説明

塗膜転写具

【課題】未使用時に長時間外気に曝露されることで生じうる、塗膜の変色、経時劣化、埃の付着等による粘着力の低下を防止することができる塗膜転写具を提供する。
【解決手段】開口2aを有するケース2内に供給リール3と巻取リール4を配設し、開口2aより転写ヘッド5を突出させ、供給リール3に巻回した基材の片面に塗膜を有する転写テープ6を繰出し、転写ヘッドの先端部5aで反転させて巻取リール4に巻取らせるようにした塗膜転写具1において、供給リール3と転写ヘッド5の間に、供給リールから引き出される転写テープ6の経路を制御するシャフト7を配設し、また、転写しない不使用時にはケースからその前端部を突出させてシャフトと転写ヘッドの間にある転写テープ6の塗膜に接触し、かつ使用時には転写テープ6の塗膜から離脱してケース内に収容される板状部材9を設け、スライド機構により、板状部材9と転写テープ6との接触・離脱を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手で把持して紙面等を押圧しながら移動させることにより、供給リールから繰出される転写テープに塗布されている塗膜を、紙面等に転写する塗膜転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗膜転写具としては、前端が開口するケース内に供給リールと巻取リールを配設し、該開口より転写ヘッドの前端を突出させ、供給リールに巻回した転写テープ(基材の片面に塗膜を形成したもの)を繰出し、転写ヘッドの前端で反転させて巻取リールに巻取らせるようにした構造が一般的である(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、塗膜付きテープを、紙面等における所望の箇所へ正確に押し付けるため、視認性を向上させる目的で、転写ヘッドを供給リールから離して配置したものもある(例えば、特許文献3)。
【0004】
また、塗膜転写具において、開口部の内壁面をシリコン樹脂、フッ素樹脂等の非粘着性材料の被膜層により被覆することで、転写テープの塗膜面が開口部の内壁面に接触しても密着することなく、迅速に塗布作業を行うことができる塗膜転写具も知られている(例えば、特許文献4)。
【0005】
しかしながら、上記構造の塗膜転写具では、ケースが開口しているため、転写テープが供給リールから引出されてから転写ヘッドの前端で反転するまでの間、転写テープの塗膜が常に外気に曝露された状態となるため、未使用時に長時間外気に曝露されることによる塗膜の経時劣化や、塗膜への埃の付着等によって、被転写面へ転写するための粘着力が低下するという問題がある。また、塗膜が紫外線で変色(黄変)するという問題もある。
【0006】
特許文献1、2に記載されている塗膜転写具では、ケース本体より突出している部分の未使用の塗膜面を覆うカバーを設け、不使用時において転写テープの塗膜面に埃が付着しないようにすることで、粘着力の低下を防止しているが、かかる構造では、ケース内部の転写ヘッドと供給リールの間の未使用の塗膜面は外気に曝された状態になってしまうため、依然として上記の問題が生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−054190号公報(段落〔0034〕、図1)
【特許文献2】特開2008−302598号公報(段落〔0023〕、図1)
【特許文献3】特開2000−094889号公報(段落[0026]、図1)
【特許文献4】特開平7−267478号公報(請求項1、段落[0012])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑み、未使用時に長時間外気に曝露されることで生じる、塗膜の経時劣化、埃の付着あるいは変色等による、転写テープを被転写面へ転写するための粘着力の低下や転写された塗膜の美観の低下を防止することができる塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、下記の構成の塗膜転写具を提供する。
【0010】
(1)前端に開口を有するケース内に供給リールと巻取リールを配設し、前記開口より転写ヘッドを突出させ、前記供給リールに巻回した基材の片面に塗膜を有する転写テープを繰出し、前記転写ヘッドの先端部で反転させて前記巻取リールに巻取らせるようにした塗膜転写具において、
