上記ポリオレフィン系樹脂シート(フィルム)としては、該シートを構成する樹脂成分が主としてポリプロピレン系樹脂(以下、PP樹脂ともいう。)である(換言すれば、樹脂成分が50質量%を超えてPP樹脂を含む)ものを好ましく採用することができる。例えば、樹脂成分の凡そ60質量%以上(より好ましくは凡そ75質量%以上)がPP樹脂である樹脂シートが好ましい。耐熱性等の観点から、PP樹脂による連続構造(連続相)が形成されている樹脂シートを好ましく採用することができる。樹脂成分が一種または二種以上のPP樹脂から実質的に構成される(すなわち、樹脂成分としてPP樹脂を単独で含む)樹脂シートであってもよい。このようにPP樹脂の連続構造を有する樹脂シートを基材に用いた保護シートは、例えば屋外養生中の温度上昇等の熱履歴によって被着体(塗膜)から保護シートが浮く事態の発生を防止しやすいので好ましい。基材は単層構造であっても二層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一つの層は上記PP樹脂の連続構造を有する層であることが好ましい。
【0028】
上記基材用のPP樹脂には、プロピレンを成分とする種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)を用いることができる。
ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、例えば、以下のようなポリプロピレンが包含される。
プロピレンのホモポリマー(ホモポリプロピレン)。例えばアイソタクチックポリプロピレン。
プロピレンと他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンから選択される一種または二種以上)とのランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)。好ましくは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50質量%以上を占める成分)とするランダムポリプロピレン。例えば、プロピレン96モル%〜99.9モル%と上記他のα−オレフィン(好ましくはエチレンおよび/またはブテン)0.1モル%〜4モル%とをランダム共重合したランダムポリプロピレン。
プロピレンに他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンから選択される一種または二種以上)をブロック共重合したコポリマー(プロピレンを主モノマーとするものが好ましい。)を含み、典型的には副生成物としてプロピレンおよび上記他のα−オレフィンのうち少なくとも一種を成分とするゴム成分をさらに含むブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)。例えば、プロピレン90モル%〜99.9モル%に上記他のα−オレフィン(好ましくはエチレンおよび/またはブテン)0.1モル%〜10モル%をブロック共重合したポリマーと、副生成物としてプロピレンおよび上記他のα−オレフィンのうち少なくとも一種を成分とするゴム成分をさらに含むブロックポリプロピレン。
【0029】
上記基材用のPP樹脂は、このようなプロピレン系ポリマー(上記ポリプロピレン等)の一種または二種以上から実質的に構成されるものであってもよく、該プロピレン系ポリマーに多量のゴム成分を共重合させて得られるリアクターブレンドタイプもしくは該ゴム成分を機械的に分散させて得られるドライブレンドタイプの熱可塑性オレフィン樹脂(TPO)や熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。また、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とプロピレンとのコポリマーを含むPP樹脂、かかる官能基含有モノマーをプロピレン系ポリマーに共重合させたPP樹脂等であってもよい。
【0030】
上記ポリオレフィン系樹脂シートがPP樹脂に加えて他の樹脂成分を含む場合、該他の樹脂成分の好適例として、エチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンを主モノマーとするオレフィン系ポリマーを主成分とするポリオレフィン系樹脂(エチレン系ポリマーを主成分とするポリエチレン系樹脂(以下、PE樹脂ともいう。)等)が挙げられる。例えば、樹脂成分としてPE樹脂とPP樹脂とを含むポリオレフィン系樹脂シートを、ここに開示される保護シートの基材として好ましく使用し得る。
【0031】
