説明

塗装ブース

【課題】塗装空間100a内で水性系塗装を行うときに該塗装空間内の湿度や気温を効率的に最適化させる。
【解決手段】塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ライン7を備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部14Aと、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部14Bとを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に還流させるものとした気体調整還流ライン13を設け、さらに前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ライン11を設けた構成となす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電車の車体などの塗装を実施するための塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
天井面を気体の流通されるフィルター面となされ且つ床面を気体の流通可能な面となされている密閉状塗装空間と、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し前記塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインとを備えた構成の塗装ブースは存在している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
該塗装ブース内で溶剤系塗装を行うときは、給気ライン及び排気ラインが作動状態となされ、塗装中の塗装空間内ができるだけ清浄な空気で満たされた状態となされるのであり、この際、前記排気ラインにより排出される排気に含まれる微細塗料粒子や有機溶剤の揮発成分は排気ラインに設けられた適宜な除塵フィルタや脱臭フィルタで除去される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−170529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、塗装空間内においては、塗料を被塗装物に品質よく付着させ又塗装作業時間の短縮を図る上で適当な湿度と温度が要求され、また作業環境として適当な気温も要求されるのであり、これに対処するには塗装空間内に供給される気体を冷却したり加熱することが必要となる。
しかし、上記した従来の塗装ブースでは、塗装空間内が給気ライン及び排気ラインにより比較的大きな流量で気体を連続的且つ一過式に供給排出されるため、単に、塗装空間内の気体を冷却したり加熱するには膨大なエネルギーを必要とし塗装空間内の湿度や温度を効率的に最適化できないのである。
一方、塗装は作業環境の向上や外気汚染の防止などの見地から、溶剤系塗装によるよりも水性系塗装による方が好ましいので、水性系塗装用ブースとして有効である。
【0006】
本発明は、密閉状塗装空間内で水性系塗装を行うときに該塗装空間内の湿度や温度を効率的に最適化させることで塗装時間を短縮でき、仕上がりのよい塗装を省エネルギーで行える塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願の第1発明は、請求項1に記載したように、密閉状塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から除塵した気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたものである。
【0008】
第2発明は、請求項2に記載したように、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し密閉状塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を除塵して比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたものである。
【0009】
第3発明は、請求項3に記載したように、天井面を気体の流通されるフィルター面となされ且つ床面を気体の流通可能な面となされている密閉状塗装空間と、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し前記塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインとを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を除塵して比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に前記フィルタ面を通じ還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を前記床面を通じ比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたものである。