前記供給リールと前記転写ヘッドの間に、該供給リールから引き出される転写テープをその外周面に外接させることで、転写テープの経路を制御するシャフトを設けるとともに、
転写しない不使用時には、ケースからその前端部を突出させて、前記シャフトと前記転写ヘッドの間にある転写テープの塗膜面に接触し、かつ使用時には、該転写テープの塗膜から離脱して、前記ケース内に収容される板状部材を設け、不使用時においては、板状部材の操作片を転写ヘッド方向に前進させ、スライド機構により、前記板状部材を転写テープ塗膜に接触させ、かつ使用時においては、板状部材の操作片を後退させ、スライド機構により、前記板状部材を転写テープ塗膜から離脱させるようにしたことを特徴とする塗膜転写具。
(2)前記シャフトの外周面下部と、前記転写ヘッドの先端部に設けられた転写ロールの外周面下部とを結ぶ面上に、前記板状部材と平行に略同幅の壁面、または、前記板状部材と平行に略同幅の壁面とシャフトを、ケースと一体で設けたことを特徴とする前記(1)に記載の塗膜転写具。
(3)前記スライド機構が、長孔を前記板状部材に対して斜設したスライド部材を設けるとともに、板状部材の両側面に円柱状突起を設け、該円柱状突起が、前記長孔およびケース内側面に設けられたL字型のガイドレールに嵌合することにより、前記操作片を前進させると板状部材は前進した後に上昇し、前記操作片を後退させると板状部材は下降した後に後退する、スライド機構であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の塗膜転写具。
(4)前記板状部材は、その転写テープ塗膜に接触する面と反対面側に、ばね及びばね保持部を有していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の塗膜転写具。
(5)前記板状部材は、その転写テープ塗膜に接触する面に、フッ素ゴム、シリコンゴム、フッ素樹脂、シリコン樹脂、または、フッ素樹脂もしくはシリコン樹脂を混合した混合樹脂からなる非粘着層が形成されていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の塗膜転写具。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の塗膜転写具によれば、シャフトを設けることで、供給リールから引出された転写テープを一定の経路に導くことができ、板状部材は、転写テープが転写ヘッドの前端で反転するまでの曝露領域に対し、転写テープの塗膜面に接することで、塗膜面が外気に曝露されることを防ぐので、塗膜の経時劣化や埃などの付着を防止できる。転写テープは、長時間の未使用の後でも、被転写面へ転写するための粘着力が低下することなく、塗膜が変色することもない。
さらに、板状部材は、転写ヘッドまで覆うため、転写テープ未使用時の周囲への誤付着等を防止でき、簡易な操作で付け外しが可能なキャップとしての機能も満たすことが可能になる。
【0012】
請求項2記載の塗膜転写具によれば、転写テープの経路に、ケースと一体で、抑え板として機能する壁面、あるいは壁面と抑えシャフトを連設しているので、転写テープの経路の制御がより確実となり、転写テープはより円滑に繰り出される。また、板状部材が転写テープを押し上げた際の転写テープの浮き上がりを防止する効果もある。
【0013】
請求項3記載の塗膜転写具によれば、長期間に渡って板状部材の動作が損なわれることがなく、塗膜転写具の不使用時には転写テープが確実に板状部材に接触し、かつ使用時には転写テープが板状部材から確実に離脱する。また、テープ塗膜面から板状部材が離脱する際テープに対し垂直に動作するため、テープの送り方向、または逆方向への誤作動、または、ずり力による塗膜の剥がれや変形を防ぐことができる。
【0014】
請求項4記載の塗膜転写具によれば、板状部材が転写テープ塗膜面に接触する方向にばねの付勢力が発揮されるため、板状部材は転写テープに接触し続けることができる。
【0015】