上記基材用のPE樹脂としては、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(旧JIS K6748:1995の規定では高密度、中密度および低密度ポリエチレン)のいずれも使用可能である。また、エチレンと他のα−オレフィン(例えば、炭素数3〜10のα−オレフィン)とのコポリマーを含むPE樹脂であってもよい。上記α−オレフィンの好適例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。また、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とエチレンとのコポリマーを含むPE樹脂、かかる官能基含有モノマーをエチレン系ポリマーに共重合させたPE樹脂等であってもよい。エチレンと官能基含有モノマーとのコポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸および/またはメタクリル酸)共重合体が金属イオンで架橋されたもの、等が挙げられる。例えば、密度0.94g/cm以下(典型的には0.90g/cm〜0.94g/cm)の低密度ポリエチレン(好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン)や中密度ポリエチレン、密度0.86g/cm〜0.90g/cmのエチレン−α−オレフィンコポリマー等を、上記ポリオレフィン系樹脂シート(好ましくは、PE樹脂とPP樹脂とを含む樹脂シート)の構成成分として好ましく用いることができる。
【0032】
ここに開示される保護シートの基材として用いられる樹脂シート(好ましくはポリオレフィン系樹脂シート)は、当該基材への含有が許容される適宜の成分を必要に応じて含有するものであり得る。例えば、顔料(典型的には無機顔料)、充填材、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0033】
顔料または充填材として好ましく使用し得る材料の例として、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の無機粉末が挙げられる。無機顔料や充填材の配合量は、該配合により得られる効果の程度や樹脂シートの成形方法(押出成形、キャスト成形等)に応じた基材の成形性等を考慮して適宜設定することができる。通常は、無機顔料および充填材の配合量(複数種類を配合する場合にはそれらの合計量)を、樹脂成分100質量部に対して凡そ2質量部〜20質量部(より好ましくは凡そ5質量部〜15質量部)程度とすることが好ましい。
【0034】
また、酸化防止剤の例としては、アルキルフェノール類、アルキレンビスフェノール類、チオプロピレン酸エステル類、有機亜リン酸エステル類、アミン類、ヒドロキノン類、ヒドロキシルアミン類等を有効成分とするものが挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類、ベンゾエート類等を有効成分とするものが挙げられる。このような添加剤は、それぞれ、一種のみを単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、例えば、塗膜保護シート(例えば、自動車塗膜保護シート)の基材等として用いられる樹脂シートの分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0035】
上記樹脂シート(好ましくはポリオレフィン系樹脂シート)は、従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して製造することができる。例えば、上記樹脂成分(好ましくは、PP樹脂を単独で含むかまたはPP樹脂を主成分とし副成分としてPE樹脂を含む樹脂成分)と必要に応じて配合される添加剤等とを含む成形材料を押出成形する方法を好ましく採用することができる。
【0036】
図1に示す基材(典型的には樹脂シート)1において、粘着剤層2が設けられる面とは反対側の面(背面)には、必要に応じて離型処理(例えば、一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の離型処理剤を、典型的には0.01μm〜0.1μm程度の薄膜状に付与する処理)が施されていてもよい。かかる離型処理を施すことにより、塗膜保護シート10をロール状に巻回したものの巻き戻しを容易にする等の効果が得られる。また、基材1と粘着剤層2との間に下塗剤層等の中間層を設ける場合には、中間層が設けられる側の面に、酸処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0037】
基材の厚さは目的に応じて適宜選択できる。通常は、平均厚さで凡そ20μm〜100μmとすることが適当であり、凡そ30μm〜70μm(例えば凡そ30μm〜50μm)とすることが好ましい。かかる厚さを有する基材は、例えば、自動車塗膜保護シート用の基材として好適である。
【0038】