【0010】
第4発明は、請求項4に記載したように、天井面を気体の流通されるフィルター面となされ且つ床面を気体の流通可能な面となされている密閉状塗装空間と、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し前記塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインとを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を除塵して比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に分岐気体通路を通じて還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、この際、分岐気体通路は前記フィルター面を経て前記塗装空間内に気体を還流させる第1通路と、前記床面上の被塗装物に気体を噴き当てるものとなされた気体噴出ノズルを経て塗装空間内に気体を還流させる第2通路とを具備すると共にこれら第1通路と第2通路のそれぞれに流量調整手段を設けたものとなされており、さらに前記塗装空間内の気体を前記床面を通じ比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたものである。
【0011】
上記第3発明及び第4発明は次のように具体化するのがよいのであって、即ち、請求項5に記載したように、前記給気ラインにおける送風ファン及び給気管の一部が前記気体除塵還流ラインの一部をなしている構成となす。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載のものによれば、水性系塗装を行う場合において、気体調整還流ラインが第2吸引口部から比較的小さな流量の外気と第1吸引口部からの気体を吸引して塗装空間内に供給し、一方では排気ラインが比較的小さな流量で塗装空間内の気体を外方へ排出する状態となされるのであり、該状態の下で塗装空間内の気体の湿度及び温度が調整されるため、塗装空間内は比較的小さなエネルギーで適湿及び適温に調整されるのであり、また気体除塵還流ラインは塗装空間内の気体を比較的大きな流速で循環させつつ除塵するため、塗装空間内の微細塗料粒子は効果的に除去されるのであり、また気体調整還流ラインは既に冷却されている気体とこれよりも温度の高い外気とを混合して外気を冷却することから効率的な温湿度調整が行えるのであり、したがって塗装空間内において作業者は良好な作業環境の下で水性系塗装を高品質且つ効率的に行うことができるほか水性系塗装を効率的に乾燥させることができるのである。
【0013】
請求項2記載のものによれば、請求項1記載の発明と同様な効果が得られるほかに次のような効果が得られるのであって、即ち、給気ラインが外気を比較的大きな流量で塗装空間内に供給し、一方で排気ラインが塗装空間内の気体を比較的大きな流量で外方へ排出する状態と形成することができ、したがって作業者は塗装空間内にて溶剤系塗装を支障なく行うことができるのである。
【0014】
請求項3記載のものによれば、請求項2記載の発明と同様な効果が得られるほかに次のような効果が得られるのであって、即ち、天井面を通じて気体が塗装空間内に流入し、一方では塗装空間内の気体が床面を通じて外方へ流出する状態を形成することができるため、塗装空間内はプッシュプル方式の換気が行われる状態なって、高品質な塗装と塗装時間の短縮が行うことができると共に作業者は良好な作業環境の下で塗装を衛生的に実施することができる。
【0015】
請求項4記載のものによれば、請求項3記載の発明と同様な効果が得られるほかに次のような効果が得られるのであって、即ち、気体調整還流ラインが気体噴出ノズルから適量適湿適温の気体を噴出させると共に、該気体を比較的大きな流速で被塗装物周辺に吹き当てることにより、被塗装物の塗装を少ないエネルギーで能率的に乾燥させることができ塗装時間の短縮を図ることができる。
【0016】
請求項5記載のものによれば、気体除塵還流ラインをコンパクト且つ安価に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明に係る塗装ブースの実施の形態を図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1は前記塗装ブースの第1使用例を示す正面視説明図、図2は前記塗装ブースの第2使用例を示す正面視説明図、図3は前記塗装ブースの第3使用例を示す正面視説明図である。