請求項5記載の塗膜転写具によれば、板状部材の塗膜への接触面に非粘着層が形成されていることにより、転写テープに塗膜面が有っても、板状部材が塗膜に接着することがなく、円滑に着脱動作を行うことができる。また、塗膜転写具が長期間不使用であった場合でも、転写テープに塗布した粘着剤が板状部材に転写されることがなく、板状部材が転写テープから離脱しにくくなる現象が発生するのを防止し、また、転写テープの粘着性自体が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1の塗膜転写具の不使用時の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の塗膜転写具の概略正面図であり(a)は不使用時において、板状部材が転写テープ塗膜面に接触している状態を示す図(b)は板状部材が転写テープと平行状態を維持したまま垂直に離脱した状態を示す図(c)は使用時において、板状部材をケースに収容した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2の塗膜転写具の一例を示す概略正面断面図であり、転写ヘッドと供給リールの間に設けられた2本のシャフトの外面に、転写テープの非塗膜面が外接している状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態3の塗膜転写具の別の一例を示す概略正面断面図であり、転写ヘッドと供給リールの間に、シャフトに連設して形成した壁面に、転写テープの非塗膜面が外接している状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態4の塗膜転写具を示す概略正面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の塗膜転写具の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る塗膜転写具1の不使用時の状態を示す斜視図であり、図2(a)は、同じく実施形態1に係る塗膜転写具1の不使用時において、板状部材9が転写テープ6の塗膜面(図では下面である)に接触している状態の概略正面図、図2(b)は、板状部材9が転写テープ6と平行状態を維持したまま垂直に離脱した状態の概略正面図、図2(c)は、使用時において、板状部材9を操作片11の操作によりケース2内に収容した状態の概略正面図である。
【0019】
塗膜転写具1は、図1に示すように、前端に開口部2aを有するケース2内に、基材の片面に塗膜を形成した転写テープ6を巻回した回転可能な供給リール3と、該供給リール3から引き出された転写テープ6を巻き取る回転可能な巻取リール4と、供給リール3から引き出された転写テープ6の塗膜を、その前端の転写ヘッド先端部5aで反転させながら被転写面に転写する転写ヘッド5が配設されている。
【0020】
一般的に、転写テープ6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックフィルムまたは紙からなる、厚さ3〜60μmの基材の片面もしくは両面にシリコン樹脂等の離型層を形成し、この基材の片面に、従来公知の方法で粘着剤を塗布することにより作製される。粘着剤としては、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、ロジン系、ゴム系等の粘着剤、或いはこれらの粘着剤に架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤、増粘剤、pH調整剤、消泡剤等の助剤を適宜配合したものが用いられる。粘着層の厚さは、通常、乾燥後において約0.3〜60μmの範囲である。
【0021】
本発明の塗膜転写具1においては、供給リール3と転写ヘッド5との間に、供給リール3から引き出される転写テープ6の経路を制御するシャフト7を、供給リール3に極力近い位置に1本配設する。引き出された転写テープ6は、その非塗膜面(即ち、粘着剤が塗布されていない基材面もしくは離型面)を、シャフト7の外面および転写ヘッド先端部5aの外面に外接させて掛け回されるため、シャフト7と転写ヘッド先端部5aの間の転写テープ6は直線状に弛みが無い状態で使用される。
【0022】
シャフト7は、ケース2と略同幅で設けるのが良く、ABS樹脂等の材料を用いてケース2と一体に成形しても良く、ポリアセタール樹脂等の摺動性に優れた材料を用い異なる部品として成形したものをケース2と一体にしても良い。シャフト7は、供給リール3から転写ヘッド5の前端までの間の領域において、シャフト7と供給リール3の間で、転写テープ6が板状部材と接しない部分が極力少なくなる位置に配置することが望ましい。
【0023】