ポリイソブチレン系粘着剤層の形成は、公知の粘着シートにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、イソブチレン系ポリマーを主成分とするポリマー成分と必要に応じて配合される添加剤とを含む粘着層形成材料が適当な溶媒に溶解または分散した粘着剤組成物を用意(製造、購入等)し、該組成物を上記基材または上記中間層の表面に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより該基材または該中間層上に粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、上記粘着剤組成物を剥離ライナーや離型処理された基材背面等の離型性のよい表面に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材または中間層の表面に転写する方法(転写法)を採用してもよい。該粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的またはランダムなパターンに形成されてもよい。なお、上記直接法において基材または中間層上に付与した粘着剤組成物を乾燥させる際には、必要に応じて加熱することによって乾燥を促進することができる。このときの乾燥温度は、特に限定されないが、例えば60℃〜130℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。
【0039】
上記のようにして製造された塗膜保護シートの粘着剤層(イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層)の表面は、典型的には酸素原子の元素比率が1.0at%未満(例えば0.6at%以下)である。そこで、本発明を実施するにあたっては、かかる塗膜保護シートに設けられた粘着剤層の表面に、ESCA法により測定される酸素原子の元素比率が該表面全体の1.0at%〜8.0at%になるように酸素原子を導入する処理を行う。
【0040】
粘着剤層表面の酸素原子の元素比率を該表面全体の1.0at%〜8.0at%にする方法としては、特に限定されないが、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等の表面処理を施すことが挙げられる。なかでも、酸素原子の元素比率を上記の範囲内に設定しやすいという理由から、低温プラズマ処理が好ましい。
【0041】
低温プラズマ処理は、不活性ガスを所定のチャンバー内に導入して減圧された条件下で行われることが好ましい。これによって、低温プラズマ処理の終了後、チャンバー内を大気圧に戻した際に、低温プラズマ処理が行われた粘着剤層の表面にて空気中の酸素原子が反応し、粘着剤層の表面に適当量の酸素原子を有する官能基が形成されると推察され、その結果、粘着剤層表面における酸素原子の元素比率が該表面全体の1.0at%〜8.0at%となり得る。
【0042】
不活性ガス(すなわち非酸化性且つ非還元性ガス)としては、特に限定されないが、He、Ne、Ar、N等が挙げられ、これらは単独でまたは混合した状態で使用される。なかでもArが放電開始効率の点から好ましい。処理圧力(チャンバー内部の圧力)は、減圧された条件(0.1MPa未満)であれば特に限定されないが、好ましくは0.01MPa以下(例えば1Pa〜0.01MPa、典型的には10Pa〜1000Pa)の範囲内に減圧されている。
【0043】
また、低温プラズマ処理は、内部電極方式の低温プラズマ処理機により行われることが好ましい。ここで本発明に用いることができる低温プラズマ処理機について説明する。かかる低温プラズマ処理機は、図2に模式的に示すような構造を有する。すなわち、低温プラズマ処理機101は、密閉可能な処理室(チャンバー)102を有しており、その処理室102内には、処理用ローラ103と、該処理用ローラ103の周囲の一部(典型的には50%以上)を所定の間隔をあけて囲む電極104とが設けられている。電極104には高周波電源105が接続されている。処理室102内は、真空ポンプ(図示せず)に接続された減圧バルブ106の開放によって減圧されるように構成されていると共に、ガス供給源(図示せず)に接続された供給バルブ107の開放によって、処理(放電)部に処理用のガスが供給されるように構成されている。また、低温プラズマ処理機101には、処理室102内の圧力を計測する圧力計108も設けられている。
【0044】
かかる低温プラズマ処理機101による低温プラズマ処理は、概ね次のように行う。まず、ロール状に巻回された処理前の塗膜保護シートSを供給部109から引き出し、処理室102内に導く。そして、処理用ローラ103に一周近く巻き付けるようにして電極104との間の処理部に通す。ここで、塗膜保護シートSの粘着剤層が設けられた面に低温プラズマ処理を行う。処理後の塗膜保護シートSは、処理室102から引き出され、巻取部111において再び巻き取られる。これら一連の工程は、処理室102内外に設けられた複数個の案内ローラ110によって案内されながら行われる。
