説明

塗装ブース

【課題】簡易な構成により長期間、安定して効率良く塗料ミスト、有機溶剤を捕集することができる塗装ブースを提案する。
【解決手段】第1のベンチュリー部27A、第2のベンチュリー部27Bを順次介して空気流を導入する。この導入した空気流を、下方より上方に搬送する第1のダクト34、上方から下方に搬送する第2のダクト35、下方から上方に搬送する第3のダクト36で順次搬送する。第2のダクト35は、上方に水滴を噴霧するノズル23Aが設けられ、当該水滴の自重による落下により当該ダクト35を流れる空気流から塗料ミストを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料ミストを捕集する塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の塗装工程では、塗装ブースで塗料ミストを捕集して外部への飛散を防止している。このような塗料ミストを捕集する方法としては、ベンチュリー方式、水洗シャワー方式、ドライフィルター方式等が知られている。
【0003】
ここで図2は、従来のベンチュリー方式による塗装ブースを示す図であり。この図2においては、空気の流れを矢印により示す。塗装ブース1は、例えば密閉された空間による塗装室2が設けられ、この塗装室2において、作業員による塗料のスプレーにより塗装作業が実行される。この塗装室2には、給気機構が設けられ、給気チャンバー4、フィルタ5を介して外気が流入する。また塗装室2には、排気機構6(局所排気装置)が設けられ、この排気機構6により塗装室2の空気が排気される。塗装ブース1は、この排気の際に、塗料ミストを捕集する。
【0004】
ここで排気機構6は、空気流入部7において、塗料ミストを含んだ空気を塗装室2から流入する。空気流入部7は、塗装室2側にタンク部8が設けられ、このタンク部8に満たされた水の水面と流入口板9とにより形成された幅狭の流入口から、塗装室2の空気を高速度で流入させる。これにより空気流入部7は、高速の空気流によるベンチュリー効果によりタンク部8の水を巻き上げ、この巻き上げた水を空気流に混入させて導入する。これにより空気流入部7は、ベンチュリー効果によりタンク部8に保持した水を塗装室2からの空気に混入させるベンチュリー部を構成する。なお流入口板9は、タンク部8から水を効率良く巻き上げることができるように、水面側の端面形状が鋸波状に作製され、これにより鋸板とも呼ばれる。またこの塗装ブース1では、上方に水槽13が設けられ、この水槽13からの水を流入口板9の下方向へ流水してタンク部8に水を供給することにより、この流入する水の流れにより気流を形成し、後述する洗浄室11における水膜部壁面の清掃作業を低減し、さらには空気流入部7で一段と効率良く空気流に水を混入させる。
【0005】
空気流入部7は、この空気流入口の後方に、空気流の流れを渦流に変換する断面半円弧形状による渦流板10が設けられ、排気機構6は、この渦流板10に続いて洗浄室11が設けられる。ここで洗浄室11は、空気流入部7から流入した空気流を上方に搬送するダクトが設けられ、このダクトの内側壁面に、エルミネーター12が順次交互に対向して設けられる。またダクトの上方には、排気ファン14が設けられ、ダクトを介して流入する空気流を外部に放出する。これにより塗装ブース1は、空気流入部7からの水を含んだ空気流を、導入時に比して格段に低速度により円運動をさせながらダクトの上方に搬送し、塗装ミストを含んだ水滴をダクト壁面に付着させる。また空気流をエルミネーター12に衝突させ、塗料ミストを含んだ水滴をエルミネーター12により空気流から分離する。さらにダクト壁面に付着した水滴、分離した水滴を自重によりダクトの下部に集め、塗料ミストをスラッジにより沈降又は浮上させる。なお渦流板10によりかき揚げた水及び洗浄室11で落下した水は、浮遊層タンク15を介して塗装室2のタンク部8及び水槽13に還流させる。
【0006】
これに対して水洗シャワー方式は、塗装室2から流入する空気を、洗浄室内のダクトにおいて下方から上方に搬送するようにして、このダクトの上方から水のシャワーを噴霧し、空気流に含まれる塗料ミストを洗い流す。水洗シャワー方式では、ダクト上方からの水滴の飛散を防止するために、多数のエルミネーターが設けられる。なおこのようにして塗料ミストを捕集するにあたり、塗料が有機溶剤を含むものの場合は、塗料ミストと共に有機溶剤も捕集されることは言うまでもない。
【0007】