図2(a)に示すように、板状部材9は、塗膜転写具1の不使用時においては、ケース2からその前端部を突出させて、シャフト7と転写ヘッド先端部5aの間にある転写テープ6の塗膜面に接触している。そして、図2(c)に示すように、塗膜転写具1の使用時においては、転写テープ6の塗膜面から離脱して、ケース2の下部に収容される。ケース2の下部は、操作片11が水平方向に自在に移動できる空間が設けられているため、後述するスライド機構によって操作片11を前進あるいは後退させることにより、板状部材9を転写テープ6の塗膜面に接触あるいは離脱させることができる。
【0024】
板状部材9の長さは、転写ヘッド5とシャフト7の間の転写テープ6の塗膜に全面押し付けることができるように、転写ヘッド先端部5aの中心とシャフト7の中心を結ぶ直線と同等の長さ、もしくは、やや長めが良い。また、この板状部材9の幅は、より確実に塗膜全面を被覆できるように、転写テープ6の幅以上でケース2の幅以下であることが好ましい。
【0025】
また、板状部材9を転写テープ6の塗膜側に付勢する方向にばね8aを設置し、その付勢力によって経時的に荷重を加え、板状部材9が転写テープ6の塗膜面に接触し続けるようにすることが好ましい。図2(a)に示す塗膜転写具は、板状部材9が、転写テープ6の塗膜に接触する面と反対面に、コイルばね8aと該ばね8aを巻き付けたばね保持部8を有しており、ばね8aの付勢力が発揮されている。ばね8aは、操作片11を後退させると、縮んだ状態となる(図2(b)及び図2(c))。
【0026】
図2(b)は、塗膜転写具1を使用する場合に、板状部材9を図2(a)の状態から図2(c)の状態に移動させる途中において、板状部材9が下降して塗膜面から離脱した段階の状態を示す。なお、この状態は、逆に塗膜転写具1の使用が終了して、板状部材9を図2(c)の状態から図2(a)の状態に移動させる途中において、板状部材9が上昇して塗膜面への接触を開始する段階の状態を示すものでもある。
【0027】
板状部材9が移動して、図2(a)から(c)の状態を自在に取れるようにするために、本発明の塗膜転写具は、操作片11を前進後退させることにより、板状部材9が上下しながら前進後退するスライド機構を採用している。
【0028】
すなわち、ケース2の下部の内側面には、L字型のガイドレール10を設けてある。また、板状部材9の両側面を挟むように、スライド部材13を、板状部材9と連結して設けてある。スライド部材13の両側面には、板状部材に対して、片面各2個の長孔14を斜設している(図2では、図示を省略するが、反対面にも、対称の位置に同形状の長孔が設けられている)。前記の操作片11は、このスライド部材13の底面(即ち、板状部材9の反対側)に設けられており、操作性の観点より、一部がケース2から突出している。
【0029】
一方、板状部材9の両側面には、一定距離を空けて、片面に各2個の円柱状突起12を設けているため(図示を省略するが、反対面にも、対称の位置に同形状の突起が設けられている)、この円柱状突起12が、長孔14およびL字型のガイドレール10に嵌合することにより、操作片11を前進させると板状部材は前進した後に上昇し、操作片を後退させると板状部材は下降した後に後退する。したがって、板状部材9の動きは、斜設された長孔14とL字型のガイドレール10によって規制される。
【0030】
塗膜転写具1の使用時に、図2(a)の状態から、操作片11を後退させた場合(操作片11の移動は常に水平移動である)、操作片11が後退しても、円柱状突起12はガイドレール10のL字の縦部にあるため、板状部材9は水平方向には移動できず元の位置を保つが、円柱突起12が斜めの長孔14に沿って移動することにより、操作片11とスライド部材13は引き続いて後退することができ(すなわち、板状部材9は、操作片11およびスライド部材13に対しては前進することになる)、それにともなって、円柱状突起12はL字型のガイドレール10のL字の縦部を下降することとなり、板状部材9は、転写テープ6の塗膜面から離脱する。
【0031】
円柱状突起12がL字型のガイドレール10の最下点に達した時点が図2(b)の状態であり、板状部材9は塗膜面から完全に離脱した状態となる。その後は、円柱状突起12は、ガイドレール10のL字の水平部分を移動するので、操作片9と連動して後退し、板状部材9は水平方向に後退する。図2(b)の状態以降、板状部材9をどこまで後退させるかは任意であり、被転写面への転写操作時にケース2の外に突出して視界を遮らない位置で、転写テープ6を巻き取る機構の可動領域を阻害しない位置、例えばケース内に格納した図2(c)の状態まで後退させるのが良い。