【0045】
低温プラズマ処理の処理強度は、好ましくは15W・min/m2以上であり、より好ましくは20W・min/m2以上(典型的には30W・min/m2以上)である。また、上記処理強度は、1000W・min/m2以下であり、より好ましくは500W・min/m2以下(典型的には300W・min/m2以下)である。低温プラズマ処理の処理強度が上記の範囲内であることにより、低温プラズマ処理の終了後、大気圧に戻した際に、粘着剤層表面における酸素原子の元素比率が1.0at%〜8.0at%となるように酸素原子が導入されやすい傾向がある。
【0046】
本発明に係る塗膜保護シートは、例えばアクリル系、ポリエステル系、アルキッド系、メラミン系、ウレタン系またはこれらの複合系等の、種々の組成の塗料で塗装処理された保護対象物品(上記塗装処理により形成された塗膜を有する物品、例えば自動車のボディやその部品、または鋼板等の金属板やその成形品等)の塗膜上に貼り付けられて、該塗膜を微小物の衝突や薬品の接触等から保護する用途に好ましく使用され得る。特に、屋外で長期間保管されたり熱帯その他様々な気候の地域に移送されたりする可能性が高く、且つ塗膜の外観意匠に対する要求レベルの高い自動車用(例えば自動車ボディの外装塗膜用)の保護シートとして好適である。また、前記ポリイソブチレン系粘着剤は、塗膜(例えば、自動車用の塗膜)との溶解性パラメータ(SP値)の差異が大きいことから、両者の間で物質移動が生じ難く、塗膜に保護シートを貼り付けた跡を生じにくいので好ましい。また、かかる粘着剤層は弾性率が高く、再剥離型粘着剤として好適である。
【0047】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り、不揮発分の質量を基準とする。
【0048】
<例1>
プロピレンのホモポリマー(日本ポリプロ株式会社製品、商品名「ノバテックPP(登録商標) FY4」)38部、エチレン・プロピレンブロックコポリマー(同社製品、商品名「ノバテックPP(登録商標) BC3F」)37部、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)(日本ポリエチレン株式会社製品、商品名「カーネル(登録商標) KF380」)15部、ルチル型二酸化チタン(石原産業株式会社製品、商品名「タイペーク(TIPAQUE)(登録商標) CR−95」)10部および光安定剤(チバスペシャリティケミカルズ製品、商品名「キマソーブ(Chimassorb)(登録商標)944」)0.2部を含む基材成形材料をフィルム成形機にて溶融混練し、該成形機のTダイから押し出して、平均厚さ40μmの基材(ポリオレフィン系樹脂フィルム)を成形した。
【0049】
ポリイソブチレン(BASF社製品、商品名「Oppanol(登録商標) B80」)70部およびポリイソブチレン(BASF社製品、商品名「Oppanol(登録商標) B12SFN」)30部をヘプタンに溶解して粘着剤組成物を調製した。この組成物を、上記基材の上に塗工して乾燥させることにより、平均厚さ15μmのポリイソブチレン系粘着剤層を形成した。このようにして例1に係る粘着シートを作製し、これを塗膜保護シートとして用いた。
【0050】
<例2>
例1に係る粘着シートの粘着剤層の表面に、図2に示した構造を有する低温プラズマ処理機を用いて、Arを80vol%以上含む処理ガスをチャンバー内に導入し、5Pa〜50Paの範囲内になるまで減圧した条件にて46W・min/m2の処理強度で低温プラズマ処理を行った。このようにして、例2に係る塗膜保護シートを作製した。
【0051】
<例3>
低温プラズマ処理機の処理強度を115W・min/m2に変更した。その他の点については例2と同様にして、例3に係る塗膜保護シートを作製した。
【0052】
<例4>
低温プラズマ処理機の処理強度を1500W・min/m2に変更した。その他の点については例2と同様にして、例4に係る塗膜保護シートを作製した。
【0053】
<例5>
低温プラズマ処理機の処理強度を2000W・min/m2に変更した。その他の点については例2と同様にして、例5に係る塗膜保護シートを作製した。
【0054】
例1〜5で作製した塗膜保護シートにつき、以下の評価試験を行った。
[接着力]
各例に係る塗膜保護シートを幅25mm、長さ150mmの帯状に切断して試験片を作製した。鋼板上に電着塗料、中塗り塗料、メタリック塗料を順に塗工し、その上に、酸性雨耐性クリアー塗膜(アクリル/スチレン系・非メラミン架橋タイプ、シリコーン系表面調整剤含有)を厚さ50μmとなるように形成した。温度23±2℃、湿度50±15%RHに調整された標準環境において上記塗膜に試験片を貼り付けた。該貼付けは、JIS Z 0237:2000に規定する2kgゴムローラを0.3m/分の速度で一往復させて圧着することにより行った。貼付け後、温度23±2℃、湿度50±15%RHに調整された大気圧条件下に48時間(初期)、1ヵ月、3ヵ月保存したものにつき、以下の条件で剥離試験を行った。