【0018】
これらの図に示すように、本発明の塗装ブースは直方体状の本体部100、給気ユニット101、付加給気ユニット103及び排気ユニット102を備えている。
本体部100は床面1、左右の側壁面部2、3、前後の端壁面部、及び頂壁面部4を具備しており、該本体部100内の上部で頂壁面部4よりも低い位置に頂壁面部4と略同一面積となされ略全面がフィルタ面となされた天井面5が形成されている。本体部100の内方空間のうち天井面5より下側に形成された空間が密閉状塗装空間100aとなされており、前後の端壁面部には必要に応じて被塗装物wの出し入れなどに使用される開閉口が形成される。
【0019】
該塗装空間100aの大きさは任意に決定して差し支えないものであり、一般的には、左右方向f1の寸法が凡そ4m以上で前後方向の寸法が凡そ7m以上となされており、自動車wや電車の車体などを収容し得るものとなされている。
【0020】
該塗装空間100aは、給気ライン6により天井面5を通じて外気を供給されると共に、排気ライン7により床面1を通じて内方の気体(空気や浮遊含有物など)を外方へ排出されるものとなされている。
【0021】
上記給気ライン6は、塗装空間100a内へ外気を比較的大きい流量で供給し得るものとなされているものであって、外方端を外気吸引口a1と連通された給気管8aを備えると共に該給気管8aの途中に給気ダンパD1、給気フィルター8b、給気用の送風ファンF1及びバーナーBをこの順に設けたものとなされており、給気ファンF1の作動により、外気吸引口a1から吸引された外気が給気ダンパD1を経て送風ファンF1の空気吸引部内に到達し、該送風ファンF1内で昇圧された後、バーナーB、天井上空間100bを経て塗装空間100a内の上部に供給されるようになされている。この際、給気ダンパD1、送風ファンF1及びバーナーBは給気ユニット101のケーシング内に設置されて雨水から保護された状態となされる。
【0022】
上記排気ライン7は、塗装空間100a内の気体を通気可能な格子状となされ床面1の一部である通気面部1aを通じ比較的大きな流量で外側へ排出し得るものとなされているものであって、床下ピット空間9から大気側へ向けて延出された排気管10aを備えると共に該排気管10aの途中に排気フィルタ10b、活性炭層などからなる脱臭手段10c、排気用の送風ファンF及び排気ダンパーD2をこの順に設けたものとなされており、送風ファンFの作動により、塗装空間100a内の気体が床面1の通気面部1a、床下ピット空間9、排気フィルタ10b、脱臭手段10cを経て送風ファンFの吸引部内に到達し、該送風ファンF内で昇圧された後、排気ダンパーD2を経て外方へ排出されるようになされている。この際、排気フィルタ10b、脱臭手段10c及び送風ファンF及び排気ダンパーD2は排気ユニット102のケーシング内に設置されて雨水から保護された状態となされる。
【0023】
11は塗装空間100aの床面1から環流管12a内に吸引した気体を給気ライン6を通じて塗装空間100a内に比較的大きな流量で還流させることを可能となした気体除塵還流ラインである。該気体除塵還流ライン11は給気ライン6とは無関係な独立した系統となすことも可能であるが、図示例では、床下ピット空間9と、給気フィルター8bから給気ファンF1に至る範囲の給気通路a2の途中とを還流管12aで結合すると共に、該還流管12aの途中に環流ダンパーD3、荒目の一次フィルター12bと細目の二次フィルター12cとを設けたものとなされている。
【0024】
103は第2吸引口部14Bとこれを雨水から保護するように囲ったケーシングを備えた付加給気ユニットであって第2吸引口部14Bを通じることにより外気を天井上空間100b内に任意流量で供給することを可能となすものである。13は天井上空間100bの気体と外気とを吸引し混合し冷却し加熱し再び塗装空間100a内に比較的小さな流量で環流させるものとした気体調整還流ラインであり、さらに詳細には、前記天井上空間100b内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部14Aと、外気を任意流量で吸引することを可能とした前記第2吸引口部14Bとを備えると共にこれら吸引口部14A、14Bと連通した調整環流管15aを備え、該調整環流管15aの途中に冷却手段b1及び加熱手段b2からなる空調手段15bと、調整環流用の送風ファンF2とをこの順に設けるほか、該調整環流管15aの端末部に分岐気体通路15cを形成され、第1吸引口部14Aから天井上空間100b内の気体をそして第2吸引口部14Bから外気を送風ファンF2の吸引力により比較的小さな流量で吸引し、次に冷却手段b1で冷却し次に加熱手段b2で加熱した後に分岐気体通路15cを経て再び塗装空間100a内に還流させるものとしている。
