説明

塗装システムおよび塗装方法

【課題】設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制しながら、塗料タンクへの塗料の充填時間を短縮し得る塗装システムおよび塗装方法を提供する。
【解決手段】塗装機に着脱自在あるいは内蔵される塗料タンク30B〜30Eおよび塗料タンク30B〜30Eに塗料を供給するための塗料供給手段50B〜50Eを有する。塗料供給手段50B〜50Eは、塗料の供給源と塗料タンク30B〜30Eの間に配置される中間タンク70B〜70E、塗料の供給源と中間タンク70B〜70Eとを連結し、塗料が圧送される供給配管系66B〜66E、および、中間タンク70B〜70Eと塗料タンク30B〜30Eとを連結し、中間タンク70B〜70Eに供給された塗料が圧送される移送配管系64B〜64Eを有する。そして、移送配管系64B〜64Eの圧送圧は、供給配管系66B〜66Eの圧送圧よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システムおよび塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ等の部材の塗装システムにおいては、塗料が充填されたカートリッジ式の塗料タンクを、塗装機に対して適宜交換して取付けることで、多様な塗色に対応している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−11396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、塗料タンクへの充填時間が律速となる場合、塗装作業が中断され、連続生産を継続することが困難となる問題を有する。一方、塗料タンクに充填される塗料は、配管系を利用して圧送されているため、圧送圧を増加させることで、充填時間を短縮化することは可能であるが、配管系を高圧仕様とする(耐圧性能を向上させる)必要があるため、設備コストやメンテナンスコストが増加する問題を有する。また、同色の塗料タンクを複数用意し、交互に用いることで、充填時間が律速となることを避けることも可能であるが、塗料タンク数の増大を伴うため、同様に予に設備コストやメンテナンスコストが増加する問題を有する。
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制しながら、塗料タンクへの塗料の充填時間を短縮し得る塗装システムおよび塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、塗装機に着脱自在あるいは内蔵される塗料タンクおよび前記塗料タンクに塗料を供給するための塗料供給手段を有する塗装システムである。前記塗料供給手段は、前記塗料の供給源と前記塗料タンクの間に配置される中間タンク、前記塗料の供給源と前記中間タンクとを連結し、前記塗料が圧送される供給配管系、および、前記中間タンクと前記塗料タンクとを連結し、前記中間タンクに供給された前記塗料が圧送される移送配管系を有する。そして、前記移送配管系の圧送圧は、前記供給配管系の圧送圧よりも大きく設定されている。
【0006】
上記目的を達成するための本発明の別の一様相は、塗装機に着脱自在あるいは内蔵される塗料タンクに塗料を供給するための塗料供給工程を有する塗装方法である。そして、前記塗料供給工程において、前記塗料の供給源と中間タンクとを連結する供給配管系を利用して、前記塗料を前記中間タンクに圧送し、前記中間タンクの前記塗料を、前記中間タンクと前記塗料タンクとを連結する移送配管系を利用して、前記塗料タンクに圧送する際、前記移送配管系の圧送圧を、前記供給配管系の圧送圧よりも大きくする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記様相に係る塗装システムおよび塗装方法によれば、供給源からの塗料は、低圧で中間タンクに供給されるため、中間タンクと供給源とを連結する供給配管系を、高圧仕様とする(耐圧性能を向上させる)必要がなく、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制することができる。一方、中間タンクに一時的に収容されている塗料は、高圧で塗料タンクに移送されるため、塗料タンクへの塗料の充填時間を短縮化することが可能である。