このような塗装ブースに関して、実開平2−8573号公報には、ベンチュリー方式に関する工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−8573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで図2について上述したベンチュリー方式では、タンク部8における水量の変動により、塗料ミストの捕集効率が種々に変動する。具体的に、タンク部8の水位が低い場合、空気流入口における気流抵抗が小さくなる。従ってこの場合、空気流入口に流入する空気流の流量は増大するものの、風速は低下する。これにより空気流入部7で巻き上げる水量が減少し、これにより洗浄効率が劣化する。またこれとは逆にタンク部8の水位が高い場合、空気抵抗の増大により空気流入口における空気流の流速が速くなるものの、これにより渦流板10側に多くの水が浸入する。これにより効率良く空気流を渦流に変換できなくなり、その結果、この場合も洗浄効率が劣化する。これによりベンチュリー方式の場合、長期に安定して効率よく塗料ミストを捕集するとの点で、実用上未だ不十分な問題がある。
【0010】
なおこのように洗浄効率が低下すると、塗装ブース1では、塗料ミスト、有機溶剤などが過剰に残存する空気が外部に放出されることになり、環境的にも問題である。またこの放出に係る排気ファン、排気ダクト等に塗料ミストが付着し、これによりメンテナンス作業が煩雑になる。
【0011】
これに対して水洗シャワー方式では、構造的にシャワーを構成する水滴間に隙間が発生することにより、そもそも捕獲効率を充分に確保することができない問題がある。またシャワーにおいてノズルの目詰まり等の発生を避け得ず、これによりこの場合も、長期に安定して効率良く塗料ミストを捕集できない問題がある。またシャワーに係る構成が複雑になる問題もある。
【0012】
そこで本発明は、簡易な構成により長期間、安定して効率良く塗料ミストを捕集することができる塗装ブースを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 塗装室からの空気流から塗料ミストを捕集する塗装ブースにおいて、
ベンチュリー効果によりタンク部に保持した水を前記塗装室からの空気に混入させる第1のベンチュリー部と、
前記第1のベンチュリー部に対向するように保持されて、ベンチュリー効果により前記第1のベンチュリー部からの空気流にタンク部に保持した水を混入させる第2のベンチュリー部と、
前記第2のベンチュリー部からの空気流を下方より上方に搬送する第1のダクトと、
前記第1のダクトにより搬送された空気流を上方から下方に搬送する第2のダクトと、
前記第2のダクトにより搬送された空気流を下方から上方に搬送する第3のダクトとを備え、
前記第2のダクトは、
水滴を自然落下により噴霧する排水口又はノズルが上方に設けられ、当該水滴の自重による落下により当該ダクトを流れる空気流から前記塗料ミストを除去する。
【0014】
(1)によれば、第1及び第2のベンチュリー部により空気に水を混入させた後、第1のダクトを介して第2のダクトに導き、ここで下方に流れる空気流に対して自重により落下する水滴により塗料ミストを洗浄し、その後、第3のダクトを介して空気流を放出する。従って塗装ミストは、第1及び第2のベンチュリー部で混入された水により第1のダクトで取り除かれた後、さらに第2のダクトで洗浄されて取り除かれ、これにより従来に比して格段的に効率良く塗料ミストを除去することができ、またさらに第1及び第2のベンチュリー部におけるタンク部の水量の変動による捕集効率の低下も防止することができ、これらにより長期に安定して効率良く塗料ミストを捕集することができる。また第2のダクトにおいて、下方に流れる空気流に対して自重により落下する水滴により塗料ミストを洗浄し、その後、第3のダクトを介して空気流を放出することにより、この第3のダクトからの水の飛散防止に係るエルミネーターを配置しなくても、十分に水の飛散を防止することができ、これにより構成を簡略化することができる。また第1、第2のダクトにおいても、エルミネーターを配置しないようにすることができ、これによっても構成を簡略化することができる。また水滴を自然落下噴霧する排水口またはノズルは、ダクト内が負圧の為に、当該水滴の自重による落下でも十分に水量確保することができ、これにより落下した水が、当該ダクトを流れる空気流により水が拡散し、塗料ミストを充分に除去することができる。
【0015】
(2) 上方に保持した水槽より、前記第1のダクトの塗装室側壁面に沿って水を流して前記第2のベンチュリー部のタンク部に供給し、
前記第2のベンチュリー部のタンク部よりオーバーフローする水を、前記第1のベンチュリー部のタンク部に供給する
ことを特徴とする(1)に記載の塗装ブース。
【0016】
(2)では、第2のベンチュリー部のタンク部よりオーバーフローする水を、第1のベンチュリー部のタンク部に供給することにより、少なくとも第2のベンチュリー部ではタンク部の水量を一定に保持することができ、これにより水位の変動による捕集効率の変動を一段と低減して安定に塗料ミストを捕集することができる。