剥離試験:株式会社島津製作所製のAutograph AG−10G型引張試験機を用いて、剥離速度(クロスヘッドスピード)300mm/分、剥離角度180°、剥離長さ100mmの条件で剥離強度[N/25mm]を測定した。測定は3回行い、それらの平均を測定値として表1に記した。
【0055】
[酸素原子比率]
また、各例に係る粘着剤層の表面における初期の酸素原子の元素比率を、X線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製、商品名「Quantum2000」)を用いて、ESCA法により測定した。X線源には、モノクロ化したAlKα線を用いた。測定結果を表1に記した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示されるように、表面の酸素原子比率が1.0at%〜8.0at%の範囲内である粘着剤層を用いた例2および例3では、初期接着力が4.3N/25mm以上であり、良好な初期接着力を示した。また、1ヵ月経過後、3ヵ月経過後も接着力の低下は認められなかった。このように、例2,3に係る塗膜保護シートは、良好な初期接着力を有し、かかる接着力の経時安定性に優れるものであった。
【0058】
一方、表面の酸素原子比率が1.0%未満である粘着剤層を用いた例1では、例2,3に比べて初期接着力が低く、さらに1ヵ月後には接着力が低下した。また、表面の酸素原子比率が8.0%を超える粘着剤層を用いた例4,5も、例2,3に比べて初期接着力が低く、特に1ヵ月後の接着力が顕著に低下する傾向が認められた。これらの例では、塗膜に対する接着力に影響する酸素原子を有する官能基が充分に形成されなかったか、あるいは過剰に形成されたため、初期接着力が例2,3より劣り、また、表面の酸素原子比率が8.0%を超える粘着剤層を用いた場合、形成された酸素原子を有する官能基が粘着剤層の表面に安定して存在することができなかったため、接着力が経時的に低下したものと推察される。
【符号の説明】
【0059】
S 塗膜保護シート
1 基材
2 粘着剤層
10 塗膜保護シート
101 低温プラズマ処理機
102 処理室(チャンバー)
103 処理用ローラ
104 電極
105 高周波電源
106 減圧バルブ
107 供給バルブ
108 圧力計
109 供給部
110 案内ローラ
111 巻取部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層が設けられた塗膜保護シートであって、
ESCA法により測定される粘着剤層表面の酸素原子の元素比率が該表面全体の1.0at%〜8.0at%であることを特徴とする、塗膜保護シート。
【請求項2】
鋼板上に形成したアクリル系樹脂を主成分とする塗膜に接着して室温且つ大気圧条件下における30日後の接着力が、該塗膜に接着して48時間後の接着力の50%以上である、請求項1に記載の塗膜保護シート。
【請求項3】
前記粘着剤層がポリオレフィン系基材の上に設けられており、前記基材の平均厚さが30μm〜50μmであり、前記粘着剤層の平均厚さが10μm〜20μmである、請求項1または2に記載の塗膜保護シート。
【請求項4】
イソブチレン系ポリマーを主成分とする粘着剤層を設けた塗膜保護シートを製造する方法であって、
所定の基材上に前記粘着剤層を形成すること、および
前記形成された粘着剤層の表面に低温プラズマ処理を施すこと、を包含し、
前記低温プラズマ処理を、前記粘着剤層表面におけるESCA法により測定される酸素原子の元素比率が、該表面全体の1.0at%〜8.0at%になるように行うことを特徴とする、塗膜保護シートの製造方法。
【請求項5】
前記低温プラズマ処理は、不活性ガスを所定のチャンバー内に導入して0.01MPa以下に減圧された条件下で行われるものであり、
前記低温プラズマ処理の終了後、大気圧に戻した際に、前記粘着剤層の表面に酸素原子が導入される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記低温プラズマ処理が、内部電極方式の低温プラズマ処理機により行われるものであり、前記低温プラズマ処理の強度が、15W・min/m2〜1000W・min/m2の範囲内である、請求項4または5に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−67708(P2013−67708A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206185(P2011−206185)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(592166137)河村産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】