また、移送配管系は、高圧仕様とする必要があるが、供給配管系に比べて小規模であるため、設備コストやメンテナンスコストに対する影響は少ない。つまり、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制しながら、塗料タンクへの塗料の充填時間を短縮し得る塗装システムおよび塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る塗装システムを説明するための概略図、図2は、図1に示される塗料供給装置を説明するための概略図、図3は、図1に示される塗料貯蔵タンク部を説明するための概略図、図4は、図2に示される中間タンク部を説明するための断面図である。
【0010】
本実施の形態に係る塗装システムは、塗装ブース10、塗装ロボット20、塗料カートリッジ(塗料タンク)30、カートリッジ交換装置40、塗料供給装置50および塗料貯蔵タンク部80を有する。
【0011】
塗装ブース10には、側方に塗装ロボット20が配置され、例えば、自動車のボディ等のワーク(被塗物)Wが、コンベヤーによって順次配置される。塗装ロボット20は、塗装ブース10の床部に固定される基台22、基台22に回転かつ揺動自在に設けられた多軸制御式のアーム部24、および、アーム部24の先端に取り付けられる塗装ガン(塗装機)26を有する。塗装ガン26は、例えば、回転霧化式の静電塗装ガンである。
【0012】
塗料カートリッジ30は、汎用カートリッジ30A1,30A2および専用カートリッジ30B〜30Eから構成され、例えば、水系塗料が充填される。汎用カートリッジ30A1,30A2は、同一の塗料が充填されて使用され、かつ、色替えによって多様な色の塗料が適用される。専用カートリッジ30B〜30Eは、異なる色の塗料が充填されて、使用される。なお、塗料カートリッジ30は、高電圧を印加する際において塗料経路を絶縁するための手段として機能する。
【0013】
カートリッジ交換装置40は、塗料カートリッジ30を把持自在のクランプ部42およびクランプ部42を水平方向(XY方向)および高さ方向(Z方向)に駆動自在の駆動装置44を有し、塗装ガン26に装着される塗料カートリッジ30を適宜交換するために使用される。駆動装置44は、例えば、塗装ブース10の上部に支持されるガイドレールや、駆動源であるサーボモータ等を有する。
【0014】
塗料供給装置50は、汎用カートリッジ30A1,30A2および専用カートリッジ30B〜30Eに塗料を供給するに使用される塗料供給ユニット(塗料供給手段)50A1,50A2,50B〜50Eを有する。
【0015】
塗料貯蔵タンク部80は、塗装ブース10から離間した塗料調合室90に配置され、汎用カートリッジ30A1,30A2に充填される塗料を貯蔵するための貯蔵タンク(供給源)80A1〜80A5および専用カートリッジ30B〜30Eに充填される塗料を貯蔵するための貯蔵タンク(塗料の供給源)80B〜80Eを有する(図3参照)。貯蔵タンク80B〜80Eには、使用頻度が高い塗色である量産色(大量生産色)B〜Eの塗料が貯蔵される。貯蔵タンク80A1〜80A5は、量産色B〜E以外の色(例えば、使用頻度が低い塗色)A1〜A5の塗料が貯蔵される。
【0016】
次に、図2および図3を参照し、塗料供給ユニットを詳述する。
【0017】
汎用カートリッジ用の塗料供給ユニット50A1,50A2は、バルブ部52A1,52A2、近位配管系54A1,54A2、遠位配管系55,56およびエアー配管系58A1〜58A5を有する。近位配管系54A1,54A2は、汎用カートリッジ30A1,30A2とバルブ部52A1,52A2とを連結するために使用される。
【0018】
遠位配管系55,56は、貯蔵タンク80A1〜80A5と一対一で連結されるチューブ55A1〜55A5,56A1〜56A5からなり、貯蔵タンク80A1〜80A5とバルブ部52A1,52A2とを連結するために使用される。遠位配管系55,56および近位配管系54A1,54A2は、一体となって、汎用カートリッジ30A1,30A2と貯蔵タンク80A1〜80A5とを連結する供給配管系を構成する。
【0019】
エアー配管系58A1〜58A5は、例えば、コンプレッサに連結されており、貯蔵タンク80A1〜80A5に圧縮空気を供給し、貯蔵されている塗料を圧送(供給)するために使用される。
【0020】