【0017】
(3) 前記第2のダクトは、
下方の内側壁面に、落下する水滴を反射する反射板が設けられた
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の塗装ブース。
【0018】
(3)では、反射板により落下する水滴を反射して、空気流との接触の機会を増大させることができ、第2のダクトの全長を短くしても、充分に効率良く塗料ミストを洗浄することができる。また、反射板により空気流の断面を縮小して、風速を局所的に増大させることができ、これにより水滴とのミストとの衝突頻度を増大させ、外部への飛散を防止することができる。
【0019】
(4) ミスト及び又は有機溶剤を補足するフィルタが前記第3のダクトに設置された
ことを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の塗装ブース。
【0020】
(4)では、フィルタをさらに設置することにより、一段と捕集効率を向上することができる。またこの場合、充分に水切りした状態でフィルタによりミスト等を除去することができ、2重のベンチュリーとシャワーにより塗料ミストが非常に少ない状態でのフィルタ設置の為に目詰まりしにくく交換頻度を減少させることができ、フィルタによる捕集効率を充分に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構成により長期間、安定して効率良く塗料ミストを捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗装ブースを示す図である。
【図2】従来の塗装ブースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
図1は、図2との対比により本発明の第1実施形態に係る塗装ブースを示す図である。この図1において、図2について上述した塗装ブース1と同一の構成は対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0025】
この塗装ブース21は、図2について上述した塗装ブース1と同様に、塗装室2において、作業員による塗料のスプレーにより塗装作業が実行され、給気機構に係る給気チャンバー4、フィルタ5を介して、この塗装室2に外気を流入させる。また塗装室2には、排気機構26が設けられ、この排気機構26により塗装室2の空気を排気すると共に、塗料ミストを捕集する。なお塗料が有機溶剤系の場合、塗料ミストと共に有機溶剤を捕集することは言うまでもない。
【0026】
ここで排気機構26は、塗装室2からの空気流入部27において、空気流入口にタンク部28が設けられ、このタンク部28に満たされた水の水面と流入口板29とにより形成される幅狭の流入口から、塗装室2からの空気を高速度で流入させる。これにより空気流入部27は、高速の空気流によるベンチュリー効果によりタンク部28の水を巻き上げ、この巻き上げた水を空気流に混入させて導入する。なお流入口板29は、水面側の端面形状が鋸波状に作製される。これによりこの塗装ブース21では、この空気流入口に、ベンチュリー効果によりタンク部28に保持した水を塗装室2からの空気に混入させる第1のベンチュリー部27Aが形成される。
【0027】
空気流入部27は、この空気流入口の後方に、空気流の流れを渦流に変換する断面半円弧形状による第1の渦流板30が設けられ、この第1の渦流板30に対向するように、第2の渦流板31が設けられる。この第1及び第2の渦流板30及び31は、タンク部28側から流入した空気流の向きを順次折り返して上方に送り出すように、順次、上方にシフトして配置される。このように第1及び第2の渦流板30及び31を配置して、第2の渦流板31は、第1の渦流板30に向かって、下端側が延出して水を保持する第2のタンク部32が設けられる。これによりこの塗装ブース21は、ベンチュリー効果により第1のベンチュリー部からの空気流にタンク部32に保持した水を混入させる第2のベンチュリー部27Bが構成される。これにより塗装ブース21は、ベンチュリー部を2段により構成して水と空気流との接触面積を増大させることにより、空気流に混入させる水量を増大させ、一段と効率良く塗料ミストを捕集する。
【0028】