【0025】
この際、第1吸引口部14Aは塗装空間100aの側面壁部3の上部に形成され天井上空間100b内の気体が流通される開口c1と、該開口c1に設けられた気体吸引ダンパーD4とからなっており、第2吸引口部14Bは外気吸引口部c2を具備した外気吸引管16aと、外気フィルター16bと、外気吸引ダンパD5とを備え、外気フィルター16b及び外気吸引ダンパD5がケーシングで雨水密状に囲まれたものとなされている。天井上空間100b内の気体は開口c1を通じて空調手段15bに導かれるものとなるが、このことは塗装空間100a内の気体が開口c1を通じて空調手段15bに導かれる場合に較べ冷却手段b1や加熱手段b2が塗装ミストで汚染される程度を低下させてこれらを効率良く作動させる上で寄与する。また分岐気体通路15cは前記フィルター面5を経て前記塗装空間100a内に気体を還流させる第1通路17aと、調整環流管15aから送られた気体を噴出し前記床面1上の被塗装物wに噴き当てるものとなされた気体噴出ノズル18を経て塗装空間100a内に気体を還流させる第2通路17bとを具備すると共に第1通路17aの途中に第1空調ダンパーD6を、そして第2通路17bの各気体噴出ノズル18の上流側近傍に第2空調ダンパーD7、D8を設けたものとなされている。2つの第2空調ダンパーD7、D8は同時に開状態となされても或いはどちらか一方が開状態となされてもよい。
【0026】
図中、D9は頂壁面部4に形成された開口個所に設けられた圧力逃がしダンパーであり、天井上空間100b内の気圧が過度に上昇しないように天井上空間100b内の気体を外方へ流出させるものである。
【0027】
次に上記した塗装ブースの使用例及び各部の作用を、A:水性系塗装を実施する場合、B:水性系塗装の乾燥を実施する場合、及び、C:溶剤系塗装を実施する場合の3つに分けて説明する。
【0028】
A:水性系塗装を実施する場合
被塗装物wとして例えば自動車を塗装空間100a内の床面1の通気面部1a上に位置させる。そして、気体除塵還流ライン11と気体調整還流ライン13と排気ライン7を通気作動状態となす。該状態では、気体除塵還流ライン11は、比較的大きな流量(例えば毎分400立法メートル程度)で塗装空間100a内の気体を床面1の通気面部1a、床下ピット空間9、環流管12a、環流ダンパD3、送風ファンF1、天井上空間100b内を経て塗装空間100a内の上部に供給する。一方、気体調整還流ライン13は天井上空間100b内の気体を天井面5を通して第1調整ダンパーD4及び開口c1を経て例えば毎分100立法メートル程度の流量で空調手段15b内に吸引し、一方では外気を外気吸引口部c2、外気フィルター16b及び外気ダンパーD5を経て例えば毎分30立法メートル程度の流量で空調手段15b内に吸引し、空調手段15b内で天井上空間100b内の気体と外気を混合させ、次に冷却手段b1で冷却し、次に加熱手段b2で加熱した後に、送風ファンF2、調整用環流管15a、分岐通路15cの第1通路17a及びフィルター面5を経て塗装空間100a内に環流させる。排気ライン7は、比較的小さな流量(例えば毎分30立法メートル程度)で塗装空間100a内の気体を、通気面部1a、床下ピット空間9、排気管10a、排気フィルタ10b、脱臭手段10cを経て外方へ排出する。この際、排気には有機溶剤の揮発成分が殆ど含まれていないため、脱臭手段10cは使用しないで排気フィルター10bを経た排気を直接に外方へ排出させてもよい。
【0029】
この使用が定常状態になったときには、気体調整還流ライン13は、例えば、塗装空間100a内の気体の温度が30℃であるとき、冷却手段b1が該気体を例えば15℃まで冷却して該気体中の水分を除去し、次に加熱手段b2が15℃の気体を例えば25℃まで加熱してその湿度を例えば40%程度に低下させるように作動するのであり、また比較的少ない流量(例えば毎分130立法メートル程度)の気体(外気を含む)が塗装空間100aに対し供給排出されるため、塗装空間100a内の気体を少ないエネルギーで効果的に適湿及び適温に調整できるようになり、さらには空調手段15b内で塗装空間100a内の既に冷却された気体と、これよりも高い温度の外気とを混合させることにより外気を冷却し、次に該気体を冷却手段b1で冷却し、熱効率上において優れた処理を実施するものとなる。
【0030】