バルブ部52A1,52A2は、連結されるチューブ55A1〜55A5,56A1〜56A5毎にカラーチェンジバルブ(CCV)を有する。カラーチェンジバルブは、例えば、塗料用バルブ、エアー用バルブおよび洗浄剤用バルブからなるバルブセットを有する。
【0021】
したがって、塗料供給ユニット50A1,50A2は、エアー配管系58A1〜58A5およびバルブ部52A1,52A2を適宜制御することで、貯蔵タンク80A1〜80A5に貯蔵されている塗料を、汎用カートリッジ30A1,30A2に交互に充填することで、塗色として、5色A1〜A5が利用可能である。
【0022】
汎用カートリッジ30A1,30A2に連結される貯蔵タンク80A1〜80A5の数は、特に限定されず、ワークWに対する塗色条件に応じて、適宜設定される。また、汎用カートリッジ30A1,30A2は、同一色の塗料が充填される形態に限定されず、異なる色の塗料を適用することも可能である。
【0023】
専用カートリッジ用の塗料供給ユニット50B〜50Eは、バルブ部62B〜62E、近位配管系64B〜64E、中間タンク部70B〜70E、遠位配管系66およびエアー配管系68B〜68Eを有する。
【0024】
近位配管系64B〜64Eは、専用カートリッジ30B〜30Eとバルブ部62B〜62Eとを連結するために使用される。中間タンク部70B〜70Eは、近位配管系64B〜64Eの途中に配置される。遠位配管系66は、貯蔵タンク80B〜80Eとバルブ部62B〜62Eとを一対一で連結するチューブ66B〜66Eからなる。バルブ部62B〜62Eは、遠位配管系66B〜66Eに連結されるカラーチェンジバルブを有する。
【0025】
エアー配管系68B〜68Eは、エアー配管系68B〜68Eは、例えば、コンプレッサに連結されており、圧縮空気を利用して貯蔵タンク80B〜80Eに貯蔵されている塗料を圧送(供給)するために使用される。
【0026】
なお、遠位配管系66B〜66Eと、近位配管系64B〜64Eにおける中間タンク部70B〜70Eとバルブ部62B〜62Eとの間の配管系とは、一体となって、貯蔵タンク80B〜80Eと中間タンク部70B〜70Eとを連結する供給配管系を構成する。近位配管系64B〜64Eにおける中間タンク部70B〜70Eと専用カートリッジ30B〜30Eとの間の配管系は、中間タンク部70B〜70Eと専用カートリッジ30B〜30Eを連結する移送配管系を構成する。
【0027】
中間タンク部70B〜70Eは、中間タンク72、エアー配管系(圧縮空気供給手段)76および逆止弁(逆止弁手段)78を有する。中間タンク72は、近位配管系64B〜64Eに連通する中空部73、中空部73に収容される塗料を押圧自在のピストン部74およびエアー配管系76に連通する開口部75を有する。
【0028】
エアー配管系76は、例えば、コンプレッサに連結されており、開口部75を経由して圧縮空気を供給し、ピストン部74を駆動するために使用される。ピストン部74は、圧縮空気が供給されると、中空部73に収容される塗料を押圧し、当該塗料を専用カートリッジ30B〜30Eに圧送することが可能である。したがって、移送配管系における圧送圧を容易に高圧とすることができる。
【0029】
逆止弁78は、中間タンク72とバルブ部62B〜62Eとの間の配管系の途中かつ中間タンク72の近傍に配置される。逆止弁78は、中間タンク72の中空部73に収容される塗料を専用カートリッジ30B〜30Eに圧送する際、塗料がバルブ部側に逆流することを阻止するため、供給配管系に対する圧送圧の影響を確実に排除することが可能である。なお、貯蔵タンク80B〜80Eに適用されるエアー配管系68B〜68Eの圧力と、中間タンク部70B〜70Eに適用されるエアー配管系76の圧力とは、独立して制御できるように構成されている。
【0030】
したがって、塗料供給ユニット50B〜50Eは、エアー配管系68B〜68Eおよびバルブ部62B〜62Eを適宜制御することで、貯蔵タンク80B〜80Eに貯蔵されている塗料を、中間タンク部70B〜70Eの中間タンク72に圧送(供給)することが可能である。一方、塗料供給ユニット50B〜50Eは、中間タンク部70B〜70Eのエアー配管系76を適宜制御することで、中間タンク部70B〜70Eの中間タンク72に一時的に収容されている塗料を、専用カートリッジ30B〜30Eに圧送(移送)することで、塗色として、4色B〜Eを利用可能とする。なお、移送配管系の圧送圧(専用カートリッジへの圧送圧)が、供給配管系の圧送圧(中間タンクへの圧送圧)よりも大きく設定されている。
【0031】