【0032】
塗膜転写具1の不使用時は、図2(c)の状態から、操作片11を前進させることになるので、上記とは逆の動きとなり、板状部材9は、転写ヘッド先端部5aまで、操作片11に連動して水平に前進して図2(b)の状態になる。なお、図2(c)から図2(b)までの状態では、板状部材9に付設されたばね8aは縮んだ状態となっている。図2(b)の状態からさらに操作片11を前進させても、板状部材9はガイドレール10のL字の縦部に規制されて水平方向には移動できないが、垂直方向には自由に移動できるので、縮んでいたばね8aが伸びることによって板状部材9は上昇し、転写テープ6の塗膜面と接触した図2(a)の状態となる。
【0033】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る塗膜転写具は、実施形態1で示したシャフト7の他に、転写テープ6の経路を制御する別の部材を設けた塗膜転写具の一例を示すものである。転写テープ6の経路を制御する部材の構成が異なること以外は、実施形態1の塗膜転写具と同様である。
【0034】
図3は、シャフト7の他に、壁面7bと抑えシャフト7cを設けた構成の塗膜転写具1を示す概略正面断面図である。図3に示す塗膜転写具1では、実施形態1の場合と同様、供給リール3に極力近い位置にシャフト7を設け、このシャフト7と転写ヘッド5との間に、抑えシャフト7cを設けるとともに、シャフト7と抑えシャフト7cの間を繋ぐ壁面7bを設ける。壁面7bは、ケース2と一体となってケース2の一部を構成し、転写テープ6の抑え板のような役割をする。
【0035】
壁面7bおよび抑えシャフト7cは、シャフト7の外周面下部と転写ヘッド先端部5aの外周面下部を結ぶ面上に、一体で、ケース2と略同幅で設けるのが良い。
【0036】
シャフト7、壁面7bおよび抑えシャフト7cは、ケース2と一体に成形することが好ましいが、抑えシャフト7cは、ポリアセタール樹脂等の摺動性に優れた材料を用い異なる部品として成形したものを、取り付けても良い。抑えシャフト7cの配設位置は特に限定されないが、転写テープ6の経路をできるだけ長く制御できるように、転写ヘッド5に極力近い位置に設けるのが良い。
【0037】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る塗膜転写具は、実施形態2とは別の形態の、転写テープ6の経路を制御する別の部材を設けた塗膜転写具の一例を示すものであり、転写テープ6の経路を制御する部材の構成が異なること以外は、実施形態1の塗膜転写具と同様である。
【0038】
図4は、シャフト7と壁面7eを連設した構成の塗膜転写具1を示す概略正面断面図である。図示の塗膜転写具1においては、シャフト7と、該シャフト7の外周面下部と転写ヘッド先端部5aの外周面下部とを結ぶ面上に、ケース2と略同幅の壁面7eを、ケース2と一体で設けている。
【0039】
壁面7eは、ケース2と一体となってケースの一部を構成し、転写テープ6の抑え板のような役割をする。ケース2と一体にすることで、壁面7eの長さを自由に設定できる。転写テープ6の経路を確実に制御するためには、壁面7eの長さを、転写ヘッド5に接する長さ以上にすることが好ましい。図示では、転写ヘッドの略半分程度まで壁面7eが形成されている。
【0040】
(実施形態4)
本発明の実施形態4に係る塗膜転写具は、板状部材9の転写テープ6の塗膜に接触する面に、非粘着層を設けた一例を示している。転写テープ6の経路を制御する部材の構成は、実施形態1の塗膜転写具と同様である。
【0041】
図5に、実施形態4に係る塗膜転写具1の概略正面断面図を示す。図示のように、板状部材9には非粘着層15が設けられ、転写テープ6の塗膜面はこの非粘着層15と接触するようになっている。
【0042】