また塗装空間100a内では気体が比較的大きな流量で天井面5から流入し、一方ではこのように流入した気体が比較的大きな流量で床面1の通気面部1aから排出されるため、塗装空間100a内の気体はプッシュプル方式により効果的に換気されるのであり、また塗装中には多量の微細塗料粒子が浮遊するものとなるが、該微細塗料粒子は気体除塵還流ライン11の一次フィルター12b及び二次フィルター12c及びフィルター面5により効果的に除去されるのであり、これにより塗装空間100a内は作業環境の良い状態に保持されると共に、高品質な塗装が行える状態となる。
【0031】
B:水性系塗装の乾燥を実施する場合
水性系塗装が終了した後に気体調整還流ライン13の作動状況を変化させるのであり、該変化後の気体調整還流ライン13は次のように作動するのであって、即ち、天井上空間100b内の気体を第1調整ダンパーD4及び開口c1を経て例えば毎分100立法メートル程度の流量で空調手段15b内に吸引し、一方では外気を外気吸引口部c2、外気フィルター16b及び外気ダンパーD5を経て例えば毎分30立法メートル程度の流量で空調手段15b内に吸引し、次に空調手段15b内で天井上空間100b内の気体と、外気とを混合させることは先と同様であり、この後、冷却手段b1で冷却し加熱手段b2で加熱し、さらに送風ファンF2、調整環流管15a、分岐通路15cの第2通路17b及び気体噴出ノズル18を経て塗装空間100a内に環流させる。その他の各部の作動状況は先の水性系塗装の場合と変わりない。
【0032】
この使用が定常状態になったときには、気体調整還流ライン13は、例えば、塗装空間100a内の気体の温度が30℃であるとき、加熱手段b2が該気体を例えば35℃〜50℃まで加熱してその湿度を大きく低下させるように作動するのであり、また比較的少ない流量(例えば毎分30立法メートル程度)の気体(外気を含む)が塗装空間100aに対し供給排出されるため、塗装空間100a内の気体を少ないエネルギーで効果的に適湿及び適温に調整できるようになり、さらには空調手段15b内で塗装空間100a内の既に加熱された気体と、これよりも低い温度の外気とを混合させることにより外気を加熱するようになって、熱効率的に優れた加熱処理を実施するものとなり、さらには空気噴出ノズル18から乾燥した気体を被塗装物w周りに集中して大きな流速で吹き当てるために少ないエネルギーで能率的に塗装を乾燥させ塗装時間を短縮させることができるのである。
【0033】
また塗装空間100a内では気体が比較的大きな流量(例えば毎分400立法メートル程度)で天井面5から流入し、一方ではこのように流入した気体が比較的大きな流量で床面1の通気面部1aから排出されるため、塗装空間100a内の気体はプッシュプル方式により効果的に換気されるのであり、また塗装空間100a内の塵埃は気体除塵還流ライン11の一次フィルター12b及び二次フィルター12c及びフィルター面5により効果的に除去されるのであり、これらのことから塗装空間100a内は効率的且つ高品質な塗装乾燥が行える状態となる。
【0034】
C:溶剤系塗装を実施する場合
被塗装物wとして例えば自動車を塗装空間100a内の床面1の通気面部1a上に位置させることは先と同様である。そして、給気ライン6及び排気ライン7を通気作動状態となすと共に気体除塵還流ライン11及び気体調整還流ライン13は不使用状態となす。該状態では、給気ライン6は、比較的大きな流量(例えば毎分400立法メートル程度)で外気を給気ダンパーD1、給気フィルター8b、送風ファンF1、天井上空間100b及びフィルター面5を経て塗装空間100a内に供給し、一方、排気ライン7は比較的大きな流量(例えば毎分400立法メートル程度)で塗装空間100a内の気体を床面1の通気面部1a、床下ピット空間9、排気管10a、排気フィルター10b、脱臭手段10c及び排気ダンパーD2を経て外方へ排出する。
【0035】
この使用が定常状態となったときは、塗装空間100a内では気体が比較的大きな流量で天井面5から流入し、一方ではこのように流入した気体が比較的大きな流量で床面1の通気面部1aから排出されるため、塗装空間100a内の気体はプッシュプル方式により効果的に換気されるのであり、また塗装中には多量の微細塗料粒子が浮遊するものとなるが、該微細塗料粒子は排気フィルター10bで除去されるのであり、また排気に含まれる有機溶剤の揮発成分は脱臭手段10cで除去される。
なお、溶剤系塗装の乾燥を実施する場合には、上記した状態の下でバーナーBを作動させることにより給気ライン6による給気を加熱するのである。
【0036】