つまり、貯蔵タンクからの塗料は、低圧で中間タンクに供給されるため、中間タンクと貯蔵タンクとを連結する供給配管系を、高圧仕様とする(耐圧性能を向上させる)必要がなく、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制することができる。一方、中間タンクに一時的に収容されている塗料は、高圧で専用カートリッジに移送されるため、専用カートリッジへの塗料の充填時間を短縮化することが可能である。また、移送配管系は、高圧仕様とする必要があるが、供給配管系に比べて小規模であるため、設備コストやメンテナンスコストに対する影響は少ない。
【0032】
塗料供給装置50は、中間タンク72が適用される塗料供給ユニット50B〜50Eと中間タンクを有しない塗料供給ユニット50A1,50A2の両方を有するため、これらを適宜組み合わせることによって、多様な塗装条件に容易に適用することが可能である。
【0033】
専用カートリッジ30B〜30E(および貯蔵タンク80B〜80E)の数は、特に限定されず、ワークWに対する塗色条件に応じ、例えば、使用頻度が高い塗色が増大した場合に、容易に対応することができるように、適宜設定される。また、中間タンク72が適用される塗料供給ユニット50B〜50Eが複数配置されているため、使用頻度が高い塗料の色が多様であっても容易に対応することができる。
【0034】
次に、本実施の形態に係る塗装方法を説明する。
【0035】
本塗装方法は、概して、塗装ガン26によってワークWを塗装するための塗装工程および塗装ガン26に着脱自在の塗料カートリッジ30に塗料を供給するための塗料供給工程を有し、塗装工程には、塗装ガン26から塗料カートリッジ30を取外す工程および別の塗料カートリッジ30を塗装ガン26に装着する工程を含んでいる。
【0036】
塗装工程においては、まず、コンベヤーによってワークWが塗装ブース10に配置されると、カートリッジ交換装置40は、汎用カートリッジ30A1,30A2および専用カートリッジ30B〜30Eの中から所定の塗色の塗料が充填されている塗料カートリッジ30を選択する。当該塗料カートリッジ30は、クランプ部42によって把持されると、駆動装置44によって駆動されて、塗装ロボット20のアーム部24の先端に取り付けられる塗装ガン26に装着される。
【0037】
塗装ロボット20は、アーム部24を制御することで、塗料カートリッジ30と連結された塗装ガン26の位置を移動させ、ワークWの所定部位を塗装する。サイクルタイムは、例えば、約1分間である。塗装が終了すると、ワークWは、コンベヤーによって次工程のために塗装ブース10から搬送される。
【0038】
一方、色替えあるいは塗料の補充のために塗料カートリッジ30の交換が必要である場合、カートリッジ交換装置40は、塗装ガン26との連結が解除された塗料カートリッジ30を、クランプ部42によって把持し、塗装ガン26から取外し、クランプ部42を駆動装置44によって駆動して、初期位置に戻す。そして、例えば、次の塗色の塗料が充填されている塗料カートリッジ30の選択、移動および塗装ガン26への装着、ワークWの所定部位の塗装、塗料カートリッジ30の取り外しおよび初期位置への復帰が、適宜繰り返される。
【0039】
次に、塗装に使用された塗料カートリッジ30が汎用カートリッジ30A1,30A2の場合における塗料供給工程を説明する。
【0040】
汎用カートリッジ30A1が初期位置に戻されると、塗料供給ユニット50A1は、エアー配管系58A1〜58A5およびバルブ部52A1を制御し、遠位配管系55および近位配管系54A1を利用して、消費された塗料に対応する貯蔵タンク80A1〜80A5に貯蔵されている同一の塗料を、汎用カートリッジ30A1に圧送し、充填する。
【0041】
一方、汎用カートリッジ30A2が初期位置に戻されると、塗料供給ユニット50A2は、エアー配管系58A1〜58A5およびバルブ部52A2を制御し、遠位配管系56および近位配管系54A2を利用して、消費された塗料に対応する貯蔵タンク80A1〜80A5に貯蔵されている同一の塗料を、汎用カートリッジ30A2に圧送し、充填する。
【0042】
塗料供給ユニット50A1,50A2の近位配管系54A1,54A2および遠位配管系55,56から構成される塗料供給配管系における圧送圧は、比較的小さく設定されており、塗料の充填時間は長時間(例えば、約30秒)を要する。しかし、汎用カートリッジ30A1,30A2は、同一の塗料が貯蔵されているため、交互に用いることで、充填時間が律速となることを防ぐことが可能である。したがって、塗装作業の中断を避け、連続生産を継続することができる。