塗装ブース21は、この第2の渦流板31の上方に第1のダクト34が設けられ、この第1のダクト34の上方に、水槽23が設けられる。塗装ブース21は、この第1のダクト34の塗装室側内側面を伝って、水槽23の水をタンク部28、渦流板30に供給する。また塗装ブース21において、渦流板31によって持ち上げられた水は、第1のダクトを空気流により垂直に上昇する際に、内側壁面を介して一部が第1のダクト34内を落下し、この落下した水が、流入口板29と第2の渦流板31との間を介してタンク部28へ戻される。塗装ブース21は、この第1のダクト34内を落下する水の一部が、第1のベンチュリー部で持ち上げられた水と共に、第2のタンク部32に供給され、この第2のタンク部32からオーバーフローする水がタンク部28に戻される。ここで第1のダクト34内部では、水切りを行わないように構成される。これにより塗装ブース21は、第1のダクト34の内側壁面に付着する塗料ミストを洗い流すと共に、少なくとも第2のタンク部32については、水面の高さを一定に保持し、この水面の高さの変動による捕集効率の変動を防止する。
【0029】
すなわち上述したように、従来のベンチュリー方式では、タンク部8における水面の高さの変化により塗料ミストの捕集効率が大きく変化する(図2参照)。しかしながらこの実施形態のように、ベンチュリー部を2段により構成して、第2のタンク部32の水量を一定に保持すれば、第2のタンク部32による捕集効率を一定に保持するようにして、第1のタンク部28における水面の高さの変動による捕集効率の変動を、この第2のベンチュリー部27Bによる捕集効率で緩和することができる。またさらにこの実施の形態では、後述する第2のダクト35においても、水滴によるシャワーにより塗料ミストを捕集しており、これによっても水面の高さの変動に依存する捕集効率の変動を緩和することができる。これにより従来に比して、長期間、安定して効率良く塗装ミストを捕集することができ、その結果、排気ファン、排気ダクト等への塗料ミストの付着を低減し、メンテナンス作業を簡略化することができる。
【0030】
特に、図2について上述したベンチュリー方式の場合には、流入口板9の裏面側で、水を含まない空気流、水面に接しないで流入した空気流が、局所的に渦を巻き、その結果流入口板の裏面等が塗料ミストの付着により著しく汚れる欠点があった。しかしながらこの実施形態では、第1のダクト34からの一部の落下水を流入口板29と第2の渦流板31の隙間よりタンク部28へ戻すことにより、このような塗料ミストを含んだ空気流の局所的な滞留等を低減することができ、従来に比して流入口板等への塗料ミストの付着による汚れを格段に低減することができる。
【0031】
なお塗装ブース21において、水槽23からタンク部28への水の供給量については、水槽23に設けた止水板からオーバーフローする水をダクト34の塗装室側内側壁面に流出させるようにして、この止水板の高さの調整により調整する。
【0032】
塗装ブース21は、この上方向に延長する第1のダクト34の後方に、順次、第2、第3のダクト35、36が設けられ、第1のダクト34で上方に流れる空気流を、第2のダクト35では上方から下方向に流し、第3のダクト36で下方から上方に流す。塗装ブース21は、この第3のダクト36の上方に排気ファン14が設けられる。ここで第1のダクト34は、エルミネーターの配置が省略され、内側壁面が平坦な面により形成される。これにより塗装ブース21では、第1ダクト34に関するメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0033】
すなわち図2の構成において、空気流入部7の上方の洗浄室11には、エルミネーター12が設けられていることにより、このエルミネーター12にもミストが付着し、これを清掃することが必要になる。しかしながらこの実施形態では、第1のダクト34については、内側壁面が必要最小限の平坦な面であることにより、ミストの付着を低減することができ、また清掃作業も簡略化することができる。またエルミネーターを必要としない為、空気静圧を軽減することができる。なおこれにより塗装ブース21では、この第1のダクト34での流速の低下により塗料ミストを取り込んだ水滴が発生し、この水滴が第1のダクト34の内側壁面に付着することになり、この付着した水滴が壁面を伝って下方に滴下することになる。この水滴の落下により、塗装ブース21では、流入口板29、第2の渦流板31の裏側へのミストの付着を防止することができ、これによってもダクト34を清浄に保ち、ダクト34のメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0034】
第2のダクト35は、第1のダクト34により上方に搬送された空気流を、下方に搬送する。塗装ブース21は、この第2のダクト35の上方に延長するように水槽23が設けたれ、この水槽23の下面に、第2のダクト35に水滴を自然落下により噴霧する排水口又はノズル23Aが複数設けられる。これによりこの塗装ブース21は、下方向に流れる空気流に対して水滴を噴霧し、この噴霧した水滴の自重により空気流と同方向に水滴を移動させて空気流を洗浄する。これにより塗装ブース21は、全体構成を簡略化して、長期間、安定して効率良く塗料ミストを捕集することができる。またさらに後述する反射板38の設置によって、さらに一段と洗浄効率を向上する。