塗膜転写具1において、非粘着層15は、フッ素ゴム、シリコンゴム、フッ素樹脂、シリコン樹脂、またはフッ素樹脂もしくはシリコン樹脂を混合した混合樹脂などで形成するのが良い。非粘着層15を形成する方法は特に限定されず、例えば、板状部材9の表面に、フッ素ゴムやシリコンゴムを貼り付ける方法、フッ素樹脂テープやフィルム、あるいは、シリコン樹脂テープやフィルム等の非粘着テープやフィルムを貼り付ける方法、あるいは、板状部材9の表面にフッ素樹脂やシリコン樹脂をコーティングし、非粘着性材料からなる被覆層を形成する方法などを挙げることができる。また、板状部材の材料中に、フッ素樹脂やシリコン樹脂等の非粘着性材料を混合し、一体成形することにより形成することもできる。フッ素樹脂テープやシリコン樹脂テープ等は、市販品を用いても良い。
【0043】
以上、本発明に係る塗膜転写具の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の塗膜転写具は、粘着テープの他、修正テープ、蛍光テープ等のテープ類を装着して使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 塗膜転写具
2 ケース
2a 開口
3 供給リール
4 巻取リール
5 転写ヘッド
5a 転写ヘッド先端部(転写ロール)
6 転写テープ
7 シャフト
7b 壁面
7c 抑えシャフト
7e 壁面
8 ばね保持部
8a ばね
9 板状部材
10 ガイドレール
11 操作片
12 円柱状突起
13 スライド部材
14 長孔
15 非粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に開口を有するケース内に供給リールと巻取リールを配設し、前記開口より転写ヘッドを突出させ、前記供給リールに巻回した基材の片面に塗膜を有する転写テープを繰出し、前記転写ヘッドの先端部で反転させて前記巻取リールに巻取らせるようにした塗膜転写具において、
前記供給リールと前記転写ヘッドの間に、該供給リールから引き出される転写テープをその外周面に外接させることで、転写テープの経路を制御するシャフトを設けるとともに、
転写しない不使用時には、ケースからその前端部を突出させて、前記シャフトと前記転写ヘッドの間にある転写テープの塗膜面に接触し、かつ使用時には、該転写テープの塗膜から離脱して、前記ケース内に収容される板状部材を設け、不使用時においては、板状部材の操作片を転写ヘッド方向に前進させ、スライド機構により、前記板状部材を転写テープ塗膜に接触させ、かつ使用時においては、板状部材の操作片を後退させ、スライド機構により、前記板状部材を転写テープ塗膜から離脱させるようにしたことを特徴とする塗膜転写具。
【請求項2】
前記シャフトの外周面下部と、前記転写ヘッドの先端部に設けられた転写ロールの外周面下部とを結ぶ面上に、前記板状部材と平行に略同幅の壁面、または、前記板状部材と平行に略同幅の壁面とシャフトを、ケースと一体で設けたことを特徴とする請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
前記スライド機構が、長孔を前記板状部材に対して斜設したスライド部材を設けるとともに、板状部材の両側面に円柱状突起を設け、該円柱状突起が、前記長孔およびケース内側面に設けられたL字型のガイドレールに嵌合することにより、前記操作片を前進させると板状部材は前進した後に上昇し、前記操作片を後退させると板状部材は下降した後に後退する、スライド機構であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜転写具。
【請求項4】
前記板状部材は、その転写テープ塗膜に接触する面と反対面側に、ばね及びばね保持部を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜転写具。
【請求項5】
前記板状部材は、その転写テープ塗膜に接触する面に、フッ素ゴム、シリコンゴム、フッ素樹脂、シリコン樹脂、または、フッ素樹脂もしくはシリコン樹脂を混合した混合樹脂からなる非粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜転写具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121169(P2012−121169A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271741(P2010−271741)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000134589)株式会社トンボ鉛筆 (158)
【Fターム(参考)】