【0043】
なお、汎用カートリッジ30A1,30A2は、塗装工程における塗色に応じ、バルブ部52A1,52A2のカラーチェンジバルブにおけるエアー用バルブおよび洗浄剤用バルブが制御され、洗浄されて、適宜色替えされる。汎用カートリッジ30A1,30A2は、バルブ部52A1,52A2を介して、貯蔵タンク80A1〜80A5に接続されているため、5色A1〜A5が適用可能である。
【0044】
次に、塗装に使用された塗料カートリッジ30が専用カートリッジ30B〜30Eの場合における塗料供給工程を説明する。なお、専用カートリッジ30B〜30Eに係る塗料供給工程は、独立しておりかつ略同一であるため、重複を避けるため、専用カートリッジ30Bによって代表させて説明する。
【0045】
専用カートリッジ30Bが初期位置に戻されると、塗料供給ユニット50Bは、中間タンク部70Bを制御する。中間タンク部70Bにおいては、エアー配管系76からの圧縮空気がピストン部74に導入され、ピストン部74は、中空部73に収容される塗料を押圧する。塗料は、近位配管系64Bを経由し、圧送によって専用カートリッジ30Bに移送される。
【0046】
この際の圧送圧は大きく設定されているため、専用カートリッジ30Bへの塗料の充填は、短時間で実行される。したがって、塗料タンクへの充填時間が律速となり、塗装作業が中断される問題を避けることが可能である。充填時間は、例えば、約10秒以内であれば、取り外し、再セットの時間を含め約20秒の色替え時間に対応することが可能である。
【0047】
一方、大きな圧送圧が適用される部位(近位配管系64Bにおける逆止弁78と専用カートリッジ30Bとの間の配管系)は、高圧仕様とする必要があるが、その長さは短いため、設備コストやメンテナンスコストに対する影響は少ない。また、逆止弁78の存在により、塗料がバルブ部側に逆流することが阻止され、バルブ部側に対する高圧の影響が確実に排除される。
【0048】
中間タンク部70Bからの専用カートリッジ30Bへの塗料の充填が完了すると、塗料供給ユニット50Bは、エアー配管系68Bを制御する。エアー配管系68Bからの圧縮空気が貯蔵タンク80Bに導入され、貯蔵されている塗料が圧送される。塗料は、遠位配管系66B、バルブ部62Bおよび近位配管系64Bを経由して、中間タンク部70Bの中間タンク72に供給される。
【0049】
この際の圧送圧は、専用カートリッジ30Bへの塗料の移送の際の圧送圧より小さくされている。そのため、小さな圧送圧が適用される部位(遠位配管系66B、近位配管系64Bにおけるバルブ部62Bと中間タンク部70Bの逆止弁78との間の配管系、および、バルブ部62B)は、低圧仕様で十分であり、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制することができる。
【0050】
なお、例えば、塗装作業時間は、約1分間であり、中間タンク72への塗料の供給時間は、約30秒である。中間タンク72への塗料の供給は、専用カートリッジ30Bが取り外された状態でも実行することができるため、塗装作業の中断を避け、連続生産を継続することができる。
【0051】
また、十分な充填時間が確保されるため、次回の専用カートリッジ30Bへの必要充填量を考慮し、計量された正確な量の塗料を中間タンク72へ供給することが可能である。この場合、中間タンク72から専用カートリッジ30Bへの塗料の移送は、計量性を考慮する必要がないため、例えば、圧力制御を適用することが可能である。
【0052】
本塗装方法は、中間タンク72が適用される塗料供給工程と、中間タンク72を有しない塗料供給工程(第2塗料供給工程)を有するため、これらを適宜組み合わせることによって、多様な塗装条件に容易に適用することが可能である。
【0053】
専用カートリッジ30B〜30Eは、上記のように、塗料の充填が短時間で実行されるため、汎用カートリッジ30A1,30A2のように、2個用意して交互に用いる必要がない。したがって、塗料カートリッジ30の増加を抑制し、その設置スペースを削減することで、設備コストやメンテナンスコストの増大を避けることが可能である。
【0054】
