説明

塗膜或いは被覆膜が多孔質或いは透水性である船底防汚塗料及び船体被覆材並びに該被覆材で被覆成型された船舶。

【課題】従来の船底防汚塗料の有効期間は概ね1年程度であったが、塗膜を多孔質、或いは透水性にすることにより、有効期間を長期間期待できる船底防汚塗料を提供する。
【解決手段】微細な固体である水溶性或いは非水溶性の構造構成材及び忌避剤を混入したことを特徴とする船底防汚塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は塗膜あるいは被覆膜が多孔質或いは透水性である船底防汚塗料及び船体被覆材並びに該被覆材で被覆成型された船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋生物の船底への付着による摩擦抵抗の増大による影響は、船舶の速度の低下のみならず、燃料消費の増大は経済的問題であり、さらに小型船舶にあっては船体の振動の原因となり、該生物の付着が過度の場合、その振動により航行不能となる事さえある。これを解消するため従来より銅等の金属化合物を忌避剤とする船底塗料が普及してきた。この船底塗料の露出面即ち海水と接する面の金属化合物は海水とその流れによって激しく侵食され、この金属化合物が無くなれば有効物質として働く金属イオンも無くなり、効果が無くなる為、加水分解等と水流により塗膜の表面が研磨され、新たに金属化合物が露出されるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この種の船底塗料にあっては、研磨が進み、やがて塗膜そのものが無くなり船底への生物の付着が始まるのである。またその有効期間は概ね1ヶ年程度であるが、沿岸漁業で使用される小型船舶にあっては汚損の影響が大きいので、概ね6ヵ月〜8ヵ月程で新たに船底塗料を塗布するものであるが、その際のドックの費用、塗料代、労力だけでなくドックの期間中は操業できない等、経済的負担は少なくない。更に、従来より広く採用されてきた船底塗料は、この種の自己研磨型或いは自己崩壊型船底塗料であるが、崩壊或いは研磨された塗料即ち化学物質が海中に放出されているのであり、その量は相当量に達するものと考えられ、環境に及ぼす影響が無いとはいい難い。
また近年の小型船舶は殆どがFRP製即ち強化ガラス繊維プラスチック製であるが、これ等の船舶も生物の付着は有り、同様に船底防汚塗料を塗布することを要するのである。
本発明はこれらの問題を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
微細な固体である水溶性或いは非水溶性の構造構成材及び忌避剤を混入した塗料である。忌避剤としては従来と同様に銅等の金属化合物や銅等の重金属の単体の粉末を採用することが出来る。
FRP製の船舶を建造する際、船体の表面を着色樹脂層であるゲルコート用樹脂で被覆するものであるが、このゲルコートも同様に微細な固体である水溶性或いは非水溶性の構造構成材及び忌避剤を混入する。ゲルコートを施さない場合は、最外層の樹脂に該構造構成材及び忌避剤を混入する。また同様の工法で製作、建造されるブイや浮き桟橋等水上、水中用建造物や工作物も同様である。
また、構造構成材は、水溶性の構成材と非水溶性の構成材を一緒に混入できる。
【発明の効果】
【0005】
上述のように構成された本発明による船底塗料は、乾燥、硬化時に溶剤の飛散及び塗膜主要素の収縮により該主要素と構造構成材の間に間隙を生じ塗膜の構造は透水性となる。構造構成材が水溶性の場合は進水の際、該構成材が水に溶出し、塗膜の構造は多孔質となる。また構造構成材の含有量を多くすれば多孔度、透水度も高くなる。そして本発明による塗料は水中において、この間隙或いは小孔に水を含み、この水に忌避剤である金属化合物から金属イオンが溶出し塗膜中を満たす。塗膜の表面には多数の間隙或いは小孔が有り、ここから湧出する金属イオンのため生物は着生できない。構造構成材の粒子が小さいため、この間隙及び小孔は極めて微小であり、航行による水流や、その動圧による内部の水の流出は殆ど無視できる。従って塗膜内部の金属イオンは高濃度となり、従来の船底塗料に比べ忌避剤の含有量を少なくすることが出来る。また金属化合物は塗膜の中で水と静的に接しているので、従来の船底塗料の様に海水によって容易に侵食されることは無く、金属イオンの海中への流出は浸透圧による湧出のみであり、防汚作用の有効期間は相当の長期間に及ぶ事が期待できドックに伴う労力や経済的負担を軽減できる。さらに、本発明による船底塗料が海中に放出するのは海水に多く含有されている銅等の金属イオンのみであり、従来の船底塗料の様に他の化学物質を放出するものではなく、環境に影響を及ぼす懸念が無い。船体被覆材の場合も同様であり、上述のように建造されたFRP製の船舶等は完成時から相当の期間船底塗料を塗る必要が無い。
本発明による塗料は水中生物にのみ有効であるだけでなくカビ等の陸上の生物にも有効であることは当然であり、建物等の防カビ等用塗料として提供できることは勿論である。この際の水分は雨や大気の湿気である。また忌避剤は亜鉛等の白色のイオンを採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態は、微細な固体である非水溶性で油性塗料に対し安定である炭酸カルシュウム等の構造構成材と忌避剤として金属化合物である亜酸化銅を混入した塗料である。この際、塗布し易い様に溶剤等で調整する。混入すべき構造構成材の比重が大きい場合、塗料を缶等で保存する際に構成材が缶底に沈澱するため、構成材の一部又は全部を別の袋或いは容器に適量添付し、塗布する直前に混入できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜或いは被覆膜が多孔質或いは透水性である船底防汚塗料及び船体被覆材。
【請求項2】
固体である水溶性或いは非水溶性の構造構成材及び忌避剤を混入た請求項1の船底防汚塗料及び船体被覆材。
【請求項3】
請求項1及び請求項2の船体被覆材で被覆されて成型建造された船舶。

【公開番号】特開2009−227950(P2009−227950A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107280(P2008−107280)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(391061440)
【Fターム(参考)】