上記した塗装ブースは高温多湿状況で塗装することもできる。この場合、例えば、開口c1から毎分100立法メートル、外気吸引口部c2から毎分30立法メートルの気体を取り入れ、冷却手段b1で冷却しないで加熱手段b2で加熱して塗装空間100aに気体を送る。もちろん気体除塵還流ライン11を使って毎分400立法メートルの気体も還流させて塗装空間100a内に導入する。これにより冷却手段b1で冷却しないために、外気の水分は系内に蓄積されて60〜70%の湿度となる。このような状況での塗装は主にテストとして行われるものであり、東南アジアなどの高温多湿の地域を想定した塗装が行えるのである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る前記塗装ブースの第1使用例を示す正面視説明図である。
【図2】前記塗装ブースの第2使用例を示す正面視説明図である。
【図3】前記塗装ブースの第3使用例を示す正面視説明図である。
【符号の説明】
【0038】
100a 塗装空間
5 天井面(フィルター面)
6 給気ライン
7 排気ライン
11 気体除塵還流ライン
13 気体調整還流ライン
14A 第1吸引口部
14B 第2吸引口部
15c 分岐気体通路
17a 第1通路
17b 第2通路
18 気体噴出ノズル
D4 調整ダンパー(流量調整手段)
D5 外気ダンパー(流量調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉状塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたことを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し密閉状塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたことを特徴とする塗装ブース。
【請求項3】
天井面を気体の流通されるフィルター面となされ且つ床面を気体の流通可能な面となされている密閉状塗装空間と、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し前記塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインとを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に前記フィルタ面を通じ還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、さらに前記塗装空間内の気体を前記床面を通じ比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたことを特徴とする塗装ブース。
【請求項4】
天井面を気体の流通されるフィルター面となされ且つ床面を気体の流通可能な面となされている密閉状塗装空間と、大気を零流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し前記塗装空間内に供給するものとした給気ラインと、前記塗装空間内の気体を比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し大気側へ排出するものとした排気ラインとを備えた塗装ブースにおいて、前記塗装空間内の気体を任意流量で吸引することを可能とした第1吸引口部と、外気を任意流量で吸引することを可能とした第2吸引口部とを具備し且つこれら第1吸引口部及び第2吸引口部から気体を比較的小さな流量で吸引し冷却し加熱した後に再び前記塗装空間内に分岐気体通路を通じて還流させるものとした気体調整還流ラインを設け、この際、分岐気体通路は前記フィルター面を経て前記塗装空間内に気体を還流させる第1通路と、前記床面上の被塗装物に気体を噴き当てるものとなされた気体噴出ノズルを経て塗装空間内に気体を還流させる第2通路とを具備すると共にこれら第1通路と第2通路のそれぞれに流量調整手段を設けたものとなされており、さらに前記塗装空間内の気体を前記床面を通じ比較的小さな流量から比較的大きな流量までの任意な流量で吸引し除塵し再び前記塗装空間内へ還流させるものとした気体除塵還流ラインを設けたことを特徴とする塗装ブース。
【請求項5】
前記給気ラインの送風ファン及び給気管の一部が前記気体除塵還流ラインの一部をなしていることを特徴とする請求項3又は4記載の塗装ブース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−15191(P2006−15191A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193286(P2004−193286)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(391056066)ロックペイント株式会社 (8)
【出願人】(593131839)アンデックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】