例えば、自動車塗装ラインにおいては、30色を塗装する場合においても、量産色は偏っており、上位2色で全生産台数のうち30%近くをカバーし、上位4色では、50%程度をカバーする。したがって、塗料カートリッジが4個の場合、同一色の塗料を貯蔵して交互に使用する形態においては、上位2色しか適用できないが、単独で適用可能な形態(専用カートリッジ30B〜30E)においては、上位4色に適用可能である。したがって、色替えロスおよび洗浄剤の使用量の削減を効率よく受益できる。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る変形例を説明するための概略図である。
【0056】
中間タンクから移送される塗料は、塗装機に着脱自在のカートリッジに充填される形態に限定されない。例えば、塗装機に内蔵される塗料タンク30Fを有する塗装システムにおいては、中間タンク72Aと塗料タンク30Fとを配管系によって連結し、中間タンク72Aから移送される塗料を、塗料タンク30Fに直接的に充填することも可能である。
【0057】
以上のように、本実施の形態に係る塗装システムおよび塗装方法においては、貯蔵タンクからの塗料は、低圧で中間タンクに供給されるため、中間タンクと貯蔵タンクとを連結する供給配管系を、高圧仕様とする(耐圧性能を向上させる)必要がなく、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制することができる。一方、中間タンクに一時的に収容されている塗料は、高圧で専用カートリッジに移送されるため、専用カートリッジへの塗料の充填時間を短縮化することが可能である。また、移送配管系は、高圧仕様とする必要があるが、供給配管系に比べて小規模であるため、設備コストやメンテナンスコストに対する影響は少ない。したがって、本実施の形態は、設備コストやメンテナンスコストの増加を抑制しながら、塗料タンクへの塗料の充填時間を短縮し得る塗装システムおよび塗装方法を提供することができる。
【0058】
また、中間タンクに圧縮空気を供給するためのエアー配管系を有し、かつ、中間タンクとバルブ部との間の配管系の途中かつ中間タンクの近傍に配置される逆止弁を有する。そのため、移送配管系において大きな圧送圧が容易に得られ、かつ、供給配管系に対する圧送圧の影響を確実に排除することが可能である。
【0059】
また、中間タンクが適用される塗料供給ユニット(塗料供給工程)と中間タンクを有しない塗料供給ユニット(第2塗料供給工程)の両方を有するため、これらを適宜組み合わせることによって、多様な塗装条件に容易に適用することが可能である。
【0060】
さらに、中間タンクが適用される塗料供給ユニットが複数配置されているため、使用頻度が高い塗料の色が多様であっても容易に対応することができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、塗装機は、エアスプレー塗装機やエアレススプレー塗装機を適用することも可能である。また、この場合、塗料は、水系塗料に限定されず、例えば、有機溶剤系塗料を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗装システムを説明するための概略図である。
【図2】図1に示される塗料供給装置を説明するための概略図である。
【図3】図1に示される塗料貯蔵タンク部を説明するための概略図である。
【図4】図2に示される中間タンク部を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る変形例を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0063】
10 塗装ブース、
20 塗装ロボット、
22 基台、
24 アーム部、
26 塗装ガン(塗装機)、
30 塗料カートリッジ(塗料タンク)、
30A1,30A2 汎用カートリッジ(塗料タンク)、
30B〜30E 専用カートリッジ(塗料タンク)、
30F 塗料タンク、
40 カートリッジ交換装置、
42 クランプ部、
44 駆動装置、
50 塗料供給装置、
50A1,50A2,50B〜50E 塗料供給ユニット(塗料供給手段)、
52A1,52A2 バルブ部、
54A1,54A2 近位配管系、
55(55A1〜55A5),56(56A1〜56A5) 遠位配管系、
58A1,58A2 エアー配管系、
62B〜62E バルブ部、
64B〜64E 近位配管系、
66(66B〜66E) 遠位配管系、