【0035】
すなわち従来の水洗シャワー方式で、垂直方向のダクトにおける下部から上部の気流に対して、この気流の流れとは逆に上から下へとシャワーを行う。この場合、空気流の流れに逆らって水滴を送出するために、シャワーの圧力を充分に確保することが必要であり、このため一般的に、専用ポンプを設け、さらに水噴出し部分の構造をノズル構造とする。このため従来の水洗シャワー方式では、専用ポンプの設置場所が必要になり、さらにはノズルの詰まりなど発生していた。また空気流により水滴が飛散して排気ダクトに送り込まれ易く、このためエルミネーターの設置が不可欠となっていた。
【0036】
しかしながらこの実施の形態では、第2のダクト35内が負圧であることにより、また自重方向の水の落下であることにより、水滴の噴霧にそれ程の圧力を要しない。これによりタンク部32に水を供給する水槽23用のポンプを利用して水滴を噴霧することができ、これにより構成を簡略化することができる。なお水槽23については、第1のダクト34側と第2のダクト35側とで分割した構造とし、第1のダクト34側について上述したと同様に、この第2のダクト35側についても、止水板を用いたオーバーフローにより水量を調整する。また重力方向に流れる空気流に対して、重力方向への水滴の供給であることにより、この第2及び第3のダクト35、36についても、エルミネーターの数を格段的に低減することができ、その分、空気抵抗での静圧損失を防止し、さらには構成を簡略化することができる。また第1及び第2の渦流板30、31を使用して塗料ミストを捕集した後、さらにこの第2のダクト35におけるシャワーにより塗料ミストを捕集することにより、従来に比して格段的に効率良くミストを捕集することができる。
【0037】
なおこのように自重により落下する水滴によりミストを捕集する場合、噴霧するノズル34の口径は、それぞれ3/8〜3/4インチ程度が望ましい。しかしながらこの口径は、塗装ブースの大きさ、設置ポンプの容量等に応じて種々に変更することができる。またノズル34の間隔は、300〜500mm程度であることが望ましいものの、この場合も設置個数を含めて、ポンプの容量等に応じて種々に変更して最適化することができる。なおシャワーを調整する場合には、ノズル34にそれぞれバルブを設けることにより、調整可能とすることができる。
【0038】
この塗装ブース21は、第2のダクト35の下方、背面側に、壁面にほぼ垂直に反射板38が設けられ、自重により落下する水滴をこの反射板38で反射する。これにより塗装ブース21は、ミストの捕獲効率を向上し、さらには空気流の滞留等による壁面へのミストの付着を防止する。
【0039】
これにより第2及び第3のダクト35、36は、下方に、水を排出する排出板39が斜めに傾いて取り付けられ、さらに浮遊槽タンク25が設けられる。また第3のダクト36は、空気流を攪拌する攪拌板40が、内側壁面に設けられる。しかして上述したように、第2のダクト35におけるミストの捕集が自重により落下する水滴によるものであることにより、第3のダクト36に進入する水滴にあっては、充分に低減することができ、これにより第3のダクト36については、エルミネーターの配置を充分に少なくすることができる。これにより第3のダクト36では、ミストの付着による汚れを充分に抑圧することができる。また当然に、第2のダクト35にあっても、自重により落下する水滴が内側壁面等に付着して下方に落下することにより、清浄に保つことができる。これらにより第1〜第3のダクト34、35、36について、メンテナンス作業を簡略化することができる。
【0040】
以上の構成によれば、第1及び第2のベンチュリー部、第1〜第3のダクトを順次設け、第2のダクトにおいて下方に向かう空気流に対して水滴の自重による落下により塗料ミストを除去することにより、順次塗料ミストを除去して従来に比して効率良く塗料ミストを除去することができ、さらにはベンチュリー部における水深の変動等による塗料ミストの捕集効率の変動も緩和することができる。これにより長期間、安定して効率良く塗料ミストを捕集することができる。また第2のダクトにおいて、空気流の流れに沿って自重で降下する水滴により塗料ミストを除去することにより、第1〜第3のダクトにおいては、エミレータの配置を省略することができ、これにより簡易な構成により塗料ミストを除去することができる。
【0041】
また上方に保持した水槽より第2のベンチュリー部のタンク部に水を供給するようにして、第2のベンチュリー部のタンク部よりオーバーフローする水を、第1のベンチュリー部のタンク部に供給することにより、第2のベンチュリー部については、タンク部の水量を一定に保持して、この水量の変化によるミストの捕集効率の変化を低減することができる。