68B〜68E エアー配管系、
70B〜70E 中間タンク部、
72,72A 中間タンク、
73 中空部、
74 ピストン部、
75 開口部、
76 エアー配管系(圧縮空気供給手段)、
78 逆止弁(逆止弁手段)、
80 塗料貯蔵タンク部(塗料の供給源)、
80A1,80A2,80B〜80E 貯蔵タンク、
90 塗料調合室、
W ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装機に着脱自在あるいは内蔵される塗料タンクおよび前記塗料タンクに塗料を供給するための塗料供給手段を有しており、
前記塗料供給手段は、
前記塗料の供給源と前記塗料タンクの間に配置される中間タンク、
前記塗料の供給源と前記中間タンクとを連結し、前記塗料が圧送される供給配管系、および、
前記中間タンクと前記塗料タンクとを連結し、前記中間タンクに供給された前記塗料が圧送される移送配管系
を有しており、
前記移送配管系の圧送圧は、前記供給配管系の圧送圧よりも大きく設定されている
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記中間タンクに圧縮空気を供給するための圧縮空気供給手段、および、前記供給配管系の途中かつ前記中間タンクの近傍に配置される逆止弁手段を有することを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記塗料タンクは、前記塗装機に着脱自在でありかつ複数設けられており、
前記塗装システムは、前記塗料タンクの数に対応する複数の前記塗料供給手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記塗料タンクは、前記塗装機に着脱自在であり、
前記塗装システムは、前記塗装機に着脱自在である第2塗料タンクおよび前記第2塗料タンクに第2塗料を供給するための第2塗料供給手段を有し、
前記第2塗料供給手段は、前記第2塗料の供給源と前記第2塗料タンクとを連結し、前記第2塗料が圧送される供給配管系を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項5】
塗装機に着脱自在あるいは内蔵される塗料タンクに塗料を供給するための塗料供給工程を有しており、
前記塗料供給工程において、
前記塗料の供給源と中間タンクとを連結する供給配管系を利用して、前記塗料を前記中間タンクに圧送し、前記中間タンクの前記塗料を、前記中間タンクと前記塗料タンクとを連結する移送配管系を利用して、前記塗料タンクに圧送する際、
前記移送配管系の圧送圧を、前記供給配管系の圧送圧よりも大きくする
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項6】
前記塗料タンクは、前記塗装機に着脱自在であり、
前記塗装方法は、
前記塗装機に着脱自在である第2塗料タンクに第2塗料を供給するための第2塗料供給工程、前記塗装機から前記塗料タンクを取外す工程、および、前記塗装機に前記第2塗料タンクを装着する工程を有しており、
前記第2塗料供給工程において、
前記第2塗料の供給源と第2中間タンクを連結する第2供給配管系を利用して、前記第2塗料を前記第2中間タンクに圧送し、前記第2中間タンクの前記第2塗料を、前記第2中間タンクと前記第2塗料タンクとを連結する第2移送配管系を利用して、前記第2塗料タンクに圧送する際、
前記第2移送配管系の圧送圧を、前記第2供給配管系の圧送圧よりも大きくする
ことを特徴とする請求項5に記載の塗装方法。
【請求項7】
前記塗料タンクは、前記塗装機に着脱自在であり、
前記塗装方法は、前記塗装機に着脱自在である第2塗料タンクに第2塗料を供給するための第2塗料供給工程を有しており、
前記第2塗料供給工程において、前記第2塗料の供給源と前記第2塗料タンクを連結する第2供給配管系を利用して、前記第2塗料を前記第2塗料タンクに圧送する
ことを特徴とする請求項5に記載の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−213979(P2009−213979A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58485(P2008−58485)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】