【0042】
また第2のダクトに、落下する水滴を反射する反射板を設けることにより、第2のダクトの長さをそれ程長くしなくても、十分にミストを捕集することができる。
【0043】
なおこの実施の形態において、塗装ブース21は、一体のブース構造とされ、これにより設置面積の低減や設置コストを低減することができ、また、メンテナンス費用を低減出することができる。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
この実施の形態では、図1について上述した第3のダクト36の内側に、さらにミスト及び又は有機溶剤を補足するフィルタ42(図1参照)が設置され、これにより一段とミスト等の捕集効率が増大される。なおこのフィルタは、捕集対象に応じて種々の構成を適用することができる。この実施の形態では、このフィルタに関する構成が異なる点を除いて第1の実施の形態と同一に構成される。
【0045】
この実施の形態では、さらにフィルタを設けることにより、一段とミスト等の捕集効率を向上することができる。またこの場合、充分に水切りした状態でフィルタによりミスト等を除去することができ、フィルタによる捕集効率を充分に確保することができる。
【0046】
〔他の実施の形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【0047】
すなわち上述の実施形態では、ベンチュリー部と第2ダクトとで共通のポンプにより水を供給する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、個別の経路により供給するようにしてもよい。
【0048】
また上述の実施の形態では、密閉した空間による塗装室を前提に、この塗装室における塗装時の塗料ミストを収集する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、各種の塗装時における塗装ミストの回収に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1、21 塗装ブース
2 塗装室
4 給気チャンバー
5 フィルタ
6、26 排気機構
7、27 空気流入部
8、28、32 タンク部
9、29 流入口板
10、30、31 渦流板
11 洗浄室
12 エルミネーター
13、23 水槽
14 排気ファン
15 25 浮遊槽タンク
23A ノズル
27A、27B ベンチュリー部
34、35、36 ダクト
38 反射板
39 排出板
40 攪拌板
42 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装室からの空気流から塗料ミストを捕集する塗装ブースにおいて、
ベンチュリー効果によりタンク部に保持した水を前記塗装室からの空気に混入させる第1のベンチュリー部と、
前記第1のベンチュリー部に対向するように保持されて、ベンチュリー効果により前記第1のベンチュリー部からの空気流にタンク部に保持した水を混入させる第2のベンチュリー部と、
前記第2のベンチュリー部からの空気流を下方より上方に搬送する第1のダクトと、
前記第1のダクトにより搬送された空気流を上方から下方に搬送する第2のダクトと、
前記第2のダクトにより搬送された空気流を下方から上方に搬送する第3のダクトとを備え、
前記第2のダクトは、
水滴を自然落下により噴霧する排水口又はノズルが上方に設けられ、当該水滴の自重による落下により当該ダクトを流れる空気流から前記塗料ミストを除去する
ことを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
上方に保持した水槽より、前記第1のダクトの塗装室側壁面に沿って水を流して前記第2のベンチュリー部のタンク部に供給し、
前記第2のベンチュリー部のタンク部よりオーバーフローする水を、前記第1のベンチュリー部のタンク部に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記第2のダクトは、
下方の内側壁面に、落下する水滴を反射する反射板が設けられた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
ミスト及び又は有機溶剤を補足するフィルタが前記第3のダクトに設置された
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の塗装ブース。

【図1】
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【図2】
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